JP6662048B2 - 両面成膜体製造方法及びその装置 - Google Patents
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Description
(1)金属箔を接着剤により樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法、
(2)金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングした後、乾燥させて製造する方法、
(3)樹脂フィルムに真空成膜法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等)若しくは湿式めっき法により金属膜を成膜して製造する方法。
特許文献3には、連続耐熱性樹脂フィルムの両面上に金属膜を連続的にスパッタリング法で成膜する技術として、巻出しロール室内の巻出しロールから巻き出された長尺樹脂フィルムをロール・トゥ・ロール方式により搬送し、巻取りロール室内の巻取りロールに巻き取ると共に、成膜室の長尺樹脂フィルムの搬送路上の前記成膜室には、真空成膜手段に対向しかつ内部に冷媒が循環する2つ以上のキャンロールを備えるロール・トゥ・ロール方式真空両面成膜装置が開示されている。特許文献3のように、連続して、両面成膜を行う後者の方法は、表面成膜後に巻き取ることなく、しかも大気に解放することもないので、成膜特性が安定することは言うまでもない。ただし、特許文献3のように、2個のキャンロールを直列に並べる方法は、真空成膜装置全体を大型化してしまい、内容量が増加するため、真空排気に必要とするポンプの増加等も避けることができない。
この様な方法を用いることで、キャンロール個数や成膜源(蒸着源、スパッタリングターゲット等)の個数を削減することができ、真空成膜装置全体を小型化することに大きく寄与することができる。
本発明の第3の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた両面成膜体製造方法において、前記戻し搬送工程は、前記第1の搬送工程にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送する経路として、少なくとも前記回転保持体の軸方向に沿った方向に前記ウェブ状成膜対象物を案内した後、前記第2の搬送工程にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物の搬送経路に対応する位置にて前記回転保持体を迂回する経路を経て前記回転保持体の回転方向上流側に戻すことを特徴とする両面成膜体製造方法である。
本発明の第6の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えた両面成膜体製造装置において、前記装置筐体の収容室は、前記成膜前のウェブ状成膜対象物及び前記両面成膜体を個別又は一緒に収容し、前記収容室と前記成膜室との間には両者間を遮断可能なロードロック機構を介在させたことを特徴とする両面成膜体製造装置である。
本発明の第7の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えた両面成膜体製造装置において、前記第1の搬送機構及び前記第2の搬送機構は、前記ウェブ状成膜対象物を、前記回転保持体に接触保持させ、かつ、引張した状態で搬送する張力調整手段を有することを特徴とする両面成膜体製造装置である。
本発明の第8の技術的特徴は、第7の技術的特徴を備えた両面成膜体製造装置において、前記張力調整手段は、前記第1の搬送機構及び前記第2の搬送機構に対し夫々個別に作用することを特徴とする両面成膜体製造装置。
本発明の第9の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えた両面成膜体製造装置において、前記回転保持体は、同軸の回転軸に対して個別に回転可能な2つの分割回転保持体を有し、各分割回転保持体が前記速度制御手段にて個別に制御されることを特徴とする両面成膜体製造装置である。
本発明の第10の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えた両面成膜体製造装置において、前記戻し搬送機構は、前記第1の搬送機構にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送する経路として、少なくとも前記回転保持体の軸方向に沿った方向に前記ウェブ状成膜対象物を案内する案内経路と、前記ウェブ状成膜対象物が前記案内経路を経て前記第2の搬送機構にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物の搬送経路に対応する位置に至った後に、前記回転保持体の回転方向上流側に向かって前記回転保持体を迂回して前記ウェブ状成膜対象物を戻す迂回経路と、を有することを特徴とする両面成膜体製造装置である。
本発明の第11の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えた両面成膜体製造装置において、前記戻し搬送機構は、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物が掛け渡される張架部材の少なくとも一部には表面からガスが放出可能な機構を具備させたことを特徴とする両面成膜体製造装置である。
第2の技術的特徴によれば、共用の回転保持体を用い、ウェブ状成膜対象物のしわの発生を有効に抑えてウェブ状成膜対象物の両面を成膜することができる。
第3の技術的特徴によれば、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物を共用する回転保持体に効率的に戻すことができる。
第4の技術的特徴によれば、ウェブ状成膜対象物が回転保持される回転保持体を共用し、回転保持体に接触保持されている間におけるウェブ状成膜対象物の搬送速度を個別に制御して当該ウェブ状成膜対象物の両面を成膜することが可能な両面成膜体製造方法を容易に具現化することができる。
第5の技術的特徴によれば、ロール・トゥ・ロール方式において、共用の回転保持体を用いた両面成膜体製造装置を提供することができる。
第6の技術的特徴によれば、成膜室を大気開放することなく、収容室を大気開放して成膜前のウェブ状成膜対象物や両面成膜体の交換作業を行うことができる。
第7の技術的特徴によれば、共用する回転保持体を用い、ウェブ状成膜対象物に対し成膜条件に適した張力調整を実施することができる。
第8の技術的特徴によれば、共用する回転保持体を用い、ウェブ状成膜対象物に対し片面毎に成膜条件に適した張力調整を実施することができる。
第9の技術的特徴によれば、共用する回転保持体を用い、ウェブ状成膜対象物に対し片面毎に成膜条件に適した速度制御を実現することができる。
第10の技術的特徴によれば、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物を共用する回転保持体に効率的に戻すことができる。
第11の技術的特徴によれば、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物の両面を成膜するに当たり、戻し搬送機構の張架部材とウェブ状成膜対象物との間の摩擦による損傷を有効に防止することができる。
図1(a)はウェブ状成膜対象物の両面を成膜して両面成膜体を製造する両面成膜体製造装置の実施の形態の概要を示し、同図(b)は(a)をB方向から見た矢視図である。
同図において、両面成膜体製造装置は、成膜前のウェブ状成膜対象物1を少なくとも収容する収容室(図示せず)、収容室に隣接して設けられて成膜用環境を保つ成膜室(図示せず)を有する装置筐体(図示せず)と、収容室内のウェブ状成膜対象物1を成膜室に移動させ、成膜室内で成膜完了した成膜体を予め決められた収容位置に移動させる移動機構2と、成膜室内に複数設置され、移動機構2にて移動させられるウェブ状成膜対象物1の両面を成膜する成膜装置3(本例では3a,3b)と、を備え、移動機構2は、成膜室に設置され、ウェブ状成膜対象物1を接触保持して駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される回転保持体4と、ウェブ状成膜対象物1の第1の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物1を回転保持体4の軸方向に対して2つに区分した表面のうち一方の区分領域に接触保持させて搬送する第1の搬送機構5と、ウェブ状成膜対象物1の第2の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物1を回転保持体4の軸方向に対して2つに区分した表面のうち他方の区分領域に接触保持させて搬送する第2の搬送機構6と、第1の搬送機構5にてウェブ状成膜対象物1を搬送して成膜装置3(本例では3a)による第1の片面の成膜処理が完了すると、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物1’を回転保持体4の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、回転保持体4の回転方向上流側に戻す戻し搬送機構7と、第2の搬送機構6にてウェブ状成膜対象物1’を搬送して成膜装置3(本例では3b)による第2の片面の成膜処理が完了すると、両面成膜済みのウェブ状成膜対象物1”を回転保持体4の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、予め決められた収容位置に両面成膜体10として収容する収容搬送機構8と、第1の搬送機構5及び第2の搬送機構6に対し、回転保持体4に接触保持されている間におけるウェブ状成膜対象物1の搬送速度を個別に制御する速度制御手段(図示せず)と、を備えたものである。
また、装置筐体は収容室と成膜室とを含むものであればよく、収容室はウェブ状成膜対象物1を少なくも収容するものであればよく、両面成膜体10は所定の収容位置(収容室又は成膜室)に収容するものであればよい。
更に、移動機構2は、収容室と成膜室との間で、ウェブ状成膜対象物1を移動し、成膜後の両面成膜体10を所定の収容位置に移動させるものであれば適宜選定して差し支えないが、収容室と成膜室とは室内環境が通常異なるので、両者の室内環境を維持するように留意する必要がある。
ここで、移動機構2としては、共用する回転保持体4、第1の搬送機構5、第2の搬送機構6、戻し搬送機構7及び収容搬送機構8を備えていればよい。
更にまた、成膜装置3としては、マグネトロンスパッタ装置、イオンビームスパッタ装置などウェブ状成膜対象物を成膜するものを広く含む。
つまり、駆動回転され且つ予め決められた温度に調整される回転保持体4にウェブ状成膜対象物1を回転保持させて搬送し、回転保持体4表面に対向して配置された成膜装置3(本例では3a,3b)にてウェブ状成膜対象物1の両面を成膜して両面成膜体10を製造するに際し、図2に示すように、ウェブ状成膜対象物1の第1の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物1を回転保持体4の軸方向に対して2つに区分した表面のうち一方の区分領域に接触保持させて搬送する第1の搬送工程Aと、第1の搬送工程A中に成膜装置3(本例では3a)にてウェブ状成膜対象物1の第1の片面を成膜する第1の成膜工程Bと、第1の成膜工程Bが完了した片面成膜済みのウェブ状成膜対象物1’を回転保持体4の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、回転保持体4の回転方向上流側に戻す戻し搬送工程Cと、戻し搬送工程C後に、ウェブ状成膜対象物1’の第2の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物1’を回転保持体4の表面のうち他方の区分領域に接触保持させて搬送する第2の搬送工程Dと、第2の搬送工程D中に成膜装置3(本例では3b)にてウェブ状成膜対象物1’の第2の片面を成膜する第2の成膜工程Eと、第2の成膜工程Eが完了した両面成膜済みのウェブ状成膜対象物1”を回転保持体4の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、予め決められた収容位置に両面成膜体10として収容する収容搬送工程Fと、を備え、第1の搬送工程A及び第2の搬送工程Dは、回転保持体4に接触保持されている間におけるウェブ状成膜対象物1の搬送速度を個別に制御して当該ウェブ状成膜対象物1を搬送するものである。
また、第1、第2の成膜工程B,Eについては、ウェブ状成膜対象物1の各片面には同じ成膜を行ってもよいし、別の成膜を行ってもよい。
更に、戻し搬送工程Cについては、第1の搬送工程Aと第2の搬送工程Dとでウェブ状成膜対象物1の搬送経路が回転保持体4の軸方向に対して変位することから、第1の搬送工程A後、第2の搬送工程D前の戻し搬送工程Cにおいて、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物1’の位置を変更しながら回転保持体4の回転方向上流側に戻すことが必要である。
また、収容搬送工程Fについては、両面成膜済みのウェブ状成膜対象物1”を搬送し、所定の収容位置に両面成膜体10として収容するようにすればよい。ここで、収容位置としては、成膜室とは別の収容室に設けてもよいし、成膜室内に設けるようにしてもよい。
また、戻し搬送工程Cの好ましい態様としては、第1の搬送工程Aにて搬送されるウェブ状成膜対象物1を回転保持体4の回転方向下流側から離れる方向に搬送する経路として、少なくとも回転保持体4の軸方向に沿った方向に片面成膜済みのウェブ状成膜対象物1’を案内した後、第2の搬送工程Dにて搬送されるウェブ状成膜対象物1’の搬送経路に対応する位置にて回転保持体4を迂回する経路を経て回転保持体4の回転方向上流側に戻す態様が挙げられる。本例では、戻し搬送工程Cは、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物1’の回転保持体4の軸方向に対する位置を変更した後に、回転保持体4の回転方向の上流側に戻す態様である。このように、本例では、回転保持体4の回転方向下流側からウェブ状成膜対象物1’を離した直後に回転保持体4の軸方向に対する位置変更を先に行うため、回転保持体4の回転方向上流側に戻ってからウェブ状成膜対象物1’の前述した位置変更を後で行う場合に比べて、戻し搬送工程Cに必要な設備が簡略化される点で好ましい。
先ず、両面成膜体製造装置の代表的態様としては、ウェブ状成膜対象物1が巻出し部材から巻き出され、移動機構2を介して移動し、巻取り部材に巻き取られる所謂ロール・トゥ・ロール方式を採用したものが挙げられる。
また、装置筐体の代表的態様としては、装置筐体の収容室は、成膜前のウェブ状成膜対象物1及び両面成膜体10を個別又は一緒に収容し、収容室と成膜室との間には両者間を遮断可能なロードロック機構を介在させた態様が挙げられる。
更に、第1、第2の搬送機構の好ましい態様としては、ウェブ状成膜対象物1を、回転保持体4に接触保持させ、かつ、引張した状態で搬送する張力調整手段を有する態様が挙げられる。ここでいう張力調整手段としては、回転保持体4の回転方向の上流側及び下流側に夫々駆動搬送部材9(本例では9a,9b)を設け、上流側の駆動搬送部材9aと回転保持体4及び、回転保持体4と下流側の駆動搬送部材9bとの間に速度差を与えることで、ウェブ状成膜対象物1が引張した状態で搬送されるようウェブ状成膜対象物1の張力を調整したり、あるいは、各搬送機構5,6にてウェブ状成膜対象物1を掛け渡す張架部材(案内部材)の一部に張力付与機構を付加する態様など適宜選定して差し支えない。
本例において、張力調整手段の好ましい態様としては、ウェブ状成膜対象物1に対し片面毎に成膜条件に適した張力調整を実施するという観点からすれば、第1の搬送機構5及び第2の搬送機構6に対し夫々個別に作用するものが挙げられる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
本実施の形態に係る成膜体製造装置における製造対象は、広くウェブ状成膜対象物の両面を成膜して両面成膜体とするものに適用することができるものであるが、その代表的態様として、本実施の形態では、両面金属膜付樹脂フィルムを例に挙げて説明する。
−両面金属膜付樹脂フィルム−
両面金属膜付樹脂フィルムとしては、耐熱性の樹脂フィルム500の両面にNi系合金等から成る膜とCu膜とが積層された構造体が例示される。このような構造を有する両面金属膜付樹脂フィルムは例えばフレキシブル配線基板に加工される。
本例では、両面金属膜付樹脂フィルムは、図3(a)(b)に示すように、耐熱性の樹脂フィルム500の一方の片面に接着剤を介さずに2層の金属層501,502を積層し、更に、図3(c)に示すように、片面成膜済みの樹脂フィルム500の他の片面に同様な2層の金属層501,502を積層することで、樹脂フィルム500の両面を成膜した両面成膜体505として製造されるものである。
但し、本例では、両面成膜体505は、図3(d)に示すように、第2の金属層502を更に厚くするために、第2の金属層502の表面には予め決められた金属膜(本例ではCu膜)503を積層した構造を最終製品としての両面金属膜付樹脂フィルム506とするようになっている。
ここで、第1の金属層501としてNi−Cr合金を例に挙げると、その層厚は5nm〜50nmが望ましい。第1の金属層501の層厚が5nm未満である場合、その後の処理工程を経ても金属層501の長期的な密着性に問題が生じてしまうほか、配線加工を行う時のエッチング液が染み込み配線部が浮いてしまうことなどにより配線ピール強度(配線と基板との密着性)が著しく低下するなどの懸念もある。一方、第1の金属層501の層厚が50nmを超えるときは、配線部の加工に際して第1の金属層501の除去が困難となり、さらには、ヘヤークラックや反りなどを生じて密着強度が低下する懸念があるほか、配線加工時のエッチングを行うことが難しくなるため、やはり好ましくない。
また、第1の金属層501の成分組成は、Crの割合が5〜40原子%であることが、耐熱性や耐食性の観点から必要であり、より望ましいCrの割合は12〜22原子%である。すなわち、Crの割合が5原子%未満であるときは耐熱性が低下してしまい、一方、Crの割合が40原子%を超えたときは配線部の加工に際して第1の金属層501の除去が困難となるので好ましくない。さらに、このNi−Cr合金に、耐熱性や耐食性を向上する目的でモリブデンやバナジウム等の他の遷移金属元素を目的や特性に合わせて適宜添加することができる。なお、耐食性、絶縁信頼性の向上や配線部の加工性を考慮して第1の金属層501の組成が決められる。
更に、金属膜503は、第2の金属層502の表面に、当該第2の金属層502の層厚を厚くする場合に必要に応じて成膜する。金属膜503は、配線加工されて導体となることから銅で形成することが望ましい。ここで、第1の金属層501、第2の金属層502及び金属膜503を含めた厚みは10nm〜12μmとすることが望ましい。なお、金属膜503は、後述する配線パターンの形成方法に応じて、その膜厚を適宜選択し、また、金属膜503を設けないことも適宜選択できる。
また、両面金属膜付樹脂フィルム506の製造手順としては、樹脂フィルム500の両面にシード層としての第1の金属層501と、各第1の金属層501の表面にベース層としての第2の金属層502とをスパッタリング法により成膜して両面成膜体505を製造し、続いて、各第2の金属層502の表面に湿式めっき法により金属膜503を成膜することにより最終製品としての両面金属膜付樹脂フィルム506を製造するようにすればよい。湿式めっき法は、公知の無電解めっき法や電解めっき法を用いることができ、複数の湿式めっき法を組み合わせてもよい。
尚、本実施の形態では、樹脂フィルムの両面に金属膜を成膜した両面金属膜付樹脂フィルムを例示したが、金属膜のほかに、目的に応じて酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等の成膜にも適用できることは勿論である。
−両面成膜体製造装置の全体構成−
本実施の形態では、両面成膜体製造装置は、ウェブ状の長尺樹脂フィルムの両面に金属膜を成膜して両面成膜体とする製造装置を示し、例えばロール・トゥ・ロール方式の両面成膜可能なスパッタリングウェブコータが用いられる。
すなわち、本例では、両面成膜体製造装置は、装置筐体としての真空チャンバ100を有し、この真空チャンバ100は、成膜前の長尺樹脂フィルム106が収容される成膜前収容室101と、両面成膜済の長尺樹脂フィルムからなる両面成膜体106”が収容される成膜後収容室105と、成膜前の長尺樹脂フィルム106の両面に金属膜を成膜する成膜室103とを備えている。
ここで、成膜室103はスパッタリング法成膜等の減圧条件に耐えられればよくその材質、形状は適宜選択できる。成膜前収容室101と成膜室103の間には、成膜前収容室101が大気解放時に、中空パッキン108,109により長尺樹脂フィルム106を挟み真空と大気を遮断するロードロック機構付きの差圧室102を備えている。また、成膜後収容室105と成膜室103の間には、成膜後収容室105が大気解放時に、中空パッキン121、122により長尺樹脂フィルム106を挟み真空と大気を遮断するロードロック機構付きの差圧室104を備えている。このような差圧室102,104を用いることにより、成膜室103を大気開放することなく、長尺樹脂フィルム106や両面成膜体106”を交換することが可能である。
そして、巻出しロール107と巻取りロール123との間の長尺樹脂フィルム106の搬送路上には、モータ駆動され且つ水冷温調された冷媒が内部に循環するキャンロール111が配置されている。
更に、キャンロール111に対して長尺樹脂フィルム106を密着させるために、キャンロール111の回転方向上流側及び下流側には、モータ駆動のフィードロール110,112が配置されている。
本例では、マグネトロンスパッタ装置124はニッケル−クロム合金ターゲットをスパッタ対象とし、マグネトロンスパッタ装置125〜127は胴ターゲットをスパッタ対象とし、キャンロール111に長尺樹脂フィルム106を巻き付けた状態でスパッタ処理を実施するため、成膜中のプラズマに起因した長尺樹脂フィルム106の熱的ダメージを低減することが可能である。
また、本実施の形態では、長尺樹脂フィルム106の搬送系は、図4及び図5に示すように、長尺樹脂フィルム106の第1の片面を成膜対象面とし、キャンロール111の軸方向中央Cnを境として2つに区分した表面のうち一方の区分領域R1に長尺樹脂フィルム106を接触保持させて搬送する第1の搬送機構201と、長尺樹脂フィルム106の第2の片面を成膜対象面とし、キャンロール111の軸方向中央Cnを境として2つに区分した表面のうち他方の区分領域R2に長尺樹脂フィルム106を接触保持させて搬送する第2の搬送機構202と、第1の搬送機構201にて長尺樹脂フィルム106を搬送して成膜装置124〜127による第1の片面の成膜処理が完了すると、片面成膜済みの長尺樹脂フィルム106’をキャンロール111の回転方向下流側に位置する下流側フィードロール112から離れる方向に搬送した後、キャンロール111の回転方向上流側に位置する上流側フィードロール110に戻して第2の搬送機構202に受け渡す戻し搬送機構203と、第2の搬送機構202にて長尺樹脂フィルム106を搬送して成膜装置124〜127による第2の片面の成膜処理が完了すると、両面成膜済みの長尺樹脂フィルム106(両面成膜体)”をキャンロール111の回転方向下流側に位置する下流側フィードロール112から離れる方向に搬送し、巻取りロール123に収容する収容搬送機構204と、を備えている。
ここで、第1の搬送機構201及び第2の搬送機構202は、いずれも上流側フィードロール110、キャンロール111及び下流側フィードロール112を構成要素とするものであるが、前述したように、キャンロール111に対する長尺樹脂フィルム106の保持領域及び長尺樹脂フィルム106の成膜対象面を異ならせるものである。
尚、本例では、第1の搬送機構201、第2の搬送機構202により搬送される長尺樹脂フィルム106,106’は同じ成膜装置124〜127を用いて成膜処理されるようになっている。
更に、収容搬送機構204は、第2の搬送機構202にて搬送された両面成膜済みの長尺樹脂フィルム106”を下流側フィードロール112から離れた方向に向けて掛け渡し巻取りロール123へと案内する複数のガイドロール119,120を有している。
ここで、ガイドロール113は、片面成膜済みの長尺樹脂フィルム106’がキャンロール111の一方の区分領域R1から他方の区分領域R2に向かう軸方向に沿った方向に搬送されるように、下流側フィードロール112の軸方向に対して約45°傾斜配置されており、ガイドロール114は、キャンロール111の軸方向に沿った方向に搬送された長尺樹脂フィルム106’が一旦キャンロール111側に接近する方向に屈曲搬送されるように、ガイドロール113に対して略直交するように傾斜配置されている。尚、ガイドロール115〜118はいずれもキャンロール111の軸方向に沿った方向に配置されている。
ここで、ガス放出機構210としては、例えばガイドロール113,114の軸方向端部にガスロータリージョイント211を設け、ガイドロール113,114の表面付近には軸方向に沿って延びるガス導入路212を所定角度間隔に設けると共に、各ガス導入路212とガスロータリージョイント211とを連結配管213にて連結し、更に、各ガス導入路212にはガイドロール113,114の軸方向に沿って所定のピッチ間隔でガス放出孔215を連通形成したものである。本例では、各ガス導入路212に形成されたガス放出孔215はガイドロール113,114の周方向に対して複数(本例では2つ)に分岐して形成されているため、ガイドロール113,114に設けられるガス導入路212の配列数を少なく抑えても、ガイドロール113,114の周面にはガスを均等に放出することが可能である。
尚、戻し搬送機構203の他のガイドロール115〜118についてガス放出機構210を具備させてもよいことは勿論である。
また、本実施の形態では、両面成膜体製造装置は、図6に示すような制御系を備えている。
同図において、両面成膜体製造装置の制御系は、マイクロコンピュータからなる制御装置50を有し、この制御装置50によって、巻出しロール107及び巻取りロール123の駆動を制御し、また、キャンロール111の速度及び温調を制御すると共に、上流側及び下流側フィードロール110,112の駆動、速度を制御し、更に、成膜装置としてのマグネトロンスパッタ装置124〜127によるスパッタ処理量を制御するようになっている。
そして、この制御装置50には操作パネル60が接続され、操作パネル60を操作することで、長尺樹脂フィルム106の搬送速度v、各マグネトロンスパッタ装置124〜127の各スパッタ処理量(第1成膜面に対するスパッタ量SP1、第2成膜面に対するスパッタ量SP2)を個別に調整することが可能である。
本例では、図6に示すように、上流側フィードロール110、キャンロール111及び下流側フィードロール112は、夫々の周速度を夫々vf,vc,vrとすると、vf<vc<vrを満たすように、制御装置50により長尺樹脂フィルム106の搬送方向下流側に位置する程速くなるように制御されている。このため、長尺樹脂フィルム106はキャンロール111の周囲では搬送方向に引張され、キャンロール111表面に接触(密着)させることが可能である。
次に、本実施の形態に係る両面成膜体製造装置の作動について説明する。
先ず、図4乃至図6に示すように、操作パネル60にて両面成膜体製造装置の作動を開始すると、巻出しロール107から巻き出された長尺樹脂フィルム106は、第1の搬送機構201により、成膜室103内の上流側フィードロール110を経由してキャンロール111上の一方の区分領域R1に掛け渡され、下流側フィードロール112を通過する。
このとき、制御装置50は、前述したように、上流側フィードロール110、キャンロール111及び下流側フィードロール112の各周速度vf,vc,vrを夫々制御するため、長尺樹脂フィルム106はキャンロール111の周囲では搬送方向に引張され、キャンロール111表面に接触(密着)させることが可能である。
この状態において、長尺樹脂フィルム106の第1の片面(第1成膜面)はマグネトロンスパッタ装置124〜127によるスパッタ処理にて成膜され、下流側フィードロール112を通過する。
この後、片面成膜済みの長尺樹脂フィルム106’は、下流側フィードロール112から略水平方向に沿って離れるように搬送された後、戻し搬送機構203のガイドロール113により略90°屈曲した状態でキャンロール111の一方の区分領域R1から他方の区分領域R2に対応する位置に至るまで軸方向に沿って搬送されると共に、略90°屈曲した状態でキャンロール111に一旦接近する方向に搬送され、しかる後、ガイドロール115〜118を順次通過しながらキャンロール111の下方を回り込み、再び上流側フィードロール110を経由してキャンロール111へと搬送される。
このような長尺樹脂フィルム106’の戻し搬送過程において、例えばガイドロール113,114にガス放出機構210を付加するようにすれば、長尺樹脂フィルム106’とガイドロール113,114との摩擦による擦り傷の生成は有効に抑えられる点で好ましい。
このように搬送された結果、片面成膜済みの長尺樹脂フィルム106’は、キャンロール111の他方の区分領域R2に対応した位置に配置され、かつ、第2の片面を成膜対象面としてキャンロール111に掛け渡される。
この状態において、長尺樹脂フィルム106の第2の片面(第2成膜面)はマグネトロンスパッタ装置124〜127によるスパッタ処理にて成膜され、下流側フィードロール112を通過する。
この結果、両面成膜済みの長尺樹脂フィルム106”は両面成膜体となり、収容搬送機構204のガイドロール119,120を経由して巻取りロール123に巻き取られる。
本例では、長尺樹脂フィルム106には、両面とも同じマグネトロンスパッタ装置124〜127によるスパッタ処理が実施されるため、長尺樹脂フィルム106を挟んで成膜構造が対称形構造として得られる。
このように、本実施の形態によれば、長尺樹脂フィルムを中心とした両面対称膜構造を得るために、1本のキャンロール111に対して同方向から第1成膜面と第2成膜面とが通過するロール・トゥ・ロール方式の両面成膜体製造装置にて成膜を行うことが可能になる。それゆえ、キャンロール111の軸方向に沿って装置幅を広げることにより、1本のキャンロール111を用いた片面成膜体製造装置とほとんど同じ部品点数で、後述する比較の形態1に相当する2本のキャンロールを用いた両面成膜体製造装置と実質的に同じ機能を有することができ、装置製造コストを低減でき、しかも、ターゲット交換等のメンテナンス性にも優れる。
また、本例では、両面金属膜付樹脂フィルムを製造する態様が例示されているが、例えばタッチパネルフィルムを成膜する場合には、例えばマグネトロンスパッタ装置124〜127のターゲットとして、イオブターゲット、シリコンターゲット、透明導電層(ITO等)ターゲットを採用するようにすればよい。
更に、本実施の形態では、長尺樹脂フィルム106,106’の張力を調整する張力調整機構として、上流側フィードロール110、キャンロール111及び下流側フィードロール112の周速度を調整する手法を採用したが、これに限られるものではなく、例えば上流側フィードロール110、下流側フィードロール112とは別に張力を付与するためにいずれかのガイドロールをエクスパンドロールとし、フィードロール110,112とエクスパンドロールとの両者を組み合わせることで、キャンロール111の表面に長尺樹脂フィルム106,106’を接触(密着)させるようにしてもよい。
また、フィードロール110,112、ガイドロール113〜120、巻出しロール107、巻取りロール123間に張力センサロールを配置し、制御装置50にて張力調整を微調整するようにしてもよい。更に、成膜前の長尺樹脂フィルム106の両面にヒータ加熱による乾燥処理やイオンビーム・プラズマ等を用いた前処理を実施するようにしてもよい。
<湿式めっき法>
本実施の形態では、前述した両面成膜体製造装置により製造された両面成膜体の両面を更に金属膜で成膜するという後処理が必要に応じて実施される。
この種の後処理としては、得られた両面金属膜付樹脂フィルム(両面成膜体)106”の金属膜上に湿式めっき法を用いて金属膜を形成する場合が挙げられる。この場合、電気めっき処理のみで行う場合と、一次めっきとして無電解めっき処理を行い、二次めっきとして電解めっき処理等の湿式めっき法を組み合わせて行う場合がある。湿式めっき処理は、常法による湿式めっき法の諸条件を採用すればよい。
このように、両面金属膜付樹脂フィルム106”の金属膜(第2の金属層502)の表面に、湿式めっき法により金属膜503を更に形成することにより、両面の膜応力の差を低減させた両面金属膜付樹脂フィルムを得ることが可能となる。尚、このようにして、前述した乾式めっき法(スパッタリング法)による金属膜(第1の金属層501及び第2の金属層502)と、湿式めっき法による金属膜503との合計厚さは、厚くとも20μm以下にすることが好ましい。
このようにして得られた両面金属膜付樹脂フィルムを用いて、この両面金属膜付樹脂フィルムの少なくとも片面に配線パターンを個別に形成する。また、所定の位置に層間接続のためのヴィアホールを形成して各種用途に用いることもできる。より具体的に説明すると、(1)配線パターンを両面金属膜付樹脂フィルムの少なくとも片面に個別に形成して利用する。(2)配線パターンが形成された両面金属膜付樹脂フィルムで樹脂フィルムを貫通するヴィアホールを形成して利用する。(3)場合によっては、該ヴィアホール内に導電性物質を充填してホール内を導電化して利用する。
そして、上記配線パターンの形成方法としては、公知のサブトラクティブ法やセミアディティブ法を用いることができる。
サブトラクティブ法は、両面金属膜付樹脂フィルムの不要な金属膜(第1の金属層501,第2の金属層502,金属膜503)を化学エッチングで除去して配線パターンを形成するものである。この場合、両面金属膜付樹脂フィルムを準備し、該金属膜上にスクリーン印刷あるいはドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成した後、露光現像して配線パターンの箇所にレジスト膜が残るようにパターニングする。次いで、塩化第2鉄溶液等のエッチング液で該金属膜を選択的にエッチング除去した後、上記レジスト膜を除去して所定の配線パターンを形成する。両面に配線パターン加工することが好ましい。全ての配線パターンを幾つかの配線領域に分割するかどうかは、配線パターンの配線密度の分布等による。例えば、配線パターンを、配線幅と配線間隔がそれぞれ50μm以下の高密度配線領域とその他の配線領域に分け、プリント基板との熱膨張差や取扱い上の都合等を考慮して分割する配線基板のサイズを10〜65mm程度に設定して適宜分割すればよい。
セミアディティブ法は、両面金属膜付樹脂フィルムの金属膜の表面に、配線パターンを設けたい箇所のみ湿式めっき法で配線膜を厚く成膜し、その後、ソフトエッチングで不要な金属膜とベース層、シード層となる金属層を除去する配線方法である。この場合、両面金属膜付樹脂フィルムを準備し、該金属膜上にスクリーン印刷あるいはドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成した後、露光現像して配線パターンの箇所が露出するようにレジスト膜が残るようにパターニングする。レジストの露光現像後に湿式めっき法で配線パターンを厚く成膜し、その後、配線パターンに不要な金属膜等をソフトエッチング(化学エッチング)で除去する。ヴィアホールの形成はサブトラクティブ法と同様である。なお、セミアディティブ法で配線パターンを形成する際は、金属膜を湿式めっき法で成膜していない両面金属膜付樹脂フィルムを用いてもよい。
図8は比較の形態1に係る両面成膜体製造装置(2つのキャンロール方式)を示す。
同図において、比較の形態1に係る両面成膜体製造装置は、装置筐体としての真空チャンバ400として、成膜前の長尺樹脂フィルム406を収容する成膜前収容室401、長尺樹脂フィルム406の第1の片面を成膜する第1の成膜室403と、片面成膜済みの長尺樹脂フィルム406’の第2の片面を成膜する第2の成膜室405と、両面成膜済みの長尺樹脂フィルム406”を収容する成膜後収容室408とを備えている。
本例では、成膜前収容室401と第1の成膜室403との間には、成膜前収容室401が大気開放時に中空パッキン433,434により長尺樹脂フィルム406を挟み真空と大気を遮断するロードロック機構付きの差圧室402が設けられ、第1の成膜室403と第2の成膜室405との間は連結室404にて連結され、第2の成膜室405と成膜後収容室408との間には、成膜後収容室408が大気開放時に中空パッキン435,436により両面成膜済みの長尺樹脂フィルム406”を挟み真空と大気を遮断するロードロック機構付きの差圧室407が設けられている。
ここで、成膜前収容室401には長尺樹脂フィルム406を巻出す巻出しロール431が設けられ、また、成膜後収容室408には両面成膜済みの長尺樹脂フィルム406”を巻取る巻取りロール432が設けられている。
更に、第2の成膜室405には、第2のキャンロール421及び第2のキャンロール421の回転方向上流側及び下流側には夫々フィードロール420,422が設けられ、また、第2のキャンロール421の周囲には複数(本例では4つ)の成膜装置425〜428が設けられている。
尚、成膜装置415〜418,425〜428は例えばマグネトロンスパッタ装置が用いられる。また、符号413,414は第1の成膜室403内に設けられるガイドロール、符号423,424は第2の成膜室405内に設けられるガイドロールである。
本比較の形態によれば、巻出しロール431から巻き出された長尺樹脂フィルム406は、第1の成膜室403内の第1のキャンロール411に掛け渡され、複数の成膜装置415〜418による成膜処理にて長尺樹脂フィルム406の第1成膜面が成膜された後、片面成膜済みの長尺樹脂フィルム406’は、連結室404を通じて第2の成膜室405に搬送され、第2のキャンロール421に掛け渡され、複数の成膜装置425〜428による成膜処理にて長尺樹脂フィルム406の第2成膜面が成膜され、両面成膜済みの長尺樹脂フィルム406”が巻取りロール432に巻き取られる。
このように、本比較の形態では、長尺樹脂フィルム406の両面を成膜する上で、2つのキャンロール411,421及び夫々に成膜装置415〜418,425〜428を設置することが必要であり、実施の形態1に係る両面成膜体製造装置に比べて装置構成が複雑であることが理解される。
図9は実施の形態2に係る両面成膜体製造装置の要部を示す。
同図において、両面成膜体製造装置の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、キャンロール111の回転方向上流側及び下流側に位置する上流側フィードロール110及び下流側フィードロール112の構成が実施の形態1と異なっている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、上流側フィードロール110は、同軸の回転軸に対して個別に回転可能な2つの分割ロール110a,110bを有し、また、下流側フィードロール112は、同軸の回転軸に対して個別に回転可能な2つの分割ロール112a,112bを有し、第1の搬送機構201として、上流側フィードロール110の一方の分割ロール110a、キャンロール111及び下流側フィードロール112の一方の分割ロール112aを用い、また、第2の搬送機構202として、上流側フィードロール110の他方の分割ロール110b、キャンロール111及び下流側フィードロール112の他方の分割ロール112bを用いるようにしたものである。
そして、制御装置50は、上流側フィードロール110の一方の分割ロール110a、キャンロール111、下流側フィードロール112の一方の分割ロール112aの周速度vf1,vc,vr1を個別に制御し、また、上流側フィードロール110の他方の分割ロール110b、キャンロール111、下流側フィードロール112の他方の分割ロール112bの周速度vf2,vc,vr2を個別に制御するようになっている。
しかしながら、本実施の形態では、第1の搬送機構201と第2の搬送機構202とに対し、フィードロール110,112の分割ロール110a,112a及び110b,112bの周速度を適切に選定することで、長尺樹脂フィルム106,106’の張力調整を個別に実施することができる。このため、第1の搬送機構201、第2の搬送機構202に夫々適した長尺樹脂フィルム106,106’の張力を実施の形態1に比べてより緻密に調整することが可能である。
図10は実施の形態3に係る両面成膜体製造装置の要部を示す。
同図において、両面成膜体製造装置の基本的構成は、実施の形態2と略同様であるが、キャンロール111の構成が実施の形態2と異なる。尚、実施の形態2と同様な構成要素については実施の形態2と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、上流側フィードロール110及び下流側フィードロール112は、実施の形態2と略同様に、同軸の回転軸に対して個別に回転可能な2つの分割ロール110a,110b及び112a,112bを有しており、更に、キャンロール111は、実施の形態2と異なり、図11に示すように、同軸の回転支軸140を有し、この回転支軸140に対して夫々軸受141,142を介して個別に回転可能な複数(本例では2つ)の分割キャンロール143,144を設け、各分割キャンロール143,144には夫々別個の駆動モータ145,146からの駆動力をプーリ、ベルト等からなる駆動伝達機構147,148を通じて伝達するようになっている。
そして、第1の搬送機構201としては、上流側フィードロール110の一方の分割ロール110a、キャンロール111の一方の分割キャンロール143及び下流側フィードロール112の一方の分割ロール112aが用いられ、また、第2の搬送機構202としては、上流側フィードロール110の他方の分割ロール110b、キャンロール111の他方の分割キャンロール144及び下流側フィードロール112の他方の分割ロール112bが用いられる。
本実施の形態によれば、前述したように、第1の搬送機構201と第2の搬送機構202とでは、長尺樹脂フィルム106,106’の強度や、フィードロール110,112、キャンロール111との間の摩擦係数に違いが出ることが多い。
しかしながら、本実施の形態では、第1の搬送機構201と第2の搬送機構202とに対し、フィードロール110,112の分割ロール110a,112a及び110b,112bに加えて、分割キャンロール143,144の両方の周速度を適切に選定することが可能であるため、長尺樹脂フィルム106,106’の張力調整をより緻密に実施することができる。このため、第1の搬送機構201、第2の搬送機構202に夫々適した長尺樹脂フィルム106,106’の張力を実施の形態2に比べてより緻密に調整することが可能である。
尚、本実施の形態では、フィードロール110,112及びキャンロール111のいずれをも分割構造として構成するようにしたが、これに限られるものではなく、例えばフィードロール110,112は分割構造とせずにキャンロール111のみを分割構造にしたり、あるいは、フィードロール110,112のいずれか一方のみを分割構造として個別に周速度を制御するようにしてもよい。
図12及び図13は実施の形態4に係る両面成膜体製造装置の要部を示す。
同図において、両面成膜体製造装置は、実施の形態3と略同様であるが、実施の形態3と異なり、第1の搬送機構201と第2の搬送機構202とは長尺樹脂フィルム106,106’の搬送方向が異なる方向であり、これに対応して戻し搬送機構203、収容搬送機構204が構成されている。尚、実施の形態3と同様な構成要素については実施の形態3と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、装置筐体としての真空チャンバ100は、実施の形態3と略同様に、成膜前収容室101と成膜室103との間に差圧室102を有しているが、実施の形態3と異なり、成膜後収容室105は成膜室103のうち成膜前収容室101と同じ側に差圧室104を介して設けられている。
また、フィードロール110,112及びキャンロール111は、実施の形態3と略同様に、いずれも2つの分割構造になっているが、実施の形態3と異なり、第2の搬送機構202としてのフィードロール110の他方の分割ロール110b、他方の分割キャンロール144及びフィードロール112の他方の分割ロール112bは、第1の搬送機構201の各要素とは回転方向が逆方向に選定されており、フィードロール112の他方の分割ロール112bを上流側フィードロールとして機能させ、かつ、フィードロール110の他方の分割ロール110bを下流側フィードロールとして機能させている。
ここで、制御装置50は、フィードロール110の一方の分割ロール110a、一方の分割キャンロール143、フィードロール112の一方の分割ロール112aの周速度vf1,vc1,vr1を個別に制御し、また、フィードロール112の他方の分割ロール112b、他方の分割キャンロール144、フィードロール110の他方の分割ロール110bの周速度vf2,vc2,vr2を個別に制御するようになっている。
更に、収容搬送機構204は、第2の搬送機構202のフィードロール110の他方の分割ロール110b(下流側フィードロールとして機能)から離れる方向に両面成膜済みの長尺樹脂フィルム106”をガイドロール319,320を経由して巻取りロール123に巻き取るようにしたものである。
更にまた、本例では、分割キャンロール143,144の回転方向が逆方向であるため、一方の分割キャンロール143に対向した箇所に複数(本例では2つ)の成膜装置324,325が設置され、また、他方の分割キャンロール144の対向した箇所には複数(本例では2つ)の成膜装置326,327が設置されている。そして、本例では、各成膜装置324〜327はいずれもマグネトロンスパッタ装置が用いられ、成膜装置324,326がシード層である第1の金属層501(図3参照)を成膜するものであり、成膜装置325,327がベース層である第2の金属層502(図3参照)を成膜するものである。
しかる後、第2の搬送機構202は、フィードロール112の他方の分割ロール112b、他方の分割キャンロール144及びフィードロール110の他方の分割ロール110bに片面成膜済みの長尺樹脂フィルム106’を掛け渡されて搬送するものであり、収容搬送機構204は、フィードロール110の他方の分割ロール110bを通過した両面成膜済みの長尺樹脂フィルム106”をガイドロール319,320を経由して巻取りロール123に巻き取るようにしたものである。
ここで、前述したように、第1の搬送機構201と第2の搬送機構202とでは、長尺樹脂フィルム106,106’の強度や、フィードロール110,112、キャンロール111との間の摩擦係数に違いが出ることが多い。
しかしながら、本実施の形態では、第1の搬送機構201と第2の搬送機構202とに対し、長尺樹脂フィルム106,106’のキャンロール111に対する搬送方向が逆方向にはなるが、フィードロール110、112の分割ロール110a,112a及び110b,112b並びに分割キャンロール143,144の周速度を適切に選定することで、長尺樹脂フィルム106,106’の張力調整を個別に実施することができる。このため、第1の搬送機構201、第2の搬送機構202に夫々適した長尺樹脂フィルム106,106’の張力を実施の形態3と略同様に緻密に調整することが可能である。
また、本例では、戻し搬送機構203はキャンロール111を迂回する経路が不要になるため、実施の形態1〜3に比べて、ガイドロールの設置数を低減することも可能である。
<実施例1>
図5に示す両面金属膜付樹脂フィルムの製造装置(ロール・トゥ・ロール方式の真空両面成膜装置)を用い、長尺樹脂フィルム106には、幅500mm、長さ200m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の長尺耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックスS(登録商標)」を使用した。
マグネトロンスパッタ装置124にはシード層としての第1の金属層501のターゲットであるNi−Crターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用い、マグネトロンスパッタ装置125〜127にはベース層である第2の金属層502のターゲットであるCuターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を使用した。
始めに、ドライポンプを用いて5Paまで排気し、次にターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて1×10−3Paまで排気し、各マグネトロンスパッタ装置124〜127のカソード近傍にArガスをそれぞれ200sccm導入した。フィルム搬送速度を2m/minにして、マグネトロンスパッタ装置124のカソードには5kW、マグネトロンスパッタ装置125〜127のカソードには8kWのDCスパッタ電力を印加した。フィルム搬送速度2m/minに対するキャンロール111のフィルム搬送速度を100%とすると、上流側フィードロール110は99.95%、下流側フィードロール112は100.05%に設定した。このように設定したのは、この成膜条件では、長尺樹脂フィルム106をキャンロ−ル111に密着させるためである。
そして、得られた両面金属膜付樹脂フィルムの一部を切り出し、その第1成膜面(上記フィルムの一方の面に形成された第1の金属層501と第2の金属層502)および第2成膜面(上記フィルムの他方の面に形成された第1の金属層501と第2の金属層502)を部分的にエッチングし、かつ、それぞれの面に形成されたシード層としての第1の金属層501であるNi−Cr層膜厚とベース層としての第2の金属層502であるCu層膜厚を蛍光X線膜厚計により測定した結果、上記第1成膜面と第2成膜面ともNi−Cr層膜厚は約15nm、Cu層膜厚は約150nm、であった。
実施の形態2に示すロール・トゥ・ロール方式真空両面成膜装置(図9)を用いた以外は、実施例1と同様の条件にて成膜を行った。
<実施例3>
実施の形態3に示すロール・トゥ・ロール方式真空両面成膜装置(図10、図11)を用いた以外は、実施例1と同様に成膜を行った。
図8に示す比較の形態1に係るロール・トゥ・ロール方式真空両面成膜装置を用い、長尺樹脂フィルム406には、幅500mm、長さ200m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の長尺耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックスS(登録商標)」を使用した。
マグネトロンスパッタ装置415,425のカソードにはシード層としての第1の金属層501であるNi−Crターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用い、マグネトロンスパッタ装置416〜418,426〜428のカソードにはベース層としての第2の金属層502であるCuターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を使用した。
始めに、ドライポンプを用いて5Paまで排気し、次にターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて1×10−3Paまで排気し、各マグネトロンスパッタ装置415〜418,425〜428のカソード近傍にArガスをそれぞれ200sccm導入した。フィルム搬送速度を2m/minにして、マグネトロンスパッタ装置415,425のカソードには5kW、マグネトロンスパッタ装置416〜418,426〜428のカソードには6kWのDCスパッタ電力を印加した。長尺耐熱性ポリイミドフィルムの搬送速度2m/minに対するキャンロール411の回転速度を100%とすると、上流側フィードロール410は99.95%、下流側フィードロール412は100.05%、上流側フィードロール420は100.05%、キャンロール421の回転速度を100.10%、下流側フィードロール422は100.15%に増加設定した。このように設定したのは、この成膜条件では、両面金属膜付樹脂フィルムが伸びる傾向にあったためである。もちろん、収縮する傾向にある両面金属膜付樹脂フィルムならば、減速設定にすればよい。
そして、得られた両面金属ベース層付樹脂フィルムの一部を切り出し、その第1成膜面(上記フィルムの一方の面に形成された第1の金属層501と第2の金属層502)および第2成膜面(上記フィルムの他方の面に形成された第1の金属層501と第2の金属層502)を部分的にエッチングし、かつ、それぞれの面に形成されたシード層としての第1の金属層501であるNi−Cr層膜厚とベース層としての第2の金属層502であるCu層膜厚を蛍光X線膜厚計により測定した結果、上記第1成膜面と第2成膜面ともNi−Cr層膜厚は約15nm、Cu層膜厚は約150nm、であった。
実施例1、実施例2、実施例3に係るロール・トゥ・ロール方式真空両面成膜装置で作成した両面金属膜付樹脂フィルムと比較例1に係るロール・トゥ・ロール方式真空両面成膜装置で作製した両面金属膜付樹脂フィルムとを比較した。
先ず、両面金属膜付樹脂フィルムを100mmの正方形にそれぞれ10枚切り抜き、30倍の電子顕微鏡で10μm以上のピンホールおよび欠陥の数を観察した。その結果、実施例1、実施例2、実施例3と比較例1で成膜した両面金属膜付樹脂フィルムのピンホール数は平均4個であり差違はなかった。
また、1mm幅のピール強度も実施例1、実施例2、実施例3と比較例1とも800N/mであり、差違はなかった。
以上のことから、実施例1〜3に係るロール・トゥ・ロール方式真空両面成膜装置は、比較例1に係る装置と同等性能の高品質の両面金属膜付樹脂フィルムを簡単な構成で効率よく製造できるため、装置設置面積とメンテナンス時間を削減できることが理解される。
また、両面金属膜付樹脂フィルムを液晶テレビ、パソコン、携帯電話等のフレキシブル配線に適用でき、タッチパネルフィルムや反射防止膜フィルムも液晶テレビ、パソコン、携帯電話等の表示画面に適用でき、産業上の利用可能性を有している。
2 移動機構
3(3a,3b) 成膜装置
4 回転保持体
5 第1の搬送機構
6 第2の搬送機構
7 戻し搬送機構
8 収容搬送機構
9(9a,9b) 駆動搬送部材
10 両面成膜体
50 制御装置
60 操作パネル
100 真空チャンバ
101 成膜前収容室
102 差圧室
103 成膜室
104 差圧室
105 成膜後収容室
106 長尺樹脂フィルム
106’ 片面成膜済みの長尺樹脂フィルム
106” 両面成膜済みの長尺樹脂フィルム
107 巻出しロール
108,109 中空パッキン
110 (上流側)フィードロール
110a,110b 分割ロール
111 キャンロール
112 (下流側)フィードロール
112a,112b 分割ロール
113〜120 ガイドロール
121,122 中空パッキン
123 巻取りロール
124〜127 マグネトロンスパッタ装置(成膜装置)
140 回転支軸
141,142 軸受
143,144 分割キャンロール
145,146 駆動モータ
147,148 駆動伝達機構
201 第1の搬送機構
202 第2の搬送機構
203 戻し搬送機構
204 収容搬送機構
210 ガス放出機構
211 ガスロータリージョイント
212 ガス導入路
213 連結配管
215 ガス放出孔
313,314,315,319,320 ガイドロール
324〜327 マグネトロンスパッタ装置(成膜装置)
400 真空チャンバ
401 成膜前収容室
402 差圧室
403 第1の成膜室
404 連結室
405 第2の成膜室
406 長尺樹脂フィルム
406’ 片面成膜済みの長尺樹脂フィルム
406” 両面成膜済みの長尺樹脂フィルム
407 差圧室
408 成膜後収容室
410 上流側フィードロール
411 第1のキャンロール
412 下流側フィードロール
413,414 ガイドロール
415〜418 成膜装置(マグネトロンスパッタ装置)
420 上流側フィードロール
421 第2のキャンロール
422 下流側フィードロール
423,424 ガイドロール
425〜428 成膜装置(マグネトロンスパッタ装置)
431 巻出しロール
432 巻取りロール
433〜436 中空パッキン
500 樹脂フィルム
501 第1の金属層
502 第2の金属層
503 金属膜
505 両面成膜体
506 両面金属膜付樹脂フィルム
Claims (11)
- 駆動回転され且つ予め決められた温度に調整される回転保持体にウェブ状成膜対象物を回転保持させて搬送し、前記回転保持体表面に対向して配置された成膜装置にて前記ウェブ状成膜対象物の両面を成膜して両面成膜体を製造するに際し、
前記ウェブ状成膜対象物の第1の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の軸方向に対して2つに区分した表面のうち一方の区分領域に接触保持させて搬送する第1の搬送工程と、
前記第1の搬送工程中に前記成膜装置にて前記ウェブ状成膜対象物の第1の片面を成膜する第1の成膜工程と、
前記第1の成膜工程が完了した片面成膜済みのウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、前記回転保持体の回転方向上流側に戻す戻し搬送工程と、
前記戻し搬送工程後に、前記ウェブ状成膜対象物の第2の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の表面のうち他方の区分領域に接触保持させて搬送する第2の搬送工程と、
前記第2の搬送工程中に前記成膜装置にて前記ウェブ状成膜対象物の第2の片面を成膜する第2の成膜工程と、
前記第2の成膜工程が完了した両面成膜済みのウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、予め決められた収容位置に両面成膜体として収容する収容搬送工程と、
を備え、
前記第1の搬送工程及び前記第2の搬送工程は、前記回転保持体に接触保持されている間における前記ウェブ状成膜対象物の搬送速度を個別に制御して当該ウェブ状成膜対象物を搬送することを特徴とする両面成膜体製造方法。 - 請求項1に記載の両面成膜体製造方法において、
前記第1の搬送工程及び前記第2の搬送工程は、前記回転保持体の回転方向の上流側及び下流側に夫々駆動搬送部材を有し、上流側の前記駆動搬送部材と前記回転保持体との間、前記回転保持体と下流側の前記駆動搬送部材との間に速度差を付与し、前記ウェブ状成膜対象物を引張可能な状態で搬送することを特徴とする両面成膜体製造方法。 - 請求項1に記載の両面成膜体製造方法において、
前記戻し搬送工程は、前記第1の搬送工程にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送する経路として、少なくとも前記回転保持体の軸方向に沿った方向に前記ウェブ状成膜対象物を案内した後、前記第2の搬送工程にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物の搬送経路に対応する位置にて前記回転保持体を迂回する経路を経て前記回転保持体の回転方向上流側に戻すことを特徴とする両面成膜体製造方法。 - 成膜前のウェブ状成膜対象物を少なくとも収容する収容室、前記収容室に隣接して設けられて成膜用環境を保つ成膜室が設けられる装置筐体と、
前記収容室内のウェブ状成膜対象物を前記成膜室に移動させ、前記成膜室内で成膜完了した成膜体を予め決められた収容位置に移動させる移動機構と、
前記成膜室内に複数設置され、前記移動機構にて移動させられるウェブ状成膜対象物の両面を成膜する成膜装置と、を備え、
前記移動機構は、前記成膜室に設置され、前記ウェブ状成膜対象物を接触保持して駆動回転し且つ予め決められた温度に調整される回転保持体と、
前記ウェブ状成膜対象物の第1の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の軸方向に対して2つに区分した表面のうち一方の区分領域に接触保持させて搬送する第1の搬送機構と、
前記ウェブ状成膜対象物の第2の片面を成膜対象面とし、当該ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の軸方向に対して2つに区分した表面のうち他方の区分領域に接触保持させて搬送する第2の搬送機構と、
前記第1の搬送機構にて前記ウェブ状成膜対象物を搬送して前記成膜装置による第1の片面の成膜処理が完了すると、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、前記回転保持体の回転方向上流側に戻す戻し搬送機構と、
前記第2の搬送機構にて前記ウェブ状成膜対象物を搬送して前記成膜装置による第2の片面の成膜処理が完了すると、両面成膜済みのウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送し、予め決められた収容位置に両面成膜体として収容する収容搬送機構と、
前記第1の搬送機構及び前記第2の搬送機構に対し、前記回転保持体に接触保持されている間における前記ウェブ状成膜対象物の搬送速度を個別に制御する速度制御手段と、
を備えたことを特徴とする両面成膜体製造装置。 - 請求項4に記載の両面成膜体製造装置において、
前記ウェブ状成膜対象物は、巻出し部材から巻き出され、前記移動機構を介して移動し、巻取り部材に巻き取られることを特徴とする両面成膜体製造装置。 - 請求項4に記載の両面成膜体製造装置において、
前記装置筐体の収容室は、前記成膜前のウェブ状成膜対象物及び前記両面成膜体を個別又は一緒に収容し、
前記収容室と前記成膜室との間には両者間を遮断可能なロードロック機構を介在させたことを特徴とする両面成膜体製造装置。 - 請求項4に記載の両面成膜体製造装置において、
前記第1の搬送機構及び前記第2の搬送機構は、前記ウェブ状成膜対象物を、前記回転保持体に接触保持させ、かつ、引張した状態で搬送する張力調整手段を有することを特徴とする両面成膜体製造装置。 - 請求項7に記載の両面成膜体製造装置において、
前記張力調整手段は、前記第1の搬送機構及び前記第2の搬送機構に対し夫々個別に作用することを特徴とする両面成膜体製造装置。 - 請求項4に記載の両面成膜体製造装置において、
前記回転保持体は、同軸の回転軸に対して個別に回転可能な2つの分割回転保持体を有し、
各分割回転保持体が前記速度制御手段にて個別に制御されることを特徴とする両面成膜体製造装置。 - 請求項4に記載の両面成膜体製造装置において、
前記戻し搬送機構は、前記第1の搬送機構にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物を前記回転保持体の回転方向下流側から離れる方向に搬送する経路として、少なくとも前記回転保持体の軸方向に沿った方向に前記ウェブ状成膜対象物を案内する案内経路と、前記ウェブ状成膜対象物が前記案内経路を経て前記第2の搬送機構にて搬送される前記ウェブ状成膜対象物の搬送経路に対応する位置に至った後に、前記回転保持体の回転方向上流側に向かって前記回転保持体を迂回して前記ウェブ状成膜対象物を戻す迂回経路と、を有することを特徴とする両面成膜体製造装置。 - 請求項4に記載の両面成膜体製造装置において、
前記戻し搬送機構は、片面成膜済みのウェブ状成膜対象物が掛け渡される張架部材の少なくとも一部には表面からガスが放出可能な機構を具備させたことを特徴とする両面成膜体製造装置。
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