JP6508054B2 - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents
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Description
例えば、真空プロセスを用いてガスバリアー層を作製する方法(例えば、特許文献1参照。)、密着性を向上させるため、任意の層における密度分布が傾斜構造を有するガスバリアー性フィルムを作製する方法(例えば、特許文献2参照。)、真空チャンバー内への皮膜堆積を抑制するため、閉じた磁気回路を形成する磁場発生装置を有する成膜ローラーを用いて皮膜を形成する方法(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。
少なくとも一組の下記工程(1)〜(5)を有し、
前記一対の成膜ローラーが、それぞれ磁場発生装置を内蔵し、当該一対の成膜ローラーの磁力を、前記樹脂基材の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくし、かつ、
前記一組の工程において投入する電力を前記樹脂基材幅1mあたり1kW以上としたとき、前記薄膜層が形成された前記樹脂基材の幅手方向両端部から10cmの領域を除いた内側の領域に、幅手方向に沿って等間隔に3点以上の測定点を設け、前記測定点におけるX線光電子分光法測定による膜の深さ方向の元素組成分布のうち、各前記測定点における炭素成分比率の平均値を算出し、そのうちの最大値と最小値との差の絶対値が2%未満となるように制御することを特徴とする成膜方法。
工程(1):対向配置させる前記樹脂基材間の対向空間に成膜ガスを供給する工程
工程(2):前記対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する工程
工程(3):前記対向空間にプラズマを発生させる工程
工程(4):前記樹脂基材を一対の成膜ローラーに搬送して対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する工程
工程(5):前記対向空間の成膜ガスを排気する工程
材上に薄膜層を形成する工程
特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の成膜方法。
とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の成膜方法。
少なくとも一組の下記工程(1)〜(5)を有し、
前記一対の成膜ローラーが、それぞれ磁場発生装置を内蔵し、当該一対の成膜ローラーの磁力を、前記樹脂基材の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくし、かつ、
前記一組の手段において投入する電力を前記樹脂基材幅1mあたり1kW以上としたとき、前記薄膜層が形成された前記樹脂基材の幅手方向両端部から10cmの領域を除いた内側の領域に、幅手方向に沿って等間隔に3点以上の測定点を設け、前記3点以上の測定点におけるX線光電子分光法測定による膜の深さ方向の元素組成分布のうち、各前記測定点における炭素成分比率の平均値を算出し、そのうちの最大値と最小値との差の絶対値が2%未満となるように制御することを特徴とする成膜装置。
手段(1):対向配置させる前記樹脂基材間の対向空間に成膜ガスを供給する供給口
手段(2):前記対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する磁場発生装置
手段(3):前記対向空間にプラズマを発生させる電源
手段(4):前記樹脂基材上に薄膜層を形成する一対の成膜ローラー
手段(5):前記対向空間の前記成膜ガスを排気する排気口
加温装置を有し、成膜直前の前記樹脂基材温度と、前記一対の成膜ローラーを用いて薄膜
層を形成する工程における前記樹脂基材との温度差を10℃以下とすることを特徴とする
第7項に記載の成膜装置。
的に高くなっていることを特徴とする第7項又は第8項に記載の成膜装置。
図5A及びBからもわかるように、シワのある樹脂基材上のガスバリアー層は、炭素成分比率が変化し、ガスバリアー層表面は面として不均一になっているものと考えられ、その結果、ガスバリアー性能も不均一となっていると推測される。加えて、不均一となっている部位では、正常部との色味が異なっており、これらの理由から生産性を低下させてしまっている。
≪成膜方法≫
本発明の成膜方法は、真空チャンバー内において、樹脂基材を一対の成膜ローラーに搬送して対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する成膜方法であって、少なくとも一組の下記工程(1)〜(5)を有し、前記一対の成膜ローラーが、それぞれ磁場発生装置を内蔵し、当該一対の成膜ローラーの磁力を、前記樹脂基材の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくし、かつ、前記一組の工程において投入する電力を前記樹脂基材幅1mあたり1kW以上としたとき、前記薄膜層が形成された前記樹脂基材の幅手方向両端部から10cmの領域を除いた内側の領域に、幅手方向に沿って等間隔に3点以上の測定点を設け、前記測定点におけるX線光電子分光法測定による膜の深さ方向の元素組成分布のうち、各前記測定点における炭素成分比率の平均値を算出し、そのうちの最大値と最小値との差の絶対値が2%未満となるように制御することを特徴とする。
工程(2):対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する工程
工程(3):対向空間にプラズマを発生させる工程
工程(4):樹脂基材を一対の成膜ローラーに搬送して対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する工程
工程(5):対向空間の成膜ガスを排気する工程
成膜ガスを供給する工程では、対向配置させる樹脂基材間の対向空間に機能性層の成膜ガスを供給する。例えば、ケイ素化合物を酸化させてケイ素酸化物からなるガスバリアー層を形成する場合には、ケイ素化合物のガス(原料ガス)と酸素ガス(反応用ガス)とを成膜ガスとして供給する。供給する成膜ガスは、必要に応じて、キャリアガスを用いることができ、また、プラズマの生成を促進するためにプラズマ生成用ガスを供給することもできる。キャリアガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン等の希ガスや窒素ガス等が挙げられ、プラズマ生成用ガスとしては、水素等が挙げられる。
なお、本発明において「対向空間」とは、後述する一対の成膜ローラー21及び22間の空間をいう(図1参照。)。また、樹脂基材における「対向配置」とは、薄膜層が形成される樹脂基材表面を互いに向き合うように配置することをいう。
磁場を形成する工程では、成膜ローラー21及び22の周面のうち、対向空間に面する領域付近に磁力線が膨らんだ磁場を発生させる。これにより、プラズマが収束されやすくなるため、機能性層の成膜効率を向上させることができる。
プラズマを発生させる工程では、従来公知の電源を用いて、成膜ローラー21及び22に電力を供給することにより発生させる。プラズマは、工程(2)で発生させた磁場の磁力線に沿って生成される。そのため、放電空間(対向空間)における電場と磁場によって電子が放電空間内に閉じ込められ、高密度のプラズマが生成され、成膜レートが向上する。
加温する工程では、一対の成膜ローラー21及び22によって薄膜層を形成する直前の樹脂基材と、薄膜層を形成する工程における樹脂基材との温度差が10℃以下となるように加温する。これにより、樹脂基材が急激な熱変化によって、局所的に熱収縮するのを抑制することができる。
樹脂基材上に薄膜層を形成する工程では、一対の成膜ローラー21及び22の対向空間に形成されたプラズマにより、供給された原料ガスのプラズマが生成され、樹脂基材上に原料成分が堆積することにより、機能性層の薄膜を形成する。
成膜ガスを真空排気する工程では、供給された成膜ガスのうち、樹脂基材上に機能性層の薄膜を形成するのに用いられなかった残留ガスを真空チャンバー内から排気する。
本発明の成膜装置は、真空チャンバー内において、樹脂基材を一対の成膜ローラーに搬送して対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する成膜装置であって、少なくとも一組の下記工程(1)〜(5)を有し、前記一対の成膜ローラーが、それぞれ磁場発生装置を内蔵し、当該一対の成膜ローラーの磁力を、前記樹脂基材の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくし、かつ、前記一組の手段において投入する電力を前記樹脂基材幅1mあたり1kW以上としたとき、前記薄膜層が形成された前記樹脂基材の幅手方向両端部から10cmの領域を除いた内側の領域に、幅手方向に沿って等間隔に3点以上の測定点を設け、前記3点以上の測定点におけるX線光電子分光法測定による膜の深さ方向の元素組成分布のうち、各前記測定点における炭素成分比率の平均値を算出し、そのうちの最大値と最小値との差の絶対値が2%未満となるように制御することを特徴とする。
手段(2):対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する磁場発生装置
手段(3):対向空間にプラズマを発生させる電源
手段(4):樹脂基材上に薄膜層を形成する一対の成膜ローラー
手段(5):対向空間の成膜ガスを排気する排気口
図1に示すように、成膜装置Aは、真空チャンバー10内に、一対の成膜ローラー21及び22(手段(4))、当該一対の成膜ローラー21及び22内部に設けられた磁場発生装置23及び24(手段(2))、電源25(手段(3))、供給口26(手段(1))及び排気口27(手段(5))を備えた成膜領域20を少なくとも一組有している。
一対の成膜ローラー21及び22の搬送方向Xの上流側には、加温装置31が配設されている。
真空チャンバー10内の搬送方向Xの上流側には、元巻きローラー41が回転自在に配設され、搬送方向Xの下流側には、巻取りローラー42が回転自在に配設されている。各部材間には、適宜搬送ローラーが配設されている(搬送ローラー43〜46)。
長尺の樹脂基材1は、機能性フィルムの基板であり、1層以上の機能性層が既に形成されていてもよい。
対向配置された一対の成膜ローラー21及び22間には、成膜ガスを供給する供給口26と、当該成膜ガスを真空排気する排気口27と、一対の成膜ローラー21及び22に接続された電源25と、が配設されている。
各成膜ローラー21及び22は、樹脂基材1を搬送するローラーであり、一対の電極としても機能する。
磁場発生装置23及び24は、成膜ローラー21及び22の回転によって回転しないように、各成膜ローラー21及び22内に固定されている。
磁場発生装置23及び24としては、通常の永久磁石を用いることができる。
各成膜ローラー21及び22の直径としては、放電条件の最適化、真空チャンバー10内のスペース削減等の観点から、直径φが100〜1000mmの範囲内であることが好ましく、100〜700mmの範囲内であることがより好ましい。
直径φが100mm以上であれば、十分な大きさの放電空間を形成することができ、生産性の低下を防ぐことができる。また、短時間の放電で十分な層厚を得ることができ、放電時に樹脂基材1に加えられる熱量を抑えて、残留応力を抑えることができる。直径φが1000mm以下であれば、放電空間の均一性を維持することができ、装置設計において実用的である。
電源25としては、プラズマ生成用として従来公知の電源を用いることができるが、各成膜ローラー21及び22の極性を交互に反転させることができる交流電源であることが、成膜レートを向上させることから好ましい。
電源25が一対の成膜ローラー21及び22に供給する電力量としては、樹脂基材幅1mあたり、0.1〜10kWの範囲内であることが好ましい。0.1kW/m幅以上であれば、パーティクルの発生を抑えることができる。また、10kW/m幅以下であれば、発生する熱量を抑えることができ、温度上昇による樹脂基材1のシワの発生を抑えることができる。また、交流電源とする場合、交流の周波数は50Hz〜1MHzの範囲内であることが好ましい。
供給口26は、成膜ローラー21及び22から等距離で、かつ放電空間よりも上方に配設されており、排気口27は成膜ローラー21及び22から等距離で、かつ真空チャンバー10の底面11のうち、放電空間の下方領域に配設されている。これにより、供給口26から供給される成膜ガスは、成膜ローラー21及び22間の放電空間を通過して排気口27から排出されるようになっている。
搬送ローラー43〜46は、ガイドローラーとも呼ばれ、巻き出された樹脂基材1を元巻きローラー41から一対の成膜ローラー21及び22へ、一対の成膜ローラー21及び22から巻取りローラー42へと連続的に搬送する。
巻取りローラー42は、ワインダーとも呼ばれ、成膜された樹脂基材1を巻き取る。
次に、上記成膜装置Aを用いた成膜方法について説明する。
真空チャンバー10内を十分に減圧した後、各搬送ローラー43〜46、成膜ローラー21及び22により、樹脂基材1の搬送を開始する。
実用的には、樹脂基材1の搬送速度は、0.25〜100m/minの範囲内であり、0.5〜30m/minの範囲内とすることが好ましい。0.25m/min以上であれば、熱に起因して樹脂基板1にシワが生じることを防止でき、100m/min以下であれば、形成する機能性層の厚さを所望の範囲内とすることが容易になる。
生産性向上の観点からは、樹脂基材1の搬送速度は5m/min以上であることが好ましく、10m/min以上であることがより好ましい。
次に、樹脂基材1を成膜ローラー21に搬送する前に、加温装置31によって加温する。具体的には、成膜直前の樹脂基材1と、成膜ローラー21を用いて薄膜層を形成する際の樹脂基材1との温度差が10℃以下となるように加温する。
当該樹脂基材1を成膜ローラー21まで搬送し、樹脂基材1表面上に機能性層の原料成分を堆積させる。樹脂基材1を、搬送ローラー44及び45に順次搬送し、成膜ローラー22により、更に機能性層の原料成分を堆積させ、機能性層を薄膜として形成する。
機能性層が形成された樹脂基材1を、搬送ローラー46により搬送し、巻取りローラー42により巻き取る。
樹脂基材1の搬送方向を逆にして、更に機能性層を形成する場合も、搬送ローラー43〜46、成膜ローラー21及び22による搬送順が逆になり、成膜ローラー22により原料成分を堆積させた後、成膜ローラー21により更に堆積させる以外は、同様の手順とすることができる。
図2に示すように、ガスバリアー性フィルムFは、樹脂基材1と、当該樹脂基材1上に形成されたガスバリアー層2とを備えて構成されている。
樹脂基材1は、可撓性を有する基板である。
樹脂基材1としては、透明性が高い樹脂であることが好ましい。樹脂の透明性が高く、樹脂基材1の透明性が高いと、透明性が高いガスバリアー性フィルムFを得ることができ、有機EL素子等の電子デバイスに好ましく用いることができる。
樹脂基材1は、上記樹脂が2以上積層された構成としてもよい。
弛緩処理は、延伸工程において熱固定した後、幅手方向へ延伸するテンター内、又はテンターを出た後の巻取りまでの工程で行われることが好ましい。弛緩処理は、処理温度が80〜200℃の範囲内で行われることが好ましく、100〜180℃の範囲内で行われることがより好ましい。
オフライン熱処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、複数のローラー群によるローラー搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送等により搬送させる方法(具体的には、複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面又は両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーター等による輻射熱を利用する方法、フィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻き取る等の搬送方法等を挙げることができる。熱処理の搬送張力は、できるだけ低くして熱収縮を促進することで、良好な寸法安定性が得られる。処理温度としては(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度範囲が好ましい。ここで、Tgとは、樹脂基材1のガラス転移温度をいう。
クリアハードコート層としては、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂硬化型樹脂等の硬化性樹脂を用いることができる。中でも、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化型樹脂が好ましい。
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が代表的なものとして挙げられ、中でも紫外線硬化型樹脂が好ましい。
光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
光重合開始剤の使用量は、紫外線硬化型樹脂に対して2〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
塗布方法としては、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いた塗布法、インクジェット法等のウェットプロセスを用いることができる。
クリアハードコート層の塗布液は、ウェット膜厚として0.1〜40.0μmの範囲内で塗布することが適当であり、好ましくは0.5〜30.0μmの範囲内である。また、乾燥後の層厚としては、0.1〜30.0μmの範囲内が好ましく、より好ましくは1〜10μmの範囲内である。
ガスバリアー層2は、ガスバリアー性を有する。
具体的には、ガスバリアー層2は、JIS K 7129:1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が1×10−2g/(m2・day)以下のガスバリアー性を示すことが好ましい。また、JIS K 7126:1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m2・day・atm)以下であり、かつ水蒸気透過度が1×10−5g/(m2・day)以下であるガスバリアー性を示すことがより好ましい。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。中でも、取扱いを容易とし、優れたガスバリアー性を得る観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。
これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
機能性フィルムを構成する各層の組成分布は、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)による測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線において、エッチング時間は層厚方向における表面からの距離(L)におおむね相関することから、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される値を「層厚方向における表面からの距離」として採用することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar+)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、エッチング速度(エッチングレート)としては、0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、真空チャンバー内において、樹脂基材を対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する成膜方法であって、少なくとも一組の工程(1)〜(5)を有し、かつ、当該一組の工程において投入する電力を樹脂基材幅1mあたり1kW以上としたとき、薄膜層が形成された樹脂基材の幅手方向両端部から10cmの領域を除いた内側の領域に、幅手方向に沿って等間隔に3点以上の測定点を設け、該測定点おけるX線光電子分光法測定による膜の深さ方向の元素組成分布のうち、各測定点における炭素成分比率の平均値を算出し、そのうちの最大値と最小値との差の絶対値が2%未満となるように制御する点について共通しているが、主に、下記の点で第1の実施形態と異なっている。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付している。
理由として、樹脂基材が一度プラズマ空間に入り昇温されると熱に対して強くなり、20℃以上の温度変化があってもシワが発生しなくなる。
なお、所定の温度にするまでに3段階以上に分割して昇温することが好ましい。
なお、所定の磁力にするまでに3段階以上に分割して磁力向上することが好ましい。
成膜ローラー210及び220表面温度を軸方向に沿って変更する方法としては、誘導加熱型ジャケットローラーにおいて、軸方向で異なる誘導コイルを導入する方法等が挙げられる。
成膜ローラー210及び220の磁力を軸方向に沿って変更する方法としては、成膜ローラー210及び220内部に、軸方向で異なる磁力を有する永久磁石を導入する方法等が挙げられる。
なお、樹脂基板1の幅手方向と成膜ローラー210及び220の軸方向とは、同一方向を示している。
(1)ガスバリアー性積層フィルム1の作製
成膜装置として、成膜装置Aの加温装置及び成膜装置Bの成膜領域20を二組有するプラズマCVD装置を用いて、ガスバリアー性積層フィルム1〜13を作製した。
次いで、一対の成膜ローラー間にプラズマを発生させ、この放電領域に成膜ガス(原料ガス:ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と、反応ガス:酸素ガス(放電ガスとしても機能する。)との混合ガス)を供給量比が幅手方向端部領域/幅手方向非端部領域=1.05/1となるように幅手方向で異なるように調整し、プラズマCVD法による薄膜形成を行い、幅手方向非端部領域の層厚が600nmのガスバリアー性積層フィルムを得た。
成膜条件は、下記のように設定した。
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電圧:±1.0kV
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
投入電力:3kW/m幅
成膜ローラーの表面温度:30℃
成膜ローラーの磁力:基準
成膜ローラーの形状(中央部径/端部径):1
成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度:60℃
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度を55℃に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム2を作製した。
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度を50℃に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム3を作製した。
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜条件を下記のように変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム4を作製した。
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電圧:±1.0kV
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
投入電力:3kW/m幅
成膜ローラーの表面温度:(上流側)0℃→20℃→40℃→50℃(下流側)
成膜ローラーの磁力:基準
成膜ローラーの形状(中央部径/端部径):1
成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度:25℃
ガスバリアー性積層フィルム4の作製において、成膜ローラーの表面温度を搬送方向上流側から下流側に向かって、5℃→30℃→50℃→70℃と変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム5を作製した。
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜条件を下記のように変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム6を作製した。
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電圧:±1.0kV
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
投入電力:3kW/m幅
成膜ローラーの表面温度:30℃
成膜ローラーの磁力:基準に対して、(上流側)×50%→×85%→×115%→×150%(下流側)
成膜ローラーの形状(中央部径/端部径):1
成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度:25℃
ガスバリアー性積層フィルム6の作製において、成膜ローラーの磁力を基準に対し、搬送方向上流側から下流側に向かって、×75%→×100%→×150%→×200%と変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム7を作製した。
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜条件を下記のように変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム8を作製した。
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電圧:±1.0kV
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
投入電力:3kW/m幅
成膜ローラーの表面温度:30℃
成膜ローラーの磁力:基準
成膜ローラーの形状(中央部径/端部径):1.02
成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度:50℃
ガスバリアー性積層フィルム8の作製において、成膜ローラーとして中央部径/端部径が1.05である成膜ローラーに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム9を作製した。
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜条件を下記のように変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム10を作製した。
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電圧:±1.0kV
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
投入電力:0.5kW/m幅
成膜ローラーの表面温度:30℃
成膜ローラーの磁力:基準
成膜ローラーの形状(中央部径/端部径):1
成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度:25℃
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜条件を下記のように変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム11を作製した。
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電圧:±1.0kV
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
投入電力:3kW/m幅
成膜ローラーの表面温度:30℃
成膜ローラーの磁力:基準
成膜ローラーの形状(中央部径/端部径):1
成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度:25℃
ガスバリアー性積層フィルム1の作製において、成膜条件を下記のように変更した以外は同様にして、ガスバリアー性積層フィルム12を作製した。
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電圧:±1.0kV
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
投入電力:3kW/m幅
成膜ローラーの表面温度:30℃
成膜ローラーの磁力:基準
成膜ローラーの形状(中央部径/端部径):1
成膜ローラーに入る前の加温装置により加熱された基材の温度:40℃
(1)水蒸気透過率の評価(WVTR性能)
作製した各ガスバリアー性積層フィルムについて、以下の測定方法により、水蒸気透過率を算出した。
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリアー性積層フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。得られた水分量から、下記基準に従って評価した。
評価結果を表1に示す。
○:1×10−2g/(m2・day)以上1×10−1g/(m2・day)以下
×:1×10−1g/(m2・day)より多い
得られた各ガスバリアー性積層フィルムの均一性の評価方法について、図4を参照しながら説明する。
得られたCVD膜について、XPSデプスプロファイルを測定し、膜の深さ方向の元素組成のうち、炭素成分比率の平均値を算出した。
具体的には、基材幅手方向Yの両端部から10cmを除いた領域T内において、搬送方向Xにおける製品有効長の、前方及び後方それぞれの端部から1mの位置、並びに中央にて、幅手方向Yにそれぞれ等間隔に5点の測定点(それぞれ図4中の符号Ma、Mb及びMc)を設け、各測定点の炭素成分比率の平均値を測定した。スパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar+)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度は、0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とした。ここで、製品有効長とは、各種製造条件が安定した領域の搬送方向Xにおける長さをいう。
得られた各測定点における炭素成分比率の平均値のうち、最大値と最小値との差の絶対値を算出し、下記基準に従って評価した。
評価結果を表1に示す。
○:1%以上2%未満
△:2%以上4%未満
×:4%以上
表1から明らかなように、本発明の成膜装置を用いて作製したガスバリアー性積層フィルム1〜9は、ガスバリアー性積層フィルム10〜12と比較して、ガスバリアー性に優れ、膜の深さ方向の元素組成分布が均一であることがわかる。特に、ガスバリアー性積層フィルム10においては、投入電力が小さいためガスバリアー性に劣り、ガスバリアー性積層フィルム11及び12においては、成膜直前の樹脂基材と、薄膜層を形成する工程における樹脂基材との温度差が10℃以上であるため、炭素組成分布が均一ではなかった。
2 ガスバリアー層
10 真空チャンバー
11 底面
20 成膜領域
21,22,210,220 成膜ローラー
23,24 磁場発生装置
25 電源
26 供給口
27 排気口
31 加温装置
41 元巻きローラー
42 巻取りローラー
43〜46 搬送ローラー
50 真空ポンプ
A,B 成膜装置
F ガスバリアー性フィルム
Ma,Mb,Mc 測定点
T 領域
X 搬送方向
Y 幅手方向
Claims (12)
- 真空チャンバー内において、樹脂基材を一対の成膜ローラーに搬送して対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する成膜方法であって、
少なくとも一組の下記工程(1)〜(5)を有し、
前記一対の成膜ローラーが、それぞれ磁場発生装置を内蔵し、当該一対の成膜ローラーの磁力を、前記樹脂基材の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくし、かつ、
前記一組の工程において投入する電力を前記樹脂基材幅1mあたり1kW以上としたとき、前記薄膜層が形成された前記樹脂基材の幅手方向両端部から10cmの領域を除いた内側の領域に、幅手方向に沿って等間隔に3点以上の測定点を設け、前記測定点におけるX線光電子分光法測定による膜の深さ方向の元素組成分布のうち、各前記測定点における炭素成分比率の平均値を算出し、そのうちの最大値と最小値との差の絶対値が2%未満となるように制御することを特徴とする成膜方法。
工程(1):対向配置させる前記樹脂基材間の対向空間に成膜ガスを供給する工程
工程(2):前記対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する工程
工程(3):前記対向空間にプラズマを発生させる工程
工程(4):前記樹脂基材を一対の成膜ローラーに搬送して対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する工程
工程(5):前記対向空間の成膜ガスを排気する工程 - 前記薄膜層を形成する工程前に、前記樹脂基材を加温する工程を有し、成膜直前の前記樹脂基材温度と、前記薄膜層を形成する工程における前記樹脂基材との温度差を10℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
- 各前記成膜ローラーの表面温度を、搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に高くすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成膜方法。
- 前記成膜ローラーの表面温度を、軸方向端部から中央部に向かって低くすることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の成膜方法。
- 前記成膜ローラーの磁力を、軸方向端部から中央部に向かって小さくすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の成膜方法。
- 前記成膜ローラーの断面径が、軸方向中央部から端部に向かって小さいことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の成膜方法。
- 真空チャンバー内において、樹脂基材を一対の成膜ローラーに搬送して対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する成膜装置であって、
少なくとも一組の下記工程(1)〜(5)を有し、
前記一対の成膜ローラーが、それぞれ磁場発生装置を内蔵し、当該一対の成膜ローラーの磁力を、前記樹脂基材の搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に大きくし、かつ、
前記一組の手段において投入する電力を前記樹脂基材幅1mあたり1kW以上としたとき、前記薄膜層が形成された前記樹脂基材の幅手方向両端部から10cmの領域を除いた内側の領域に、幅手方向に沿って等間隔に3点以上の測定点を設け、前記3点以上の測定点におけるX線光電子分光法測定による膜の深さ方向の元素組成分布のうち、各前記測定点における炭素成分比率の平均値を算出し、そのうちの最大値と最小値との差の絶対値が2%未満となるように制御することを特徴とする成膜装置。
手段(1):対向配置させる前記樹脂基材間の対向空間に成膜ガスを供給する供給口
手段(2):前記対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する磁場発生装置
手段(3):前記対向空間にプラズマを発生させる電源
手段(4):前記樹脂基材上に薄膜層を形成する一対の成膜ローラー
手段(5):前記対向空間の前記成膜ガスを排気する排気口 - 前記樹脂基材を前記一対の成膜ローラーに搬送する前に、前記樹脂基材を加温する加温装置を有し、成膜直前の前記樹脂基材温度と、前記一対の成膜ローラーを用いて薄膜層を形成する工程における前記樹脂基材との温度差を10℃以下とすることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
- 各前記成膜ローラーの表面温度が、搬送方向の上流側から下流側に向かって段階的に高くなっていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の成膜装置。
- 前記成膜ローラーの表面温度が、軸方向端部から中央部に向かって低くなっていることを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の成膜装置。
- 前記成膜ローラーの磁力が、軸方向端部から中央部に向かって小さくなっていることを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の成膜装置。
- 前記成膜ローラーの断面径が、軸方向中央部から端部に向かって小さくなっていることを特徴とする請求項7から請求項11までのいずれか一項に記載の成膜装置。
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