以下に、本開示に係る両面同形状転写装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[ロールツーロール式両面同形状転写装置の概要]
図1を用いて、ロールツーロール式両面同形状転写装置10の概略構成を説明する。図1は、ロールツーロール式両面同形状転写装置の概略構成を示す模式図である。なお、以下の説明において、ロールツーロール式両面同形状転写装置10を、単に両面同形状転写装置10と呼ぶ。
まず、モータ11mによって回転駆動される繰出軸11から繰り出されたベースフィルム20(以下、単にフィルム20と呼ぶ)の表面20aに、表面用塗工ダイ12によりUV樹脂が塗工される。
UV樹脂が塗工されたフィルム20の表面20aは、表面用押付ロール13によってパターンロール30の下側半分の領域に押し付けられる。パターンロール30は、モータ30mによって回転駆動される。
フィルム20の表面がパターンロール30の下側半分の領域に押し付けられた状態で、フィルム20の表面20aには表面用UVランプ14にて紫外線が照射される。これによって、UV樹脂を硬化させることにより、パターンロール30に形成された所定のパターンが、フィルム20の表面20aに転写される。なお、パターンロール30は、本開示における表面転写手段の一例である。
なお、パターンロール30には、フィルム20の表面20aと裏面20bとの位置合わせを行う際に使用するアライメント調整用のアライメントマーク33a,33b(図4参照)が形成されており、当該アライメントマーク33a,33bもフィルム20の表面に転写される。アライメントマーク33a,33bについて、詳しくは後述する。
次に、表面用剥離ロール15が、パターンロール30からフィルム20及びフィルム20の表面に転写されたUV樹脂を剥離する。
その後、フィルム20は、搬送ロール17a,17bに架け渡された後、ターンバー16によって、表面20aと裏面20bとを反転させる。なお、ターンバー16の作用について、詳しくは後述する。
表裏が反転されたフィルム20は、搬送ロール17cに架け渡された後、エアシリンダ付ロール21(可動ロール)と、テンションピックアップロール24とを通過する。エアシリンダ付ロール21は、エアシリンダ22内に連通するピストン23によって支持されるロールである。エアシリンダ付ロール21の回転軸の位置は、フィルム20の張力に応じて、Z軸に沿って移動する。すなわち、フィルム20の張力が増加すると、ピストン23がエアシリンダ22内に下降するため、エアシリンダ付ロール21の回転軸の位置が-Z方向、すなわち下方に移動する。一方、フィルム20の張力が減少すると、ピストン23がエアシリンダ22内から上昇するため、エアシリンダ付ロール21の回転軸の位置が+Z方向、すなわち上方に移動する。このようにして、フィルム20の張力が一定に保たれとともに、フィルム20の搬送経路K1(繰出軸11から巻取軸34に至る一連の経路)が形成される。
テンションピックアップロール24は、フィルム20の張力を測定する張力センサを備える。張力センサは、例えばロードセルである。両面同形状転写装置10の操作者は、テンションピックアップロール24が測定したフィルム20の張力を監視する。フィルム20の張力が、エアシリンダ付ロール21の調整可能範囲を超える異常が発生した際には、操作者はフィルム20の搬送を停止させる。
フィルム20は、搬送ロール17dに架け渡された後、フィルム20の裏面20b側に、裏面用塗工ダイ25によりUV樹脂が塗工される。そして、パターンロール30の上側半分の入口側にある裏面用押付ロール26によって、UV樹脂が塗工されたフィルム20の裏面20bが、パターンロール30の上側半分の領域に押し付けられる。なお、前記した搬送ロール17a,17b,17c,17dは、両面同形状転写装置10の装置サイズや搬送経路K1の形状等に応じた位置に設置される。したがって、搬送ロールの設置位置及び設置数は、図1の構成に限定されない。
フィルム20の裏面20bがパターンロール30の上側半分の領域に押し付けられた状態で、フィルム20の裏面20bには裏面用UVランプ27にて紫外線が照射される。これによって、UV樹脂を硬化させることにより、パターンロール30に形成された所定のパターンが、フィルム20の裏面20bに転写される。なお、パターンロール30は、本開示における裏面転写手段の一例である。
次に、裏面用剥離ロール29が、パターンロール30からフィルム20及びフィルム20の裏面に転写されたUV樹脂を剥離する。
なお、裏面用UVランプ27の上流側には、パターンロール30の表面を観測するカメラ28が備えられる。当該カメラ28は、両面同形状転写装置10がフィルム20の表面20aと裏面20bの位置合わせを行う際に使用される。詳しくは後述する。
その後、フィルム20は、アウトフィールドニップロール32によってニップされていない状態で、モータ31mによって回転駆動されるアウトフィールドロール31を通過して、モータ34mによって回転駆動される巻取軸34によって巻き取られる。なお、アウトフィールドニップロール32と巻取軸34と、前記した繰出軸11とパターンロール30とは、本開示における搬送手段の一例である。
このように、両面同形状転写装置10は、繰出軸11とパターンロール30とアウトフィールドロール31と巻取軸34とがフィルム20を搬送しながら、フィルム20の表面20aをパターンロール30に当接させることによって、フィルム20の表面20aにパターン30aを転写する。また、フィルム20の表面20aと裏面20bを、ターンバー16によって反転させた後で、フィルム20の裏面20bをパターンロール30に当接させることによって、フィルム20の裏面20bにパターン30aを転写する。
[ロールツーロール式両面同形状転写装置のハードウエア構成]
次に、図2を用いて、両面同形状転写装置10のハードウエア構成を説明する。図2は、ロールツーロール式両面同形状転写装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
両面同形状転写装置10は、制御部50と、記憶部52と、周辺機器コントローラ56と、通信コントローラ58とを備える。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)50aと、ROM(Read Only Memory)50bと、RAM(Random Access Memory)50cと、を備える。CPU50aは、バスライン54を介して、ROM50bと、RAM50cと接続する。CPU50aは、記憶部52に記憶された制御プログラムP1や、ROM50bに記憶された、両面同形状転写装置10の制御に必要な制御パラメータ等のデータファイルをRAM50cに展開する。CPU50aは、RAM50cに展開された制御プログラムP1に従って動作することで、両面同形状転写装置10の動作を制御する。すなわち、制御部50は、一般的なコンピュータの構成を有する。
制御部50は、更に、バスライン54を介して、記憶部52と、周辺機器コントローラ56と、通信コントローラ58と接続する。
記憶部52は、電源を切っても記憶情報が保持される、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、又はHDD(Hard Disk Drive)等である。記憶部52は、制御プログラムP1を含むプログラム等を記憶する。制御プログラムP1は、両面同形状転写装置10が備える機能を発揮させるためのプログラムである。
周辺機器コントローラ56は、両面同形状転写装置10が備える各種周辺機器と制御部50とを接続するとともに、制御部50からの制御指示を、周辺機器コントローラ56に接続された各種周辺機器に伝達する。また、周辺機器コントローラ56は、各種周辺機器の計測結果や観測結果を制御部50に伝達する。
周辺機器コントローラ56には、いずれも前記した、モータ11m,30m,31m,34mと、表面用塗工ダイ12と、裏面用塗工ダイ25と、表面用UVランプ14と、裏面用UVランプ27と、テンションピックアップロール24と、カメラ28とが接続される。また、周辺機器コントローラ56には、後述する近接スイッチ37(図4参照)と接続される。
通信コントローラ58は、図1に非図示のサーバ装置等と通信を行い、前記した制御プログラムP1やデータファイル等を取得する。
[ターンバーの機能]
次に、図3を用いて、ターンバー16の機能を説明する。図3は、ターンバーの上面図と側面図である。より具体的には、図3(a)はターンバーの上面図であり、図3(b)はターンバーの側面図である。なお、ターンバー16は、本開示における反転手段の一例である。
ターンバー16に投入する前のフィルム20の上面(Z軸正側)を表面20aとする。また、フィルム20の下面(Z軸負側)を裏面20bとする。搬送ロール17a,17bに支持されて+Y方向に沿って進行したフィルム20は、XY平面内で搬送方向(+Y方向)に対して斜め45°に傾けて設置された第1の斜めロール18aの下側に入る。第1の斜めロール18aはフリーロールであり、フィルム20を巻き付けて、-X方向に送り出す。すなわち、第1の斜めロール18aによって、フィルム20の搬送方向が90°変更される。
その後、フィルム20は、XY平面内で進行方向(-X方向)に対して90°傾けて設置された反転ロール19の下側に入る。反転ロール19はフリーロールであり、フィルム20を巻き付けて、+X方向に送り出す。すなわち、反転ロール19によって、フィルム20の搬送方向が180°変更される。
次に、+X方向に進行したフィルム20は、XY平面内で搬送方向(+X方向)に対して斜め45°に傾けて設置された第2の斜めロール18bの下側に入る。第1の斜めロール18aはフリーロールであり、フィルム20を巻き付けて、+Y方向に送り出す。すなわち、第2の斜めロール18bによって、フィルム20の搬送方向が90°変更される。
この時点で、ターンバー16の入口においてフィルム20の下面側であった裏面20bが、上面側に出現する。すなわち、ターンバー16によって、フィルム20の表面20aと裏面20bとを反転させることができる。
[パターンロールの構造]
次に、図4を用いて、パターンロール30の構造を説明する。図4は、パターンロールの三面図である。
パターンロール30は、円柱形に形成されている。そして、パターンロール30の外周面である円柱面には所定のパターン30aが形成されている。当該パターン30aは、パターンロール30の円柱面全体に亘って均一に形成されており、このパターン30aが、フィルム20の表面20a及び裏面20bに転写される。なお、パターンロール30は、本開示におけるロールの一例である。
パターンロール30の両端面には、それぞれロール軸36(回転軸)が設置される。各ロール軸36は、軸受が内蔵されたベアリングケース38a,38bによって、回転可能に支持される。
X軸負側のロール軸36には、図4に非図示のモータ30m(図1参照)が接続される。そして、パターンロール30は、モータ30mの回転駆動力によって回転する。
パターンロール30の円柱面(外周面)の両縁には、ロール軸36と平行な位置に、2つのアライメントマーク33a,33bが形成される。当該アライメントマーク33a,33bは、パターン30aと重複しない位置に形成される。なお、アライメントマーク33a,33bは、本開示における基準マークの一例である。
また、アライメントマーク33a,33bは、当該アライメントマーク33a,33bの各中心を通りロール軸36と直交する断面の外周線に関して線対称な形状である。すなわち、フィルム20の表面に転写された一方のアライメントマーク33a,33bの転写像35a,35bは、表裏を反転させたフィルム20を再びパターンロール30に当接させた際に、他方のアライメントマーク33b,33aとそれぞれ重複する。
ロール軸36には、アライメントマーク33a,33bと同位相の位置にドグ39が設置される。ドグ39は、パターンロール30に連れ添って回転する。ドグ39の位置は、ベアリングケース38bの+Z側に設置された近接スイッチ37によって検出される。すなわち、近接スイッチ37がドグ39を検出した際に、アライメントマーク33a,33bは、Z軸正側に位置することになる。近接スイッチ37がドグ39を検出したとき、両面同形状転写装置10は、フィルム20の裏面20bがパターンロール30と当接する位置を調整するために、パターンロール30を停止させる。フィルム20の位置調整方法については後述する。
[フィルムのアライメント調整方法]
次に、図5を用いて、フィルム20のアライメント調整方法を説明する。図5は、フィルムのアライメント調整方法を説明する模式図である。
両面同形状転写装置10は、1本のパターンロール30でフィルム20の表裏面にパターン30aを転写するため、フィルム20は、表面転写時及び裏面転写時にパターンロール30に当接する。その際、フィルム20の表面に転写するパターン30aの位置と、フィルム20の裏面に転写するパターン30aの位置とを合致させる必要がある。
両面同形状転写装置10は、フィルム20の両面にパターン30aの転写を行う前に、フィルム20の表面に転写したパターン30aの位置と、フィルム20の裏面に転写するパターン30aの位置とを合致させる調整を行う。
両面同形状転写装置10は、当該調整を、フィルム20を両面同形状転写装置10に通紙して、フィルム20の表面にパターン30aを転写した状態で行う。具体的には、表面のみにパターン30aが転写されたフィルム20の表裏を反転させて、パターンロール30に当接させる。このとき、裏面用押付ロール26と裏面用剥離ロール29とを退避させた状態にすることによって、フィルム20の裏面とパターンロール30とが線接触した状態を作る。なお、裏面用押付ロール26と裏面用剥離ロール29とをどれ位退避すると、フィルム20の裏面とパターンロール30とが線接触するかは、予め測定しておけばよい。このようにして、フィルム20のアライメント調整は、図5に示す搬送経路K2(繰出軸11から巻取軸34に至る一連の経路)を形成した状態で行う。
フィルム20を両面同形状転写装置10に通紙した際に、両面同形状転写装置10は、パターンロール30を速度基準として、アウトフィールドロール31をニップした状態(アウトフィールドロール31にアウトフィールドニップロール32を押し当てた状態)でフィルム20を走行させる。
このとき、エアシリンダ付ロール21は、フィルム20の張力を一定に保つように回転軸の位置が自動調整される。
このようにして、表面20aにパターン30aが転写されたフィルム20が巻取軸34に巻き取られるまで、フィルム20の表面20aにパターン30aが転写される。フィルム20の搬送速度と、表面用塗工ダイ12から巻取軸34までのパス長とは予めわかっているため、両面同形状転写装置10は、表面塗工を開始してからの経過時間を計測することによって、フィルム20が巻取軸34に到達したかを判断することができる。
フィルム20が、当該フィルム20の表面20aにパターン30aが転写された状態で巻取軸34に巻き取られたら、両面同形状転写装置10は、表面用塗工ダイ12を退避してUV樹脂の塗工を停止する。表面塗工の停止後、両面同形状転写装置10は、フィルム20を、当該フィルム20に塗工されたUV樹脂がパターンロール30を通り抜けるまで搬送させる。その後、両面同形状転写装置10は、表面用UVランプ14を消灯する。
続いて、近接スイッチ37がドグ39を検出した位置で、両面同形状転写装置10は、パターンロール30と繰出軸11との回転を停止する。
パターンロール30が停止した際に、カメラ28は、パターンロール30上のアライメントマーク33a,33bと、フィルム20の表面20aに転写されたアライメントマーク33aの転写像35aと、アライメントマーク33bの転写像35bとを真上から(-Z方向)観測する。
図6は、カメラが観測する画像の一例を示す図である。なお、説明を簡単にするため、カメラ28は、パターンロール30のアライメントマーク33bの近傍を拡大して観測しているものとする。フィルム20は透明であるため、図6に示すように、カメラ28が観測した画像I(x,y)には、アライメントマーク33bと、アライメントマーク33aの転写像35aとが同時に映り込む。さらに、ドグ39はアライメントマーク33bと同位相の位置に設置されているため、アライメントマーク33bは、画像I(x,y)の略中央の位置に観測される。
アライメントマーク33bと、転写像35aとは同じ形状であるが、アライメントマーク33bはパターンロール30の表面に彫刻されたものであり、転写像35aは、アライメントマーク33aをUV樹脂で転写したものであるため、像の明るさが異なる。
両面同形状転写装置10は、このようにして観測された画像I(x,y)の中から、アライメントマーク33bと転写像35aとを検出する。具体的には、アライメントマーク33bと転写像35aの形状を示すテンプレートを予め用意しておき、観測された画像I(x,y)の中から、テンプレートと相関の高い領域を検出すればよい。これは、公知のテンプレートマッチング処理を利用して行うことができる。そして、両面同形状転写装置10は、検出したアライメントマーク33b又は転写像35aを示す領域の明るさの平均値を算出する。算出された領域の明るさは、事前に取得しておいた、画像I(x,y)におけるアライメントマーク33bの明るさ、転写像35aの明るさ、アライメントマーク33bと転写像35aとが重なった際の明るさとそれぞれ比較される。これによって、検出された領域が、アライメントマーク33bを示すか、転写像35aを示すか、又はアライメントマーク33bと転写像35aとが重なった領域を示すかを判定する。
なお、アライメントマーク33bと転写像35aとが一部重複して観測された場合は、アライメントマーク33bと転写像35aの形状を示すテンプレートと同じ形状の領域は検出されない。このような場合、両面同形状転写装置10は、画像I(x,y)において、アライメントマーク33bと転写像35aとが一致するように、アウトフィールドロール31及び巻取軸34を反時計回りに低速で回転させることによって、フィルム20を-Y方向に搬送する。
このとき、繰出軸11とパターンロール30は回転していないため、アウトフィールドロール31及び巻取軸34を反時計回りに回転させてフィルム20を-Y方向に搬送させると、フィルム20が引っ張られて張力が高まる。そのため、エアシリンダ付ロール21は、前記したように、フィルム20の張力が一定になるようにピストン23の位置を調整することによって、回転軸の位置を自動調整する。なお、アウトフィールドロール31と巻取軸34とエアシリンダ付ロール21とは、本開示における調整手段の一例である。
このように、両面同形状転写装置10は、フィルム20の張力を一定に保った状態で、フィルム20を搬送させながら、アライメントマーク33bと転写像35aとの位置合わせを行う。フィルム20には、パターンロール30の外周面の長さに相当する間隔で転写像35aが転写されている。したがって、フィルム20を、パターンロール30の外周面の長さだけ搬送させると、その間に、必ずアライメントマーク33bの位置と転写像35aの位置とを一致させることができる。
なお、ここでは、両面同形状転写装置10が、アライメントマーク33bと転写像35aとの位置合わせを行うものとして説明したが、両面同形状転写装置10は、アライメントマーク33aとアライメントマーク33bの転写像35bとの位置合わせを行ってもよい。また、アライメントマーク33bと転写像35aとの位置合わせ、及びアライメントマーク33aと転写像35bとの位置合わせを、ともに行ってもよい。
また、上記説明は、アライメントマーク33bと転写像35aとが、画像I(x,y)においてy方向、すなわちフィルム20の搬送方向(y方向)にのみずれるものとしたが、フィルム20が蛇行して幅方向(x方向)にずれる可能性もある。このような場合には、アライメントマーク33bと転写像35aとが画像I(x,y)においてx方向にずれる。したがって、両面同形状転写装置10は、アライメントマーク33bと転写像35aとが、画像I(x,y)においてx方向にずれたことを検出した際に、フィルム20の搬送経路K2の中に設置したステアリングロール(非図示)を、x方向のずれ量に応じた量だけ回転させる(傾ける)ことによって、フィルム20の幅方向の位置を調整してもよい。
アライメントマーク33bと転写像35aとの位置が合致すると、両面同形状転写装置10は、その位置で裏面用押付ロール26をパターンロール30に押し当てる(ニップする)。このとき、裏面用押付ロール26に引っ張られることによって、フィルム20の張力が増加するが、前記したようにエアシリンダ付ロール21の回転軸の位置が自動調整されることによって、フィルム20の張力は一定に保たれる。
次に、所定時間が経過した後、両面同形状転写装置10は、アウトフィールドロール31のニップを開放する。そして、さらに所定時間が経過した後、両面同形状転写装置10は、裏面用剥離ロール29をパターンロール30に押し当てる(ニップする)。このとき、フィルム20は引っ張られるが、アウトフィールドロール31はフリーになっているため、フィルム20は巻取軸34から一定の張力で繰り出される。なお、所定時間は予め予備実験等を行って設定される。
なお、裏面用押付ロール26とパターンロール30とのニップ状態及び開放状態、裏面用剥離ロール29とパターンロール30とのニップ状態及び開放状態は、裏面用押付ロール26及び裏面用剥離ロール29とそれぞれ連結する、図5に非図示のエアシリンダに付けたシリンダスイッチによって検知する。
両面同形状転写装置10は、裏面用剥離ロール29をニップしてから所定時間経過後に、アウトフィールドロール31のニップを開放した状態でフィルム20を再度走行させる。そして、さらに所定時間が経過した後で、両面同形状転写装置10は、表面用塗工ダイ12と裏面用塗工ダイ25とを前進させる。そして、両面同形状転写装置10は、表面用塗工ダイ12と裏面用塗工ダイ25とからフィルム20に樹脂を塗工して、フィルム20の表面20aと裏面20bの連続成形を行う。なお、所定時間は予め予備実験等を行って設定される。
前記した通り、アライメントマーク33aと転写像35aとは位置合わせが行われているため、両面同形状転写装置10は、フィルム20の裏面20bに、フィルム20の表面20aに転写したパターン30aと同じ位置にパターン30aを転写する。
なお、両面同形状転写装置10は、アウトフィールドロール31をニップしていないため、パターンロール30とアウトフィールドロール31との間に多少の周速差があったとしても、アウトフィールドロール31とパターンロール30との間でフィルム20が緩んだり張ったりすることがない。アウトフィールドロール31とフィルム20との接触が気になる場合は、アウトフィールドロール31をフリーロールにして、アウトフィールドニップロール32をモータ駆動する構造を採ってもよい。
また、フィルム20の張力を一定に保つ方法は、エアシリンダ付ロール21を図5のように配置して行う方法に限定されない。
[モータの動作状態]
次に、図7を用いて、両面同形状転写装置10の動作状態毎の、各モータの動作を説明する。図7は、両面同形状転写装置の動作状態毎のモータの動作状態を示す図である。
フィルム20の通紙を行う際には、両面同形状転写装置10が備える4個のモータ全てが動作する。すなわち、モータ11mは、繰出軸11を時計回りに回転駆動する。モータ30mは、パターンロール30を反時計回りに回転駆動する。モータ31mは、アウトフィールドロール31を反時計回りに回転駆動する。モータ34mは、巻取軸34を反時計回りに回転駆動する。このとき、パターンロール30を回転駆動するモータ30mの回転数が基準速度となる。そして、モータ11m,31m,34mの速度は、モータ30mの回転数に基づいて、予め決められた速度に調整される。具体的には、搬送中のフィルム20に所定の張力がかかるように、各モータ11m,31m,34mの速度が調整される。
フィルム20の調整を行う際には、両面同形状転写装置10は、4個のモータのうち、モータ31mとモータ34mのみを動作させる。そして、このとき、両面同形状転写装置10は、フィルム20を搬送しながら前記した位置の調整を行うため、モータ31mとモータ34mとを低速でゆっくり回転させる。なお、フィルム20の調整を行う際には、フィルム20は、ターンバー16と巻取軸34との間でのみ移動する。
そして、フィルム20を連続成形する場合(表裏面に転写を行う場合)には、両面同形状転写装置10は、4個のモータ11m,30m,31m,34mを全て回転させる。このときの各モータの速度は、フィルム20の通紙を行う際の速度と同じである。
[両面同形状転写装置が行う処理の流れ]
次に、図8を用いて、両面同形状転写装置10が行う処理の流れを説明する。図8は、フィルムのアライメントの調整処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、両面同形状転写装置10にフィルムを通紙する(ステップS10からステップS12)。
具体的には、ステップS10において、両面同形状転写装置10は、表面用押付ロール13と、表面用剥離ロール15と、裏面用押付ロール26と、裏面用剥離ロール29と、アウトフィールドニップロール32と、表面用塗工ダイ12と、裏面用塗工ダイ25とをそれぞれ開放する。
次に、ステップS11において、フィルム20が繰出軸11から巻取軸34まで通紙される。
ステップS12において、両面同形状転写装置10は、表面用押付ロール13と、表面用剥離ロール15と、アウトフィールドニップロール32とをニップする。
その後、ステップS13において、両面同形状転写装置10は、搬送手段である繰出軸11とパターンロール30とアウトフィールドロール31と巻取軸34とを回転させることによって、ラインの走行を開始させて、通紙されたフィルム20を搬送する。
ステップS14において、両面同形状転写装置10は、表面用塗工ダイ12を前進させて、フィルム20の表面20aへのUV樹脂の塗工を開始する。
続いて、ステップS15において、両面同形状転写装置10は、表面用UVランプ14を点灯させて、フィルム20の表面20aへのパターン30aの転写を行う。
ステップS16において、両面同形状転写装置10は、フィルム20の表面20aに転写されたパターンが巻取軸34に到達したかを判定する。転写されたパターンが巻取軸34に到達したと判定される(ステップS16:Yes)とステップS17に進む。一方、転写されたパターンが巻取軸に到達したと判定されない(ステップS16:No)とステップS16の判定を繰り返す。なお、転写されたパターンが巻取軸34に到達したか否かは、フィルム20の搬送経路K1(図1参照)の長さとフィルム20の搬送速度とが予めわかっているため、ステップS15において転写を開始した時刻からの経過時間を測定することによって判定することができる。
ステップS16においてYesと判定されると、ステップS17において、両面同形状転写装置10は、表面用塗工ダイ12を退避させて、UV樹脂の塗工を停止する。
次に、ステップS18において、両面同形状転写装置10は、パターンロール30からUV樹脂が通り抜けたかを判定する。パターンロール30からUV樹脂が通り抜けたと判定される(ステップS18:Yes)とステップS19に進む。一方、パターンロール30からUV樹脂が通り抜けたと判定されない(ステップS18:No)とステップS18の判定を繰り返す。
ステップS18においてYesと判定されると、ステップS19において、両面同形状転写装置10は、表面用UVランプ14を消灯させて、フィルム20の表面20aへのパターン30aの転写を一旦停止する。
続いて、ステップS20において、両面同形状転写装置10は、近接スイッチ37がドグ39を検出したかを判定する。近接スイッチ37がドグ39を検出したと判定される(ステップS20:Yes)とステップS21に進む。一方、近接スイッチ37がドグ39を検出したと判定されない(ステップS20:No)と、ステップS20の判定を繰り返す。
ステップS20においてYesと判定されると、ステップS21において、両面同形状転写装置10は、搬送手段である繰出軸11とパターンロール30とアウトフィールドロール31と巻取軸34とを停止させることによって、ラインを一時停止する。
次に、ステップS22において、両面同形状転写装置10は、カメラ28が観測した画像I(x,y)において、アライメントマーク33bの位置とアライメントマーク33aの転写像35aの位置とが一致しているかを判定する。アライメントマーク33bの位置と転写像35aの位置とが一致していると判定される(ステップS22:Yes)とステップS23に進む。一方、アライメントマーク33bの位置と転写像35aの位置とが一致していると判定されない(ステップS22:No)とステップS24に進む。
ステップS22においてNoと判定されると、ステップS24において、両面同形状転写装置10は、アウトフィールドロール31と巻取軸34とを低速回転させる。その後、ステップS22の判定を繰り返す。
ステップS22においてYesと判定されると、ステップS23において、両面同形状転写装置10は、アウトフィールドロール31と巻取軸34とを停止させる。
次に、ステップS25において、両面同形状転写装置10は、裏面用押付ロール26をニップする。
続いて、ステップS26において、両面同形状転写装置10は、アウトフィールドニップロール32を開放する。
また、ステップS27において、両面同形状転写装置10は、裏面用剥離ロール29をニップする。
その後、ステップS28において、両面同形状転写装置10は、搬送手段である繰出軸11とパターンロール30とアウトフィールドロール31と巻取軸34とを回転させることによって、ラインの走行を再開させる。
ステップS29において、両面同形状転写装置10は、表面用塗工ダイ12を前進させて、フィルム20の表面20aへのUV樹脂の塗工を開始する。
続いて、ステップS30において、両面同形状転写装置10は、表面用UVランプ14を点灯させて、フィルム20の表面20aへのパターン30aの転写を行う。
また、ステップS31において、両面同形状転写装置10は、裏面用塗工ダイ25を前進させて、フィルム20の裏面20bへのUV樹脂の塗工を開始する。
続いて、ステップS32において、両面同形状転写装置10は、裏面用UVランプ27を点灯させて、フィルム20の裏面20bへのパターン30aの転写を行う。これによって、フィルム20の表面20aと裏面20bに対するパターン30aの連続成形が開始される。
なお、図8には記載しないが、各ステップ間を移行する際に、両面同形状転写装置10は、予め決められた所定時間が経過したかを判定する。そして、所定時間が経過した場合に、次のステップに移行する。なお、所定時間の値はステップ毎に異なるため、前記したデータファイル等に予め記憶される。
以上説明したように、本開示に係る両面同形状転写装置10において、調整手段であるアウトフィールドロール31と巻取軸34とを回転させることによって、フィルム20の表面20aに転写されたアライメントマーク33a(基準マーク)の転写像35aの位置と、パターンロール30のアライメントマーク33b(基準マーク)の位置と、が一致するように、ターンバー16(反転手段)で表裏面が反転されたフィルム20の裏面20bがパターンロール30(ロール)と当接する位置を調整する。そして、調整された搬送経路K2でフィルム20を搬送させながら、パターンロール30(表面転写手段)をフィルム20の表面20aに圧接させることによって、パターン30aを転写する。また、同じパターンロール30(裏面転写手段)をフィルム20の裏面20bに圧接させることによって、パターン30aを転写する。したがって、1本のパターンロール30で、フィルム20の両面(表面20aと裏面20b)に、パターン30aの位置を合わせて転写することができる。
また、本開示に係る両面同形状転写装置10において、調整手段であるアウトフィールドロール31と巻取軸34とは、パターンロール30が停止した状態で、フィルム20のうちターンバー16(反転手段)によって反転された以降の部分を搬送させながら、パターンロール30のアライメントマーク33b(基準マーク)の位置(またはアライメントマーク33aの位置)と、アライメントマーク33aの転写像35aの位置(またはアライメントマーク33bの転写像35bの位置)とを一致させる。したがって、パターンロール30を停止した状態で、フィルム20の一部分のみを搬送させることによって、フィルム20の両面の位置合わせを行うことができるため、装置構成を簡素化することができる。
また、本開示に係る両面同形状転写装置10において、調整手段であるエアシリンダ付ロール21は、フィルム20のうちターンバー16(反転手段)によって反転された以降の部分を搬送した際に、フィルム20にかかる張力が一定になるように、フィルム20の搬送経路K2を調整する。したがって、フィルム20の張りや弛みを生じさせることなくフィルム20の一部分のみを移動させて位置の調整を行うことができる。
また、本開示に係る両面同形状転写装置10において、調整手段であるエアシリンダ付ロール21は、回転軸の位置が移動する可動ロールを備えて、アウトフィールドロール31と巻取軸34とがフィルム20の位置を調整した際に、フィルム20にかかる張力が一定になるように、エアシリンダ付ロール21の回転軸の位置を調整する。したがって、フィルム20の位置を調整した際にフィルム20の張力が大きくなった場合、搬送経路K2を調整することによって、張力を自動的に緩和して、フィルム20の張力を一定に保つことができる。
また、本開示に係る両面同形状転写装置10において、アライメントマーク33a,33b(基準マーク)は、パターンロール30の外周面の両縁に、パターンロール30のロール軸36(回転軸)と平行に形成された同じ形状のマークであって、アライメントマーク33a,33bの中心を通り、パターンロール30のロール軸36と直交する断面の外周線に関して線対称な形状である。したがって、フィルム20の表面20aと裏面20bの位置合わせを行う際に、アライメントマーク33bとアライメントマーク33aの転写像35a(またはアライメントマーク33aとアライメントマーク33bの転写像35b)とが完全に一致したことによって、位置合わせの判定を行うことができる。
また、本開示に係る両面同形状転写装置10において、調整手段であるアウトフィールドロール31と巻取軸34とは、パターンロール30(ロール)の外周面を観測した画像I(x,y)に写った、アライメントマーク33bと、フィルム20の表面20aに転写されたアライメントマーク33aの転写像35aと、が一致するように、フィルム20の位置を調整する。したがって、簡便な処理で確実にフィルム20の表面20aと裏面20bの位置合わせを行うことができる。
なお、前記した説明では、パターンロール30の下側半分でフィルム20の表面20aに転写を行い、パターンロール30の上側半分でフィルム20の裏面20bにパターン30aを転写する構成としたが、転写位置はこれに限定されるものではない。すなわち、パターンロール30の右側半分と左側半分とで、それぞれフィルム20の表面20a及び裏面20b(またはその逆)にパターン30aを転写してもよい。同様に、パターンロール30の右斜め上半分と左斜め下半分、又はパターンロール30の左斜め上半分と右斜め下半分とで、それぞれフィルム20の表面20a及び裏面20b(またはその逆)にパターン30aを転写してもよい。
また、前記した内容は、UV樹脂を用いる両面同形状転写装置10以外にも適用することができる。例えば、パターンロール30を加熱して、熱によりフィルム20を軟化させて加圧転写を行う両面熱転写装置や、パターンロール30にインクを供給して、供給されたインクをフィルム20に押し付けて印刷する両面印刷装置に適用することもできる。