JP6610267B2 - フッ素化炭化水素の製造方法 - Google Patents
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Description
高純度化されたフッ素化炭化水素は、特に、プラズマ反応を用いた半導体装置の製造分野において、プラズマエッチング用ガス及びプラズマCVD用ガス等に好適である。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、使用するフッ素化剤自体が非常に高価であり、特許文献3に記載の方法では、発火の危険性のあるアルキルリチウムを使用するものである。また、本発明者が、非特許文献1の記載に従って、無溶媒下で同文献記載の反応を試みたところ、副生成物である、メチルアルキルエーテルのメチル基部分がフッ素化剤由来のアセチル基で置換された、酢酸アルキルエステルが多く副生することが確認された。
このように、従来の2−フルオロブタンの製造方法は、工業的生産性の観点から、適用が困難であるという問題があった。
本発明はかかる実情の下でなされたものであり、2−フルオロブタン等のフッ素化炭化水素を工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。
(i)炭化水素系溶媒中、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒の存在下に、構造式(1)
で示されるエーテル化合物と、構造式(2)
で示される酸フルオリドとを接触させることを特徴とする、構造式(3)
で示されるフッ素化炭化水素の製造方法。
(ii)前記三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を構成するポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、30,000〜360,000である、(i)に記載の製造方法。
(iii)前記構造式(1)で示されるエーテル化合物が、sec−ブチルメチルエーテル、sec−ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル又は2−ペンチルメチルエーテルである、(i)又は(ii)に記載の製造方法。
(v)前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素が、2−フルオロブタンである、(i)〜(iv)のいずれかに記載の製造方法。
(vi)前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に用いた、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を回収し、回収した三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を、前記しき(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に再利用することを特徴とする、(i)〜(v)のいずれかに記載の製造方法。
(a)反応により生成する目的物と三フッ化ホウ素との過度な接触を避けることができ、結果として、目的物の分解を抑制することができる。
(b)三フッ化ホウ素エーテル錯体由来のエーテル化合物(不純物)の生成も抑制できる。
(c)三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を回収し、再使用すること、あるいは、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を水に溶解させて、反応器から排出させること、により、廃棄物量の削減、反応後の後処理簡素化を図ることができる。
(d)反応液が褐色から黒色に着色し、反応器内が汚れるといった不具合を起こすことがない。
本発明は、炭化水素系溶媒中、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒(以下「三フッ化ホウ素−PVP担持触媒」ということがある。)の存在下に、前記構造式(1)で示されるエーテル化合物(以下、「エーテル化合物(1)」ということがある。)と、前記構造式(2)で示される酸フルオリド(以下、「酸フルオリド(2)」ということがある。)を接触させることを特徴とする、前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素(以下、「フッ素化炭化水素(3)」ということがある。)を製造する方法である。
本発明においては、出発原料としてエーテル化合物(1)を用いる。
前記構造式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、
R3は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R4はメチル基又はエチル基である。
また、R1とR2は結合して環構造を形成していても良いが、環構造を形成していないのが好ましい。
R1とR2が結合して形成する環構造としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等を挙げられる。
本発明においては、フッ素化剤として、酸フルオリド(2)を用いる。
前記構造式(2)中、R5はメチル基又はエチル基である。
酸フルオリド(2)の具体例としては、フッ化アセチル、フッ化プロピオニルが挙げられ、より収率よく目的物が得られる観点から、フッ化アセチルが好ましい。
酸フルオリド(2)の使用量がこの範囲であれば、生産性に優れ、また、後処理や精製工程が煩雑にならずに済むので好ましい。
酸フルオリド(2)の内、フッ化プロピオニルを使用した場合には、同様に、それぞれプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルに変換される。
本発明においては、触媒として、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を使用する。
三フッ化ホウ素−PVP担持触媒は、例えば、Comptes Rendus Chimie,Vol.15,530(2012)に記載の方法や、Monatshefte fur Chemie,Vol.140,53(2009)に記載の方法に従い調製することができる。いずれの方法も、ポリビニルピロリドンを塩化メチレンに溶解させ、そのポリマー溶液に、三フッ化ホウ素錯体を接触させ、析出するポリマー(三フッ化ホウ素−PVP担持触媒)を濾過分離、溶媒洗浄後、乾燥させて調製する方法である。
これらの中でも、ジメチルエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体、t−ブチルメチルエーテル錯体、ジブチルエーテル錯体、テトラヒドロフラン錯体等のエーテル化合物錯体が好ましく、ジエチルエーテル錯体、テトラヒドロフラン錯体、メタノール錯体が、取扱い易さの観点からより好ましい。
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が小さすぎると、本反応で使用する溶媒の種類によっては、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒自体が溶解、もしくは半溶解状態になり、反応終了後の触媒回収が困難になるおそれがある。一方、重量平均分子量が大きすぎると、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を調製する際、三フッ化ホウ素エーテル錯体を接触させた後に析出するポリマー(三フッ化ホウ素−PVP担持触媒)自体が非常に粘ちょうになり、濾過分離が困難になる、すなわち、触媒調製自体が困難になるといった不具合を生じる。
ポリビニルピロリドンとしては、市販品をそのまま使用しても構わないし、あるいは、ビニルピロリドンをモノマーとして任意の重量平均分子量に重合したものを用いることもできる。
担持濃度が低すぎると、反応速度が遅くなり、反応が完結するまでに多大な時間を要したり、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒の使用量を多くする必要がある。一方、担持濃度が高すぎると、触媒として繰り返し使用する場合に活性低下を招き、再度、三フッ化ホウ素エーテル錯体と接触させて活性化を行う必要が生じる等、取扱いに注意を払う必要がある。
本発明においては、溶媒として炭化水素系溶媒を用いる。
無溶媒であると、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒が均一に分散しない事象に起因して、副生成物であるオレフィンや、アルキルカルボン酸エステルの生成量が多くなったり、反応終了後に生成する目的物や副生成物が三フッ化ホウ素−PVP担持触媒への吸着による回収ロスを生じる場合がある。よって、これらの点を改善する観点からも炭化水素系溶媒下で反応を行うことが望ましい。
炭化水素系溶媒としては、具体的には、n−ペンタン、シクロペンタン等の炭素数5の炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の炭素数6の炭化水素系溶媒;n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン等の炭素数7の炭化水素系溶媒;n−オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、シクロオクタン等の炭素数8の炭化水素系溶媒;等が挙げられる。また、炭化水素系溶媒同士が異性体の関係にある場合は、それらの混合物を炭化水素系溶媒として使用してもよい。
炭化水素系溶媒の使用量が少なすぎると、副生成物であるアルキルエステルの生成量が多くなり、使用量が多すぎると、反応が完結するまでに多大な時間を要したり、後処理時の廃液の処理が煩雑になる。
エーテル化合物(1)と酸フルオリド(2)との反応は、例えば、反応器に、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒と炭化水素系溶媒を仕込み、反応器を所定の温度(0℃〜10℃)に冷却後、全容を撹拌させながら、原料となるエーテル化合物(1)、次いで、フッ素化剤となる酸フルオリド(2)を添加する。その後、所定の温度に維持しながら、内容物の撹拌を継続する等により実施することができる。
反応時間が短すぎると、反応が完結せず、未反応原料、もしくはフッ素化剤として機能する酸フルオリドが多く残存して、後処理が面倒になる。一方、反応時間が長すぎると、過剰反応が進行する可能性が高くなり、副生成物であるアルキルエステルの生成量が多くなる。
触媒を繰り返し反応に使用する際、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒は、使用する溶媒によっては膨潤し、最初に使用する粉末状態とは異なる形態を有している場合があるが、この状態においても、反応活性に影響を及ぼすことなく、繰り返し反応に供することができる。
また、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を反応器から排出させたい場合には、反応器内に水を入れ、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を溶解させ、水溶液の状態にして反応器から抜き出すことができる。
以上のようにして、フッ素化炭化水素(3)を得ることができる。
これらの中でも、原料入手の容易性から、2−フルオロブタン、t−ブチルフルオリド、2−フルオロペンタンが好ましく、2−フルオロブタン、t−ブチルフルオリドがより好ましく、2−フルオロブタンが特に好ましい。
・ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:HP−6890(アジレント社製)
カラム:Inert Cap−1、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:40℃で10分間保持、次いで、20℃/分で昇温し、その後、40℃で10分間保持
インジェクション温度:200℃
キャリヤーガス:窒素
スプリット比:100/1
検出器:FID
GC部分:HP−6890(アジレント社製)
カラム:Inert Cap−1、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:40℃で10分間保持、次いで、20℃/分で昇温し、その後、240℃で10分間保持
MS部分:5973 NETWORK(アジレント社製)
検出器 EI型(加速電圧:70eV)
撹拌子を入れた容量500mLのナスフラスコに、2−ブタノール360mL、フレーク状水酸化カリウム(アルドリッチ社製、純度約90%)37.3gを入れ、全容を約2.5時間、50℃で撹拌した。水酸化カリウムが溶解し、均一溶液になったところで、加熱を一旦中止した。その均一溶液に、ヨードメタン84.4gを加え、ジムロート型コンデンサーを付した状態で、全容を50℃で3時間強撹拌した。反応混合物を室温(25℃、以下にて同じ。)まで冷却し、上澄み液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、ヨードメタンはほぼ消費され、目的物である2−メトキシブタンと、2−ブタノールの混合物が含まれていることがわかった。ナスフラスコ内の内容物をろ過することにより、ヨウ化カリウムをろ別した。ろ別したヨウ化カリウムを少量の水に溶解させ、上層の有機相を分離、先のろ液と混合し、ろ液混合物を得た。
得られたろ液混合物を蒸留釜に仕込み、KS型精留塔(東科精機社製、カラム長30cm、充填剤:ヘリパックNo.1)を使用して蒸留を行った。塔頂温度55〜56℃の留分を集め、共沸して留出してくる水を分液ロートで分離、得られた蒸留物をモレキュラーシーブス4Aで乾燥することにより、sec−ブチルメチルエーテルを38g得た(収率72%)。
GC−MS(EI−MS):m/z 73、59、41、29
撹拌子を入れた容量500mLのナスフラスコに、2−ブタノール240mL、フレーク状水酸化カリウム(アルドリッチ社製、純度約90%)24.8gを入れ、全容を50℃で3時間撹拌した。水酸化カリウムが溶解し、均一の溶液になったところで、加熱を一旦中止した。その均一溶液に、臭化エチル43gを入れ、ジムロート型コンデンサーを付した状態で、70℃で4時間強撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、上澄み液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、臭化エチルはほぼ消費され、目的物である2−エトキシブタンと、2−ブタノールの混合物であった。ナスフラスコ内の内容物から臭化カリウムをろ別してろ液を得た。ろ別した臭化カリウムは少量の水に溶解させ、上層の有機相を分離、先のろ液と混合した(ろ液混合物)。
得られたろ液混合物を蒸留釜に仕込み、KS型精留塔(東科精機社製、カラム長30cm、充填剤:ヘリパックNo.1)を使って、蒸留を行った。塔頂温度68〜69℃の留分を集め、共沸して留出してくる水を分液ロートで分離、モレキュラーシーブス4Aで乾燥し、31gのsec−ブチルエチルエーテルを得た(収率51%)。
GC−MS(EI−MS):m/z 87、73、59、45
ジムロート型コンデンサー、滴下ロート、撹拌子を付した容量500mLのナスフラスコに、2−ペンタノール300mL、水酸化カリウム(和光純薬工業社製、純度約85%)30gを入れ、全容を50℃で約2.5時間撹拌した。水酸化カリウムが溶解し、均一溶液になったところで、p−トルエンスルホン酸メチル81gを滴下ロートから約1時間かけて添加し、50℃で3時間強撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、内容物をビーカーに移し、水を加えることにより、生成したp−トルエンスルホン酸カリウムを溶解させた。ビーカー内の液を分液ロートに移し、水層を分離し、2−ペンチルメチルエーテルと2−ペンタノールの混合液を得た。
得られた混合液を蒸留釜に仕込み、KS型精留塔(東科精機社製、カラム長30cm、充填剤ヘリパックNo.1)を使用して蒸留を行った。塔頂温度74〜75℃の留分を集め、共沸して留出してくる水を分液ロートで分離、得られた蒸留物をモレキュラーシーブス4Aで乾燥し、2−ペンチルメチルエーテルを16g得た(収率37%)。
GC−MS(EI−MS):m/z 87、71、59、45
攪拌機、滴下ロート及び捕集トラップを付した、容量500mLのガラス製反応器に、無水酢酸200mL、及び、二フッ化水素カリウム46.9gを入れ、全容を40℃に加温しながら撹拌した。そこへ、塩化アセチル47gを滴下ロートから40分間かけて滴下し、滴下終了後、15分ごとに反応器を10℃ずつ昇温させた。最終的に90℃まで加温し、20分間その温度に保持した後、反応を停止させた。その間、反応器から留出してくるフッ化アセチルは、氷水で冷却したガラストラップに捕集した。粗収量は47.6g(粗収率128%)であった。なお、本反応では、無水酢酸からもフッ化アセチルが生成するので、収率は100%を超える。
得られた粗フッ化アセチルを単蒸留して、塔頂温度20〜24℃の留分を集め、フッ化アセチルを42.4g得た(収率114%)。
攪拌機、滴下ロート、及び捕集トラップを付した、容量500mLのガラス製反応器に、無水プロピオン酸200mL、及び二フッ化水素カリウム46.8gを入れ、全容を90℃に加温しながら撹拌した。そこへ、塩化プロピオニル55.5gを滴下ロートから1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに、15分間撹拌した。その後、15分ごとに反応器を10℃ずつ昇温し、110℃まで加熱した。全容を110℃で30分間撹拌した後、反応を停止させた。その間、反応器から留出してくるフッ化プロピオニルは、氷水で冷却したガラストラップに捕集した。粗収率は132%であった。なお、本反応では、無水プロピオン酸からもフッ化プロピオニルが生成するので、収率は100%を超える。
得られた粗フッ化プロピオニルを単蒸留して、塔頂温度42〜43℃の留分を集め、フッ化プロピオニルを46.8g得た(収率103%)。
容量100mLのナスフラスコに、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製、K25、重量平均分子量;35,000)を3g、塩化メチレンを30mL入れ、20℃で、ポリビニルピロリドンを塩化メチレンに溶解させた。その溶液に、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(5.6g)を塩化メチレン(15mL)に溶解させた溶液を約10分かけて滴下した。この間、ポリマー(三フッ化ホウ素−PVP担持触媒)の析出が確認された。フラスコ内の内容物をさらに1時間撹拌した。その後、内容物を減圧濾過にてろ別し、塩化メチレン10mLで2回洗浄した。得られた固形分をデシケータ中、真空に減圧し、一晩乾燥させ、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒(触媒1)を得た(三フッ化ホウ素担持濃度:9mmol/g)。
触媒調製例1において、ポリビニルピロリドンの使用量を3gから4gに、三フッ化ホウ素テトラヒドラフラン錯体の使用量を5.6gから2.23gに変更したこと以外は、触媒調製例1に従って触媒を調製し、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒(触媒2)を得た(三フッ化ホウ素担持濃度:4mmol/g)。
容量100mLのナスフラスコに、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製、K90、重量平均分子量;360,000)を3g、塩化メチレンを60mL入れ、20℃でポリビニルピロリドンを塩化メチレンに溶解させた。その溶液に、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(5.6g)を塩化メチレン(15mL)に溶解させた溶液を約10分かけて滴下した。この間、ポリマーの析出が確認された。フラスコ内の内容物をさらに1時間撹拌した。その後、内容物を減圧濾過にてろ別し、塩化メチレン10mLで2回洗浄した。得られたガム状の固体をデシケータ中、真空に減圧し、一晩乾燥させ、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒(触媒3)を得た(三フッ化ホウ素担持濃度:9mmol/g)。
撹拌子、ジムロート型コンデンサー(0℃の冷媒を循環)を付した容量50mLのガラス製反応器に、窒素雰囲気下、触媒調製例1で調製した触媒1を0.25g、及び、乾燥n−ヘキサン5mLを入れ、0℃に冷却した。そこへ、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76g、製造例4で合成したフッ化アセチル1.86gを添加し、その後、20℃まで昇温し、内容物を3.5時間撹拌した。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.79面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.27面積%、6.49面積%、2.36面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された、2−アセトキシブタンは、0.43面積%生成したに過ぎなかった。なお、残りは溶媒のn−ヘキサン、酢酸メチルであった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、触媒1を、触媒調製例2で調製した触媒2に変更し、反応時間を3.5時間から7時間としたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.11面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.29面積%、6.81面積%、2.45面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、1.17面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、触媒1を、触媒調製例3で調製した触媒3に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.72面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.23面積%、5.89面積%、0.96面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、1.05面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、製造例4で合成したフッ化アセチル1.86gを、製造例5で合成したプロピオニルフルオリド3.65gに変更し、反応時間を3.5時間から5時間としたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、17.46面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.29面積%、4.71面積%、1.65面積%生成していた。また、原料がプロピオニルオキシ化された2−プロピオニルオキシブタンは、1.13面積%生成したに過ぎなかった。なお、残りは溶媒のn−ヘキサン、プロピオン酸メチルであった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、n−ヘキサン5mLを、シクロヘキサン5mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、19.21面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.11面積%、6.34面積%、2.55面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは0.98面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、n−ヘキサン5mLを、n−ヘプタン5mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン20.13面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.22面積%、6.01面積%、2.33面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.76面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、製造例2で合成したsec−ブチルエチルエーテル2.04gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルエチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.12面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ0.19面積%、3.88面積%、1.34面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、1.56面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、製造例3で合成した2−ペンチルメチルエーテル2.04gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ペンチルエチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロペンタン、16.72面積%、3−フルオロペンタン、4.64面積%と、異性体混合物であるペンテンが5.87面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシペンタンは、0.92面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、t−ブチルメチルエーテル(東京化成工業社製)1.76gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のt−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物であるt−ブチルフルオリド、23.34面積%と、イソブテン、2.12面積%が生成していた。また、原料がアセトキシ化されたアセトキシt−ブチルは、0.89面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、t−ブチルエチルエーテル(東京化成工業製)2.04gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のt−ブチルエチルエーテルはほぼ消失し、目的物であるt−ブチルフルオリド22.75面積%とイソブテン2.62面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化されたアセトキシt−ブチルは、0.85面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
バルブ、撹拌機を付した容量100mLのろ過器付ステンレス製オートクレーブに、触媒調製例1で調製した触媒1を1.5g充填し、系内を減圧後、窒素雰囲気下にした。そこへ、乾燥n−ヘキサン30mLを入れ、オートクレーブを0℃に冷却した。バルブからシリンジを介して、sec−ブチルメチルエーテル10.6g、次いで、フッ化アセチル11.2gを入れ、内容物を20℃で4時間撹拌した。撹拌を停止し、オートクレーブの底バルブを開け、乾燥窒素で微加圧しながら反応液を抜き出した。反応液は無色透明であり、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン21.51面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.37面積%、5.46面積%、1.72面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.67%生成したに過ぎなかった。
バルブ、撹拌機を付した容量100mLのろ過器付ステンレス製オートクレーブに、触媒調製例3で調製した触媒3を1.5gを充填し、系内を減圧後、窒素雰囲気下にした。そこへ、乾燥シクロヘキサン30mLを入れ、オートクレーブを0℃に冷却した。バルブからシリンジを介して、sec−ブチルメチルエーテル10.6g、次いで、フッ化アセチル11.2gを入れ、内容物を20℃で3.5時間撹拌した。撹拌を停止し、オートクレーブの底バルブを開け、乾燥窒素で微加圧しながら反応液を抜き出した。反応液は無色透明であり、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.09面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.28面積%、5.53面積%、1.32面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.66面積%生成したに過ぎなかった。
実施例1において、溶媒のn−ヘキサンを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、反応器内にn−ヘキサン5mLを添加し、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、目的物である2−フルオロブタン、12.32面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ0.44面積%、15.15面積%、4.34面積%生成し、原料のsec−ブチルメチルエーテルが、4.33面積%残存していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンが、5.24面積%生成していた。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、溶媒をn−ヘキサンからメチルエチルケトンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後の溶液はオレンジ色に着色しており、さらに、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルが5.47面積%残存し、目的物である2−フルオロブタンが7.79面積%、構造不明の高沸点成分幾種が、合計で10.22面積%生成していた。結果を下記表1にまとめて示す。
実施例1において、溶媒をn−ヘキサンからトルエンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、12.63面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ0.45面積%、8.33面積%、2.23面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンが、1.12面積%生成し、さらに、トルエンが2−フルオロブタンと反応した高沸点成分が幾種か生成していた。結果を下記表1にまとめて示す。
一方、溶媒を用いないで反応を行った比較例1では、原料が残存し、ブテン及び原料由来成分の2−アセトキシブタン等の副生成物の量が多くなることが分かった。
なお、比較例1の反応経過を観察したところ、触媒が均一に分散していないことがわかった。このことから、無溶媒であると、触媒が、目的物である2−フルオロブタンに、過度に偏って接触するため、副反応が起き、反応収率が低下するものと考えられる。
また、炭化水素系溶媒以外の溶媒を用いた比較例2、3でも、高沸点成分が生成する等、副生成物が多く生成し、実施例に比して目的物の生成が少なかった。
さらに、実施例12の結果から、触媒1よりも高分子量の触媒3であっても、同様に、反応液からろ別することにより、繰り返し使用できることがわかった。
Claims (6)
- n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、n−オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、及びシクロオクタンのいずれかである炭化水素系溶媒中、
三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒の存在下に、構造式(1)
で示されるエーテル化合物と、構造式(2)
で示される酸フルオリドとを接触させることを特徴とする、構造式(3)
で示されるフッ素化炭化水素の製造方法。 - 前記三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を構成するポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、30,000〜360,000である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記構造式(1)で示されるエーテル化合物が、sec−ブチルメチルエーテル、sec−ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル又は2−ペンチルメチルエーテルである、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記構造式(2)で示される酸フルオリドが、フッ化アセチルである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素が、2−フルオロブタンである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に用いた、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を回収し、回収した三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を、前記式(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に再利用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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