以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の実施形態に係る止血器具10は、図4に示すように、治療・検査などを行うカテーテル等を血管内に挿入する目的で手首200(腕に相当)の橈骨動脈210に形成された穿刺部位220(止血すべき部位に相当)に留置していたイントロデューサーシースを抜去した後、その穿刺部位220を止血するために使用するものである。
止血器具10は、図1および図2に示すように、手首200に巻き付けるための帯体20と、帯体20を手首200に巻き付けた状態で固定する面ファスナー30(固定部に相当)と、湾曲板40と、第1拡張部50(拡張部に相当)と、第2拡張部60(押圧部材に相当)と、マーカー70と、第1注入部80と、第2注入部81と、を有する。
なお、本明細書中では、帯体20を手首200に巻き付けた状態のとき、帯体20において手首200の体表面に向かい合う側(装着面側)を「内面側」と称し、その反対側を「外面側」と称する。
また、図中、帯体20の長手方向を矢印Xとして示し、帯体20の長手方向と直交する方向を矢印Yとして示している。
帯体20は、可撓性を有する帯状の部材である。帯体20は、図4に示すように、手首200の外周を略一周するように巻き付けられる。図2に示すように、帯体20の中央部には、湾曲板40を保持する湾曲板保持部21が形成されている。湾曲板保持部21は、外面側(または内面側)に別個の帯状の部材が融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法によって接合されることにより、二重になっており、これらの隙間に挿入された湾曲板40を保持する。
帯体20の図1中の左端付近の部分の外面側には、一般にマジックテープ(登録商標)などと呼ばれる面ファスナー30の雄側(または雌側)31が配置されており、帯体20の図1中の右端付近の部分の内面側には、面ファスナー30の雌側(または雄側)32が配置されている。図3および図4に示すように帯体20を手首200に巻き付け、雄側31および雌側32が接合することにより、帯体20が手首200に装着される。なお、帯体20を手首200に巻き付けた状態で固定する手段は、面ファスナー30に限らず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、または帯体20の端部を通す枠部材であってもよい。
帯体20の構成材料は、可撓性を備える材料であれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
帯体20は、実質的に透明であることが好ましいが、透明に限定されず、半透明または有色透明であってもよい。これにより、穿刺部位220を外面側から視認することができ、後述するマーカー70を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
湾曲板40は、図2に示すように、帯体20の二重に形成された湾曲板保持部21の間に挿入されることにより帯体20に保持されている。湾曲板40は、その少なくとも一部が内面側(装着面側)に向かって湾曲した形状をなしている。この湾曲板40は、帯体20よりも硬質な材料で構成されており、ほぼ一定の形状を保つようになっている。
湾曲板40は、帯体20の長手方向(矢印X方向)に長い形状をなしている。この湾曲板40の長手方向の中央部41は、ほとんど湾曲せずに平板状になっており、この中央部41の両側には、それぞれ、内周側に向かって、かつ、帯体20の長手方向(手首200の周方向)に沿って湾曲した第1湾曲部42(図2の左側)および第2湾曲部43(図2の右側)が形成されている。
湾曲板40の構成材料は、穿刺部位220を視認できる材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
湾曲板40は、帯体20と同様に、実質的に透明であることが好ましいが、透明に限定されず、半透明または有色透明であってもよい。これにより、穿刺部位220を外面側から確実に視認することができ、後述するマーカー70を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。なお、湾曲板40は、中央部41のような湾曲していない部分を有さないもの、すなわち、その全長にわたり湾曲しているものであってもよい。
帯体20には、第1拡張部50および第2拡張部60が連結されている。第1拡張部50および第2拡張部60は、流体(空気等の気体もしくは液体)を注入することにより拡張する。第1拡張部50は、手首200の橈骨動脈210に位置する穿刺部位220を押圧する。第2拡張部60は、手首200の体表面を押圧することによって、尺骨動脈230およびその周辺を押圧する。
第1拡張部50は、図2に示すように、第1湾曲部42および中央部41の間の近辺と重なるように位置している。
第1拡張部50の構成材料は、可撓性を備える材料であれば特に限定されず、例えば、前述した帯体20の構成材料と同様のものを用いることができる。また、第1拡張部50は、帯体20と同質または同種の材料で構成されるのが好ましい。これにより、融着による帯体20との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
第1拡張部50は、帯体20および湾曲板40と同様に、実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位220を外面側から視認することができ、後述するマーカー70を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
第1拡張部50の構造は、例えば、図2に示すように、前述したような材料からなる2枚のシート材を重ね、縁部を融着または接着等の方法により接合して袋状に形成したものとすることができる。第1拡張部50の外形は、図1に示すように、拡張していない状態では、四角形である。
第1拡張部50は、図2に示すように、可撓性を有する第1保持部51を介して、帯体20に連結されている。なお、第1保持部51は、湾曲板40の第1湾曲部42側に設けられることが好ましい。また、第1保持部51は、第1拡張部50と同材質で構成されていることが好ましい。これにより、融着による帯体20との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
第2拡張部60は、図2に示すように、帯体20の長手方向において第1拡張部50と異なる位置に配置される。具体的には、第2拡張部60は、第2湾曲部43および中央部41の間の近辺と重なるように配置される。
第2拡張部60の構成材料は、第1拡張部50と同様に、可撓性を備える材料であることが好ましく、例えば、前述した帯体20の構成材料と同様のものを用いることができる。帯体20と同様の材料を用いることによって、第2拡張部60を融着によって帯体20に容易に接合することができる。第2拡張部60は、帯体20および湾曲板40と同様に、実質的に透明であることが好ましい。
第2拡張部60の構造は、第1拡張部50と同様に、前述したような材料からなる2枚のシート材を重ね、縁部を融着または接着等の方法により接合して袋状に形成したものとすることができる。
第2拡張部60は、図2に示すように、可撓性を有する第2保持部61を介して、帯体20に連結されている。なお、第2保持部61は、湾曲板40の第2湾曲部43側に設けられることが好ましい。また、第2保持部61は、第2拡張部60と同材質で構成されていることが好ましい。これにより、融着による帯体20との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
図1に示すように、帯体20の長手方向(矢印X方向)に沿う第2拡張部60の寸法(第2拡張部60の長さL2)は、帯体20の長手方向に対して直交する方向(矢印Y方向)に沿う第2拡張部60の寸法(第2拡張部60の幅W2)よりも短い。つまり、第2拡張部60のアスペクト比を、第2拡張部60の長さL2を第2拡張部の幅W2によって除算した値として定義した場合、第2拡張部60のアスペクト比は1未満の値となる。
また、図1に示すように、第2拡張部60の幅W2は、帯体20の幅W3以下である。そして、第2拡張部60は、帯体20の長手方向の外縁より内側において帯体20に取り付けられている。
また、第2拡張部60の長さL2は、帯体20の長手方向に沿う第1拡張部50の長さL1よりも短い。例えば、第1拡張部50の長さL1を25〜40mmとした場合、第2拡張部60の長さL2は20mm以下となるように構成することができる。
また、拡張した際における第1拡張部50の体積は、拡張した際における第2拡張部60の体積よりも大きい。本実施形態では、第1拡張部50および第2拡張部60は同一の素材からなり、第1拡張部50および第2拡張部60が拡張していない状態において、第1拡張部50の長さL1が第2拡張部60の長さL2よりも長く、かつ、第1拡張部50の幅W1が第2拡張部の幅W2よりも長くなっている。これにより、拡張した際の第1拡張部50の体積が、第2拡張部60の体積よりも大きくなるように構成している。なお、例えば、第1拡張部50の構成材料の弾性率を第2拡張部60の構成材料との弾性率よりも大きくすることによって、拡張した際の第1拡張部50の体積が第2拡張部60の体積よりも大きくなるように構成することも可能である。
また、湾曲板40の長手方向に沿う第1湾曲部42の長さL3と第2湾曲部43の長さL4との関係は、第1拡張部50の長さL1と第2拡張部60の長さL2との関係に対応するように構成される。具体的には、図2、図4に示すように、第1拡張部50が位置する側に設けられる第1湾曲部42の長さL3は、第2拡張部60が位置する側に設けられる第2湾曲部43の長さL4よりも長い。このため、止血器具10を手首200に取り付けた際に、第1湾曲部42および第2湾曲部43はそれぞれ拡張した第1拡張部50および第2拡張部60の形状に合わせて、第1拡張部50および第2拡張部60を手首200に押付けることが可能である。
図2に示すように、第1拡張部50の外面側、すなわち第1拡張部50において手首200の体表面と向かい合わない面には、マーカー70が設けられている。第1拡張部50にこのようなマーカー70を設けることによって、第1拡張部50を穿刺部位220に対して容易に位置合わせすることができるため、第1拡張部50の位置ズレが抑制される。
マーカー70の形状は、特に限定されず、例えば、円、三角形、四角形等が挙げられ、本実施形態では、四角形をなしている。
マーカー70の大きさは、特に限定されないが、例えば、マーカー70の形状が四角形をなしている場合、その一辺の長さが1〜4mmの範囲であることが好ましい。一辺の長さが5mm以上であると、穿刺部位220の大きさに対してマーカー70の大きさが大きくなるため、第1拡張部50の中心部を穿刺部位220に位置合わせし難くなる。
マーカー70の材質は、特に限定されず、例えば、インキ等の油性着色料、色素を混練した樹脂等が挙げられる。
マーカー70の色は、第1拡張部50を穿刺部位220に位置合わせすることができる色であれば特に限定されないが、緑色系が好ましい。緑色系にすることにより、マーカー70を血液や皮膚上で容易に視認することができるため、第1拡張部50を穿刺部位220に位置合わせすることがより容易となる。
また、マーカー70は半透明または有色透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位220をマーカー70の外面側から視認することができる。
第1拡張部50にマーカー70を設ける方法は特に限定されないが、例えばマーカー70を第1拡張部50に印刷する方法、マーカー70を第1拡張部50に融着する方法、マーカー70の片面に接着剤を塗布して第1拡張部50に貼り付ける方法等が挙げられる。
なお、マーカー70は第1拡張部50の内面側に設けてもよい。この際、マーカー70は、穿刺部位220と直接接触しないように第1拡張部50内の内表面等に設けられることが好ましい。
第1注入部80および第2注入部81は、それぞれ第1拡張部50および第2拡張部60内に流体を注入するための部位であり、図1に示すように、それぞれ第1拡張部50および第2拡張部60に接続されている。
第1注入部80は、その基端部が第1拡張部50に接続され、その内腔が第1拡張部50の内部にそれぞれ連通する可撓性を有する第1チューブ82と、第1チューブ82の内腔と連通するように第1チューブ82の先端部に配置された第1袋体84と、第1袋体84にそれぞれ接続された管状の第1コネクタ86と、を備えている。第1コネクタ86には、逆止弁(図示せず)が内蔵されている。
第2注入部81も、同様に、その基端部が第2拡張部60に接続され、その内腔が第2拡張部60の内部にそれぞれ連通する可撓性を有する第2チューブ83と、第2チューブ83の内腔と連通するように第2チューブ83の先端部に配置された第2袋体85と、第2袋体85にそれぞれ接続された管状の第2コネクタ87と、を備えている。第2コネクタ87には、逆止弁(図示せず)が内蔵されている。
第1拡張部50を拡張(膨張)させる際には、第1コネクタ86にシリンジ(図示せず)の先筒部を挿入して逆止弁を開き、このシリンジの押し子を押して、シリンジ内の流体を第1注入部80を介して第1拡張部50内に注入する。第1拡張部50が膨張すると、第1チューブ82を介して第1拡張部50と連通している第1袋体84も膨張し、流体が漏れずに、第1拡張部50を加圧できていることを目視で確認できる。第1拡張部50内に流体を注入した後、第1コネクタ86からシリンジの先筒部を抜去すると、第1コネクタ86に内蔵された逆止弁が閉じて流体の漏出が防止され、第1拡張部50が膨張した状態が維持される。同様の作業を第2拡張部60に接続される第2注入部81に対して行えば、第2拡張部60を膨張させた状態が維持される。
次に、本実施形態に係る止血器具10の使用方法について説明する。
止血器具10を手首200に装着する前は、第1拡張部50および第2拡張部60は、拡張していない状態となっている。手首200に穿刺を行う場合、通常、橈骨動脈210への穿刺部位220は、右手の手首200の親指側へ片寄った位置にある。通常、穿刺部位220にはイントロデューサーシースが留置されている。このイントロデューサーシースが留置されたままの状態の手首200に帯体20を巻き付け、第1拡張部50に設けられたマーカー70が穿刺部位220上に重なるように第1拡張部50および帯体20を位置合わせして、面ファスナー30の雄側31および雌側32を接触させて接合し、帯体20を手首200に装着する。
止血器具10は、第1注入部80および第2注入部81が、橈骨動脈210の血流の下流側に向くように、手首200に対して装着される。これにより、手首よりも上流側での手技や、上流側に位置する器具(例えば、血圧計等)に干渉することなしに、第1注入部80および第2注入部81の操作が可能である。また、止血器具10を、第1注入部80および第2注入部81が下流側に向くように右手の手首200に装着することで、第1拡張部50は、手首200の親指側へ片寄って位置する橈骨動脈210に位置し、第2拡張部60は、尺骨動脈230の周辺に位置する。なお、動脈の場合、血管の上流側とは、血管の心臓に近づく方向をいう。また、血管の下流側とは、血管の心臓から遠ざかる方向をいう。
止血器具10を手首200に装着した後、第1注入部80の第1コネクタ86にシリンジ(図示せず)を接続し、前述したようにして流体を第1拡張部50内に注入し、図4および図5に示すように、第1拡張部50を拡張させて、穿刺部位220を押圧する。このときの流体の注入量により、症例に応じて、第1拡張部50の拡張度合い、すなわち、橈骨動脈210に位置する穿刺部位220への押圧力を容易に調整することができる。
第1拡張部50を拡張させた後、第1コネクタ86からシリンジを離脱させる。そして穿刺部位220からイントロデューサーシースを抜去する。これにより、第1拡張部50は、拡張状態を維持し、穿刺部位220への押圧状態が維持される。
次に、第2注入部81の第2コネクタ87にシリンジ(図示せず)を接続し、前述したようにして流体を第2拡張部60内に注入し、図4および図6に示すように、第2拡張部60を拡張させて、尺骨動脈230を押圧する。このときの流体の注入量により、第2拡張部60の拡張度合い、すなわち、尺骨動脈230の周辺への押圧力を容易に調整することができる。
第1拡張部50および第2拡張部60が拡張すると、湾曲板40は、手首200の体表面から離間して、手首200に接触し難くなる。また、止血器具10を装着した後に第1拡張部50および第2拡張部60を拡張させると、湾曲板40により、第1拡張部50および第2拡張部60の手首200の体表面から離れる方向への拡張が抑制され、第1拡張部50および第2拡張部60の押圧力が手首200側に集中する。このため、第1拡張部50からの押圧力が、穿刺部位220の周辺に集中して作用するため、止血効果を向上させることができる。
また、第1拡張部50が橈骨動脈210を押圧する際に、第2拡張部60が尺骨動脈230を押圧することによって尺骨動脈230に流れる血流の過度な増加を防止し、橈骨動脈210の血流量の減少を抑制することができる。これにより、血管の閉塞を防止し、血小板等の量が減少を抑制することによって穿刺部位220の止血を比較的短時間で行うことができる。
なお、止血の進行具合や経過時間に応じて、第1拡張部50および第2拡張部60への流体の注入量を調整して、第1拡張部50および第2拡張部60の押圧力を調整してもよい。
止血が完了したら、第1拡張部50の穿刺部位220への押圧力をさらに低減させて止血器具10を取り外す。
穿刺部位220の止血が完了して止血器具10を取り外す際には、第1拡張部50を収縮させた後、面ファスナー30の雄側31および雌側32を剥がして止血器具10を手首200から取り外す。なお、止血器具10を取り外す際に、第1拡張部50を収縮させなくてもよい。
以上のように、本実施形態に係る止血器具10は、橈骨動脈210および尺骨動脈230が走行する手首200に巻き付けることが可能な可撓性を備える帯体20と、帯体20を手首200に巻き付けた状態で固定する面ファスナー30と、帯体20に連結されて流体を注入することにより拡張して、橈骨動脈210の穿刺部位220を押圧可能な第1拡張部50と、帯体20の長手方向において第1拡張部50と異なる位置に配置され、尺骨動脈230を押圧可能な第2拡張部60と、を備える。そして、帯体20の長手方向に沿う第2拡張部60の長さL2は、帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第2拡張部60の幅W2よりも短い。
このように構成した止血器具10によれば、橈骨動脈の血流量の減少を抑制して止血効果を高めることができる。また、第2拡張部60の長さL2は、第2拡張部60の幅W2よりも短い。このため、第2拡張部60の手首200と接触する部分は、尺骨動脈230の走行に沿って延在した形状となる。その結果、尺骨動脈230を好適に押圧しつつ、第2拡張部60の尺骨動脈230以外の部位(腱や神経など)の押圧範囲をより狭めることができる。このため、止血器具10の使用時のしびれや痛みを軽減することができる。
また、第2拡張部60の幅W2は、帯体20の幅W3以下である。このため、第2拡張部60が帯体20から外方に突出しない構造となっており、第2拡張部60が止血器具10の取り付け位置の周辺において行われる手技や、他の器具等に干渉しないようにすることができる。
また、第2拡張部60の長さL2は、帯体20の長手方向に沿う第1拡張部50の長さL1よりも短い。第1拡張部50は止血をするために穿刺部位220をしっかりと押圧する必要があるため、穿刺部位220だけでなくその周辺も押圧することが好ましいのに対し、第2拡張部60は、尺骨動脈230の血流量の過度な増加を防ぐために尺骨動脈230のみを押圧できれば十分である。第2拡張部60の長さL2を第1拡張部50の長さL1よりも短くすることによって、第1拡張部50による押圧範囲を確保しつつ、第2拡張部60による尺骨動脈230以外の部位(腱や神経など)の押圧範囲を狭めることができる。
また、第2拡張部60は、流体を注入することによって拡張可能であって、拡張した際における第1拡張部50の体積は、拡張した際における第2拡張部60の体積よりも大きい。第1拡張部50は止血をするために比較的強い圧迫力が求められるのに対し、第2拡張部60は尺骨動脈230の血流量の過度な増加を防げる程度に尺骨動脈230を押圧できれば十分であり、第1拡張部50ほど強い押圧力は必要ない。拡張した際の体積が大きいほうが手首200はより強く押圧されるため、拡張した際の第1拡張部50の体積を第2拡張部60の体積よりも大きくなるように構成することによって、第1拡張部50による押圧力を確保しつつ、第2拡張部60による押圧力を小さくすることができる。
(変形例)
まず、変形例1〜4に係る第2拡張部160、260、360、460について説明する。以下、前述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
前述した実施形態に係る第2拡張部60は、拡張していない状態における外形が長方形であるのに対し(図1参照)、変形例1に係る第2拡張部160の外形は台形である(図7(A)参照)。第2拡張部160は、第2保持部161を介して帯体20に連結される。また、帯体20の長手方向に沿う第2拡張部160の最大長さL21(台形のY方向に伸びる2本の辺の最大離間距離)は、帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第2拡張部160の最大幅W21よりも短い。
また、変形例2に係る第2拡張部260の外形は六角形である(図7(B)参照)。第2拡張部260は、第2保持部261を介して帯体20に連結されている。また、帯体20の長手方向に沿う第2拡張部260の最大長さL22(帯体20の長手方向に沿って向い合う六角形の頂点間の距離のうち最大離間長さ)は、帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第2拡張部260の最大幅W22よりも短い。
また、変形例3に係る第2拡張部360の外形は、帯体20の長手方向と直交する方向に長い長方形と、当該長方形の2つの長辺のそれぞれの略中央部分から帯体20の長手方向に沿って外方に矩形状に突出した2つの突出部とを備えるクロス形状である(図7(C)参照)。第2拡張部360は、第2保持部361を介して帯体20に連結されている。また、帯体20の長手方向に沿う第2拡張部360の最大長さL23(一方の突出部のY方向に伸びている縁部と他方の突出部のY方向に伸びている縁部との間の距離)は、帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第2拡張部360の最大幅W23よりも短い。
また、変形例4に係る第2拡張部460の外形は楕円形状である(図7(D)参照)。第2拡張部460は、第2保持部461を介して帯体20に連結されている。また、帯体20の長手方向に沿う第2拡張部460の最大長さL24は、帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第2拡張部460の最大幅W24よりも短い。
上記変形例1から4に係る止血器具10によれば、止血器具10を手首200に取り付けた際に第2拡張部160、260、360、460の手首200と接触する部分は、尺骨動脈230の走行に沿って延在する形状となる。このため、第2拡張部160、260、260、460によって尺骨動脈230を好適に押圧することが可能となる一方で、尺骨動脈230以外の部位(腱や神経など)の押圧範囲を減少させることが可能となる。その結果、止血器具10の使用時に使用者が感じるしびれや痛みを軽減させることができる。
以上、変形例1〜4において説明したように、第2拡張部の拡張していない状態において平面視される外形は、帯体20の長手方向に沿う第2拡張部の最大長さが、帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第2拡張部の最大長さよりも短ければ、前述した実施形態において説明した長方形形状に限定されない。
次に、変形例5、6に係る第2拡張部560、660について説明する。
前述した実施形態に係る第2拡張部60は、平坦な2枚の長方形のシートを重ね合わせ、それらの縁部を接合することによって構成される(図1参照)。これに対して変形例5に係る第2拡張部560は、拡張した際の第2拡張部560の外形形状が錘台形状となるように、平坦な1枚のシートに、中央部分が突出したシートを重ね合わせ、それらの縁部を接合することによって構成される(図8(A)参照)。第2拡張部560は、第2保持部561を介して帯体20に連結されている。
第2拡張部560は、膨らませた場合に面積が最も広い第1表面562において帯体20と接触し、錘台形状の先細りした端面である第2表面563側において手首200と接触する。そして、帯体20の長手方向に沿う第2表面563の長さL25は、帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第2表面563の幅W25よりも短い。
上記変形例5に係る止血器具10によれば、止血器具10を手首200に取り付けた際に第2拡張部560の手首200と接触する部分は、尺骨動脈230の走行に沿って延在する形状となる。このため、第2拡張部560によって尺骨動脈230を押圧することが可能となる一方で、尺骨動脈230周辺の腱や神経などの尺骨動脈230以外の押圧範囲を減少させることが可能となる。その結果、止血器具10の使用時に使用者が感じるしびれや痛みを軽減させることができる。
このように、第2表面563の長さL25とW25との間において上記の関係が成り立てば、帯体20の長手方向に沿う第1表面562の長さL26、および帯体20の長手方向に対して直交する方向に沿う第1表面562の幅W26の関係は、制限されない。例えば、第1表面562の長さL26は、第1表面562の幅W26以上であってもよい。
また、変形例6に係る第2拡張部660の拡張した際の外形形状は、変形例5と異なり、三角柱である(図8(B)参照)。この場合は、三角柱の先細りする先端部付近おいて、尺骨動脈230を押圧する。このため、止血器具10を手首200に取り付けた際に第2拡張部660の手首200と接触する部分は、尺骨動脈230の走行に沿って延在する形状となる。したがって、第2拡張部660によって尺骨動脈230を好適に押圧することが可能となる一方で、尺骨動脈230以外の部位(腱や神経など)押圧範囲を減少させることが可能となる。その結果、止血器具10の使用時に使用者が感じるしびれや痛みを軽減させることができる。
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る止血器具を説明したが、本発明は説明した各構成のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
例えば、止血器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明は、手首に装着して使用する止血器具に限らず、腕において橈骨動脈および尺骨動脈の走行するいかなる部分に装着して使用する止血器具にも適用することができる。
また、押圧部材は、流体を注入して拡張するものに限定されず、例えば、金属、プラスチック等の材料から形成されていてもよい。
また、第1拡張部の押圧方向を調整するために、第1拡張部と帯体の間において第1拡張部と重なるように第1拡張部を圧迫する補助圧迫部を設けてもよい。補助圧迫部は、例えば、第1拡張部と同様に流体を注入することによって拡張させてもよいし、スポンジ状の物質、弾性材料、綿のような繊維の集合体、またはこれらの組合せなどを用いてもよい。
また、第1拡張部の外形は、拡張していない状態において四角形に限定されず、例えば、円形、楕円形、五角形等の多角形であってもよい。
また、マーカーは、第1拡張部に設けるのではなく、帯体、湾曲板、補助圧迫部に設けてもよい。また、マーカーは、第1拡張部の中心部に重なるように設けることがさらに好ましい。