JP2017066465A - 溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成膜性を向上できる溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法を提供する。【解決手段】本発明の溶射用粉末は、平均押し込み硬さが4500〜16500N/mm2である二次粒子を含んでなり、該二次粒子の顆粒強度が10MPa以上であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が5μm以下であることを要旨とする。二次粒子は、金属粒子やセラミックス粒子を含んでもよい。また、二次粒子は、造粒−焼結粒子を含んでもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、成膜性を向上できる溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法に関する。
例えば、各種産業機械の金属製の部品等の基材に耐熱性等の耐久性を付与するために、当該部品の表面に溶射皮膜を設けるドライコーティング技術が適用されている。ドライコーティング技術の一つである溶射法は、金属、合金、セラミック、サーメット等からなる粒状又はスラリー状の溶射材を燃焼炎又は電気エネルギー等の熱源により溶融させるとともにその溶射粒子を加速させて、基材の表面に吹き付け、堆積させることで、皮膜を形成する手法である。
これら溶射法の中で、例えば低温プロセス溶射を用いた溶射技術は、皮膜が形成される基材の熱変質や熱変形を抑制したり、酸化の少ない皮膜を形成することができる点で近年注目されている。従来より、特許文献1に開示される溶射用粉末が知られている。特許文献1は、低温プロセス溶射でも効率的に皮膜を形成するために、平均径の異なる2種類の金属粒子を含有する溶射用粉末について開示する。
特開2012−31443号公報
しかしながら、特許文献1に開示される溶射技術は、溶射用粉末に用いることができる材料が制限され、例えば押し込み硬さ高い材料を用いた場合、効率的に皮膜を形成することができないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、成膜性を向上できる溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、平均押し込み硬さが4500〜16500N/mmである二次粒子を含んでなり、該二次粒子の顆粒強度が10MPa以上であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が5μm以下である溶射用粉末が提供される。
前記二次粒子が、金属粒子を含んでもよい。さらに、前記二次粒子が、セラミックス粒子を含んでもよい。前記二次粒子が、造粒−焼結粒子を含んでもよい。前記二次粒子の平均粒子径が、40μm以下でもよい。1000℃以下の溶射法に適用されてもよい。本発明の別の態様では、前記溶射用粉末を溶射して溶射皮膜を形成する溶射皮膜の形成方法が提供される。
本発明によれば、成膜性を向上できる。
以下、本発明の溶射用粉末を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態の溶射用粉末は、所定粒子径の一次粒子を凝集して得られる二次粒子を含んでなる。本実施形態の溶射用粉末を構成する二次粒子の平均押し込み硬さの下限は、4500N/mm以上、好ましくは5000N/mm以上、より好ましくは5500N/mm以上である。平均押し込み硬さが4500N/mm以上の場合、特に、低温プロセス溶射であっても耐久性に優れる皮膜を形成することができる。二次粒子の平均押し込み硬さの上限は、16500N/mm以下、好ましくは16000N/mm以下、より好ましくは15000N/mm以下である。平均押し込み硬さの上限を16500N/mm以下とすることにより、成膜性を向上できる。また、特に、低温プロセス溶射において、これまでと異なる溶射材料を使用することが可能となり、酸化を抑制した皮膜を形成したり、密着強度等の皮膜特性に優れた皮膜の形成が可能となる。
なお、押し込み硬さの測定は、例えば、エリオニクス社製の超微小押し込み硬さ試験機“ENT−1100a”により、ダイヤモンド三角錐圧子を用いて、試験荷重100mN及びステップインターバル20ミリ秒の条件で行うことができる。また、溶射用粉末が1種類の粒子が凝集してなる粒子の場合、平均押し込み硬さは、その粒子の押し込み硬さを示す。溶射用粉末が複数種類の粒子が凝集してなる複合粒子の場合、平均押し込み硬さは、各粒子の押し込み硬さに溶射用粉末中の配合割合を乗じて得られた各値の和により求められる。したがって、溶射用粉末が複数種類の粒子が凝集してなる複合粒子の場合、溶射用粉末中に押し込み硬さが4500N/mm未満の材料又は16500N/mmを超える材料が含まれることを妨げるものではない。
本実施形態の溶射用粉末を構成する材料としては、上記平均押し込み硬さの範囲を満たす材料であれば、特に限定されない。本実施形態の溶射用粉末を構成する材料としては、例えば金属粒子、又は複数種類の金属粒子の混合物若しくは金属粒子とセラミックス粒子の混合物からなる複合粒子等が挙げられる。金属粒子としては、単一金属の金属粒子の他、合金からなる粒子であってもよい。
金属としては、例えばタングステン、鉄、ニッケル、コバルト、タンタル、モリブデン、銅、アルミニウム、亜鉛、鉛、銀、マグネシウム、錫、ニオブ等が挙げられる。合金としては、これらの金属からなる合金の他、クロム、イットリウム、マンガン等の添加元素を配合することにより得られる合金であってもよい。合金の具体例としては、ステンレス合金等の鉄基合金、ニッケルクロム合金等のニッケル基合金、CoCrAlY合金、NiCrAlY合金、CoNiCrAlY合金、NiCoCrAlY合金等が挙げられる。これらの材料は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
セラミックス粒子としては、金属粒子と複合粒子を形成することにより、上記平均押し込み硬さの範囲を満たす材料であれば、特に限定されない。例えば、ケイ素、並びにケイ素、クロム、又は各種金属の酸化物、炭化物、窒化物、及びホウ化物等が挙げられる。より具体的には、アルミナ、アルミナ珪酸塩(ムライト)、コージェライト、ジルコン、スピネル、イットリア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ジルコニア等の酸化物セラミックス、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化タングステン等の炭化物セラミックス、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物セラミックス、ホウ化モリブデン、ホウ化クロム等のホウ化物等が挙げられる。これらの材料は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の溶射用粉末は、焼結−粉砕法及び造粒−焼結法等の固相焼結法により製造することができる。造粒−焼結法は、原料粉末からバインダ及び各種溶媒等を用いて得られた造粒粉末を作製し、その造粒粉末を焼結してさらに解砕及び分級することにより得られる。焼結−粉砕法は、原料粉末を圧縮成形してから焼結し、得られた焼結体を粉砕及び分級することにより得られる。これらの中で、原料を混合した粉末から造粒粉末を作製し、その造粒粉末を焼結する工程を経る造粒−焼結法により製造されることが好ましい。造粒−焼結法により製造される溶射用粉末は、一般に、原料粉末を圧縮成形してから焼結し、得られた焼結体を粉砕する工程を経る焼結−粉砕法等のその他の製法により製造される溶射材料に比べて流動性により優れる。しかも造粒−焼結法の場合には、製造過程に粉砕工程を含まないので、粉砕中に不純物が混入をより抑制することができる。
本実施形態の溶射用粉末は、原料粉末の一次粒子が凝集した二次粒子を含んでなる。かかる二次粒子を構成している原料粉末の平均粒子径としての平均一次粒子径(定方向接線径)の上限は、5μm以下であり、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下である。この場合、原料粉末の平均一次粒子径が小さくなるほど、成膜性を向上させることができる。また、原料粉末の平均一次粒子径の下限は、0.05μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。この場合、原料粉末の平均一次粒子径が大きくなるほど、得られる溶射皮膜の耐久性等の費用対効果をより向上させることができる。なお、粒子の平均一次粒子径の測定は、電子顕微鏡を用いて粒子の断面を観察することにより得られる粒子の断面画像から求めることができる。
また、二次粒子の平均粒子径としての平均二次粒子径(体積平均径)の上限は、特に限定されないが、40μm以下であることが好ましく、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。この場合、溶射用粉末の平均二次粒子径が小さくなるほど、成膜性をより向上させることができる。また、平均二次粒子径の下限は、特に限定されないが5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。この場合、溶射用粉末の平均二次粒子径が大きくなるほど、粉末の流動性が高くなり、得られる溶射皮膜表面の平滑性をより向上させることができる。なお、粒子の平均二次粒子径は、レーザ散乱回折法に基づく粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径)を意味するものとする。本明細書において、平均粒子径の測定には、堀場製作所社製のレーザ回折/散乱式粒度測定器、LA−300を使用して得た値を採用している。
本実施形態の溶射用粉末を構成する二次粒子の顆粒強度の下限は、10MPa以上であり、好ましくは20MPa以上、より好ましくは50MPa以上である。この場合、二次粒子の顆粒強度が高くなるほど、成膜性に優れ、耐久性が高い皮膜を得ることができる。一方、二次粒子の顆粒強度の上限は、特に限定されず、好ましくは500MPa以下、より好ましくは300MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。この場合、二次粒子の顆粒強度が低くなるほど、成膜性に優れる皮膜形成が可能となる。溶射用粉末の顆粒強度は、焼結する際の温度等の各種条件、後述する気孔率、造粒する際の添加成分等を変化させることにより調整することができる。なお、溶射用粉末の顆粒強度の測定は、例えば、島津製作所社製の微小圧縮試験装置“MCTE−500”を用いて行うことができる。
本実施形態の溶射用粉末の熱伝導率の上限は、特に限定されないが、好ましくは1W/m・K以下であり、より好ましくは0.9W/m・K以下である。この場合、溶射用粉末の熱伝導率が低くなるほど、成膜速度をより向上させることができる。これは、溶射装置内で加熱された溶射用粉末の温度が、溶射用粉末が基材に衝突するまでの間に低下しにくいことが理由と考えられる。なお、溶射用粉末の熱伝導率は、例えばホットディスク法により測定することができる。熱伝導率は、溶射用粉末中の粒子の構造、組成、物性などの影響を受ける。したがって、溶射用粉末中の粒子の構造、組成、物性を変更することにより、熱伝導率を適宜調整することが可能である。例えば、熱伝導率が1W/m・K以下の溶射用粉末を得るための有効な手段の1つとして、溶射用粉末中の粒子の気孔率をできるだけ高くすることが挙げられる。具体的には、溶射用粉末中の粒子の気孔率は4%以上であることが好ましく、より好ましくは4.5%以上である。溶射用粉末中の粒子の気孔率が高くなるほど、各粒子の熱伝導率、ひいては溶射用粉末の熱伝導率が低下する傾向がある。なお、溶射用粉末中の粒子の気孔率の測定は、例えば水銀圧入法により行うことができる。
本実施形態の溶射用粉末の用途は、特に限定されないが、比較的低温の溶射プロセス、例えばコールドスプレー、ウォームスプレー、高速空気燃料(HVAF)溶射等が挙げられる。また、比較的高温の溶射プロセス、例えば高速酸素燃料(HVOF)溶射等の高速フレーム溶射、大気圧プラズマ溶射(APS)等のプラズマ溶射等が適用されてもよい。本実施形態の溶射用粉末は、低温溶射プロセス用途であっても、成膜性を向上できることから、これら中で比較的低温の溶射プロセスの用途が適用されることが好ましい。低温プロセス溶射の温度としては、皮膜が形成される基材の熱変質や熱変形を抑制したり、酸化の少ない皮膜を形成することができる観点から1000℃以下が好ましい。
コールドスプレーとは、溶射用粉末の融点又は軟化温度よりも低い温度に加熱した作動ガスを超音速にまで加速し、その加速した作動ガスにより溶射用粉末を固相のまま高速で基材に衝突させることにより皮膜を形成する技術である。比較的高温の溶射プロセスの場合、一般に、融点又は軟化温度以上にまで加熱された溶射用粉末が基材に吹き付けられるため、基材の材質や形状によっては基材の熱変質や変形が起こることがある。そのため、あらゆる材質及び形状の基材に対して皮膜を形成することができるわけではなく、基材の材質及び形状が制限されるという欠点がある。また、溶射用粉末を融点又は軟化温度以上にまで加熱する必要があるために、装置も大型になり、施工場所等の条件が限られてくる。それに対し、コールドスプレーは比較的低温で溶射が可能なため、基材の熱変質や変形が起こりにくく、また装置によっては比較的高温の溶射プロセスと比較して小型ですむという利点がある。さらに、使用する作動ガスが燃焼ガスではないために安全性に優れ、現地施工での利便性が高いという利点もある。
一般的に、コールドスプレーは、作動ガス圧により高圧型と低圧型に分類される。すなわち、作動ガス圧の上限が1MPaである場合を低圧型コールドスプレーといい、作動ガス圧の上限が5MPaである場合を高圧型コールドスプレーという。高圧型コールドスプレーでは、主としてヘリウムガスや窒素ガスもしくはそれらの混合ガス等の不活性ガスが作動ガスとして使用される。低圧型コールドスプレーでは、高圧型コールドスプレーで使用されるガス種、あるいは圧縮空気が作動ガスとして使用される。
高圧型コールドスプレーにより溶射皮膜を形成する用途で前記実施形態の溶射用粉末を使用する場合、作動ガスの圧力は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜5MPa、より好ましくは0.7〜5MPa、さらに好ましくは1〜5MPa、最も好ましくは1〜4MPaでコールドスプレーに供給される。作動ガスの温度は、特に限定されないが、好ましくは100〜1000℃、より好ましくは300〜1000℃、さらに好ましくは500〜1000℃、最も好ましくは500〜800℃にまで加熱される。溶射用粉末の供給速度は、特に限定されないが、好ましくは1〜200g/分、さらに好ましくは10〜100g/分でもって作動ガスと同軸方向から作動ガスに供給される。スプレー時、コールドスプレーのノズル先端から基材までの距離は、特に限定されないが、5〜100mmであることが好ましく、より好ましくは10〜50mmである。コールドスプレーのノズルのトラバース速度は、特に限定されないが、好ましくは10〜300mm/秒、より好ましくは10〜150mm/秒である。また、形成する溶射皮膜の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは100〜500μmである。
一方、低圧型コールドスプレーにより溶射皮膜を形成する用途で前記実施形態の溶射用粉末を使用する場合、作動ガスの圧力は、特に限定されないが、好ましくは0.3〜1MPa、より好ましくは0.5〜1MPa、最も好ましくは0.7〜1MPaでコールドスプレーに供給される。作動ガスの温度は、特に限定されないが、好ましくは100〜600℃、より好ましくは250〜600℃、最も好ましくは400〜600℃にまで加熱される。溶射用粉末の供給速度は、特に限定されないが、好ましくは1〜200g/分、さらに好ましくは10〜100g/分でもって作動ガスと同軸方向から作動ガスに供給される。スプレー時、コールドスプレーのノズル先端から基材までの距離は、特に限定されないが、5〜100mmであることが好ましく、より好ましくは10〜40mmである。コールドスプレーのノズルのトラバース速度は、特に限定されないが、好ましくは5〜300mm/秒、より好ましくは5〜150mm/秒である。また、形成する溶射皮膜の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは100〜500μm、最も好ましくは100〜300μmである。
ウォームスプレーとは一般に、灯油と助燃剤として酸素を用いて得られる燃焼フレームに窒素ガス、圧縮空気、アルゴンガスなどの冷却ガスを混入させることにより比較的低温の燃焼フレームを形成し、この燃焼フレームにより溶射材料を加熱及び加速して基材に衝突及び付着させる溶射プロセスである。HVOF溶射とは一般に、灯油又は炭化水素ガスと助燃剤として酸素を用いて得られる燃焼フレームにより溶射材料を加熱及び加速して基材に衝突及び付着させる溶射プロセスである。HVAF溶射とは一般に、酸素の代わりに空気を助燃剤として用いることによりHVOF溶射に比べて低温の燃焼フレームを形成し、この燃焼フレームにより溶射材料を加熱及び加速して基材に衝突及び付着させる溶射プロセスである。プラズマ溶射法とは、溶射材料を軟化又は溶融するための溶射熱源としてプラズマ炎を利用する溶射方法である。電極間にアークを発生させ、かかるアークにより作動ガスをプラズマ化すると、かかるプラズマ流はノズルから高温高速のプラズマジェットとなって噴出する。プラズマ溶射法は、このプラズマジェットに溶射材料を投入し、加熱、加速して基材に堆積させることで溶射皮膜を得るコーティング手法一般を包含する。
次に、上記のように構成された溶射用粉末の作用を説明する。
本実施形態の溶射用粉末は、平均押し込み硬さが4500〜16500N/mmである二次粒子を含んでなり、該二次粒子の顆粒強度が10MPa以上であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が5μm以下である。かかる溶射用粉末を用いた場合、例えば低温プロセス溶射であっても成膜性を向上させることができ、また、耐久性に優れる皮膜を形成することができる。また、従来、低温プロセス溶射を行うことは困難であった押し込み硬さが高い材料を用いて、低温プロセス溶射を行うことが可能となった。それにより、酸化を抑制した皮膜形成と同時に、密着強度等の皮膜特性を向上させた皮膜形成ができるようになった。
上記実施形態の溶射用粉末によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、平均押し込み硬さが4500〜16500N/mmである二次粒子を含んでなり、該二次粒子の顆粒強度が10MPa以上であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が5μm以下である溶射用粉末を構成した。したがって、かかる溶射用粉末を用いて溶射した場合、成膜性を向上させることができる。また、成膜速度を向上させることができる。さらには、耐久性に優れる皮膜を形成することができる。
(2)上記実施形態の溶射用粉末は、原材料として金属粒子又はセラミックス粒子を用いてもよい。従来、低温プロセス溶射を行うことは困難であった押し込み硬さが高い材料を用いて、低温プロセス溶射を行うことが可能となった。また、複数種類の粒子が凝集してなる複合粒子を使用した場合においても、組成変動を抑制することができる。
(3)上記実施形態の溶射用粉末は、造粒−焼結粒子を含んでもよい。造粒−焼結粒子により、平均押し込み硬さが4500〜16500N/mmである粒子を容易に得ることができる。
(4)上記実施形態の溶射用粉末を構成する二次粒子の平均粒子径が、40μm以下であってもよい。したがって、かかる溶射用粉末を用いて溶射した場合、成膜性をより向上させることができる。
(5)上記実施形態の溶射用粉末は、1000℃以下の溶射法に適用されてもよい。本発明の所定のパラメータを満たす溶射用粉末を使用することにより、平均押し込み硬さが高い溶射用粉末を使用した場合であっても、低温プロセス溶射における皮膜形成能を向上させ、効率的な皮膜形成を行うことができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の溶射用粉末は、本発明の所定のパラメータを満たす溶射用粉末以外の成分を含むことを許容する。ただし、本発明の所定のパラメータを満たす溶射用粉末以外の成分の含有量はできるだけ少ないことが好ましく、5質量%未満がより好ましく、1質量%未満がさらに好ましい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
下記表1に示される材料からなる各実施例及び比較例の溶射用粉末を調製し、表2又は表3に示すコールドスプレーの各条件で、各溶射用粉末を基材表面に溶射した。溶射用粉末の製造方法は、造粒−焼結法の場合、表1に示される材料A、又は材料Aを含む粉末と材料Bを含む粉末を所定の割合で含む混合物を、3.6質量%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液に分散させてスラリーを調製し、そのスラリーを噴霧造粒機を用いて気流中に噴霧し、乾燥させることで造粒粉末を作製した。そして、その造粒粉末を、不活性雰囲気中で、各材料の融点未満の温度で焼結し、さらに必要に応じてボールミルを用いて解砕及び分級することにより調製した。
比較例1は、アトマイズ法により製造した。具体的には、材料Aを含む粉末を、溶融して噴霧及び冷却し、その後必要に応じて分級することにより調製した。
比較例2は、材料Aを含む粉末を、溶融して冷却凝固させた後に粉砕し、その後必要に応じて分級することにより調製した。
比較例3は、材料Aを含む粉末を、3.6質量%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液に分散させてスラリーを調製し、そのスラリーを噴霧造粒機を用いて気流中に噴霧し、乾燥させることで造粒粉末を作製した。
比較例5は、材料Aを含む粉末と材料Bを含む粉末を所定の割合で混合(ブレンド)することにより調製した。
表1に示される材料A又はBの“平均粒子径”欄(平均一次粒子径)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子の断面を観察することにより得られる粒子の断面画像を用いて測定した。二次粒子の“平均粒子径”欄(平均二次粒子径)は、レーザ回折/散乱式粒度測定器(堀場製作所社製、LA−300)を用いて測定した。
表1に示される“押し込み硬さ”欄には、各溶射用粉末を構成する材料A又はBの押し込み硬さを測定した結果を示す。二次粒子の“平均押し込み硬さ”欄には、原料が材料Aのみの場合、材料Aの押し込み硬さの値を示す。溶射用粉末が材料A及び材料Bの複合粒子から構成される場合は、材料A又はBの各粒子の押し込み硬さに各材料の配合割合を乗じて得られた各値の和により求められる。押し込み硬さの測定は、エリオニクス社製の超微小押し込み硬さ試験機“ENT−1100a”により、ダイヤモンド三角錐圧子を用いて、試験荷重100mN及びステップインターバル20ミリ秒の条件で行った。
表1に示される“熱伝導率”欄には、各溶射用粉末の熱伝導率を測定した結果を示す。熱伝導率の測定は、京都電子工業社製の熱物性測定装置“TPS500”を用いてホットディスク法により行った。より具体的には、23℃の恒温室内で溶射用粉末を30〜40gずつ粉体容器に入れ、容器内の各溶射用粉末の上に2.2kgの重りを載せた状態で熱伝導率の測定を行った。その他の測定条件として、使用センサはΦ7mm、印加電力を0.04W、測定時間を80秒に設定した。
表1に示される“顆粒強度”欄には、各溶射用粉末の顆粒強度を測定した結果を示す。具体的には、式:σ=2.8×L/π/dに従って算出される10個の各溶射用粉末の顆粒強度σ[MPa]の平均値を示す。上式中、Lは臨界荷重[N]を表し、dは各溶射用粉末の平均径[mm]を表す。臨界荷重は、一定速度で増加する圧縮荷重を圧子で各溶射用粉末に加えたときに、圧子の変位量が急激に増加する時点において各溶射用粉末に加えられた圧縮荷重の大きさである。この臨界荷重の測定には、島津製作所社製の微小圧縮試験装置“MCTE−500”を使用した。
表1に示される“気孔率”欄には、各溶射用粉末を構成する粒子中の気孔率を測定した結果を示す。気孔率の測定は、Micromeritics社製の水銀圧入式ポロシメーター“AutoPore IV 9500”を用い、水銀接触角130°、表面張力485dynes/cm(0.485N/m)の条件で測定した結果より、50psi(0.034MPa)以上のデータに規定した結果を示す。
表1に示される“成膜性”欄には、表1に示す各条件で各溶射用粉末を溶射したときに実用上好適な厚さの溶射皮膜を形成することができるか否かに基づいて各溶射用粉末の皮膜形成能を評価した結果を示す。具体的には、複数パスの繰り返しにより100μmの厚さの溶射皮膜を形成することができた場合には良(○)、100μmの厚さの溶射皮膜を形成することはできなかったが、50μmの厚さの溶射皮膜を形成することができた場合には可(△)、複数パスを繰り返しても50μmの厚さの溶射皮膜を形成することができなかった場合には不良(×)と評価した。
表1に示される“皮膜速度”欄には、表1に示す各溶射条件で各溶射用粉末を溶射したときに1パス当たりに形成される溶射皮膜の厚さ(μm)を結果として示す。
表1に示される“組成変動”欄には、溶射用粉末として材料A及びBから形成される複合粒子が用いられた場合に、成膜後の皮膜組成の変動が大きいか否かについて評価した結果を示す。溶射用粉末及び溶射皮膜の化学組成の測定は、島津製作所社製の蛍光X線分析装置“LAB CENTER XRF−1700”とLECO社製の炭素分析装置“WC−200”及び窒素酸素分析装置“ON736”を用いて行った。溶射前の溶射用粉末における押し込み硬さが高い材料の含有比率(1)に対し、溶射後の皮膜に含まれる押し込み硬さが高い材料の含有比率(2)とした場合、(1)/(2)が70%以上の場合を良(○)、70%未満の場合を不良(×)として評価した。
表1に示されるように、各実施例の溶射用粉末の場合には、成膜性に優れることが確認された。それに対し、一次粒子が凝集した二次粒子を構成していない比較例1,2の溶射用粉末は、皮膜性に劣る結果となった。また、顆粒強度が10MPa未満である比較例3の溶射用粉末は、皮膜性に劣る結果となった。平均押し込み硬さが16500N/mmを超える比較例4の溶射用粉末は、皮膜性に劣る結果となった。金属粒子とセラミックス粒子をブレンドすることにより得られた比較例5の溶射用粉末は、二次粒子を構成しておらず、皮膜性に劣る結果となった。また、組成変更の評価も劣る結果となった。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記溶射用粉末を溶射して得られた溶射皮膜。(b)前記溶射は、1000℃以下の溶射法が適用されて形成された溶射皮膜。従って、この(a)(b)に記載の発明によれば、これまでと異なる溶射材料を使用することが可能となり、酸化を抑制した皮膜を形成したり、密着強度等の皮膜特性に優れた皮膜の形成が可能となる。(c)前記溶射用粉末をコールドスプレー、特に高圧型コールドスプレーにより溶射して溶射皮膜を形成する溶射皮膜の形成方法。この場合、コールドスプレー、特に高圧型コールドスプレーにより溶射皮膜を形成することができる。

Claims (7)

  1. 平均押し込み硬さが4500〜16500N/mmである二次粒子を含んでなり、
    該二次粒子の顆粒強度が10MPa以上であり、
    前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が5μm以下である溶射用粉末。
  2. 前記二次粒子が、金属粒子を含んでなる請求項1に記載の溶射用粉末。
  3. さらに、前記二次粒子が、セラミックス粒子を含んでなる請求項2に記載の溶射用粉末。
  4. 前記二次粒子が、造粒−焼結粒子を含んでなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶射用粉末。
  5. 前記二次粒子の平均粒子径が、40μm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶射用粉末。
  6. 1000℃以下の溶射法に適用される請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶射用粉末。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶射用粉末を溶射して溶射皮膜を形成する溶射皮膜の形成方法。
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