以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の実施形態に係る止血器具1は、図3に示すように、治療・検査などを行うカテーテル等を血管内に挿入する目的で手首200(肢体に相当)の橈骨動脈210に形成された穿刺部位220(止血すべき部位に相当)に留置していたイントロデューサーシースを抜去した後、その穿刺部位220を止血するために使用するものである。止血器具1は、図1および図2に示すように、手首200に巻き付けるための帯体2と、帯体2を手首200に巻き付けた状態で固定する面ファスナー3(固定部に相当)と、湾曲板4と、拡張部5と、パッド部6と、マーカー7と、注入部8と、を有する。
なお、本明細書中では、帯体2を手首200に巻き付けた状態のとき、帯体2において手首200の体表面に向かい合う側(装着面側)を「内面側」と称し、その反対側を「外面側」と称する。
帯体2は、可撓性および透光性を有する帯状の部材である。帯体2は、手首200の外周を略一周するように巻き付けられる。帯体2の中央部には、湾曲板4を保持する湾曲板保持部21が形成されている。湾曲板保持部21は、外面側(または内面側)に別個の帯状の部材が融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法によって接合されることにより、二重になっており、これらの隙間に挿入された湾曲板4を保持する。
帯体2の図1中の左端付近の部分の外面側には、一般にマジックテープ(登録商標)などと呼ばれる面ファスナー3の雄側(または雌側)31が配置されており、帯体2の図1中の右端付近の部分の内面側には、面ファスナー3の雌側(または雄側)32が配置されている。帯体2を手首200に巻き付け、雄側31および雌側32が接合することにより、帯体2が手首200に装着される。なお、帯体2を手首200に巻き付けた状態で固定する手段は、面ファスナー3に限らず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、または帯体2の端部を通す枠部材であってもよい。
帯体2の構成材料は、可撓性および透光性を備える材料であれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
帯体2は、実質的に透明であることが好ましいが、透光性を備えていれば透明に限定されず、半透明または有色透明であってもよい。これにより、穿刺部位220を外面側から視認することができ、後述するマーカー7を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
なお、本明細書において「透光性を備える」とは、光を透過することにより、物体を隔てた内面側を外面側から視認が可能であることを意味する。また、「外面側から視認する」とは、穿刺部位220の面に対して法線方向から目視により確認する場合に限られず、法線方向に対して傾斜した方向から目視により確認する場合も含む。
湾曲板(硬質板)4は、図2に示すように、帯体2の二重に形成された湾曲板保持部21の間に挿入されることにより帯体2に保持されている。湾曲板4は、その少なくとも一部が内面側(装着面側)に向かって湾曲した形状をなしている。この湾曲板4は、帯体2よりも硬質な材料で構成されており、ほぼ一定の形状を保つようになっている。
湾曲板4は、帯体2の長手方向に長い形状をなしている。この湾曲板4の長手方向の中央部41は、ほとんど湾曲せずに平板状になっており、この中央部41の両側には、それぞれ、内周側に向かって、かつ、帯体2の長手方向(手首200の周方向)に沿って湾曲した湾曲部42が形成されている。
湾曲板4の構成材料は、透光性を備える材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
湾曲板4は、帯体2と同様に、実質的に透明であることが好ましいが、透光性を備えていれば透明に限定されず、半透明または有色透明であってもよい。これにより、穿刺部位220を外面側から確実に視認することができ、後述するマーカー7を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。なお、湾曲板4は、中央部41のような湾曲していない部分を有さないもの、すなわち、その全長にわたり湾曲しているものであってもよい。
帯体2には、可撓性および透光性を備える材料で構成された拡張部5が連結されている。拡張部5は、流体(空気等の気体もしくは液体)を注入することにより拡張し、手首200の穿刺部位220を圧迫する。
拡張部5は、図2に示すように、帯体2に保持されている湾曲板4の長手方向の一端側に片寄って重なるように位置している。すなわち、図示の構成では、拡張部5は、湾曲板4の図2中の左端側の湾曲部42および中央部41の間の近辺と重なるように位置している。
なお、拡張部5が湾曲板4の長手方向の一端側に片寄って重なるように位置している場合、湾曲板4の両側に位置する湾曲部42は、拡張部5が位置する側(湾曲板4の一端側)の湾曲部42の方が、その反対側(湾曲板4の他端側)よりも長手方向に長くなっている。これにより、止血器具1を手首200に装着して拡張部5を拡張した際、湾曲板4の他端側の湾曲部42が手首に接触し、疼痛等の痛みが生じるリスクを抑制することができる。
拡張部5の構成材料は、可撓性および透光性を備える材料であれば特に限定されず、例えば、前述した帯体2の構成材料と同様のものを用いることができる。また、拡張部5は、帯体2と同質または同種の材料で構成されるのが好ましい。これにより、融着による帯体2との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
拡張部5は、帯体2および湾曲板4と同様に、実質的に透明であることが好ましいが、透光性を備えていれば透明に限定されず、半透明または有色透明であってもよい。これにより、穿刺部位220を外面側から視認することができ、後述するマーカー7を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
拡張部5の構造は、例えば、前述したような材料からなる2枚のシート材を重ね、縁部を融着または接着等の方法により接合して袋状に形成したものとすることができる。拡張部5の外形は、図1に示すように、拡張していない状態では、四角形である。
拡張部5は、可撓性を有する保持部51を介して、帯体2に連結されている。なお、保持部51は、拡張部5と同材質で構成されていることが好ましい。
拡張部5において手首200の体表面と向かい合う面5bは、撥水性を備える。なお、拡張部5において手首200の体表面と向かい合う面5bに撥水性を備える材料を塗布してもよいし、拡張部5自体が撥水性を備える材料によって形成されてもよい。拡張部5において手首200の体表面と向かい合う面5bが撥水性を備えることにより、穿刺部位220から流れ出した体液が拡張部5に付着することを防止し、血液等の付着によって透光性が失われることを抑制することができる。
図2に示すように、拡張部5の外表面には、パッド部6が固定されている。具体的には、拡張部5において手首200の体表面と向かい合う面5bは、パッド部6が固定されている。
また、パッド部6の拡張部側に配置される面である第1表面63aは、拡張部5において手首200の体表面と向かい合う面5bに固定され、パッド部6の第1表面63aの対面側に配置される面である第2表面63bは、帯体2を手首に巻き付けた状態のとき、手首200の体表面に接触するように配置される。具体的には、パッド部6の外面側の面である第1表面63aは、拡張部5において手首200の体表面と向かい合う面5bに固定され、パッド部6の内面側の面である第2表面63bは、帯体2を手首200に巻き付けた状態のとき、手首200の体表面に接触するように配置される。
パッド部6は、透光性を備える窓部61と、窓部61の外周を囲むように形成された液体吸収部62と、を備える。
窓部61は、パッド部6の第1表面63aから第2表面63bにかけて厚み方向に貫通する空間によって形成される。すなわち、窓部61は、パッド部6の中央部に形成された貫通孔である。このように窓部61を空間によって形成することによって、窓部61に部材を介在させないため、良好な透光性を備えさせることができ、より確実に穿刺部位220から体液が流れ出ているか否かを目視で確認することができる。また、窓部61である空間に穿刺部位220から流れ出した液体を留めておくことができるため、液体吸収部62による体液の吸収をより確実に行うことができる。
窓部61の形状は、特に限定されないが、本実施形態のように円形にすることが好ましい。窓部61の形状を円形にすることによって、パッド部6の中心位置を把握し易くなり、パッド部6を穿刺部位220に対して容易に位置合わせすることができる。
液体吸収部62は、窓部61に拡張部5の中心部52が配置されるように、拡張部5において手首200の体表面と向かい合う面5bに固定される。液体吸収部62の外周縁の形状は、特に限定されないが、図1に示す平面視において、曲線状であることが好ましい。例えば、本実施形態のように円形に形成することができる。液体吸収部62の外周縁を曲線状に形成することによって、帯体2を手首200に巻き付けて、液体吸収部62の外周縁を湾曲した手首200に沿わせた際に、液体吸収部62の外周に折り目(尾根筋)等が形成されにくい。これにより、折り目等が手首200の体表面に当たることによって生じる痛みを軽減することができる。
液体吸収部62を拡張部5に固定する方法は特に限定されないが、例えば第1表面63aに接着剤を塗布して拡張部5に貼り付ける方法等が挙げられる。
液体吸収部62の構成材料は、液体の吸収性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ガーゼ、織布、不織布または親水性ポリマー等の液体の吸収性を有する樹脂が挙げられる。なお、液体吸収部62が吸収対象とする液体は、主として、血液やリンパ液等の体液である。
パッド部6の寸法は、液体吸収部62の外周縁の形状や拡張部5の寸法に応じて適宜選択できる。例えば、液体吸収部62の外周縁の形状が円形をなしている場合、その直径は10〜40mmに形成することができる。また、パッド部6の厚さは0.1〜10mmに形成することができる。
液体吸収部62は、拡張部5よりも液体の吸収性が高く形成される。このため、窓部61の外面側に配置される拡張部5に血液等の体液が吸収されにくく、窓部61の外周に形成された液体吸収部62に当該体液が吸収される。これによって、窓部61の外面側に配置される拡張部5の透光性が血液等の体液によって失われることを抑制することができ、穿刺部位220の外面側からの視認性を維持することができる。
拡張部5の外面側、すなわち拡張部5において手首200の体表面と向かい合わない面5aには、マーカー7が設けられている。拡張部5にこのようなマーカー7を設けることによって、拡張部5を穿刺部位220に対して容易に位置合わせすることができるため、拡張部5の位置ズレが抑制される。
また、マーカー7は、パッド部6の窓部61の外周で囲まれた範囲に配置されている。これにより、マーカー7の位置を目視で確認できるため、窓部61を介してマーカー7を穿刺部位220に位置合わせし、拡張部5の押圧力を穿刺部位220に対して作用させることができる。さらに、マーカー7は、拡張部5の中心部52、すなわち拡張部5の外形をなす四角形の対角線の交点を中心として設けることが好ましい。これにより、拡張部5の中心部52を穿刺部位220に位置合わせすることが可能となるため、拡張部5を拡張させた際に、拡張部5の押圧力を穿刺部位220に対して確実に作用させることができる。
マーカー7の形状は、特に限定されず、例えば、円、三角形、四角形等が挙げられ、本実施形態では、四角形をなしている。
マーカー7の大きさは、特に限定されないが、例えば、マーカー7の形状が四角形をなしている場合、その一辺の長さが1〜4mmの範囲であることが好ましい。一辺の長さが5mm以上であると、穿刺部位220の大きさに対してマーカー7の大きさが大きくなるため、拡張部5の中心部52を穿刺部位220に位置合わせし難くなる。
マーカー7の材質は、特に限定されず、例えば、インキ等の油性着色料、色素を混練した樹脂等が挙げられる。
マーカー7の色は、拡張部5を穿刺部位220に位置合わせすることができる色であれば特に限定されないが、緑色系が好ましい。緑色系にすることにより、マーカー7を血液や皮膚上で容易に視認することができるため、拡張部5を穿刺部位220に位置合わせすることがより容易となる。
また、マーカー7は半透明または有色透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位220をマーカー7の外面側から視認することができる。
拡張部5にマーカー7を設ける方法は特に限定されないが、例えばマーカー7を拡張部5に印刷する方法、マーカー7を拡張部5に融着する方法、マーカー7の片面に接着剤を塗布して拡張部5に貼り付ける方法等が挙げられる。
なお、マーカー7は拡張部5の内面側に設けてもよい。この際、マーカー7は、穿刺部位220と直接接触しないように拡張部5内の内表面等に設けられることが好ましい。
注入部8は、拡張部5内に流体を注入するための部位であり、図1に示すように、拡張部5に接続されている。注入部8は、その基端部が拡張部5に接続され、その内腔が拡張部5の内部に連通する可撓性を有するチューブ81と、チューブ81の内腔が連通するようにチューブ81の先端部に配置された袋体82と、袋体82に接続された管状のコネクタ83とを備えている。コネクタ83には、逆止弁(図示せず)が内蔵されている。
拡張部5を拡張(膨張)させる際には、コネクタ83にシリンジ(図示せず)の先筒部を挿入して逆止弁を開き、このシリンジの押し子を押して、シリンジ内の流体を注入部8を介して拡張部5内に注入する。拡張部5が膨張すると、チューブ81を介して拡張部5と連通している袋体82も膨張し、流体が漏れずに、拡張部5を加圧できていることを目視で確認できる。拡張部5内に流体を注入した後、コネクタ83からシリンジの先筒部を抜去すると、コネクタ83に内蔵された逆止弁が閉じて流体の漏出が防止され、拡張部5が膨張した状態が維持される。
次に、本実施形態に係る止血器具1の使用方法について説明する。
止血器具1を手首200に装着する前では、拡張部5は、拡張していない状態となっている。手首200に穿刺を行う場合、通常、橈骨動脈210への穿刺部位220は、右手の手首200の親指側へ片寄った位置にある。また、穿刺部位220にはイントロデューサーシースが留置されている。このイントロデューサーシースが留置されたままの状態の手首200に帯体2を巻き付け、拡張部5に設けられたマーカー7が穿刺部位220上に重なるように拡張部5および帯体2を位置合わせして、面ファスナー3の雄側31および雌側32を接触させて接合し、帯体2を手首200に装着する。この際、止血器具1は、拡張部5に連結される注入部8が、橈骨動脈210の血流の下流側に向くように、手首200に対して装着される。これにより、手首よりも上流側での手技や、上流側に位置する器具(例えば、血圧計等)に干渉することなしに、注入部8の操作が可能である。また、止血器具1を、注入部8が下流側に向くように右の手首200に装着することで、湾曲板4の一方側に片寄って重なるように配置される拡張部5は、手首200の親指側へ片寄って位置する橈骨動脈210に位置する。なお、動脈の場合、血管の上流側とは、血管の心臓に近づく方向をいう。また、血管の下流側とは、血管の心臓から遠ざかる方向をいう。
止血器具1を手首200に装着した後、注入部8のコネクタ83にシリンジ(図示せず)を接続し、前述したようにして流体を拡張部5内に注入し、図3および図4に示すように、拡張部5を拡張させて、穿刺部位220を圧迫する。このときの流体の注入量により、症例に応じて、拡張部5の拡張度合い、すなわち、穿刺部位220への圧迫力を容易に調整することができる。
拡張部5を拡張させた後、コネクタ83からシリンジを離脱させる。そして穿刺部位220からイントロデューサーシースを抜去する。これにより、拡張部5は、拡張状態を維持し、穿刺部位220への圧迫状態が維持される。
拡張部5が拡張すると、湾曲板4は、手首200の体表面から離間して、手首200に接触し難くなる。また、止血器具1は、止血器具1を装着した後に拡張部5を拡張させると、湾曲板4により、拡張部5の手首200の体表面から離れる方向への拡張が抑制され、拡張部5の圧迫力が止血する血管に集中する。これにより、拡張部5からの圧迫力が、穿刺部位220の周辺に集中して作用するため、止血効果が向上するとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫するのを回避することができ、手のしびれや血行不良などを生じるのを有効に防止することができる。
穿刺部位220を所定時間圧迫した後、止血状態を確認する場合は、注入部8のコネクタ83にシリンジを接続し、拡張部5内の流体をシリンジにより吸引して排出して、拡張部を減圧させて、穿刺部位220への圧迫力を低減させる。その後、パッド部6が備える窓部61を介して穿刺部位220から血液等の液体(体液)が流れ出ているか否かを目視で確認する。このとき、穿刺部位220を加圧する拡張部5に液体を吸収可能なパッド部6が固定されているため、拡張部5の減圧時等に穿刺部位220から体液が流れ出したとしても、パッド部6により血液等の体液が穿刺部位220の周囲に流れ出すことを抑制することができる。また、パッド部6が窓部61を備えるため、穿刺部位220から体液が流れ出ているか否かを目視で容易に確認することができる。
穿刺部位220から体液が流れ出ていない場合は、止血が完了しているため、穿刺部位220への圧迫力をさらに低減させて止血器具1を取り外す。
穿刺部位220から体液が流れ出ている場合は、止血が完了していないため、再び拡張部5を拡張(加圧)させて、穿刺部位220への圧迫力を増加させる。拡張部5の加圧、拡張部5の減圧、および穿刺部位220から体液が流れ出ているか否かの確認の一連の動作を穿刺部位220から体液が流れ出なくなるまで繰り返す。これにより、所定時間の間隔で拡張部5を減圧して止血の確認を行うため、止血が完了するタイミングをより正確に図ることができる。よって、穿刺部位220が長時間にわたって圧迫されることによるしびれや痛みを軽減することができる。また、穿刺部位への拡張部による圧力の調整を容易に行うことができる。穿刺部位220から体液が流れ出なくなり、止血が完了したら止血器具1を取り外す。
穿刺部位220の止血が完了して止血器具1を取り外す際には、拡張部5を収縮させた後、面ファスナー3の雄側31および雌側32を剥がして止血器具1を手首200から取り外す。なお、止血器具1を取り外す際に、拡張部5を収縮させなくてもよい。
また、止血器具1は、止血器具1を取り外す前において、穿刺部位220付近への拡張部5による圧力を調節するため、経時的に拡張部5を減圧する操作を行ってもよい。
以上のように、本実施形態に係る止血器具1は、手首200の止血すべき部位に巻き付けることが可能な可撓性を備える帯体2と、帯体2を手首200に巻き付けた状態で固定する面ファスナー3と、帯体2に連結され、流体を注入することにより拡張する拡張部5と、拡張部5の外表面に固定されたパッド部6と、を備える。パッド部6は、透光性を備える窓部61と、窓部61の外周を囲むように形成された液体吸収部62と、を有し、窓部61は、拡張部5の中心部52を囲むように配置される。
このように構成した止血器具1によれば、穿刺部位220を加圧する拡張部5に液体を吸収可能なパッド部6が固定されているため、拡張部5の減圧時等に穿刺部位220から血液等の液体(体液)が流れ出したとしても、パッド部6により血液等の体液が穿刺部位220の周囲に流れ出すことを防止することができる。これによって、パッド部6が窓部61を備えるため、穿刺部位220から体液が流れ出ているか否かを目視で容易に確認することができ、穿刺部位220への拡張部5による圧力の調整を容易に行うことができる。また、穿刺部位220が長時間にわたって圧迫されることによるしびれや痛みを簡便な手段で軽減することができる。
また、拡張部5を止血すべき部位に位置合わせするためのマーカー7を備え、マーカー7は、窓部61の外周で囲まれた範囲に配置される。このため、止血器具1は、マーカー7を穿刺部位220に位置合わせすることで、拡張部5により、体表面の望ましい位置に対して圧迫することができる。よって、止血器具1は、拡張部5の位置ズレを抑制でき、穿刺部位220をより確実に止血することができる。また、マーカー7は窓部61に配置されるため、窓部61を介してマーカー7を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
また、マーカー7は、拡張部5の中心部52に配置される。このため、止血器具1は、マーカー7により、拡張部5の中心部52を穿刺部位220に位置合わせすることが可能となる。そのため、拡張部5を拡張させた際、拡張部5の押圧力を穿刺部位220に対して確実に作用させることができる。
また、液体吸収部62の外周縁は、曲線状に形成される。このため、帯体2を手首200に巻き付けて、液体吸収部62の外周縁を湾曲した手首200に沿わせた際に、液体吸収部62の外周に折り目(尾根筋)等が形成されにくい。よって、折り目等が手首200の体表面に当たることによって生じる痛みを軽減することができる。
また、液体吸収部62は、拡張部5よりも液体の吸収性が高く形成される。このため、窓部61の外面側に配置される拡張部5に血液等の体液が吸収されにくく、窓部61の外周に形成された液体吸収部62に当該体液が吸収される。よって、窓部61の外面側に配置される拡張部5が血液等の付着によって透光性が失われることを抑制し、穿刺部位220の外面側からの視認性を維持することができる。
また、パッド部6は、拡張部側に配置される第1表面63aと、第1表面63aの対面側に配置される第2表面63bと、を有する。窓部61は、第1表面63aから第2表面63bにかけて厚み方向に貫通する空間である。このため、窓部61の透光性をさらに高めることができるため、より確実に穿刺部位220から体液が流れ出ているか否かを目視で確認することができる。また、窓部61である空間に穿刺部位220から漏れ出した体液を留めておくことができるため、液体吸収部62による体液の吸収をより確実に行うことができる。
(第1変形例)
第1変形例に係る止血器具11は、パッド部16が備える窓部161の構成が前述した実施形態と異なり、他の構成は前述した実施形態と実質的に同様である。以下、前述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
前述した実施形態に係る窓部61は、パッド部6の第1表面63aから第2表面63bにかけて厚み方向に貫通する空間によって形成されるとしたが、第1変形例に係る止血器具11の窓部161は、図6に示すように透光性を有する材料によって形成される。
透光性を有する材料としては、例えば、フィルム状の樹脂やガラス等が挙げられる。
以上のように、第1変形例に係る窓部161は、透光性を有する材料で形成されるため、パッド部16の内面側の面である第2表面163bにおいて、液体吸収部162および窓部161の段差を低減させることができる。これによって、穿刺部位220が長時間にわたって圧迫されることによるしびれや痛みをさらに軽減することができる。
(第2変形例)
第2変形例に係る止血器具12は、拡張部5と帯体2との間に補助圧迫部15をさらに有する。他の構成は前述した実施形態と実質的に同様である。以下、前述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
補助圧迫部15は、図7に示すように、可撓性を有する材料で構成され、拡張部5と帯体2との間に拡張部5と重なるように配置される。この補助圧迫部15は、拡張部5を押圧する押圧部材として機能する。補助圧迫部15は、拡張部5と連通しており、拡張部5に流体を注入して拡張させることで同時に拡張する。
なお、拡張部5を押圧する押圧部材は、補助圧迫部15に限らず、例えば、スポンジ状の物質、弾性材料、綿(わた)のような繊維の集合体、またはこれらの組み合わせなどによって形成された部材であってもよい。
以上のように、第2変形例に係る止血器具12は、補助圧迫部15をさらに有することによって、拡張部5による手首200への圧迫方向を容易に調整可能とし、操作性を向上させるとともに、止血効果をより一層向上させることができる。
以上、実施形態および各変形例を通じて本発明に係る止血器具を説明したが、本発明は説明した各構成のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。例えば、止血器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の止血器具は、手首に装着して使用するものに限らず、腕または脚(本明細書では、これらを総称して「肢体」という)のいかなる部分に装着して使用する止血器具にも適用することができる。
また、帯体、湾曲板および拡張部は、全体が透光性を備える構成に限定されず、帯体を肢体に巻き付けて固定した際に、窓部に対して重なり合う部分が透光性を備えていればよい。
また、拡張部の外形は、拡張していない状態において四角形に限定されず、例えば、円形、楕円形、五角形等の多角形であってもよい。この場合、拡張部の中心部は、拡張部の外形をなす形状の中心である。
また、マーカーは、拡張部に設けるのではなく、帯体、湾曲板、補助圧迫部に設けてもよい。この場合、マーカーがパッド部の窓部の外周で囲まれた範囲に重なるように設けることが好ましい。また、マーカーは、拡張部の中心部に重なるように設けることがさらに好ましい。
また、拡張部を穿刺部位に位置合わせするためのマーカーを備えるとしたが、マーカーを備えない構成としてもよい。この場合は、パッド部が備える窓部を拡張部の位置合わせとして使用することができる。
また、窓部の形状は、円形に限定されず、例えば楕円形や四角形等の多角形であってもよい。液体吸収部の形状は、窓部の外周を囲む形状であれば円形に限定されず、例えば楕円形や四角形等の多角形であってもよい。さらに、窓部の形状と液体吸収部の形状は、同じ形状に限定されず、それぞれ異なる形状であってもよい。
また、拡張部の中心位置は、窓部に収まるように配置されていればよく、窓部の中心に位置合わせして配置されていなくてもよい。