JP5112548B1 - スパッタリング装置およびその成膜方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被処理基板に対して成膜の初期段階から持続的に除電を行なうことによって、異常放電の発生を抑制することが可能なスパッタリング装置を得る。
【解決手段】スパッタリング処理によって被処理基板100に対して導電膜103を形成するスパッタリング装置は、処理室と、金属製のローラ基部3Lおよびローラ基部3Lの全周に設けられる樹脂材3Rを含む搬送ローラ3と、樹脂材3Rの表面を被覆しつつローラ基部3Lに電気的に導通された導電部3Sと、を備え、処理室内で被処理基板100に導電膜103を形成するとき、被処理基板100は、導電部3Sに当接して搬送ローラ3に搬送され、導電部3Sを通して除電されつつスパッタリング処理される。
【選択図】図5
【解決手段】スパッタリング処理によって被処理基板100に対して導電膜103を形成するスパッタリング装置は、処理室と、金属製のローラ基部3Lおよびローラ基部3Lの全周に設けられる樹脂材3Rを含む搬送ローラ3と、樹脂材3Rの表面を被覆しつつローラ基部3Lに電気的に導通された導電部3Sと、を備え、処理室内で被処理基板100に導電膜103を形成するとき、被処理基板100は、導電部3Sに当接して搬送ローラ3に搬送され、導電部3Sを通して除電されつつスパッタリング処理される。
【選択図】図5
Description
本発明は、スパッタリング装置およびその成膜方法に関し、特に、被処理基板を搬送しつつスパッタリング処理によって被処理基板の表面に導電膜を成膜するスパッタリング装置およびその成膜方法に関する。
スパッタリング装置を用いて成膜を行うとき、成膜中のスパッタ粒子は帯電している為、そのスパッタ粒子が堆積した被処理基板には成膜の過程で静電気という形で電荷が溜まっていく。その電荷が所定の量を超えたとき、被処理基板の近傍に導電性を有する物体があると、被処理基板とこの物体との間で異常放電が生じ、その異常放電の衝撃によって被処理基板にダメージが生じることがある。したがって、被処理基板と被処理基板の近傍の物体とを互いに絶縁することが従来から行われてきた。
特開2001−035694号公報(特許文献1)には、スパッタリング装置に関する発明が開示される。このスパッタリング装置においては、被処理基板を搬送するための搬送ローラが用いられる。この搬送ローラは、ポリテトラフルオロエチレン(絶縁性を有する樹脂)から構成される。
特開2010−147256号公報(特許文献2)にも、スパッタリング装置に関する発明が開示される。このスパッタリング装置においては、被処理基板を搬送するためガイドローラが用いられる。このガイドローラの上側および下側には、防着板がそれぞれ設けられる。防着板によって、絶縁ローラとシャフトとの間の導通が防止されている。
特開2011−023123号公報(特許文献3)には、除電装置(イオナイザ)およびこれを備えた搬送装置に関する発明が開示される。イオナイザとよばれる除電装置を用いて、ガラス基板の表面にイオンが供給される。ガラス基板の帯電が中和される(除電される)ことによって、ガラス基板に発生した静電気が除去される。
特開2001−035694号公報(特許文献1)に開示されるスパッタリング装置においては、スパッタリング処理によって、搬送ローラ上に導電性膜が付着する。搬送ローラ上に付着した導電性膜によって搬送ローラの絶縁性が低下する為、搬送ローラと成膜によって帯電した基板との間で異常放電が発生する可能性がある。
特開2010−147256号公報(特許文献2)に開示されるスパッタリング装置においては、スパッタリング処理が繰り返し行なわれることによって、防着板が導電膜によって覆われる。ローラと防着板との間に導電膜が形成され、さらに、防着板とシャフトとの間に導電膜が形成される。これらの導電膜を通して、ローラとシャフトとが互いに導通する。これによって、成膜によって帯電した被処理基板とローラとの間で異常放電が発生する可能性がある。
特開2011−023123号公報(特許文献3)に開示されるイオナイザを、スパッタリング装置内に設けたとする。イオナイザを用いてスパッタリング処理中の被処理基板に対して除電を行なった場合、イオナイザから放出されるイオンが、スパッタ粒子の動きを妨げる。スパッタ粒子の動きが不均一となり、成膜される導電膜などの厚さにばらつきが生じる。スパッタリング処理が繰り返し行なわれることによって、イオナイザ自体にも導電膜が堆積する。イオナイザの除電性能が低下することによって、被処理基板は除電されなくなって電荷が溜まり、異常放電が発生する可能性がある。
本発明は、上記のような実情に鑑みて為されたものであって、被処理基板に対して成膜の初期段階から持続的に除電を行なうことによって、異常放電の発生を抑制することが可能なスパッタリング装置およびその成膜方法を提供することを目的とする。
本発明に基づくスパッタリング装置は、スパッタリング処理によって被処理基板に対して導電膜を形成するスパッタリング装置であって、処理室と、金属製のローラ基部および上記ローラ基部の全周に設けられる樹脂材を含む搬送ローラと、上記樹脂材の表面を被覆しつつ上記ローラ基部に電気的に導通された導電部と、を備え、上記処理室内で上記被処理基板に上記導電膜を形成するとき、上記被処理基板は、上記導電部に当接して上記搬送ローラに搬送され、上記導電部を通して除電されつつスパッタリング処理される。
好ましくは、上記導電部は、上記樹脂材の表面に形成された上記導電膜からなる。好ましくは、上記導電部は、銀、銅、金、およびアルミニウムのうちのいずれかを含む上記導電膜である。好ましくは、上記導電部は、上記樹脂材の表面を被覆しつつ上記ローラ基部に電気的に導通された金属メッシュ部を含む。
本発明に基づくスパッタリング装置の成膜方法は、スパッタリング処理によって被処理基板に対して導電膜を形成するスパッタリング装置の成膜方法であって、金属製のローラ基部および上記ローラ基部の全周に設けられる樹脂材を含み処理室内に位置する搬送ローラの表面に、予め上記樹脂材の表面を被覆しつつ上記ローラ基部に電気的に導通するように導電膜を成膜して導電部を形成する第1工程と、上記搬送ローラを用いて上記処理室内において上記被処理基板を搬送しつつ、上記スパッタリング処理によって上記被処理基板に対して上記導電膜を形成する第2工程と、を備え、上記第2工程のとき、上記被処理基板は、上記導電部を通して除電されている。
本発明によれば、被処理基板に対して成膜の初期段階から持続的に除電を行なうことによって、異常放電の発生を抑制することが可能なスパッタリング装置およびその成膜方法を得ることができる。
[実施の形態]
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
(スパッタリング装置1)
図1は、実施の形態におけるスパッタリング装置1の装置構成を示す模式図である。図1に示すように、スパッタリング装置1は、いわゆるインライン型スパッタリング装置(インライン型DCマグネトロンスパッタリング装置)である。
図1は、実施の形態におけるスパッタリング装置1の装置構成を示す模式図である。図1に示すように、スパッタリング装置1は、いわゆるインライン型スパッタリング装置(インライン型DCマグネトロンスパッタリング装置)である。
スパッタリング装置1は、被処理基板100に対して導電膜を形成するものであり、チャンバ2(処理室)と、搬送手段としての複数の搬送ローラ3と、プラズマ生成部としてのカソード21と、材料ターゲット28と、除電シールド29と、底面防着板40と、電源接続部23とを主として備えている。
チャンバ2は、外部の空間と処理空間とを区画するための反応容器に相当し、たとえば箱状の形状を有している。チャンバ2の相対する一対の側面のうちの一方の側面には、処理前の被処理基板100を処理空間に搬入するためのスリット状の搬入口2aが設けられている。上記一対の側面のうちの他方の側面には、処理後の被処理基板100を処理空間から搬出するためのスリット状の搬出口2bが設けられている。チャンバ2の下面には、処理空間に充填された後述する材料ガスを排出するためのガス排出部2cが設けられている。
搬送ローラ3は、チャンバ2の内側および外側に整列して複数設けられており、これにより上述した搬入口2aおよび搬出口2bを結ぶように搬送路4が構成されている。搬送路4は、被処理基板100を搬送するための通路であり、チャンバ2を横断するように直線状に設けられている。搬送ローラ3は、搬送路4の下方に位置し、被処理基板100の下面を支持しつつ支持した被処理基板100を上記搬送路4上において図中矢印A方向に搬送する。
搬送ローラ3の各々は、インシュレータ41を通して電気的に接地されている。被処理基板100の搬送方向において相互に隣り合う搬送ローラ3同士の間には、底面防着板40が設けられている。底面防着板40は、インシュレータ42を通して電気的に接地されている。
図2は、図1に示すスパッタリング装置1の搬送路4を上方から見た場合の平面図である。図2に示すように、搬送ローラ3は、被処理基板100の搬送方向と直交する方向に沿って所定の間隔Xを空けて複数配置され、回転軸5によってそれぞれ軸支されている。図示しない駆動手段によって回転軸5が回転駆動されることで、複数の搬送ローラ3は被処理基板100を搬送する。なお、これら複数の搬送ローラ3は、被処理基板100の搬送方向に沿って互いに平行に複数配置されている。搬送ローラ3の更なる詳細については、図3および図4を参照して後述する。
図1を再び参照して、カソード21は、チャンバ2内の所定位置において搬送路4の上方に配置されている。カソード21は、平板状の電圧印加電極に相当し、搬送路4の上方にその下面が搬送路4に面するように、当該搬送路4から所定の距離をもって配置されている。カソード21は、電源接続部23を通して図示しない直流電源に接続されている。また、カソード21の下面には、中央磁石22aおよび外周磁石22bが取付けられている。中央磁石22aは、カソード21の下面の中央部に配設されており、外周磁石22bは、当該中央磁石22aを囲むようにカソード21の下面の周縁に沿って環状に配置されている。
カソード21は、電気的に接地されたカソードシールド24によって覆われており、当該カソードシールド24の下方の位置に、材料ターゲット28が取付けられている。材料ターゲット28の周囲には、電気的に接地された除電シールド29が設けられている。この材料ターゲット28は、スパッタリングによりスパッタ粒子を発生させるためのものであり、被処理基板100に成膜すべき膜の組成に応じた材料ターゲットが適宜選択される。
カソードシールド24は、絶縁体25によって支持されてチャンバ2内に位置しており、当該カソードシールド24には、冷却水を導入および排出するための冷却水導入管26および冷却水排出管27が取付けられている。冷却水導入管26および冷却水排出管27は、内部を流動する冷却水によってカソード21の冷却を行なうものであり、図中矢印D1方向に沿って冷却水導入管26から導入された冷却水は、カソード21の冷却に使用され、その後図中矢印D2方向に沿って冷却水排出管27から排出される。
チャンバ2の上面の所定位置には、ガス導入管20が設けられており、当該ガス導入管20は、図示しないガス供給源に接続されている。これにより、ガス導入管20を通して、成膜用のガスが、図中に示す矢印B1方向に沿ってチャンバ2内の処理空間に導入されることになる。チャンバ2内に導入されたガスは、チャンバ2内を充填し、その後、カソード21の下方に位置するガス排出部2cから図中矢印B2方向に向けて排出される。ここで、ガス導入管20によって導入されるガスは、主としてアルゴン等の希ガスである。
カソード21に電圧が印加された状態においては、材料ターゲット28上に半円状の磁力線が発生し、強い発光のプラズマが材料ターゲット28の下方でかつ搬送路4の上方の空間にドーナツ状に形成される。当該空間は、プラズマが生成される領域に相当し、これにより被処理基板100の上面(成膜すべき表面)に面するようにプラズマが生成される。
気体分子がプラズマ化されてイオンとなり、当該イオンが材料ターゲット28に衝突することにより材料ターゲット28中に含まれる原子がスパッタ粒子として被処理基板100側に向けて叩き出される。そして、材料ターゲット28から叩き出されたスパッタ粒子が、上記領域を搬送される被処理基板100の上面に堆積することにより、所望の膜が成膜されることになる。
搬送路4上を搬送される被処理基板100の上面と、材料ターゲット28の下面との間の距離dは、放電の開始電圧Vsに影響を与えないものの被処理基板100の上面に成膜される膜の膜厚に影響を与えるため、当該距離dが被処理基板100の搬送方向において一定となるように、搬送ローラ3の配置位置を設定することが好ましい。この場合、プラズマ生成部としてのカソード21が位置する部分の搬送路4の下方に、被処理基板100の搬送方向(図中に示す矢印A方向)に沿って複数の搬送ローラ3が配置されることになる。
(搬送ローラ3)
図3は、搬送ローラ3および回転軸5を示す断面図である。図4は、搬送ローラ3および回転軸5を示す斜視図である。
図3は、搬送ローラ3および回転軸5を示す断面図である。図4は、搬送ローラ3および回転軸5を示す斜視図である。
図3および図4に示すように、搬送ローラ3は、回転軸5に取り付けられるローラ基部3Lと、ローラ基部3Lの全周にわたって設けられる樹脂材3Rと、を含んでいる。ローラ基部3Lは、金属製の部材から構成されている。樹脂材3R(Oリング)は、フッ素樹脂などの絶縁性を有する樹脂から構成されている。
ここで、樹脂材3Rの表面は、銀、銅、金、およびアルミニウム等のうちのいずれかを含む金属薄膜(導電膜)などから構成される導電部3Sによって被覆されている。導電部3Sは、樹脂材3Rの表面から樹脂材3Rの側方にわたって形成されている。導電部3Sは、樹脂材3Rの側方を回転軸5に向かって回り込むように形成されており、ローラ基部3Lに電気的に導通されている(図4参照)。導電部3Sは、搬送ローラ3の表面を構成しており、チャンバ2(図1参照)内において搬送される被処理基板100に当接する。
(スパッタリング装置の成膜方法)
図5は、スパッタリング装置1(図1参照)を用いて被処理基板100に対してスパッタリング処理が行なわれている際の被処理基板100の様子を示す断面図である。図5に示すように、スパッタリング装置1の成膜方法においては、上述のとおり、搬送ローラ3によって搬送される被処理基板100に対して、スパッタリング処理が行なわれる。被処理基板100の上面に面するように、プラズマが生成される。
図5は、スパッタリング装置1(図1参照)を用いて被処理基板100に対してスパッタリング処理が行なわれている際の被処理基板100の様子を示す断面図である。図5に示すように、スパッタリング装置1の成膜方法においては、上述のとおり、搬送ローラ3によって搬送される被処理基板100に対して、スパッタリング処理が行なわれる。被処理基板100の上面に面するように、プラズマが生成される。
被処理基板100に対してスパッタリング処理が行なわれることによって、たとえば透明導電層101および半導体層102が形成された被処理基板100の表面(半導体層102の表面)に、導電膜103が成膜される。導電膜103は、被処理基板100の端部(被処理基板100の搬送方向の前方の端部、被処理基板100の搬送方向の後方の端部、および被処理基板100の両側方の端部)において、被処理基板100の表面側から裏面側に向かって回りこむように形成される。
被処理基板100が複数の搬送ローラ3によって受け渡しされながら順次搬送される際、被処理基板100の表面に形成された導電膜103は、搬送ローラ3の表面に形成されている導電部3Sと接触する。複数の搬送ローラ3の各々における導電部3Sを通して、被処理基板100に対して持続的に除電が行なわれることにより、被処理基板100における帯電は常に低減されることが可能となる。
これにより、被処理基板100に、(異常放電が発生するほどの)大量の電荷が帯電する(溜め込まれる)ことは抑制されることとなり、被処理基板100において異常放電が発生することは抑制されることが可能となる。結果として、本実施の形態におけるスパッタリング装置1によれば、異常放電の発生が抑制され、被処理基板100に対して均一なスパッタリング処理を行なうことが可能となる。
また、搬送ローラ3における樹脂材3Rは、所定の弾性を有している。搬送ローラ3の表面が導電部3Sによって形成されていたとしても、搬送中に生じる被処理基板100に対するダメージは、樹脂材3Rの弾性によって吸収される。
なお、樹脂材3Rおよび導電部3Sとして、導電性の樹脂を用いてこれらを一体的に構成した部材を用いることも可能ではあるが、現時点で知られている導電性を有する樹脂では導電性を高く構成することは困難であり、異常放電を効果的に抑制することはできない。したがって、本実施の形態のように、樹脂材3Rおよび導電部3Sを含む搬送ローラ3を用いることによって、効果的に被処理基板100の除電が行なわれるとともに、異常放電の発生を抑制することが可能となる。
被処理基板100に対するダメージを軽減するという観点からは、搬送ローラ3の全体を金属製の部材から構成するということはあまり好ましくない。被処理基板100を搬送する際に被処理基板100に付与される衝撃が大きくなり、被処理基板100に割れや欠けなどが発生する原因となる。
図6を参照して、本実施の形態におけるスパッタリング装置の成膜方法としては、被処理基板100(図示せず)に対してスパッタリング処理を行なう前に、チャンバ2内に位置する搬送ローラ3(樹脂材3R)の表面に、スパッタリング装置1を用いて予め導電部3Sを成膜しておくとよい。この場合、表面に樹脂材3Rを有する搬送ローラ3を回転させた状態で、搬送ローラ3に対してスパッタリング処理が行なわれ、これにより導電部3S(導電膜)が樹脂材3Rの全周にわたって成膜される。
導電部3Sの成膜の後、導電部3Sが表面に形成された搬送ローラ3を用いてチャンバ2内に被処理基板100(図示せず)が搬送される。チャンバ2内において、スパッタリング処理によって、被処理基板100に対して導電膜103が形成される。上述のとおり、被処理基板100に対してスパッタリング処理が行なわれる際には、被処理基板100は、導電膜103および導電部3Sを通して持続的に(常に)除電されることが可能となる。
また、スパッタリング処理中において、搬送ローラ3の表面上には常に新たな導電部3Sが堆積される。被処理基板100を搬送する際に搬送ローラ3と被処理基板100との接触によって導電部3Sの一部が剥離したとしても、被処理基板100が搬送ローラ3上に配置されていない状態で定期的に導電部3Sが搬送ローラ3(樹脂材3R)の表面に形成されるため、搬送ローラ3における導電性を維持することが可能となる。
樹脂材3Rの表面に形成する導電部3Sの膜厚(Ag膜厚)としては、数μm程度にするとよい。導電部3Sの膜厚(Ag膜厚)が115nmの場合には、250V(〜4000MΩ)の電圧を導電部3Sに印加したところ、0.8MΩ〜1.3MΩの抵抗がテスターにより計測され、異常放電の発生が確認された。また、導電部3Sの膜厚(Ag膜厚)が115nmの場合、500V(〜4000MΩ)の電圧を導電部3Sに印加したところ、1.0MΩ〜2.0MΩの抵抗がテスターにより計測され、異常放電の発生が確認された。なお、導電部3Sの膜厚(Ag膜厚)が115nmの場合、50V(〜4000MΩ)の電圧を導電部3Sに印加したところ、10Ω〜39Ωの抵抗がテスターにより計測され、異常放電の発生は確認されなかった。
一方、導電部3Sの膜厚(Ag膜厚)を数μmとした場合には、50V(〜4000MΩ)、250V(〜4000MΩ)、および500V(〜4000MΩ)のうちのいずれの電圧を導電部3Sに印加したとしても、0Ωの抵抗がテスターにより計測されるとともに、異常放電の発生は確認されなかった。したがって、樹脂材3Rの表面に形成する導電部3Sの膜厚(Ag膜厚)としては、数μm程度にするとよい。樹脂材3Rの表面に形成する導電部3Sの膜厚(Ag膜厚)のさらに詳細な値としては、被処理基板100に成膜すべき膜の組成、膜の厚さ、または使用する成膜ガス等に応じて、被処理基板100に対して良好な除電が行なわれるように最適化されるとよい。
[第1変形例]
図7は、本変形例における搬送ローラ3Aを示す斜視図である。搬送ローラ3Aにおいては、樹脂材3Rの表面に、金属箔3Pが貼付されている。本変形例における搬送ローラ3Aによっても、上述の実施の形態1と同様に、効果的に被処理基板100の除電が行なわれるとともに、異常放電の発生を抑制することが可能となる。また、被処理基板100に対するダメージは、樹脂材3Rの弾性によって吸収されることができる。
図7は、本変形例における搬送ローラ3Aを示す斜視図である。搬送ローラ3Aにおいては、樹脂材3Rの表面に、金属箔3Pが貼付されている。本変形例における搬送ローラ3Aによっても、上述の実施の形態1と同様に、効果的に被処理基板100の除電が行なわれるとともに、異常放電の発生を抑制することが可能となる。また、被処理基板100に対するダメージは、樹脂材3Rの弾性によって吸収されることができる。
また、金属箔3Pによれば、上述の実施の形態1における導電部3S(金属薄膜)に比べて耐久性を向上させることが可能となる。金属箔3Pの表面にさらに金属薄膜を堆積してもよい。
[第2変形例]
図8は、本変形例における搬送ローラ3Bを示す斜視図である。図9は、搬送ローラ3Bを示す断面図である。搬送ローラ3Bにおいては、樹脂材3Rの表面に、金属メッシュ部3Qが設けられる。金属メッシュ部3Qは、導電性の部材から構成され、樹脂材3Rをメッシュ状に覆うように設けられる。
図8は、本変形例における搬送ローラ3Bを示す斜視図である。図9は、搬送ローラ3Bを示す断面図である。搬送ローラ3Bにおいては、樹脂材3Rの表面に、金属メッシュ部3Qが設けられる。金属メッシュ部3Qは、導電性の部材から構成され、樹脂材3Rをメッシュ状に覆うように設けられる。
本変形例における搬送ローラ3Bによっても、上述の実施の形態1と同様に、効果的に被処理基板100の除電が行なわれるとともに、異常放電の発生を抑制することが可能となる。また、被処理基板100に対するダメージは、樹脂材3Rの弾性によって吸収されることができる。
図8および図9に示すように、金属メッシュ部3Qが設けられていない隙間の部分を埋めるように、さらに導電部3S(金属薄膜)が形成されていてもよい。この場合、導電部3Sが樹脂材3Rの表面から剥離しにくくなり、導電部3Sとしての導電性を向上させることが可能となる。また、被処理基板100による荷重が金属メッシュ部3Qによって分散されるため、導電部3Sとしての耐久性を向上させることも可能となる。
上述の実施の形態および各変形例において、搬送ローラ3(搬送ローラ3A,3B)は、接地されていても接地されていなくてもどちらでもよい。接地させる場合は、回転軸5を通して搬送ローラ3(搬送ローラ3A,3B)は接地される。この場合、被処理基板100の帯電が効果的に除去されるため好ましい。一方、接地させない場合であっても、ローラ基部3Lにおいて被処理基板100の電荷を溜め込むことができ、スパッタリングによる被処理基板100の帯電量では、ローラ基部3Lが他の部品との間で異常放電を起こすほどにはならない。したがって、必要に応じて、搬送ローラ3(搬送ローラ3A,3B)は接地されるとよい。
以上、本発明に基づいた実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 スパッタリング装置、2 チャンバ(処理室)、2a 搬入口、2b 搬出口、2c ガス排出部、3 搬送ローラ、3L ローラ基部、3P 金属箔、3Q 金属メッシュ部、3R 樹脂材、3S 導電部、4 搬送路、5 回転軸、20 ガス導入管、21 カソード、22a 中央磁石、22b 外周磁石、23 電源接続部、24 カソードシールド、25 絶縁体、26 冷却水導入管、27 冷却水排出管、28 材料ターゲット、29 除電シールド、40 底面防着板、41,42 インシュレータ、100 被処理基板、101 透明導電層、102 半導体層、103 導電膜、X 間隔、d 距離。
Claims (5)
- スパッタリング処理によって被処理基板に対して導電膜を形成するスパッタリング装置であって、
処理室と、
金属製のローラ基部および前記ローラ基部の全周に設けられる樹脂材を含む搬送ローラと、
前記樹脂材の表面を被覆しつつ前記ローラ基部に電気的に導通された導電部と、を備え、
前記処理室内で前記被処理基板に前記導電膜を形成するとき、前記被処理基板は、前記導電部に当接して前記搬送ローラに搬送され、前記導電部を通して除電されつつスパッタリング処理される、
スパッタリング装置。 - 前記導電部は、前記樹脂材の表面に形成された前記導電膜からなる、
請求項1に記載のスパッタリング装置。 - 前記導電部は、銀、銅、金、およびアルミニウムのうちのいずれかを含む前記導電膜である、
請求項1または2に記載のスパッタリング装置。 - 前記導電部は、前記樹脂材の表面を被覆しつつ前記ローラ基部に電気的に導通された金属メッシュ部を含む、
請求項1から3のいずれかに記載のスパッタリング装置。 - スパッタリング処理によって被処理基板に対して導電膜を形成するスパッタリング装置の成膜方法であって、
金属製のローラ基部および前記ローラ基部の全周に設けられる樹脂材を含み処理室内に位置する搬送ローラの表面に、予め前記樹脂材の表面を被覆しつつ前記ローラ基部に電気的に導通するように導電膜を成膜して導電部を形成する第1工程と、
前記搬送ローラを用いて前記処理室内において前記被処理基板を搬送しつつ、前記スパッタリング処理によって前記被処理基板に対して前記導電膜を形成する第2工程と、を備え、
前記第2工程のとき、前記被処理基板は、前記導電部を通して除電されている、
スパッタリング装置の成膜方法。
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