JP2011084780A - プラズマcvd装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 プラズマCVD装置において、皮膜の脱落や基材への傷つきを防止した上で、成膜ロールの端部に皮膜が形成されることを防止する遮蔽部材を容易に交換できるようにする。
【解決手段】本発明のCVD装置1は、真空チャンバ3と真空チャンバ3内に配備されると共に電源4の両極が接続され且つ各々に成膜対象であるシート状の基材Wが巻き掛けられる成膜ロール2と成膜ロールの端部9をプラズマから遮蔽する遮蔽部材5とを備えたものであり、遮蔽部材5は成膜ロールの端部9表面の周方向に沿うような湾曲形状で成膜ロール2とは別の部材とされていて、遮蔽部材5と成膜ロール2とは一定のクリアランス10を有するように配備されると共に互いが同電位に保持されていて、このクリアランス10はシート状の基材Wが差し込み可能であると共にプラズマ11が成膜ロール2の端部側まで進入することを防止可能な距離に設定されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、成膜ロールにおいて金属が露出した部分に不要なCVD皮膜が形成されることを防止可能なプラズマCVD装置に関する。
近年、食品包装に用いられるプラスチックフィルムに対しては、水蒸気や酸素を通さない特性(バリア性)が高く要求されている。このようなプラスチックフィルムなどのシート材に高バリア性を付与するためには、透明性のあるSiOxやAl23などの皮膜をコーティングする必要がある。SiOx皮膜のコーティング技術としては従来より真空蒸着法、スパッタ法などの物理蒸着法(PVD法)があるが、これらの技術に比して成膜速度、高バリア皮膜の形成の面で優位なプラズマCVD法が用いられるようになっている。
ところで、上述したプラズマCVD法を行うプラズマCVD装置には、例えば特許文献1〜特許文献4に示されたものがある。これらの文献に開示された装置は、交流電源の両極にそれぞれ電気的に接続された一対の成膜ロールを有し、一対の成膜ロールの間に電位差が加えられていて、それぞれのロールの内部にはロール表面に磁場を形成するマグネットが配備されている。そして、磁場と電位差との相互作用でロールの表面にプラズマを発生させてシート材(基材)にCVD皮膜を成膜する構成とされている。
ところで、一般にシート材は成膜ロールより狭幅に形成されているため、シート材に対して幅方向にムラなく皮膜を形成しようとすればシート材の端部に対しても中央部と同様にプラズマを発生させなくてはならない。そのため、シート材が巻き掛けられていない成膜ロールの端部表面が露出状態となっていると、成膜をしたくない成膜ロールの表面にも成膜が行われてしまう。
そこで、特許文献5や特許文献6には、成膜ロールの表面をプラズマから遮蔽する遮蔽部材を設けたプラズマCVD装置が開発されている。これらの文献に記載された遮蔽部材は絶縁体であり、例えば成膜ロールと同じ電位に保持されてはいない。つまり、これらの文献の遮蔽部材は、成膜ロールの表面を物理的に保護するものに過ぎず、そのため遮蔽部材の上にはプラズマは発生しない。よって、遮蔽部材の近傍の基材では成膜が十分に行われず、膜厚が薄くなるあるいは膜質が劣化するといった問題が発生しやすい。
一方、特許文献7や特許文献8には、成膜ロールの両端部の表面に遮蔽部材が巻き付けられ、成膜ロールの表面を保護するようになっているプラズマCVD装置が開示されている。この遮蔽部材は成膜ロールと同じ電位に保持されており、遮蔽部材を成膜ロールと同じ電位に保持して処理を行えば、基材から遮蔽部材にかけて一様にプラズマが発生し、膜厚を薄くするあるいは膜質を劣化させることなく基材の上に成膜させることが可能となる。
特開2008−196001号公報 特許第3880697号公報 特許第3155278号公報 特許第2587507号公報 特開2005−220445号公報 特開1996−325740号公報 特開2009−24205号公報 特開2009−24206号公報
ところで、特許文献7や特許文献8のCVD装置では、遮蔽部材が成膜ロールの端部に剥がれないようにしっかりと巻き付けて固定されているため、遮蔽部材を剥がして交換するのに非常に手間がかかる。例えば、基材を異なる幅に変更するときは、一旦遮蔽部材をロールから剥がしたうえで新たな基材の幅に合わせて遮蔽部材の位置を変えなければならず、非常に煩雑で時間を要する作業が必要となる。また、例えば基材を通紙した状態で遮蔽部材を交換するときは、成膜ロールに巻き掛けられた基材をゆるめておかなくては、基材の内側にある遮蔽部材を交換することができない。それゆえ、遮蔽部材や基材の交換といった生産に付随して発生する作業が複雑で時間がかかるものとなり、上述のCVD装置では生産性が低いという問題があった。
また、成膜ロールに交流電圧を印加してプラズマを発生させると、成膜ロールに巻かれた基材だけでなく、遮蔽部材上にも皮膜が形成される。そして、やがてこの皮膜の堆積量が大きくなると膜応力などで皮膜が剥離してダストの原因となる。特に皮膜が大きく堆積した遮蔽部材を交換する際に遮蔽部材の取り外しに手間取ると、遮蔽基材から堆積した皮膜が剥がれ落ちてダストを増加させるおそれがある。ダストを落とさないように遮蔽基材を成膜ロールごと交換する方法も考えられるが、このような交換方法はロールの取り外しを伴うため作業が大掛かりになりやすく、ダストを落とさないように細心の注意が必要であるため作業時間も長いものになりやすい。
さらに、特許文献7及び8のCVD装置では、基材の端部が遮蔽部材の上に乗り上げる形でCVD処理が行われるため、基材の端が中央部に対して反るように変形する問題が生じ易い。ロールの端部側を遮蔽部材の厚みの分だけ小径に加工(段付き加工)して、この小径部分に遮蔽部材を嵌め込んでからCVD処理をすることも可能であるが、このようなロールの加工には多大のコストが必要となるし、基材の幅を変更する際にはロールの交換が不可欠となり現実的ではない。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、上述の課題をすべて解決できるプラズマCVD装置を提供することを目的とする。
具体的には、本発明は、基材で覆われていない成膜ロールの端部に対して不要な皮膜の形成を防止したうえで、基材に対して均一な膜厚及び膜質で皮膜を形成できるようにしたものであって、これらに加えてさらに次の(1)〜(4)の課題を解決できるようにしたプラズマCVD装置を提供することを目的とする。
(1)遮蔽部材の交換を容易にして、メンテナンス時の作業性を良好にする。特に、基材を通紙した状態において遮蔽部材を容易に交換できるようにする。
(2)遮蔽部材を取り外す際に、遮蔽部材に堆積した皮膜が脱落してダストが発生することを防止する。
(3)遮蔽部材と基材とを非接触状態として、基材の傷や変形を防止する。
(4)遮蔽部材の上にも基材から連続したプラズマを形成し、膜厚の分布、膜質の分布を均一に保つ。
上記課題を解決するため、本発明のプラズマCVD装置は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のプラズマCVD装置は、真空チャンバと、当該真空チャンバ内に配備されると共に電源の両極が接続され且つ各々に成膜対象であるシート状の基材が巻き掛けられる真空チャンバから絶縁された成膜ロールと、前記基材が巻き掛けられていない成膜ロールの端部を、成膜ロール近傍に発生したプラズマから遮蔽する遮蔽部材と、を備えたプラズマCVD装置であって、前記遮蔽部材は、前記成膜ロールとは別の部材からなると共に、前記成膜ロールの端部表面の周方向に沿うような湾曲形状とされていて、前記遮蔽部材と当該遮蔽部材が取り付けられる成膜ロールとは、一定のクリアランスを有するように配備されると共に、互いが同電位に保持されていて、前記クリアランスは、前記シート状の基材が差し込み可能であると共に前記プラズマが成膜ロールの端部側まで進入することを防止可能な距離に設定されていることを特徴とするものである。
このような遮蔽部材を設けて成膜ロールの端部を遮蔽すれば、露出状態となっている成膜ロールの端部に対してCVD皮膜が形成されることを防止することができる。一方、CVD皮膜は遮蔽部材の表面に形成されることになるが、遮蔽部材を成膜ロールとは別の部材とすれば、成膜ロールにシート状の基材が巻き掛けられていても遮蔽部材だけを取り外すだけで済み、基材を通紙した状態においても遮蔽部材を容易に交換でき、メンテナンス時の作業性が良好になる。また、遮蔽部材は一定のクリアランスを介して成膜ロールから離間して配備されているため、遮蔽部材を取り外すに際して成膜ロールを取り外すことは全く不要となる。そのうえ、交換されたまたは交換する遮蔽部材が成膜ロールや基材に接触する心配がないため、堆積した皮膜が脱落してダストが発生する可能性が低く、基材に傷や変形が起こるおそれもない。
なお、前記成膜ロールは、交流電源の両極が接続された一対の成膜ロールであることが望ましい。また、遮蔽部材とこの遮蔽部材が取り付けられる隣接する側の成膜ロールとは、前記交流電源の同じ電極に接続されて同電位に保持されているのが好ましい。このように成膜ロールを一対設けて、交流電源の両極を接続した場合、成膜ロールを交互に利用できるので、成膜効率が格段に向上する。また、遮蔽部材と成膜ロールとを交流電源の同じ電極に接続すれば、遮蔽部材と成膜ロールとが同じ極性で且つ同じ位相で変化し、遮蔽部材の電位を成膜ロールに合わせて調整する必要が無くなり、遮蔽部材と成膜ロールとをCVD処理中に亘って同電位に保持することが容易となる。それゆえに、成膜ロールから遮蔽部材まで一様にプラズマを発生させてCVD皮膜をムラなく形成することが可能となる。
前記成膜ロールに面する側とは反対側の遮蔽部材の表面に、絶縁体材料で形成された絶縁コートが設けられているのが好ましい。
成膜ロールの端部を遮蔽部材で遮蔽しても導電体の遮蔽部材が剥き出しになっているとアーク放電が発生してプラズマから遮蔽部材に瞬間的に大電流が流れる場合がある。アーク放電が発生すると、交流電源の故障に繋がったり、または電源を保護する保護回路が作動してCVD処理が中断してCVD皮膜の品質を安定することが困難になるといった問題がある。しかし、上述のように遮蔽部材の表面に絶縁体材料で形成された絶縁コートを配備すれば、遮蔽部材にアーク放電が発生することを防止でき、交流電源の故障を防止するまたはCVD皮膜の品質を安定化することも可能となる。
前記遮蔽部材と交流電源との間に、コンデンサが接続されているのが好ましい。
コンデンサによりアーク放電のような直流の電流は遮断されるため、このようなコンデンサを交流電源と遮蔽部材との間に電気的に接続しても上述の絶縁コートを設けた場合のようにアーク放電が発生することを防止できる。
前記遮蔽部材は、非磁性の金属から形成されているのが好ましい。
遮蔽部材を鉄のような磁性の金属で形成すると、成膜ロールから磁力を用いて遮蔽部材の外側にプラズマを発生させようとしても、磁力が遮蔽部材でシールドされてしまい遮蔽部材の外側にプラズマが発生しなくなってしまう。ところが、上述のように遮蔽部材をアルミや非磁性のステンレスのような金属で形成しておけば、磁力が遮蔽部材でシールドされることがなく、成膜ロールから遮蔽部材までプラズマを一様に発生させることができるため、安定した膜質のCVD皮膜を形成することが可能となる。
本発明のプラズマCVD装置によれば、遮蔽部材により露出状態となっている成膜ロールの端部に対してCVD皮膜が形成されることを防止することができる。加えて、遮蔽部材の交換、特に基材を通紙した状態における交換が容易であり、メンテナンス時の作業が非常に良好に行える。さらに、遮蔽部材を取り外す際に、遮蔽部材に堆積した皮膜が脱落してダストが発生することや遮蔽部材と基材とが接触して基材に傷や変形が発生することも防止することができる。
本発明のプラズマCVD装置の斜視図である。 プラズマCVD装置の正面断面図である。 第1実施形態のプラズマCVD装置の説明図である。 (a)は第2実施形態、(b)は第3実施形態のプラズマCVD装置の説明図である。 第4実施形態のプラズマCVD装置の説明図である。 従来のプラズマCVD装置の説明図である。
以下、本発明に係るプラズマCVD装置1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。なお、本発明に係るプラズマCVD装置1は後述する成膜ロールが1本や3本以上のものであっても良いが、以降の実施形態では成膜ロールが左右一対設けられたものを例に挙げて説明を行う。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラズマCVD装置1の全体構成を示している。
本実施形態のプラズマCVD装置1は、減圧下において、対向して配置した成膜ロール2L、2Rに交流あるいは極性反転を伴うパルス電圧を印加し、成膜ロール2L、2Rの間の対向空間にグロー放電を発生させ、成膜ロール2L、2Rに巻き掛けたシート状の基材WにプラズマCVDによる成膜を行うものである。
図1及び図2に示すように、本実施形態のプラズマCVD装置1は、図示しない真空チャンバ3と、この真空チャンバ3内に配備されると共に交流電源4の両極が接続され且つ各々に成膜対象であるシート状の基材Wが巻き掛けられる一対の成膜ロール2L、2Rと、基材Wが巻き掛けられていない成膜ロール2L、2Rの端部9を、成膜ロール2L、2Rの近傍で、且つ一対の成膜ロール2L、2R間に発生したプラズマ11から遮蔽する遮蔽部材5とを有している。
なお、以下の説明において、図2の上下をプラズマCVD装置1を説明する際の上下とし、図2の左右をプラズマCVD装置1を説明する際の左右とする。
真空チャンバ3は、ステンレス板等を溶接するなどして中空に形成された筺体であり、その内部には一対の成膜ロール2L、2R、真空チャンバ3内に原料ガスを供給するガス供給手段6及び真空チャンバ3内から原料ガスを排気するガス排気手段7が配備されている。真空チャンバ3には、ガス供給手段6やガス排気手段7を用いて原料ガスが充填されている。なお、本実施形態の装置はSiOxバリア膜をCVD皮膜として形成するプラズマCVD装置1であり、真空チャンバ3にはHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)とO2、He、Ar、N2、NH3またはこれらの混合物とを含む混合ガスが原料ガスとして充填されている。なお、本実施形態の装置では、原料ガスにHMDSOを含むものを例示しているが、原料ガスにはHMDSO以外の有機シリコン系成膜ガス、例えばHMDS(N)(ヘキサメチルジシラザン)、TEOS(テトラエトキシシラン)、TMS(トリメチルシラン、テトラメチルシラン)、モノシランなどを用いることもできる。
それぞれの成膜ロール2L、2Rの内部には対向する成膜ロール2L、2Rとの間にプラズマ11を生成する磁場発生手段8が設けられており、この磁場発生手段8が形成したプラズマ11内に基材Wを通過させることでプラズマCVD装置1ではCVD皮膜が形成されるようになっている。
CVD皮膜を形成する基材Wとしては、プラスチックのフィルムやシート、紙など、ロール状に巻き取り可能な絶縁性の材料が考えられる。プラスチックフィルム、シートとしては、PET、PEN、PES、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリイミド等が適当であり、基材Wの厚みとしては真空中での搬送が可能な5μm 〜0.5mmが好ましい。
成膜ロール2L、2Rは、互いに同径の同長のステンレス材料等で形成された円筒であり、その回転中心が床面から略同じ高さに設置され、互いの軸芯が平行で且つ水平となるように配備されている。一対の成膜ロール2L、2Rは、真空チャンバ3から電気的に絶縁されると共に互いが電気的に絶縁されており、交流電源4の両極に接続される。なお、成膜ロール2L、2Rは、同径、同長である方が好ましいが、必ずしも同径、同長でなくても良い。また、成膜ロール2L、2R同士の軸芯は互いに水平に配備されているのが好ましいが、必ずしも水平でなくても良い。
成膜ロール2L、2Rは、さまざまな寸法幅の基材Wを巻き掛けられるように最も幅が大きな基材Wよりも広幅に形成されている。
交流電源4は、高周波の交流電圧、または、両極の極性が反転可能なパルス状の電圧(パルス状直流電圧)が発生可能とされている。この交流電源4の両極は、いずれも真空チャンバ3から絶縁されたフローティング電位とされている。成膜を行う基材Wは、前述の如く絶縁性の材料であるため、直流の電圧の印加では電流を流すことが出来ないが、フィルム(基材W)の厚みに応じた適切な周波数(およそ1kHz〜、好ましくは10kHz〜)であれば基材Wを通して導通可能である。なお、周波数の上限は特にないが、数10MHz以上になると定在波を形成するので好ましくはない。
次に、本発明の特徴である遮蔽部材5の構成、及びこの遮蔽部材5と成膜ロール2L、2Rとの位置関係について詳しく説明する。
遮蔽部材5は、成膜ロール2L、2Rの両側の端部9における基材Wが巻き掛けられていない部分に設けられて成膜ロール2L、2R間に発生したプラズマ11から成膜ロール2L、2Rの端部9表面を遮蔽するものである。遮蔽部材5は、アルミニウムやステンレスなどの非磁性の金属により湾曲した板状に形成されており、一対の成膜ロール2L、2Rのそれぞれに配備されている。遮蔽部材5は、それぞれの成膜ロール2L、2Rの外周面を覆うように配備されており、外周面における対向したロールに面する側をおおむね半周に亘って覆うように配備されている。
遮蔽部材5は、成膜ロール2L、2Rにおける基材Wが巻き掛けられていない端部9を確実に覆えるように基材Wが巻き掛けられていない端部9より幅方向に長く形成されている。例えば、左側の成膜ロール2Lに取り付けられる遮蔽部材5の場合であれば、遮蔽部材5の左側端部9Lは成膜ロール2Lの左端よりさらに左側まで突出しており、右側端部9Rは基材Wの左端よりさらに右側まで延設されていて、基材Wとこの基材Wが巻き掛けられていない端部9とを確実に遮蔽できるようになっている。
このように遮蔽部材5で基材Wが巻き掛けられていない、言い替えれば露出状態とされた端部9を被覆することにより、端部9にCVD皮膜が形成されることを防止することが可能となる。その結果、例えば成膜ロール2L、2Rの端部9に形成されたCVD皮膜によりプラズマが不安定になることを防止でき、またこのようなCVD皮膜を取り除くのに必要な手間を低減することが可能となる。
遮蔽部材5は、上述のようにアルミニウムやステンレスなどの電気伝導性の金属から形成されていて交流電源4に電気的に接続されている。遮蔽部材5が接続される交流電源4の電極はこの遮蔽部材5が取り付けられる成膜ロール2L、2Rと同じ電極であり、本実施形態では交流電源4から成膜ロール2L、2Rに向かう配線を途中で2つに分岐して、分岐した一方の配線を成膜ロール2L、2R、他方の配線を遮蔽部材5に繋げている。
このように遮蔽部材5と成膜ロール2L、2Rとを交流電源4の同じ電極に接続すれば、交流電源4の両極の極性が経時的に反転するような場合にも遮蔽部材5と成膜ロール2L、2Rとが常時同じ極性で且つ同じ位相で変化する。それゆえ、遮蔽部材5と成膜ロール2L、2RとをCVD処理中に亘って同電位に保持することが容易となる。遮蔽部材5と成膜ロール2L、2Rとを同電位にしておけば、プラズマ11が遮蔽部材5から成膜ロール2L、2Rにかけて連続的に発生し、遮蔽部材5に絶縁体を用いる場合のように成膜ロール2L、2Rの周囲に発生するプラズマ11が遮蔽部材5との境界付近で弱くなることがない。それゆえ、基材Wの表面に幅方向に亘って安定したCVD皮膜を形成することが可能となる。
成膜ロール2L、2Rと遮蔽部材5との間のクリアランス10は、図3に示すように基材Wの厚みより厚くなっており、基材Wの端部9を差し込み可能となっている。つまり、成膜ロール2L、2Rと遮蔽部材5との間には基材Wが支障なく入り込める程度のクリアランス10が形成されているため、上述のように成膜ロール2L、2Rに基材Wを直接巻き掛け、この巻き掛けられた基材Wの上から遮蔽部材5を基材Wを外周側から覆うように配備することが可能となっている。
一方、上述のクリアランス10は、プラズマ11が成膜ロール2L、2Rの端部9側まで進入することを防止可能な距離、本実施形態ではフィルム(基材W)の厚みよりやや広い10μm〜1mm、好ましくは200μm〜500μmに設定されている。つまり、成膜ロール2L、2Rと遮蔽部材5とが1mmより離れすぎると、発生したプラズマ11が両者の間に入り込み、基材Wが巻き掛けられていない成膜ロール2L、2Rの端部9にプラズマ11が接触して、CVD皮膜を形成したくない成膜ロール2L、2Rの端部9にもCVD皮膜が形成されてしまう、あるいは成膜ロール2L、2Rの端部9にアーク放電が発生してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態のプラズマCVD装置1では、成膜ロール2L、2Rと遮蔽部材5との間に10μm〜1mmのクリアランス10を設けて、基材Wに接触することなくこの基材Wを成膜ロール2L、2Rの外周面に沿って確実に搬送すると共に、基材Wが巻き掛けられていない成膜ロール2L、2Rの端部9をプラズマ11から保護してこの端部9にCVD皮膜が形成されることやアーク放電が発生することを防止しているのである。
以上述べたプラズマCVD装置1で、基材Wに成膜を行う手順について述べる。
まず、成膜ロール2L、2Rの両端にロール表面から10μm〜1mmのクリアランス10をあけて遮蔽部材5を取り付ける。このとき、遮蔽部材5とこの遮蔽部材5が取り付けられる成膜ロール2L、2Rとを交流電源4の同じ電極に電気的に接続する。
次に、ガス排気手段7を作動させ、CVD皮膜形成作業の前に真空チャンバ3を減圧した上で、ガス供給手段6により真空チャンバ3内に連続的に原料ガス(本実施形態の場合であればHMDSOガスなどの有機シリコン系成膜ガス、酸素ガス、アルゴンなどのガス)を供給し、真空チャンバ3内の圧力を所定の圧力に調整・維持する。
その上で、交流電源4から成膜ロール2L、2Rとこれらのロールに取り付けられた遮蔽部材5とに高周波の交流またはパルス状の電圧を印加すると、磁場発生手段8により磁場が形成された空間にグロー放電が発生し、プラズマ11が生じる。そして、ガス供給手段6により供給された原料ガスがこのプラズマ11によって分解され、基材W上にCVD皮膜が形成される。
このようなプラズマ11が発生している右側の成膜ロール2Rに対して、巻出ロール13から巻き出された基材Wを巻き付け、プラズマ11内を通過させて1回目のCVD皮膜を成膜する。このとき、基材Wは右側の成膜ロール2Rの回転に合わせてロール外周面に沿って移動するが、基材Wの両側の端部は遮蔽部材5と右側の成膜ロール2Rとの間に形成されたクリアランス10を通過するため、この遮蔽部材5の端部に基材Wが接触して基材Wが傷つくおそれはない。また、遮蔽部材5と成膜ロール2Rとは同じ電位に保持されているので遮蔽部材5と成膜ロール2Rとの間に電位差が発生することはなく、上述のように10μm〜1mmと狭いクリアランス10を介して遮蔽部材5の外側で発生するプラズマ11が遮蔽部材5と成膜ロール2Rとの間に入り込むこともないため、成膜ロール2Rの端部9にCVD皮膜が成膜される心配やプラズマ11から端部9に向かってアーク放電が生じるおそれもない。
このようにして、基材Wは、右側の成膜ロール2Rで1回目の成膜が行われた後、一旦補助ロール12を介して後方から前方に移送されて左側の成膜ロール2Lに巻き付き、この左側の成膜ロール2Lでも右側の成膜ロール2Rと同じように2回目の成膜が行われて、2回に亘って成膜が行われた基材Wを巻取ロール14が巻き取ることとなる。
上述のようにCVD処理を行えば、遮蔽部材5で基材Wが巻き掛けられていない、言い替えれば露出状態とされた端部9を被覆しつつ、基材Wに幅方向に安定したCVD皮膜を形成することが可能となる。また、このようなCVD皮膜を取り除くのに必要な手間を低減することが可能となる。
一方、上述のようなCVD処理を長時間行うと、遮蔽部材5の表面にもCVD皮膜が厚く堆積し、堆積したCVD皮膜を放置しておくとダストになって新たに生成するCVD皮膜の膜質を劣化させる可能性がある。そこで、遮蔽部材5を定期的に交換する必要があるが、上述のように遮蔽部材5が成膜ロール2L、2Rや基材Wから離れて配備されていれば、遮蔽部材5だけを支障なく移動させることができ、遮蔽部材5の位置調整も簡単に行える。
それゆえ、CVD皮膜が堆積した遮蔽部材5を新しい遮蔽部材5に交換する際、基材Wの寸法幅を変更してCVD皮膜を成膜しようとする際、または遮蔽部材5の着脱が必要なメンテナンスの際には、作業を極めて容易に且つ短時間で行うことができる。特に、巻き掛けられた基材Wの内側に遮蔽部材5が設けられた場合には、遮蔽部材5の交換等の前に基材Wを撓ませなければならないが、上述のように基材Wの外側に遮蔽部材5が設けられた構成においては遮蔽部材5の交換に先だって基材Wを撓ませる必要はなく、従来のCVD装置では困難であった通紙状態での遮蔽部材5の交換であっても極めて容易に行うことができる。
また、上述のプラズマCVD装置1では、基材Wや成膜ロール2L、2Rを移動したり取り外したりすることなく遮蔽部材5だけを移動・着脱できるので、遮蔽部材5に堆積したCVD皮膜が交換作業中に脱落する心配がなく、ダストが発生して新たに成膜するCVD皮膜の膜質を劣化させる心配もない。
[第2実施形態]
なお、第1実施形態として述べたプラズマCVD装置1に代えて、遮蔽部材5の構成を様々に変更したプラズマCVD装置1を考えることができる。それらを第2実施形態及び第3実施形態として、以下に述べる。なお、説明を省略した部分は、第1実施形態のプラズマCVD装置1と略同様な構成を有している。
図4(a)に示すように、第2実施形態のプラズマCVD装置1は、遮蔽部材5の表面に、絶縁体で形成された絶縁コート15が設けられている点で第1実施形態と異なっている。この絶縁コート15は、例えばカプトンテープなどの絶縁物や基材Wと同じ材質のフィルムなどで形成されており、遮蔽部材5の表面のうち、遮蔽部材5が取り付けられる成膜ロール2L、2Rに面する側とは反対側の表面に形成されている。また、絶縁コート15は、遮蔽部材5の表面のうち成膜ロール2の中央を向く面にもそれぞれ形成されている。
このような絶縁コート15を設けなくてはならないのは以下のような理由からである。すなわち、遮蔽部材5と成膜ロール2L、2Rとは同じ電位であるが、遮蔽部材5の表面が導電性であると、遮蔽部材5の表面の方が、基材Wが巻き掛けられた成膜ロール2L、2Rのロール中央部よりもインピーダンスが小さい。それゆえ、遮蔽部材5の表面でアーク放電が発生する場合がある。そこで、大きな電流を流さないように絶縁体で形成された絶縁コート15を遮蔽部材5の外側表面に設けるのが好ましい。このようにすれば、遮蔽部材5の表面でのアーク放電の発生をより確実に防止できるからである。
なお、絶縁コート15の厚みに関しては、絶縁コート15の単位面積あたりの静電容量から計算することができる。すなわち、この静電容量は、基材Wを介して流れる電流密度と絶縁コート15及び遮蔽部材5を介して流れる電流密度が等しくなるように、絶縁コート15の材質、厚みまたは面積を決定すればよい。このようにすれば絶縁コート15を介して流す場合と基材Wを通じて流す場合とでプラズマ11から同条件で電流を流すことができる。つまり、絶縁コート15を通じて成膜ロール2L、2Rの中央部と同程度の電流が流れるため、基材Wの表面近傍のプラズマ密度と遮蔽部材5の近傍のプラズマ密度とが同じ程度になり、例えば遮蔽部材5との境界付近でCVD皮膜の膜厚分布を均一に保つことが可能になる。
[第3実施形態]
なお、第2実施形態として述べたプラズマCVD装置1に代えて、図4(b)の第3実施形態に示されるように、遮蔽部材5に絶縁コート15を設けるのに代えて、遮蔽部材5と交流電源4との間にコンデンサ16を電気的に接続して設けることもできる。
コンデンサ16はアーク放電が生じたときのような大きな直流電流の通電を抑制するので、電流を抑制することによりアーク放電の発生をも防止できるからである。このコンデンサ16には、遮蔽部材5の表面でアークが発生しないように、例えば1nF〜1μF程度の容量のものが用いられる。基材Wを遮蔽部材5の表面にコートしたときに遮蔽部材5を通じて流入する電流からコンデンサ16の容量を求めれば良く、こうすることで基材Wを遮蔽部材5の表面にコートしたときと等価な電流を流すことができ、第2実施形態の場合と同様に基材W近傍と遮蔽部材5近傍のプラズマ密度を均一にすることができる。
[第4実施形態]
一方、上述のような構成の遮蔽部材5は、成膜ロール2L、2Rに対する設置が容易であるとはいえ、遮蔽部材5と成膜ロール2L、2Rとの距離が少しでも変化するとプラズマ11が弱くなったりアーク放電が起きやすくなる。それゆえ、遮蔽部材5は成膜ロール2L、2Rに対して絶えず一定距離となるように配置されるのが好ましい。例えば、図5に示す第4実施形態では、遮蔽部材5は成膜ロール2の両端に設けられた軸受部17を介して成膜ロール2L、2Rに着脱自在に取り付けられている。
このようにすれば遮蔽部材5が軸受部17を介してロール表面から一定の距離に固定状態で配備されることになり、成膜ロール2L、2Rに対して遮蔽部材5の位置を調整することも容易となり、遮蔽部材5の交換作業やメンテナンス作業をより簡単に且つ短時間で行うことが可能となる。
また、軸受部17のアウター部は図示しない支持部材で回転しない(動かない)ように固定されており、このアウター部に取り付けられた遮蔽部材5も位置固定されている。一方、軸受部17のインナー部はアウター部に対して回転自在となっており、このインナー部に取り付けられた成膜ロール2L、2Rもアウター部に対して回転自在となる。つまり、軸受部17は成膜ロール2L、2Rの回転に連動して遮蔽部材5が回転することを防止する非連動手段としても機能している。
なお、軸受部17を金属のような導電性の材料で形成すれば、成膜ロール2L、2Rと遮蔽部材5との間に電気の導通を確保することができる。このようにすれば、成膜ロール2L、2Rと遮蔽部材5とが同電位になるため、交流電源4と遮蔽部材5とを電気的に接続する配線を別に設けたり交流電源4に対する遮蔽部材5の電位を特に調整する必要がなくなり、プラズマCVD装置を簡単な構成にすることが可能となる。
なお、以上説明した第1〜第4の実施形態はいずれも成膜ロール2L、2Rが左右一対設けられたプラズマCVD装置であったが、本発明は成膜ロールの本数が2本に限定されるものではないし、成膜ロールの配置も左右に限定されるものではない。例えば、成膜ロールは上下に一対設けられていても良いし、成膜ロールの本数は1本であっても良いし、3本以上であっても良い。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
1 プラズマCVD装置
2L左側の成膜ロール
2R右側の成膜ロール
3 真空チャンバ
4 交流電源
5 遮蔽部材
6 ガス供給手段
7 ガス排気手段
8 磁場発生手段
9 端部
10 クリアランス
11 プラズマ
12 補助ロール
13 巻出ロール
14 巻取ロール
15 絶縁コート
16 コンデンサ
17 軸受部
W 基材

Claims (6)

  1. 真空チャンバと、当該真空チャンバ内に配備されると共に電源の両極が接続され且つ各々に成膜対象であるシート状の基材が巻き掛けられる真空チャンバから絶縁された成膜ロールと、前記基材が巻き掛けられていない成膜ロールの端部を、成膜ロール近傍に発生したプラズマから遮蔽する遮蔽部材と、を備えたプラズマCVD装置であって、
    前記遮蔽部材は、前記成膜ロールとは別の部材からなると共に、前記成膜ロールの端部表面の周方向に沿うような湾曲形状とされていて、
    前記遮蔽部材と当該遮蔽部材が取り付けられる成膜ロールとは、一定のクリアランスを有するように配備されると共に、互いが同電位に保持されていて、
    前記クリアランスは、前記シート状の基材が差し込み可能であると共に前記プラズマが成膜ロールの端部側まで進入することを防止可能な距離に設定されていることを特徴とするプラズマCVD装置。
  2. 前記成膜ロールは、交流電源の両極が接続された一対の成膜ロールであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマCVD装置。
  3. 前記遮蔽部材と当該遮蔽部材が取り付けられる隣接する側の前記成膜ロールとは、前記交流電源の同じ電極に接続されて同電位に保持されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマCVD装置。
  4. 前記成膜ロールに面する側とは反対側の遮蔽部材の表面に、絶縁体材料で形成された絶縁コートが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマCVD装置。
  5. 前記遮蔽部材と交流電源との間に、コンデンサが接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマCVD装置。
  6. 前記遮蔽部材は、非磁性の金属から形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマCVD装置。
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