JP6217621B2 - ガス放出機構を備えたキャンローラ並びにこれを用いた長尺基板の処理装置及び処理方法 - Google Patents

ガス放出機構を備えたキャンローラ並びにこれを用いた長尺基板の処理装置及び処理方法 Download PDF

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本発明は、スパッタリング等の熱負荷のかかる処理が施される長尺基板の冷却を効果的に行うべく、キャンローラの外周面とそこに巻き付けられる長尺基板との間に形成されるギャップ部にキャンローラ側からガスを放出する機構を備えたキャンローラ並びにそれを用いた長尺基板の処理装置及び処理方法に関するものである。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の電子機器には、長尺基板の上に金属膜を被覆して得られる多種類のフレキシブル配線基板が用いられている。フレキシブル配線基板の材料には、長尺基板の片面若しくは両面に金属膜を成膜した金属膜付長尺基板が用いられており、この金属膜付長尺基板にフォトリソグラフィーやエッチング等の薄膜技術を適用することにより所定の配線パターンを有するフレキシブル配線基板を得ることができる。近年、電子機器の高性能化に伴い、フレキシブル配線基板の配線パターンはますます微細化、高密度化する傾向にあり、金属膜付長尺基板にはより一層平坦でシワのないものが求められている。
この種の金属膜付長尺基板の製造方法としては、従来から金属箔を接着剤により長尺基板に貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングした後、乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、あるいは長尺基板に真空成膜法により、もしくは真空成膜法と湿式めっき法との組み合わせにより金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法における真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
メタライジング法については、特許文献1に、ポリイミド絶縁層上にクロムをスパッタリングした後、銅をスパッタリングしてポリイミド絶縁層上に導体層を形成する方法が開示されている。また、特許文献2に、銅ニッケル合金をターゲットとするスパッタリングにより形成された第一の金属薄膜と、銅をターゲットとするスパッタリングにより形成された第二の金属薄膜とを、この順でポリイミド長尺基板上に積層することによって得られるフレキシブル回路基板用材料が開示されている。なお、基板にポリイミド長尺基板の様な長尺基板を用い、これに真空成膜を行う場合はスパッタリングウェブコータを用いることが一般的である。
ところで、上述した真空成膜法において、一般にスパッタリング法は密着力に優れる反面、真空蒸着法に比べて長尺基板に与える熱負荷が大きいといわれている。そして、成膜の際に長尺基板に大きな熱負荷がかかると、長尺基板にシワが発生し易くなることも知られている。このシワの発生を防ぐため、金属膜付長尺基板の製造装置であるスパッタリングウェブコータでは冷却機能を備えたキャンローラを搭載し、これを回転駆動してその外周面に画定される搬送経路にロールツーロールで搬送される長尺基板を巻き付けることによってスパッタリング処理中の長尺基板をその裏面側から冷却する方式が採用されている。
例えば特許文献3には、スパッタリングウェブコータの一例である巻出巻取式(ロールツーロール方式)真空スパッタリング装置が開示されている。この巻出巻取式真空スパッタリング装置には上記キャンローラの役割を担うクーリングロールが具備されており、さらにクーリングロールの少なくとも長尺基板送入れ側若しくは送出し側に設けたサブロールによって長尺基板をクーリングロールに密着させる制御が行われている。
しかしながら、非特許文献1に記載されているように、キャンローラの外周面はミクロ的に見て平坦ではないため、キャンローラとその外周面に密着して搬送される長尺基板との間には真空空間を介して離間するギャップ部(間隙)が存在している。このため、スパッタリングや蒸着の際に加えられる長尺基板の熱は、実際には長尺基板からキャンローラに効率よく伝熱されているとはいえず、これが長尺基板のシワ発生の原因になることがあった。この問題を解決するため、上記キャンローラの外周面と長尺基板との間のギャップ部にキャンローラ側からガスを導入して、当該ギャップ部の熱伝導率を真空に比べて高くする技術が提案されている。
例えば特許文献4には、上記ギャップ部にキャンローラ側からガスを導入する具体的な方法として、キャンローラの外周面にガスの放出口となる多数の微細な孔を設ける技術が開示されている。また、特許文献5には、キャンローラの外周面にガスの放出口となる溝を設ける技術が開示されている。さらに、キャンローラ自体を多孔質体で構成し、その多孔質体自身の微細孔をガス放出口とする方法も知られている。
しかし、これらいずれにおいても、キャンローラの外周面において長尺基板が巻き付けられていない領域は長尺基板が巻き付けられている領域に比べてガス放出口での抵抗が低くなるため、キャンローラに供給されるガスがこの長尺基板の巻き付けられていない領域のガス放出口から容易に真空チャンバーの空間に放出されてしまう。その結果、キャンローラの外周面とそこに巻き付けられている長尺基板との間のギャップ部に本来導入されるべき量のガスが供給されず、熱伝導率を高める効果が十分に得られなくなることがあった。
この問題に対しては、特許文献5に示すようにキャンローラの外周面から出没するバルブをガス放出口に設け、このバルブを長尺基板面で押さえつけることによってガス放出口を開放する方法や、特許文献6に示すようにキャンローラの外周面のうち長尺基板を送り出してから送り入れるまでに該当する長尺基板の巻き付けられない領域にカバーを取り付けて、このカバー内の圧力を高くし、この領域からチャンバーにガスが放出されるのを防止する方法などが提案されている。
特開平2−98994号公報 特許第3447070号公報 特開昭62−247073号公報 国際公開第2005/001157号 米国特許第3414048号明細書 国際公開第2002/070778号
"Vacuum Heat Transfer Models for Web Substrates: Review of Theory and Experimental Heat Transfer Data," 2000 Society of Vacuum Coaters, 43rd. Annual Technical Conference Proceeding, Denver, April 15-20, 2000, p.335 "Improvement of Web Condition by the Deposition Drum Design," 2000 Society of Vacuum Coaters, 50th. Annual Technical Conference Proceeding (2007), p.749
しかし、特許文献5の技術はキャンローラの外周面上に設けたバルブと長尺基板とが接触するため、該長尺基板にキズが付くことがあった。また、特許文献6の技術はキャンローラの外周面とカバーとを接触させると当該外周面側にキズが付くためある程度離間させる必要があり、この離間した隙間から真空チャンバー内にガスがリークするのを避けることができなかった。
本発明は上記した従来の問題点に着目してなされたものであり、外周面に全面に亘ってガス放出孔を有するキャンローラの当該外周面にロールツーロールで搬送される長尺基板(長尺基板)を部分的に巻き付けて冷却しながら該長尺基板にスパッタリング成膜などの熱負荷の掛かる処理を施す際に、該外周面のうち長尺基板が巻き付けられない領域から真空チャンバー内へのガス漏れを抑制しつつ該外周面とそこに巻き付けられる長尺基板との間に形成されるギャップ部(隙間)に良好にガスを導入することが可能なキャンローラを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明に係るキャンローラは、真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺基板を外周面に部分的に巻き付けながら該外周面に対向して設けられた処理手段により加えられる熱を内部で循環する冷媒で冷却するキャンローラであって、周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って複数のガス導入路が配設されており、これら複数のガス導入路の各々は回転軸方向に沿って略均等な間隔をあけて外周面側で開口する複数のガス放出孔を有しており、該複数のガス導入路のうち、長尺基板が前記外周面に接触し始める角度位置から前記処理手段に対向する角度位置までの間の角度範囲内に位置する少なくとも1本のガス導入路にのみ該真空チャンバー外部のガスが供給されることを特徴としている。
本発明によれば、真空チャンバー内へのガスのリークなどの問題を生じることなく、ガス導入部分のガス圧力を安定させた状態でキャンローラの外周面のうち長尺基板が巻き付けられている領域だけに確実にガスを導入することができる。これにより、キャンローラの外周面とそこに巻き付けられる長尺基板との間のギャップ部に常に一定量のガスを導入できるので長尺基板の処理条件が安定し、シワのない高品質の処理済み長尺基板を高い歩留まりで作製することができる。
本発明に係るキャンローラが好適に使用されるロールツーロール方式の長尺基板処理装置の一具体例を示す模式図である。 本発明に係るキャンローラの一具体例を示す模式的断面図である。 従来のキャンローラが有するガスロータリージョイントの分解斜視図である。 図3のガスロータリージョイントを備えたキャンローラの側面図、及び該ロータリージョイントの断面図である。 本発明の一具体例のキャンローラが有するガスロータリージョイントの分解斜視図である。 図5のガスロータリージョイントを備えたキャンローラの側面図、及び該ロータリージョイントの断面図である。 本発明に係るキャンローラの他の具体例の部分側面図である。 図7のキャンローラの部分断面図である。 本発明に係るキャンローラの更に他の具体例の側面図である。 図9のキャンローラの部分断面図である。 ガスロータリージョイント内の圧力の時間的変化を示すグラフである。
先ず、図1を参照しながら本発明のキャンローラが好適に搭載される長尺基板の処理装置の一具体例について説明する。この図1に示す処理装置は、スパッタリングウェブコータとも称される真空成膜装置50であり、長尺状耐熱樹脂フィルム等の長尺基板Fの表面に連続的に効率よく成膜処理を施すことができる。この真空成膜装置50は、長尺基板Fをロールツーロール方式で連続的に搬送する搬送機構と、該長尺基板に対して熱負荷のかかる処理を施す処理手段と、これらを収容する真空チャンバー51とから主に構成されている。
具体的に説明すると、真空チャンバー51は図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の機器を具備しており、これら機器によりスパッタリング成膜のため真空チャンバー51内を到達圧力10−4Pa程度まで減圧した後、スパッタリングガスの導入により0.1〜10Pa程度に圧力調整できるようになっている。スパッタリングガスにはアルゴンなど公知のガスが使用され、目的に応じてさらに酸素などのガスが添加される。真空チャンバー51の形状や材質はこのような減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はなく、種々のものを使用することができる。
この真空チャンバー51内において、長尺基板Fをロールツーロールで搬送しながら連続的に成膜処理を施すべく、巻出ロール52からキャンローラ56を経て巻取ロール64に至る長尺基板Fの搬送経路を画定する各種のロール群が配設されている。これらロール群のうち、巻出ロール52からキャンローラ56までの搬送経路には、長尺基板Fを案内するフリーローラ53と、長尺基板Fの張力の測定を行う張力センサロール54と、長尺基板Fをキャンローラ56の外周面に密着させるべくキャンローラ56の周速度に対する調整が行われるモータ駆動のフィードローラ55とがこの順で配置されている。
キャンローラ56から巻取ロール64までの搬送経路にも上記と同様にキャンローラ56の周速度に対する調整が行われるモータ駆動のフィードローラ61と、長尺基板Fの張力の測定を行う張力センサロール62と、長尺基板Fを案内するフリーローラ63とがこの順に配置されている。上記した巻出ロール52及び巻取ロール64は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって長尺基板Fの張力バランスが保たれている。モータ駆動のキャンローラ56と、これに連動して回転するモータ駆動のフィードローラ55、61とにより、長尺基板Fは巻出ロール52から巻き出されて上記搬送経路を走行した後、巻取ロール64で巻き取られる。
このキャンローラ56の外周面のうち長尺基板Fが巻き付けられる角度範囲A(前フィードローラ55から送られてきた長尺基板Fがキャンローラ56の外周面に接触し始める角度位置から、キャンローラ56に巻き付いている長尺基板Fが後フィードローラ61に送り出されるために該外周面から離れる角度位置までの範囲)の領域に対向する位置に、成膜手段としてのマグネトロンスパッタリングカソード57、58、59および60が当該外周面上に画定される長尺基板Fの搬送経路に沿ってこの順に設けられている。なお、上記した角度範囲Aのことを長尺基板Fの抱き角あるいはラップ部と称することがある。
各マグネトロンスパッタリングカソードには金属膜のスパッタリング成膜の場合は板状のターゲットを使用することができるが、板状ターゲットを用いた場合はターゲット上にノジュール(異物の成長)が発生することがある。従って、これが問題になる場合は、ノジュールの発生がなくターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用するのが好ましい。また、図1の処理装置は熱負荷の掛かる処理がスパッタリング成膜であるためマグネトロンスパッタリングカソードが図示されているが、熱負荷の掛かる処理がCVD(化学蒸着)や蒸着処理などである場合は、板状ターゲットに代えて他の真空成膜手段が設けられる。
次に、上記したキャンローラ56が具備するガス導入機構について図2を参照しながらより詳細に説明する。図2に示すキャンローラ56は、その回転中心軸56aを中心として図示しない駆動装置により回転駆動される円筒部材31で本体が構成されている。この円筒部材31の外周面31aに部分的に長尺基板Fが巻き付けられる。円筒部材31の内表面側には、冷却水などの冷媒が流通する冷媒循環部32が例えばジャケット構造で形成されている。
円筒部材31の回転中心軸56a部分に位置する回転シャフト33はその一部が2重配管構造になっており、この2重配管を介して真空チャンバー51の外部に設けられた図示しない冷媒冷却装置と上記した冷媒循環部32との間で冷媒が循環するようになっており、これによりキャンローラ56の外周面の温度調節が可能になる。すなわち、冷媒冷却装置で冷却された冷媒は、回転シャフト33の内側配管33aの内側を経て冷媒循環部32に送られ、ここで長尺基板Fの熱を受け取って昇温した後、内側配管33aと外側配管33bとの間の空間を経て再び冷媒冷却装置に戻される。なお、回転シャフト33の外側には回転するキャンローラ56を支持するベアリング34が設けられている。
このキャンローラ56の円筒部材31の肉厚部には、キャンローラ56の回転中心軸56aに平行に延在する複数のガス導入路35が周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って穿設されている。各ガス導入路35は、円筒部材31の外周面側(すなわち、キャンローラ56の外周面側)に開口する複数のガス放出孔36を有しており、これら複数のガス放出孔36は、キャンローラ56の回転中心軸56a方向に沿って略均等な間隔をあけて配されている。各ガス導入路35には後述するロータリージョイントを介して真空チャンバー51の外部の図示しないガス供給源からガスが供給されるようになっており、これによりキャンローラ56の外周面とそこに巻き付けられる長尺基板Fとの間に形成されるギャップ部(間隙)にガスを導入することが可能となる。
円筒部材31の肉厚部に形成する上記したガス導入路35の本数、及び各ガス導入路35が有するガス放出孔36の個数や内径は、キャンローラ56の外周面とそこに巻き付けられる長尺基板Fとの間に形成されるギャップ部(隙間)に良好にガスを導入できるのであれば特に限定されないが、一般にキャンローラ56の外周面のうちの長尺基板Fが巻き付けられる領域の面積、当該領域から放出させるガスの放出量、真空チャンバー51に設けた排気ポンプの能力等により適宜定められる。
その際、キャンローラ56の外周面のうちの搬送経路部分に、全体に亘ってできるだけ極小な内径のガス放出孔36を狭ピッチにして多数設けた方が熱伝導性を均一化できるという点において好ましい。しかしながら、極小な内径の孔を狭ピッチで多数設ける加工技術は困難を伴うので、内径30〜500μm程度、好ましくは内径150〜300μm程度の小孔を5〜10mmピッチでキャンローラ56の外周面に設けるのが現実的である。なお、図2には一例としてキャンローラ56の回転中心軸56aに沿って10個のガス放出孔36を配設する場合が示されている。
従来、これら複数のガス導入路35のうち、前述した図1の角度範囲Aに位置するものに対してガスを均等に分配するロータリージョイントが用いられていた。すなわち、図3に示すように、従来のロータリージョイント20は、1対の回転リングユニット21と固定リングユニット22とから構成されている。回転リングユニット21は、キャンローラ56を構成する円筒部材31の片側に取り付けられており、円筒部材31と共に回転するようになっている。一方、固定リングユニット22は、真空チャンバー51の外部から供給されるガスの供給配管26に接続されており、且つ図示しない支持部材等で動かないように支持されている。これら回転リングユニット21及び固定リングユニット22は、互いに対向する部分にそれぞれ摺接面を有しており、回転リングユニット21が円筒部材31と共に回転する際、これら摺接面同士で摺接するようになっている。
回転リングユニット21には、前述したガス導入路35の本数と同じ本数のガス供給路23が周方向に均等な間隔をあけて全周に亘って形成されている。これら複数のガス供給路23の各々は、回転リングユニット21の内部でその回転軸方向に平行に及び/又は放射状に延在しており、その一端部が当該ガス供給路23と同じ角度位置にあるガス導入路35に接続管25を介して連通している。そして、このガス導入路35と接続する一端部とは反対側の他端部は、回転リングユニット21の摺接面21aで開口している。すなわち、各ガス供給路23が回転リングユニット21の摺接面21aで開口している開口部23a(以降、この開口部23aを回転開口部とも称する)の角度位置は、当該ガス供給路23が連通しているガス導入路35の角度位置と同じ位置関係となる。
一方、固定リングユニット22にはガス分配路24が形成されており、このガス分配路24は真空チャンバー51外部から供給されるガスの供給配管26に一端部が連通している。そして、ガス分配路24の他端部は固定リングユニット22の摺動面22aにおいて、前述した図1の角度範囲Aに位置するガス導入路35に連通するガス供給路23の開口部23aに対向するように略C字状に開口している。これにより、円筒部材31の全周に亘って設けられている複数のガス導入路35のうち角度範囲Aに位置するものには真空チャンバー51の外部からガスが供給され、角度範囲Bに位置しているものには当該ガスは供給されない。
その結果、図4に示すように、長尺基板Fが巻き付いていないことにより抵抗が低くなっている領域から真空チャンバー内にガスが漏れることを防ぐことができると共に、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fによって形成される角度範囲Aのギャップ部(隙間)に良好にガスを満たすことができる。前フィードローラ55から後フィードローラ61までの搬送経路を走行する長尺基板Fは、キャンローラ56の外周面に巻き付いて成膜される際に当該外周面から放出されたガスにより当該外周面と長尺基板Fとの間の熱伝導率が向上するのでキャンローラ56の冷却効率が向上し、よってスパッタリング成膜による長尺基板への熱負荷が大幅に低減する。更に、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの摩擦も低減する。なお、長尺基板Fに熱が加えられるのは、スパッタリングカソード57〜60に対向する領域のみであり、この領域以外では加熱されることはない。
上記したガスロータリージョイント20を備えたキャンローラ56を搭載した真空成膜装置50を用いて長尺基板Fに成膜を行ったところ、該真空成膜装置50の起動から停止までの間のガスロータリージョイント20内の圧力が図11(a)に示すように変化した。すなわち、真空成膜装置50を起動してガスロータリージョイント20へのガス供給を開始すると、ガスロータリージョイント20内の流路と、複数のガス導入路35と、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部とからなる空間にガスが満たされるので徐々に圧力が上昇し、設定圧力に達した時点で圧力制御により一定圧力に保つことができた。
この一定圧力が維持されている時は、上記空間におけるガスの流れはほとんど生じないので、ガスロータリージョイント20の流路内の圧力は、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部の圧力とほぼ同等であると考えられる。このギャップ部の圧力は、通常は長尺基板Fの張力Tにより発生する半径Rのキャンローラ56の回転中心軸56aに押し付ける抗力F(=T/R)より低い圧力に設定される。そのため、長尺基板Fをキャンローラ56の外周面に巻き付けたままの状態でキャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部にガスを満たすことが可能になる。
次に、ガスロータリージョイント20へのガス供給を停止すると共に、長尺基板Fの搬送も停止(キャンローラ56の回転を停止)させたところ、ガスロータリージョイント20の流路内のガス圧力はほぼ一定圧力を保持することが分かった。これは、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部から真空チャンバー51内へガスがほとんど漏れていないことを示す。
次に、再度ガスロータリージョイント20へのガス供給及び長尺基板Fの搬送を開始してから今度はガス供給のみを停止して長尺基板Fの搬送を継続(キャンローラ56の回転を継続)させたところ、ギャップ部に導入されていたガス、並びにガスロータリージョイント20の流路内及び複数のガス導入路35内のガスは、キャンローラ56の回転に伴い長尺基板Fがキャンローラ56に巻き付けられていない角度領域B(非ラップ部)から真空チャンバー51内に放出されるため、ガスロータリージョイント20内のガス圧力が徐々に低下した。
これらのことから、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部にガスを満たすと、当該外周面に巻き付いている長尺基板Fの幅方向両端部と搬送方向の両端部とからのガスの漏れはほとんど無いことが分かった。したがって、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとが接した(ラップ)直後の一部のギャップ部にガスを導入すれば長尺基板Fで覆われるキャンローラ56の外周面のラップ部全体にガスを満たすことができ、角度範囲Aに位置するガス放出孔全てからガスを導入する必要はないと考えられる。
そこで、上記したように周方向に略均等な間隔をあけて全周に亘って配設されている複数のガス導入路のうち、長尺基板が該キャンローラの外周面に接触し始める角度位置からスパッタリングカソードなどの処理手段に対向する角度位置までの間の角度範囲内に位置している少なくとも1本のガス導入路にのみ真空チャンバーの外部のガスを供給できるようなガスロータリージョイントを用いた。図5を参照しながらかかる構造のガスロータリージョイント120について具体的に説明する。なお、このロータリージョイント120が取り付けられるキャンローラ56の円筒部材は、前述した図2に示す円筒部材31と同様であるので説明を省略する。
この図5のロータリージョイント120は、1対の回転リングユニット121と固定リングユニット122とから構成されている。回転リングユニット121は、円筒部材31に取り付けられており、該円筒部材31と共に回転するようになっている。一方、固定リングユニット122は、真空チャンバー51の外部から供給されるガスの供給配管126に接続されており、且つ図示しない支持部材等で動かないように支持されている。これら回転リングユニット121及び固定リングユニット122は、互いに対向する部分にそれぞれ摺接面を有しており、回転リングユニット121が円筒部材と共に回転する際、これら摺接面同士で摺接するようになっている。
回転リングユニット121には、円筒部材31が有するガス導入路35の本数と同じ本数のガス供給路123が周方向に均等な間隔をあけて全周に亘って形成されている。これら複数のガス供給路123の各々は、回転リングユニット121の内部でその回転軸方向に平行に及び/又は放射状に延在しており、その一端部が当該ガス供給路123と同じ角度位置にあるガス導入路35に接続管125を介して連通している。
そして、このガス導入路35と接続する一端部とは反対側の他端部は、回転リングユニット121の摺接面121aで開口している。これにより、各ガス供給路123が回転リングユニット121の摺接面121aで開口している開口部123a(以降、この開口部123aを回転開口部とも称する)の角度位置は、当該ガス供給路123が連通しているガス導入路35の角度位置と同じ位置関係となる。なお、回転リングユニット121の外径を円筒部材131の外径とほぼ同サイズにすれば接続管125を省くことができる。
一方、固定リングユニット122にはガス分配路124が形成されており、このガス分配路124は真空チャンバー外部から供給されるガスの供給配管126に一端部が連通している。そしてガス分配路124の他端部は、固定リングユニット122の摺動面122aにおいて開口している。この図5のロータリージョイント120は、固定リングユニット122内に形成した上記ガス分配路124の摺動面122aにおける開口部124aが、長尺基板Fがキャンローラ56の外周面に接触し始める角度位置から長尺基板Fに熱負荷がかかるスパッタリングカソード等の処理手段に対向する角度位置までの間の角度範囲内に位置するガス導入路35に連通するガス供給路123の開口部123aにのみ対向するように開口している。
これにより、円筒部材31に設けられた複数のガス導入路35のうち、長尺基板Fがキャンローラ56の外周面に接触し始める角度位置からスパッタリングカソードなどの処理手段に対向する角度位置までの範囲に位置するものにだけガスを導入することができる。その結果、図6に示すように、長尺基板Fが巻き付いていないことにより抵抗が低くなっている図1の角度範囲Bの領域から真空チャンバー51内にガスが漏れることを防ぐことができると共に、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fによって形成される角度範囲Aのギャップ部(隙間)に良好にガスを満たすことができる。前フィードローラ55から後フィードローラ61までの搬送経路を走行する長尺基板Fは、キャンローラ56の外周面に巻き付いて成膜される際に当該放出されたガスにより当該外周面と長尺基板Fとの間の熱伝導率が向上するのでキャンローラ56の冷却効率が向上し、スパッタリング成膜による長尺基板への熱負荷が大幅に低減する。更に、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの摩擦も低減する。なお、長尺基板Fに熱が加えられるのは、スパッタリングカソード57〜60に対向する領域のみであり、この領域以外では加熱されることはない。
上記したガス分配路124に同時に連通させるガス導入路35の本数は複数でもよいが、ガス導入部分においてより圧力を安定させるには1本が望ましい。なお、上記した回転リングユニット121及び固定リングユニット122の形状は、それらの中心軸方向から見てほぼ同一であり、互いの摺動面が該中心軸に対して垂直に形成されていたが、長尺基板Fがキャンローラ56の外周面に接触し始める角度位置から処理手段としてのスパッタリングカソードに対向する角度位置までの範囲に位置するガス導入路に良好にガスを導入できるのであればかかる形状に限定されるものではない。
上記したガスロータリージョイント120を備えたキャンローラ56を図1に示すような真空成膜装置50に搭載し、この真空成膜装置50を用いて長尺基板Fに成膜を行ったところ、該真空成膜装置50の起動から停止までの間のガスロータリージョイント120内の圧力は図11(b)に示すように変化した。昇圧時は、図11(a)と比べて分かるように、1本のガス導入路35とそれのみに連通する簡易な構造のガス分配路124へのガス導入で済むので圧力の上昇速度を速くすることができた。
上記昇圧後の一定圧力が維持されている時は、上記空間におけるガスの流れはほとんど生じないので、ガスロータリージョイント120の流路内の圧力は、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部の圧力とほぼ同等であると考えられ、この圧力は通常は長尺基板Fの張力Tにより発生する半径Rキャンローラ56の回転中心軸56aに押し付ける抗力F(=T/R)より低い圧力に設定される。そのため、長尺基板Fをキャンローラ56から離間させることなくキャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部に良好にガスを満たすことができる。
次に、ガスロータリージョイント120へのガス供給を停止すると共に、長尺基板Fの搬送も停止(キャンローラ56の回転を停止)させたところ、ガスロータリージョイント120の流路内のガス圧力はほぼ一定圧力を保持した。これは、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部から真空チャンバー51内へガスがほとんど漏れていないことを示す。
次に、再度ガスロータリージョイント120へのガス供給及び長尺基板Fの搬送を開始してから今度はガス供給のみを停止して長尺基板Fの搬送を継続(キャンローラ56の回転を継続)させたこところ、ギャップ部に導入されていたガス、並びにガスロータリージョイント120の流路内及び複数のガス導入路35内のガスは、キャンローラ56の回転に伴い長尺基板Fがキャンローラ56に巻き付けられていない角度領域B(非ラップ部)から真空チャンバー51内に放出されるため、ガスロータリージョイント120内のガス圧力はガスを停止した直後のガス導入路が1回転して回って来たときに一気に低下した。
これらのことから、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間のギャップ部にガスを満たすと、当該外周面に巻き付いている状態の長尺基板Fの幅方向両端部と搬送方向の両端部とからのガスの漏れはほとんど無いことが分かる。なお、ロータリージョイント120を円筒部材の両側に取付けて、ガス導入路の両側からガスを導入してもよい。さらに、ロータリージョイント120の摺動部分からのガスのリークを防ぐため、公知のガスシール手段を設けてもよい。
上記した本発明の一具体例のキャンローラでは、円筒部材31に設けるガス導入路35の数をロータリージョイント120の回転リングユニット121のガス供給路123の数と一致させると共に、キャンローラ56の周方向においてそれらを同じ角度位置でそれぞれ接続管125を介して連通させるものであったが、この場合は、隣接する接続管125は密接した状態でキャンローラ56の端部から側方に張り出すことになるため、スペース上の制約や加工上の制約のため実現できないことがあった。そこで、キャンローラの周方向に並ぶ複数本のガス導入路に対して1つのガス供給路を連通させてもよい。
具体的には、図7に示すように、例えば円筒部材131の周方向に連続する4本のガス導入路135毎に、それらの端部に接続する1つのガス集合室140を円筒部材131の端部に設け、周方向に略等間隔に設けられた複数のガス集合室140にこれらと同数のガス供給路若しくは接続管をそれぞれ接続すればよい。これをキャンローラ56の回転軸を通る面で断面した切断図を図8に示す。この図8から分かるように、円筒部材131の端部に上記複数のガス集合室140用の複数の有底穴をザグリ加工などによりそれぞれ形成し、それらの開口部をリング状部材141で覆ってガス集合室140を形成した後、リング状部材141において各ガス集合室140に対応する位置にガス供給口140aを穿設することで簡単に作製することができる。
更に、本発明のキャンローラの他の具体例として、図9に示すように、大径の回転リングユニット221と、その内周面に摺接する小径の固定リングユニット222とでガスロータリージョイント220を構成し、該大径の回転リングユニット221から1本の接続管225をキャンローラ56の半径方向に延在させて長尺基板Fがキャンローラ56の外周面に接触し始める角度位置から処理手段としてのスパッタリングカソードに対向する角度位置までの範囲に位置するガス導入路にガスを供給してもよい。
この場合は、上記と同様に、図10のように円筒部材231の端部に設けた複数のガス集合室240に連通する1つの環状の回転ガスリング室242を複数のガス集合室240に隣接するように設け、ベローズバルブ等の開閉バルブ243でこれら回転ガスリング室242と複数のガス集合室240とを隔てるリング状部材241に設けたガス集合口240aを開閉するのが好ましい。この場合、開閉バルブ243はガス集合口240aと同数である必要がある。なお、上記の複数のガス集合室240を介して複数のガス導入路235に連通する構造に限定されるものではなく、各ガス導入路235に開閉バルブ243を備えてもよい。上記開閉バルブ243は、電磁気的に開閉する機構でもよいし、磁気的に開閉する機構でもよい。
電磁気的に開閉する場合は、各開閉バルブ243の位置をロータリーエンコーダ等の角度位置検出手段で検知し、長尺基板Fがキャンローラ56の外周面に接触し始める角度位置から処理手段のスパッタリングカソードに対向する角度位置までの角度範囲内に開閉バルブ243が存在した時に電磁石により往復度させてガス集合口240aを開閉すればよい。一方、磁気的に開閉する場合は、開閉バルブ243に磁石を取り付けると共に、開閉バルブ243が上記角度範囲内に来た時にその磁石と対向する位置にも磁石を設け、これら磁石同士の反発力や吸引力を利用して開閉バルブ243を往復動させればよい。なお、各開閉バルブ243にはバネ等の弾性体を備えて開方向又は閉方向に負勢しておき、上記電磁力又は磁力で該負勢の向きと反対の向きに作動させてもよい。
ところで、非特許文献2によれば、導入ガスがアルゴンガスの場合、導入ガス圧力が500Paであってギャップ部の離間距離が約40μm以下の時、ギャップ部の熱伝導率は250(W/m・K)となる。本発明の一具体例の処理装置においても、同様の導入ガス圧力条件を想定した場合、キャンローラ56の外周面と長尺基板Fとの間に形成されるギャップ部の距離は40μmになると考えられるが、この程度のギャップ部の距離であれば、そこからリークするガス量は、真空成膜装置が通常備える真空ポンプで排気可能である。
さらに、導入ガスをスパッタリング雰囲気に使用するガスと同じものにしておけば、スパッタリング雰囲気を汚染することもない。また、上述の通り、キャンローラ56の外周面のうち長尺基板Fが巻き付けられない図1の角度範囲Bの領域ではガス導入路35へガスを供給する前にガス供給を遮断するので、ガス漏れのリスクを減らすことができる。
上記した本発明の一具体例の長尺基板処理装置で使用できる長尺基板には、長尺樹脂フィルムのほか、金属箔や金属ストリップなどの金属長尺基板を用いることができる。長尺樹脂フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような比較的耐熱性に劣る樹脂フィルムやポリイミドフィルムを挙げることができる。
金属膜付長尺基板を作製する場合は、長尺ポリイミド系フィルム、長尺ポリアミド系フィルム、長尺ポリエステル系フィルム、長尺ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、長尺ポリフェニレンサルファイド系フィルム、長尺ポリエチレンナフタレート系フィルムまたは長尺液晶ポリマー系フィルムから選ばれる長尺基板が好適に用いられる。これらを用いて得られる金属膜付長尺基板は、金属膜付フレキシブル基板に要求される柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性に優れているからである。
金属膜付長尺基板の製造は、上述したような真空成膜装置に長尺基板として上記の例えば長尺ポリイミド系フィルムを用い、その表面に金属膜をスパッタリング成膜すれば得られる。例えば、上述したような真空成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50を用いて長尺基板Fをメタライジング法で処理することにより長尺基板Fの表面にNi系合金等からなる膜とCu膜とが積層された構造体を有する金属膜付長尺基板を得ることができる。成膜処理後の金属膜付長尺基板は別工程に送られ、そこでサブトラクティブ法により所定の配線パターンを有するフレキシブル配線基板に加工される。ここで、サブトラクティブ法とは、レジストで覆われていない金属膜(例えば、上記Cu膜)をエッチングにより除去してフレキシブル配線基板を製造する方法のことである。
上記したNi系合金等から成る膜はシード層と呼ばれ、金属膜付長尺基板に必要とされる電気絶縁性や耐マイグレーション性等の特性により適宜その組成が選択されるが、一般的にはNi−Cr合金、インコネル、コンスタンタン、モネル等の公知の合金で形成される。なお、金属膜付長尺基板の金属膜(Cu膜)をより厚くしたい場合は、湿式めっき法を用いることがある。この場合は、電気めっき処理のみで金属膜を形成する方法か、あるいは一次めっきとしての無電解めっき処理と、二次めっきとしての電解めっき処理等の湿式めっき処理とを組み合わせて行う方法で処理される。この湿式めっき処理には、一般的な湿式めっき条件を採用することができる。また、長尺基板には、上記の金属膜のほか、目的に応じて酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等が成膜されることもある。
以上、本発明のキャンローラの具体例について、長尺基板の真空成膜装置に搭載される場合を例に挙げて説明したが、本発明のキャンローラが搭載される長尺基板処理装置には、減圧雰囲気下の真空チャンバー内で長尺基板にスパッタリング等の真空成膜を施す処理装置以外に、プラズマ処理やイオンビーム処理等の熱負荷の掛かる処理を行う装置も含まれる。これらプラズマ処理やイオンビーム処理では長尺基板の表面が改質されるが、その際、長尺基板に熱負荷が掛かるので本発明のキャンローラ及びこれを用いた長尺基板の成膜装置を用いることが効果的であり、これにより処理雰囲気に多量の導入ガスをリークさせることなく熱負荷による長尺基板のシワ発生を抑制することができる。
なお、プラズマ処理とは、公知のプラズマ処理方法、例えばアルゴンと酸素の混合ガスまたはアルゴンと窒素の混合ガスによる減圧雰囲気下において放電を行うことにより、酸素プラズマまたは窒素プラズマを発生させて長尺基板を処理する方法のことである。また、イオンビーム処理とは、減圧雰囲気下で強い磁場を印加した磁場ギャップでプラズマ放電を発生させて、プラズマ中の陽イオンを陽極による電解でイオンビームとして目的物(長尺基板)へ照射する処理である。このイオンビーム処理には、公知のイオンビーム源を用いることができる。
[実施例]
図1に示すような真空成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50を用いて金属膜付長尺基板を作製した。長尺基板Fには、幅500mm、長さ800m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の耐熱性ポリイミド長尺基板「ユーピレックス(登録商標)」を使用した。キャンローラ56には、図2に示すようなジャケットロール構造のガス導入機構付きキャンローラを使用した。このキャンローラ56の円筒部材31には、直径900mm、幅750mmのアルミ製のものを使用し、その外周面にハードクロムめっきを施した。この円筒部材31内に、キャンローラ56の回転中心軸56aに平行に延在する内径4mmの360本のガス導入路35を周方向に均等な間隔をあけて全周に亘って形成した。なお、ガス導入路35は有底穴にすることで、先端部が円筒部材31を貫通しないようにした。
各ガス導入路35には、円筒部材31の外周面側(すなわちキャンローラ56の外周面側)に開口する内径0.2mmのガス放出孔36を47個設けた。これら47個のガス放出孔36は、円筒部材31の外表面に画定される長尺基板Fの搬送経路の両端部からそれぞれ20mm内側の線の間の領域に、長尺基板Fの進行方向に対して直交する方向において10mmのピッチで配設した。つまり、キャンローラ56の外周面のうち両端部からそれぞれ145mmまでの領域にはガス放出孔36を設けなかった。
上記したように、円筒部には360本のガス導入路35が全周に亘って周方向に均等に配設されている。前フィードローラは角度20°位置でキャンローラと接触し、後フィードローラは角度340°位置でキャンローラと長尺基板が接触している。スパッタ成膜における熱負荷が発生する領域は、成膜中に熱電対を用いて測定した結果、角度40°〜140°の領域と角度220°〜320°の領域であった。そこで、ガスを導入するガス分配路の摺動面上の開口部の位置は角度30°のガス供給路1本分とした。
長尺基板Fに成膜する金属膜としては、シード層であるNi−Cr膜の上にCu膜を成膜するものとし、そのため、マグネトロンスパッタターゲット57にはNi−Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタターゲット58、59、60にはCuターゲットを用いた。巻出ロール52と巻取ロール64の張力は80Nとした。キャンローラ56は水冷により20℃に制御しているが、長尺基板Fとキャンローラ56との熱伝導効率が良好でないと冷却効果は期待できない。
この成膜装置の巻出ロール52に巻回された長尺基板Fをセットし、その一端を引き出してキャンローラ56等のロール群で画定される搬送経路を経て巻取ロール64に取り付けた。この状態で、真空チャンバー51内の空気を複数台のドライポンプを用いて5Paまで排気した後、更に、複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10−3Paまで排気した。
次に回転駆動装置を起動して長尺基板Fを搬送速度3m/分で搬送させながら、アルゴンガスを300sccmで導入するとともにマグネトロンスパッタカソード57、58、59、及び60に10kWの電力を印加して電力制御した。更にキャンローラ56には150sccmでアルゴンガスを導入した。このようにしてロールツーロールで搬送される長尺基板Fに対してその片面にNi−Cr膜からなるシード層とその上のCu膜とを連続して成膜する処理を開始した。
この処理を行っている際、成膜中におけるキャンローラ56上の長尺基板F表面の観察が可能な観察窓から、ガス導入が行われているキャンローラ56上の長尺基板F表面を観察したところ、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、及び60に対向する成膜ゾーンを通過した成膜直後の長尺基板Fに熱負荷に起因するシワの発生はなかった。
[参考例]
図3に示すようなガスロータリージョイント20を用い、その固定リングジョイントのガス分配路の摺動面上の開口部が開口する角度範囲を30°〜330°とした以外は上記と同様にしてキャンローラを作製し、これを真空成膜装置50に搭載して上記と同様に長尺基板Fに成膜を行った。その結果、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60の成膜ゾーンを通過した成膜直後の長尺基板Fに熱負荷に起因するシワの発生はなかった。このことから、参考例と実施例とは基本的に性能上の差異はなかった。しかし、実施例では筒状部材の複数のガス導入路のうち同時に1本のみにガスを導入するだけでよいのでガスロータリージョイントの構造をシンプルにすることができた。
F 長尺基板
20、120、220 ガスロータリージョイント
21、121、221 回転リングユニット
21a、121a 摺接面
22、122、222 固定リングユニット
22a、122a 摺動面
23、123 ガス供給路
23a、123a 開口部
24、124 ガス分配路
24a、124a 開口部
25、125、225 接続管
26、126 供給配管
31、131、231 円筒部材
31a 外周面
32 冷媒循環部
33 回転シャフト
33a 内側配管
33b 外側配管
34 ベアリング
35、135、235 ガス導入路
36 ガス放出孔
140、240 ガス集合室
140a、240a ガス供給口
141、241 リング状部材
242 回転ガスリング室
243 開閉バルブ
50 真空成膜装置
51 真空チャンバー
52 巻出ローラ
53、63 フリーローラ
54、62 張力センサローラ
55、61 フィードローラ
56 キャンローラ
56a 回転中心軸
57、58、59、60 マグネトロンスパッタリングカソード
64 巻取ロール


Claims (11)

  1. 真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺基板を外周面に部分的に巻き付けて内部を循環する冷媒で冷却しながら該外周面に対向して設けられた熱負荷のかかる処理手段により該長尺基板を処理するキャンローラであって、その回転軸方向に延在する複数のガス導入路が周方向に等間隔に全周に亘って配設されており、各ガス導入路は該外周面においてその延在方向に等間隔に開口する複数のガス放出孔を有しており、該複数のガス導入路のうち、長尺基板が該外周面に接触し始める角度位置から該処理手段に対向する角度位置までの間の角度範囲内に位置する少なくとも1本のガス導入路にのみガス供給手段を介して該真空チャンバー外部のガスが供給されることを特徴とするキャンローラ。
  2. 前記ガス供給手段が、それぞれの摺接面で互いに摺接する回転リングユニットと固定リングユニットとからなるロータリージョイントを有し、該回転リングユニットは前記複数のガス導入路にそれぞれ連通する複数のガス供給路を有し、各ガス供給路は連通するガス導入路と同じ角度位置で摺接面において開口しており、該固定リングユニットは前記真空チャンバー外部のガスの供給配管に連通するとともに摺動面において前記角度範囲内で開口するガス分配路を有していることを特徴とする、請求項1に記載のキャンローラ。
  3. 前記ガス供給手段が、前記複数のガス導入路にそれぞれ設けられた複数の開閉バルブを有し、各ガス導入路が前記角度範囲内に存在するか否かに応じて対応する開閉バルブの開閉動作が制御されていることを特徴とする、請求項1に記載のキャンローラ。
  4. 前記開閉バルブが往復動手段を備えたベローズバルブであることを特徴とする、請求項3に記載のキャンローラ。
  5. 前記往復動手段が電磁気的または磁気的に往復動する機構であることを特徴とする、請求項4に記載のキャンローラ。
  6. 前記熱負荷のかかる処理手段が、マグネトロンスパッタリング処理、プラズマ処理、またはイオンビーム処理であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャンローラ。
  7. 前記熱負荷のかかる処理手段が前記キャンローラの外周面で画定される搬送経路に対向して設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のキャンローラ。
  8. 前記複数のガス導入路は、前記キャンローラの周方向に並ぶ複数本ごとに1つのガス集合室に連通しており、これら複数のガス集合室に前記ガス供給手段を介して前記真空チャンバー外部のガスが供給されることを特徴とする、請求項1に記載のキャンローラ。
  9. 真空チャンバーと、該真空チャンバー内においてロールツーロールで長尺基板を搬送する搬送機構と、長尺基板に対して熱負荷のかかる処理を施す処理手段とからなる長尺基板処理装置であって、該搬送機構が請求項1〜8のいずれか1項に記載のキャンローラを有しており、該キャンローラの外周面に該処理手段が対向して配置されていることを特徴とする長尺基板処理装置。
  10. 真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺基板をキャンローラの外周面に部分的に巻き付けて内部を循環する冷媒で冷却しながら該外周面に対向して設けられた熱負荷のかかる処理手段により該長尺基板を熱処理する方法であって、該キャンローラはその回転軸方向に延在する複数のガス導入路が周方向に等間隔に全周に亘って配設されており、各ガス導入路は該外周面においてその延在方向に等間隔に開口する複数のガス放出孔を有しており、該複数のガス導入路のうち、長尺基板が該外周面に接触し始める角度位置から該処理手段に対向する角度位置までの間の角度範囲内に位置する少なくとも1本のガス導入路にのみ該真空チャンバー外部のガスを供給することを特徴とする長尺基板の熱処理方法。
  11. 真空チャンバー内においてロールツーロールで搬送される長尺基板をキャンローラの外周面に部分的に巻き付けて内部を循環する冷媒で冷却しながら該外周面に対向して設けられた熱負荷のかかる成膜手段により該長尺基板に成膜する方法であって、該キャンローラはその回転軸方向に延在する複数のガス導入路が周方向に等間隔に全周に亘って配設されており、各ガス導入路は該外周面においてその延在方向に等間隔に開口する複数のガス放出孔を有しており、該複数のガス導入路のうち、長尺基板が該外周面に接触し始める角度位置から該成膜手段に対向する角度位置までの間の角度範囲内に位置する少なくとも1本のガス導入路にのみ該真空チャンバー外部のガスを供給することを特徴とする長尺基板の成膜方法。
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