JP2016108630A - 静電吸着ロール - Google Patents
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Abstract
【課題】 キャンロールの外周面に過度に張力を高めることなく長尺フィルムを密着させて効率よく冷却することが可能な成膜装置を提供する。【解決手段】 真空チャンバー51内に設けられた巻出ロール52および巻取ロール64と、それらの間に画定される長尺フィルムFの搬送経路に設けられた冷却機能付きキャンロール56と、長尺フィルムFの表面に成膜を行うべくキャンロール56の外周面に対向して設けられたスパッタリングカソード57〜60とを備えた成膜装置50であって、該搬送経路には長尺フィルムFに帯電させる給電手段が設けられており、キャンロール56はその外周面上の長尺フィルムFに接する部分が絶縁皮膜56aで被覆されており且つ長尺フィルムFが吸着するように長尺フィルムFの帯電による電位とは異なる電位に帯電させる帯電機構を有している。【選択図】 図1
Description
本発明は、減圧雰囲気下の真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺フィルムを、冷却機能を備えたキャンロールの外周面に巻き付けて冷却しながら熱負荷の掛かる表面処理を施す長尺フィルムの処理方法に関する。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の電子機器には、耐熱性樹脂フィルムの表面に所定の配線パターンを有する配線回路が形成されたフレキシブル配線基板が用いられている。フレキシブル配線基板は、耐熱性樹脂フィルムの片面もしくは両面に金属膜を備えた金属膜付耐熱性樹脂フィルムに対してフォトリソグラフィーやエッチング等の薄膜技術を適用して金属膜をパターニング加工することによって作製することができる。近年、電子機器の高機能化に伴ってフレキシブル配線基板の配線パターンはますます微細化、高密度化しており、このため金属膜付耐熱性樹脂フィルムにはより一層平坦でシワのないものが求められている。
上記した金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造方法としては、従来から金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングした後、乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、あるいは耐熱性樹脂フィルムに真空成膜法により、もしくは真空成膜法と湿式めっき法との組み合わせにより金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法における真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
上記したメタライジング法については、例えば特許文献1に、支持基体となるポリイミド製の長尺フィルムの表面にシード層としてNi−Cr合金をスパッタリングしてから銅をスパッタリングし、得られた銅スパッタリング膜の表面にさらに電解メッキ法で銅を成膜する技術が開示されている。また、ポリイミドに代表される耐熱性樹脂フィルムからなる長尺フィルムに連続的にスパッタリング成膜などの乾式めっき処理を行うため、連続巻取式スパッタ装置(スパッタリングフィルムコータとも称する)を用いることも開示されている。
ところで、上述した真空成膜法において、一般にスパッタリング法は密着力に優れる反面、真空蒸着法に比べて耐熱性樹脂フィルムに与える熱負荷が大きいといわれている。そして、成膜の際に耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷がかかると、フィルムにシワが発生し易くなることも知られている。そこで、スパッタリングフィルムコータでは内部に冷媒循環路を有する円筒形状のいわゆるキャンロールを搭載し、このキャンロールを回転させながらその外周面にロールツーロールで搬送される耐熱性樹脂からなる長尺フィルムを巻き付けてスパッタリング処理することが行われている。これによりスパッタリングの際の長尺フィルムへの熱負荷をその裏面側から除熱することができ、シワの発生を抑えることが可能になる。
例えば特許文献2には、スパッタリングフィルムコータの一例である巻出巻取式(ロールツーロール方式)真空スパッタリング装置が開示されている。この巻出巻取式真空スパッタリング装置には上記したキャンロールの役割を担うクーリングロールが具備されており、さらにクーリングロールの少なくとも長尺フィルム送入れ側もしくは送出し側に設けたサブロールによって長尺フィルムをクーリングロールの外周面に密着する制御が行われている。
しかしながら、特許文献2の技術はフィードロールとキャンロールとの周速度に差をつけることでキャンロールの外周面に長尺フィルムを密着させるものであるため、長尺フィルムの張力を安定的に測定するのが困難であった。そのため、長尺フィルムの張力の制御が難しく、スリップにより長尺フィルムの表面に傷が発生したり張力が過大になって成膜された長尺フィルムに反りが発生したりすることがあった。
また、長尺フィルムの温度が熱負荷により上昇した時、長尺フィルムには熱膨張により伸びようとする力が働くが、キャンロールの外周面との強い摩擦力のためキャンロールの外周面上に過度に拘束されて圧縮熱応力が働き、この圧縮熱応力が臨界座屈応力の最小値以上になってシワが発生することがあった。本発明はかかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、スパッタリング成膜工程などの熱負荷のかかる処理工程に使用するキャンロールにおいて、その外周面に長尺フィルムを過度に張力を高めることなく密着させて効率よく冷却することが可能な成膜装置を提供することを目的としている。
本発明者は、冷却機能を備えたキャンロールとその外周面に巻き付けられる長尺フィルムとの間に静電引力を働かせることにより、該長尺フィルムからキャンロール外周面への接触圧が高まって伝熱効率が高まると考え、鋭意検討を重ねた結果、キャンロールの外周面を絶縁皮膜で被覆すると共に、該キャンロールと長尺フィルムとを互いに異符号の電荷でそれぞれ帯電させることにより、長尺フィルムの張力を過度に高めることなくキャンロール外周面への長尺フィルムの密着力が増し、よって長尺フィルムに生ずる圧縮熱応力を抑えながら冷却効率を高め得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の成膜装置は、減圧容器内において長尺フィルムの巻き出しおよび巻き取りをそれぞれ行う巻出ロールおよび巻取ロールと、それらの間に画定される長尺フィルムの搬送経路に設けられ、長尺フィルムの温度調整機能を備えたキャンロールと、長尺フィルムの表面に成膜を行うべく該キャンロールの外周面に対向して設けられた成膜機構とを備えた成膜装置であって、前記搬送経路には長尺フィルムに帯電させる給電手段が設けられており、前記キャンロールはその外周面上の長尺フィルムに接する部分が絶縁皮膜で被覆されており且つ前記長尺フィルムが吸着するように前記長尺フィルムの帯電による電位とは異なる電位に帯電させる帯電機構を有していることを特徴としている。
本発明によれば、スパッタリング成膜工程に使用するキャンロールにおいて、その外周面に長尺フィルムを過度に張力を高めることなく密着させて効率よく冷却することが可能になる。
以下、本発明の成膜装置の一具体例について、図1を参照しながら説明する。この図1に示す装置はスパッタリングウェブコータとも称される成膜装置であり、真空雰囲気においてロールツーロールで搬送される長尺状の耐熱樹脂フィルム(以下、長尺フィルムと称する)Fをその幅よりも幅広の金属製円筒部材で構成されるキャンロール56の外周面に巻き付けて該円筒部材の内側に設けられた冷却機構で該長尺フィルムを裏側から冷却しながら表側にスパッタリングにより連続的に金属薄膜を成膜する装置である。
具体的に説明すると、主要な機器を収容する真空チャンバー51は、図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の装置を具備しており、これらにより真空チャンバー内を到達圧力10−4Pa程度まで減圧した後、アルゴンガスや目的に応じて添加される酸素ガスなどのスパッタリングガスを導入して0.1〜10Pa程度に圧力調整できるようになっている。真空チャンバー51の形状や材質については、上記減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はなく、一般的なものを使用することができる。
この真空チャンバー51内に、長尺フィルムFの搬送経路を画定する各種のロール群が設けられており、それらのうち、巻出ロール52からキャンロール56までの搬送経路には、巻出ロール52から巻き出された長尺フィルムFを案内するガイドロール53、長尺フィルムFの張力の測定を行う張力センサロール54、および張力センサロール54から送り出される長尺フィルムFをキャンロール56に導入するフィードロール55がこの順に配置されている。
キャンロール56から巻取ロール64までの搬送経路にも、上記と同様にフィードロール61、長尺フィルムFの張力測定を行う張力センサロール62、および長尺フィルムFを案内するガイドロール63がこの順に配置されている。なお、フィードロール55、61をモーター駆動にし、それらの回転数をキャンロール56の周速度に対して調整可能にしてもよい。これら巻出ロール52から巻取ロール64までの一連のロール群は、キャンロール56の回転中心軸を通る垂直な面に関して略対称に配置されている。
上記巻出ロール52および巻取ロール64では、パウダークラッチ等によりトルク制御が行われており、長尺フィルムFの張力バランスが保たれている。モーターで回転駆動されるキャンロール56は、前述したように金属製の円筒部材で構成されており、具体的な金属材料にはSUS304やSUS304にめっきをしたものを用いることが好ましい。これらの金属はキャンロール56を高い寸法精度で製作し得るので、長尺フィルムFを確実に外周面に密着させて冷却効率をより一層高めることができるからである。特に、硬質クロムでめっきを施した表面は硬度が高いため傷がつきにくく且つ表面を滑らかに仕上げることができるので、真空チャンバー内にリークするガスの放出量を少なくできる点において優れている。この円筒部材の内側に冷媒の流路が設けられており、真空チャンバー51の外部に設けられた図示しない冷媒供給装置との間で冷媒の循環を行うことで熱負荷のかかるスパッタリング処理により熱せられる長尺フィルムFを裏側から冷却することができる。
キャンロール56の外周面に対向する位置には、長尺フィルムFの搬送経路に沿って金属薄膜の金属供給源である4個のマグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60がこの順に設けられている。これら4個のマグネトロンスパッタリングカソード57〜60の各々には、キャンロール56の外周面に対向する面にターゲット(図示せず)が取り付けられており、これらターゲットから叩き出されるスパッタ粒子が長尺フィルムFの表面上に堆積して金属薄膜の成膜が行われる。
上記した本発明の一具体例の成膜装置は、巻出ロール52から巻取ロール64までの一連のロール群で画定される長尺フィルムFの搬送経路上に、長尺フィルムFに給電することによって電位を付与する給電手段が設けられている。給電手段の具体例としては、たとえばイオン照射、帯電ブラシ、帯電ロール等の一般的なプラスチック帯電方法を挙げることができる。さらに上記した本発明の一具体例の成膜装置は、給電手段により帯電された長尺フィルムに対して静電引力を働かせてキャンロール56の外周面に密着させるため、該長尺フィルムの帯電とは異符号の帯電状態を維持する帯電維持機構がキャンロール56に設けられている。
帯電維持機構としては、たとえばイオン照射、帯電ブラシ、帯電ロールなどの一般的な方法を用いることができる。あるいは、キャンロール56の外周面で画定される長尺フィルムの搬送経路には前述したようにほぼ全体に亘ってスパッタリングカソード57〜60が近接して設けられているので、これらスパッタリングカソード57〜60を帯電維持機構として使用してもよい。
上記したように帯電状態が維持されているキャンロールの金属製円筒部材とその外周面上でこれとは異符号で帯電されている長尺フィルムとの間で電気が流れることのないように、上記したキャンロール56の外周面は電気絶縁性材料からなる絶縁皮膜56aで被覆されている。これによりキャンロール56と長尺フィルムFとの電位差が保たれ、よってこれらの間の静電引力を安定的に維持することができる。キャンロール56の外周面のうち、長尺フィルムFが接することのない幅方向の両端部には絶縁皮膜56aを被覆しなくてもよい。ただし、長尺フィルムFはキャンロール56の周方向に対して斜めに傾いた状態で巻き付いたり蛇行しながら巻き付いたりする場合があるので、これらを想定して絶縁皮膜56aの幅は長尺フィルムの幅よりも1cm以上広いことが望ましい。
絶縁皮膜56aの材質は熱伝導性に優れた電気絶縁体であるのが好ましく、このような材質としては、たとえばダイヤモンドライクカーボン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素などの酸化物、窒化物、炭化物を挙げることができる。これらの中では、表面粗さと静止摩擦係数を低くできる点でダイヤモンドライクカーボンが特に優れている。
キャンロール56の外周面のうち、上記したように長尺フィルムFに接し得る領域に設ける絶縁皮膜56aの厚みは1μm以上30μm以下が好ましい。この厚みが1μm未満では絶縁破壊が生じる恐れがあるが、1μm以上を確保することでリーク電流を十分に小さく抑えることができ、キャンロール56を構成する金属製円筒部材を長尺フィルムFから電気的に隔てることができる。一方、この厚みが30μmを超えると静電引力が弱まって長尺フィルムFをキャンロール56の外周面に良好に密着させるだけの十分な静電引力が得られなくなる。
また、絶縁皮膜56aの表面粗さは2μm以下がよい。この表面粗さが2μmを超えると長尺フィルムFに対して非接触となる部分が増加してキャンロール56の冷却効率が低下するおそれがあるが、2μm以下では長尺フィルムFとの良好な接触が可能になって十分な冷却効率を得ることが可能になる。なお、ここでの表面粗さはJIS B 0601:2001のRzとして測定したものである。さらに、絶縁皮膜56aは、長尺フィルムFとの静止摩擦係数が0.5以下であるのが好ましい。この値が0.5を超えると、キャンロール56との摩擦によって長尺フィルムFが破れる恐れがあるが、0.5以下であれば、キャンロール56と長尺フィルムFとの摩擦力が小さいので破れにくくなる。
上記した構成により、絶縁皮膜56aの厚さをa、絶縁皮膜56aの比誘電率をεr、真空誘電率をε0=8.854×10−12ボルト/m2、キャンロール56と長尺フィルムFとの電位差をV、長尺フィルムFがキャンロール56に接触した面積をSとおくと、両金属間に働く静電引力fは、f=0.5×εr×ε0×S×(V/a)2で与えられる。例えば絶縁皮膜の比誘電率εrを1.5、厚さaを5μm、電位差Vを150ボルトとすると、単位面積あたりの静電引力f/Sは、f/S=5976N/m2となる。また、厚さaを5μmに代えて10μmにした以外は同じ条件にした場合は、f/S=1494N/m2となる。
長尺フィルムFの搬送張力をT、長尺フィルムFがキャンロール56に巻き付いている角度をA(抱き角Aとも称する)とすると、この張力によって長尺フィルムFがキャンロール56から受ける抗力Nは、N=2T|cos(π/2−A/2)|で与えられる。例えば、長尺フィルムFがキャンロール56の全周のうち下側半周だけに巻き付いていると仮定すると、N=2T|cos0|=2Tである。このとき、Tを100ニュートン、キャンロール56の直径を600mm、長尺フィルムFの幅を500mmとすると、Aはπラジアンであるので単位面積あたりの抗力N/Sは、N/S=(2×100)/(0.6×π×0.5×(π/2π))=424.4N/m2となる。
上記した単位面積あたりの静電引力f/Sと単位面積あたりの抗力N/Sとを比較して分かるように、搬送張力から発生する抗力よりも静電引力が数倍から十数倍程度大きくなっている。このように長尺フィルムとキャンロールとに互いに異符号の電荷を帯電させることにより、抗力に加えて静電引力で長尺フィルムFをキャンロールの外周面に強く密着させることができ、これにより接触圧が高まって伝熱効率が向上するので、キャンロールの冷却効率を高めることができる。しかも、静電引力は搬送張力に対して独立して制御することが可能であるから、冷却効率を容易に調節することが可能になる。
上記のように給電手段で帯電された長尺フィルムFは巻取ロール64で巻き取られる前に除電を行うのが望ましい。これにより、長尺フィルムF同士の反発を減らすことができるので長尺フィルムFを小さく巻き取ることができる上、埃の吸着も少なくなる。また、後工程に静電気が持ち込まれなくなるので該静電気に起因するトラブルの心配が少なくなる。除電する方法としては、長尺フィルムFの電位を電気的中性に近づける除電手段を備えるのがよい。この除電手段は、キャンロール56及び上記した給電手段のうち長尺フィルムFの搬送経路に関して下流側に位置するものよりも下流側に設けるのが好ましい。例えば、給電手段がキャンロール56の上流側にある場合は、キャンロール56と巻取ロール64との間に除電手段を備えるのが好ましく、給電手段がキャンロール56の下流側にある場合は、給電手段と巻取ロール64との間に除電手段を備えるのが好ましい。除電手段としては、たとえば接地、イオナイザ、除電ブラシ、除電ロールなどの一般的な方法を用いることができる。
また、長尺フィルムFおよびキャンロール56が各々適切に帯電しているか否か、あるいは巻取ロール64で巻き取る前の長尺フィルムFが十分に除電されているか否かを確認するため、図示しない測定手段を備えてもよい。この測定手段としては、たとえば電界計、表面電位計などの一般的な方法を用いることができる。
上記した本発明の一具体例の成膜装置を用いて金属薄膜付樹脂フィルムを製造する場合は、樹脂フィルムにポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムのような耐熱性樹脂フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような樹脂フィルムを用いることができる。成膜する金属薄膜としては例えばNi系合金等からなるシード層とその上のCu膜とが積層された積層体を挙げることができる。シード層の材質は、具体的にはNi−Cr合金、インコネル、コンスタンタン、モネル等の各種公知の合金を用いることができ、その組成は金属薄膜付樹脂フィルムの電気絶縁性や耐マイグレーション性等の所望の特性に応じて選択される。
金属薄膜は樹脂フィルムの片面にのみ成膜してもよいし、両面に成膜してもよい。いずれの場合においても、金属薄膜と樹脂フィルムの間に接着剤を介することなく成膜することができる。金属薄膜を両面に成膜するため片面ずつ2回に分けて成膜する場合は、1回目および2回目のいずれの成膜の際にも上記したように長尺フィルムとキャンロールに互いに異符号に帯電するのが効果的である。特に2回目の成膜の際は、長尺フィルムFの片面に既に金属膜が成膜されているため、1回目に比べてより帯電が均一になり、電位も精密に制御できる。
このようにして得た金属薄膜付樹脂フィルムは、湿式めっき法を用いて金属膜をさらに厚くすることができる。この場合の湿式めっき法には、電気めっき処理のみで金属膜を積層する場合のほか、一次めっきとしての無電解めっき処理と、二次めっきとしての電解めっき処理とを組み合わせて行う場合がある。これら湿式めっき処理の具体的な運転条件は特に制約がなく、一般的な湿式めっき法の諸条件を採用することができる。このようにして成膜された金属膜に対して、例えばサブトラクティブ法により配線をパターニング加工することでCOFが得られる。ここで、サブトラクティブ法とは、レジストで覆われていない金属膜(例えば上記Cu膜)をエッチングにより除去してフレキシブル配線基板を製造する方法である。
以上説明したように、キャンロールの外周面を絶縁皮膜で被覆すると共に、該キャンロールと長尺フィルムとを互いに異符号の電荷でそれぞれ帯電させることにより、これらの間に静電引力が働いて長尺フィルムの張力を過度に高めることなくキャンロール外周面への長尺フィルムの密着力が増大する。その結果、長尺フィルムを均一に冷却することが可能になって長尺フィルムにかかる力が均一になり、よって長尺フィルムに生ずる圧縮熱応力を抑えることができ、シワ等の変形が少なくなる。シワが少なくなることで、不良率を低減できるほか、長尺フィルムFの搬送速度を増大させることも可能になる。さらに、長尺フィルムとキャンロールとの間に流れる電流を最小にできるので、該長尺フィルムとキャンロールとの間の電位を安定的に制御でき、ジュール熱の発生を抑制することができる。
(実施例1)
図1に示すような、真空チャンバー51内に長尺フィルムFの巻出ロール52および巻取ロール64、ガイドロール53および63、冷却機能を備えたキャンロール56、キャンロール56の直前直後のフィードロール55および61、張力センサロール54および62、ならびに平板マグネトロンカソード式のスパッタリングカソード57〜60が設けられた真空成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50を使用して長尺フィルムの両面に銅薄膜を成膜した。
図1に示すような、真空チャンバー51内に長尺フィルムFの巻出ロール52および巻取ロール64、ガイドロール53および63、冷却機能を備えたキャンロール56、キャンロール56の直前直後のフィードロール55および61、張力センサロール54および62、ならびに平板マグネトロンカソード式のスパッタリングカソード57〜60が設けられた真空成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50を使用して長尺フィルムの両面に銅薄膜を成膜した。
長尺フィルムFの各面にシード層として先ずニッケルクロム合金膜を成膜し、その上に銅膜を成膜するため、スパッタリングカソード57には20重量%クロムのニッケルクロム合金ターゲットを装着し、残りのスパッタリングカソード58〜60には銅ターゲットを装着した。
キャンロール56には、直径400×幅600mmのステンレス製の円筒部材の表面に硬質クロムめっきしたものを用い、その外周面に厚さ5μmのダイヤモンドライクカーボンで被覆して絶縁皮膜56aとした。これにより長尺フィルムFはキャンロール56の外周面に巻き付けられた時に絶縁皮膜56aを介して金属製円筒部材に接するので、該金属製円筒部材と長尺フィルムFとは電気的に隔てられることになる。
張力センサロール54とフィードロール61には金属ロールを用い、各々切り替えスイッチ69を介して電源68の一方の端部に電気的に接続した。これにより、長尺フィルムFに接する際に長尺フィルムFに給電できるようにした。なお、切り替えスイッチを図1に示す中立位置から右側または左側に傾けることにより、給電するロールを張力センサロール54およびフィードロール61の内のどちらか一方を選択するようになっている。電源68のもう一方の端部(上記した切り替えスイッチ69が接続している端部の反対側)は抵抗67を介してキャンロール56の金属製円筒部材に接続した。抵抗67は、万一絶縁皮膜56aの絶縁が破れた場合に大きな電流が流れるのを防ぐ役割を有している。
上記した構成において、最初に、巻出ロール52に長尺フィルムFとして厚さ25μm×幅250mmの長尺のポリイミドフィルムのロールをセットし、図1の黒矢印で示すように巻出ロール52と巻取ロール64とを共に左回転させて張力50N、速度1.2m/分で搬送することで、長尺フィルムFの一方の面に銅を成膜した。なお、この片面の成膜では切り替えスイッチ69を図1に示すように中立の位置のまま動かさなかった。
次に、巻取ロール64に巻き取られた片面成膜済みの長尺フィルムFのロールを巻取ロール64から外して巻出ロール52にセットし、さらに切り替えスイッチ69を図1の鎖線のように左側の端子に接続してフィードロール61に100ボルトの電圧を印加した。これにより、フィードロール61からその外周面に巻き付けらえる長尺フィルムFに給電できるようにした。この状態で図1の白矢印で示すように巻出ロール52を右回転、巻取ロール64を左回転させながら、上記と同様の条件で長尺フィルムFのもう一方の面に銅を成膜した。その結果、両面に各々厚み100nmの銅膜を有する、シワのない金属膜付き長尺フィルムが得られた。
(比較例1)
切り替えスイッチ69を中立にして長尺フィルムFに電圧を印加しなかった以外は実施例1と同様にして成膜を行った。その結果、両面に厚み100nmの銅膜を有する、シワのあるフィルムが得られた。
切り替えスイッチ69を中立にして長尺フィルムFに電圧を印加しなかった以外は実施例1と同様にして成膜を行った。その結果、両面に厚み100nmの銅膜を有する、シワのあるフィルムが得られた。
(比較例2)
長尺フィルムFを速度0.5m/分で搬送したこと、切り替えスイッチ69を中立にして長尺フィルムFに電圧を印加しなかったこと、および各スパッタリングカソードへの供給電力を調整して成膜量を減少させたことを除いて実施例1と同様にして成膜を行った。その結果、両面に厚み100nmの銅膜を有する、シワのないフィルムが得られた。
長尺フィルムFを速度0.5m/分で搬送したこと、切り替えスイッチ69を中立にして長尺フィルムFに電圧を印加しなかったこと、および各スパッタリングカソードへの供給電力を調整して成膜量を減少させたことを除いて実施例1と同様にして成膜を行った。その結果、両面に厚み100nmの銅膜を有する、シワのないフィルムが得られた。
(考察)
実施例1では、電源68〜抵抗67〜キャンロール56(金属製円筒部材〜絶縁皮膜56a)〜長尺フィルムF〜フィードロール61〜切り替えスイッチ69〜電源68からなる閉回路が形成され、キャンロール56と長尺フィルムFとの間に約100ボルトの電位差が生じたため、これらの間に静電引力を発生したと考えられる。その結果、長尺フィルムFとキャンロール56との間に作用する抗力に静電引力が加わり、キャンロール56の外周面とそこに巻き付いている長尺フィルムFとのミクロレベルでの真の接触面積が増加したため、長尺フィルムFがほぼ全面に亘って均一且つ十分に冷却され、よって長尺フィルムFにかかる力が均一になることでシワが入らなかったと考えられる。
実施例1では、電源68〜抵抗67〜キャンロール56(金属製円筒部材〜絶縁皮膜56a)〜長尺フィルムF〜フィードロール61〜切り替えスイッチ69〜電源68からなる閉回路が形成され、キャンロール56と長尺フィルムFとの間に約100ボルトの電位差が生じたため、これらの間に静電引力を発生したと考えられる。その結果、長尺フィルムFとキャンロール56との間に作用する抗力に静電引力が加わり、キャンロール56の外周面とそこに巻き付いている長尺フィルムFとのミクロレベルでの真の接触面積が増加したため、長尺フィルムFがほぼ全面に亘って均一且つ十分に冷却され、よって長尺フィルムFにかかる力が均一になることでシワが入らなかったと考えられる。
一方、比較例1では、キャンロール56の外周面とそこに巻き付いている長尺フィルムFとの局所的な非接触部分が多くなってミクロレベルでの真の接触面積が実施例1に比べて小さくなり、よって長尺フィルムFが偏って冷却されたり長尺フィルムFに偏った力がかかったりしてシワが入ったと考えられる。比較例2では、比較例1と同様にキャンロール56の外周面とそこに巻き付いている長尺フィルムFとのミクロレベルでの真の接触面積が小さかったものの、搬送速度が実施例1よりも遅かったため長尺フィルムFが均一に冷却されやすくなり、よってシワが入らなかったと考えられる。
50 真空成膜装置(スパッタリングウェブコータ)
51 真空チャンバー
52 巻出ロール
53、63 ガイドロール
54、62 張力センサーロール
55、61 フィードロール
56 キャンロール
56a 絶縁皮膜
57、58、59、60 スパッタリングカソード
64 巻取ロール
67 抵抗
68 電源
69 切り替えスイッチ
F 長尺フィルム
A 長尺フィルムFが巻き付けられる角度(抱き角)
51 真空チャンバー
52 巻出ロール
53、63 ガイドロール
54、62 張力センサーロール
55、61 フィードロール
56 キャンロール
56a 絶縁皮膜
57、58、59、60 スパッタリングカソード
64 巻取ロール
67 抵抗
68 電源
69 切り替えスイッチ
F 長尺フィルム
A 長尺フィルムFが巻き付けられる角度(抱き角)
Claims (4)
- 減圧容器内において長尺フィルムの巻き出しおよび巻き取りをそれぞれ行う巻出ロールおよび巻取ロールと、それらの間に画定される長尺フィルムの搬送経路に設けられ、長尺フィルムの温度調整機能を備えたキャンロールと、長尺フィルムの表面に成膜を行うべく該キャンロールの外周面に対向して設けられた成膜機構とを備えた成膜装置であって、
前記搬送経路には長尺フィルムに帯電させる給電手段が設けられており、前記キャンロールはその外周面上の長尺フィルムに接する部分が絶縁皮膜で被覆されており且つ前記長尺フィルムが吸着するように前記長尺フィルムの帯電による電位とは異なる電位に帯電させる帯電機構を有していることを特徴とする成膜装置。 - 前記長尺フィルムの電位を電気的中性に近づける除電手段がさらに具備されており、該除電手段は前記キャンロール及び前記給電手段のうち前記長尺フィルムの搬送経路に関して下流側に位置するものよりも下流側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の成膜装置。
- 前記絶縁皮膜は前記長尺フィルムよりも幅が1cm以上広く、前記長尺フィルムに接する箇所の厚みが1μm〜30μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の成膜装置。
- 前記絶縁皮膜はダイヤモンドライクカーボンを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜装置。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018053340A (ja) * | 2016-09-30 | 2018-04-05 | 住友金属鉱山株式会社 | 被成膜物の成膜方法および成膜装置ならびに該成膜方法を用いた金属化樹脂フィルムの製造方法 |
JP2019156549A (ja) * | 2018-03-12 | 2019-09-19 | 住友金属鉱山株式会社 | 長尺基板のしわ発生防止ロール及びしわ発生防止方法並びに該ロールを備えた連続成膜装置 |
CN114559589A (zh) * | 2022-02-28 | 2022-05-31 | 桂林格莱斯科技有限公司 | 聚酯薄膜静电吸附系统 |
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2014
- 2014-12-09 JP JP2014248939A patent/JP2016108630A/ja active Pending
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