以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。なお、本明細書において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
一般式又は化学式(17−2−1)〜(17−2−3)、(17−3−1)〜(17−3−3)、(17−4)、(17−5)、(17−6)、(17−6−1)〜(17−6−3)、(17−7)〜(17−11)、(17−2a)〜(17−2d)、(17−3a)〜(17−3d)、(17−5a)、(17−6a)〜(17−6c)、(17−7a)〜(17−7b)、(17−8a)〜(17−8b)、(17−10a)〜(17−10f)及び(17−11a)〜(17−11g)で表される化合物を、各々、化合物(17−2−1)〜(17−2−3)、(17−3−1)〜(17−3−3)、(17−4)、(17−5)、(17−6)、(17−6−1)〜(17−6−3)、(17−7)〜(17−11)、(17−2a)〜(17−2d)、(17−3a)〜(17−3d)、(17−5a)、(17−6a)〜(17−6c)、(17−7a)〜(17−7b)、(17−8a)〜(17−8b)、(17−10a)〜(17−10f)及び(17−11a)〜(17−11g)と記載することがある。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基及び炭素原子数6以上14以下のアリール基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子は、例えば、フッ素(フルオロ基)、塩素(クロロ基)又は臭素(ブロモ基)である。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上6以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基又はオクチルオキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上6以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基又はフェナントリル基である。
<電子写真感光体>
本実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1を参照して、本実施形態に係る感光体1の構造について説明する。図1は、本実施形態に係る感光体1の構造を示す部分断面図である。図1(a)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとを含む。感光体1は、積層型電子写真感光体である。図1(a)に示すように、感光体1は、導電性基体2上に電荷発生層3aを備え、電荷発生層3aの上に電荷輸送層3bを備えてもよい。また、図1(b)に示すように、感光体1は、導電性基体2上に電荷輸送層3bを備え、電荷輸送層3bの上に電荷発生層3aを備えてもよい。
図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。また、図1(c)に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、中間層4(下引層)と、感光層3とを備えていてもよい。図1(c)に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。図1(c)に示すように、中間層4は、導電性基体2と電荷発生層3aとの間に設けられてもよい。中間層4は、例えば、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとの間に設けられてもよい。
感光層3上には、保護層(不図示)が設けられていてもよい。感光体1の耐摩耗性を向上させるためには、電荷輸送層3bは感光体1の最表面層として配置されることが好ましい。
電荷発生層3aの厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3bの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1を参照して、感光体1の構造について説明した。以下、感光体について、更に詳細に説明する。
<導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム又はインジウムが挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組合せとしては、例えば、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼又は真鍮等)が挙げられる。これらの導電性を有する材料の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚みは、導電性基体の形状に応じて、適宜選択することができる。
<感光層>
感光層は電荷発生層と電荷輸送層とを含む。電荷発生層は、電荷発生剤を含む。電荷発生層は、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)を含有してもよい。電荷輸送層は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含む。電荷発生層及び電荷輸送層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
電荷輸送層に含まれるバインダー樹脂の質量(MRESIN)に対する、電荷輸送層に含まれる正孔輸送剤の質量(MHTM)の比率(MHTM/MRESIN)は、0.45以上0.80以下である。比率(MHTM/MRESIN)が0.45未満であると、感光体の電気特性(特に感度特性)が低下する。比率(MHTM/MRESIN)が0.80超であると、感光体の耐摩耗性が低下する。
(電荷発生剤)
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤であれば、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンの例は、化学式(CGM−1)で表される。金属フタロシアニンの例は、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンである。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM−2)で表される。フタロシアニン顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されない。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、それぞれを、α型、β型又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。このような画像形成装置に備えられる感光体の電荷発生層には、電荷発生剤として、フタロシアニン顔料が含有されることが好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンが含有されることがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが含有されることが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが含有されることが一層好ましく、Y型チタニルフタロシアニンのみが含有されることが特に好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有しないことが好ましい。
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体の電荷発生層には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が含有されることが好ましい。
電荷発生剤の含有量は、電荷発生層に含有されるベース樹脂1質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。また、電荷発生剤の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(1)と記載することがある)を含む。電荷輸送層がバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(1)を含むことで、感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させることができる。
一般式(1)中、sは1以上100以下の数を表し、uは0以上99以下の数を表し、s+u=100である。X及びYは各々化学式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)、(1E)又は(1F)で表される二価の基を表し、X及びYは互いに異なっている。
ポリアリレート樹脂(1)は、一般式(1−1)で表される繰返し単位と、一般式(1−2)で表される繰返し単位とを有する。以下、一般式(1−1)及び(1−2)で表される繰返し単位を、各々、繰返し単位(1−1)及び(1−2)と記載することがある。
一般式(1−1)中のX及び一般式(1−2)中のYは、それぞれ一般式(1)中のX及びYと同義である。
一般式(1)中のsは、ポリアリレート樹脂(1)に含まれる繰り返し単位(1−1)の数n1-1と繰り返し単位(1−2)の数n1-2との和に対する、繰り返し単位(1−1)の数n1-1の百分率を表す。sは、計算式「s=100×n1-1/(n1-1+n1-2)」から求められる。
一般式(1)中のuは、ポリアリレート樹脂(1)に含まれる繰り返し単位(1−1)の数n1-1と繰り返し単位(1−2)の数n1-2との和に対する、繰り返し単位(1−2)の数n1-2の百分率を表す。sは、計算式「s=100×n1-2/(n1-1+n1-2)」から求められる。
一般式(1)中のs及びuの各々は、1本の分子鎖から得られる値ではなく、感光層に含有されるポリアリレート樹脂(1)の全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値である。s及びuの各々は、例えば、次の方法で測定される。プロトン核磁気共鳴分光計を用いて、ポリアリレート樹脂(1)の1H−NMRスペクトルを測定する。溶媒としてCDCl3を、内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いる。得られたポリアリレート樹脂(1)の1H−NMRスペクトルにおける繰り返し単位(1−1)に特徴的なピークと繰り返し単位(1−2)に特徴的なピークとの比率から、s及びuの各々を算出する。
ポリアリレート樹脂(1)における繰返し単位(1−1)及び(1−2)の配列は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂(1)は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体又はブロック共重合体であってもよい。ランダム共重合体は、繰返し単位(1−1)と、繰返し単位(1−2)とがランダムに配列した共重合体である。交互共重合体は、繰返し単位(1−1)と繰り返し単位(1−2)とが交互に配列した共重合体である。周期的共重合体は、1つ又は複数の繰返し単位(1−1)と、1つ又は複数の繰返し単位(1−2)とが周期的に配列した共重合体である。ブロック共重合体は、複数の繰返し単位(1−1)から形成されるブロックと、複数の繰返し単位(1−2)から形成されるブロックとが配列した共重合体である。
ポリアリレート樹脂(1)は、繰返し単位(1−1)及び(1−2)以外の繰返し単位を更に有していてもよい。ポリアリレート樹脂(1)に含まれる繰返し単位の総数に対する、繰返し単位(1−1)及び(1−2)の合計数の比率は、0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、1.00であることが更に好ましい。ポリアリレート樹脂(1)に含まれる繰返し単位の総数に対する、繰返し単位(1−1)及び(1−2)の合計数の比率が1.00である場合、ポリアリレート樹脂(1)は繰り返し単位(1−1)のみを有するか、繰り返し単位(1−1)及び(1−2)のみを有する。
一般式(1)中、X及びYは各々化学式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)又は(1E)で表される二価の基を表し、X及びYは互いに異なっていることが好ましい。
以下、一般式(1)中のuが0である場合について説明する。uが0であるとき、一般式(1)中のsは100を表し、s+u=100である。uが0であるときの一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂は、下記一般式(1’)で表される繰り返し単位を有するポリアリレート樹脂に相当する。一般式(1’)中のXは、一般式(1)中のXと同義である。一般式(1’)中のXの好適な例は、uが0であるときの一般式(1)中のXの好適な例と同じである。
uが0であるとき、感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させるためには、一般式(1)中のXが化学式(1B)又は(1A)で表される二価の基を表すことが好ましい。
以下、一般式(1)中のuが0でない場合について説明する。uが0でないとき、一般式(1)中のsは1以上99以下の数を表し、uは1以上99以下の数を表し、s+u=100であることが好ましい。uが0でないときの一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂は、下記一般式(1’’)で表されるポリアリレート樹脂であることが好ましい。
一般式(1’’)中、s1は1以上99以下の数を表し、u1は1以上99以下の数を表し、s1+u1=100である。一般式(1’’)中のX及びYは、一般式(1)中のX及びYと同義である。一般式(1’’)中のs1、u1、X及びYの好適な例は、各々、uが0でないときの一般式(1)中のs、u、X及びYの好適な例と同じである。
uが0でないとき、一般式(1)中のsは40以上60以下の数を表し、uは40以上60以下の数を表し、s+u=100であることが好ましい。uが0でないとき、一般式(1)中のsは45以上55以下の数を表し、uは45以上55以下の数を表し、s+u=100であることがより好ましい。uが0でないとき、一般式(1)中のsは50を表し、uは50を表し、s+u=100であることが特に好ましい。
uが0でないとき、感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させるためには、一般式(1)中のX及びYが次の通りであることが好ましい。
X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1C)で表される二価の基を表すか;
X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1A)で表される二価の基を表すか;
X及びYの一方が化学式(1C)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1A)で表される二価の基を表すか;
X及びYの一方が化学式(1B)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1A)で表される二価の基を表すか;又は
X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1E)で表される二価の基を表す。
uが0でないとき、感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させるためには、一般式(1)中のX及びYが次の通りであることがより好ましい。
X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1C)で表される二価の基を表すか;又は
X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1E)で表される二価の基を表す。
ポリアリレート樹脂(1)としては、例えば、化学式(R−1)〜(R−9)で表されるポリアリレート樹脂が挙げられる。以下、化学式(R−1)〜(R−9)で表されるポリアリレート樹脂を、各々、ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−9)と記載することがある。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、45000以上であることが更に好ましく、50000以上であることが特に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80000以下であることが好ましく、60000以下であることがより好ましく、55000以下であることが更に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が10000以上である場合、バインダー樹脂の耐摩耗性を高めることができ、電荷輸送層が摩耗しにくくなる。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量が80000以下である場合、電荷輸送層形成用の溶剤にバインダー樹脂が溶解し易くなり、感光層の形成が容易になる。
電荷輸送層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(1)のみを含んでいてもよい。或いは、電荷輸送層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(1)に加えて、ポリアリレート樹脂(1)以外の樹脂(その他の樹脂)を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(具体的には、ポリアリレート樹脂(1)以外のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂又はポリエステル樹脂)、熱硬化性樹脂(具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂又はその他架橋性の熱硬化性樹脂)、又は光硬化性樹脂(具体的には、エポキシ−アクリル酸系樹脂、又はウレタン−アクリル酸系共重合体)が挙げられる。その他の樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ポリアリレート樹脂(1)の製造方法)
ポリアリレート樹脂(1)の製造方法は、特に限定されない。一般式(1)中のuが0であるときのポリアリレート樹脂(1)の製造方法の例では、化学式(BP−1)で表される芳香族ジオールと、一般式(DC−X)で表される第一芳香族ジカルボン酸とを縮重合させて、ポリアリレート樹脂(1)を得る。一般式(1)中のuが0でないときのポリアリレート樹脂(1)の製造方法の例では、化学式(BP−1)で表される芳香族ジオールと、一般式(DC−X)で表される第一芳香族ジカルボン酸と、一般式(DC−Y)で表される第二芳香族ジカルボン酸とを縮重合させて、ポリアリレート樹脂(1)を得る。以下、化学式(BP−1)で表される芳香族ジオール、一般式(DC−X)で表される第一芳香族ジカルボン酸、及び一般式(DC−Y)で表される第二芳香族ジカルボン酸を、各々、化合物(BP−1)、(DC−X)及び(DC−Y)と記載することがある。
一般式(DC−X)中のX及び一般式(DC−Y)中のYは、それぞれ一般式(1)中のX及びYと同義である。
芳香族ジオールである化合物(BP−1)は、誘導体化して使用されてもよい。芳香族ジオールの誘導体の例は、芳香族ジアセテートである。芳香族ジカルボン酸である化合物(DC−X)及び(DC−Y)は、各々、誘導体化して使用されてもよい。芳香族ジカルボン酸の誘導体の例は、芳香族ジカルボン酸ジクロリド、芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸ジエチルエステル又は芳香族ジカルボン酸無水物である。芳香族ジカルボン酸ジクロリドは、2個の「−C(=O)−Cl」基を有する。芳香族ジカルボン酸ジクロリドに誘導体化される場合、化合物(DC−X)のジクロリド及び(DC−Y)のジクロリドは、各々、一般式(DC−X’)及び(DC−Y’)で表される。
一般式(DC−X’)中のX及び一般式(DC−Y’)中のYは、それぞれ一般式(1)中のX及びYと同義である。
化合物(BP−1)、(DC−X)及び(DC−Y)を縮重合させる方法は、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合又は界面重合等)を採用することができる。重縮合反応は、アルカリ及び触媒の存在下で進行させてもよい。触媒としては、例えば、第三級アンモニウム(より具体的には、トリアルキルアミン等)又は第四級アンモニウム塩(より具体的には、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等)が挙げられる。アルカリとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(より具体的には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等)、又はアルカリ土類金属の水酸化物(より具体的には、水酸化カルシウム等)が挙げられる。重縮合反応は、溶媒中及び不活性ガス雰囲気下で進行させてもよい。溶媒としては、例えば、水又はクロロホルムが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンが挙げられる。重縮合反応の反応時間は、2時間以上5時間以下であることが好ましい。重縮合反応の反応温度は、5℃以上25℃以下であることが好ましい。重縮合反応後にポリアリレート樹脂(1)は必要に応じて精製されてもよい。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
化合物(DC−X)の好適な例は、化学式(DC−1)〜(DC−6)で表される化合物である。以下、化学式(DC−1)〜(DC−6)で表される化合物を、各々、化合物(DC−1)〜(DC−6)と記載することがある。化合物(DC−Y)の好適な例は、化合物(DC−1)〜(DC−6)であり、且つ化合物(DC−X)とは異なる化合物である。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、一般式(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)で表される化合物を含む。以下、一般式(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)及び(17)で表される化合物を、各々、化合物(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)及び(17)と記載することがある。電荷輸送層が、ポリアリレート樹脂(1)と化合物(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)とを含むことで、感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させることができる。化合物(10)〜(17)の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。以下、化合物(10)〜(17)の各々について説明する。
(化合物(10))
化合物(10)は、下記一般式(10)で表される。
一般式(10)中、R101、R103、R104、R105、R106、R107及びR108は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。R102及びR109は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。b1及びb2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
一般式(10)中、R101〜R109が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はn−ブチル基が更に好ましい。
一般式(10)中、R101〜R109が表わす炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、エトキシ基が更に好ましい。
b1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR102は、互いに同一でも異なっていてもよい。b2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR109は、互いに同一でも異なっていてもよい。b1及びb2は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
一般式(10)中、R101及びR108は、水素原子を表すことが好ましい。R102及びR109は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。R103、R104、R105、R106及びR107は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。b1及びb2は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
化合物(10)の好適な例としては、化学式(HT−1)、(HT−2)、(HT−3)、(HT−4)又は(HT−5)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(HT−1)、(HT−2)、(HT−3)、(HT−4)又は(HT−5)と記載することがある)が挙げられる。
(化合物(11))
化合物(11)は、下記一般式(11)で表される。
一般式(11)中、R111及びR112は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を表す。R113、R114、R115、R116、R117及びR118は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を表す。d1及びd2は、各々独立に、0又は1を表す。d3、d4、d5及びd6は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。d7及びd8は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
一般式(11)中、R111〜R118が表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
一般式(11)中、d3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR113は、互いに同一でも異なっていてもよい。d4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR114は、互いに同一でも異なっていてもよい。d5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR115は、互いに同一でも異なっていてもよい。d6が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR116は、互いに同一でも異なっていてもよい。d7が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR117は、互いに同一でも異なっていてもよい。d8が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR118は、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(11)中、R111及びR112は、各々独立に、水素原子を表すことが好ましい。R113、R114、R115、R116、R117及びR118は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキルを表すことが好ましい。d1及びd2は、互いに同じであり、0又は1を表すことが好ましい。d3及びd5は、各々0を表すことが好ましい。d4及びd6は、互いに同じであり、0又は2を表すことが好ましい。d7及びd8は、各々、0を表すことが好ましい。
化合物(11)の好適な例としては、化学式(HT−7)、(HT−8)又は(HT−9)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(HT−7)、(HT−8)又は(HT−9)と記載することがある)が挙げられる。
(化合物(12))
化合物(12)は、下記一般式(12)で表される。
一般式(12)中、R121、R122、R123、R124、R125及びR126は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。e1、e2、e4及びe5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。e3及びe6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
一般式(12)中、R121〜R126が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
一般式(12)中、e1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR121は、互いに同一でも異なっていてもよい。e2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR122は、互いに同一でも異なっていてもよい。e3が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR123は、互いに同一でも異なっていてもよい。e4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR124は、互いに同一でも異なっていてもよい。e5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR125は、互いに同一でも異なっていてもよい。e6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR126は、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(12)中、e1、e2、e4及びe5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。e1及びe2の一方が0を表し他方が2を表し且つe4及びe5の一方が0を表し他方が2を表すか、或いはe1、e2、e4及びe5が各々1を表すことがより好ましい。e3及びe6は、各々、0を表すことが好ましい。
一般式(12)中、R121、R122、R123、R124、R125及びR126は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。e1、e2、e4及びe5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。e1及びe2の一方が0を表し他方が2を表し、且つe4及びe5の一方が0を表し他方が2を表すことがより好ましい。e3及びe6は、各々、0を表すことが好ましい。
化合物(12)の好適な例としては、化学式(HT−10)で表される化合物(以下、化合物(HT−10)と記載することがある)が挙げられる。
(化合物(13))
化合物(13)は、下記一般式(13)で表される。
一般式(13)中、Ar1は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェノキシ基及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群より選択される1つ以上の置換基を有していてもよいアリール基を表す。又は、Ar1は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェノキシ基及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群より選択される1つ以上の置換基を有していてもよい複素環基を表す。Ar2は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェノキシ基及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群より選択される1つ以上の置換基を有していてもよいアリール基を表す。
一般式(13)中、Ar1及びAr2が表すアリール基としては、炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。Ar1及びAr2が表すアリール基は、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。Ar1及びAr2が表すアリール基が有する置換基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェノキシ基及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群より選択される。Ar1が表すアリール基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ(好ましくは、1つ又は2つ)有するフェニル基であることが好ましく、メチル基及びエチル基で置換されたフェニル基であることがより好ましく、2−エチル−6−メチルフェニル基であることが特に好ましい。Ar2が表すアリール基は、フェニル基であることが好ましい。
一般式(13)中、Ar1が表す複素環基は、例えば、1つ以上(好ましくは1つ以上3つ以下)のヘテロ原子を含み、芳香性を有する5員又は6員の単環の複素環基;このような単環同士が縮合した複素環基;又は、このような単環と、5員又は6員の炭化水素環とが縮合した複素環基が挙げられる。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。複素環基の具体例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基又はベンズイミダゾリル基が挙げられる。Ar1が表す複素環基は、1つ以上の置換基で置換されてもよい。Ar1が表す複素環基が有する置換基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェノキシ基及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群より選択される。
一般式(13)中、Ar1は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ(好ましくは、1つ又は2つ)有するフェニル基を表すことが好ましい。Ar2は、各々、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ(好ましくは、1つ)有するフェニル基を表すことが好ましい。
化合物(13)の好適な例としては、化学式(HT−6)で表される化合物(以下、化合物(HT−6)と記載することがある)が挙げられる。
(化合物(14))
化合物(14)は、下記一般式(14)で表される。
一般式(14)中、R141及びR142は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す。R143は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。R144及びR145は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。g1及びg2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。g3は、0以上4以下の整数を表す。
一般式(14)中、R141及びR142は、各々、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。R144及びR145は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。
一般式(14)中、g1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR141は、互いに同一でも異なっていてもよい。g2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR142は、互いに同一でも異なっていてもよい。g3が2以上4以下の整数を表すとき、同一の芳香環に結合する複数のR143は、互いに同一でも異なっていてもよい。g1及びg2は、各々、1を表すことが好ましい。g3は、0を表すことが好ましい。
化合物(14)の好適な例としては、化学式(HT−11)で表される化合物(以下、化合物(HT−11)と記載することがある)が挙げられる。
(化合物(15))
化合物(15)は、下記一般式(15)で表される。
一般式(15)中、R151、R152、R153、R154及びR155は、各々独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。j1、j2、j3、j4及びj5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
一般式(15)中、R151、R152、R153、R154及びR155は、各々、メチル基を表すことが好ましい。
一般式(15)中、j1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR151は、互いに同一でも異なっていてもよい。j2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR152は、互いに同一でも異なっていてもよい。j3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR153は、互いに同一でも異なっていてもよい。j4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR154は、互いに同一でも異なっていてもよい。j5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR155は、互いに同一でも異なっていてもよい。j1、j2、j3、j4及びj5は、各々、0又は1を表すことが好ましい。
化合物(15)の好適な例としては、化学式(HT−12)又は(HT−13)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(HT−12)又は(HT−13)と記載することがある)が挙げられる。
(化合物(16))
化合物(16)は、下記一般式(16)で表される。
一般式(16)中、R161、R162、R163及びR164は、各々独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。k1、k2、k3及びk4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
一般式(16)中、R161、R162、R163及びR164は、各々、メチル基を表すことが好ましい。
一般式(16)中、k1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR161は、互いに同一でも異なっていてもよい。k2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR162は、互いに同一でも異なっていてもよい。k3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR163は、互いに同一でも異なっていてもよい。k4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR164は、互いに同一でも異なっていてもよい。k1、k2、k3及びk4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
化合物(16)の好適な例としては、化学式(HT−14)で表される化合物(以下、化合物(HT−14)と記載することがある)が挙げられる。
(化合物(17))
化合物(17)は、下記一般式(17)で表される。
一般式(17)中、R171、R172、R173、R174、R175、R176、R177、R178、R179及びR180は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。mは1以上3以下の整数を表す。nは0以上2以下の整数を表す。
電荷輸送層が化合物(17)とポリアリレート樹脂(1)とを含むことで、感光体の耐摩耗性を向上させつつ、感光体の電気特性を更に向上させることができる。その理由は以下のように推測される。化合物(17)は、2個の窒素原子を有する。2個の窒素原子の間には、共役結合が存在する。また、各窒素原子には、R176〜R180を有するフェニル基を含む基(共役基)が結合している。更に、各窒素原子には、R1〜R175を有するフェニル基を含む基(共役基)が結合している。化合物(17)がこのような構造を有することにより、化合物(17)の分子構造が適度に大きくなる。これにより、感光層中に存在する一方の化合物(17)のπ電子雲と他方の化合物(17)のπ電子雲との距離(ホッピング距離)が小さくなる傾向がある。その結果、化合物(17)の間での正孔の移動性が向上し、感光体の電気特性が向上すると考えられる。
一般式(17)のR171〜R180で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、ブチル基(特に好ましくはn−ブチル基)がより好ましい。一般式(17)のR171〜R180で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を有してもよい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(17)のR171〜R180で表される炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。一般式(17)のR171〜R180で表される炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を有してもよい。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(17)のR171〜R180で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上14以下の芳香族単環炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。一般式(17)のR171〜R180で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有してもよい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(17)中、mは1以上3以下の整数を表す。mは2又は3を表すことが好ましく、3を表すことがより好ましい。mが2又は3であると、化合物(17)の分子構造が適度に大きくなり、感光層中に存在する一の化合物(17)の電子雲と他の化合物(17)の電子雲との距離(ホッピング距離)が小さくなる傾向がある。その結果、化合物(17)の間での正孔の移動性が向上し、感光体の電気特性が向上すると考えられる。
一般式(17)中、nは0以上2以下の整数を表す。nは1を表すことが好ましい。nは2を表すことも好ましい。nが1又は2であると、化合物(17)の分子構造が適度に大きくなり、感光層中に存在する一の化合物(17)の電子雲と他の化合物(17)の電子雲との距離(ホッピング距離)が小さくなる傾向がある。その結果、化合物(17)の間での正孔の移動性が向上し、電気写真感光体の電気特性が向上すると考えられる。
感光体の電気特性を向上させるためには、一般式(17)中のR171、R172、R173、R174、R175、R176、R177、R178、R179、及びR180は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。
感光体の電気特性を向上させるためには、一般式(17)中のR171、R172、R173、R174、及びR175は、各々、水素原子を表すことがより好ましい。
感光体の電気特性を向上させるためには、一般式(17)中のR177、及びR179は、各々、水素原子を表すことがより好ましい。同様の理由から、特に好適な例として、一般式(17)中のR176、及びR180は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R177、R178、及びR179は、各々、水素原子を表すことが挙げられる。同様の理由から、特に好適な別の例として、一般式(17)中のR176、及びR178は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R177、R179、及びR180は、各々、水素原子を表すことが挙げられる。同様の理由から、特に好適な別の例として、一般式(17)中のR180は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R176、R177、R178、及びR179は、各々、水素原子を表すことが挙げられる。同様の理由から、特に好適な別の例として、一般式(17)中のR178は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R176、R177、R179、及びR180は、各々、水素原子を表すことが挙げられる。同様の理由から、特に好適な更に別の例として、一般式(17)中のR176は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、R177、R178、R179、及びR180は、各々、水素原子を表すことが挙げられる。
化合物(17)の好適な例としては、下記化学式(HT−15)〜(HT−21)で表される化合物が挙げられる。以下、化学式(HT−15)〜(HT−21)で表される化合物を、各々、化合物(HT−15)〜(HT−21)と記載することがある。
化合物(17)は、例えば、下記の反応式(r−1)〜(r−10)で表される反応に従って、又はこれに準ずる方法によって製造される。これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程が含まれてもよい。以下、反応式(r−1)〜(r−10)で表される反応を、各々、反応r−1〜r−10と記載することがある。
[化合物(17−7)の合成]
まず、化合物(17)の合成に使用される原料として、化合物(17−7)を合成する。化合物(17−7)は、反応r−1〜r−4に従って合成される。
反応式(r−1)〜(r−4)中、R171、R172、R173、R174、R175、及びnは、一般式(17)中のR171、R172、R173、R174、R175、及びnと同義である。Zは、ハロゲン原子を表す。
[反応r−1]
反応r−1では、化合物(17−2−1)(1当量)と亜リン酸トリエチル(1当量)とを反応させて、化合物(17−3−1)(1当量)を得る。
反応r−1では、1モルの化合物(17−2−1)に対して、亜リン酸トリエチルを1モル以上2.5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−2−1)に対して亜リン酸トリエチルを1モル以上添加すると、化合物(17−3−1)の収率が向上しやすい。一方、1モルの化合物(17−2−1)に対して亜リン酸トリエチルを2.5モル以下添加すると、反応後に未反応の亜リン酸トリエチルが残留し難く、化合物(17−3−1)の精製が容易となる。
反応r−1の反応温度は160℃以上200℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
[反応r−2]
化合物(17−3−1)(1当量)と化合物(17−4)(1当量)とを反応させて、化合物(17−5)(1当量)を得る。
反応r−2では、1モルの化合物(17−3−1)に対して、化合物(17−4)を1モル以上10モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−3−1)に対して化合物(17−4)を1モル以上添加すると、化合物(17−5)の収率を向上させ易い。1モルの化合物(17−3−1)に対して化合物(17−4)を10モル以下添加すると、未反応の化合物(17−4)が残留し難く、化合物(17−5)の精製が容易となる。
反応r−2は、塩基の存在下で行われてもよい。塩基としては、例えば、ナトリウムアルコキシド(具体的には、ナトリウムメトキシド、又はナトリウムエトキシド)、金属水素化物(具体的には、水素化ナトリウム、又は水素化カリウム)、又は金属塩(具体的には、n−ブチルリチウム)が挙げられる。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基の添加量は、1モルの化合物(17−3−1)に対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。塩基の添加量が1モルの化合物(17−3−1)に対して1モル以上であると、反応性を向上させ易い。一方、塩基の添加量が1モルの化合物(17−3−1)に対して2モル以下であると、反応の制御が容易となる。
反応r−2は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、又はジクロロエタン)、又は芳香族炭化水素(具体的には、ベンゼン、又はトルエン)が挙げられる。
反応r−2の反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上24時間以下であることが好ましい。
[反応r−3]
反応r−3では、化合物(17−2−2)(1当量)と亜リン酸トリエチル(1当量)とを反応させて、化合物(17−3−2)(1当量)を得る。
反応r−3では、1モルの化合物(17−2−2)に対して、亜リン酸トリエチルを1モル以上2.5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−2−2)に対して亜リン酸トリエチルを1モル以上添加すると、化合物(17−3−2)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(17−2−2)に対して亜リン酸トリエチルを2.5モル以下添加すると、反応後に未反応の亜リン酸トリエチルが残留し難く、化合物(17−3−2)の精製が容易となることがある。
反応r−3の反応温度は160℃以上200℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
[反応r−4]
反応r−4では、化合物(17−3−2)(1当量)と化合物(17−5)(1当量)とを反応させて、化合物(17−7)(1当量)を得る。
反応r−4では、1モルの化合物(17−3−2)に対して、化合物(17−5)を1モル以上2.5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−3−2)に対して化合物(17−5)を1モル以上添加すると、化合物(17−7)の収率を向上させ易い。1モルの化合物(17−3−2)に対して化合物(17−5)を2.5モル以下添加すると、未反応の化合物(17−5)が残留し難く、化合物(17−7)の精製が容易となる。
反応r−4は、塩基の存在下で行われてもよい。塩基は、例えば、反応r−2で使用される塩基と同様である。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基の添加量は、1モルの化合物(17−3−2)に対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。塩基の添加量が1モルの化合物(17−3−2)に対して1モル以上であると、反応性を向上させ易い。一方、塩基の添加量が1モルの化合物(17−3−2)に対して2モル以下であると、反応の制御が容易となる。
反応r−4は、溶媒中で行われてもよい。溶媒は、例えば、反応r−2で使用される溶媒と同様である。反応r−4の反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上24時間以下であることが好ましい。
[化合物(17−6)の合成]
次に、化合物(17)の合成に使用される原料として、化合物(17−6)を合成する。化合物(17−6)は、下記一般式(17−6)で表される。化合物(17−6)は、反応r−5、r−6及びr−7の何れかに従って合成される。
一般式(17−6)中、mは、一般式(17)中のmと同義である。Zはハロゲン原子を表す。一般式(17−6)中のmが1である化合物(17−6−1)は、反応r−5に従って合成される。一般式(17−6)中のmが2である化合物(17−6−2)は、反応r−6に従って合成される。一般式(17−6)中のmが3である化合物(17−6−3)は、反応r−7及びr−8に従って合成される。
反応式(r−5)〜(r−8)中、Zはハロゲン原子を表す。
[反応r−5]
反応r−5では、化合物(17−3−1)(1当量)と化合物(17−8)(1当量)とを反応させて、化合物(17−6−1)(1当量)を得る。
反応r−5では、1モルの化合物(17−3−1)に対して、化合物(17−8)を1モル以上2.5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−3−1)に対して化合物(17−8)を1モル以上添加すると、化合物(17−6−1)の収率を向上させ易い。1モルの化合物(17−3−1)に対して化合物(17−8)を2.5モル以下添加すると、未反応の化合物(17−8)が残留し難く、化合物(17−6−1)の精製が容易となることがある。
反応r−5は、塩基の存在下で行われてもよい。塩基は、例えば、反応r−2で使用される塩基と同様である。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基の添加量は、1モルの化合物(17−3−1)に対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。塩基の添加量が1モルの化合物(17−3−1)に対して1モル以上であると、反応性を向上させ易い。一方、塩基の添加量が1モルの化合物(17−3−1)に対して2モル以下であると、反応の制御が容易となる。
反応r−5は、溶媒中で行われてもよい。溶媒は、例えば、反応r−2で使用される溶媒と同様である。反応r−5の反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上24時間以下であることが好ましい。
[反応r−6]
反応r−6では、化合物(17−3−1)(1当量)と化合物(17−9)(1当量)とを反応させて、化合物(17−6−2)(1当量)を得る。反応r−6は、例えば、反応r−5における化合物(17−8)を化合物(17−9)に変更する以外は、反応r−5と同様の方法で行われる。
[反応r−7]
反応r−7では、化合物(17−2−3)(1当量)と亜リン酸トリエチル(2当量)とを反応させて、化合物(17−3−3)(1当量)を得る。
反応r−7では、1モルの化合物(17−2−3)に対して、亜リン酸トリエチルを2モル以上5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−2−3)のモル数に対して亜リン酸トリエチルを2モル以上添加すると、化合物(17−3−3)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(17−2−3)に対して亜リン酸トリエチルを5モル以下添加すると、反応後に未反応の亜リン酸トリエチルが残留し難く、化合物(17−3−3)の精製が容易となることがある。
反応r−7の反応温度は160℃以上200℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
[反応r−8]
反応r−8では、化合物(17−3−3)(1当量)と化合物(17−8)(2当量)とを反応させて、化合物(17−6−3)(1当量)を得る。
反応r−8では、1モルの化合物(17−3−3)に対して、化合物(17−8)を2モル以上5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−3−3)に対して化合物(17−8)を2モル以上添加すると、化合物(17−6−3)の収率を向上させ易い。1モルの化合物(17−3−3)に対して化合物(17−8)を5モル以下添加すると、未反応の化合物(17−8)が残留し難く、化合物(17−6−3)の精製が容易となることがある。
反応r−8は、塩基の存在下で行われてもよい。塩基は、例えば、反応r−2で使用される塩基と同様である。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基の添加量は、1モルの化合物(17−8)に対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。塩基の添加量が1モルの化合物(17−8)に対して1モル以上であると、反応性を向上させ易い。一方、塩基の添加量が1モルの化合物(17−8)に対して2モル以下であると、反応の制御が容易となる。
反応r−8は、溶媒中で行われてもよい。溶媒は、例えば、反応r−2で使用される溶媒と同様である。反応r−8の反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上24時間以下であることが好ましい。
[化合物(17)の合成]
次に、合成した化合物(17−7)と化合物(17−6)とを用いて、化合物(17)を合成する。化合物(17)は、反応r−9、及びr−10に従って合成される。
[反応r−9]
反応r−9では、化合物(17−10)(1当量)と化合物(17−7)(1当量)とを反応させて、化合物(17−11)(1当量)を得る。
反応r−9では、1モルの化合物(17−10)に対して、化合物(17−7)を1モル以上5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−10)に対して化合物(17−7)を1モル以上添加すると、化合物(17−11)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(17−10)に対して化合物(17−7)を5モル以下添加すると、反応後に未反応の化合物(17−7)が残留し難く、化合物(17−11)の精製が容易となる。
反応r−9の反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応r−9では、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。パラジウム化合物を用いることにより、反応r−9における活性化エネルギーが低下する傾向がある。その結果、化合物(17−11)の収率を向上できると考えられる。パラジウム化合物としては、例えば、四価パラジウム化合物、二価パラジウム化合物、又はその他のパラジウム化合物が挙げられる。四価パラジウム化合物としては、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、又はヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物が挙げられる。二価パラジウム化合物としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)、又はジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)が挙げられる。その他のパラジウム化合物としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)、又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。パラジウム化合物の添加量は、1モルの化合物(17−10)に対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
パラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応r−5の反応性を向上させ易い。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、又は2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテルが挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、1モルの化合物(17−10)に対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
反応r−9は、塩基の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応系中で発生するハロゲン化水素(例えば、塩化水素)をすみやかに中和し、触媒活性を向上できると考えられる。その結果、化合物(17−11)の収率を向上できると考えられる。塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基としては、例えば、アルカリ金属アルコシド(具体的には、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、又はカリウムtert−ブトキシド)が好ましく、ナトリウムtert−ブトキシドがより好ましい。無機塩基としては、例えば、リン酸三カリウム、又はフッ化セシウムが挙げられる。1モルの化合物(17−10)に対して、パラジウム化合物を0.0005モル以上20モル以下添加する場合、塩基の添加量は、1モル以上50モル以下であることが好ましく、1モル以上30モル以下であることがより好ましい。
反応r−9は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、キシレン(具体的には、o−キシレン)、トルエン、テトラヒドロフラン、又はジメチルホルムアミドが挙げられる。
[反応r−10]
反応r−10では、化合物(17−11)(2当量)と化合物(17−6)(1当量)とを反応させて、化合物(17)(1当量)を得る。
反応r−10では、1モルの化合物(17−11)に対して、化合物(17−6)を0.5モル以上2.5モル以下添加することが好ましい。1モルの化合物(17−11)に対して化合物(17−6)を0.5モル以上添加すると、化合物(17)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(17−11)に対して化合物(17−6)を2.5モル以下添加すると、反応後に未反応の化合物(17−6)が残留し難く、化合物(17)の精製が容易となる。
反応r−10の反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応r−10には、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。パラジウム化合物を用いることにより、反応r−10における活性化エネルギーが低下する傾向がある。その結果、化合物(17)の収率を向上できると考えられる。パラジウム化合物は、例えば、反応r−9で使用されるパラジウム化合物と同様である。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。パラジウム化合物の添加量は、1モルの化合物(17−11)に対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
パラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応r−10の反応性を向上できると考えられる。配位子は、例えば、反応r−9で使用される配位子と同様である。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、1モルの化合物(17−11)に対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
反応r−10は、塩基の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応系中で発生するハロゲン化水素(例えば、塩化水素)をすみやかに中和し、触媒活性を向上できると考えられる。その結果、化合物(17)の収率を向上できると考えられる。塩基は、例えば、反応r−9で使用される塩基と同様である。1モルの化合物(17−11)に対して、パラジウム化合物を0.0005モル以上20モル以下添加する場合、塩基の添加量は、1モル以上10モル以下であることが好ましく、1モル以上5モル以下であることがより好ましい。
反応r−10は、溶媒中で行うことができる。溶媒は、例えば、反応r−9で使用される溶媒と同様である。以上、化合物(10)〜(17)について説明した。なお、化合物(10)〜(16)の各々は、公知の方法により得ることができる。
感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させるためには、化合物(10)〜(17)のうちの化合物(11)、(13)、(14)、(16)又は(17)を、正孔輸送剤として電荷輸送層が含むことが好ましい。同じ理由から、化合物(10)〜(17)のうちの化合物(13)、(14)、(16)又は(17)を、正孔輸送剤として電荷輸送層が含むことがより好ましい。同じ理由から、化合物(10)〜(17)のうちの化合物(17)を正孔輸送剤として電荷輸送層が含むことが更に好ましい。
感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させるためには、電荷輸送層が、化合物(17)を正孔輸送剤として含み、一般式(1)中のuが0ではなく、X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1C)で表される二価の基を表すポリアリレート樹脂(1)をバインダー樹脂として含むことが好ましい。一般式(1)中のuが0ではなく、X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1C)で表される二価の基を表すポリアリレート樹脂(1)としては、ポリアリレート樹脂(R−3)が好ましい。
感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させるためには、電荷輸送層が、化合物(17)を正孔輸送剤として含み、一般式(1)中のuが0ではなく、X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1E)で表される二価の基を表すポリアリレート樹脂(1)をバインダー樹脂として含むことが好ましい。一般式(1)中のuが0ではなく、X及びYの一方が化学式(1D)で表される二価の基を表し、X及びYの他方が化学式(1E)で表される二価の基を表すポリアリレート樹脂(1)としては、ポリアリレート樹脂(R−7)が好ましい。
電荷輸送層は、化合物(10)〜(17)に加えて、化合物(10)〜(17)以外の正孔輸送剤(その他の正孔輸送剤)を含有していてもよい。その他の正孔輸送剤としては、例えば、化合物(10)〜(17)以外の、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。その他の正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
化合物(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)の含有量は、正孔輸送剤の質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。正孔輸送剤の質量に対する化合物(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)の含有量100質量%であるとき、電荷輸送層は、正孔輸送剤として、化合物(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)のみを含有する。
(ベース樹脂)
ベース樹脂は、感光体に適用できる限り、特に限定されない。ベース樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル酸系樹脂又はウレタン−アクリル酸系樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷発生層に含有されるベース樹脂は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂とは異なることが好ましい。積層型感光体の製造では、例えば、導電性基体上に電荷発生層が形成され、電荷発生層上に電荷輸送層が形成される。その際に、電荷発生層上に、電荷輸送層用塗布液が塗布される。そのため、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
(添加剤)
添加剤としては、例えば、電子アクセプター化合物、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤又は紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤又はレベリング剤が挙げられる。本実施形態に係る感光体では、感光層はフィラー粒子(例えば無機粒子、より具体的にはシリカ粒子又はアルミナ粒子等)を含まないことが好ましい。感光層がフィラー粒子を含まない場合であっても、本実施形態に係る感光体によれば、感光体の電気特性及び耐摩耗性を向上させることができる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物又はホスファイト化合物が挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール化合物及びヒンダードアミン化合物が好ましい。
<中間層>
中間層は、例えば、無機粒子、及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層を介在させると、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、電気抵抗の上昇を抑えることができる。
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄又は銅等)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛等)の粒子、又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、無機粒子は、表面処理を施してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、添加剤を含有してもよい。添加剤の例は、感光層の添加剤の例と同じである。
<感光体の製造方法>
感光体の製造方法は感光層形成工程を含む。感光層形成工程は、電荷発生層形成工程と電荷輸送層形成工程とを含む。電荷発生層形成工程では、まず、電荷発生層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液は、電荷発生層を形成するための塗布液である。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した電荷発生層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷発生層を形成する。電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、溶剤と、必要に応じて添加される成分(例えば、ベース樹脂又は添加剤)を含む。このような電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及び必要に応じて添加される成分を溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
電荷輸送層形成工程では、まず、電荷輸送層用塗布液を調製する。電荷輸送層用塗布液は、電荷輸送層を形成するための塗布液である。電荷輸送層用塗布液を電荷発生層の上に塗布する。次いで、塗布した電荷輸送層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷輸送層を形成する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤としての化合物(10)〜(17)と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(1)と、溶剤とを少なくとも含む。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。電荷輸送層用塗布液には、必要に応じて添加剤を加えてもよい。
電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できれば、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、トルエン、ジオキサン(好ましくは1,4−ジオキサン)、テトラヒドロフラン及びキシレン(好ましくはo−キシレン)のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。このような溶剤に対して、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(1)、及び正孔輸送剤としての化合物(10)〜(17)は良好に分散する。このため、ポリアリレート樹脂(1)及び化合物(10)〜(17)が均一に分散した電荷輸送層用塗布液を調製し易い。このような電荷輸送層用塗布液を用いて電荷輸送層を形成すると、ポリアリレート樹脂(1)及び化合物(10)〜(17)が均一に分散した電荷輸送層が形成され易い。電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤は、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及びo−キシレンのうちの1種又は2種であることが好ましく、2種であることがより好ましい。2種の溶剤を使用する場合、このような溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶剤、テトラヒドロフランと1,4−ジオキサンとの混合溶剤、又はテトラヒドロフランとo−キシレンとの混合溶剤が挙げられる。
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及びo−キシレン以外の溶剤(以下、その他の溶剤と記載する)を更に含んでいてもよい。電荷輸送層用塗布液に含まれるその他溶剤の例は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤の例と同じである。電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及びo−キシレンのうちの1種以上のみを含むこと好ましい。
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布する場合に、電荷発生層が電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散器を用いることができる。
各成分の分散性又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、塗布液は、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に有してもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
感光体の電荷発生層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤を準備した。また、感光体の電荷輸送層を形成するための材料として、以下の正孔輸送剤及びバインダー樹脂を準備した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べた化学式(CGM−2)で表されるY型チタニルフタロシアニンを準備した。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(HT−15)〜(HT−21)の各々を、以下の方法で合成した。合成した化合物(HT−15)〜(HT−21)のうち、化合物(HT−15)を、感光体の電荷輸送層を形成するために使用した。また、正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(HT−1)〜(HT−14)も準備した。
[化合物(17−3a)、(17−3b)、(17−3c)、及び(17−3d)の合成]
まず、後述する化合物(17−6a)、(17−6b)、(17−6c)、(17−7a)、及び(17−7b)の合成で使用する原料として、化合物(17−3a)、(17−3b)、(17−3c)、及び(17−3d)を合成した。化合物(17−3a)、(17−3b)、(17−3c)、及び(17−3d)は、各々、下記の反応式(r−11)、(r−12)、(r−13)、及び(r−14)で表される反応に従って合成した。以下、反応式(r−11)〜(r−14)で表される反応を、各々、反応r−11〜r−14と記載することがある。
反応r−11では、化合物(17−2a)と亜リン酸トリエチルとを反応させて、化合物(17−3a)を得た。詳しくは、容量200mLのフラスコに、化合物(17−2a)(16.1g、0.10モル)と、亜リン酸トリエチル(25.0g、0.15モル)とを投入した。フラスコ内容物を、180℃で8時間攪拌した後、室温まで冷却した。続いて、フラスコ内容物に含まれる未反応の亜リン酸トリエチルを減圧留去した。これにより、白色液体である化合物(17−3a)を得た(収量24.1g、収率92mol%)。
反応r−12では、化合物(17−2b)と亜リン酸トリエチルとを反応させて、化合物(17−3b)を得た。反応r−12は、以下の点を変更した以外は、反応r−11と同様の方法で行った。反応r−11における化合物(17−2a)(16.1g、0.10モル)を、化合物(17−2b)(15.2g、0.10モル)に変更した。その結果、化合物(17−3b)が得られた(収量23.5g、収率92mol%)。
反応r−13では、化合物(17−2c)と亜リン酸トリエチルとを反応させて、化合物(17−3c)を得た。反応r−13は、以下の点を変更した以外は、反応r−11と同様の方法で行った。反応r−11における化合物(17−2a)(16.1g、0.10モル)を、化合物(17−2c)(12.7g、0.10モル)に変更した。その結果、化合物(17−3c)が得られた(収量21.3g、収率93mol%)。
反応r−14では、化合物(17−2d)と亜リン酸トリエチルとを反応させて、化合物(17−3d)を得た。反応r−14は、以下の点を変更した以外は、反応r−11と同様の方法で行った。反応r−11における化合物(17−2a)(16.1g、0.10モル)を、化合物(17−2d)(10.7g、0.05モル)に変更した。その結果、化合物(17−3d)が得られた(収量14.5g、収率88mol%)。
[化合物(17−6a)、(17−6b)、及び(17−6c)の合成]
次に、後述する化合物(HT−15)〜(HT−21)の合成で使用する原料として、化合物(17−6a)、(17−6b)、及び(17−6c)を合成した。化合物(17−6a)、(17−6b)、及び(17−6c)は、各々、下記の反応式(r−15)、(r−16)、及び(r−17)で表される反応に従って合成した。以下、反応式(r−15)〜(r−17)で表される反応を、各々、反応r−15〜r−17と記載することがある。
反応r−15では、化合物(17−3a)と化合物(17−8b)とを反応させて、化合物(17−6a)を得た。詳しくは、反応r−11で得られた化合物(17−3a)(13.1g、0.05モル)を、容量500mLの二口フラスコに0℃で加えた。フラスコ内の空気を、アルゴンガスで置換した。続いて、フラスコ内に、乾燥テトラヒドロフラン(100mL)、及び28%ナトリウムメトキシド(9.3g、0.05モル)を添加した。フラスコ内容物を30分間攪拌した。続いて、フラスコ内に、化合物(17−8b)(8.4g、0.05モル)の乾燥テトラヒドロフラン(300mL)溶液を添加した。フラスコ内容物を、室温で12時間攪拌した。フラスコ内容物を、イオン交換水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られた有機層を、イオン交換水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。続いて、有機層に含有される溶媒を留去し、残渣を得た。得られた残渣を、トルエン/メタノール(20mL/100mL)を用いて精製した。これにより、白色結晶である化合物(17−6a)を得た(収量9.6g、収率69mol%)。
反応r−16では、化合物(17−3d)と化合物(17−8a)とを反応させて、化合物(17−6b)を得た。反応r−16は、以下の点を変更した以外は、反応r−15と同様の方法で行った。反応r−15における化合物(17−3a)(13.1g、0.05モル)を、化合物(17−3d)(8.2g、0.025モル)に変更した。反応r−15における化合物(17−8b)(8.4g、0.05モル)を、化合物(17−8a)(7.03g、0.05モル)に変更した。その結果、化合物(17−6b)が得られた(収量3.8g、収率25mol%)。
反応r−17では、化合物(17−3a)と化合物(17−8a)とを反応させて、化合物(17−6c)を得た。反応r−17は、以下の点を変更した以外は、反応r−15と同様の方法で行った。反応r−15における化合物(17−8b)(8.4g、0.05モル)を、化合物(17−8a)(7.03g、0.05モル)に変更した。その結果、化合物(17−6c)が得られた(収量9.4g、収率75mol%)。
[化合物(17−7a)、及び(17−7b)の合成]
次に、後述する化合物(HT−15)〜(HT−21)の合成で使用する原料として、化合物(17−7a)、及び(17−7b)を合成した。化合物(17−7a)は、下記の反応式(r−18)及び(r−19)で表される反応に従って合成した。化合物(17−7b)は、下記の反応式(r−18)及び(r−20)で表される反応に従って合成した。以下、反応式(r−18)〜(r−20)で表される反応を、各々、反応r−18〜r−20と記載することがある。
反応r−18では、化合物(17−3a)と化合物(17−4)とを反応させて、化合物(17−5a)を得た。詳しくは、反応r−11で得られた化合物(17−3a)(13.0g、0.05モル)を、容量500mLの二口フラスコに0℃で加えた。フラスコ内の空気を、アルゴンガスで置換した。続いて、フラスコ内に、乾燥テトラヒドロフラン(100mL)、及び化合物(17−4)(35.0g、0.26モル)の乾燥テトラヒドロフラン(300mL)溶液を添加した。フラスコ内容物を30分間攪拌した。続いて、フラスコ内に、28%ナトリウムメトキシド(9.3g、0.05モル)を添加した。フラスコ内容物を、室温で12時間攪拌した。フラスコ内容物を、イオン交換水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られた有機層を、イオン交換水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。続いて、有機層に含有される溶媒を留去し、残渣を得た。得られた残渣を、トルエン/メタノール(20mL/100mL)を用いて精製した。これにより、白色結晶である化合物(17−5a)を得た(収量3.6g、収率30mol%)。
反応r−19では、化合物(17−3c)と化合物(17−5a)とを反応させて、化合物(17−7a)を得た。詳しくは、反応r−13で得られた化合物(17−3c)(11.4g、0.05モル)を、容量500mLの二口フラスコに0℃で加えた。フラスコ内の空気を、アルゴンガスで置換した。続いて、フラスコ内に、乾燥テトラヒドロフラン(100mL)、及び28%ナトリウムメトキシド(9.3g、0.05モル)を添加した。フラスコ内容物を30分間攪拌した。続いて、フラスコ内に、反応r−18で得られた化合物(17−5a)(12.2g、0.05モル)の乾燥テトラヒドロフラン(300mL)溶液を添加した。フラスコ内容物を、室温で12時間攪拌した。フラスコ内容物を、イオン交換水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られた有機層を、イオン交換水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。続いて、有機層に含有される溶媒を留去し、残渣を得た。得られた残渣を、トルエン/メタノール(20mL/100mL)を用いて精製した。これにより、白色結晶である化合物(17−7a)を得た(収量14.0g、収率88mol%)。
反応r−20では、化合物(17−3b)と化合物(17−5a)とを反応させて、化合物(17−7b)を得た。反応r−20は、以下の点を変更した以外は、反応r−19と同様の方法で行った。反応r−19における化合物(17−3c)(11.4g、0.050モル)を、化合物(17−3b)(12.8g、0.050モル)に変更した。その結果、化合物(17−7b)が得られた(収量15.3g、収率89mol%)。
[化合物(HT−15)の合成]
次に、下記の反応式(r−21)及び(r−22)で表される反応に従って、化合物(HT−15)を合成した。以下、反応式(r−21)及び(r−22)で表される反応を、各々、反応r−21及びr−22と記載することがある。
反応r−21では、化合物(17−10a)と化合物(17−7a)とを反応させて、化合物(17−11a)を得た。詳しくは、三口フラスコに、化合物(17−7a)(6.2g、0.020モル、表1中の第二原料)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.068g、0.000196モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.045g、4.89×10-5モル)、ナトリウムtert−ブトキシド(2.0g、0.021モル)、化合物(17−10a)(2.7g、0.020モル、表1中の第一原料)、及び蒸留したо−キシレン(100mL)を投入した。フラスコ内の空気を、アルゴンガスで置換した。続いて、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌した後、室温まで冷却した。フラスコ内容物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。続いて、乾燥処理及び吸着処理後の有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。これにより、残渣を得た。得られた残渣を、クロロホルム/ヘキサン(体積比1:1)を用いて晶析した。これにより、化合物(17−11a)を得た(収量5.7g、収率70mol%)。
次に、反応r−22では、化合物(17−11a)と化合物(17−6b)とを反応させて、化合物(HT−15)を得た。詳しくは、三口フラスコに、反応r−16で得られた化合物(17−6b)(1.5g、0.005モル、表2中の第二原料)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.035g、9.97×10-5モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.046g、4.98×10-5モル)、ナトリウムtert−ブトキシド(1.0g、0.010モル)、反応r−21で得られた化合物(17−11a)(4.0g、0.010モル、表2中の第一原料)、及び蒸留したо−キシレン(200mL)を投入した。フラスコ内の空気を、アルゴンガスで置換した。続いて、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌した後、室温まで冷却した。フラスコ内容物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。続いて、乾燥処理及び吸着処理後の有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。これにより、残渣を得た。得られた残渣を、展開溶媒としてクロロホルム/ヘキサン(体積比1:1)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、化合物(HT−15)を得た(収量2.8g、収率53mol%)。
[化合物(HT−16)〜(HT−21)の合成]
以下の点を変更した以外は、化合物(HT−15)の合成と同様の方法で、化合物(HT−16)〜(HT−21)を各々合成した。なお、化合物(HT−16)〜(HT−21)の合成において使用される各原料は、化合物(HT−15)の合成において使用される対応する原料のモル数と同じモル数で添加した。
反応r−21で使用する第一原料を、化合物(HT−15)の合成における化合物(17−10a)から、表1に示す第一原料(化合物(17−10a)、(17−10b)、(17−10c)、(17−10d)、(17−10e)及び(17−10f)の何れか)に変更した。反応r−21で使用する第二原料を、化合物(HT−15)の合成における化合物(17−7a)から、表1に示す第二原料(化合物(17−7a)及び(17−7b)の何れか)に変更した。その結果、反応r−21では、化合物(17−11a)の代わりに、表1に示す反応生成物(化合物(17−11a)、(17−11b)、(17−11c)、(17−11d)、(17−11e)、(17−11f)及び(17−11g)の何れか)が得られた。反応r−21で得られた各反応生成物の収量及び収率を、表1に示す。
反応r−22で使用する第一原料を、化合物(HT−15)の合成における化合物(17−11a)から、表2に示す第一原料(化合物(17−11a)、(17−11b)、(17−11c)、(17−11d)、(17−11e)、(17−11f)及び(17−11g)の何れか)に変更した。また、反応r−22で使用する第二原料を、化合物(HT−15)の合成における化合物(17−6b)から、表2に示す第二原料(化合物(17−6a)、(17−6b)、又は(17−6c))に変更した。その結果、反応r−22では、化合物(HT−15)の代わりに、化合物(HT−16)〜(HT−21)が得られた。反応r−22で得られた化合物(HT−16)〜(HT−21)の収量及び収率を、表2に示す。
表1及び表2中、化合物(17−10a)〜(17−10f)、及び(17−11a)〜(17−11g)は、各々、下記化学式(17−10a)〜(17−10f)、及び(17−11a)〜(17−11g)で表される。表1及び表2中、化合物(17−7a)〜(17−7b)、及び(17−6b)〜(17−6c)は、上述の反応で得られた化合物である。
次に、合成した化合物(HT−17)及び(HT−20)を、各々、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光計)を用いて分析した。磁場強度は300MHzに設定した。溶媒として、重水素化クロロホルム(CDCl3)を使用した。内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。測定された化合物(HT−17)の1H−NMRスペクトルを図2に、化学シフト値を以下に示す。測定された化合物(HT−20)の1H−NMRスペクトルを図3に、化学シフト値を以下に示す。図2及び図3の横軸は化学シフト(単位:ppm)を示し、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示す。
化合物(HT−17):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ 0.9(t,6H),1.37(q,4H),1.59(q,4H),2.58(q,4H),6.5−6.7(m,6H),6.8−7.2(m,30H),7.2−7.5(m,18H).
化合物(HT−20):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ 2.0(s,6H),6.6−6.7(m,6H),6.8−7.1(m,16H),7.2−7.5(m,30H).
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、化合物(HT−17)及び(HT−20)が得られていることを確認した。他の化合物(HT−15)、(HT−16)、(HT−18)、(HT−19)及び(HT−21)についても同じように、1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、それぞれ化合物(HT−15)、(HT−16)、(HT−18)、(HT−19)及び(HT−21)が得られていることを確認した。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−7)の各々を作製した。
[ポリアリレート樹脂(R−3)の作製]
三口フラスコを反応容器として用いた。この三口フラスコは、温度計、三方コック及び容量200mLの滴下ロートを備えていた。反応容器に1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(実施形態で述べた化合物(BP−1))24.52g(82.56ミリモル)と、tert−ブチルフェノール0.124g(0.826ミリモル)と、水酸化ナトリウム7.84g(196ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.240g(0.768ミリモル)とを投入した。次いで、反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水600mLを加えた。反応容器の内容物を20℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
一方、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロリド(実施形態で述べた化合物(DC−3)のジクロリド)9.41g(38.9ミリモル)とナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロリド(実施形態で述べた化合物(DC−4)のジクロリド)8.40g(38.9ミリモル)とをクロロホルム300gに溶解させて、クロロホルム溶液Bを得た。
次いで、アルカリ性水溶液Aを10℃で攪拌しながら、アルカリ性水溶液Aにクロロホルム溶液Bを投入した。これにより、重合反応を開始させた。反応容器の内容物の温度(液温)を13±3℃に調節しながら、反応容器の内容物を3時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量2Lの三角フラスコに、イオン交換水500mLを入れた。フラスコ内容物に、得られた有機層を加えた。フラスコ内容物に、クロロホルム300g及び酢酸6mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。その後、デカントを用いてフラスコ内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水500mLで洗浄した。イオン交換水による洗浄を8回繰り返した。その結果、水洗した有機層が得られた。水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーに1.5Lのメタノールを投入した。メタノールを攪拌した状態で、ろ液(有機層)をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。得られた沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂(R−3)が得られた。得られたポリアリレート樹脂(R−3)の粘度平均分子量は、51,000であった。
[ポリアリレート樹脂(R−1)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−1)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−2)のジクロリド77.8ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−1)の粘度平均分子量は、50,500であった。
[ポリアリレート樹脂(R−2)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−2)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−1)のジクロリド77.8ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−2)の粘度平均分子量は、50,500であった。
[ポリアリレート樹脂(R−4)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−4)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−1)のジクロリド38.9ミリモル及び化合物(DC−4)のジクロリド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−4)の粘度平均分子量は、52,000であった。
[ポリアリレート樹脂(R−5)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−5)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−3)のジクロリド38.9ミリモル及び化合物(DC−1)のジクロリド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−5)の粘度平均分子量は、54,000であった。
[ポリアリレート樹脂(R−6)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−6)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−2)のジクロリド38.9ミリモル及び化合物(DC−1)のジクロリド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−6)の粘度平均分子量は、52,500であった。
[ポリアリレート樹脂(R−7)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−7)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−4)のジクロリド38.9ミリモル及び化合物(DC−5)のジクロリド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−7)の粘度平均分子量は、51,000であった。
[ポリアリレート樹脂(R−8)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−7)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−3)のジクロリド31.1ミリモル及び化合物(DC−4)のジクロリド46.7ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−8)の粘度平均分子量は、50,500であった。
[ポリアリレート樹脂(R−9)の作製]
次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−3)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R−7)を作製した。化合物(DC−3)のジクロリド9.41g(38.9ミリモル)及び化合物(DC−4)のジクロリド8.40g(38.9ミリモル)を、化合物(DC−4)のジクロリド46.7ミリモル及び化合物(DC−5)のジクロリド31.1ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R−9)の粘度平均分子量は、51,500であった。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、作製したポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−9)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうちポリアリレート樹脂(R−3)、(R−4)及び(R−5)を代表例として挙げる。図4は、ポリアリレート樹脂(R−3)の1H−NMRスペクトルを示す。図5は、ポリアリレート樹脂(R−4)の1H−NMRスペクトルを示す。図6は、ポリアリレート樹脂(R−5)の1H−NMRスペクトルを示す。図4〜図6の横軸は化学シフト(単位:ppm)を示し、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示す。
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、ポリアリレート樹脂(R−3)、(R−4)及び(R−5)が得られていることを確認した。他のポリアリレート樹脂(R−1)、(R−2)及び(R−6)〜(R−9)についても同じように、1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、それぞれポリアリレート樹脂(R−1)、(R−2)及び(R−6)〜(R−9)が得られていることを確認した。
ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−9)に加えて、化学式(R−B1)〜(R−B4)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれをポリアリレート樹脂(R−B1)〜(R−B4)と記載することがある)も準備した。化学式(R−B1)〜(R−B4)中の繰り返し単位に付された添え字は、各々、樹脂に含まれる繰り返し単位の総数に対する、添え字が付された繰り返し単位の数の百分率を示す。ポリアリレート樹脂(R−B1)〜(R−B4)の粘度平均分子量は、各々、50,500、52,500、51,500及び51,000であった。
<感光体の製造>
上述した電荷発生剤、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を用いて、感光体(A−1)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)を製造した。
(感光体(A−1)の製造)
まず、中間層を形成した。表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−A」、数平均一次粒径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて更に表面処理したものを準備した。次いで、表面処理された酸化チタン(2質量部)と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)(1質量部)とを、メタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)及びトルエン(1質量部)を含む溶剤に対して添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を得た。得られた中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法を用いて、導電性基体の表面に中間層用塗布液を塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)を用いた。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚2μm)を形成した。
次に、電荷発生層を形成した。詳しくは、電荷発生剤としてのY型チタニルフタロシアニン(1.5質量部)と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX−5」)(1質量部)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)及びテトラヒドロフラン(40質量部)を含む溶剤に添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を2時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。次いで、得られたろ過液を、中間層上にディップコート法を用いて塗布し、50℃で5分間乾燥させた。これにより、中間層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
次に、電荷輸送層を形成した。詳しくは、正孔輸送剤としての化合物(HT−1)75質量部と、添加剤としてのヒンダードフェノール酸化防止剤(BASF株式会社製「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5質量部と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(R−1)100質量部とを、溶剤700質量部に対して添加した。溶剤は、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶剤(質量比率:テトラヒドロフラン/トルエン=8/2)であった。これらを混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上にディップコート法を用いて塗布し、120℃で40分間乾燥させた。これにより、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚20μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。感光体(A−1)は、積層型電子写真感光体であった。感光体(A−1)において、導電性基体上に中間層が、中間層上に電荷発生層が、電荷発生層上に電荷輸送層が備えられていた。
(感光体(A−2)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)の製造)
下記(1)〜(4)の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同じ方法で、感光体(A−2)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)の各々を製造した。
(1)感光体(A−1)の製造においてはバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(R−1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表3及び表4に示す種類のバインダー樹脂を使用した。
(2)感光体(A−1)の製造においては正孔輸送剤として化合物(HT−1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表3及び表4に示す種類の正孔輸送剤を使用した。
(3)感光体(A−1)の製造においては正孔輸送剤の添加量が75質量部であったが、感光体(A−2)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表3及び表4に示す量の正孔輸送剤を添加した。その結果、感光体(A−1)においてはバインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率(MHTM/MRESIN)が0.75であったが、感光体(A−2)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)の各々においては表3及び表4に示すバインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率(MHTM/MRESIN)に変更された。
(4)感光体(A−1)の製造においては溶剤としてテトラヒドロフランとトルエンとの混合溶剤(質量比率:テトラヒドロフラン/トルエン=8/2)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−34)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表3及び表4に示す種類の溶剤を使用した。
<電気特性の評価>
感光体(A−1)〜(A−34)及び感光体(B−1)〜(B−7)の各々に対して、電気特性の評価を行った。電気特性の評価として、以下に示す帯電電位の評価及び感度電位の評価を行った。電気特性の評価環境は、温度10℃且つ相対湿度20%RHであった。
(帯電電位V0の評価)
ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の回転数31rpm及び感光体への流れ込み電流−10μAの条件下で、感光体を帯電させた。帯電させた感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を感光体の帯電電位(V0、単位:−V)とした。測定された感光体の帯電電位(V0)を、表3及び表4に示す。
(感度電位VLの評価)
ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を−600Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.26μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から50ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を感光体の感度電位(VL、単位:−V)とした。測定された感光体の感度電位(VL)を、表3及び表4に示す。なお、感度電位(VL)の絶対値が80V以下である感光体を、感光体の電気特性、特に感度特性が優れていると評価した。
<耐摩耗性の評価>
感光体(A−1)〜(A−34)及び感光体(B−1)〜(B−7)の電荷輸送層の各々に対して、耐摩耗性を評価した。まず、感光体の製造において調製した電荷輸送層用塗布液を、アルミパイプ(直径78mm)に巻きつけたポリプロピレンシート(厚さ0.3mm)に塗布した。電荷輸送層用塗布液を塗布したポリプロピレンシートを、120℃で40分間乾燥させた。これにより、ポリプロピレンシート上に厚さ20μmの電荷輸送層(評価用シート)が形成された。続けて、ポリプロピレンシートから評価用シートを剥離した。そして、剥離された評価用シートをウィール(テーバー社製「S−36」)に貼り付けて、試験片を得た。得られた試験片の質量(摩耗試験前における試験片の質量)M1を測定した。
次いで、試験片に対して摩耗試験を行った。詳しくは、試験片をロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製作所製)の回転台に取り付けた。そして、試験片上に荷重750gfの摩耗輪(テーバー社製「CS−10」)を乗せた状態で、回転台を回転速度60rpmで回転させて、1000回転の摩耗試験を行った。続けて、摩耗試験後における試験片の質量M2を測定した。そして、試験前後の試験片の質量変化である摩耗減量(M1−M2)を求めた。求めた摩耗減量を、表3及び表4に示す。なお、摩耗減量が7.0mg以下である感光体を、感光体の耐摩耗性が優れていると評価した。
表3及び表4中、樹脂、HTM、量、部、V0及びVLは、各々、バインダー樹脂、正孔輸送剤、添加量、質量部、帯電電位及び感度電位を示す。表4中の「MHTM/MRESIN」は、バインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率を示す。表3及び表4中、「THF/トルエン(8/2)」は、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶剤(質量比率:テトラヒドロフラン/トルエン=8/2)を示す。表4中、「THF/1,4−ジオキサン(8/2)」は、テトラヒドロフランと1,4−ジオキサンとの混合溶剤(質量比率:テトラヒドロフラン/1,4−ジオキサン=8/2)を示す。表4中、「THF/o−キシレン(8/2)」は、テトラヒドロフランとo−キシレンとの混合溶剤(質量比率:テトラヒドロフラン/o−キシレン=8/2)を示す。
感光体(A−1)〜(A−34)の各々は、導電性基体と感光層とを備えていた。感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを含んでいた。電荷発生層は、電荷発生剤を含んでいた。電荷輸送層は、正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含んでいた。バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂(1)を含んでいた。具体的には、電荷輸送層はバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−7)の何れかを含んでいた。正孔輸送剤は、化合物(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)を含んでいた。具体的には、電荷輸送層は正孔輸送剤として、化合物(HT−1)〜(HT−15)の何れかを含んでいた。バインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率は、0.45以上0.80以下であった。そのため、表3及び表4から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−34)では、感度電位VLの絶対値が80V以下であり、電気特性、特に感度特性に優れていた。また、感光体(A−1)〜(A−34)では、摩耗減量が7.0mg以下であり、耐摩耗性に優れていた。
感光体(B−1)では、電荷輸送層がバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(1)を含んでいなかった。具体的には、感光体(B−1)では、電荷輸送層がポリアリレート樹脂(R−B1)を含んでいたが、ポリアリレート樹脂(R−B1)は一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂ではなかった。そのため、表4から明らかなように、感光体(B−1)では、摩耗減量が7.0mg超であり、耐摩耗性に劣っていた。
感光体(B−2)では、ポリアリレート樹脂(R−B2)が電荷輸送層形成用の溶剤に溶解し難く、電荷輸送層用塗布液がゲル化したため、電荷輸送層を形成することができなかった。そのため、表4に示すように、感光体(B−2)の帯電電位、感度電位及び摩耗減量を測定することができなかった。
感光体(B−3)では、電荷輸送層がバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(1)を含んでいなかった。具体的には、感光体(B−3)では、電荷輸送層がポリアリレート樹脂(R−B3)を含んでいたが、ポリアリレート樹脂(R−B3)は一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂ではなかった。そのため、表4から明らかなように、感光体(B−3)では、摩耗減量が7.0mg超であり、耐摩耗性に劣っていた。
感光体(B−4)では、ポリアリレート樹脂(R−B4)が電荷輸送層形成用の溶剤に溶解し難く、電荷輸送層用塗布液がゲル化したため、電荷輸送層を形成することができなかった。そのため、表4に示すように、感光体(B−4)の帯電電位、感度電位及び摩耗減量を測定することができなかった。
感光体(B−5)及び(B−6)の各々では、バインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率が0.80超であった。そのため、表4から明らかなように、感光体(B−5)及び(B−6)の各々では、摩耗減量が7.0mg超であり、耐摩耗性に劣っていた。
感光体(B−7)では、バインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率が0.45未満であった。そのため、表4から明らかなように、感光体(B−7)では、感度電位VLの絶対値が80V超であり、電気特性、特に感度特性に劣っていた。
以上のことから、本発明に係る感光体は、電気特性及び耐摩耗性に優れることが示された。また、本発明に係る製造方法によれば、電気特性及び耐摩耗性に優れる感光体が得られることが示された。