JP5322961B2 - プラズマcvd装置 - Google Patents
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Description
これらの文献に開示された装置は、交流電源の両極にそれぞれ電気的に接続された一対の成膜ロールを有し、一対の成膜ロールの間に電位差が加えられていて、それぞれのロールの内部にはロール表面に磁場を形成するマグネットが配備されている。そして、磁場と電位差との相互作用でロールの表面にプラズマを発生させてシート材W(基材W)にCVD皮膜の成膜が可能となる。
また、図5(b)に示すように、端部が波状に変形したシート材Wを成膜ロール102に巻き掛けると、シート材Wがロール表面からめくり上がってロール表面との間に隙間ができやすくなり、この隙間から剥き出しになった成膜ロール102の表面にプラズマ105からアーク放電106が発生しやすくなる。このようなアーク放電106が発生すると、交流電源の故障に繋がったり、または電源を保護する保護回路が作動してCVD処理が中断し、安定して成膜をし続けることが困難になるといった問題が起こる場合もある。
具体的には、本発明は、基材で覆われていない成膜ロールの端部を遮蔽する遮蔽部材を備えたものであって、次の(1)〜(3)の課題を解決できるようにしたプラズマCVD装置を提供することを目的とする。
(1)基材のうち成膜ロールの端部を通る部分だけが中央部を通る部分に比べて伸びて波状に変形することを防止する。
(2)成膜ロールに基材を巻き掛けても、基材の端部が成膜ロールの表面からめくれ上がらないようにして、めくり上がった基材と遮蔽部材との隙間から剥き出しになった成膜ロールの表面に異常なアーク放電が起こることを防止する。
(3)アーク放電を起こすことなく高電圧や多段での処理を可能として、プラズマCVD処理の生産性を上げる。
即ち、本発明のプラズマCVD装置は、真空チャンバと、当該真空チャンバ内に配備されると共に電源の両極がそれぞれに接続され且つ成膜対象であるシート状の基材が巻き掛けられる、真空チャンバから絶縁された一対の成膜ロールと、前記基材が巻き掛けられていない成膜ロールの端部を成膜ロール近傍に発生したプラズマから遮蔽する遮蔽部材と、を備えたプラズマCVD装置であって、前記成膜ロールの軸方向の端部は中央部より小径に形成されていて、当該端部の外周面と中央部の外周面との間には段差面が設けられており、前記遮蔽部材は、当該遮蔽部材の外周面が前記成膜ロールの中央部の外周面と面一になるように、前記成膜ロールの端部側を覆っており、前記遮蔽部材と成膜ロールの段差面との間には、成膜ロールの軸方向に基材と成膜ロールが当接しない間隙が備えられていることを特徴とするものである。
なお、前記遮蔽部材は板状の絶縁体を用いて円筒形状に形成されているのが好ましく、前記円筒形状は、その外径が前記成膜ロールの中央部の外径と略等しくされていて、且つその内径が前記成膜ロールの小径とされた端部の外径と略等しくされていると良い。
また、前記間隙は、軸方向に0.5〜2.0mm、より好ましくは0.7〜1.5mmの幅を備えているのが好ましい。間隙の幅を軸方向に0.5mmより大きくすることにより、角部に対するアーク放電の発生を確実に抑制することが可能となる。また、間隙の幅を2.0mmより小さくすれば、基材が座屈する心配もなくなり、基材の変形をも抑制することができる。
なお、プラズマCVD装置としては前記成膜ロールが複数本設けられたものを用いることもできるが、この場合はそれぞれの成膜ロールの段差面と前記遮蔽部材との間にも、軸方向に前記間隙が設けられているのが好ましい。このようにすれば、どの成膜ロールでも成膜時に変形が起こらず、先の成膜ロールで端部が変形した基材がそのまま次の成膜ロールで成膜されることもない。当然、いずれの成膜ロールでも遮蔽部材とロール表面との隙間からアーク放電が発生する心配がないので、多段での成膜や高電圧での成膜が可能となって、プラズマCVD処理の生産性を大幅に高めることが可能となる。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラズマCVD装置1の全体構成を示している。
この装置1は、図示しない真空チャンバを備えていて、その内部には後述する原料ガスが充填されている。また、真空チャンバ内には、一対の成膜ロール2、2が配備されている。一対の成膜ロール2、2のそれぞれには、交流電源3の両極がそれぞれ接続されていて、成膜対象であるシート状の基材Wが巻き掛けられている。そして、基材Wが巻き掛けられていない成膜ロール2の端部には、成膜ロール2の近傍に発生したプラズマ5から成膜ロール2の表面を遮蔽する遮蔽部材4が備えられる。
本実施形態の装置1はSiOxバリア膜をCVD皮膜として形成するものであり、真空チャンバにはHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)とO2、He、Ar、N2、NH3またはこれらの混合物を含む混合ガスが原料ガスとして充填されている。なお、本実施形態の装置1では、原料ガスにHMDSOを含むものを例示しているが、原料ガスにはHMDSO以外の有機シリコン系成膜ガス、例えばHMDS(N)(ヘキサメチルジシラザン)、TEOS(テトラエトキシシラン)、TMS(トリメチルシラン、テトラメチルシラン)、ジメチルシラン、モノシランなどを用いることもできる。
CVD皮膜の成膜対象である基材Wとしては、プラスチックのフィルムやシート、紙など、ロール状に巻き取り可能な絶縁性の材料が考えられる。プラスチックのフィルムやシートとしては、PET、PEN、PES、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリイミド等で形成されたものが適当であり、基材Wの厚みとしては真空中での搬送が可能な5μm 〜0.5mmが好ましい。なお、基材Wは、ガラスクロスやグラスファイバーとプラスチック樹脂の複合フィルムでも良い。
成膜ロール2、2は、互いに同径同長のステンレス材料等で形成された円筒であり、その回転中心が床面から(上下方向に)略同じ高さに設置され、互いの軸芯が平行で且つ水平となるように配備されている。成膜ロール2の内部には、温度調整された水などの媒体が流通されていて、ロール表面を所定の温度にコントロールできるようになっている。成膜ロール2の表面には、傷が付きにくいようにクロムメッキや超硬合金などのコーティングが好ましくは設けられている。
成膜ロール2は、さまざまな寸法幅の基材Wを巻き掛けられるように、巻き掛け可能な基材Wのうちで最も幅が大きなものより広幅に形成されている。成膜ロール2の両端部2a、2bは中央部2cより小径にされていて、この小径にされた端部2a、2bには後述する遮蔽部材4が備えられている。
つまり、図5に示すように、その法線を軸方向に向けた段差面102dと、その法線を軸垂直方向に向けた中央部102cの外周面との間には、先端が鋭角な角部102eが周方向に亘って形成される。このような鋭角の角部102eでは強い電界が形成されやすく、この角部102eを起点としてアーク放電106が起こりやすくなる。特に遮蔽部材104を成膜ロール102の段差面102dに接触させてしまう、または接触しないまでもごく近傍まで近づけると、角部102eで形成される強い電界の作用で遮蔽部材104の表面に分極による電荷が発生し、発生した電荷との相互作用で金属で形成された段差面と遮蔽部材104との間の電界が強まるので、さらにアーク放電105が発生しやすくなる。加えて、大気中の水分を吸着しやすい遮蔽部材104をプラズマ105にさらすと遮蔽部材104から水分が放出され、放出された水分が基点となってさらにアーク放電106が起きやすくなる。
上述した遮蔽部材4と段差面2dとの間に設けられる間隙Lは、軸方向に0.5〜2.0mmの幅に設定されている。この間隙Lを軸方向に0.5mmより大きくすると、角部2eに対するアーク放電6の発生を確実に抑制することが可能となる。また、間隙Lを2.0mmより小さくすれば、基材Wが間隙Lに落ち込むように座屈することもなくなり、基材Wの変形をも抑制することができる。
まず、中央部2cより小径に形成された端部2a、2bに、段差面2dから0.5〜2.0mmの間隙Lを隔てて絶縁体の遮蔽部材4で覆った成膜ロール2、2を用意し、これらの成膜ロール2、2を真空チャンバ内に設置する。そして、真空チャンバ内を一旦減圧し、その後連続的に原料ガス(本実施形態の場合であればHMDSOガスなどの有機シリコン系成膜ガス、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス)を供給して、真空チャンバ内が所定の圧力になるように原料ガスの充填を行う。
また、遮蔽部材4と段差面2dとの間に軸方向に基材が成膜ロール2に当接しない0.5〜2.0mmの間隙Lを設けているので、角部2eに強い電界が形成されることもなく、この角部2eを起点とするアーク放電を抑制することも可能となる。加えて、遮蔽部材4と段差面2dとの間の間隙Lはそれ程広幅でないため、この間隙Lに基材Wが落ち込むように座屈することもない。それゆえ、アーク放電だけでなく、基材Wの座屈変形をも抑制することができる。
[第2実施形態]
なお、上記第1実施形態として述べた、遮蔽部材4と段差面2dとの間に間隙Lを備えるプラズマCVD装置1において、角部2eを起点とするアーク放電6を抑制する構成を様々に変更したプラズマCVD装置1を考えることもできる。それらを第2実施形態として、以下に述べる。なお、説明を省略した部分は、第1実施形態のプラズマCVD装置1と略同様な構成を有している。
この面取り加工は、成膜ロール2の中央部2cの外周面と段差面2dとの間に形成される鋭角状の角部を曲面状(R面取り)あるいは平面状(C面取り)に加工してなだらかにしたものであり、中央部2cの外周面と段差面2dとの間のコーナ面をなだらかにして強い電界が発生することを抑制するものである。
図3(a)に示すように、R面取りの面取り加工の場合、面取り半径R1は段差と同じ程度、言い換えれば遮蔽部材4の厚みDと略同じにすることが好ましい。具体的には、この面取り半径R1は50〜200μmとするのが良い。面取り半径R1を50μmより大きくすることで、十分に電界を緩和でき、異常放電を確実に抑制できるようになる。また、面取り半径R1を200μmより小さくすれば、面取り加工により新たに基材Wと成膜ロール2表面との間にできる隙間を最小限に留めて、成膜ロール2の表面に十分な強度のプラズマを形成でき、基材Wに目標とする膜厚のCVD皮膜を確実に成膜することが可能となる。なお、基材Wの縁際までCVD皮膜を成膜しないのであれば、面取り半径R1は2mmと大きくても良い。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
2 成膜ロール
2a 成膜ロールの左側端部
2b 成膜ロールの右側端部
2c 成膜ロールの中央部
2d 成膜ロールの中央部と端部との間に形成される段差面
2e 成膜ロールの中央部の外周面と段差面との間に形成される角部
3 交流電源
4 遮蔽部材
5 プラズマ
6 アーク放電
D 遮蔽部材の厚み
L 段差面と遮蔽部材との間に形成される間隙
R1 角部に形成されるR面取りの半径
R2 角部に形成されるC面取りの厚み
W 基材
Claims (5)
- 真空チャンバと、当該真空チャンバ内に配備されると共に電源の両極がそれぞれに接続され且つ成膜対象であるシート状の基材が巻き掛けられる、真空チャンバから絶縁された一対の成膜ロールと、前記基材が巻き掛けられていない成膜ロールの端部を成膜ロール近傍に発生したプラズマから遮蔽する遮蔽部材と、を備えたプラズマCVD装置であって、
前記成膜ロールの軸方向の端部は中央部より小径に形成されていて、当該端部の外周面と中央部の外周面との間には段差面が設けられており、
前記遮蔽部材は、当該遮蔽部材の外周面が前記成膜ロールの中央部の外周面と面一になるように、前記成膜ロールの端部を覆っており、
前記遮蔽部材と成膜ロールの段差面との間には、前記成膜ロールの軸方向に前記基材が前記成膜ロールに当接しない間隙が備えられていることを特徴とするプラズマCVD装置。 - 前記遮蔽部材は、板状の絶縁体を用いて円筒形状に形成されており、
前記円筒形状は、その外径が前記成膜ロールの中央部の外周面の外径と略等しくされていて、且つその内径が前記成膜ロールの小径とされた端部の外径と略等しくされていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマCVD装置。 - 前記間隙は、軸方向に0.5〜2.0mmの幅であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマCVD装置。
- 前記成膜ロールにおける中央部の外周面と段差面との間に、面取り加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマCVD装置。
- 前記成膜ロールは複数本設けられており、
それぞれの成膜ロールの段差面と前記遮蔽部材との間に、軸方向に前記間隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマCVD装置。
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