JP6897567B2 - ガスバリアーフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ガスバリアーフィルムに関する。より詳しくは、本発明は、ガスバリアー性が良好であり、ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下が少なく、かつ断裁するときの切断面のクラックの発生が抑制されたガスバリアーフィルムに関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリアー層)を形成したガスバリアーフィルムは、食品、医薬品等の分野で物品を包装する用途に用いられている。ガスバリアーフィルムを用いることによって、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止することができる。
近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリアーフィルムについて、有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)素子、液晶表示(Liquid Crystal Display:LCD)素子等の電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。これらの電子デバイスにおいては、高いガスバリアー性、例えば、ガラス基材に匹敵するガスバリアー性が要求される。
ガラス基材よりも柔軟性に富むガスバリアーフィルムを製造する方法としては、例えば、CVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)が用いられる。
例えば、特許文献1では、プラズマ化学気相成長法により形成された酸化炭化ケイ素(SiOC)膜により、ガスバリアー性、フレキシブル性、及び耐衝撃性が向上することが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたガスバリアーフィルムのガスバリアー性は十分なものではないという問題があった。また、特に電子デバイスを封止するにあたり、所望な幅及び形状にサイズを断裁するとき、切断面の微小なクラックの発生を起点として、折り曲げなどの外力に対してクラックが膜全体に伝播して、著しいガスバリアー性の低下が生じやすく、クラックの発生によってガスバリアー性能を有する有効面積が低下するという問題があった。
また、特許文献2には、層厚方向に炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を特定の比率の範囲内に収めることで、緻密な構造を取りながらクラックに対しての耐久性を向上させるガスバリアーフィルムが記載されている。
しかしながら、このようなガスバリアーフィルムは、層厚方向の緻密度、強度が比較的均一なため、ロール巻き取り時や断裁時の表面や側面から受けるストレスに対して、強度が十分に得られないという問題があった。
特開2011−73430号公報 特開2014−00782号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ガスバリアー性が良好であり、ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下が少なく、かつ断裁するときの切断面のクラックの発生が抑制されたガスバリアーフィルムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、基材上に、少なくともケイ素原子、酸素原子及び炭素原子を含有するガスバリアー層を有するガスバリアーフィルムにおいて、ガスバリアー層の最表面近傍の所定の領域におけるC−C、C=C及びC−Hの結合に由来する炭素原子の割合を所定の範囲内とすることによって、ガスバリアー性が良好であり、ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下が少なく、かつ断裁するときの切断面のクラックの発生が抑制されたガスバリアーフィルムを提供できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材上に、少なくともケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)を含有するガスバリアー層を有し、
X線光電子分光法よって得られたスペクトルにおいて、ガスバリアー層の層厚方向のケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたとき、炭素原子に関するC1sの波形解析に基づく、C−C、C=C及びC−Hの結合に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の割合X(%)が、下記条件(1)を満たし、かつ、
38℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、0.010g/(m2・day)未満であることを特徴とするガスバリアーフィルム。
条件(1):前記ガスバリアー層の層厚方向に対して、前記ガスバリアー層の最表面の層厚を0%、前記基材との界面の層厚を100%としたときの、層厚5〜30%領域における、
前記割合Xの最大値(%)が、5〜41(%)の範囲内であり、
前記割合Xの平均値(%)が、〜20%の範囲内であり、かつ、
前記割合Xの最小値(%)が、〜10%の範囲内である。
.前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの最大値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの最大値(%)よりも大きいことを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルム。
.前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの平均値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの平均値(%)よりも大きいことを特徴とする第1項又は第2項に記載のガスバリアーフィルム。
.前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの最小値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの最小値(%)よりも大きいことを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
本発明の上記手段により、ガスバリアー性が良好であり、ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下が少なく、かつ断裁するときの切断面のクラックの発生が抑制されたガスバリアーフィルムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明のガスバリアーフィルムは、ガスバリアーフィルム層の最表面近傍の領域に、C−C、C=C及びC−Hの結合に由来する炭素原子を所定の割合で存在させており、当該炭素原子の存在量は、従来のガスバリアーフィルムと比較して多くなっている。これにより、本発明のガスバリアー層の最表面近傍の領域を、緻密性が高く、適度な柔軟性を有する領域にできたため、ガスバリアー性が良好であり、かつロール巻き取り時の表裏面接触によるダメージを抑えることができたと考えられる。さらに、ガスバリアー層の最表面近傍の領域を、微細な空隙の少ない領域にすることができたため、当該最表面近傍側から断裁した際に、切断面のクラックの発生が抑制され、断裁時のせん断力による亀裂が入りにくくなったものと考えられる。
本発明のガスバリアーフィルムの一例を示す断面図 本発明に係るガスバリアー層のケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の分布の一例を示すグラフ 本発明に係るガスバリアー層の形成に用いられる製造装置の一例を示す模式図 比較例に係るガスバリアー層のケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の分布の一例を示すグラフ
本発明のガスバリアーフィルムは、基材上に、少なくともケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)を含有するガスバリアー層を有し、
X線光電子分光法よって得られたスペクトルにおいて、ガスバリアー層の層厚方向のケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたとき、炭素原子に関するC1sの波形解析に基づく、C−C、C=C及びC−Hの結合に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の割合X(%)が、条件(1)を満たし、かつ、
38℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、0.010g/(m ・day)未満であることを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する技術的特徴である
本発明の実施態様としては、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの平均値(%)が、2〜20%の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの最小値(%)が、1〜10%の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの最大値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの最大値(%)よりも大きいことが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの平均値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの平均値(%)よりも大きいことが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの最小値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの最小値(%)よりも大きいことが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
[ガスバリアーフィルム]
図1に示すとおり、本発明のガスバリアーフィルム1は、基材2上に、ガスバリアー層3が積層されて構成されている。
ガスバリアー層3は、酸化炭化ケイ素(SiOC)を含有するとともに、その組成及び結合状態が層厚方向において変化している。
≪ガスバリアー層≫
本発明に係るガスバリアー層は、少なくともケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)を含有し、X線光電子分光法よって得られたスペクトルにおいて、ガスバリアー層の層厚方向のケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたとき、炭素原子に関するC1sの波形解析に基づく、C−C、C=C及びC−Hの結合に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の割合X(%)が、下記条件(1)を満たし、かつ、38℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、0.010g/(m2・day)未満であることを特徴とする。
条件(1):前記ガスバリアー層の層厚方向に対して、前記ガスバリアー層の最表面の層厚を0%、前記基材との界面の層厚を100%としたときの、層厚5〜30%領域における、
前記割合Xの最大値(%)が、5〜41(%)の範囲内であり、
前記割合Xの平均値(%)が、〜20%の範囲内であり、かつ、
前記割合Xの最小値(%)が、〜10%の範囲内である。
これにより、ガスバリアー層を、緻密性が高く、適度な柔軟性を有し、微細な空隙の少なくできるため、ガスバリアー性が良好であり、ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下が少なく、かつ断裁するときの切断面のクラックの発生が抑制されるという効果を得ることができる。
ここで、本発明でいう「基材との界面」とは、「ガスバリアー層を形成する組成の一部である酸素原子(O)の組成比が、30%以下となるときのガスバリアー層の層厚方向の最表面側からの深さの位置」のことをいう。なお、酸素原子(O)の組成比は、後述するX線光電子分光法によって算出することができる。
また、本発明のガスバリアーフィルムは、層厚5〜30%領域における前記割合Xの最大値(%)、平均値(%)及び最小値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの最大値(%)、平均値(%)及び最小値(%)よりも、それぞれ大きいことが好ましい。これにより、ガスバリアーフィルムの断裁や、ロール巻き取り時においてストレスが集中するガスバリアー層の最表面近傍である層厚5〜30%領域に、C−C、C=C及びC−Hに由来する炭素結合の量を絶対量としてより多く分布させ、本発明の効果をより有効に発現させることができる。
<X線光電子分光法>
炭素分布曲線(ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の最表面からの距離(L)と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す曲線)、ケイ素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対するケイ素原子数の比率(ケイ素原子比率)との関係を示す曲線)及び酸素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する酸素原子数の比率(酸素原子比率)との関係を示す曲線)を、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。
(元素分布プロファイルの測定)
XPSデプスプロファイルの測定は、例えば、下記条件にて測定を行い、層厚方向の薄膜層の表面からの距離に対する、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得ることができる。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):2nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。
なお、各領域における原子比率(at%)は、XPSデプスプロファイル測定で深さ方向にエッチングして、例えば、2nm間隔で測定した値を平均化した値とする。
以上のように、ガスバリアー層全領域を測定するワイドスキャンスペクトル分析を行うことによって、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得ることができる。
<炭素原子の結合状態の分析>
炭素原子に関しては、C1sの高分解能スペクトル(ナロースキャン分析)により、炭素の結合状態を分析する。具体的には、本発明においては、例えば、炭素結合(C)に関して、C1sの波形解析に基づいて、(1)C−C、C=C及びC−H、(2)C−SiO、(3)C−O、(4)C=O、(5)O−C−O、のように5つの結合群に分けて、それぞれのピークの強度比から、(1)〜(5)に由来する炭素原子の割合を算出する。そして、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の各スペクトルのピーク強度の比率より換算される組成比の合計量(100%)に対する、それぞれの結合群(1)〜(5)に由来する炭素原子の割合(%)を算出する。なお、ピーク強度の解析は、例えば、データ解析ソフトウェアPeakFit(SYSTAT Software Inc.製)を用いて行うことができる。
また、図2に、本発明のガスバリアーフィルムについての分析結果を示す。図2のグラフは、横軸を、ガスバリアー層の層厚方向の深さ(最表面を0%とし、基材との界面を100%としたときの深さ(%))とし、縦軸を、X線光電子分光法によって求めたケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたときの各原子の割合(%)を表している。また、炭素原子については、上述した5つの結合群の割合に分けて表している。図2中の(1)〜(5)は、それぞれ、(1)C−C、C=C及びC−H、(2)C−SiO、(3)C−O、(4)C=O、(5)O−C−Oに由来する炭素原子に対応し、(6)は酸素原子、(7)はケイ素原子に対応している。
なお、上述の説明では、炭素原子については、C1sの波形解析に基づいて、(1)C−C、C=C及びC−H、(2)C−SiO、(3)C−O、(4)C=O、(5)O−C−O、のように5つの結合群に分けたが、ガスバリアー層の組成に応じて、C1sの波形解析される全ての炭素結合に関するピークを分析し、それぞれの割合について算出する。
<ガスバリアー層の層厚の測定方法>
ガスバリアー層の層厚は、ガスバリアー層の積層方向において、最表面から基材との界面までの深さを、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面観察により測定することによって求めることができる。透過型電子顕微鏡による断面観察では、層厚を任意に10箇所測定し、平均した値をガスバリアー層の層厚とする。
(層厚方向の断面のTEM画像)
断面のTEM観察として、観察試料を以下の集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置により薄片作製後、TEM観察を行う。ここで、試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、そのコントラスト差によってガスバリアー層の層厚を測定することができる。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:Ga(30kV)
試料厚さ:100〜200nm
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
<ガスバリアー層の層厚>
本発明に係るガスバリアー層の層厚は、薄膜化及びガスバリアー性の両立の観点から、10〜500nmの範囲内であることが好ましく、20〜300nmの範囲内であることがより好ましい。
<ガスバリアー層の水蒸気透過度>
ガスバリアー層は、ガスバリアー性を有することが好ましい。ここで、ガスバリアー性を有するとは、基材上にガスバリアー層のみを積層させ、MOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置Aquatranを用いて測定された水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%RH)が、0.1g/(m・day)未満であることを指し、0.01g/(m・day)未満であることが好ましい。
≪基材≫
本発明のガスバリアーフィルムの基材としては、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリアー層を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。
プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
ガスバリアーフィルムを有機EL素子等の電子デバイスの基板として使用する場合は、基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15×10−6〜100×10−6(/K)の範囲内で、かつガラス転移温度Tgが100〜300℃の範囲内の樹脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。
すなわち、これらの用途にガスバリアーフィルムを用いる場合、ガスバリアーフィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリアーフィルムにおける基材の線膨張係数が15×10−6〜100×10−6(/K)の範囲内であることで、熱耐性に強く、またフレキシビリティがよいものとなる。基材の線膨張係数やTgは、添加剤などによって調整することができる。
基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(なお、括弧内の数値は、Tgを示す。)。特に、透明性を求める場合には、脂環式ポリオレフィン等を使用するのが好ましい。
ガスバリアーフィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムが透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
光線透過率は、JIS K 7105:1981に記載された方法、すなわち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、ガスバリアーフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
ガスバリアーフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚さは、用途によって適宜選択されるため特に制限はないが、典型的には1〜800μmの範囲内であり、好ましくは10〜200μmの範囲内である。これらのプラスチックフィルムは、従来のガスバリアーフィルムに用いられている公知の透明導電層や平滑層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、又は基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲内が好ましい。
基材の両面、少なくともガスバリアー層を設ける側には、接着性向上のための公知の種々の処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、平滑層の積層等を、必要に応じて組み合わせて行うことができる。
≪アンカーコート層≫
本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。アンカーコート層の構成材料、形成方法等は、特開2013−52561号公報の段落0229〜0232に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪平滑層≫
本発明のガスバリアーフィルムは、基材のガスバリアー層を有する面に平滑層を有していてもよい。平滑層は、突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために、又は、樹脂基材に存在する突起により、ガスバリアー層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。平滑層の構成材料、形成方法、表面粗さ、層厚等は、特開2013−52561号公報の段落0233〜0248に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪ブリードアウト防止層≫
本発明のガスバリアーフィルムは、ブリードアウト防止層を更に有することができる。ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、樹脂基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。ブリードアウト防止層の構成材料、形成方法、層厚等は、特開2013−52561号公報の段落0249〜0262に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪電子デバイス≫
上記したような本発明のガスバリアーフィルムは、優れたガスバリアー性、透明性、屈曲性を有する。このため、本発明のガスバリアーフィルムは、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機EL素子、液晶表示素子等の電子デバイスに用いられるガスバリアーフィルム及びこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
[ガスバリアーフィルムの製造方法]
本発明に係るガスバリアー層は、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD、PECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)、以下、単に「プラズマCVD法」とも称する。)により形成することができる。
プラズマCVD法としては、特に限定されないが、国際公開第2006/033233号に記載の大気圧又は大気圧近傍でのプラズマCVD法、対向ローラー電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法が挙げられる。プラズマCVD法は、ペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であってもよい。
中でも、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する(ロールtoロール方式の)放電プラズマ化学気相成長法により形成することが好ましい。上述したように、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、極値を有し、かつ、各領域における炭素原子比率が一定範囲内に制御されたガスバリアー層を容易に作製可能であり、層内の応力バランスが適切なガスバリアーフィルムを作製することができる。さらに、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、ガスバリアー層が緻密化し、ガスバリアー性を向上させることができる。
以下、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により、本発明に係るガスバリアー層を形成する方法について説明する。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに基材(ここでいう基材には、基材が処理された形態も含む。)を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。
このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できる。加えて、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量に応じて調整されることが好ましい。
以下、図3を参照しながら、本発明に係るガスバリアー層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図3は、本発明に係るガスバリアー層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図3に示す製造装置10は、送出しローラー12と、搬送ローラー13〜18と、成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、成膜ローラー19及び20の内部にそれぞれ設置された磁場発生装置23及び24と、巻取りローラー25を備えている。また、このような製造装置10においては、少なくとも成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、磁場発生装置23及び24とが成膜(真空)チャンバー28内に配置されている。さらに、このような製造装置10において、成膜チャンバー28は図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより成膜チャンバー28内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
送出しローラー12及び搬送ローラー13は、搬送系チャンバー27内に配置され、巻取りローラー25及び搬送ローラー18は、搬送系チャンバー29内に配置されている。搬送系チャンバー27及び29と成膜チャンバー28とは、それぞれ連結部30及び31を介して接続されている。例えば、連結部30及び31に真空ゲートバルブを設けて成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離してもよい。真空ゲートバルブを用いることによって、例えば、成膜チャンバー28内のみを真空系とし、搬送系チャンバー27及び29内は大気下とすることができる。また、成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離することにより、成膜チャンバー28内で発生したパーティクルによって搬送系チャンバー27及び29が汚染されることを抑制することができる。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラー19及び20がそれぞれプラズマ発生用電源22に接続されている。そのため、このような製造装置10においては、プラズマ発生用電源22により電力を供給することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー19と成膜ローラー20とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。
また、このような製造装置10においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を配置することにより、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
このような製造装置10によれば、CVD法により基材2(ここでいう、基材には、基材が処理された形態も含む。)の表面上にガスバリアー層3を形成することが可能であり、成膜ローラー19上において基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させつつ、更に成膜ローラー20上においても基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させることもできるため、基材2の表面上にガスバリアー層を効率よく形成することができる。
成膜ローラー19及び20の内部には、成膜ローラー19及び20が回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置23及び24がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、一方の成膜ローラー19に設けられた磁場発生装置23と他方の成膜ローラー20に設けられた磁場発生装置24との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置23及び24がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、各成膜ローラー19及び20の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束されやすくなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置23と他方の磁場発生装置24とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、それぞれの磁場発生装置23及び24について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜であるガスバリアー層3を形成することができる点で優れている。
各成膜ローラー19及び20における基材2への張力は、全て同じであってもよいが、成膜ローラー19又は成膜ローラー20における張力のみ高くして成膜してもよい。成膜ローラー19及び20における基材2への張力を高くすることによって、基材2と成膜ローラー19及び20との密着性が向上し、熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
成膜ローラー19及び20としては、適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー19及び20としては、より効率よく薄膜を形成させるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー19及び20の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲内、特に300〜700mmφの範囲内が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。各成膜ローラー19及び20は、ニップロールを備えていてもよく、ニップロールを備えることで、基材2の成膜ローラー19及び20への密着性が向上する。これにより、基材2と成膜ローラー19及び20との間で熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
このような製造装置10においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置10によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー19上にて基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させ、更に成膜ローラー20上にてガスバリアー層成分を堆積させることができるため、基材2の表面上にガスバリアー層を効率よく形成することが可能となる。
製造装置10に用いる送出しローラー12及び搬送ローラー13〜18としては、適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー25としても、基材2上にガスバリアー層3を形成したガスバリアーフィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。また、送出しローラー12や巻取りローラー25は、ターレット式であってもよい。ターレットは、2軸以上の多軸であってもよく、そのうち一部の軸のみを大気開放できる構造であってもよい。
また、ガス供給管21及び真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間(放電領域、成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず。)は、対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管21と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に効率よく成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
なお、図3においては、ガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線上に設けられているが、これに限定されず、例えば、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線から、どちらか一方側にずれていてもよい(左右方向に中心線からずらしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線からずらすことによって、片方の成膜ローラーに近く、もう片方の成膜ローラーからは遠くなるため、原料ガスの供給が成膜ローラー19上で形成される膜組成と成膜ローラー20上で形成させる膜組成とが異なるようになり、膜質を変えたいときなどに適宜ガス供給管21の位置をずらせばよい。また、ガス供給管21は、適宜中心線上で成膜ローラーから離したり近づけたりしてもよい(上下方向に中心線上で配置位置を動かしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で遠ざけ、放電空間からガス供給管21を離すことによって、ガス供給管21にパーティクルが付着することを抑制できるなどの利点があり、ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で放電空間に近づけることによって成膜レートを向上させることができるなどの利点がある。
図3において、ガス供給管21は一つであるが、ガス供給管21は複数あってもよく、各ノズルから異なる供給ガスを放出する形態であってもよい。
さらに、プラズマ発生用電源22としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源22は、これに接続された成膜ローラー19と成膜ローラー20とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。
また、このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜20kWの範囲内とすることが好ましく、100W〜10kWの範囲内とすることがより好ましく、かつ交流の周波数を50Hz〜13.56MHzの範囲内とすることが好ましく、50Hz〜500kHzの範囲内とすることがより好ましい。
また、プラズマプロセス安定化の点から、高周波電流波及び電圧波がどちらも正弦波となるような高周波電源を用いてもよい。
図3においては、一つのプラズマ発生用電源22で成膜ローラー19及び20の双方に給電している(両成膜ローラー給電)が、このような形態に限定されるものではなく、一方の成膜ローラーに給電し(片側成膜ローラー給電)、他方の成膜ローラーをアースする形態であってもよい。
また、成膜ローラーへの給電方法としては、ローラー端の一方のみから給電するローラー片端給電でもよいし、ローラーの両端から給電するローラー両端給電であってもよい。高周波帯を供給する場合には、均一な供給が可能となることから、ローラー両端給電であってもよい。
また、給電方法としては、異なる周波数を印加する2周波給電を行ってもよく、一方の成膜ローラーに異なる2周波を印加する形態であっても、一方の成膜ローラーと他方の成膜ローラーとで異なる周波数を印加する形態であってもよい。このような2周波給電により、プラズマ密度が上がり、成膜速度を向上させることができる。
また、図3には図示していないが、放電空間のプラズマ発光強度を外部からモニタリングし、所望の発光強度でない場合には、磁場間距離(対向ローラー間距離)、磁場強度、電源の印加電力、電源周波数、供給ガス量などを調整して所望のプラズマ発光強度とするフィードバック回路を有していてもよい。このようなフィードバック回路を有することによって、成膜/生産を安定にすることができる。
また、磁場発生装置23及び24としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、基材2としては、本発明で用いられる基材の他に、ガスバリアー層3をあらかじめ形成させたものを用いることができる。このように、基材2としてガスバリアー層3をあらかじめ形成させたものを用いることにより、ガスバリアー層3の層厚を厚くすることも可能である。
このような図3に示す製造装置10を用いて、例えば、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含むガスバリアー層を形成することができる。この際、ガスバリアー層の炭素原子の含有量の原子比率を制御する方法は特に限定されるものではないが、用いられる原料の比率、電力、圧力などを制御することにより、炭素原子の含有量の原子比率を制御することができる。
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができ、0.5〜50Pa程度であることが好ましく、0.5〜10Paの範囲内とすることがより好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間に放電するために、プラズマ発生用電源22に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー19及び20に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概にいえるものでないが、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。印加電力が0.1kW(100W)以上であれば、パーティクルが発生するのを十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため、基材が熱負けすることなく、成膜時にシワが発生するのを防止できる点で優れている。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜100m/minの範囲内とすることがより好ましい。
ガスバリアー層におけるケイ素原子、酸素原子、炭素原子のそれぞれの組成比、さらに、炭素結合の種類の比率の調整は、例えば、以下の方法(1)〜(4)を採用することで本発明の範囲内に制御することができる。
(1)プラズマCVD用原料ガスによる制御
分子内に炭素、水素、酸素及びケイ素の比率の異なるプラズマCVD用原料を適切に使用することによって、制御することができる。
具体的には、プラズマCVD用原料としては、分子内にSi−C結合の比率が低い有機ケイ素化合物が好ましく用いられる。これらの有機ケイ素化合物における1分子中のSi−Cの結合は、1分子中のSi原子1個に対して2個以下が好ましく、より好ましくは、1個又は0個である。
具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等のジシロキサン類よりも、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンや、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のSiを1分子中に1個含有するアルコキシシランが好ましく用いられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(2)反応ガスである酸素ガスの供給量による制御
CVD製膜時に供給する反応ガスである酸素ガスの供給量の増減させることによって、制御することができる。
具体的には、上記の好ましい原料を酸化してケイ素原子、酸素原子及び炭素原子を主成分とするガスバリアー膜を形成する際に、完全に酸化させない程度に酸素ガスの供給量を抑制し、逆にガスバリアー層中に過剰な炭素が残存しない程度に原料ガスに対して、酸素ガスを一定量供給することによって制御する。
(3)不活性ガスの添加量の制御
成膜中に、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを供給し、この不活性ガスの供給量を調整することによって、ガスバリアー層を形成する際のプラズマを安定化させて、酸化反応を調整することで、制御することができる。
(4)プラズマ放電における電極間の距離の制御
プラズマ放電を生成するための電極間の距離を連続的に変化させることによっても、制御することができる。
前述の一対のロール電極が対面する装置を用いる場合には、電極に接する基材表面で生成するプラズマ空間が連続的に変化することになるため、電極間の距離が連続的に変化することによる成膜条件の変化によって、ガスバリアー層内の組成を連続的に変化させることができる。
次に、ガスバリアー層を形成させるための、成膜ガスについて説明する。
成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。本実施形態のガスバリアー層3は、酸素を含むことから、反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができ、簡便性の観点から酸素を用いることが好ましい。また、その他、窒化物を形成するための反応ガスを用いてもよく、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でも、又は2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、原料ガスを成膜チャンバー28内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、水素及び窒素を用いることができる。
このように、成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合、原料ガスと反応ガスとの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に酸化反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率100%に対して、50%以上、300%以上に調整されることが好ましい。反応ガスの比率をこの範囲で調整することで、形成されるガスバリアー層内部の炭素原子を好ましい組成分布に調整でき、優れたガスバリアー性や耐屈曲性を得ることができる。
上記比率よりも低い場合は、ガスバリアー層内の炭素原子の比率が高くなり十分なガスバリアー性を維持することが難しくなり、逆に上記比率よりも高い場合は参加が進むことにより本発明の炭素に関わる結合をガスバリアー層内に形成しにくくなる。
図3に示す製造装置10を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を成膜チャンバー28内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に放電を発生させることにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー19上の基材2の表面上及び成膜ローラー20上の基材2の表面上に、第1回目の成膜層がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー19及び20のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成されて、磁場にプラズマを収束させる。このプロセスを前述の条件の一つ又は複数を変化させた第2回目の成膜層、第3回目の成膜層と繰り返すことによって、層厚方向に各構成原子の組成が連続的に変化することとなる。
具体的には、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線において、基材2が成膜ローラー19のA地点及び成膜ローラー20のB地点を通過する際に、炭素分布曲線の極大値と酸素分布曲線の極小値とが形成される。これに対して、基材2が成膜ローラー19のC1及びC2地点、並びに成膜ローラー20のC3及びC4地点を通過する際に、炭素分布曲線の極小値と酸素分布曲線の極大値とが形成される。
このような極値の存在は、膜内の炭素原子及び酸素原子の存在比が均一ではない層であることを示すものであり、部分的に炭素原子が少ない緻密性の低い部分が存在することで、層全体がフレキシブルな構造となり、屈曲に対する耐久性が向上する。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、本発明に係るガスバリアー層を、図3に示す対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロールtoロール方式)を用いたプラズマCVD法によって、成膜することを特徴とするものである。これは、対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロールtoロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、高温高湿下でのガスバリアー性が高く、機械的強度、特にロールtoロールでの搬送時の耐久性、ガスバリアー性を低下させる欠陥が少ないガスバリアー層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリアーフィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪ガスバリアーフィルム1〜12の作製≫
(樹脂基材の準備)
シートロール状の樹脂基材として、熱可塑性樹脂支持体であって、両面に易接着加工された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)を用いた。
(アンカーコート層の形成)
上記樹脂基材の片方の易接着面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR(登録商標)Z7501を用い、乾燥後の層厚が3μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件として、80℃で3分間の乾燥を行った。次いで、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを使用し、硬化条件;1.0J/cmで硬化を行い、アンカーコート層を形成した。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記樹脂基材のもう一方の易接着面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR(登録商標)Z7535を、乾燥後の層厚が3μmとなるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥した後、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを用い、硬化条件:1.0J/cmで硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。このブリードアウト防止層を形成後、圧力5Paの減圧下、温度35℃の環境下で96時間保管して調湿した樹脂基材として用いた。
(ガスバリアー層の形成:ローラーCVD法)
図3に記載の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、この方法をローラーCVD法と称す。)を用い、樹脂基材のブリードアウト防止層を形成した面が成膜ローラーと接触するようにして、樹脂基材を装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)のうち、原料ガス、酸素ガス、真空チャンバー内の真空度、及びプラズマ発生用電源からの印加電力を下記に記載の範囲内で変化させて炭素原子比率が異なるようにして、複数回組み合わせることにより、アンカーコート層上に最終的な層厚が後述するガスバリアー層の層厚の測定方法によって140nmとなるように成膜し、これをガスバリアー層とした。
なお、本発明のガスバリアー層は、炭素原子比率を高くするため、主として全供給ガス中の原料ガスの供給量を増やす、あるいは酸素ガスの供給量を減らすことで調整を行い、層厚の調整のために真空チャンバー内の真空度を増減した。また、原料ガスと酸素ガスの供給量は、表1に記載の値となるように調整して供給した。
なお、表1において、TMCTS及びMTMSは、それぞれテトラメチルシクロテトラシロキサン及びメチルトリメトキシシランの略記である。
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(表1に記載)の供給量:50又は100sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:50〜1000sccm
真空チャンバー内の真空度:1.0〜3.5Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1.0〜3.0kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
樹脂基材の搬送速度:3〜6m/min
また、ガスバリアーフィルム1〜9は、搬送速度3m/minの1回で成膜した。また、ガスバリアーフィルム10〜12は、搬送速度6m/minの2回で成膜し、1回目(下層側)と2回目(上層側)の酸素ガス供給量は、表1に記載した供給量(sccm)で成膜した。
<ガスバリアー層の層厚の測定方法>
ガスバリアー層の層厚は、ガスバリアー層の積層方向において、最表面から基材との界面までの深さを、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面観察により測定した。本発明では、層厚を任意に10箇所測定し、平均した値をガスバリアー層の層厚とした。
(層厚方向の断面のTEM画像)
断面のTEM観察として、観察試料を以下の集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置により薄片作製後、TEM観察を行った。ここで、試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、コントラスト差によってガスバリアー層の層厚を測定した。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:Ga(30kV)
試料厚さ:100〜200nm
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
≪ガスバリアー層の分析≫
(元素分布プロファイルの測定)
上記形成したガスバリアー層について、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向の薄膜層の表面からの距離に対する、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得た。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):2nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
以上のようにして、ガスバリアー層の全層領域を測定するワイドスキャンスペクトル分析を行うことによって、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得た。ここで、ガスバリアー層を形成する全組成の一部である酸素原子(O)の組成比が、30%以下となるときのガスバリアー層の層厚方向の最表面側からの深さを算出し、界面の位置とした。そして、ガスバリアー層の層厚方向に対して、ガスバリアー層の最表面を0%とし、基材との界面を100%として、以下のとおり、ガスバリアー層のケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の分析を行った。
(ガスバリアー層のケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の分析)
ガスバリアー層の層厚方向の深さについて、X線光電子分光法によって求めたケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたときの各原子の割合(%)を算出した。また、炭素原子に関しては、C1sの高分解能スペクトル(ナロースキャン分析)により、炭素の結合状態を分析した。具体的には、(1)C−C、C=C及びC−H、(2)C−SiO、(3)C−O、(4)C=O、(5)O−C−Oの5つの結合群に分けて、それぞれスペクトルのピーク強度の比率より換算される組成比から、それぞれの群に由来する炭素原子の割合を算出した。
ここで、ガスバリアー層の層厚方向のケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたとき、炭素原子に関するC1sの波形解析に基づく、C−C、C=C及びC−Hの結合(上記(1))に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の割合を割合X(%)とした。
表1には、ガスバリアー層の層厚方向に対して、ガスバリアー層の最表面を0%とし、基材との界面を100%としたとき、層厚5〜30%領域及び層厚30〜95%領域における割合Xの最大値(%)、平均値(%)、最小値(%)を示した。
また、本発明のガスバリアーフィルム5におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の分析結果のグラフを図2に示す。また、参考例として、比較例のガスバリアーフィルム1におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の分析結果のグラフを図4に示す。
なお、図2及び図4のグラフは、横軸を、ガスバリアー層の層厚方向の深さ(最表面を0%とし、基材との界面を100%としたときの深さ(%))とし、縦軸を、X線光電子分光法によって求めたケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたときの各原子の割合(%)を表している。ここで、炭素原子については、上述した5つの結合群の割合に分けて表している。また、図2及び図4中の(1)〜(5)は、それぞれ、(1)C−C、C=C及びC−H、(2)C−SiO、(3)C−O、(4)C=O、(5)O−C−Oに由来する炭素原子に対応し、(6)は酸素原子、(7)はケイ素原子に対応している。
≪ガスバリアーフィルムの評価≫
<ガスバリアー性の評価>
(1)水蒸気透過度(WVTR)の測定
作製した各ガスバリアーフィルムについて、MOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置Aquatranを用いて、38℃、90%RHにおける水蒸気透過度[g/(m・day)]を測定し、下記の評価ランクに従って、ガスバリアー性を評価した。
評価結果を表1に示す。本発明では、水蒸気透過度が、0.100g/(m・day)未満である場合(ランク3〜5)を合格とした。
5:水蒸気透過度が、0.005g/(m・day)未満である
4:水蒸気透過度が、0.005g/(m・day)以上0.010g/(m・day)未満である
3:水蒸気透過度が、0.010g/(m・day)以上0.100g/(m・day)未満である
2:水蒸気透過度が、0.100g/(m・day)以上0.500g/(m・day)未満である
1:水蒸気透過度が、0.500g/(m・day)以上である
<ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下の評価:耐傷性の評価>
作製した各ガスバリアーフィルムを、10mの長さを半径3.8cm、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻き出した後のガスバリアーフィルムについて、カルシウムテストによる腐食箇所の数を、ロール状に巻き取りをしなかったガスバリアーフィルムの腐食箇所の数と比較して、腐食箇所の増加率によって評価した。
以下、カルシウムテストについて説明する。ガスバリアー層面(最表面)に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE−400)を用い、ガスバリアーフィルム試料の蒸着させたい部分(1辺5cm角の正方形)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、カルシウム蒸着面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料(評価用セル)を60℃、90%RHの高温高湿下で360時間保存した後、Ca蒸着層の初期状態から新たに成長した腐食点を、光学顕微鏡を用いて観察し、下記の評価ランクに従って評価した。本発明では、腐食箇所の発生数の増加率が、50%未満である場合(ランク3〜5)を合格とした。評価結果は、表1に示す。
なお、ガスバリアーフィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリアーフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下で保存を行い、1000時間経過後でも直径が100μmを超えて成長した腐食点が発生しないことを確認した。
5:腐食箇所の発生数の変化が全く認められない
4:腐食箇所の発生数の増加率が、10%未満
3:腐食箇所の発生数の増加率が、10%以上50%未満
2:腐食箇所の発生数の増加率が、50%以上100%未満
1:腐食箇所の発生数の増加率が、100%を超える
<断裁時の切断面のクラックの発生数の評価:耐クラック性の評価>
各ガスバリアーフィルムを、ディスクカッターDC−230(CADL社)を用いて10cm角サイズに、ガスバリアー層の最表面側からガスバリアー層の層厚方向に向かって断裁した後、断裁した各端部をルーペ観察し、四辺のクラックの総発生数を確認し、下記の基準に従って断裁加工適性を評価した。本発明では、クラックの発生数が5本以下である場合(ランク3〜5)を合格とした。評価結果は、表1に示す。
5:クラック発生が全く認められない
4:クラックの発生数が、1本以上、2本以下
3:クラックの発生数が、3本以上、5本以下
2:クラックの発生数が、6本以上、10本以下
1:クラックの発生数が、11本以上
Figure 0006897567
上記結果より、本発明のガスバリアーフィルムは、ガスバリアー性が良好であり、ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下が少なく、かつ断裁するときの切断面のクラックの発生が抑制されたガスバリアーフィルムであった。これに対して、比較例のガスバリアーフィルムは、いずれかの項目において、劣るものであった。
本発明のガスバリアーフィルムは、ガスバリアー性が良好であり、ロール巻き取り時の表裏面接触によるガスバリアー性の低下が少なく、かつ断裁時のクラックの発生が抑制されている。このようなガスバリアーフィルムは、有機エレクトロルミネッセンス素子や液晶表示素子等の高度なガスバリアー性が必要な電子デバイスに好適に利用できる。
1 ガスバリアーフィルム
2 基材
3 ガスバリアー層
10 製造装置
12 送出しローラー
13〜18 搬送ローラー
19、20 成膜ローラー
21 ガス供給管
22 プラズマ発生用電源
23、24 磁場発生装置
25 巻取りローラー、
27、29 搬送系チャンバー
28 成膜チャンバー
30、31 連結部

Claims (4)

  1. 基材上に、少なくともケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)を含有するガスバリアー層を有し、
    X線光電子分光法よって得られたスペクトルにおいて、ガスバリアー層の層厚方向のケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100%としたとき、炭素原子に関するC1sの波形解析に基づく、C−C、C=C及びC−Hの結合に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の割合X(%)が、下記条件(1)を満たし、かつ、
    38℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、0.010g/(m2・day)未満であることを特徴とするガスバリアーフィルム。
    条件(1):前記ガスバリアー層の層厚方向に対して、前記ガスバリアー層の最表面の層厚を0%、前記基材との界面の層厚を100%としたときの、層厚5〜30%領域における、
    前記割合Xの最大値(%)が、5〜41(%)の範囲内であり、
    前記割合Xの平均値(%)が、〜20%の範囲内であり、かつ、
    前記割合Xの最小値(%)が、〜10%の範囲内である。
  2. 前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの最大値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの最大値(%)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のガスバリアーフィルム。
  3. 前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの平均値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの平均値(%)よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリアーフィルム。
  4. 前記層厚5〜30%領域における前記割合Xの最小値(%)が、層厚30〜95%領域における前記割合Xの最小値(%)よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
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