JP6627462B2 - ウェブ状成膜対象物の回転保持体及びこれを用いた成膜体製造方法並びにその装置 - Google Patents

ウェブ状成膜対象物の回転保持体及びこれを用いた成膜体製造方法並びにその装置 Download PDF

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Description

本発明は、ウェブ状成膜対象物を回転保持する回転保持体に係り、特に、スパッタリング等の成膜中に発生する熱負荷によるウェブ状成膜対象物のシワの発生を低減させる上で有効な回転保持体及びこれを用いてウェブ状成膜対象物に成膜して成膜体を製造する成膜体製造方法並びにその装置に関する。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、耐熱性樹脂フィルム上に金属膜を被覆して得られる多種類のフレキシブル配線基板が用いられ、このフレキシブル配線基板には、耐熱性樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を成膜した金属膜付耐熱性樹脂フィルムが用いられている。そして、金属膜付耐熱性樹脂フィルムは、配線パターンの繊細化、高密度化に伴い、金属膜付耐熱性樹脂フィルム自体が平面であることが重要である。
この種の金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造方法として、従来、金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングしかつ乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、および、耐熱性樹脂フィルムに真空成膜法若しくは真空成膜法と湿式めっき法により金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法の真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
そして、メタライジング法として、特許文献1では、ポリイミド絶縁層上にクロム層をスパッタリングした後、銅をスパッタリングしてポリイミド絶縁層上へ導体層を形成する方法が開示され、特許文献2では、ポリイミドフィルム上に、銅ニッケル合金をターゲットとしてスパッタリングにより形成された第一の金属薄膜と、銅をターゲットとしてスパッタリングにより形成された第二の金属薄膜の順に積層して形成されたフレキシブル回路基板用材料が開示されている。尚、ポリイミドフィルム(基板)の様な耐熱性樹脂フィルムに真空成膜を行うにはスパッタリングウェブコータを用いることが一般的である。
ところで、上述した真空成膜法において、一般に、スパッタリング法は密着力に優れる反面、真空蒸着法より耐熱性樹脂フィルムに与える熱負荷が大きいといわれている。そして、成膜の際に、耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷が作用するとフィルムシワが発生してしまう。このシワを防ぐために、金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置であるスパッタリングウェブコータでは、キャンロールによりスパッタリング中の耐熱性樹脂フィルムを裏面から冷却する構造になっている。例えば、特許文献3には、スパッタリングウェブコータの一例である巻取式真空スパッタリング装置が開示され、この巻取式真空スパッタリング装置は、水冷キャンロールを備え、サブロールにより水冷キャンロールへの密着を制御している。
しかし、成膜速度を向上させるためにスパッタ装置のカソードに大電力を印加すると、水冷キャンロールだけでは金属膜付耐熱性樹脂フィルムの冷却が不十分となり、フィルムシワが発生する。このシワを低減させるためにキャンロールの表面構造を工夫した技術として、例えば、特許文献4には、キャンロールの外周面のうち少なくとも片端側において長尺基板の端部付近が接触する箇所に、キャンロールの端部側に向かってキャンロールの外径が徐々に細くなるような傾斜部を設け、該傾斜部の斜面にはフッ素樹脂膜を塗布すると共に、該傾斜部のうち処理手段に対向していない箇所に設けたホイールにより長尺基板の端部を傾斜部に押し付け、長尺基板をその幅方向に広げる長尺基板のシワ伸ばし方法が開示されている。しかし、キャンロールに傾斜部を形成するのは、加工が困難であり、ホイールをフィルムに押し付けるのは、制御が複雑になるという懸念を有していた。
ところで、水冷キャンロールは均一な温度分布を得るために成膜対象物であるフィルム幅より広く設計されている。このため、水冷キャンロールのフィルムが覆っていない部分には、スパッタ膜を形成する成膜粒子が付着してしまう。もし、水冷キャンロールにスパッタ膜が付着してしまうと、水冷キャンロールの表面状態が変化してしまい好ましくない。
そこで、水冷キャンロール表面にスパッタ膜の成膜粒子が付着しないように、成膜用ターゲットとフィルムとの間には成膜用開口が開設されたマスクカバーを設け、水冷キャンロールのフィルムが覆っていない部分へのスパッタ膜の成膜粒子の付着を防止している。
しかしながら、たとえマスクカバーを設けたとしても、スパッタ膜の成膜粒子は散乱するため、仮に、マスクカバーの成膜用開口をキャンロールのフィルム幅よりも狭い範囲に形成したとしても、スパッタ膜の成膜粒子がフィルム幅周辺に付着してしまう事態を完全に解消するのは難しい。
そこで、スパッタリングウェブコータにおける金属膜のスパッタリング成膜中に、耐熱性樹脂フィルムのシワ伸ばしを簡易な構成で実現し、かつ、水冷キャンロールにスパッタ膜の成膜粒子が仮に付着しても清掃し易い金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置が望まれていた。
特開平2−98994号公報(問題点を解決するための手段) 特開平6−97616号公報(課題を解決するための手段,図1) 特開昭62−247073号公報(実施例,第1図) 特開2012―132080号公報(発明を実施するための形態,図7)
本発明が解決しようとする技術的課題は、ウェブ状成膜対象物の搬送方向に交差する幅方向へのシワの発生を抑制しつつ、回転保持体の周面のうちウェブ状成膜対象物の通過領域周辺における成膜粒子による汚れを簡単に除去することにある。
そこで、上記課題を解決するため、本発明者が鋭意研究を続けた結果、ウェブ状成膜対象物、例えばポリイミドフィルム等の長尺耐熱性樹脂フィルムが接触する回転保持体としてのキャンロールについて、長尺耐熱性樹脂フィルムの幅方向端部に対応した箇所に所望の離型層を設けることで、長尺耐熱性樹脂フィルムの幅方向端部の滑りが良くなりシワの発生を低減し、さらに、離型層上のスパッタ膜の成膜粒子が容易に除去できることを見出すに至った。本発明はこのような技術的着想により完成されている。
すなわち、本発明の第1の技術的特徴は、ウェブ状成膜対象物の表面を成膜装置にて成膜するときに、前記ウェブ状成膜対象物を回転保持する回転保持体であって、駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される円形断面状の回転部材と、前記回転部材の周面のうち前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで前記保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて前記回転部材の周方向に沿って帯状に形成される離型層と、を備え、前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく面一に連なって設けられ、前記回転部材の周面の摩擦抵抗よりも小さい摩擦抵抗を有し、前記回転部材は同一外径の周面を有し、前記回転部材の周面のうち前記離型層が形成される部位以外には当該離型層よりも摩擦抵抗の大きい被覆層が形成されていることを特徴とするウェブ状成膜対象物の回転保持体である。
本発明の第の技術的特徴は、ウェブ状成膜対象物の表面を成膜装置にて成膜するときに、前記ウェブ状成膜対象物を回転保持する回転保持体であって、駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される円形断面状の回転部材と、前記回転部材の周面のうち前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで前記保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて前記回転部材の周方向に沿って帯状に形成される離型層と、前記回転部材の周面端部にて周方向に沿って着脱可能に固着される帯状の保護部材と、を備え、前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく設けられ、前記回転部材の周面の摩擦抵抗よりも小さい摩擦抵抗を有し、前記保護部材は、前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部との間に隙間を介在させ、かつ、前記回転部材の軸方向外側に位置する前記離型層の外側縁部を覆うように配置されていることを特徴とするウェブ状成膜対象物の回転保持体である。
本発明の第の技術的特徴は、第の技術的特徴を備えたウェブ状成膜対象物の回転保持体において、前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく面一に連なって設けられていることを特徴とするウェブ状成膜対象物の回転保持体である。
本発明の第の技術的特徴は、ウェブ状成膜対象物を回転保持体表面に接触保持させて搬送し、前記回転保持体表面に対向して配置された成膜装置にて前記ウェブ状成膜対象物の表面を成膜して成膜体とする成膜体製造方法であって、前記回転保持体は、駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される円形断面状の回転部材と、前記回転部材の周面のうち前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで前記保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて前記回転部材の周方向に沿って帯状に形成される離型層と、を備え、前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく面一に連なって設けられ、前記回転部材の周面の摩擦抵抗よりも小さい摩擦抵抗を有し、前記回転保持体の周囲には当該回転保持体の周囲を固定的に覆うマスクカバーが設けられ、前記マスクカバーには成膜装置による成膜処理範囲を規制する成膜用開口が形成されていることを特徴とする成膜体製造方法である
本発明の第の技術的特徴は、成膜前のウェブ状成膜対象物を収容する収容室、前記収容室に隣接して設けられて成膜用環境を保つ成膜室が設けられる装置筐体と、前記収容室内のウェブ状成膜対象物を前記成膜室に移動させ、成膜室内で成膜完了した成膜体を前記収容室又は前記成膜室の予め決められた箇所に移動させる移動機構と、前記成膜室内に一若しくは複数設置され、前記移動機構にて移動させられるウェブ状成膜対象物の表面を成膜する成膜装置と、を備え、前記移動機構は、前記成膜室に設置され、前記ウェブ状成膜対象物を保持して駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される回転保持体を有し、前記回転保持体として第1乃至第の技術的特徴のいずれかを備えた回転保持体を用いたことを特徴とする成膜体製造装置である。
本発明の第1の技術的特徴によれば、ウェブ状成膜対象物の搬送方向に交差する幅方向へのシワの発生を抑制しつつ、回転保持体の周面のうちウェブ状成膜対象物の通過領域周辺における成膜粒子による汚れを簡単に除去することができることに加え、回転保持体の外径寸法を等しく保ち、ウェブ状成膜対象物に幅方向において均等な張力分布を与え、ウェブ状成膜対象物の幅方向端部と回転保持体の離型層との接触状態を確保することができる。更に、回転部材の周面の一部に溝加工を施すことなく、回転保持体に離型層を簡単に形成することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、ウェブ状成膜対象物の搬送方向に交差する幅方向へのシワの発生を抑制しつつ、回転保持体の周面のうちウェブ状成膜対象物の通過領域周辺における成膜粒子による汚れを保護部材で事前に抑制し、かつ、成膜粒子による汚れを除去する作業範囲を低減することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、更に、回転保持体の外径寸法を等しく保ち、ウェブ状成膜対象物に幅方向において均等な張力分布を与え、ウェブ状成膜対象物の幅方向端部と回転保持体の離型層との接触状態を確保することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、ウェブ状成膜対象物の表面を成膜して成膜体を製造する上で、ウェブ状成膜対象物の搬送方向に交差する幅方向へのシワの発生を抑制しつつ、回転保持体の周面のうちウェブ状成膜対象物の通過領域周辺における成膜粒子による汚れを簡単に除去することに加え、回転保持体の外径寸法を等しく保ち、ウェブ状成膜対象物に幅方向において均等な張力分布を与え、ウェブ状成膜対象物の幅方向端部と回転保持体の離型層との接触状態を確保することができる。更に、ウェブ状成膜対象物の周辺への成膜粒子の飛翔範囲を有効に規制することができ、回転保持体に付着した成膜粒子による汚れを有効に除去することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、ウェブ状成膜対象物の搬送方向に交差する幅方向へのシワの発生を抑制しつつ、回転保持体の周面のうちウェブ状成膜対象物の通過領域周辺における成膜粒子による汚れを簡単に除去することが可能な回転保持体を含む成膜体製造装置を提供することができる。
(a)は本発明に係るウェブ状成膜対象物の回転保持体を用いた成膜体製造装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は回転保持体の一例を示す説明図、(c)は(b)中C−C線断面説明図である。 実施の形態1に係る成膜体製造装置の全体構成を示す説明図である。 実施の形態1で用いられるキャンロールの周辺部構造を示す説明図である。 (a)は実施の形態1で用いられるキャンロールの周面構造を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面説明図、(c)はキャンロールの周面構造の変形の形態を示す(a)中B−B線断面説明図である。 (a)は実施の形態1で用いられるキャンロールとマスクカバーの成膜用開口との関係を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面説明図である。 (a)は実施の形態2で用いられるキャンロールの周面構造を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面説明図である。 (a)は実施の形態2で用いられるキャンロールとマスクカバーの成膜用開口との関係を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面説明図である。 比較の形態1,2で用いられるキャンロールとマスクカバーの成膜用開口との関係を示す説明図、(b)は比較の形態1(キャンロール上の長尺耐熱性樹脂フィルムの幅方向端部と保護フィルムとの間に隙間がある態様)の(a)中B−B線断面説明図、(c)は比較の形態2(キャンロール上の長尺耐熱性樹脂フィルムの幅方向端部が保護フィルム上に乗り上げた態様)の(a)中B−B線断面説明図である。
◎実施の形態の概要
図1(a)はウェブ状成膜対象物に成膜して成膜体を製造する成膜体製造装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、成膜体製造装置は、成膜前のウェブ状成膜対象物5を収容する収容室、収容室に隣接して設けられて成膜用環境を保つ成膜室が設けられる装置筐体(図示せず)と、収容室内のウェブ状成膜対象物5を成膜室に移動させ、成膜室内で成膜完了した成膜体5’を収容室又は成膜室の予め決められた箇所に移動させる移動機構6と、成膜室内に一若しくは複数設置され、移動機構6にて移動させられるウェブ状成膜対象物5の表面を成膜する成膜装置4と、を備え、移動機構6は、成膜室に設置され、ウェブ状成膜対象物5を保持して駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される回転保持体1を有している。
尚、図1(a)中、符号7は移動機構6の一構成要素で、ウェブ状成膜対象物5を掛け渡し搬送する搬送部材である。
ここで、装置筐体は収容室と成膜室とを含むものであればよく、収容室はウェブ状成膜対象物5のみならず、ウェブ状成膜対象物5及び成膜体5’を別個に収容するものでもよいし、共用して収容するものでもよい。
また、移動機構6は、収容室と成膜室との間で、ウェブ状成膜対象物5を移動し、成膜後の成膜体5’を収容室又は成膜室の予め決められた箇所に移動させるものであれば適宜選定して差し支えないが、収容室と成膜室とは室内環境が通常異なるので、両者の室内環境を維持するように留意する必要がある。
更に、成膜装置4としては、マグネトロンスパッタ装置、イオンビームスパッタ装置などウェブ状成膜対象物5を成膜するものを広く含む。
本実施の形態において、回転保持体1は、図1(a)(b)に示すように、駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される円形断面状の回転部材2と、回転部材2の周面のうちウェブ状成膜対象物5の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて回転部材2の周方向に沿って帯状に形成される離型層3と、を備え、離型層3は、当該離型層3に隣接する回転部材2の周面に対して段差なく設けられ、回転部材2の周面の摩擦抵抗よりも小さい摩擦抵抗を有するものである。
このような技術的手段において、ウェブ状成膜対象物5は主として長尺耐熱性樹脂フィルムを対象とするが、これに限られるものではなく、ウェブ状で成膜対象となるものを広く含む。
また、回転部材2は円形断面を有する態様で、駆動回転すると共に、成膜装置4による成膜処理時に冷却する上で予め決められた温度に調整されるものであればよい。
更に、離型層3は以下の要件を備えていることを必要とする。
(1)回転部材2の周面のうちウェブ状成膜対象物5の保持領域端部に沿って設けられること、
(2)保持領域端部を含んで保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて回転部材2の周方向に沿って帯状に形成されること、
(3)離型層3に隣接する回転部材2の周面に対して段差なく設けられること、
(4)回転部材2の周面の摩擦抵抗より小さい摩擦抵抗を有していること、である。
ここで、(2)の要件は離型層3が保持領域内又は保持領域外のいずれかに帯状に形成されていると、ウェブ状成膜対象物5が幅方向に熱膨脹するときに、ウェブ状成膜対象物5の幅方向端部が離型層3以外の回転部材2の周面に接触する懸念があることを回避するものである。
(3)の要件は、離型層3と回転部材2の周面との間に段差があると、ウェブ状成膜対象物5の幅方向端部が段差に引っ掛かり、シワが発生する懸念があることを回避するものである。つまり、本例では、段差がなければ、離型層3が回転部材2の周面と面一でなくてもよく、回転部材2の周面に対して傾斜面を有していてもよいし、湾曲面を有していてもよい。
(4)の要件はウェブ状成膜対象物5の端部が離型層3上で滑り易くするためのものである。
離型層3の作用は以下のようである。
図1(a)乃至(c)に示すように、成膜装置4による成膜処理によりウェブ状成膜対象物5に薄膜Sが成膜するときに、ウェブ状成膜対象物5が熱負荷によって幅方向に熱膨脹したとしても、ウェブ状成膜対象物5の幅方向端部は回転保持体1の摩擦抵抗の小さい離型層3に接触しているため、ウェブ状成膜対象物5の幅方向端部は離型層3に沿って滑り易いことから、ウェブ状成膜対象物5でのシワの発生は抑えられる。
また、成膜装置4による成膜処理において、成膜粒子Saの一部がウェブ状成膜対象物5の周辺に飛翔して付着したとしても、これらの成膜粒子Saの多くは回転保持体1の離型層3に付着することから、成膜装置4による成膜処理が終了した後に、回転保持体1の離型層3部分を清掃することで付着した成膜粒子Saは簡単に取り除かれる。
次に、本実施の形態に係る回転保持体の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
離型層3の好ましい態様としては、回転保持体1の外径寸法を等しく保ち、ウェブ状成膜対象物5に幅方向において均等な張力を与えるという観点から、離型層3に隣接する回転部材2の周面と面一に形成されている態様が挙げられる。
また、離型層3の形成手法としては、回転部材2は、図1(c)に示すように、その周面のうち離型層3に対応した箇所に環状の凹溝2aを有し、離型層3は、回転部材2の凹溝2a内に充填して形成されているものが挙げられる。つまり、本例は、回転部材2の周面に形成された凹溝2aに離型層3を充填形成した態様である。
また、離型層3の別の形成手法としては、回転部材2は図1(c)に示すものと異なり、同一外径の周面を有し、回転部材2の周面のうち離型層3が形成される部位以外には当該離型層3よりも摩擦抵抗の大きい被覆層(図示せず)が形成されているものが挙げられる。本例は、回転部材2の周面に帯状の離型層3を形成すると共に、離型層3以外の部位に被覆層(図示せず)を形成することで、回転部材2の周面に離型層3を段差なく設ける態様である。
本例では、回転部材2の周面に離型層3のための凹溝2aを形成しなくてもよい。また、被覆層として摩擦抵抗の大きいものを選定すれば、ウェブ状成膜対象物5の保持力を高める上で有効である。この場合、被覆層は熱伝導性の良好な材料で形成するのがよい。
また、離型層3の代表的態様としてはフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にて形成されている態様が挙げられる。ここで、フッ素樹脂には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE/テフロン(登録商標))、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(FCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が挙げられる。
また、回転保持体1の別の構成例としては、図1(b)に示すように、回転部材2の周面端部にて周方向に沿って着脱可能に固着される帯状の保護部材8を備え、保護部材8は、ウェブ状成膜対象物5の保持領域端部との間に隙間を介在させ、かつ、回転部材2の軸方向外側に位置する離型層3の外側縁部を覆うように配置されている態様が挙げられる。
本例は、回転保持体1に形成された離型層3の外側縁部を保護部材8で覆う態様である。
ここで、保護部材8としては、成膜粒子Saが付着する可能性があるため、耐熱性を有する樹脂フィルム等を用いるようにすればよい。この保護部材8は回転部材2の周面端部に周方向に沿って固着される帯状部材であればよいが、交換性を考慮すれば着脱可能であることを要し、保護部材8の表面が汚れたら、回転部材2から取り外して廃棄し、新しい保護部材8を固着するようにすればよい。
また、保護部材8とウェブ状成膜対象物5の保持領域端部との間には隙間が確保されている。この隙間部分に成膜粒子Saが飛翔しても、回転保持体1の離型層3に付着するため、離型層3を清掃することによって付着した成膜粒子Saは簡単に除去される。また、保護部材8で覆われた箇所には成膜粒子Saが付着しないので、回転保持体1に対する清掃範囲を狭めることが可能である。隙間としては3〜5mm程度が好ましい。仮に、隙間がないと、ウェブ状成膜対象物5が熱膨脹すると、保護部材8に引っ掛かる虞れがある。
また、成膜体5’を製造するに際し、前述した回転保持体1(回転部材2+離型層3)を使用することで、成膜装置4による成膜処理に伴う熱負荷を受けたとしても、ウェブ状成膜対象物5の幅方向端部が離型層3に沿って滑ることから、ウェブ状成膜対象物5のシワの発生を抑制することが可能であり、また、ウェブ状成膜対象物5の幅方向端部周辺に成膜粒子Saが飛翔しても、当該成膜粒子Saは離型層3上に付着することになるため、成膜粒子Saによる汚れを簡単に除去することが可能である。
このような成膜体製造方法の代表的態様としては、回転保持体1の周囲には当該回転保持体1の周囲を固定的に覆うマスクカバー9が設けられ、マスクカバー9には成膜装置4による成膜処理範囲を規制する成膜用開口9aが形成されている態様が挙げられる。
本例では、マスクカバー9は、その成膜用開口9aの大きさによって成膜装置4による成膜処理範囲を規制する。このため、成膜用開口9aを適宜選定することにより、成膜粒子Saの飛翔範囲は規制されることになり、回転保持体1上のウェブ状成膜対象物5の周辺に成膜粒子Saが飛翔するにしても、離型層3の形成範囲に収めることが可能である。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
先ず、本実施の形態に係る成膜体製造装置における製造対象は、広く成膜対象物の表面を成膜して成膜体とするものに適用することができるものであるが、その代表的態様として、以下の実施の形態では、金属膜付耐熱性樹脂フィルムを例に挙げて説明する。
◎実施の形態1
−金属膜付耐熱性樹脂フィルム−
金属膜付耐熱性樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルムの表面にNi系合金等から成る膜とCu膜が積層された構造体が例示される。このような構造を有する金属膜付耐熱性樹脂フィルムは、サブトラクティブ法によりフレキシブル配線基板に加工される。ここで、サブトラクティブ法とは、レジストで覆われていない金属膜(例えば、上記Cu膜)をエッチングにより除去してフレキシブル配線基板を製造する方法である。
上記Ni系合金等から成る膜はシード層と呼ばれ、金属膜付耐熱性樹脂フィルムの電気絶縁性や耐マイグレーション性等の所望の特性によりその組成が選択される。そして、シード層には、Ni−Cr合金やインコネルやコンズタンタンやモネル等の各種公知の合金を用いることができる。また、金属膜付耐熱性樹脂フィルムの金属膜(Cu膜)を更に厚くしたい場合、湿式めっき法を用いて金属膜を形成することがある。そして、電気めっき処理のみで金属膜を形成する場合と、一次めっきとして無電解めっき処理を行い、二次めっきとして電解めっき処理等の湿式めっき法を組み合わせて行う場合がある。湿式めっき処理は、常法による湿式めっき法の諸条件を採用すればよい。
また、上記金属膜付耐熱性樹脂フィルムに用いる耐熱性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルムまたは液晶ポリマー系フィルムから選ばれる樹脂フィルムが挙げられ、金属膜付フレキシブル基板としての柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性を有する点から好ましい。
尚、上記金属膜付耐熱性樹脂フィルムとして、長尺耐熱性樹脂フィルムへNi−Cr合金やCu等の金属膜を積層した構造体を例示したが、上記金属膜のほか、目的に応じて酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等の成膜にも適用できることは勿論である。
図2は実施の形態1に係る成膜体製造装置の全体構成を示す。
−成膜体製造装置の全体構成−
本実施の形態では、成膜体製造装置は、ウェブ状の長尺耐熱性樹脂フィルムの表面を金属膜で成膜して成膜体とする製造装置を示し、この種の金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置には、長尺耐熱性樹脂フィルム面に効率よく金属膜が成膜されるスパッタリングウェブコータが一般的に用いられている。
すなわち、金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置(スパッタリングウェブコータ)10は、装置筐体としての真空チャンバ11を有し、この真空チャンバ11内の上部には成膜前の長尺耐熱性樹脂フィルム13が収容される収容室11aを、下部に成膜室11bを確保するように仕切り板12によって区画されている。
また、長尺耐熱性樹脂フィルム13は、仕切り板12に設けられた開口12aを通じて収容室11aから成膜室11bに搬入されている。尚、仕切り板12の開口12aの気密性を高めるため、2本のロールが近接して配置されたスリットロールを開口12aに付設してもよい。また、収容室11aと成膜室11bとは、別系統のドライポンプ、メカニカルブースターポンプとターボ分子ポンプを用いて、独立排気している。
また、長尺耐熱性樹脂フィルム13は、収容室11a内に設けられた巻出しロール14から巻き出されて成膜室11b内の巻取りロール22に巻き取られるようになっており、これら巻出しロール14と巻取りロール22間の搬送路上に、モータ駆動されかつ温調された冷媒が内部に循環するキャンロール19が配置されている。
更に、上記巻出しロール14と巻取りロール22間の搬送路上には、長尺耐熱性樹脂フィルム13を案内するガイドロール15,16,17,21が設けられており、かつ、キャンロール19の両側近傍には、キャンロール19の周速度との調整によってキャンロール19外周面に長尺耐熱性樹脂フィルム13を密着させるモータ駆動のフィードロール18,20が配置されている。
そして、巻出しロール14と巻取りロール22はパウダークラッチ等により長尺耐熱性樹脂フィルム13の張力バランスを保っており、キャンロール19の回転とこれに連動して回転するモータ駆動のフィードロール18,20により、巻出しロール14から長尺耐熱性樹脂フィルム13が巻き出されて巻取りロール22に巻き取られるようになっている。
更に、キャンロール19の近傍には、図2及び図3に示すように、キャンロール19の外周面に対向して複数(本例では4つ)の成膜装置としてマグネトロンスパッタ装置31〜34が設置されている。
そして、本例では、各マグネトロンスパッタ装置31〜34による成膜処理を行う前に長尺耐熱性樹脂フィルム13と金属膜との密着性を高めるための表面処理ユニット25が収容室11a内に設けられている。尚、表面処理ユニット25における真空中での表面処理方法として、プラズマ処理、イオンビーム処理、UV光処理等がある。
また、マグネトロンスパッタ装置31〜34による成膜処理には、板状ターゲットを使用することが好ましいが、板状ターゲットを用いた場合、ターゲット上にノジュール(異物の成長)が発生することがある。このため、ノジュール(異物の成長)の発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用してもよい。
更に、キャンロール19と各マグネトロンスパッタ装置31〜34との間には、図3及び図5に示すように、キャンロール19の周囲を覆うように金属又は樹脂製のマスクカバー40が設置されており、マスクカバー40のうち各マグネトロンスパッタ装置31〜34のカソードに対応した箇所には成膜用開口41(具体的には41a〜41d)が開設されている。この成膜用開口41は各マグネトロンスパッタ装置31〜34から長尺耐熱性樹脂フィルム13に向かうターゲットからの成膜粒子がSa通過する成膜範囲を規制するもので、長尺耐熱性樹脂フィルム13の搬送方向に交差する幅方向寸法wよりも狭い幅方向寸法wを有している。尚、成膜用開口41のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の搬送方向に沿う長さ寸法hは成膜速度に応じた成膜量を考慮して適宜選定される。
−キャンロールの構成−
本実施の形態において、キャンロール19は、図3及び図4(a)(b)に示すように、モータによって駆動され且つ温調された冷媒(例えば水)が内部を循環する金属製の回転ロール51と、この回転ロール51の周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで保持領域の内外に及ぶ幅寸法mにて回転ロール51の周方向に沿って帯状に形成される離型層52と、を備えている。
ここで、離型層52の幅寸法mの選定方法としては、長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部から長尺耐熱性樹脂フィルム13の内側に向かって離型層52との接触長が15乃至30mm程度になるように選定するのが望ましい。このとき、接触長が、15mm未満では、シワの低減効果が少なく、30mmを超えると、接している範囲のキャンロール19の冷却効果が低下し、シワが発生し易くなる虞れがある。
<離型層の形成手法1>
本例における離型層52の形成手法としては、図4(b)に示すように、回転ロール51のうち離型層52を形成する2箇所には矩形断面状の凹溝53が回転ロール51の周方向に沿って帯状に形成されており、この凹溝53内にフッ素樹脂加工が施されて離型層52が形成されている。
ここで、凹溝53は例えば切削加工にて形成され、また、離型層52は、凹溝53とフッ素樹脂との密着性を高めるために凹溝53をサンドブラスト処理により粗面にした後、脱脂処理を施し、しかる後に、凹溝53内にフッ素樹脂を充填塗布するようにしたものである。尚、フッ素樹脂を充填塗布する手法としては、例えばフッ素樹脂の焼き付けライニング加工等が用いられる。
そして、本例では、離型層52は回転ロール51の凹溝53を除く周面との境界Pに段差なく面一に連なっており、キャンロール19の周面外径は離型層52と離型層52以外とで同一になっている。
また、キャンロール19の離型層52以外の周面の摩擦抵抗係数をRS1、離型層52の表面の摩擦抵抗係数をRS2とすると、少なくともRS1に比べてRS2が小さい関係を満たすことが必要であるが、離型層52による摩擦抵抗を少なくするという観点からすれば、RS2がRS1に比べて十分に小さいことが好ましく、RS1の1/5以下、より好ましくはRS1の1/10以下であるのがよい。
<離型層の形成手法2>
離型層52の形成手法としては、図4(c)に示すように、周面が同一外径の回転ロール51を用い、この回転ロール51の周面の所定箇所に例えばフッ素樹脂製の離型層52を塗布形成すると共に、離型層52が形成される部位以外の周面には離型層52よりも摩擦抵抗の大きい被覆層54を塗布形成するようにする手法が挙げられる。本例においても、離型層52は被覆層54と段差なく面一に連なっており、被覆層54は離型層52の摩擦抵抗係数RS1に比べて摩擦抵抗係数RS2の大きいものを選定すればよい。この場合、必要な物性の材料を選定し、必要に応じて粗面加工などを施すようにすればよい。
また、被覆層54の材料の選定に当たっては、キャンロール19の水冷効果を損なわないように、熱伝導率の高い材料を選定するのが好ましい。
−フィードロール−
本実施の形態では、キャンロール19に対して長尺耐熱性樹脂フィルム13を密着させるために、キャンロール19の前後にモータ駆動されるフィードロール18,20を配置する構成が採用されている。つまり、キャンロール19に隣接し搬送路の上流側に配置される上流側モータ駆動フィードロール18と、キャンロール19に隣接し搬送路の下流側に配置される下流側モータ駆動フィードロール20とを備えた態様である。
ここで、上流側モータ駆動フィードロール18、キャンロール19及び下流側モータ駆動フィードロール20の周速度は、長尺耐熱性樹脂フィルム13の搬送方向下流側に位置する程速くなるように制御されており、上記周速度が搬送方向下流側に位置する程速くなるように制御されることで、長尺耐熱性樹脂フィルム13は上述したように搬送方向に伸ばされ、キャンロール19表面に接触(密着)させることが可能となる。
また、長尺耐熱性樹脂フィルム13に張力を付与するためにガイドロール17,21をエキスパンドロールとし、フィードロール18,20とエキスパンドロールとの両者を組み合わせることで、キャンロール19の表面に長尺耐熱性樹脂フィルム13を接触(密着)させるようにしてもよい。このように、フィードロール18,20とエキスパンドロールとの両者を組み合わせて長尺耐熱性樹脂フィルム13を長さ方向に伸ばす方法は、エキスパンドロールを用いない上述のフィードロール18,20とキャンロール19とによる制御方式よりも正確な調整が可能となる。
ここで、各ロール表面はハードクロム湿式めっき膜に形成されていてもよく、あるいは、CVD法(化学気相成膜法)、ALD法(原子層堆積法)、イオンプレーティング法、スパッタリング法等により形成された硬質で耐摩耗性の高いDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜表面若しくは金属窒化膜表面に形成されていてもよい。
−キャンロールによる長尺耐熱性樹脂フィルムの搬送挙動−
本実施の形態では、図2及び図3に示すように、長尺耐熱性樹脂フィルム13はキャンロール19に掛け渡され、キャンロール19及び前後のフィードロール18,20にて駆動搬送される。
そして、長尺耐熱性樹脂フィルム13がキャンロール19に至ると、図5(a)(b)に示すように、各マグネトロンスパッタ装置31〜34によるスパッタ処理がなされ、スパッタ処理による成膜粒子(本例ではスパッタ粒子)がマスクカバー40の成膜用開口41(41a〜41d)を介してキャンロール19上の長尺耐熱性樹脂フィルム13上に飛翔し、金属膜Sとして成膜される。
このとき、スパッタ処理による成膜中には長尺耐熱性樹脂フィルム13には熱負荷が作用すると共に、キャンロール19内で循環する温調された冷媒によってキャンロール19が冷却され、これに伴って、長尺耐熱性樹脂フィルム13も冷却される。
この状態において、仮に、スパッタ処理による成膜中の熱負荷が多くなると、キャンロール19による冷却作用では不十分になり、長尺耐熱性樹脂フィルム13が幅方向に熱膨張する場合がある。しかしながら、キャンロール19上では、長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部は離型層52に接触して配置されているため、長尺耐熱性樹脂フィルム13が熱膨張しても、その幅方向端部は離型層52において滑り移動することから、長尺耐熱性樹脂フィルム13に幅方向にてシワが発生する懸念はない。
また、スパッタ処理による成膜粒子Saはマスクカバー40の成膜用開口41にて飛翔範囲が規制されているが、成膜粒子Saには回り込みと呼ばれる現象があり、マスクカバー40の成膜用開口41の周辺にもわずかに成膜粒子Saが到達する。この堆積量は極わずかであるが、通過する長尺耐熱性樹脂フィルム13に対してキャンロール19は常時スパッタ処理による回り込んだ成膜粒子Saにさらされるため、キャンロール19周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部周辺には成膜粒子Saが堆積してしまう。
このとき、キャンロール19周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部の周辺は離型層52として形成されているため、回り込んだ成膜粒子Saは離型層52上に堆積している。このため、一連の成膜処理が終了した後において、離型層52上に堆積した成膜粒子Saについては、コンパウンド等による研磨による除去作業を行わなくとも、クリーンペーパー等で強く擦ることで、容易に除去することが可能となる。
◎実施の形態2
本実施の形態に係る成膜体製造装置の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1とは異なるキャンロール19を備えている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態では、キャンロール19は、図6(a)(b)に示すように、実施の形態1と略同様に、モータによって駆動され且つ温調された冷媒(例えば水)が内部を循環する金属製の回転ロール51と、この回転ロール51の周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで保持領域の内外に及ぶ幅寸法mにて回転ロール51の周方向に沿って帯状に形成される離型層52と、を備えているが、実施の形態1と異なり、回転ロール51の周面端部には周方向に沿って着脱可能に固着される帯状の保護フィルム55を備えている。
本例では、保護フィルム55としては耐熱性樹脂フィルム、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルムまたは液晶ポリマー系フィルムから選ばれる樹脂フィルムが用いられる。これらは例えば図示外の粘着テープにて回転ロール51の周面端部に貼り付けられる。
そして、保護フィルム55は、回転ロール51の軸方向外側に位置する離型層52の外側縁部を覆うように配置されている。つまり、保護フィルム55の内側縁部が離型層52の外側縁部にオーバーラップした状態で覆うように設置されている。
そして更に、保護フィルム55は、長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部との間に隙間dを介在させて配置されている。
ここで、隙間dとしては3乃至5mm程度が好ましい。例えば隙間dが3mm未満では、長尺耐熱性樹脂フィルム13が走行ラインに対して蛇行した場合、長尺耐熱性樹脂フィルム13が保護フィルム55に乗り上げてしまい、シワが発生する懸念がある。また、隙間dが5mmを超える場合では、保護フィルム55が離型層52を覆う領域が少なく、離型層52上に堆積する成膜粒子Saのエリアの低減効果が失われる懸念がある。
本実施の形態によれば、各マグネトロンスパッタ装置31〜34によるスパッタ処理が行われ、スパッタ処理による成膜中の熱負荷が多くなると、キャンロール19による冷却作用では不十分になり、長尺耐熱性樹脂フィルム13が幅方向に熱膨張する場合がある。しかしながら、キャンロール19上では、図7(a)(b)に示すように、長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部は、保護フィルム55とは隙間dを介して配置され、かつ、離型層52に接触して配置されているため、長尺耐熱性樹脂フィルム13が熱膨張しても、保護フィルム55と干渉することはなく、長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部は離型層52において滑り移動することから、長尺耐熱性樹脂フィルム13に幅方向にてシワが発生する懸念はない。
また、スパッタ処理による成膜中には成膜粒子Saの回り込み現象により、キャンロール19周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部周辺には成膜粒子Saが堆積してしまう。
本例では、キャンロール19周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部の周辺は離型層52及び保護フィルム55として形成されているため、回り込んだ成膜粒子Saは離型層52及び保護フィルム55上に堆積している。このため、一連の成膜処理が終了した後において、保護フィルム55上に堆積した成膜粒子Saについては、定期的に保護フィルム55を交換することで成膜粒子Saによる汚れを除去することができ、また、離型層52上に堆積した成膜粒子Saについては、クリーンペーパー等で強く擦ることで、容易に除去することが可能となる。このとき、離型層52の一部は保護フィルム55で覆われているため、離型層52についての成膜粒子Saの付着エリアは実施の形態1に比べて少なくなり、その分、離型層52上の成膜粒子Saの除去作業は低減される。
◎比較の形態1
図8(a)(b)は比較の形態1に係るキャンロール及びその周辺構造を示す。
同図において、キャンロール19はモータによって駆動され且つ温調された冷媒(例えば水)が内部を循環する金属製の回転ロール56と、この回転ロール56の周面のうち軸方向両側部を覆うように着脱可能に貼り付けられる耐熱性樹脂フィルムからなる保護フィルム57と、を備えている。
このとき、各マグネトロンスパッタ装置31〜34によるスパッタ処理が行われ、スパッタ処理による成膜中の熱負荷が多くなると、キャンロール19による冷却作用では不十分になり、長尺耐熱性樹脂フィルム13が幅方向に熱膨張する場合がある。このとき、長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部が回転ロール56の周面との摩擦抵抗によって引っ掛かってしまうと、シワが発生する原因になってしまう。
また、スパッタ処理による成膜中に、成膜粒子Saの回り込み現象により、キャンロール19周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部周辺には成膜粒子Saが堆積してしまう。このとき、キャンロール19の周面のうち長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部周辺には保護フィルム57が設けられているが、長尺耐熱性フィルム13の走行時の蛇行や幅方向の熱膨張による干渉を防止する意味で、長尺耐熱性樹脂フィルム13と保護フィルム56との間に隙間58を確保することが必要になる。
この状態において、回り込んだ成膜粒子Saは回転ロール56の周面及び保護フィルム57上に堆積することになる。回転ロール56の周面に成膜粒子Saが堆積してしまうと、表面状態が変化したり、剥がれた堆積物が粉塵の原因になることがあるため、定期的に、キャンロール19に堆積した成膜粒子Saをコンパウンド等で研磨して除去する作業が必要となる。但し、キャンロール19表面はハードクロムメッキ等が施されているため、除去作業により表面に微細な傷がついてしまう懸念もある。
また、キャンロール19の周面の軸方向両側部には保護フィルム57が設けられているため、保護フィルム57上に堆積した成膜粒子Saについては、保護フィルム57を定期的に交換することで成膜粒子Saを除去することが可能である。
更に、本例では、保護フィルム57を設けることで、キャンロール19の周面に対して広範囲に成膜粒子Saが堆積する事態は回避されることになるが、前述したように、長尺耐熱性樹脂フィルム13と保護フィルム57との間には隙間58が必要不可欠であり、この隙間58を通じて回転ロール56の周面に成膜粒子Saが堆積する現象は避けられないので、回転ロール56に対して成膜粒子Saを除去するためには前述した面倒な除去作業を行わなければならない。
◎比較の形態2
図8(a)(c)は比較の形態2に係るキャンロール及びその周辺構造を示す。
同図において、キャンロール19の基本的構成は、比較の形態1と略同様に、回転ロール56及び保護フィルム57を備えたものであるが、比較の形態1と異なり、回転ロール26の周面への成膜粒子Saの堆積を完全に防止するために、保護フィルム57の幅寸法を広げ、保護フィルム57のうち回転ロール56の軸方向中央側に位置する縁部を耐熱性樹脂フィルム13の幅方向両端部の下に入り込むようにしたものである。
しかしながら、本例では、長尺耐熱性樹脂フィルム13がスパッタ処理による成膜中に熱負荷を受けて、長尺耐熱性樹脂フィルム13が熱膨張により幅方向に伸びようしたときに、保護フィルム57が妨げになるため、長尺耐熱性樹脂フィルム13が伸びることができずに、図8(b)のMで示す位置において、長尺耐熱性樹脂フィルム13の幅方向端部が盛り上がるシワが発生する虞れがある。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図2に示す実施の形態1に係る金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置(スパッタリングウェブコータ)を用い、長尺耐熱性樹脂フィルム13には、幅500mm、長さ500m、厚さ38μmの宇部興産株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックス(登録商標)」を使用した。
また、図4に示すキャンロール19は、直径900mm、幅800mmのステンレス鋼製の回転ロール51を有している。回転ロール51の表面は、ハードクロムメッキ処理を施してある。そして、回転ロール51の周面のうち、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13のフィルム幅方向端部が接する直下の円周に幅20mm×深さ1mmの溝を切削し、その溝をサンドブラスト処理により粗面にした後、フッ素樹脂の焼き付けライニング加工を行って離型層52とした。フッ素樹脂による離型層52加工後の高さは、キャンロール19と等しくした。
キャンロール19とマグネトロンスパッタ装置31〜34との間に設置されたマスクカバー40の成膜用開口41は幅480mm×高さ200mmである。
収容室11aの表面処理ユニット25には、酸素ガスが30sccm導入されるイオンビーム照射を採用し、DCイオンビーム電圧3kVを印加した。
また、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13に成膜される金属膜はシード層であるNi−Cr膜の上にCu膜を成膜するものとし、かつ、マグネトロンスパッタターゲット17にはNi−Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタターゲット18、19、20にはCuターゲットを用い、更に、アルゴンガスを300sccm導入し、マグネトロンスパッタ装置31〜34の各カソードへの印加電力は20kWの電力制御で成膜を行った。
また、巻出しロール14と巻取りロール22の張力は80Nとした。更に、上流側モータ駆動フィードロール18の周速度はキャンロール19の周速度の99%とし、かつ、下流側モータ駆動フィードロール20の周速度はキャンロール19の周速度の101%とした。この設定により、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13は徐々に引っ張られることになり、キャンロール13表面に強く密着する。ここで、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13がキャンロール13表面に強く密着しないと熱伝導による冷却効果は期待できない。また、キャンロール19は水冷により20℃に制御されている。
そして、収容室11aの巻出しロール14に耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13をセットし、かつ、表面処理ユニット25、キャンロール19を経由して耐熱性ポリイミドフィルム13の先端部を巻取りロール22に取り付けた。
また、真空チャンバ11における成膜室11bと収容室11aとを複数台のドライポンプにより5Paまで排気した後、更に、複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10-3Paまで排気した。
また、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13の搬送速度を3m/分にした後、表面処理ユニット25のイオンビームに酸素ガスを導入して電圧を印加し、かつ、マグネトロンスパッタ装置31〜34の各カソードにアルゴンガスを導入して電力を印加し、Ni−Cr膜のシード層とその上に成膜するCu膜の成膜を開始した。
更に、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13の長さ290m分が通過して時点で、イオンビーム、各プラズマ反応室のプラズマとマグネトロンスパッタ装置31〜34の各カソードへの電力を停止し、それぞれのガス導入も停止した。
最後に、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13の搬送を停止し、かつ、各ポンプを停止してから成膜室11bと収容室11aをベント(大気開放)し、巻出しロール14の耐熱性ポリイミドフィルム13の終端部を外し、全ての耐熱性ポリイミドフィルム13を巻取りロール22に巻き取ってから取り外した。
そして、成膜中におけるキャンロール19上の耐熱性ポリイミドフィルム13を観察したところ、耐熱性ポリイミドフィルム13の幅方向端部にシワが発生することはなかった。このようにシワの発生が防止された理由はキャンロール19の作用によるものと推測される。つまり、本実施例で用いられるキャンロール19には耐熱性ポリイミドフィルム13の幅方向端部が接する直下の円周に施したフッ素樹脂からなる離型層52が形成されているために、仮に、耐熱性ポリイミドフィルム13が熱負荷を受けて熱膨張したとしても、耐熱性ポリイミドフィルム13がキャンロール19表面上を搬送されている内にフィルム幅方向に滑り移動して広がったためであると考えられる。
そして、成膜が完了した後、巻取りロール22に巻き取られた耐熱性ポリイミドフィルム13を大気中にて展開してシワの有無を確認したところ、フィルム幅方向端部にシワが発生していないことを再確認した。また、キャンロール19の周面のうちフィルム幅方向端部が接する直下の円周に施したフッ素樹脂からなる離型層52に堆積した成膜粒子Saはクリーンペーパーで強く擦るだけで容易に除去することができた。
<実施例2>
本実施例は、実施の形態2に係るキャンロール19を用い、キャンロール19以外は実施例1と同様にして、金属膜付耐熱樹脂フィルムを製造した。
実施例1では、キャンロール19の周面の軸方向端部に耐熱性樹脂フィルムからなる保護フィルム56を用いていないが、実施例2では、キャンロール19の軸方向端部に保護フィルム56を耐熱性ポリイミドフィルム13の幅方向端部から3mm離して1周巻いている。
本実施例によれば、成膜中におけるキャンロール19上の耐熱性ポリイミドフィルム13を観察したところ、耐熱性ポリイミドフィルム13の幅方向端部にシワが発生することはなかった。このようにシワの発生が防止された理由はキャンロール19の作用によるものと推測される。つまり、本実施例で用いられるキャンロール19には耐熱性ポリイミドフィルム13の幅方向端部が接する直下の円周に施したフッ素樹脂からなる離型層52が形成され、しかも、耐熱性ポリイミドフィルム13の幅方向端部と保護フィルム55との間には隙間dが介在しているため、仮に、耐熱性ポリイミドフィルム13が熱負荷を受けて熱膨張したとしても、耐熱性ポリイミドフィルム27がキャンロール28表面上を搬送されている内にフィルム幅方向に滑り移動して広がったためであると考えられる。
そして、成膜が完了した後、巻取りロール22に巻き取られた耐熱性ポリイミドフィルム13を大気中にて展開してシワの有無を確認したところ、フィルム幅方向端部にシワが発生していないことを再確認した。また、キャンロール19の周面のうちフィルム幅方向端部が接する直下の円周に施したフッ素樹脂からなる離型層52に堆積した成膜粒子Saは、実施例1より堆積している幅が狭いために、実施例1よりも少ない作業時間にて、クリーンペーパーで強く擦るだけで容易に除去することができた。
<比較例1>
本比較例は、比較の形態1に係るキャンロール19(図8(a)(b)参照)を用い、キャンロール19以外は実施例1と同様にして、金属膜付耐熱樹脂フィルムを製造した。
本比較例では、キャンロール19は、直径900mm、幅800mmのステンレス鋼製の回転ロール56を有し、この回転ロール56の表面は、ハードクロムメッキ処理を施してある。そして、回転ロール56の周面のうち軸方向端部には保持フィルム57を耐熱性ポリイミドフィルム13(長尺耐熱性樹脂フィルム)13の幅方向端部から3mm離して1周巻いている。
本比較例において、成膜中におけるキャンロール19上の耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13を観察したところ、フィルム幅方向端部にシワが発生していた。
そして、成膜が完了した後、巻取りロール22に巻き取られた耐熱性ポリイミドフィルム13を大気中にて展開してシワの有無を確認したところ、フィルム幅方向端部にシワが発生していることを再確認した。新品のキャンロール19であれば、表面に施されたハードクロムメッキ表面は滑らかであるため、スパッタ処理による成膜時に熱負荷を受けても、耐熱性樹脂フィルム13が幅方向に伸びることができるかも知れない。しかし、実際にはスパッタ処理に伴う成膜粒子の回り込みにより、キャンロール19の周面のうち耐熱性ポリイミドフィルムの幅方向端部から周辺に食み出した成膜粒子が堆積して汚れてしまう。
このように、キャンロール19の周面に直接付着した堆積物を除去するためには、クリーンペーパーで強く擦るだけでは取り除くことが困難であるため、アルミナやシリコンカーバイトの砥粒を用いて研磨するという除去作業が行われる。
このような除去作業を行うと、キャンロール19のハードクロムメッキ表面に微細な傷が無数についてしまっているため、耐熱性ポリイミドフィルム13が幅方向に伸びることを妨げたものと推定される。
<比較例2>
本比較例は、比較の形態2に係るキャンロール19(図8(a)(c)参照)を用い、キャンロール19以外は実施例1と同様にして、金属膜付耐熱樹脂フィルムを製造した。
比較例1では、キャンロール19の周面の軸方向端部に耐熱性樹脂フィルムからなる保護フィルム57を用い、耐熱性ポリイミドフィルム(長尺耐熱性樹脂フィルム)13の幅方向端部から保護フィルム57を3mm離して1周巻いているのに対し、比較例2では、比較例1と同様に、キャンロール19の周面の軸方向端部に耐熱性樹脂フィルムからなる保護フィルム57を用いているが、保護フィルム57の幅寸法を広げ、耐熱性ポリイミドフィルム13の幅方向端部と保護フィルム57とを3mmオーバーラップするように耐熱性ポリイミドフィルム13の外側縁部の下に保護フィルム57を入り込ませ、キャンロール19の周面にスパッタ処理による成膜粒子の堆積を完全に防止したものである。
本比較例によれば、成膜中におけるキャンロール19上の耐熱性ポリイミドフィルム13を観察したところ、フィルム幅方向端部にシワが発生していた。
本例では、耐熱性ポリイミドィルム13が保護フィルム57の上に重なっていたため、仮に、スパッタ処理による成膜時に熱負荷を受けて耐熱性ポリイミドフィルム13が幅方向に熱膨張しても、耐熱性ポリイミドフィルム13が幅方向に伸びることを妨げられ、これに起因してシワが発生したものと推測される。
そして、成膜が完了した後、巻取りロール22に巻き取られた耐熱性ポリイミドフィルム13を大気中にて展開してシワの有無を確認したところ、フィルム幅方向端部にシワが発生していることを再確認した。
本発明に係る成膜体製造装置によれば、例えば耐熱性樹脂フィルム面へ金属膜をスパッタ装置にて成膜する際、耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷が作用したとしてもフィルムシワの発生が抑制されるため、製造された金属膜付耐熱性樹脂フィルムを、液晶テレビ、携帯電話等のフレキシブル配線基板に適用できる産業上の利用可能性を有している。
1 回転保持体
2 回転部材
3 離型層
4 成膜装置
5 ウェブ状成膜対象物
5’ 成膜体
6 移動機構
7 搬送部材
10 金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置
11 真空チャンバ
11a 収容室
11b 成膜室
12 仕切り板
12a 開口
13 長尺耐熱性樹脂フィルム(耐熱性ポリイミドフィルム)
14 巻出しロール
15 ガイドロール
16 ガイドロール
17 ガイドロール
18 上流側モータ駆動フィードロール
19 キャンロール
20 下流側モータ駆動フィードロール
21 ガイドロール
22 巻取りロール
25 表面処理ユニット
31 マグネトロンスパッタ装置
32 マグネトロンスパッタ装置
33 マグネトロンスパッタ装置
34 マグネトロンスパッタ装置
40 マスクカバー
41 成膜用開口
41 回転ロール
42 表面性調整部材
51 回転ロール
52 離型層
53 凹溝
54 被覆層
55 保護フィルム
56 回転ロール
57 保護フィルム
58 隙間

Claims (5)

  1. ウェブ状成膜対象物の表面を成膜装置にて成膜するときに、前記ウェブ状成膜対象物を回転保持する回転保持体であって、
    駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される円形断面状の回転部材と、
    前記回転部材の周面のうち前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで前記保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて前記回転部材の周方向に沿って帯状に形成される離型層と、を備え、
    前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく面一に連なって設けられ、前記回転部材の周面の摩擦抵抗よりも小さい摩擦抵抗を有し、
    前記回転部材は同一外径の周面を有し、
    前記回転部材の周面のうち前記離型層が形成される部位以外には当該離型層よりも摩擦抵抗の大きい被覆層が形成されていることを特徴とするウェブ状成膜対象物の回転保持体。
  2. ウェブ状成膜対象物の表面を成膜装置にて成膜するときに、前記ウェブ状成膜対象物を回転保持する回転保持体であって、
    駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される円形断面状の回転部材と、
    前記回転部材の周面のうち前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで前記保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて前記回転部材の周方向に沿って帯状に形成される離型層と、
    前記回転部材の周面端部にて周方向に沿って着脱可能に固着される帯状の保護部材と、
    を備え、
    前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく設けられ、前記回転部材の周面の摩擦抵抗よりも小さい摩擦抵抗を有し、
    前記保護部材は、前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部との間に隙間を介在させ、かつ、前記回転部材の軸方向外側に位置する前記離型層の外側縁部を覆うように配置されていることを特徴とするウェブ状成膜対象物の回転保持体。
  3. 請求項に記載のウェブ状成膜対象物の回転保持体において、
    前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく面一に連なって設けられていることを特徴とするウェブ状成膜対象物の回転保持体。
  4. ウェブ状成膜対象物を回転保持体表面に接触保持させて搬送し、前記回転保持体表面に対向して配置された成膜装置にて前記ウェブ状成膜対象物の表面を成膜して成膜体とする成膜体製造方法であって、
    前記回転保持体は、駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される円形断面状の回転部材と、
    前記回転部材の周面のうち前記ウェブ状成膜対象物の保持領域端部に沿って設けられ、当該端部を含んで前記保持領域の内外に及ぶ幅寸法にて前記回転部材の周方向に沿って帯状に形成される離型層と、を備え、
    前記離型層は、当該離型層に隣接する前記回転部材の周面に対して段差なく面一に連なって設けられ、前記回転部材の周面の摩擦抵抗よりも小さい摩擦抵抗を有し、
    前記回転保持体の周囲には当該回転保持体の周囲を固定的に覆うマスクカバーが設けられ、
    前記マスクカバーには成膜装置による成膜処理範囲を規制する成膜用開口が形成されていることを特徴とする成膜体製造方法。
  5. 成膜前のウェブ状成膜対象物を収容する収容室、前記収容室に隣接して設けられて成膜用環境を保つ成膜室が設けられる装置筐体と、
    前記収容室内のウェブ状成膜対象物を前記成膜室に移動させ、成膜室内で成膜完了した成膜体を前記収容室又は前記成膜室の予め決められた箇所に移動させる移動機構と、
    前記成膜室内に一若しくは複数設置され、前記移動機構にて移動させられるウェブ状成膜対象物の表面を成膜する成膜装置と、
    を備え、
    前記移動機構は、前記成膜室に設置され、前記ウェブ状成膜対象物を保持して駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される回転保持体を有し、前記回転保持体として請求項1乃至のいずれかに記載の回転保持体を用いたことを特徴とする成膜体製造装置。
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