JP6575399B2 - ロールツーロール処理装置及び処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、長尺耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら連続してスパッタリング等の熱負荷のかかる処理を行うロールツーロール処理装置及び処理方法に関するものである。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の電子機器には、耐熱性樹脂フィルム上に配線回路が形成されたフレキシブル配線基板が用いられている。このフレキシブル配線基板は耐熱性樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を成膜した金属膜付耐熱性樹脂フィルムをパターニング加工することで作製することができる。近年、電子機器の高性能化により配線回路の回路パターンはますます微細化や高密度化する傾向にあり、これに伴って金属膜付耐熱性樹脂フィルムにはシワ等のない平滑なものが求められている。
この種の金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造方法として、従来、金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングしてから乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、及び耐熱性樹脂フィルムに真空成膜法単独あるいは真空成膜法と湿式めっき法により金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法に用いる真空成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
上記メタライジング法について、特許文献1には、ポリイミド絶縁層上にクロム層をスパッタリングした後、銅をスパッタリングすることで積層構造の導体層をポリイミド絶縁層上に形成する方法が記載されている。また、特許文献2には、ポリイミドフィルム上に銅ニッケル合金をターゲットとするスパッタリングにより第一の金属薄膜を形成した後、銅をターゲットとするスパッタリングにより第二の金属薄膜を形成することで得た積層構造のフレキシブル回路基板用材料が開示されている。尚、長尺状のポリイミドフィルムのような耐熱性の長尺樹脂フィルムに真空成膜を行う場合には、ロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムに連続的にスパッタリングを行うことが可能なスパッタリングウェブコータを用いることが一般的である。
ところで、上述した真空成膜法のうち、スパッタリング法は一般に密着力に優れる反面、真空蒸着法に比べて耐熱性樹脂フィルムに与える熱負荷が大きいといわれている。そして、成膜の際に耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷がかかると、当該フィルムにシワが発生し易くなることも知られている。このシワの発生を防ぐため、上記スパッタリングウェブコータでは、内部に冷媒循環路を備えたキャンロールの外周面にロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムを巻き付けて裏面側から冷却しながらスパッタリング成膜することが行われている。
例えば特許文献3には、スパッタリングウェブコータの一例である巻出巻取式(ロールツーロール方式)の真空スパッタリング装置が開示されている。この巻出巻取式の真空スパッタリング装置には、キャンロールの役割を担うクーリングロールが具備されており、更にクーリングロールの少なくともフィルム送入れ側若しくは送出し側に設けたサブロールによって長尺樹脂フィルムをクーリングロールに密着する制御が行われている。
しかしながら、キャンロールの外周面はミクロ的に見て平坦ではないため、キャンロールの外周面とそこに接触して搬送される長尺樹脂フィルムとの間には真空空間を介して離間する隙間(ギャップ部)が存在している。このため、成膜の際に生じる長尺樹脂フィルムの熱はキャンロールに効率よく伝熱されているとはいえず、これに起因すると考えられるシワが長尺樹脂フィルムに発生することがあった。
この問題を解決するため、キャンロールにガス放出機構を設ける技術が提案されている。この技術はキャンロールの外周面と長尺樹脂フィルムとの間のギャップ部にキャンロール側からガスを導入し、これによりギャップ部の熱伝導率を真空に比べて高くするものである。例えば特許文献4には、キャンロール側からガスを導入するため、キャンロールの外周面にガスの導入口となる多数の微細な孔を設ける技術が開示されている。
また、特許文献5には、キャンロールの外周面にガスの導入口となる溝を設ける技術が開示されている。更に、キャンロール自体を多孔質体で構成し、その多孔質体自身の微細孔をガス導入口とする方法も知られている。尚、導入ガスがアルゴンガスで導入ガス圧力が500Paの場合、キャンロール外周面と長尺樹脂フィルムとのギャップ部の距離が約40μm以下の分子流領域のとき、ギャップ部の熱コンダクタンスは250(W/m・K)であると報告されている。
特開平2−98994号公報 特許第3447070号公報 特開昭62−247073号公報 国際公開第2005/001157号パンフレット 米国特許第3414048号明細書
上記の特許文献4や特許文献5に開示されているようなガス放出機構付きキャンロールでは、長尺樹脂フィルムをキャンロールに押し付ける力は長尺樹脂フィルムの搬送方向の張力をャンロールの半径で除した値に等しくなる。一方、ガス放出機構付きキャンロールのガス放出孔からギャップ部に導入するガス圧は、上記長尺樹脂フィルムをキャンロールの外周面に押し付ける力を超えない範囲に調整される。従って、ミクロ的に見て凹凸部を有するキャンロールの外周面では、その凸部に長尺樹脂フィルムが接触し、凹部にガスが満たされる状態になる。この時、上記の押し付ける力を超えるガス圧を有するガスをギャップ部に導入すると、ギャップ部の間隔が広がって長尺樹脂フィルムの幅方向両端部からガスが漏れ始め、ギャップ部の間隔がある程度以上になるとガス圧が上がらなくなる。
一方、分子流領域の範囲においては、気体分子の数が多いほど、すなわちガス圧が高いほど気体の分子流による熱伝達効率が向上する。従って、上記の押し付ける力より若干低いガス圧を有するガスをギャップ部に導入するのが望ましく、その結果、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルムとの間の摩擦係数が極端に低下することがあった。このため、キャンロールで長尺樹脂フィルムの搬送を制御すると長尺樹脂フィルムの搬送制御が不安定になり、長尺樹脂フィルムがキャンロールの外周面上でスリップして部分的に傷が付いたり、長尺樹脂フィルム上に成膜した膜の膜厚がばらついたりする問題が生ずることがあった。
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、外周面と長尺樹脂フィルムとの間のギャップ部にガスを導入することが可能なガス放出機構を備えたキャンロールの外周面にロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムを巻き付けて冷却しながらスパッタリング成膜などの熱負荷のかかる処理を施す際、該長尺樹脂フィルムを安定して搬送することが可能なロールツーロール処理装置及び処理方法を提供することを目的としている。
本発明者は、ロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムに熱負荷のかかる処理を施すことが可能なロールツーロール処理装置にガス放出機構付きキャンロールを用いた時、該キャンロールの外周面とそこに巻き付けられた長尺樹脂フィルムとの間の摩擦係数が極端に低下して長尺樹脂フィルムの搬送速度が不安定になったり、長尺樹脂フィルムの搬送を停止している時(ストール張力停止時)に長尺樹脂フィルムにスリ傷が付いたりする問題が生ずることがあり、この問題を解決すべく鋭意検討したところ、長尺樹脂フィルムの張力を制御するロールを運転モードに応じて適宜切り替えることにより上記の問題が生じにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明が提供するロールツーロール処理装置は、真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムに対して熱負荷のかかる処理を施す際に巻き付けるモーター駆動のキャンロールと、その前段及び/又は後段に設けられたモーター駆動の駆動ロールとを備えたロールツーロール処理装置であって、前記キャンロールはその外周肉厚部に回転軸方向に延在する複数のガス導入路が周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って配設されており、これら複数のガス導入路の各々は回転軸方向に沿って略均等な間隔をあけて外周面側で開口する複数のガス放出孔を有しており、前記キャンロールの外周面のうち長尺樹脂フィルムが巻き付けられるラップ部の角度範囲内に位置する複数のガス導入路にのみガスを分配して供給するガス分配手段を備えており、前記長尺樹脂フィルムの搬送の開始又は停止の信号に基づいて選択された前記キャンロール又は前記駆動ロールによって前記長尺樹脂フィルムの搬送制御を行う搬送制御手段が設けられており、前記搬送制御手段は、長尺樹脂フィルムの搬送開始時と搬送を維持する時は、該長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで該長尺樹脂フィルムの張力を制御し、搬送中の前記長尺樹脂フィルムを停止に至らせる時は、長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで長尺樹脂フィルムの張力を制御したまま前記ガス分配手段におけるガスの供給圧力が設定圧力に低下するまで長尺樹脂フィルムの搬送を維持し、該設定圧力になった時点で長尺樹脂フィルムの搬送を停止に至らせる操作を行い、長尺樹脂フィルムの搬送が停止したら長尺樹脂フィルムの張力を制御するロールを前記駆動ロールから前記キャンロールに切り替え、長尺樹脂フィルムの搬送の停止を維持している間は、前記ガス導入路へのガス供給を行わず且つ長尺樹脂フィルムの張力をキャンロールで制御することを特徴とする。
また、本発明が提供するロールツーロール処理方法は、真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムをガス放出機構を備えたキャンロールの外周面に巻き付けながら熱負荷のかかる処理を行うロールツーロール処理方法であって、前記キャンロールはその外周肉厚部に回転軸方向に延在する複数のガス導入路が周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って配設されており、これら複数のガス導入路の各々は回転軸方向に沿って略均等な間隔をあけて外周面側で開口する複数のガス放出孔を有しており、前記キャンロールの外周面のうち長尺樹脂フィルムが巻き付けられるラップ部の角度範囲内に位置する複数のガス導入路にのみガスを分配して供給するガス分配手段を備えており、長尺樹脂フィルムの搬送開始時と搬送を維持する時は、該長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで該長尺樹脂フィルムの張力を制御し、搬送中の長尺樹脂フィルムを停止に至らせる時は、長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで長尺樹脂フィルムの張力を制御したまま前記ガス分配手段におけるガスの供給圧力が設定圧力に低下するまで長尺樹脂フィルムの搬送を維持し、該設定圧力になった時点で長尺樹脂フィルムの搬送を停止に至らせる操作を行い、長尺樹脂フィルムの搬送が停止したら長尺樹脂フィルムの張力を制御するロールを前記駆動ロールから前記キャンロールに切り替え、長尺樹脂フィルムの搬送の停止を維持している間は、前記ガス導入路へのガス供給を行わず且つ長尺樹脂フィルムの張力をキャンロールで制御することを特徴としている。
本発明によれば、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルムとの間のギャップ部の熱コンダクタンスを全面的に均一化できることに加えて長尺樹脂フィルムの張力制御が安定化するので、ロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムに対して擦り傷やシワを発生させることなく熱負荷のかかる処理を施すことが可能になる。
本発明に係るロールツーロール処理装置の一具体例の模式的な正面図である。 図1の処理装置が具備するガス放出機構を備えたキャンロールをその中心軸を通る面で切断した断面図である。 図2のキャンロールが有するガスロータリージョイントの静止リングユニットを摺接面側から見た正面図である。
以下、本発明のロールツーロール処理装置の一具体例として、真空チャンバー内においてロールツーロール方式で搬送される長尺樹脂フィルムに対してスパッタリングによる真空成膜処理を施すことが可能な図1に示す真空成膜装置50について説明する。この図1の示す真空成膜装置50はスパッタリングウェブコータとも称される装置であり、真空チャンバー51内でロールツーロール方式で搬送される長尺樹脂フィルムFの表面に連続的に効率よく成膜処理を施す場合に好適に用いられる。
具体的に説明すると、真空チャンバー51は図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の装置を具備しており、スパッタリング成膜に際して真空チャンバー51内を到達圧力10−4Pa程度まで減圧した後、スパッタリングガスの導入により0.1〜10Pa程度に圧力調整できるようになっている。スパッタリングガスにはアルゴンなど公知のガスが使用され、目的に応じて更に酸素などのガスが添加される。真空チャンバー51の形状や材質については、上記の減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はない。この真空チャンバー51内に巻出ロール52からキャンロール58を経て巻取ロール68に至る長尺樹脂フィルムFの搬送経路を画定する各種ロール群が設けられている。
即ち、巻出ロール52からキャンロール58までの搬送経路には、長尺樹脂フィルムFを案内するフリーロール53、巻き出された長尺樹脂フィルムFの張力の測定を行う張力センサロール54、モーター駆動の前駆動ロール55及び前フィードロール56、キャンロール58に送り込まれる長尺樹脂フィルムFの張力を測定する張力センサロール57がこの順に配置されている。巻出ロール52から巻き出された長尺樹脂フィルムFの張力は巻出ロール52や前駆動ロール55によってフィードバック制御され、キャンロール58に送り込まれる長尺樹脂フィルムFの張力は前フィードロール56やキャンロール58によってフィードバック制御される。
キャンロール58から巻取ロール68までの搬送経路にも、上記と同様に、キャンロール58から送り出された長尺樹脂フィルムFの張力を測定する張力センサロール63、モーター駆動の後フィードロール64及び後駆動ロール65、巻取ロール68で巻き取られる長尺樹脂フィルムFの張力の測定を行う張力センサロール66、長尺樹脂フィルムFを案内するフリーロール67がこの順に配置されている。巻取ロール68で巻き取られる長尺樹脂フィルムFの張力は巻取ロール68や後駆動ロール65によってフィードバック制御され、キャンロール58から送り出された長尺樹脂フィルムFの張力は後フィードロール64やキャンロール58によってフィードバック制御される。尚、キャンロール58に送り込まれるフィルムの張力と送り出されたフィルムの張力がキャンロール58の外周面に長尺樹脂フィルムFを密着させる力を発生させることになる。
キャンロール58の外周面のうち長尺樹脂フィルムFが巻き付いて接触する領域であるいわゆるラップ部Aに対向する位置には、成膜手段としてのマグネトロンスパッタリングカソード59、60、61、62が長尺樹脂フィルムFの搬送経路に沿ってこの順に設けられている。金属膜のスパッタリング成膜の場合は、これらスパッタリングカソード59〜62には図1に示すような板状のターゲットを使用することができるが、板状ターゲットを用いた場合はターゲット上にノジュール(異物の成長)が発生することがある。これが問題になる場合は、ノジュールの発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用することが好ましい。また、成膜処理がCVD(化学蒸着)や真空蒸着などのスパッタリング以外の乾式めっき処理である場合は、上記板状ターゲットに代えてこれらの真空成膜手段が設けられる。
このように、長尺樹脂フィルムFはキャンロール58の外周面に巻き付いている間に熱負荷のかかる処理が施されるため、この巻き付いている長尺樹脂フィルムFを冷却すべくキャンロール58の内側は冷媒が循環できるようになっている。具体的には、図2に示すようにキャンロール58の外周肉厚部10の内周面側はいわゆるジャケットロール構造になっており、その冷媒循環路11に冷却水などの冷媒が流れるようになっている。この冷媒循環路11内の冷媒は、真空成膜装置50の外部に設けられた冷媒冷却装置(図示せず)との間で循環できるように、キャンロール58の中心軸0部分に延在する回転軸12は二重配管構造になっている。
本発明の一具体例の処理装置のキャンロール58は、更にガス放出機構を備えており、キャンロール58の外周面とそのラップ部Aに巻き付く長尺樹脂フィルムFとの間にガスを導入できるようになっている。具体的に説明すると、キャンロール58の外周肉厚部10にはキャンロール58の中心軸0方向に延在する複数のガス導入路13が周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って配設されている。これら複数のガス導入路13の各々は、キャンロール58の中心軸0の方向に沿って略均等な間隔をあけて外周面側で開口する複数のガス放出孔14を有している。これによりキャンロール58の外周面とそこに巻き付けられる長尺樹脂フィルムFとの間のギャップ部(間隙)にガスを導入することができる。
これらガス導入路13の本数や、各ガス導入路13が有するガス放出孔14の個数は、キャンロール58の外周面のうち長尺樹脂フィルムFが巻き付けられるラップ部Aの面積、長尺樹脂フィルムFの張力やギャップ部に導入するガス量等に応じて適宜定めることができる。各ガス導入路13に設ける複数のガス放出孔14については、小さな内径を有するガス放出孔14を狭ピッチにして多数配置することがキャンロール58の外周面の全面に亘って熱伝導性を均一化できるという点において好ましい。しかしながら、小さな内径のガス放出孔14を狭ピッチで多数設ける加工技術は困難を伴うので、現実的には内径150〜500μm程度のガス放出孔14を5〜10mmのピッチで配置することが好ましい。尚、ガス放出孔14の内径が1000μmを超えると付近の冷却効率が低下する原因となるため、好ましくない。
複数のガス導入路13には、真空成膜装置50の外部に設けられた図示しないガス供給源からガス分配手段を介してガスが供給される。このガス分配手段は、キャンロール58の回転に伴って回転するガス導入路13群のうち前述したラップ部A以外の角度範囲内に位置するガス導入路13にはガスの供給を行わず、ラップ部Aの角度範囲内に位置するガス導入路13にはガスを分配して供給するようになっている。
上記のラップ部A以外の角度範囲内に位置するガス導入路13にガスの供給を行わないようにするには、複数のガス導入路13に対応して設けたガス分配手段の複数の分配路のうち、ラップ部A以外の角度範囲に対応する分配路にはガス供給が遮断されるように邪魔板等の閉鎖手段を設けてもよいし、電気的又は電磁気的に作動する弁等で当該分配路を閉鎖できるようにしてもよい。これにより、長尺樹脂フィルムFが覆っていないためガスが放出されやすい非ラップ部に位置しているガス導入路13へのガス供給が遮断されるので、キャンロール58の外周面と長尺樹脂フィルムFとの間のキャップ部に十分な量のガスを導入することができ、効果的にシワの発生を防ぐことができる。
上記のガス分配手段としては、例えば図2に示す回転軸12の外側に設けられたガスロータリージョイント15を挙げることができる。このガスロータリージョイント15は、キャンロール58の側面に固定されてキャンロール58と共に回転する環状の回転リングユニット17と、前述したガス導入源からのガスを供給する供給管16に接続する環状の静止リングユニット18とから構成される。これら回転リングユニット17と静止リングユニット18とは互いに環状の摺接面で摺接する構造になっている。尚、この摺接面からのガスのリークを防ぐため、当該摺接面の外周側や内周側には、Oリングなどの公知のガスシール手段を配置することが好ましい。
回転リングユニット17の内部には複数のガス導入路13にそれぞれ一方の端部が連通する複数のガス分配路17aが放射状に設けられており、これら複数のガス分配管17aの他方の端部は上記摺接面で開口している。一方、静止リングユニット18は、上記ガス供給源からのガスの供給管16に連通し且つ上記摺接面で上記の複数のガス分配路17aの開口部と連通する環状のガス分配溝18aが摺接部に設けられている。このガス分配溝18aには上記回転リングユニット17の複数のガス分配路17aのうちラップ部A以外の角度範囲に位置するものにはガスを供給しないように、図3に示すような扇状のテフロン製のパッキン18bが挿入されている。尚、ガス分配溝18aの形状を上記した環状ではなくラップ部Aに対応する角度範囲にのみ延在する略馬蹄形にしてもよく、この場合は上記のパッキン18bが不要になる。
キャンロール58の外周面とそこに巻き付けられている長尺樹脂フィルムFとの間のギャップ部の圧力を直接測定することは難しいため、上記ガス分配溝18aには例えば隔膜真空計などの圧力計Pが設けられている。これにより、圧力計Pで測定したガス分配溝18a内の圧力が所望の圧力になるようにガス供給源からのガス供給流量や供給圧力をフィードバック制御することで、ガス分配溝18a内の圧力とほぼ同等の圧力を有するギャップ部内の圧力を間接的に制御することができる。
尚、ガスロータリージョイントは、上記した略同形状の環状の回転リングユニットと静止リングユニットとがそれらの中心軸に垂直な面で摺接する構造に限定されるものではない。例えば、小径の静止リングユニットの外周面に大径の回転リングユニットの内周面が摺接するような構造でもよい。また、ガス導入路の数が非常に多く、各々にガス分配管を連通させるのが困難な場合は、隣接する数本のガス導入路ごとに集合させてガス分配管に連通させてもよい。また、ガスロータリージョイントはキャンロールの片側だけでなく両側に取り付けてもかまわない。尚、キャンロールのガス放出機構からギャップ部に放出される程度のガス量であれば真空成膜装置50が備える一般的な真空ポンプで排気可能であるので真空チャンバー51内の圧力が不安定になることはない。また、ギャップ部に導入するガスをスパッタリング雰囲気のガスと同じにすれば、スパッタリング雰囲気を汚染することもない。
ところで、キャンロール58の外周面とそこに巻き付く長尺樹脂フィルムFとにより形成されるギャップ部にキャンロール58側からガスを導入すると、長尺樹脂フィルムFの搬送中や搬送を停止している際に長尺樹脂フィルムFの搬送制御が不安定になることがあった。これは、キャンロール58の外周面に長尺樹脂フィルムFを押し付ける力を超えない程度の高いガス圧でガス放出孔14からギャップ部にガスを導入すると、キャンロール58の外周面とそこに巻き付いている長尺樹脂フィルムFとの間の摩擦力が極めて低くなるため、キャンロール58の外周面上を長尺樹脂フィルムFが滑りやすくなるからである。
そこで、本発明の一具体例の成膜装置では、運転モードを切り替える際、キャンロール58に送り込まれるか又はキャンロール58から送り出される長尺樹脂フィルムFの張力を制御するロール(以降、基準ロールとも称する)を、キャンロール58からその前段又は後段に設けたモーター駆動のロールに切り替えたり、逆にキャンロール58の前段又は後段のモーター駆動のロールからキャンロール58に切り替えたりすることで、これらキャンロール58やその前後のロールの外周面の速度と長尺樹脂フィルムFの搬送速度とのずれによって生じる長尺樹脂フィルムFの擦り傷を防止している。
具体的に説明すると、長尺樹脂フィルムFが搬送停止の状態にある時は、巻出ロール52及び巻取ロール68では、パウダークラッチあるいはサーボモータ等によるトルク制御によって、長尺樹脂フィルムFの張力バランスを保っている。また、モーター駆動のキャンロール58と、これに連動して回転するモーター駆動の前フィードロール56、後フィードロール64、前駆動ロール55、及び後駆動ロール65により停止状態が保たれている。
ところが、ガス放出機構を有するキャンロール58では、長尺樹脂フィルムFがその張力によって生ずるキャンロール58の外周面に押し付ける力を超えないもののほぼこれに近いガス圧までギャップ部にガスを導入することがあるため、キャンロール58の外周面と長尺樹脂フィルムFとの摩擦力が極めて低くなり、キャンロール58への送り込み側(搬送経路におけるキャンロール58よりも上流側)と送り出し側(搬送経路におけるキャンロール58よりも下流側)の張力バランスが崩れると、長尺樹脂フィルムFがキャンロール58の外周面を滑って巻取ロール68に巻き取られたり、逆に巻出ロール52に向かって巻き戻されたりすることがあった。
このような現象が生ずるのは、長尺樹脂フィルムFの搬送が停止中であっても、長尺樹脂フィルムFが弛まないように設定したストール張力を保つため、各駆動ロールのモーターはわずかに動いているからである。そこで、長尺樹脂フィルムFの搬送が停止している時には、キャンロール58の外周面と長尺樹脂フィルムFとの摩擦力を確保するため、キャンロール58の外周面と長尺樹脂フィルムFとにより形成されるギャップ部のガス圧を低下させるのが望ましい。しかし、ラップ部Aでは長尺樹脂フィルムFがガス放出孔14を覆っているため、容易にギャップ部の圧力は低下しない。
そこで、本発明の一具体例の成膜装置では、成膜処理モードから長尺樹脂フィルムFの搬送停止モードに移行する時は下記の手順に沿って操作が行われる。
(1)例えば前フィードロール56を基準ロールとして張力制御が行われている長尺樹脂フィルムFに成膜処理を施している成膜手段(スパッタリングカーソード)への電力供給を停止する
(2)キャンロール58へのガス供給を停止する
(3)ガスロータリージョイント15内のガス分配溝18aに設置した圧力計Pで測定したガス圧が、非ラップ部から徐々にギャップ部のガスが抜けることであらかじめ定められた設定圧力に低下するまで搬送を維持する(例えば、キャンロール58を3回転させて200Pa以下になるまで待機)
(4)圧力計Pで測定したガス圧が上記設定圧力になった時点で長尺樹脂フィルムFの搬送を停止する
(5)停止中の長尺樹脂フィルムFの張力を制御する基準ロールを前フィードロール56からキャンロール58に変更する
また、長尺樹脂フィルムFの搬送停止モードから成膜処理モードに移行する時は下記の手順に沿って操作が行われる。
(6)長尺樹脂フィルムFの張力を制御する基準ロールをキャンロール58から、例えば前フィードロール56に変更する
(7)長尺樹脂フィルムFの搬送を開始する
(8)キャンロール58へのガス供給を開始する
(9)ガスロータリージョイント15内のガス分配溝18aに設置した圧力計Pの値が設定圧力になるまでこの状態を維持する
(10)熱負荷がのかかる成膜手段(スパッタリングカーソード)に電力を供給する
上記の(1)〜(5)や(6)〜(10)の手順に沿った操作は、該手順がプログラムされた例えばCPU(Central Processing Unit)等の搬送制御手段で行うことができる。成膜処理モードから搬送停止モードに移行させる時は、例えば長尺樹脂フィルムFの成膜処理中に発せられた搬送停止の信号を受けた搬送制御手段は、前フィードロール56や後フィードロール64を長尺樹脂フィルムFの張力制御の基準ロールとしたまま上記(1)〜(4)の手順に沿って停止に至る操作を行い、長尺樹脂フィルムFの搬送が停止すると、上記(5)のように張力制御の基準ロールをキャンロール58に切り替える。
また、搬送停止モードから成膜処理モードに移行させる時は、例えば長尺樹脂フィルムFの搬送停止中に発せられた成膜処理開始の信号を受けた搬送制御手段は、上記(6)のように駆動ロール55、65、フィードロール56、64のうち少なくともいずれか1つを長尺樹脂フィルムFの張力制御の基準ロールとして選択し、この選択された基準ロールの回転数によって張力センサロール57で測定した張力が一定となるように長尺樹脂フィルムFの張力を制御しながら上記(7)〜(10)の手順に沿って成膜開始に至る操作を行う。
搬送制御手段によって上記(1)〜(5)の手順に沿って搬送中の長尺樹脂フィルムFを停止させる前者の場合について、ガス分配溝18aの圧力と合わせてより詳細に説明する。搬送制御手段は、例えば操作パネル等の入力手段から搬送停止が入力されると、その信号を受けてスパッタリングカソード59〜62への電力供給を停止し、その後、ガス供給源からの供給管16の弁を閉じてガス分配溝18aへのガスの供給を停止する。圧力計Pで測定した圧力が所定の設定圧力に低下するまでは駆動ロール55、65、フィードロール56、64のうちの例えば前フィードロール56を基準ロールとして長尺樹脂フィルムFの張力制御を行いながら搬送を継続させ、圧力計Pが設定圧力に到達した信号が入力されると長尺樹脂フィルムFの搬送を停止する。長尺樹脂フィルムFの搬送が停止したら、基準ロールを前フィードロール56からキャンロール58に切り替える。
上記のように(1)〜(5)の手順に沿った操作が自動的に進行するため、搬送制御手段にはガス分配溝18aに設置した圧力計Pからの信号が入力されているのが好ましい。この圧力計Pの設定圧力は、成膜装置の構造により適宜定められるが、キャンロール58と長尺樹脂フィルFに摩擦力が維持でき、キャンロール58を基準ロールとして制御しても長尺樹脂フィルムFの擦り傷が発生しないギャップ部の圧力に対応するガス分配溝18aの圧力に設定するのが好ましい。上記した(1)〜(5)の手順や(6)〜(10)の手順に沿った操作は、上記のように搬送制御手段のアルゴリズムに沿って自動的に行ってもよいが、例えば圧力計Pで測定した圧力をモニターしながら手動で操作してもよい。
上記した真空成膜装置50を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミドフィルムなどの耐熱性樹脂フィルムからなる長尺樹脂フィルムの表面に金属膜をスパッタリング成膜することで、シワやスリ傷等がほとんどない極めて高品質の金属膜付耐熱性樹脂フィルムを高い歩溜まりで作製することができる。上記金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルムの表面にNi系合金等からなる膜とCu膜が積層された構造体が例示される。このような構造を有する金属膜付耐熱性樹脂フィルムは、サブトラクティブ法によりフレキシブル配線基板に加工される。ここで、サブトラクティブ法とは、レジストで覆われていない金属膜(例えば、上記Cu膜)をエッチングにより除去してフレキシブル配線基板を製造する方法である。
上記Ni合金等からなる膜はシード層と呼ばれ、Ni−Cr合金又はインコネル、コンスタンタンやモネル等の各種公知の合金を用いることができるが、その組成は金属膜付耐熱性樹脂フィルムの電気絶縁性や耐マイグレーション性等の所望の特性に応じて選択される。また、金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムの金属膜を更に厚くしたい場合は、一般的な湿式めっき法を用いて金属膜を形成してもよい。すなわち、電気めっき処理単独で金属膜を形成する場合と、一次めっきとしての無電解めっき処理及び二次めっきとしての電解めっき等の湿式めっき処理の併用で金属膜を形成する場合とがある。
また、金属膜付耐熱性樹脂フィルムに用いる耐熱性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルム等が挙げられる。これらの耐熱性樹脂フィルムは、金属膜付フレキシブル基板に必要な柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性を有する点から好ましい。
尚、上記金属膜付耐熱性樹脂フィルムとして、長尺耐熱性樹脂フィルムにNi-Cr合金やCu等の金属膜を積層した構造体を例示したが、上記金属膜以外に目的に応じて酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等を成膜することも可能である。その場合にも、上記した本発明の成膜装置や成膜方法を用いることができる。また、本発明の処理方法は、上記した真空成膜処理のほか、プラズマ処理やイオンビーム処理にも好適に使用することができる。これらプラズマ処理やイオンビーム処理は、長尺樹脂フィルムの表面改質を目的として減圧雰囲気の真空チャンバー内で行われるが、これらの処理も長尺樹脂フィルムに熱負荷がかかるためシワが発生しやすく、ガス放出機構付きキャンロールを使用することでシワの発生を防ぐことができるからである。
上記プラズマ処理とは、例えばアルゴンと酸素の混合ガス又はアルゴンと窒素の混合ガスからなる減圧雰囲気下において放電を行うことにより、酸素プラズマ又は窒素プラズマを発生させて長尺樹脂フィルムを処理する方法である。また、イオンビーム処理とは、強い磁場を印加した磁場ギャップでプラズマ放電を発生させ、プラズマ中の陽イオンを陽極による電界でイオンビームとして照射することにより、長尺樹脂フィルムを処理する方法である。
以上説明したように、本発明の処理装置を用いることにより、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルムとの間にガスを導入して両者のギャップ間隔をほぼ一定に維持することができるため、キャンロール外周面と長尺樹脂フィルム基板とのギャップ部全体において熱コンダクタンスが均一になり、熱負荷のかかる処理の際に長尺樹脂フィルムの温度をほぼ均一に冷却することができるので、長尺樹脂フィルムのシワの発生をなくすことができる。また、長尺樹脂フィルムの搬送速度の制御が安定化するので搬送中の停止中のスリ傷等の発生を低減することができる。
図1に示すような金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムの真空成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50を用いて、長尺樹脂フィルムFの表面にシード層であるNi−Cr膜を成膜し、その上にCu膜を成膜した。尚、長尺樹脂フィルムFには、幅600mm、有効長さ1000m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックス(登録商標)」を使用した。
キャンロール58には図2に示すようなガス放出機構付きのものを用いた。キャンロール58は外径800mm、幅750mmのステンレス製の円筒部材からなり、その外周面にハードクロムめっきを施し内周部側をジャケットロール構造にした。このキャンロール58の外周肉厚部に中心軸0方向に延在する内径4mmのガス導入路13を周方向に均等に360本形成し、各ガス導入路13には内径0.2mmのガス放出孔14を10mmピッチで57個設けた。尚、外周面のうち、長尺樹脂フィルムFが巻き付いた時にその両端部の各々から20mm内側の位置よりも外側の端部領域にはガス放出孔14を設けなかった。
このキャンロール58を成膜装置に搭載して長尺樹脂フィルムFを巻き付けた時、ラップ部Aの角度は270°となった。従って長尺樹脂フィルムFが接触しない非ラップ部の角度は約90°であり、この角度範囲内に存在するガス導入路13は90本になる。ガスロータリージョイント15の静止リングユニット18の摺接面に設けたガス分配溝18aは、上記ラップ部Aの270°の角度範囲にのみ対応するように略馬蹄形に形成した。尚、360本のガス導入路13をガスロータリージョイント15に直接接続するのは困難なため、回転リングユニット17には36本のガス分配管17aを設け、各々のガス分配管17aにガス導入路13を10本ごと集合させて接続した。
長尺樹脂フィルムFにシード層としてのNi−Cr膜と、その上のCu膜とを積層状態で成膜するため、マグネトロンスパッタリングカソード59、60のターゲットにはNi−Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタリングカソード61、62のターゲットにはCuターゲットを使用した。巻出ロール52と巻取ロール68の回転数は、それぞれ張力センサロール54、66で測定した張力をパラメータとして制御し、キャンロール58の冷媒循環路11には0℃に温度制御された冷水を循環させた。
巻出ロール52に長尺樹脂フィルムFをセットし、その先端部をキャンロール58等のロール群を経由させて巻取ロール68に取り付けた。そして、真空チャンバー51を複数台のドライポンプにより5Paまで排気した後、複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10−3Paまで排気した。長尺樹脂フィルムFを搬送速度3m/分で搬送させた後、各マグネトロンスパッタカソードにアルゴンガスを300sccmの供給量で導入すると共に5kwの電力を印加し、キャンロール58にはアルゴンガスを1000sccm導入して、Ni−Cr膜及びその上にCu膜の成膜を開始した。
キャンロール58の外周面とそこに巻き付く長尺樹脂フィルムFとの間のギャップ部内のガス圧は直接測定できないので、圧力計Pとして隔膜真空計(商品名:バラトロン真空計)を静止リングユニット18のガス分配溝18aに取り付けて測定した。このガス分配溝18aのガス圧200Paを設定圧力とし、この設定圧力を超える状態が維持できている場合は、ギャップ部に適切にガスが導入されていると判断した。
そして、フィルム搬送停止時及びフィルム搬送時の各々において、長尺樹脂フィルムFの張力の制御を行う基準ロールをキャンロール58の場合と前フィードロール56の場合の2つの基準ロールの場合に分けて運転し、更に各々の基準ロールの場合において、キャンロール58にガスを供給する場合と供給しない場合に分けて運転した。このように、フィルム搬送停止時及びフィルム搬送時の各々において、4つの異なる条件で運転した時のモーター駆動の各ロールが具備するエンコーダ信号から測長(即ち、ロールの外径に回転数を掛けた値)を計算した。その結果を下記表1に示す。
Figure 0006575399
上記表1に示す結果から、フィルム搬送停止時は長尺樹脂フィルムFの張力制御の基準ロールをキャンロール58として、ガス放出孔14にガスを供給しない条件で運転すると測長ズレが発生しなかった。一方、フィルム搬送時は、キャンロール58の外周面上に巻き付いている長尺樹脂フィルムに熱負荷のかかる成膜処理を施すので、キャンロール58の外周面と長尺樹脂フィルムFとの間のギャップ部にはガスを供給する必要があり、この場合は、長尺樹脂フィルムFの張力制御の基準ロールを前フィードロール56にすると測長ズレが発生しなかった。
これらのことから、フィルム搬送停止時は、長尺樹脂フィルムFの張力制御の基準ロールをキャンロール58にすると共にガス導入路13へのガス供給は行わず、フィルム搬送時は、長尺樹脂フィルムFの張力制御の基準ロールを前フィードロール56にすると共にガス導入路13にガスを供給するのが好ましいことが分かる。尚、フィルム搬送時からフィルム搬送停止時に移行させる際、先ずキャンロール58へのガス供給を停止してギャップ部のガス圧力が200Paに低下した時点でフィルムを停止した後、張力制御の基準ロールを前フィードロール56からキャンロール58に切り替えることで、搬送中から停止に至る段階においても測長ズレは発生しなかった。
50 成膜装置
51 真空チャンバー
52 巻出ロール
53、67 フリーロール
54、66 張力センサロール
55 前駆動ロール
56 前フィードロール
57、63 キャンロール側張力センサロール
58 キャンロール
59、60、61、62 マグネトロンスパッタリングカソード
64 後フィードロール
65 後駆動ロール
68 巻取ロール
10 外周肉厚部
11 冷媒循環路
12 回転軸
13 ガス導入路
14 ガス放出孔
15 ガスロータリージョイント
16 供給管
17 回転リングユニット
17a ガス分配管
18 静止リングユニット
18a ガス分配溝
18b パッキン
A ラップ部
F 長尺樹脂フィルム
0 中心軸
P 圧力計


Claims (7)

  1. 真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムに対して熱負荷のかかる処理を施す際に巻き付けるモーター駆動のキャンロールと、その前段及び/又は後段に設けられたモーター駆動の駆動ロールとを備えたロールツーロール処理装置であって、
    前記キャンロールはその外周肉厚部に回転軸方向に延在する複数のガス導入路が周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って配設されており、これら複数のガス導入路の各々は回転軸方向に沿って略均等な間隔をあけて外周面側で開口する複数のガス放出孔を有しており、前記キャンロールの外周面のうち長尺樹脂フィルムが巻き付けられるラップ部の角度範囲内に位置する複数のガス導入路にのみガスを分配して供給するガス分配手段を備えており、
    前記長尺樹脂フィルムの搬送の開始又は停止の信号に基づいて選択された前記キャンロール又は前記駆動ロールによって前記長尺樹脂フィルムの搬送制御を行う搬送制御手段が設けられており、
    前記搬送制御手段は、長尺樹脂フィルムの搬送開始時と搬送を維持する時は、該長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで該長尺樹脂フィルムの張力を制御し、
    搬送中の前記長尺樹脂フィルムを停止に至らせる時は、長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで長尺樹脂フィルムの張力を制御したまま前記ガス分配手段におけるガスの供給圧力が設定圧力に低下するまで長尺樹脂フィルムの搬送を維持し、該設定圧力になった時点で長尺樹脂フィルムの搬送を停止に至らせる操作を行い、長尺樹脂フィルムの搬送が停止したら長尺樹脂フィルムの張力を制御するロールを前記駆動ロールから前記キャンロールに切り替え、
    長尺樹脂フィルムの搬送の停止を維持している間は、前記ガス導入路へのガス供給を行わず且つ長尺樹脂フィルムの張力をキャンロールで制御することを特徴とするロールツーロール処理装置。
  2. 前記ガス分配手段が、前記キャンロールと共に回転する回転リングユニットと、該回転リングユニットに互いの摺接面で摺接する回転しない静止リングユニットとからなるロータリージョイントであり、該回転リングユニットには前記複数のガス導入路に連通すると共に該摺接で一端部が開口するガス分配路が設けられており、該静止リングユニットには前記ラップ部に位置するガス分配路にのみガスを供給するように該摺接面で略馬蹄形状に開口するガス分配溝を有していることを特徴とする、請求項1に記載のロールツーロール処理装置。
  3. 前記熱負荷のかかる処理が乾式めっき処理であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のロールツーロール処理装置。
  4. 前記乾式めっき処理がスパッタリング成膜処理であることを特徴とする、請求項3に記載のロールツーロール処理装置。
  5. 真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルムをガス放出機構を備えたキャンロールの外周面に巻き付けながら熱負荷のかかる処理を行うロールツーロール処理方法であって、
    前記キャンロールはその外周肉厚部に回転軸方向に延在する複数のガス導入路が周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って配設されており、これら複数のガス導入路の各々は回転軸方向に沿って略均等な間隔をあけて外周面側で開口する複数のガス放出孔を有しており、前記キャンロールの外周面のうち長尺樹脂フィルムが巻き付けられるラップ部の角度範囲内に位置する複数のガス導入路にのみガスを分配して供給するガス分配手段を備えており、
    長尺樹脂フィルムの搬送開始時と搬送を維持する時は、該長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで該長尺樹脂フィルムの張力を制御し、
    搬送中の長尺樹脂フィルムを停止に至らせる時は、長尺樹脂フィルムの搬送経路上の少なくとも1つの駆動ロールで長尺樹脂フィルムの張力を制御したまま前記ガス分配手段におけるガスの供給圧力が設定圧力に低下するまで長尺樹脂フィルムの搬送を維持し、該設定圧力になった時点で長尺樹脂フィルムの搬送を停止に至らせる操作を行い、長尺樹脂フィルムの搬送が停止したら長尺樹脂フィルムの張力を制御するロールを前記駆動ロールから前記キャンロールに切り替え、
    長尺樹脂フィルムの搬送の停止を維持している間は、前記ガス導入路へのガス供給を行わず且つ長尺樹脂フィルムの張力をキャンロールで制御することを特徴とするロールツーロール処理方法。
  6. 前記熱負荷のかかる処理がプラズマ処理、イオンビーム処理、又は乾式めっき処理であることを特徴とする、請求項に記載のロールツーロール処理方法。
  7. 前記乾式めっき処理がスパッタリング成膜であることを特徴とする、請求項に記載のロールツーロール処理方法。
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