JP6265081B2 - キャンロール、およびスパッタリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、キャンロール、およびスパッタリング装置に関する。さらに詳しくは、成膜物質の付着を防止するために養生されたキャンロール、およびそのキャンロールを備えるスパッタリング装置に関する。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、耐熱性樹脂フィルムの上に配線パターンが形成されたフレキシブル配線基板が用いられている。フレキシブル配線基板は、耐熱性樹脂フィルムの片面または両面に金属膜を成膜した金属膜付樹脂フィルムに対して、フォトリソグラフィーやエッチング等の薄膜技術によりパターニング処理を施すことによって得られる。近年、フレキシブル配線基板の配線パターンは、ますます微細化、高密度化する傾向にあり、これにともなって夾雑物を含まない高品質な金属膜付樹脂フィルムが求められている。
金属膜付樹脂フィルムの製造方法として、金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付ける方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングした後に乾燥させる方法(キャスティング法)、耐熱性樹脂フィルムに真空成膜法単独で、または真空成膜法と湿式めっき法との併用で金属膜を成膜する方法(メタライジング法)等が知られている。
上記製造方法のうち、メタライジング法で利用される真空成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等が挙げられる。例えば、特許文献1には、ポリイミド絶縁層上にクロムをスパッタリングしてクロム層を成膜した後、銅をスパッタリングして銅からなる導体層を形成する方法が記載されている。
また、特許文献2には、長尺樹脂フィルムに連続的に成膜するスパッタリング装置が開示されている。このスパッタリング装置には、ロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムを巻き付けて冷却するクーリングローラ(キャンロールとも称される。)が備えられている。このようなスパッタリング装置を用いれば、連続的なメタライジング法による処理で金属膜付樹脂フィルムを製造することができる。
ところで、上記のスパッタリング装置は、スパッタリングカソードに取り付けたターゲットにイオンをぶつけ、ターゲットを構成する粒子を叩き出して、その粒子(スパッタ粒子)を被成膜基材の表面に堆積させるものである。一部のスパッタ粒子は被成膜基材に向かわずに、それ以外の場所、例えばキャンロール自体に飛散してそこに付着する。これが剥離して製品である金属膜付樹脂フィルムを汚染するという問題がある。
これに対して、特許文献3には、キャンロール等の支持体に被覆シートを貼り付けて、被成膜基材から外れて飛散したスパッタ粒子を、支持体に代えて被覆シートに付着させることが開示されている。成膜物質が付着した被覆シートを交換することで、製品の汚染を防止することができる。
特開平2−98994号公報 特開昭62−247073号公報 特開2006−77286号公報
しかし、ロールツーロール方式のスパッタリング装置では、連続して長時間のスパッタリングが行われるため、被覆シートに付着した成膜物質はその厚みがしだいに増していく。しかも、被膜シートは絶縁物であるので、被膜シート上の成膜物質は帯電した状態となっている。そのため、被膜シート上の成膜物質と、成膜品の縁とが接触して異常放電が生じ、成膜品の縁が溶解して、製品不良が発生するという問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、被成膜基材から外れて付着した成膜物質に起因する異常放電を防止できるキャンロール、およびスパッタリング装置を提供することを目的とする。
第1発明のキャンロールは、スパッタリング法により帯状の被成膜基材に成膜するスパッタリング装置に設けられるキャンロールであって、キャンロール本体と、前記キャンロール本体の外周面であって、前記被成膜基材の縁が重なる位置に巻回された養生帯と、導電性を有する導通部材と、を備え、前記養生帯は、帯状の導電膜付樹脂フィルムであり、導電膜を外側に向けて巻回されており、前記導通部材は、前記養生帯の導電膜と前記キャンロール本体とを導通させるよう設けられていることを特徴とする。
第2発明のキャンロールは、第1発明において、前記導通部材は、帯状の導電膜付樹脂フィルムであり、一部が前記養生帯に重なり、残部が前記キャンロール本体の外周面に重なるように、導電膜を内側に向けて巻回されていることを特徴とする。
第3発明のキャンロールは、第2発明において、前記キャンロール本体の外周面であって、前記導通部材と前記キャンロール本体の端との間を覆うように巻回された拡張養生帯を備えることを特徴とする。
第4発明のキャンロールは、スパッタリング法により帯状の被成膜基材に成膜するスパッタリング装置に設けられるキャンロールであって、キャンロール本体と、前記キャンロール本体の外周面であって、前記被成膜基材の縁が重なる位置に巻回された養生帯と、を備え、前記養生帯は、導体で形成されており、前記キャンロール本体と導通していることを特徴とする。
第5発明のスパッタリング装置は、請求項1、2、3または4記載のキャンロールを備えることを特徴とする。
第1発明によれば、養生帯が導電膜付樹脂フィルムであり、その導電膜とキャンロール本体とが導通しているので、養生帯の導電膜上に成膜物質が付着しても、電荷をキャンロール本体に逃すことができる。そのため、被成膜基材から外れて付着した成膜物質と成膜品の縁とが接触しても異常放電が生じない。
第2発明によれば、導通部材が導電膜付樹脂フィルムであるので、養生帯の導電膜とキャンロール本体とを導通させることができるとともに、被成膜基材から外れた成膜物質がキャンロール本体に付着することを防止できる。
第3発明によれば、キャンロール本体の外周面に、養生帯と導通部材に加えて拡張養生帯を巻回することで、養生帯を幅狭とすることができる。そのため、養生帯をキャンロール本体の外周面にシワが生じることなく密着させることが容易となり、被成膜基材を均一に冷却できる。
第4発明によれば、養生帯が導体で形成されているので、養生帯上に成膜物質が付着しても、電荷をキャンロール本体に逃すことができる。そのため、被成膜基材から外れて付着した成膜物質と成膜品の縁とが接触しても異常放電が生じない。
第5発明によれば、被成膜基材から外れて付着した成膜物質と成膜品の縁とが接触しても異常放電が生じないので、製品の縁が溶解して、製品不良が発生することがない。その結果、歩留まりを向上することができる。
本発明の第1実施形態に係るキャンロールの正面図である。 同キャンロールの養生帯等の取り付け方法の説明図である。 養生帯、導通帯、成膜品の重なり部分の拡大断面図である。 本発明の第2実施形態に係るキャンロールの正面図である。 スパッタリング装置の説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
<スパッタリング装置>
図5に示すように、本発明の第1実施形態に係るスパッタリング装置Aは、ロールツーロール方式で連続的に帯状の被成膜基材fを搬送しつつ、スパッタリング法により被成膜基材fに成膜して成膜品mfを製造する装置であり、スパッタリングウェブコータとも称される。
スパッタリング装置Aは、真空チャンバー10内において、巻出ロール21から巻取ロール28に向かって搬送される被成膜基材fを、キャンロールCに巻きつけて冷却しながらスパッタリング処理を施す。キャンロールCは、スパッタリング処理により熱せられる被成膜基材fを冷却するため、内部に冷媒が循環している。本実施形態は、このキャンロールCに特徴を有するので後に詳説する。
被成膜基材fとして長尺樹脂フィルムを用い、長尺樹脂フィルム上に導電膜mを成膜することで成膜品mfとして導電膜付樹脂フィルムを連続的に製造することができる。導電膜mには、銅薄膜等の金属膜のほか、ITO(錫添加インジウム酸化物)膜やATO(錫添加アンチモン酸化物)膜等の酸化物膜、合金膜も含まれる。
真空チャンバー10には、図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の装置が備えられている。真空チャンバー10内を1×10-4Pa程度まで減圧した後、アルゴンガスや目的に応じて添加される酸素ガス等のスパッタリングガスを導入して0.1〜10Pa程度まで圧力調整される。真空チャンバー10の形状や素材は、上記減圧状態に耐え得るものであれば特に限定されない。
真空チャンバー10内には、上記巻出ロール21、巻取ロール28、およびキャンロールCのほか、被成膜基材fの搬送経路を画定する各種のロールが設けられている。すなわち、真空チャンバー10内には、フリーロール22、27、張力センサロール23、26、フィードロール24、25が設けられており、被成膜基材fはこれらのロールに巻回されている。
巻出ロール21からキャンロールCまでの搬送経路には、フリーロール22、張力センサロール23、フィードロール24が設けられている。巻出ロール21から巻き出された被成膜基材fは、フリーロール22により案内され、張力センサロール23により張力が測定され、フィードロール24によりキャンロールCに導入される。
また、キャンロールCから巻取ロール28からまでの搬送経路には、フィードロール25、張力センサロール26、フリーロール27が設けられている。キャンロールC上でスパッタリング処理が施された成膜品mfは、フィードロール25により送り出され、張力センサロール26により張力が測定され、フリーロール27により案内されて、巻取ロール28に巻き取られる。
キャンロールCはモータ駆動により回転する。このキャンロールCの周速度に対して、フィードロール24、25の回転数が調整されており、これによりキャンロールCの外周面に被成膜基材fを密着させて搬送することができる。また、巻出ロール21および巻取ロール28は、パウダークラッチ等によりトルク制御が行われており、被成膜基材fの張力バランスが保たれている。
キャンロールCの外周面に対向する位置には、被成膜基材fの搬送経路に沿って4つのスパッタリングカソード31〜34が設けられている。各スパッタリングカソード31〜34には、キャンロールCの外周面に対向する面にターゲットが取り付けられており、ターゲットから叩き出されたスパッタ粒子が被成膜基材fの表面上に堆積して導電膜mが成膜される。
例えば、搬送経路上流側のスパッタリングカソード31にニッケル系合金のターゲットを取り付け、下流側のスパッタリングカソード32〜34に銅のターゲットを取り付けることで、被成膜基材fである長尺樹脂フィルムの表面にニッケル合金からなる下地金属層と、銅薄膜層とが積層された銅薄膜付樹脂フィルムmfを製造することができる。なお、下地金属層は、ニッケル合金のほか、クロム、ニッケルクロム合金、コンスタンタン、モネル等の金属や合金を用いることができる。その組成は金属膜付樹脂フィルムの電気絶縁性や耐マイグレーション性等の要求される特性に応じて選択される。
上記のスパッタリング装置Aを用いて、被成膜基材fに導電膜mを成膜することで、成膜品mfを製造することができる。なお、金属膜付樹脂フィルムの場合、金属膜をさらに厚くするには、金属膜付樹脂フィルムに湿式めっき処理を施して金属膜をさらに積層すればよい。湿式めっき処理を行う場合には、電気めっき処理のみで金属膜を形成してもよいし、無電解めっき処理と電解めっき処理と併用して金属膜を形成してもよい。また、金属膜付樹脂フィルムに対して、サブトラクティブ法等によりパターンニングすることによって、液晶テレビ、携帯電話等に使用されるフレキシブル配線基板が得られる。
<キャンロール>
つぎに、本実施形態の特徴部分であるキャンロールC1を説明する。
図1に示すように、キャンロールC1は、キャンロール本体1と、キャンロール本体1の外周面に巻回された養生帯2、導通帯3、および拡張養生帯4とを備える。キャンロール本体1は、円柱状のロールであり、内部に冷媒が循環している。キャンロール本体1の素材は特に限定されないが、例えばステンレス鋼で形成されており、表面は硬質クロムめっきが施されている。
キャンロール本体1の略中央部分には長尺樹脂フィルム等の被成膜基材fが巻回される。キャンロール本体1の幅寸法は被成膜基材fの幅寸法より大きく設定されているため、キャンロール本体1の両端部が露出する。この露出部分に成膜物質が付着することを防止するために、キャンロール本体1の外周面が、養生帯2、導通帯3、および拡張養生帯4で養生されている。なお、導通帯3が特許請求の範囲に記載の「導通部材」に相当する。
養生帯2、導通帯3、および拡張養生帯4は、キャンロール本体1の外周面に巻き付けられ、密着状態で貼り付けられている。これらは、キャンロール本体1の両端部に設けられており、中央側から端側にむかって養生帯2、導通帯3、拡張養生帯4の順に設けられている。
養生帯2は、帯状の導電膜付樹脂フィルムである。導電膜付樹脂フィルムとは、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に導電膜が積層されたものである。導電膜には、銅薄膜等の金属膜のほか、合金膜、ITO(錫添加インジウム酸化物)膜やATO(錫添加アンチモン酸化物)膜等の導電性酸化物膜も含まれる。導電膜を構成する物質は特に限定されないが、銅薄膜の様な導電性に優れる金属膜が好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムのほか、ポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂フィルムを用いることができる。特に、金属膜付樹脂フィルムに用いる耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルム等が好ましい。導電膜付樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、25〜75μmが好ましい。
養生帯2は、被成膜基材fの縁が重なる位置に巻回されている。そのため、養生帯2のキャンロール本体1中央寄りの縁部分には、その上に被成膜基材fの縁が重ねられる。この重ね幅は特に限定されないが、被成膜基材fの搬送の振れ幅よりも大きくすることが好ましい。例えば、重ね幅を10mmとすることが好ましい。そうすれば、被成膜基材fの搬送の振れによりキャンロール本体1の外周面が露出することを防止できる。
なお、本実施形態では、養生帯2をキャンロール本体1の両端部に2本設ける形態としたが、これに代えて、キャンロール本体1の中央部に幅広の養生帯2を1本設ける形態としてもよい。この場合、養生帯2の幅寸法は、被成膜基材fの幅寸法よりも大きくし、被成膜基材fの両方の縁が養生帯2の範囲内に収まるようにする。そうすると、被成膜基材fは、その全面が養生帯2を介してキャンロール本体1に巻回されることとなる。ただし、被成膜基材fとキャンロール本体1との間に養生帯2が挟まれていると、被成膜基材fの冷却が弱くなる。そのため、冷却の観点からは、本実施形態のように、2本の養生帯2をキャンロール本体1の両端部に設けることが好ましい。
導通帯3は、養生帯2と同様に帯状の導電膜付樹脂フィルムである。導通帯3は、その一部、例えばキャンロール本体1中央寄りの半分が養生帯2の上に重なり、残部がキャンロール本体1の外周面に直接重なる位置に巻回されている。導通帯3のキャンロール本体1中央寄りの縁は、被成膜基材fの縁から、搬送の振れ幅よりも大きく離れた位置とすることが好ましい。すなわち、被成膜基材fの縁が、養生帯2にのみ重なり、導通帯3には重ならないように設定される。
拡張養生帯4は、導通帯3とキャンロール本体1の端との間を覆う幅寸法を有する。拡張養生帯4は、その一部、例えばキャンロール本体1中央寄りの縁部分が導通帯3の上に重なり、残部がキャンロール本体1の外周面に直接重なるように巻回されている。拡張養生帯4は、養生帯2および導通帯3に比べて幅広である。
拡張養生帯4の素材は特に限定されないが、帯状の樹脂フィルムを用いることが好ましい。樹脂フィルムは導電膜付樹脂フィルムに比べて熱膨張率が低いため、スパッタリング処理により熱せられても、熱膨張によりシワが生じる等の悪影響が少ないからである。なお、養生帯2および導通帯3は導電膜付樹脂フィルムであり、樹脂フィルムよりも熱膨張率が高いが、幅狭であるので熱膨張の影響が少なく、シワが生じにくい。
なお、拡張養生帯4を設ける代わりに、導通帯3をキャンロール本体1の端まで覆う幅寸法としてもよい。
図3に示すように、養生帯2は、その導電膜2mを外側に向けてキャンロール本体1に巻回されている。すなわち、樹脂フィルム2fがキャンロール本体1に接触しており、導電膜2mが被成膜基材fに接触している。
また、導通帯3は、導電膜3mを内側に向けてキャンロール本体1に巻回されている。すなわち、導電膜3mが、養生帯2の導電膜2mおよびキャンロール本体1の外周面に接触している。そのため、導通帯3の導電膜3mにより、養生帯2の導電膜2mとキャンロール本体1とが導通されている。
つぎに、養生帯2、導通帯3、および拡張養生帯4の取り付け方法を説明する。
図2(A)に示すように、まず、キャンロール本体1の外周面における被成膜基材fの縁が重なる位置に、養生帯2の一端を貼り付ける。そして、養生帯2をキャンロール本体1の外周面に少なくとも一周巻回させて、他端を貼り付ける。この際、養生帯2の他端を引っ張り、長尺方向に引き伸ばすようにして巻き付ける。このように巻き付けることで、養生帯2をキャンロール本体1の外周面にシワなく密着させることができる。
ここで、養生帯2は導電膜付樹脂フィルムであるので、ある程度の伸縮性があり、長尺方向に引き伸ばすことができる。また、キャンロール本体1の外周面には、養生帯2と導通帯3に加えて拡張養生帯4が巻回されるので、キャンロール本体1の露出部分の大部分を拡張養生帯4で被覆すればよく、養生帯2を幅狭とすることができる。養生帯2が幅狭であるので、端部を手で持って引き伸ばす際に、均等に力を加えることができる。そのため、養生帯2をキャンロール本体1の外周面にシワが生じることなく密着させて巻き付けることが容易となる。
養生帯2は、その一部が被成膜基材fに重ねられるので、シワが生じていると被成膜基材fの冷却が不均一となり、成膜された導電膜mが不均一となる。上記のように養生帯2をシワが生じることなく巻き付けることができるので、被成膜基材fを均一に冷却でき、均一な導電膜mを成膜できる。
つぎに、図2(B)に示すように、養生帯2に一部が重なるように、導通帯3の一端を貼り付ける。そして、導通帯3をキャンロール本体1の外周面に少なくとも一周巻回させて、他端を貼り付ける。この際にも、導通帯3の他端を引っ張り、長尺方向に引き伸ばすようにして巻き付けることで、導通帯3をキャンロール本体1の外周面にシワなく密着させることができる。
つぎに、図2(C)に示すように、導通帯3に一部が重なるように、拡張養生帯4の一端を貼り付ける。そして、拡張養生帯4をキャンロール本体1の外周面に少なくとも一周巻回させて、他端を貼り付ける。この際にも、拡張養生帯4の他端を引っ張り、長尺方向に引き伸ばすようにして巻き付けることで、拡張養生帯4をキャンロール本体1の外周面にシワなく密着させることができる。
上記のキャンロールC1を備えるスパッタリング装置Aを用いてスパッタリング処理を行うと、スパッタリングカソード31〜34のターゲットから叩き出されたスパッタ粒子は、被成膜基材fの表面上に堆積するとともに、養生帯2、導通帯3、および拡張養生帯4の表面上にも堆積する。
図3に示すように、スパッタリング処理により、被成膜基材f上には導電膜mが成膜されるとともに、被成膜基材fから外れて飛散したスパッタ粒子によって養生帯2の表面には成膜物質Mが堆積する。しかも、ロールツーロール方式のスパッタリング装置Aでは、連続して長時間のスパッタリングが行われるため、被成膜基材fから外れて付着した成膜物質Mはその厚みがしだいに増していく。成膜物質Mは、電荷を帯びたスパッタ粒子により形成されるため、帯電した状態となる。成膜物質Mが帯電したままであると、成膜物質Mと成膜品mfの縁とが接触した際に異常放電が生じる。
これに対して、本実施形態では、養生帯2が導電膜付樹脂フィルムであり、成膜物質Mはその導電膜2mの上に堆積する。しかも、導通帯3の導電膜3mにより導電膜2mとキャンロール本体1とが導通しているので、養生帯2の導電膜2m上に成膜物質Mが付着しても、電荷をキャンロール本体1に逃すことができる。なお、キャンロール本体1はアースされている。そのため、成膜物質Mと成膜品mfの導電膜mとの間に電位差がなくなり、成膜物質Mと成膜品mfの縁とが接触しても異常放電が生じない。
成膜物質Mと成膜品mfの縁とが接触しても異常放電が生じないので、製品である成膜品mfの縁が溶解して、製品不良が発生することがない。その結果、歩留まりを向上することができる。
また、被成膜基材fから外れて飛散したスパッタ粒子は、養生帯2、導通帯3、または拡張養生帯4に付着し、キャンロール本体1に付着することを防止できる。ここで、導通帯3は、導電膜付樹脂フィルムであるので、養生帯2の導電膜2mとキャンロール本体1とを導通させることができるとともに、被成膜基材fから外れた成膜物質Mがキャンロール本体1に付着することを防止できる。
成膜物質Mが付着した養生帯2、導通帯3、および拡張養生帯4を交換することで、成膜物質Mの除去を行うことができるのでメンテナンス作業が容易となる。しかも、剥離した成膜物質Mによる汚染のない高品質な成膜品mfを製造できる。
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態に係るキャンロールC2を説明する。
図4に示すように、本実施形態のキャンロールC2は、第1実施形態のキャンロールC1において、導通帯3に代えて導電性テープ5を貼り付けた形態である。ここで、導電性テープ5とは、粘着層に金属粉等の導電材料を分散させたテープである。この導電性テープ5を、養生帯2とキャンロール本体1の外周面との間に貼り付ける。そうすると、導電性テープの粘着層により、養生帯2の導電膜2mとキャンロール本体1とが導通される。
養生帯2の導電膜2mとキャンロール本体1とが導通しているので、養生帯2上に成膜物質Mが付着しても、電荷をキャンロール本体1に逃すことができる。そのため、被成膜基材fから外れて付着した成膜物質Mと成膜品mfの縁とが接触しても異常放電が生じない。
導電性テープ5の貼り方は、養生帯2の導電膜2mとキャンロール本体1とが導通されれば特に限定されない。例えば、図4に示すように、短く切った導電性テープ5を、キャンロール本体1の周方向に所定間隔で複数貼り付ければ良い。
なお、キャンロール本体1の露出部分は、他のフィルム等を用いて養生することが好ましい。
上記実施形態の導通帯3や導電性テープ5に代えて、接着剤に金属粉等の導電材料を分散した導電性接着剤等、他の導通部材を用いてもよい。導通部材は、導電性を有していればよく、養生帯2の導電膜2mとキャンロール本体1とを導通させるよう設けられればよい。
(第3実施形態)
つぎに、本発明の第3実施形態に係るキャンロールC3を説明する。
本実施形態のキャンロールC3は、第1実施形態のキャンロールC1において、養生帯2を金属箔等の導体で形成した形態である。養生帯2が導体で形成されているので、養生帯2上に成膜物質Mが付着しても、電荷をキャンロール本体1に逃すことができる。そのため、被成膜基材から外れて付着した成膜物質Mと成膜品mfの縁とが接触しても異常放電が生じない。
なお、本実施形態では、養生帯2自体で成膜物質Mとキャンロール本体1とを導通させることができるので、導通帯3等の導通部材を設ける必要はない。
A スパッタリング装置
C キャンロール
1 キャンロール本体
2 養生帯
2f 樹脂フィルム
2m 導電膜
3 導通帯
3f 樹脂フィルム
3m 導電膜
4 拡張養生帯
5 導電性テープ
10 真空チャンバー
21 巻出ロール
22 フリーロール
23 張力センサロール
24 フィードロール
25 フィードロール
26 張力センサロール
27 フリーロール
28 巻取ロール
31〜34 スパッタリングカソード

Claims (5)

  1. スパッタリング法により帯状の被成膜基材に成膜するスパッタリング装置に設けられるキャンロールであって、
    キャンロール本体と、
    前記キャンロール本体の外周面であって、前記被成膜基材の縁が重なる位置に巻回された養生帯と、
    導電性を有する導通部材と、を備え、
    前記養生帯は、帯状の導電膜付樹脂フィルムであり、導電膜を外側に向けて巻回されており、
    前記導通部材は、前記養生帯の導電膜と前記キャンロール本体とを導通させるよう設けられている
    ことを特徴とするキャンロール。
  2. 前記導通部材は、帯状の導電膜付樹脂フィルムであり、一部が前記養生帯に重なり、残部が前記キャンロール本体の外周面に重なるように、導電膜を内側に向けて巻回されている
    ことを特徴とする請求項1記載のキャンロール。
  3. 前記キャンロール本体の外周面であって、前記導通部材と前記キャンロール本体の端との間を覆うように巻回された拡張養生帯を備える
    ことを特徴とする請求項2記載のキャンロール。
  4. スパッタリング法により帯状の被成膜基材に成膜するスパッタリング装置に設けられるキャンロールであって、
    キャンロール本体と、
    前記キャンロール本体の外周面であって、前記被成膜基材の縁が重なる位置に巻回された養生帯と、を備え、
    前記養生帯は、導体で形成されており、前記キャンロール本体と導通している
    ことを特徴とするキャンロール。
  5. 請求項1、2、3または4記載のキャンロールを備える
    ことを特徴とするスパッタリング装置。
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