JP2014084487A - 薄膜積層シートの形成方法、及び、薄膜積層シートの形成装置 - Google Patents

薄膜積層シートの形成方法、及び、薄膜積層シートの形成装置 Download PDF

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達己 宇佐美
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明久 高橋
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正樹 長谷川
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Abstract

【課題】反応性スパッタ法による無機化合物膜の形成に際して成膜対象であるシートの昇温が抑えられる薄膜積層シートの形成方法、及び、薄膜積層シートの形成装置を提供する。
【解決手段】薄膜積層シートの形成方法は、シリコンが含まれるターゲット部材を備える真空槽にシートSを搬入すること、シリコンと反応する酸素ガスを真空槽に供給することを備える。また、薄膜積層シートの形成方法は、ターゲット部材に電力を供給して酸素ガスが含まれるプラズマのなかでターゲット部材をスパッタすることにより、シートSにシリコン酸化膜を形成することを備える。薄膜積層シートの形成方法では、ターゲット部材の電圧が遷移モード領域に含まれる。
【選択図】図1

Description

本開示の技術は、反応性スパッタ法によりシートに無機化合物の薄膜を形成する薄膜積層シートの形成方法、及び、この薄膜積層シートの形成方法に用いられる薄膜積層シートの形成装置に関する。
表示装置に用いられる樹脂製シートに対して薄膜が形成されるときには、巻き取られるシートに対して薄膜を形成する巻取り式の装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。樹脂製シートに形成される薄膜の一つには、シリコン酸化膜等の無機化合物膜が含まれ、無機化合物膜を形成する方法の一つとして、反応性スパッタ法が知られている。反応性スパッタ法にて生成されるプラズマには、ターゲットから無機粒子を放出する多数の正イオン、負電荷をもつ電子、及び、無機化合物を生成する複数のラジカルが含まれ、無機粒子との反応に寄与しない複数のラジカルの一部は、樹脂製シートに衝突する。
特開2009−19246号公報
ここで、樹脂製シートの表面にラジカルが到達すると、ラジカルのエネルギーが樹脂製シートの熱エネルギーに変換されて、樹脂製シートの温度は高くなる。そして、樹脂製シートの一部分においては、樹脂製シートの形状が変わる程度に、樹脂製シートの温度が高くなってしまう。なお、無機化合物膜の形成される対象が金属シートである場合であっても、シートの昇温を抑えることは同様に望まれる。
本開示の技術は、反応性スパッタ法による無機化合物膜の形成に際して成膜対象であるシートの昇温が抑えられる薄膜積層シートの形成方法、及び、薄膜積層シートの形成装置を提供することを目的とする。
本開示の技術における薄膜積層シートの形成方法の一態様は、シリコン、ニオブ、チタン、アルミニウム、及び、ジルコニウムのいずれか1つの無機元素が含まれるターゲットを備える真空槽にシートを搬入すること、前記無機元素と反応する反応ガスを前記真空槽に供給すること、前記ターゲットに電力を供給して前記反応ガスが含まれるプラズマのなかで前記ターゲットをスパッタすることにより前記シートに無機化合物膜を形成すること、を備え、前記ターゲットの電圧が遷移モード領域に含まれる。
本開示の技術における薄膜積層シートの形成装置の一態様は、シリコン、ニオブ、チタン、アルミニウム、及び、ジルコニウムのいずれか1つの無機元素が含まれるターゲットを備えてシートが搬入される真空槽と、前記無機元素と反応する反応ガスの前記真空槽への供給と、前記ターゲットへの電力の供給とによって、前記反応ガスが含まれるプラズマのなかで前記ターゲットをスパッタするプラズマ生成部と、を備え、前記プラズマ生成部が、前記ターゲットの電圧を遷移モード領域とする。
シリコン、ニオブ、チタン、アルミニウム、及び、ジルコニウムのいずれかで形成されたターゲットを用いた反応性スパッタでは、反応性スパッタを行う際の条件によって、以下の3つの成膜モード領域が存在することが知られている。
・金属モード領域
・遷移モード領域
・化合物モード領域
このうち、金属モード領域では、ターゲットから放出されたスパッタ粒子と反応ガスとの反応が化合物モード領域に比べて起こりにくい。そのため、形成された無機化合物膜では、反応ガスを構成する元素の含まれる量が、無機化合物膜としての特性を発現できない程度に小さい。また、化合物モード領域では、無機物と反応ガスとの反応が起こりやすく、無機化合物膜の組成は、無機化合物膜としての特性を発現できる組成になる。しかしながら、無機物と反応ガスとの反応が起こりやすい分、反応ガスから生成された活性種であるラジカルの量が多い。これにより、成膜対象であるシートに到達するラジカルの量も多くなるため、シートの一部分では、ラジカルにより加熱されることで、シートの形状が変わる程度にシートの温度が高められてしまう。
これに対し、金属モード領域と化合物モード領域とに挟まれる遷移モード領域では、金属モード領域に比べて無機物と反応ガスとの反応が起こりやすいものの、化合物モード領域よりは、無機物と反応ガスとの反応が起こりにくい。すなわち、無機化合物膜を形成しつつも、スパッタ時に形成されるラジカルの量を抑えることができる。
そこで、上記態様では、無機化合物膜の形成を遷移モード領域にて行うため、無機物と反応ガスとの反応が不十分であることを抑えつつ、スパッタ中に形成されるラジカルの量を少なくすることができる。それゆえに、無機化合物膜を形成する際に、シートが昇温されることを抑えられる。
本開示の技術における薄膜積層シートの形成方法の他の態様では、前記シートが樹脂製シートである。
シートの形成材料が樹脂である場合、例えば、シートの形成材料が金属やガラスである構成と比べて、シートの変形する温度が低く、また、シートへの入熱によって、シートに吸着あるいは吸蔵しているガスが発生することもある。
それゆえに、本開示の技術における薄膜積層シートの形成方法の他の態様によれば、シートの昇温を抑えることによる効果がより顕著である。
本開示の技術におけるスパッタ方法の一態様は、シリコンターゲットを備える真空槽に樹脂製シートを搬入すること、酸素を前記真空槽に供給すること、前記シリコンターゲットに電力を供給して前記酸素が含まれるプラズマのなかで前記シリコンターゲットをスパッタすることにより前記シートにシリコン酸化膜を形成すること、前記シリコン酸化膜上に酸化インジウムスズ膜を形成すること、を備え、前記シリコンターゲットの電圧が遷移モード領域に含まれる。
シリコン酸化膜上に形成された酸化インジウムスズ膜のシート抵抗値は、下地となるシリコン酸化膜の酸素透過率に依存し、シリコン酸化膜の酸素透過率が所定値以下であるときに、酸化インジウムスズ膜のシート抵抗値が所望の値となることが、本願発明者らによって見出された。しかも、遷移モード領域にて形成されたシリコン酸化膜の酸素透過率が、酸化インジウムスズ膜のシート抵抗値を所望の値とする上で、好ましい値になることが、本願発明者らによって見出された。
この点で、本開示の技術における薄膜積層シートの形成方法の他の態様では、遷移モード領域にて形成されたシリコン酸化膜上に酸化インジウムスズ膜を形成するため、酸化インジウムスズ膜のシート抵抗値を好ましい値とすることができる。
本開示の技術における薄膜積層シートの形成方法の他の態様では、前記ターゲットにおけるスパッタされる面に磁気回路によって磁場を形成すること、スパッタガスを前記真空槽に供給すること、を更に備え、前記ターゲットに供給される電力を前記磁気回路における前記ターゲットと向かい合う面の面積によって割った値が電力密度として設定され、前記電力密度が、1W/cm以上10W/cm以下に設定され、前記スパッタガスの流量と前記酸素ガスの流量との和に対する前記酸素ガスの流量の比が、1%以上30%以下に設定される。
遷移モードでの反応性スパッタのうちでも、以下の条件によって、シリコン酸化膜の酸素透過率が、さらに好ましい値となることが本願発明者らによって見出された。
・電力密度、すなわち、ターゲットに供給される電力を磁気回路におけるターゲットと向かい合う面の面積によって割った値が、1W/cm以上10W/cm以下に設定されること
・スパッタガスの流量と酸素の流量との和に対する酸素ガスの流量の比が、1%以上30%%以下に設定されること
この点で、本開示の技術における他の態様では、シリコン酸化膜の形成に際して、電力密度が、1W/cm以上10W/cm以下に設定され、スパッタガスの流量と酸素ガスの流量との和に対する酸素ガスの流量の比が、1%以上30%以下に設定される。そのため、シリコン酸化膜の酸素透過率を酸化インジウムスズ膜の下地層としてさらに好ましい値をすることができる。
本開示におけるスパッタ装置の一実施形態の全体構成を示すブロック図である。 第1スパッタ室の詳細構成を示すブロック図である。 ターゲット装置の平面構造を示す平面図である。 ターゲット装置の断面構造の一部を拡大して示す部分断面図である。 スパッタガス供給部、反応ガス供給部、及び、ターゲット電源の各々の駆動を制御する信号の出力状態を示すタイミングチャートである。 ターゲット電圧と酸素ガスの流量との関係を示すグラフである。 ターゲット電圧と酸素ガスの流量との関係を示すグラフである。 シリコン酸化膜の酸素透過率と流量比との関係を示すグラフである。 変形例における第1スパッタ室の一部構成を示すブロック図である。
本開示の技術を具体化した一実施形態について、図1から図7を参照して説明する。以下では、スパッタ装置の構成、第1スパッタ室の構成、ターゲット装置の構成、スパッタ装置を用いて実施されるスパッタ方法の順に説明する。
[スパッタ装置の構成]
図1を参照してスパッタ装置の構成を説明する。
図1に示されるように、スパッタ装置10は、シートSを送り出す送り出し室11と、シートSを巻き取る巻き取り室12とを備え、送り出し室11と巻き取り室12との間には、第1スパッタ室13と第2スパッタ室14とが配置されている。第1スパッタ室13では、例えば、シリコン酸化膜がシートS上に形成され、第2スパッタ室14では、例えば、シリコン酸化膜上に酸化インジウムスズ膜が形成される。送り出し室11、巻き取り室12、第1スパッタ室13、及び第2スパッタ室14の各々は、紙面と直交する方向に延びる箱状をなしている。シートSの形成材料には、例えばポリエチレンテレフタレート等の樹脂が用いられる。シートSの厚さは、例えば、1mmである。
スパッタ装置10には、シートSを搬送するシート搬送部20が設置されている。シート搬送部20は、送り出しローラー21、巻き取りローラー22、第1成膜ローラー23、第2成膜ローラー24、送り出し側ガイドローラー25a、及び、巻き取り側ガイドローラー25bを備えている。これらローラー21〜24,25a,25bの各々は、紙面と直交する方向に延びる円柱状をなしている。なお、紙面と直交する方向であって、各ローラー21〜24,25a,25bにおける中心軸の延びる方向が、軸方向として設定される。
このうち、送り出しローラー21は送り出し室11内に配置され、巻き取りローラー22は巻き取り室12に配置されている。第1成膜ローラー23は第1スパッタ室13に配置され、第2成膜ローラー24は第2スパッタ室14に配置されている。第1スパッタ室13における第1成膜ローラー23よりも上方には、送り出し側ガイドローラー25aと巻き取り側ガイドローラー25bとの各々が、軸方向と直交する方向にて第1成膜ローラー23を挟む位置に配置されている。第2スパッタ室14における第2成膜ローラー24よりも上方には、送り出し側ガイドローラー25aと巻き取り側ガイドローラー25bとの各々が、軸方向と直交する方向にて第2成膜ローラー24を挟む位置に配置されている。各ローラー21〜24,25a,25bの両端部は、各ローラー21〜24,25a,25bの回転が可能な状態で、送り出し室11、巻き取り室12、第1スパッタ室13、及び第2スパッタ室14の各々における内壁面に支えられている。
送り出しローラー21からは、送り出しローラー21に巻き付けられた成膜前のシートSが送り出され、巻き取りローラー22の外周面には、成膜後のシートSが巻き付けられる。送り出しローラー21から引き出されたシートSは、送り出し側ガイドローラー25a、第1成膜ローラー23、巻き取り側ガイドローラー25b、送り出し側ガイドローラー25a、第2成膜ローラー24、巻き取り側ガイドローラー25b、及び、巻き取りローラー22の各々の外周面に順に掛け渡される。
シートSには、こうしたシート搬送部20によってスパッタ装置10内を搬送される間に、シリコン酸化膜と、酸化インジウムスズ膜とが順に形成される。
[第1スパッタ室の構成]
図2を参照して第1スパッタ室13の構成を説明する。なお、第2スパッタ室14の構成は、第1スパッタ室13と比べて、カソード部に取り付けられたターゲットを構成する主成分が異なるものの、その他の構成は同様である。そのため、第2スパッタ室14の構成の説明を割愛する。
図2に示されるように、第1スパッタ室13を構成する真空槽31は、紙面と直交する方向に延びる箱状をなし、真空槽31には、真空槽31の壁部を貫通する供給口31a、排気口31b、搬入口31c、及び搬出口31dが形成されている。供給口31aには、真空槽31内にスパッタガスを供給するスパッタガス供給部32と、反応ガスを供給する反応ガス供給部33とが接続されている。スパッタガス供給部32と反応ガス供給部33とは、供給口31aから真空槽31の外側に向かって延びる1つの配管に接続されてもよいし、互いに独立して供給口31aに接続されてもよい。スパッタガス供給部32は、アルゴンガス等の希ガスを真空槽31内に供給し、反応ガス供給部33は酸素ガスを真空槽31内に供給する。
排気口31bには、真空槽31内を排気する排気部34が接続されている。排気部34は、例えばターボ分子ポンプ等の真空ポンプによって構成されている。搬入口31cからは、成膜前のシートSが、送り出し室11から真空槽31内に搬入され、搬出口31dからは、成膜後のシートSが、真空槽31から第1スパッタ室13へ搬出される。
真空槽31の内壁面のうち相互に対向する壁面には、紙面と直交する方向に沿って延びる2つの支持台41が取り付けられ、2つの支持台41の各々には、ターゲット装置40が取り付けられている。各ターゲット装置40は、真空槽31内での固定位置が異なるものの、その他の構成が同一である。
2つのターゲット装置40の各々では、シリコンを主たる構成元素とするターゲット部材と、石英を主成分とする非ターゲット部材とを含むカソード部42が、バッキングプレート43に固定されている。バッキングプレート43には、カソード部42に例えば交流電力を供給するターゲット電源44が接続されている。
ターゲット電源44から供給される交流電力の周波数は、20kHz以上100kHz以下であることが好ましい。交流電力の周波数が20kHzよりも小さいと、周波数が20kHz以上である場合と比べて、カソード部42に電荷が溜まりやすくなるため、カソード部42にて異常放電が生じやすくなる。また、交流電流の周波数が100kHzを超えると、カソード部42のスパッタ速度が大きく低下する。そのため、交流電力の周波数が20kHz以上100kHz以下に設定されることによって、異常放電が生じることが抑えられつつ、スパッタ速度が低下することが抑えられる。
バッキングプレート43と支持台41との間には、ターゲット装置40を構成し、カソード部42の表面に磁場を形成する磁気回路45が配置されている。支持台41の上方には、防着板46が取り付けられ、防着板46は、紙面と直交する方向に延びる板状をなしている。
真空槽31内には、第1成膜ローラー23、送り出し側ガイドローラー25a、及び、巻き取り側ガイドローラー25bが設置されている。このうち、送り出し側ガイドローラー25aと、巻き取り側ガイドローラー25bとは、防着板46よりも上方に配置され、第1成膜ローラー23は、防着板46よりも下方、且つ、真空槽31内における2つのターゲット装置40の間に配置されている。
第1スパッタ室13には、スパッタガス供給部32、反応ガス供給部33、排気部34、及び、ターゲット電源44の駆動を制御する制御部としての制御装置13Cが搭載されている。制御装置13Cは、各ガス供給部32,33からのガスの供給を開始させるための供給開始信号、及び、各ガス供給部32,33からのガスの供給を停止させるための供給停止信号を生成して出力する。また、制御装置13Cは、排気部34の駆動を開始させるための駆動開始信号、及び、排気部34の駆動を停止させるための駆動停止信号を生成して出力する。また、制御装置13Cは、各ターゲット電源44からの電力の供給を開始させるための供給開始信号、及び、各ターゲット電源44からの電力の供給を停止させるための供給停止信号を生成して出力する。
第1スパッタ室13では、スパッタガス供給部32、反応ガス供給部33、及び、ターゲット電源44が、プラズマ生成部を構成している。
[ターゲット装置の構成]
図3及び図4を参照してターゲット装置40の構成を説明する。
図3に示されるように、カソード部42は、ターゲット部材51を備え、ターゲット部材51では、第1成膜ローラー23の軸方向に沿って延び、且つ、四隅が面取りされた矩形環状をなすターゲット面が軸方向と直交する方向に沿って連続する。ターゲット部材51の内周面には、非ターゲット部材52が配置され、非ターゲット部材52では、第1成膜ローラー23の軸方向に沿って延び、且つ、四隅が面取りされた矩形板状をなす非ターゲット面が軸方向と直交する方向に沿って連続する。ターゲット部材51と非ターゲット部材52とは、反応性スパッタ時の温度における形状にて、ターゲット部材51の内周面と、非ターゲット部材52の外周面とが接することが好ましい。つまり、ターゲット部材51と非ターゲット部材52とは、室温にてターゲット部材51の内周面と非ターゲット部材52の外周面とが相互に離れ、反応性スパッタ時の温度にて、ターゲット部材51の内周面と非ターゲット部材52の外周面とが熱膨脹によって相互に接する形状であることが好ましい。
ターゲット部材51の形成材料には、導電性の材料であるシリコンが主たる構成元素として用いられている。非ターゲット部材52の形成材料には、絶縁性の材料である石英が主成分として用いられ、非ターゲット部材52の主成分には、ターゲット部材51の主たる構成元素が含まれている。なお、ターゲット部材51の主成分、及び、非ターゲット部材52の主成分の各々は、ターゲット部材51の形成材料、及び、非ターゲット部材52の形成材料の各々における95%を占め、好ましくは99%以上を占めている。
ターゲット部材51の外周面は、矩形環状をなすシールド53によって囲まれている。シールド53の形成材料には、絶縁性の材料であるアルミナ等が用いられる。ターゲット部材51とシールド53とは、反応性スパッタ時の温度における形状にて、ターゲット部材51の外周面と、シールド53の内周面とが接することが好ましい。つまり、ターゲット部材51とシールド53とは、室温にてターゲット部材51の外周面とシールド53の内周面とが相互に離れ、反応性スパッタ時の温度にて、ターゲット部材51の外周面とシールド53の内周面とが熱膨脹によって相互に接する形状であることが好ましい。
カソード部42には、金属で形成されて軸方向に沿って延びる矩形板状をなすバッキングプレート43が、例えば、はんだによって固定されている。カソード部42では、バッキングプレート43の固定された面が裏面として設定され、裏面とは反対側の面が表面として設定される。スパッタ装置10にて反応性スパッタが行われるときには、カソード部42の表面が、真空槽31内に生成されたプラズマに曝される。
図4に示されるように、ターゲット部材51の表面である第1表面51sは、平坦面であり、第1表面51sの表面粗さRaは、1μm以下であることが好ましい。非ターゲット部材52の表面である第2表面52sは、第2表面52sの全体にわたって第1表面51sと並んで配置され、第2表面52sの全体は、第1表面51sによって囲まれている。第2表面52sの全体には、非ターゲット部材52の厚さ方向に沿って窪む多数の凹部52hが連続して形成されている。各凹部52hを構成する平面は、曲面でもよいし、平面でもよく、また、各凹部52hの形状は、相互に異なってもよいし、相互に同一であってもよい。このように、非ターゲット部材52の第2表面52sは、各凹部52hを構成する側面が連続する段差面である。第2表面52sの表面粗さRaは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、且つ、第1表面51sの表面粗さRaよりも大きい。
[スパッタ方法]
図5から図8を参照して第1スパッタ室13を用いて実施されるスパッタ方法について説明する。
シリコン酸化膜が反応性スパッタによってシートS上に形成されるときには、まず、制御装置13Cが、排気部34に対する駆動開始信号を生成して出力し、排気部34が真空槽31内を排気する。なお、カソード部42では、磁気回路45がカソード部42の裏面側に配置されることによって、カソード部42の表面上に形成される漏洩磁場のうち、垂直磁場がゼロである部分がターゲット部材51の第1表面51sと対向し、垂直磁場がゼロでない部分は、非ターゲット部材52の第2表面52sと対向している。
そして、図5に示されるように、制御装置13Cが、タイミングT1にて、スパッタガス供給部32、及び、反応ガス供給部33の各々に対する供給開始信号を生成して出力する。これにより、スパッタガス供給部32が、アルゴンガスを真空槽31内に供給し、且つ、反応ガス供給部33が、酸素ガスを真空槽31内に供給する。
次いで、制御装置13Cが、タイミングT2にて、各ターゲット電源44に対する供給開始信号を生成して出力し、各ターゲット電源44が、バッキングプレート43に電力を供給する。これにより、真空槽31内では、アルゴンガスと酸素ガスとからプラズマが生成される。
このとき、カソード部42の表面上では、垂直磁場がゼロである部分、すなわち、第1表面51sと対向する部分に高密度のプラズマが生成され、垂直磁場がゼロでない部分、すなわち、第2表面52sと対向する部分では、他の部分に比べてプラズマの密度が低くなる。そのため、プラズマ中の正イオンは、カソード部42におけるターゲット部材51に優先的に衝突し、結果として、第1表面51sが、優先的にスパッタされるエロージョン領域として区画され、第2表面52sが、ほとんどスパッタされない非エロージョン領域として区画される。
第1スパッタ室13での反応性スパッタが進むと、エロージョン領域ではスパッタが進む一方で、非エロージョン領域には、エロージョン領域からスパッタされたシリコンと酸素との反応生成物であるシリコン酸化物が付着する。この際に、非エロージョン領域がエロージョン領域と同様の導電物で形成されている場合、質量の小さい電子が速く動くことにより、付着物には、スパッタが進行するにつれて負の電荷が蓄積する。付着物の容量は非常に小さいため、付着物の絶縁破壊によって非エロージョン領域に急激に電流が流れ、結果として、異常放電が起こってしまう。
これに対し、カソード部42では、非エロージョン領域の殆ど、あるいは、非エロージョン領域の全てが非ターゲット部材52によって形成されている。そのため、非エロージョン領域がターゲット部材51のみによって形成された構成と比べて、非ターゲット部材52は、絶縁体であるために帯電が少なく、且つ、非ターゲット部材52が、帯電したとしても隣接する導体に流れにくい程度に厚い。そのため、付着物の絶縁破壊が起こりにくく、また、付着物と付着先との間で放電が起こらない。それゆえに、カソード部42を備えるターゲット装置40によれば、反応性スパッタが行われている際の異常放電が抑えられる。
しかも、非ターゲット部材52の第2表面52sが段差面であるため、非ターゲット部材52の第2表面52sが平坦面である構成と比べて、付着物と第2表面52sとの接触面積が大きくなる。それゆえに、付着物が非ターゲット部材52から剥離することが抑えられる。また、非ターゲット部材52に段差面が形成されているため、ターゲット部材そのものの表面が段差面である構成と比べて、付着物が剥離しにくくなる。
ターゲット部材51がスパッタされることにより、ターゲット部材51からシリコンの粒子が放出され、シリコンの粒子がプラズマ中の酸化源と衝突する。こうして形成されたシリコンと酸素とを含む粒子がシートSの表面に堆積することで、シートSの表面にシリコン酸化膜が形成される。また、カソード部42の表面に付着した酸化源が、シリコン粒子とともにスパッタされることで、シリコンと酸素とを含む粒子がシートSの表面に堆積することによっても、シリコン酸化膜が形成される。
アルゴンガスのみを供給した状態で、バッキングプレート43にターゲット電力が供給されてしまうと、ターゲット部材51から放出されたスパッタ粒子が、非ターゲット部材52に付着してしまい、絶縁性の非ターゲット部材52と付着物との間で異常放電が起こりやすくなる。そのため、上述のように、バッキングプレート43に対する電力の供給に先立って、アルゴンガスと酸素ガスとが供給されていれば、非ターゲット部材52には、シリコン酸化物が付着するため、異常放電が生じることを抑えられる。
そして、制御装置13Cが、タイミングT3にて、ターゲット電源44に対する供給停止信号を生成して出力し、タイミングT4にて、スパッタガス供給部32、及び、反応ガス供給部33の各々に対する供給停止信号を生成して出力する。これにより、ターゲット電源44からの電力の供給、スパッタガス供給部32からのアルゴンガスの供給、及び、反応ガス供給部33からの酸素ガスの供給が停止されることで、反応性スパッタが終了される。
なお、反応性スパッタが行われているときには、巻き取りローラー22が、紙面の左右方向における左回りに自転して、シートSが所定の速度で巻き取りローラー22の外周面に巻き取られる。これにより、その他のローラーも回転することで、送り出しローラー21から成膜前のシートSが送り出されながら、第1成膜ローラー23では、2つのターゲット装置40によって、所定厚さのシリコン酸化膜がシートS上に形成される。
[スパッタ時の各種条件]
シリコン酸化膜を形成するための反応性スパッタでは、真空槽31内に供給される酸素ガスの流量に応じて、スパッタの状態、すなわちモードが、酸素ガスの流量がゼロである側から順に、金属モード、遷移モード、化合物モードに変わる。なお、真空槽31内に供給されるアルゴンガスの流量は一定に設定される。このうち、金属モードでは、シートS上には、多くとも酸化物としての特性を示さない程度にしか酸素を含まないシリコン酸化膜が形成される。一方、遷移モード、及び、化合物モードでは、シートS上には、酸化物としての特性を示す程度に酸素を含むシリコン酸化膜が形成され、化合物モードにて形成されたシリコン酸化膜には、遷移モードにて形成されたシリコン酸化膜よりも多くの酸素が含まれる。
図6に示されるように、ターゲット電源44からターゲット部材51に供給されるターゲット電力が一定である場合には、金属モードとなる領域、すなわち金属モード領域においてターゲット部材51に印加されるターゲット電圧が、化合物モードとなる領域、すなわち化合物モード領域におけるターゲット電圧よりも高い。金属モード領域と化合物モード領域とに挟まれる遷移モード領域では、ターゲット電圧が、金属モード領域におけるターゲット電圧の最小値から化合物モード領域におけるターゲット電圧の最大値までの間で変わる。なお、ターゲット電圧とは、ターゲット部材51に印加される交流電圧の実効値のことである。
各モード領域での電圧の変化度合いを比べた場合、金属モード領域、及び、化合物モード領域においては、酸素ガスの流量が変わってもターゲット電圧が略一定であるのに対し、遷移モードでは、酸素ガスの流量が変わるとターゲット電圧も変わる。なお、ターゲット電圧が略一定であるとは、金属モード領域におけるターゲット電圧の最大値が100%として設定され、化合物モード領域における最小値が0%として設定されるときに、ターゲット電圧における変化が10%未満であることをいう。つまり、遷移モード領域とは、金属モード領域、及び、化合物モード領域と比べて、酸素ガスの流量変化に対するターゲット電圧の変化の度合いが大きい領域である。
例えば、金属モード領域におけるターゲット電圧の最大値が100%として設定され、化合物モード領域におけるターゲット電圧の最小値が0%として設定される。そして、金属モード領域、及び、化合物モード領域の各々におけるターゲット電圧の変化が10%未満であるとき、ターゲット電圧が10%以上90%以下であれば、遷移モードでの反応性スパッタが可能である。
なお、金属モード領域、及び、化合物モード領域の各々におけるターゲット電圧の変化が更に小さい場合であっても、ターゲット電圧が10%以上90%以下であれば、遷移モードでの反応性スパッタが確実に可能である。
化合物モードでの反応性スパッタでは、金属モードでの反応性スパッタと比べて、真空槽31内に供給される酸素ガスの流量が大きい。そのため、真空槽31内に生成されたプラズマに含まれる酸化源も多くなり、ターゲット部材51の表面が酸化されやすくなる。ターゲット部材51では、酸化された表面におけるスパッタ率が、酸化されていない表面におけるスパッタ率よりも低いため、化合物モードでのシリコン酸化膜の成膜速度(nm/min)は、金属モードでのシリコン酸化膜の成膜速度よりも低くなる。
金属モードでの反応性スパッタでは、多くともターゲット部材51のスパッタ率がほとんど変化しない程度にしかターゲット部材51の表面が酸化されないため、酸素ガスの流量が大きくなっても、成膜速度は略一定に維持される。また、化合物モードでの反応性スパッタでは、ターゲット部材51の表面における酸化反応が略飽和しているため、酸素ガスの流量が大きくなっても、成膜速度は略一定に維持される。
これに対し、遷移モードでは、酸素ガスの流量が大きくなる程、ターゲット部材51の表面での酸化反応が進むため、成膜速度が低くなる。つまり、ターゲット電圧と同様、遷移モード領域とは、金属モード領域、及び、化合物モード領域と比べて、酸素ガスの流量変化に対する成膜速度の変化の度合いが大きい領域である。
こうした遷移モードでは、シートS上にシリコン酸化膜の形成が可能であるものの、化合物モードよりは、真空槽31内に形成される酸化源の量を少なくすることができる。これにより、スパッタ粒子との反応には寄与せず、シートSに衝突する酸素ラジカルの量を少なくすることができる。結果として、反応性スパッタによるシリコン酸化膜の形成に際して遷移モード領域にてスパッタを行うことで、シートSの昇温を抑えることができる。
また、シートSの形成材料が樹脂である場合、シートの形成材料が金属である場合と比べて、シートSの変形する温度が低く、また、シートSへの入熱によって、シートSに吸着あるいは吸蔵しているガスが発生することが懸念される。そのため、シートSの形成材料が樹脂である場合に、遷移モード領域にて反応性スパッタを行うことは、シートSの形状が変わることを抑え、シートSからのガスの発生を抑える上で特に有効である。
さらに、遷移モード領域におけるシリコン酸化膜の成膜速度は、化合物モード領域におけるシリコン酸化膜の成膜速度よりも大きいため、膜厚が同じであるシリコン酸化膜を形成する上では、反応性スパッタを行う時間を短くすることができる。これにより、シートSが酸素ラジカルに曝される時間を短くすることができ、シートSの昇温をより抑えることができる。
なお、図7に示されるように、ターゲット電源44からターゲット部材51に供給されるターゲット電力によって、反応性スパッタのモードが、金属モード、遷移モード、及び、化合物モードの各々となる酸素ガスの流量の範囲は異なる。つまり、ターゲット部材51に供給される電力が大きい程、金属モード領域から遷移モード領域に変わる酸素ガスの流量、及び、遷移モード領域から化合物モード領域に変わる酸素ガスの流量のいずれもが大きくなる。
また、ターゲット部材51に供給されるターゲット電力によって、金属モード領域、遷移モード領域、及び、化合物モード領域の各々でのターゲット電圧が異なる。つまり、ターゲット電力が大きい程、各モード領域におけるターゲット電圧のいずれもが大きくなる。
しかしながら、上述のように、金属モード領域におけるターゲット電圧の最大値が100%として設定され、化合物モード領域におけるターゲット電圧の最小値が0%として設定される。そして、ターゲット電圧が10%以上90%以下であれば、ターゲット部材51に供給されるターゲット電力の大きさに関わらず、遷移モード領域での反応性スパッタが可能である。
[シリコン酸化膜の酸素透過率]
シートから発生するガスや外気の透過がシリコン酸化膜上に形成された薄膜の膜質に影響することを抑える上で、シリコン酸化膜の酸素透過率が低いことが好ましく、特に、10cc/m・day以下であることが好ましい。例えば、シリコン酸化膜上に酸化インジウムスズ膜を形成した場合、酸化インジウムスズ膜のシート抵抗値は、シリコン酸化膜の酸素透過率によって異なる。そして、シリコン酸化膜の酸素透過率が上述の範囲であるときに、酸化インジウムスズ膜の膜質、例えばシート抵抗値が、所望の抵抗値になる。
ここで、アルゴンガスの流量と酸素ガスの流量との和に対する酸素ガスの比、すなわち、O(sccm)/Ar+O(sccm)×100(%)を流量比として設定する。この流量比に対するシリコン酸化膜の酸素透過率の変化は、遷移モード領域にて極小値を示す。この極小値が含まれる所定の流量範囲が低透過率領域として設定されると、低透過率領域では、それ以外の領域に比べて、酸素透過率の変化の度合いが小さく、低透過率領域を挟む2つの領域では、低透過率領域から急激に酸素透過率が高くなる。
そして、図8に示されるように、以下の条件にて反応性スパッタを行うことにより、こうした酸素透過率を有するシリコン酸化膜が形成可能であることが本願発明者らによって見出された。
・モード 遷移モード領域
・電力密度 1W/cm以上10W/cm以下
・流量比 1%以上30%以下
なお、電力密度とは、ターゲット部材51に供給される電力を磁気回路45におけるターゲット部材51と向かい合う面の面積で割った値のことである。
以上説明したように、本開示の技術における一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)遷移モード領域にてシリコン酸化膜の形成が行われるため、シリコンと酸素ガスとの反応が不十分であることを抑えつつ、スパッタ中に形成されるラジカルの量を少なくすることができる。それゆえに、シリコン酸化膜を形成する際に、シートが昇温されることを抑えられる。
(2)シートSの形成材料には樹脂が用いられるため、遷移モード領域にてシリコン酸化膜の形成を行うことの効果がより顕著になる。
(3)遷移モード領域での反応性スパッタによって形成されたシリコン酸化膜が酸化インジウムスズ膜の下地層であるため、酸化インジウムスズ膜のシート抵抗値を好ましい値とすることができる。
(4)電力密度が、1W/cm以上10W/cm以下に設定され、且つ、アルゴンガスの流量と酸素ガスの流量との和に対する酸素ガスの流量の比が、1%以上30%以下に設定される。これにより、シリコン酸化膜の酸素透過率を酸化インジウムスズ膜の下地層としてさらに好ましい値をすることができる。
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・シートSの形成材料には、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、及び、ポリイミド等の樹脂が用いられてもよい。また、シートSの形成材料には、金属やガラス等が用いられてもよい。
・スパッタガスには、アルゴン以外の希ガス、つまり、ヘリウム、ネオン、クリプトン、及び、キセノンのいずれかが用いられてもよい。
・反応ガスには、酸素ガスに限らず、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス等が用いられてもよい。
・ターゲット部材51の主たる構成元素は、ニオブ、チタン、アルミニウム、及び、ジルコニウムのいずれかの無機元素でもよい。
・非ターゲット部材52の表面は段差面でなくともよい。
・カソード部42は、ターゲット部材のみから構成されてもよい。
・ターゲット電源44からバッキングプレート43に供給される電力は、交流電力に限らず、直流電力や高周波電力等でもよい。直流電力の場合には、カソード部42に対して間欠的に直流電力が供給される、すなわち、パルス状の直流電力が供給されることが好ましい。また、パルス状の直流電流では、デューティ比が50%以上95%以下に設定されることが好ましい。デューティ比が50%よりも小さいと、カソード部42のスパッタ速度が大きく低下し、デューティ比が95%を超えると、カソード部42に電荷が溜まりやすくなるため、カソード部42にて異常放電が生じやすくなる。そのため、デューティ比が50%以上95%以下の範囲であれば、スパッタ速度が低下することを抑えつつ、異常放電が生じることを抑えることができる。
・反応性スパッタにてモードが変わると、上述したターゲット電圧、及び、成膜速度だけでなく、真空槽31中に生成されるプラズマにおける発光の状態も変わる。例えば、反応性スパッタによってシリコン酸化膜が形成される場合、プラズマ中に含まれる酸素の発光強度は、金属モード領域よりも化合物モード領域で高く、且つ、金属モード領域と化合物モード領域で挟まれる遷移モード領域では、金属モード領域及び化合物モード領域よりも酸素ガスの流量変化に対する発光強度の変化量が大きい。これに対し、プラズマ中に含まれるシリコンの発光強度は、化合物モード領域よりも金属モード領域で高く、且つ、遷移モード領域では、金属モード領域及び化合物モード領域よりも酸素ガスの流量変化に対する発光強度の変化量が大きい。そのため、酸素ガスの流量変化に対して、プラズマ中に含まれるいずれかの粒子における発光強度の変化量が相対的に大きい状態で反応性スパッタを行うことによっても、遷移モード領域での反応性スパッタを行うことができる。プラズマ中に含まれる粒子の発光強度は、例えば、図9に示される構成にて検出することができる。
図9に示されるように、第1スパッタ室13には、真空槽31内におけるカソード部42に対向して配置されたコリメーター61と、真空槽31外に配置されてコリメーター61に接続されたプラズマエミッションモニター62とが搭載される。コリメーター61とプラズマエミッションモニター62との間には、真空槽31外にて、特定の波長の光を通過させるフィルター63と、フィルター63からの光を電気信号に変換する光電子倍増管64とが接続されている。フィルター63は、検出対象となる粒子の発光波長を通過させることができればよい。プラズマエミッションモニター62では、光電子倍増管64によって変換された電気信号が、プラズマ中の粒子における発光強度として検出される。
・反応性スパッタ時には、アルゴンガスと酸素ガスとが真空槽31内にこの順に供給された後に、ターゲット部材51に対してターゲット電力が供給されてもよい。あるいは、酸素ガスとアルゴンガスとが真空槽31内にこの順に供給された後に、ターゲット部材51に対してターゲット電力が供給されてもよい。またあるいは、酸素ガスの供給と、ターゲット電力の供給とが同時に開始されてもよい。要は、酸素ガスが供給される以前にターゲット部材51に対するターゲット電力の供給が行われなければよい。
・シートSには、酸化インジウムスズ膜が、シリコン酸化膜よりも先に形成されてもよい。こうした形成方法によっても、遷移モード領域にて形成されたシリコン酸化膜の効果を得ることは可能である。
・シリコン酸化膜と、酸化インジウムスズ膜との間には、他の膜が形成されてもよい。この場合にも、シリコン酸化膜から酸化インジウムスズ膜への酸素の拡散が少ない効果は少なからず得ることができる。
・ターゲット部材51に供給される電力の範囲が1W/cm以上10W/cm以下、且つ、アルゴンガスの流量と酸素ガスの流量との和に対する酸素ガスの流量の比が1%以上30%以下でなくともよい。ターゲット部材51の電圧が遷移モード領域に含まれる状態で形成されたシリコン酸化膜であれば、少なくともターゲット部材51の電圧が化合物モード領域に含まれる状態で形成されたシリコン酸化膜よりも、酸素透過率が好ましい値になる。
・ターゲット部材51に対する磁気回路45の位置が固定された構成に限らない。例えば、ターゲット部材51の位置が固定され、且つ、ターゲット部材51に対する磁気回路45の位置が変わる構成でもよい。また、磁気回路45の位置が固定され、且つ、磁気回路45に対するターゲット部材51の位置が変わる構成でもよい。これらの構成であっても、電力密度が1W/cm以上10W/cm以下の範囲であれば、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
・スパッタ装置10は、送り出し室11、巻き取り室12、及び、第1スパッタ室13のみを備える構成でもよいし、第1スパッタ室13のみを備え、第1スパッタ室13内に送り出しローラー21と巻き取りローラー22とが配置されていてもよい。要は、シリコン酸化膜を形成する第1スパッタ室13と、酸化インジウムスズ膜を形成する第2スパッタ室14とが、互いに独立したスパッタ装置として具体化されてもよい。
また、上述した実施形態、及び、その変形例から把握することができる技術的思想について追記する。
[付記1]
前記ターゲットは、第1表面を含むターゲット部材と、第2表面を含み、絶縁性を有する非ターゲット部材とを備えるターゲット装置の前記ターゲット部材として設定され、前記第1表面と前記第2表面とが並び、前記第1表面は、平坦面であり、前記第2表面は、段差面を含む請求項1から3にいずれか一項に記載の薄膜積層シートの形成方法。
上記付記1の構成によれば、ターゲット部材における非エロージョン領域が絶縁物で形成された絶縁部である。そのため、絶縁部にも電荷が蓄積される分、付着物での絶縁破壊が起こりにくくなる。また、付着物と絶縁物の間での放電が抑えられる。これらの理由から、上記他の態様によれば、反応性スパッタ時における異常放電を抑えることができる。なお、遷移モード領域での反応性スパッタでは、化合物モード領域での反応性スパッタよりもターゲットに印加される電圧が高くなることが多く、異常放電がより生じやすい。そのため、付記1による効果がより顕著になる。
更には、第2表面が段差面であるため、第2表面が平坦である構成と比べて、非ターゲット部材から付着物が剥がれ落ちにくくなる。
[付記2]
前記反応性スパッタでは、前記反応ガスと希ガスであるスパッタガスとが用いられ、前記反応ガスと前記希ガスとが前記ターゲット装置の周囲に供給された後に、前記ターゲット装置に対して前記ターゲット電力が供給される付記1に記載の薄膜積層シートの形成方法。
上記付記2の構成によれば、ターゲット装置にターゲット電力が供給される前に、反応ガスとスパッタガスとが供給されるため、ターゲット電力が供給されたときに、非ターゲット部材に対して導電性の無機物が付着することを抑えられる。そのため、非ターゲット部材と無機物との間で異常放電が起こることを抑えられる。
10…スパッタ装置、11…送り出し室、12…巻き取り室、13…第1スパッタ室、13C…制御装置、14…第2スパッタ室、20…シート搬送部、21…送り出しローラー、22…巻き取りローラー、23…第1成膜ローラー、24…第2成膜ローラー、25a…送り出し側ガイドローラー、25b…巻き取り側ガイドローラー、31…真空槽、31a…供給口、31b…排気口、31c…搬入口、31d…搬出口、32…スパッタガス供給部、33…反応ガス供給部、34…排気部、40…ターゲット装置、41…支持台、42…カソード部、43…バッキングプレート、44…ターゲット電源、45…磁気回路51…ターゲット部材、51s…第1表面、52…非ターゲット部材、52h…凹部、52s…第2表面、53…シールド、61…コリメーター、62…プラズマエミッションモニター、63…フィルター、64…光電子倍増管、S…シート。

Claims (5)

  1. シリコン、ニオブ、チタン、アルミニウム、及び、ジルコニウムのいずれか1つの無機元素が含まれるターゲットを備える真空槽にシートを搬入すること、
    前記無機元素と反応する反応ガスを前記真空槽に供給すること、
    前記ターゲットに電力を供給して前記反応ガスが含まれるプラズマのなかで前記ターゲットをスパッタすることにより前記シートに無機化合物膜を形成すること、を備え、
    前記ターゲットの電圧が遷移モード領域に含まれる
    薄膜積層シートの形成方法。
  2. 前記シートが樹脂製シートである
    請求項1に記載の薄膜積層シートの形成方法。
  3. シリコンターゲットを備える真空槽に樹脂製シートを搬入すること、
    酸素ガスを前記真空槽に供給すること、
    前記シリコンターゲットに電力を供給して前記酸素ガスが含まれるプラズマのなかで前記シリコンターゲットをスパッタすることにより前記シートにシリコン酸化膜を形成すること、
    前記シリコン酸化膜上に酸化インジウムスズ膜を形成すること、を備え、
    前記シリコンターゲットの電圧が遷移モード領域に含まれる
    薄膜積層シートの形成方法。
  4. 前記ターゲットにおけるスパッタされる面に磁気回路によって磁場を形成すること、
    スパッタガスを前記真空槽に供給すること、を更に備え、
    前記ターゲットに供給される電力を前記磁気回路における前記ターゲットと向かい合う面の面積によって割った値が電力密度として設定され、
    前記電力密度が、1W/cm以上10W/cm以下に設定され、
    前記スパッタガスの流量と前記酸素ガスの流量との和に対する前記酸素ガスの流量の比が、1%以上30%以下に設定される、
    請求項3に記載の薄膜積層シートの形成方法。
  5. シリコン、ニオブ、チタン、アルミニウム、及び、ジルコニウムのいずれか1つの無機元素が含まれるターゲットを備えてシートが搬入される真空槽と、
    前記無機元素と反応する反応ガスの前記真空槽への供給と、前記ターゲットへの電力の供給とによって、前記反応ガスが含まれるプラズマのなかで前記ターゲットをスパッタするプラズマ生成部と、を備え、
    前記プラズマ生成部が、
    前記ターゲットの電圧を遷移モード領域とする
    薄膜積層シートの形成装置。
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