以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は図2のA−A線の要部断面図、図2は本実施形態の前部構造を備えた車両の要部を示す底面図、図3は図2においてバッテリモジュールを取り外した状態の底面図、図4は本実施形態の前部構造を示す左側面図、図5は図2のB−B線要部拡大断面図、図6は図2のC−C線要部拡大断面図、図7は図6の要部拡大図、図8は図2のD−D線要部拡大斜視断面図、図9(a)はキックアップ部の左側面図、図9(b)は図9(a)のE−E線要部断面図、図12(a)は、従来のサブフレーム支持構造の断面図、図12(a’)は図12(a)のG−G線矢視図、図12(b)は、従来のサブフレーム支持構造において前突によりナットが離脱する途中の様子を断面で示した作用説明、図12(c)は、従来のサブフレーム支持構造において前突によりナットの離脱直後の様子を断面で示した作用説明である。
また図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Wは車幅方向を示し、矢印Uは車両上方を示すものとする。
本実施形態の前部構造を備えた車両Vは、サブフレーム非離脱支持構造を備えた派生車としての電気自動車であり、図1において、車体前部には、ダッシュロアパネル1(ダッシュパネル1)によって車室2と前後方向に仕切られた前室3が構成され、前室3には、モータ4a、デファレンシャル4bおよびパワーユニット4c等から成るパワーコントロールモジュール4を備えている。この前室3には、本実施形態の前部構造を採用する車両の種類に応じて適宜、エンジンや燃料電池を備えてもよいが、本実施形態の車両Vのように、前室3にモータ4aを備えることにより、エンジンを備えた場合と比較して、モータ4a(エンジン)に対して前後各側における車体との前後隙sf,srを大きく確保することができる。
[車両の床下構造]
図1に示すように、ダッシュロアパネル1の下部後端には、車室2の床面を形成するフロアパネル6を一体または一体的に接合固定している。
車両の床下すなわち、フロアパネル6の下方には、パワーコントロールモジュール4に電力を供給するバッテリモジュール5を備えている。
図1、図3、図4に示すように、上述のフロアパネル6は、ダッシュロアパネル1の下壁1bの後端から後方に向けて略水平に延びると共に、フロアパネル6の車幅方向中央には車室2側ヘ突出して車両の前後方向に延びるトンネル部7(フロアトンネル7)(図3参照)が一体または一体的に形成されている。
図3、図5に示すように、トンネル部7の下縁部に沿って車両の前後方向に延びる左右一対のトンネルメンバ8,8を設け、断面ハット形状のトンネルメンバ8,8を上述のフロアパネル6下面に接合固定して、該フロアパネル6とトンネルメンバ8,8との間には、前後方向に延びる閉断面を形成している。
上述のフロアパネル6の左右両サイドにはサイドシル11,11を接合固定している。
このサイドシル11,11は、サイドシルインナとサイドシルアウタとの上下の接合フランジ部を結合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体強度部材である。
このサイドシル11,11と、上述のトンネルメンバ8,8との車幅方向の中間部には、フロアフレーム12を設けている。
このフロアフレーム12は断面ハット形状に形成され車両の前後方向に延びるフレームであって、該フロアフレーム12をフロアパネル6の下面およびダッシュロアパネル1の略後方へと延びる下壁1bに接合固定して(図3、図5、図9(a)、(b)参照)、フロアパネル6とフロアフレーム12およびダッシュロアパネル1との間には、車両の前後方向に延びる閉断面が形成されている。
図3に示すように、フロアフレーム12の後端位置において、左右一対のサイドシル11,11を車幅方向に連結するクロスメンバ13を設けている。
また図1、図3に示すように、上述のフロアパネル6の後部には、フロアパネル6の上面に対して一段高くなるキックアップ部14を介してリヤフロアパネル15を一体または一体的に連設形成している。
そして上記のクロスメンバ13は、図1に示すように、フロアパネル6の後部とリヤフロアパネル15の前部との間において、キックアップ部14との間に車幅方向に延びる閉断面を形成し、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
さらに図1、図2に示すように、リヤフロアパネル15の前部にはリヤシートパン15Aを形成するとともに、リヤフロアパネル15の後部には、車幅方向中央部が下方に窪むタイヤパン15Bを凹設形成している。
図2、図3に示すように、上述のリヤフロアパネル15の下部には、ハット断面形状を有して、車両の前後方向に延びる車体強度部材としてのリヤサイドフレーム17を取付けている。
図2に示すように、上述のリヤサイドフレーム17の前部は、サイドシル11,11の後部に連結されている。
さらに、リヤフロアパネル15におけるリヤシートパン15Aとタイヤパン15Bとの間にも、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ18を取付けている。
このリヤクロスメンバ18は、図3に示すように、その車幅方向両端部がそれぞれリヤサイドフレーム17,17に接合固定されている。
なお、リヤサイドフレーム17、およびリヤクロスメンバ18は、それぞれリヤフロアパネル15との間に閉断面を形成し、車体下部の剛性の向上を図るように構成している。
[バッテリモジュール]
また図1、図2、図5に示すように、車体のフロア部(フロアパネル6およびリヤフロアパネル15に相当する部位)よりも下方に有する床下空間S5には、上記のバッテリモジュール5が搭載されており、車体前部の前室3に備えたモータ4aと不図示のハーネスを介して接続されている。バッテリモジュール5は、バッテリ51と、バッテリ51を収容するバッテリケース52と、バッテリモジュール5の骨組みを成すバッテリフレーム53とで構成されている。
車体の床下空間S5は、バッテリフレーム53により底面視で車幅方向の中間に対して左右各側においてそれぞれ前後方向に3列ずつ合計6つに略等分に区分けされた収容空間S5aが構成されており、6つの収容空間S5aのそれぞれには、バッテリ51がバッテリケース52に収容された状態で配設され、バッテリフレーム53を介して車体の床下に取り付け支持されている。
なお、バッテリ51は、バッテリケース52において緩衝部材49を介して積載された状態で適宜、収容されている(図1参照)。
図1、図2に示すように、バッテリフレーム53は、バッテリサイドメンバ54、バッテリ中間メンバ55、バッテリ前側クロスメンバ56、バッテリ前側中間クロスメンバ57、バッテリ後側中間クロスメンバ58およびバッテリ後側クロスメンバ59を備え、いずれも閉断面構造としている。バッテリフレーム53は、これらメンバ54〜59によって底面視で井桁形状に一体又は一体的に構成されている。
図2に示すように、バッテリサイドメンバ54は、車体床下空間S5に左右一対備え、車両底面視で左右各側のフロアフレーム12(図3、図5参照)に対応する部位および、フロアフレーム12の後端からリヤクロスメンバ18の前側手前に至る部位に対応する部位に、車両前後方向に直線状に延びている。
図2に示すように、バッテリ中間メンバ55は、車体床下空間S5における左右一対のバッテリサイドメンバ54,54の車幅方向の中間部位(すなわち底面視で少なくともトンネル部7(図3、図5参照)に対応する部位)において左右一対のバッテリサイドメンバ54,54と平行かつ略同じ長で車両前後方向に直線状に延びている。
図1、図2に示すように、バッテリ前側クロスメンバ56は、左右一対のバッテリサイドメンバ54,54の各前端部に連結するように車幅方向に直線状に延びている。このバッテリ前側クロスメンバ56を、このように車体床下の前部において車幅方向に配設することでフロア前部の高剛性化を図っている。また、バッテリ後側クロスメンバ59は、車体床下空間S5における左右一対のバッテリサイドメンバ54,54の各後端部に連結するように車幅方向に直線状に延びている。
バッテリ前側中間クロスメンバ57は、バッテリサイドメンバ54を車両前後方向に略3等分する前後2つの部位のうち前側部位に配設され、同様にバッテリ後側中間クロスメンバ58は、上記2つの部位のうち後側部位に配設されている。
これらバッテリ前側中間クロスメンバ57とバッテリ後側中間クロスメンバ58とは、図2に示すように、いずれもバッテリ中間メンバ55を横切るとともに左右一対のバッテリサイドメンバ54,54に連結するように車幅方向に直線状に延びている。
上述したバッテリフレーム53は、車体床面に配設された上述した各種フレーム8,12,13,18に対して複数箇所(当例では12箇所)においてボルトB1〜B3およびナット(図示省略)により締結固定することで取付け支持されている。
具体的には図3に示すように、左右一対のフロアフレーム12,12の下面における前部と前後方向中間前側部と前後方向中間後側部との合計6箇所(左右3箇所ずつ)には、取付孔12aが設けられている。さらにクロスメンバ13の下面の車幅方向におけるフロアフレーム12に対応する部位には、取付孔13aが設けられている。
一方図2に示すように、バッテリサイドメンバ54の底面視で取付孔12a,13aに対応する部位(取付孔12a,13aの直下部位)にも、取付孔54aが設けられており、これら取付孔(12a,13aと54a)はボルトB1およびナット(図示省略)を用いて締結固定されている。これにより、バッテリサイドメンバ54は、その後部を除く前側部位が、図5に示すようにフロアフレーム12の直下に配設される。
さらに図3に示すように、左右一対のトンネルメンバ8,8の下面における各前部には、取付孔8aが設けられている。一方図2に示すように、バッテリ前側クロスメンバ56の底面視でトンネルメンバ8,8の下面に設けた取付孔8aに対応する部位(取付孔8aの直下部位)にも、取付孔56aが設けられており、これら取付孔8a,56aはボルトB2およびナット(図示省略)を用いて締結固定されている。
同様に図3に示すように、リヤクロスメンバ18の下面における車幅方向の左右各側には、フランジ18Aにおいて取付孔18aが設けられている。一方図2に示すように、バッテリ後側クロスメンバ59の底面視でリヤクロスメンバ18の下面に設けた取付孔18aに対応する部位(取付孔18aの直下部位)にも、取付孔59aが設けられており、これら取付孔18a,59aはボルトB3およびナット(図示省略)を用いて締結固定されている。
[車体の前部構造]
図1に示すように、ダッシュロアパネル1の略上下方向に延びる前壁1a(図1参照)から前室3の左右両サイドを通って前方へ延びる閉断面構造の左右一対のフロントサイドフレーム20(左側のみ図示)を設けている。
このフロントサイドフレーム20の後部には図9(a)に示すように、ダッシュロアパネル1の前壁1aおよび下壁1bに沿うキックアップ部21が一体形成されており、図9(b)に示すように、このキックアップ部21は、ダッシュロアパネル1に向けて開口するようにその延設方向の直交断面がハット状に構成され、ダッシュロアパネル1の下壁1bにその下面側から接合固定されることでダッシュロアパネル1との間で閉断面が構成されている。
この閉断面は、フロアフレーム12の前部とダッシュロアパネル1の下壁1bとの間に構成される上記の閉断面と、ダッシュロアパネル1の下壁1bを隔てて上下各側で対向する(図9(b)参照)。
これにより、フロントサイドフレーム20から上述のフロアフレーム12にかけて車両の前後方向に連続するように形成されている。
図1に示すように、フロントサイドフレーム20のキックアップ部21より前部20fは、車幅方向外側のアウタパネルと車幅方向内側のインナパネルとで、閉断面空間を有して前突時にクラッシャブルゾーンとして車両前後方向へ延びている。
また図1に示すように、フロントサイドフレーム20の前部20fの前後方向の中間位置における、インナパネル(車幅方向の内側面)には、前突時にフロントサイドフレーム20の折れ変形を促進する屈曲促進部(内ビード)として上下方向に延びる中間凹状ビード22mが設けられている。
さらに図4に示すように、フロントサイドフレーム20の前部20fの前後方向の前側および後側の各位置における、アウタパネル(車幅方向の外側面)にも、前突時にフロントサイドフレーム20の折れ変形を促進する屈曲促進部(外ビード)として上下方向に延びる前側凹状ビード22f、後側凹状ビード22rが設けられている。
ここで、サブフレーム非離脱支持構造を備えた本実施形態の車両においては、凹状ビード22f,22m,22rをフロントサイドフレーム20に上述した態様で設けているが、サブフレーム離脱支持構造を備えた図示しない車両においても、そのフロントサイドフレーム20に同じく上述した態様で設けることが好ましい。
車両がサブフレーム非離脱支持構造とサブフレーム離脱支持構造とのうち、いずれの構造を備えているかに関わらず、フロントサイドフレーム20に凹状ビード22f,22m,22rを同じ態様で設けることにより、前突時におけるフロントサイドフレーム20の荷重吸収変形モードを同じ傾向を示す特性とすることができ、これら2種類のサブフレーム支持構造を備えた車両間においてフロントサイドフレーム20の共通化と、安全性確保との両立に寄与することができる。
図1、図4に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム20の前端には、フランジ20a,28bを介してクラッシュカン28(左側のみ図示)が接続されており、左右一対のクラッシュカン28の前端部相互間には、車幅方向に延びるバンパレイン29が取付けられている。
同図に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム20の下方には、サスペンションの一部を構成する左右一対のロアアーム26,26(図2参照)を支持するフロントサブフレーム23(以下「サブフレーム23」という。)を備えている。
なお、図2、図4において符号19は前輪を囲むように車体前部側面に取り付けられる外装部材としてのフロントフェンダである。
図2に示すように、サブフレーム23の後部には、左右一対のフロントサイドフレーム20に架け渡すように車幅方向に延びるサスクロス24(サスペンションクロスメンバ24)と、該サスクロス24の左右各側で車幅方向外側へ突出する車幅外方突出部25,25とを備えている。
ここでサブフレーム23は、その上部の前部および前後方向の中間部の各1箇所と後部の2箇所との合計4箇所においてフロントサイドフレーム20の底面に締結部材により取り付けられる(詳細は図示省略)。
このうちサブフレーム23の後部に位置する車幅外方突出部25は、フロントサイドフレーム20のキックアップ部21の下側から締結部材32,33を用いて取り付けられている(図1、図4参照)。
図6に示すように、車幅外方突出部25は、その上面部25uを構成するアッパパネル25Aと、該車幅外方突出部25の下面部25dを構成するロアパネル25Bとで構成されている。車幅外方突出部25は、アッパパネル25Aの上面部25u後縁から下方へ延出する下方延出片25sと、ロアパネルの下面部25d後縁から上方へ延出する上方延出片25tとの対向部分を接合することで内部に前方へ向けて開口する中空状に形成されている。
車幅外方突出部25における上面部25uと下面部25dには、締結部材32,33に備えたボルト32を挿通するための挿通孔25a,25bが貫通形成されており、これら挿通孔25a,25bは、底面視で重複(上下方向に連通)するように配置されている。
上記の締結部材32,33は、ロアアーム26後部のサブフレーム23への支持を兼ねている。具体的には、ロアアーム26に備えた前後方向延設アーム部26aの後部は、車幅外方突出部25のアッパパネル25Aとロアパネル25Bとの間に前方開口部25cから差し込まれ、ブッシュ27を介して締結部材32,33に備えたボルト32によって連結支持されている。なお、ブッシュ27は、内筒27aと外筒27bとこれらの間に挟まれるようにして配設された環状のラバー部材27cにより構成されている。
[サブフレーム後部の取付け構造について]
図6〜図9(a)、(b)は、サブフレーム23の後部に有する車幅外方突出部25をフロントサイドフレーム20のキックアップ部21に取り付ける本実施形態の取付け構造30を示している。
ここで本実施形態の電気自動車Vは、バッテリ51を備えることで重量化しているが故に前突時に車体前部に要求される衝撃吸収機能が高くなる。このため、取付け構造30は、本実施形態のサブフレーム非離脱支持構造として、前突時におけるフロントサイドフレーム20の衝撃吸収機能をサブフレーム23にも分担させるべくサブフレーム23をフロントサイドフレーム20から離脱させないように、車幅外方突出部25をキックアップ部21に取り付けたものである。
取付け構造30は、上記の締結部材32,33(ボルト32およびナット33)、取付ブラケット40、および傾斜ブラケット60を備えている。
取付ブラケット40は、図6に示すように、水平な底面部41と、底面部41の前端から前方且つ上方に延びる傾斜前面部42と、左右一対の側壁部43,43(図9(a)、(b)参照)とで後方かつ上方に向けて開口する断面凹形状に形成されている。さらに図6、図8、図9(a)に示すように、取付ブラケット40の底面部41の後縁には、後方且つ下方に延びる後方フランジ44が一体形成されるとともに、取付ブラケット40の傾斜前面部42の前縁には、前方且つ上方に延びる前方フランジ45が一体形成されている。また図9(a)、(b)に示すように、左右各側の側壁部43の上部は、側壁フランジ43aとして形成されている。
図6、図9(a)、(b)に示すように、取付ブラケット40の前方フランジ45および後方フランジ44が、キックアップ部21の下面部21aに溶接等により接合固定されるとともに、取付ブラケット40の側壁フランジ43aが、キックアップ部21の側壁部21cに左右各側に対応させて溶接等により接合固定されている(図9(a)、(b)参照)。なお、図9(a)中の「×」は、その溶接箇所Waを示している。
これにより、取付ブラケット40は、キックアップ部21に対して一体又は一体的に接合され、内部には、該キックアップ部21の下面部21aとの間で閉断面が構成される。
図6、図7に示すように、取付ブラケット40の底面部41は、締結部材32,33のナット33を起立姿勢で支持するとともに、該ナット33と締結するボルト32を挿通する挿通孔41aが貫通形成されている。一方、ナット33の下端部には鍔状のフランジ33fが形成され、フランジ33fが底面部41の上面における挿通孔41aの周縁部に溶接されている。
図6〜図8に示すように、キックアップ部21の下面部21aにおける、挿通孔41aと上方において対向する部位には、締結部材32,33(ボルト32およびナット33)を挿通する挿通孔21bが貫通形成されている。
この挿通孔21bは、挿通したナット33の外周面がその周縁部に当接又は近接するようにナット33の外径と略同じ又は若干大きな内径で形成されている。そして図7、図8に示すように、挿通孔21bの前縁と当該前縁に対向するナット33との間、および挿通孔21bの後縁と該後縁に対向するナット33との間には、それぞれ溶接部W1が形成されている。
なお、溶接部W1は、挿通孔21bの周縁に部分的に設けるに限らず、全周に設けてもよい。
図7に示すように、取付ブラケット40の底面部41とキックアップ部21の下面部21aとの各挿通孔41a,21b、およびナット33における、ボルト32と螺合可能な内周面を有する挿通孔33aは、何れも車幅外方突出部25の上面部25uに形成した挿通孔25bと上下方向に連通するように設けられている。
なお図12(a)に示すように、車両前突時にサブフレーム23の後部をキックアップ部21から離脱させるサブフレーム離脱支持構造300においては、サブフレーム230から入力される荷重によってナット330の傾倒による離脱を促進するために、取付ブラケット400の底面部410に設けた挿通孔410aの穴形状を、図12(a’)に示すように、平面視正円形状の挿通孔410aの周方向において中心を隔てて対向する所定箇所に径方向外側への切欠部410aaを有するいわゆる異形形状として挿通孔410aの周縁を脆弱化している。図12(a’)は図12(a)のG−G線矢視図であるがナット330を省略して挿通孔410aおよびその周縁のみを図示している。
これに対してサブフレーム非離脱支持構造としての本実施形態の取付け構造30においては、取付ブラケット40の底面部41の挿通孔41aの穴形状を、平面視正円形状としている(図示省略)。さらに本実施形態では取付ブラケット40の板厚を、サブフレーム離脱支持構造300に備えた取付ブラケット400(図12(a)参照)の板厚と比較して厚くする等して取付ブラケット40の前突時の耐力を高めている。
そして図7、図8に示すように、ボルト32を車幅外方突出部25の下側から該車幅外方突出部25の上下各面25u,25d、取付ブラケット40の底面部41およびナット33の各挿通孔25a,25b,41a,33aに挿通することで、車幅外方突出部25は取付ブラケット40を介してフロントサイドフレーム20のキックアップ部21に締結固定されている。
このとき図6〜図8に示すように、ナット33は、キックアップ部21の下面部21aに設けた挿通孔21bよりも上方に突き出してその上端部がキックアップ部21の内部に有する閉断面空間21Aの上下方向の略中間位置に達するまでキックアップ部21の下面部21aからさらに上方に延設されている。
図6〜図8、図9(b)に示すように、キックアップ部21の閉断面空間21Aには、ナット33の上部(閉断面空間21Aへの延設部分)を支持する上記の傾斜ブラケット60を備えている。
傾斜ブラケット60はキックアップ部21の閉断面空間21Aの幅を有する底面部61と、該底面部61の車幅方向両端から立ち上がる左右一対の側壁部62,62とで、キックアップ部21の延設方向の直交断面視で上方かつ後方へ開口したコ字状となるように一体形成されている。
傾斜ブラケット60の底面部61には、ナット33における、キックアップ部21の閉断面空間への延設部分を挿通する挿通孔61aが形成されている。そしてこの挿通孔61aは、その周縁部における少なくとも前後各縁が、挿通したナット33の外周面に当接又は近接する内径で形成されている。また図7、図8に示すように、挿通孔61aの前縁と当該前縁に対向するナット33との間、および挿通孔61aの後縁と該後縁に対向するナット33との間には、それぞれ溶接部W2が形成されている。
なお、溶接部W2は、挿通孔61aの周縁に部分的に設けるに限らず、全周に設けてもよい。また、溶接部W2は、傾斜ブラケット60の底面部61とナット33との間に形成するとともに、溶接部W1は、上述したとおり、キックアップ部21の下面部21aとナット33との間に形成したが、これに限らずこれらのうちいずれか一方のみを形成してもよい。
図6〜図8、図9(b)に示すように、傾斜ブラケット60の側壁部62は、キックアップ部21の側壁部21cの内面であって、該キックアップ部21の側壁部21cの外面と側壁フランジ43aとの接合部位に対して側面視で重複する部位に溶接により接合固定されている。なお、図6〜図8中の「×」は、その溶接箇所Wbを示している。
つまり、取付ブラケット40とフロントサイドフレーム20と傾斜ブラケット60とは、キックアップ部21の左右各側において、該キックアップ部21の側壁部21cを取付ブラケット40の側壁部43(側壁フランジ43a)と傾斜ブラケット60の側壁部62とで挟み込むようにして互いの側壁部43a(43),21c,62が三枚接合されている(図9(b)参照)。傾斜ブラケット60は、このようにキックアップ部21の側壁部21cに接合された状態において該キックアップ部21の閉断面空間21Aに前高後低状に傾斜して配設されている(図7、図8参照)。
また、車幅外方突出部25の上面部25uと取付ブラケット40の底面部41とを、ナット33とボルト32とで上下両側から挟持するように締結することで、上面部25uは底面部41に対して取り付けられている(同図参照)。
このことから図7に示すように、取付ブラケット40の底面部41の挿通孔41aの周縁を取付部70に設定する。
さらに同図に示すように、キックアップ部21の下面部21aに形成した挿通孔21bの周縁を、第1支持部72に設定し、傾斜ブラケット60の底面部61の挿通孔61aの前縁を第2支持部73に設定し、該挿通孔61aの後縁を第3支持部74に設定する。これら第2支持部73と第3支持部74は、共に一部材として一体形成された傾斜ブラケット60に設けられている。
ここで図7に示すように、前突時にサブフレーム23後部へ伝達された荷重Fは、便宜上、主にブッシュ27(ロアアーム連結部)を介して締結部材32,33に入力されるものとする。その場合には、このブッシュ27の中心部は前突時に取付け構造30の力点71として作用する。この締結部材32,3への入力荷重によって、ナット33には、起立姿勢から取付部70の後縁70rを支点として前傾姿勢に倒れ込む方向のモーメントが作用するが、第1〜第3支持部72,73,74はナット33が前傾姿勢で倒れ込まないように支持する。
具体的には、第1支持部72は、ナット33を取付部70の上方で支持する。第2支持部73は、第1支持部72から上方に離間して、第1支持部72よりも上方へ延設されたナット33の上部前側を支持する。第3支持部74は、第1支持部72と第2支持部73との間に位置し、両者と離間してナット33の上部後側を支持する。すなわち、第1〜第3支持部72,73,74は、前突時に作用点として作用する。
本実施の形態に係る車両Vの前部構造は、フロントサイドフレーム20のキックアップ部21下側に、サスペンション(ロアアーム26)を支持するサブフレーム23の後部を締結部材32,33によって取り付ける取付部70が設けられ(図7参照)、該取付部70から上方へ締結部材32,33が延設され、取付部70の上方に締結部材32,33におけるナット33を支持する第1支持部72が設けられ、該第1支持部72よりも上方にナット33がさらに延設され、第1支持部72から上方に離間して、ナット33の上部前側を支持する第2支持部73が設けられたものである(図7、図8参照)。
上記構成によれば、ナット33を支持する第2支持部73を追加することで、ナット33を前倒れさせようとする傾斜モーメントに対し支点や作用点が上方に離間して増やすことができ、従来よりナット33を支持する第1支持部72への応力集中を防ぎながらサブフレーム23の後退初期のナット33の前倒れを効果的に抑制し、ナット33の支持力が飛躍的に高まり、ナット33の倒れ込みと脱落を防止できる。
よって、サブフレーム23後部の離脱を防止してフロントサイドフレーム20の前突荷重吸収機能をサブフレーム23にも分担させることで、例えば本実施形態の車両Vのような電気自動車や、大型の乗用車などの車重が重い派生車においても前突時に必要な車体前部の荷重吸収量を確保することができ、車室2やバッテリ51を保護することができる。
さらに、主に取付ブラケット400とキックアップ部21の下面部21aでしかナット330を支持しない従来のサブフレーム離脱支持構造300(図12(a)参照)に対して、基本的に、第2支持部73を追加するという最小限の変更を加えるだけで、本実施形態の取付け構造30のようなサブフレーム非離脱支持構造を構築できるため、両タイプの車両間において前突に対する基本的な車体前部のフレーム構造の設計思想を共通化することができる。
以下、本実施形態の車両Vの前部構造の作用、効果について詳述する。
図12(a)、(b)、(c)には、前突時にサブフレーム230側から入力荷重Fを受けることで、ナット330が傾倒しながら取付ブラケット400の底面部410に設けた挿通孔410aの前側部位を突き破ることでサブフレーム23の脱落を促進するサブフレーム離脱支持構造300が示されている。
ここでこのようなサブフレーム離脱支持構造300において、サブフレーム支持姿勢(起立姿勢)のナット330が、前突時に傾いて挿通孔410aの周縁部から脱落するまでにおける、従来より考えられていたナット330の挙動(すなわち、挿通孔410aの周縁部の変形モード)は、特許文献1(特開2005−112197号)に例示のサブフレーム離脱支持構造も含めて図12(a)中の仮想線で示すような挙動を示すものとされていた。
すなわち従来より考えられていた前突時におけるナット330の挙動は、前突時にサブフレーム230側からの入力荷重Fを受けることで、ナット330が、キックアップ部21の下面部21aに設けられた挿通孔210bの後縁210brを支点としてその下側が後方に傾くように倒れ込んで、挿通孔410aの後方部位を突き破りながら脱落する挙動を示すものとされていた(図12(a)中の仮想線で示したナット330および矢印Mr、特許文献1の図4、図5参照)。
しかし実際には図12(b)に示すように、ナット330は、前突時にサブフレーム23側から、ブッシュ27の中心部を力点710とする荷重Fが入力されると、起立姿勢から挿通孔410aの後縁を支点としてその上側が前方に傾くように倒れ込んで、図12(c)に示すように、挿通孔210bや挿通孔410aの各前側部位を突き破りながら脱落する挙動を示すことが明らかとなった。
すなわち実際には、前突時にナット330には、挿通孔410aの後縁を支点として前倒れしようとするモーメントが作用する(図12(b)中の矢印Mf参照)。
一方、従来のサブフレーム非離脱支持構造は、図12(a)に示すようなサブフレーム離脱支持構造300をベース構造として、例えばキックアップ部21の下面部21aや取付けブラケット400のみを集中的に補強するなどしてナット330が脱落しないように構成したものであった。
そして前突時にナット330に、上述したようなモーメント(図12(b)中の矢印Mf参照)が作用した際には、キックアップ部21の下面部21aに設けた挿通孔210bおよび、取付ブラケット400の底面部410に設けた挿通孔410aの各前縁は、共に作用点として作用するとともにナット330を支持する支持点となる。すなわち、挿通孔210bおよび挿通孔410aの各前縁は、それぞれサブフレーム離脱支持構造300の第1支持部、第2支持部に相当する。
しかしながら、従来のサブフレーム非離脱支持構造のように、挿通孔210bや挿通孔410aの各周縁のみを補強して、前突時に前倒れしようとするナット330を挿通孔210bの前縁によって支持しようとしても、作用点である挿通孔210bの前縁は、支点(挿通孔410aの後縁)との距離、すなわちテコの原理よるレバー比が稼げずに(レバー長を十分に確保できずに)、ナット330が前倒れしないように支持しきれずに破断するおそれがあった(図12(b)、(c)参照)。
さらに仮に従来の第1支持部である挿通孔210bの前縁が破断後には、従来の第2支持部である挿通孔410aの前縁によってナット330を支持することになるが、その場合、テコの原理よるレバー比が従来の第1支持部の場合よりもさらに不利になるため、立て続けに従来の第2支持部(挿通孔410aの前縁)も破断し、ナット330の前倒れによる脱落を十分に防ぎきれないおそれがあった。
上述した点に鑑み、本実施形態では図7に示すように、従来から存在する第1支持部72に加えて新たな第2支持部73を追加することによって前突時にサブフレーム23側から入力荷重を受けて前傾しようとするナット33の上部を支持することで、挿通孔41aの前方部位の突き破りの要因となるナット33の初期倒れを効果的に抑制することができる。
具体的には図7に示すように、第1支持部72から上方に離間してナット33の上部前側を支持する第2支持部73を設けることにより、いずれも作用点として機能する第1支持部72、第2支持部73のうち、第2支持部73の方が、第1支持部72と比較して支点としての取付部70の後縁70rからの距離を長く設定できるため、レバー比(「力点71から支点71rまでの距離」に対する「支点70rから作用点73までの距離」)を稼ぐことでテコの原理を活かしてナット33に作用する分散荷重F1(図7参照)をより小さな力で支持することができ、ナット33の倒れ込みを防ぐことができる。
さらに、第2支持部73を第1支持部72から上方に離間して設けることにより、前突時にサブフレーム23からナット33へ入力される荷重Fを受け止めるために従来から活用されていなかったフロントサイドフレーム20のキックアップ部21の下面部21aよりも上方部位の耐力を活かすことができる。
しかもその際に、第2支持部73は、前突時にナット33が前傾しないように前方向の荷重F1を受け止めるべく、ナット33の上部を前側から支持するように設けられたものであるため、この第2支持部73におけるナット33の支持荷重F1と、前突時にフロントサイドフレーム20の前方から後方へ伝達される荷重とが前後相反する方向に作用することになるため、これら荷重がフロントサイドフレーム20のキックアップ部21において重畳的に加わることがなく、応力集中のおそれもない。
加えて、従来より第1支持部として作用する挿通孔210b(図12(a)参照)の前縁のみを集中的に補強した構成においては、補強部分と非補強部分との境界部に形状変化部が生じることによって該形状変化部に荷重が局所的に集中することになるが、本実施形態においては、ナット33を支持するために活用していなかった部位(すなわち、フロントサイドフレーム20のキックアップ部21の下面部21aよりも上方部位)を活用することで、そのような事態が生じることがなくナット33の上部を効率よく支持することができる。
要するに本実施形態は、例えば特許文献2(実開平05−062383号公報)のように、サブフレーム支持用のナット部材(3)が取り付けられるブラケット(1)自体を上下2段構造としたり、ブラケット(1)内部に保持プレート(13)を備えるなどして、ナット部材(3)の取付け部分自体を補強するというものではなく、これまでナット33を支持するために活用していなかったフロントサイドフレーム20のキックアップ部21における、下面部21aよりも上方に離間した部位においてナット33を支持することで、従来よりも有利なレバー比の下でテコの原理や、フロントサイドフレーム20の耐力を活かしてナット33の脱落を効果的に防ぐものである。
また、本実施形態においては、前突時にサブフレーム23を車体から脱落させないため、電気自動車Vのフロア下部に搭載したバッテリ51をフロア前部よりもさらに前方へ配設することが可能となり、バッテリ51の搭載量を増やすことができる。さらに、バッテリ51の搭載により車量が重くなってもフロントサイドフレーム20とサブフレーム23と共に前突時に車体前部において必要な荷重吸収量を確保することができる。すなわち、車体をより重量化することも可能となるため、フロア前部に限らず、フロア後部を含めてバッテリ51の搭載量を増やすことができる。
この発明の態様として、第1支持部72と第2支持部73との上下方向の間に、両者72,73と離間してナット33の上部後側を支持する第3支持部74が設けられたものである(図7、図8参照)。
上記構成によれば、第3支持部74が新たな支持点(作用点)としてナット33上部後側に追加され、ナット33上部の前倒れに対する支持剛性を飛躍的に高めることができる。
詳述すると図7に示すように、前突時に、サブフレーム23側からの入力荷重Fを受けて、ナット33は上下方向に沿った支持姿勢(起立姿勢)から取付部70の後部70rを支点として前傾しようとするが、ナット33が前傾しようとする荷重を第2支持部73によって受け止めることができる。
そしてその反力によって、第2支持部73を支点としてナット33の下部が後方へ傾こうとするのを第1支持部72の後部72rと第3支持部74とによって受け止めることができる。
ここで、第3支持部74は、第1支持部72と上方に離間して設けたものである。
これは、第1支持部72と離間しない略同位置に、該第1支持部72を補強するように第3支持部74を設けた場合には、その補強部分と、該補強部分の周辺部と間の強度の差が著しくなることでこれらの境界部(形状変化部)に応力が集中し、好ましくないためである。
さらに、第3支持部74は、これまで耐力が使われていなかった(すなわち、前突によりサブフレーム23からのナット33への入力荷重Fを受け止めるために活用されていなかった)フロントサイドフレーム20に設けられたものである。
従って、サブフレーム23側からの入力荷重Fを第2支持部73が受け止めるに伴って、該第2支持部73を支点としてナット33の下部を後傾させようと作用する第2支持部73からの反力を、第1支持部72と第3支持部74とでしっかりと受け止めることができる。
そして、上述したように、第2支持部73よりも第3支持部74を低い高さに配置することで、第2支持部73と第3支持部74とを同じ高さに配置してナット33をその前後各側から支持する場合と比較して、ナット33のいわゆるロック効果(栓抜き効果)により、ナット33の第3支持部74による支持力をさらに高めることができ、第2支持部73と第3支持部74とでナット33の支持荷重を効率的に分散することができる。
ちなみに特許文献2における、ナット部材(3)を支持するブラケット(1)は、車両走行時における良好な操縦安定性を維持するためのものであることから、ナット部材(3)をその周方向全体(前後左右の各方向)から支持することが必要となる。このため特許文献2においては、本実施形態のように、第2支持部73と第3支持部74とでナット33の上部を前後各側から重点的に支持するという思想は着想し得ないものである。
またこの発明の態様として、第2支持部73と第3支持部74が、一体又は一体的に形成された締結部材支持ブラケット(ナット支持ブラケット)としての傾斜ブラケット60に設けられたものである(図6〜図8参照)。
上記構成によれば、追加部品点数を低減し、第2支持部73および第3支持部74として機能する部品の共通化を図ることができる。
またこの発明の態様として、取付部70を構成する取付ブラケット40と、第1支持部72を構成するフロントサイドフレーム20と、傾斜ブラケット60が互いの側壁部43(43a),21c,62を三枚接合したものである(図6〜図9の特に図9(a)参照)。
上記構成によれば、取付ブラケット40と、フロントサイドフレーム20と、傾斜ブラケット60とを、互いの側壁部43(43a),21c,62を三枚接合することにより、高剛性化することができるとともに、接合部(溶接箇所Wa,Wb)を共通化することができる。
またこの発明の態様として、フロア前部にバッテリモジュール5のバッテリフレーム53としてのバッテリ前側クロスメンバ56が連結されたものである(図1、図2、図4参照)。
上記構成によれば、フロア前部の高剛性化による、前突時のサブフレーム23の潰れ促進とバッテリ51の拡張および保護とを両立することができる。
また、前室3にモータ4aを搭載した場合には、不図示のエンジンを搭載した場合よりもその前方における車体との前後方向の隙間Sfおよびその後方における車体との前後方向の隙間Srを大きく確保することができる(図1参照)。
すなわち、電気自動車Vのモータ4aは、エンジンと比較して前後方向にコンパクトであるため、前室3にエンジンを搭載した場合よりも前後各側に広いスペースを確保し易くなる。
すなわち、これまでのサブフレーム離脱支持構造を備えた車両は、前突時に大きなエンジンがフロントサイドフレーム20の圧縮変形を阻害しないように、サブフレーム23を車体側から離脱させてエンジンを後方へ変位させていた。
これに対して、派生車の中でも電気自動車Vにおいて多く採用されるサブフレーム非離脱支持構造を備えた車両は、前突時にサブフレーム23を離脱させずともフロントサイドフレーム20やサブフレーム23が圧縮変形することを、モータ4aによって阻害されることなく、モータ4aとの前後各側に有する車体とのスペース(隙間Sf,Sr)を活かして、フロントサイドフレーム20やサブフレーム23をしっかりと圧縮変形させることができる。
従って、上記構成によれば、フロア前部の高剛性化による、前突時のサブフレーム23の潰れ促進とバッテリ51の拡張および保護とを両立することができるという上述した本実施形態の効果を顕著に奏することができる。
また本実施形態においては、車体前部にサブフレーム非離脱支持構造としての取付け構造30を備えた構成であるが、その車体前部に備えたフロントサイドフレーム20に、屈曲促進部としての中間凹状ビード22m、前側凹状ビード22f、後側凹状ビード22rを設けたものである。
これら凹状ビード22m,22f,22rを、例えば図12(a)に示したサブフレーム離脱支持構造300を備えた車両における不図示のフロントサイドフレームに設けた凹状ビード(図示省略)と同じ形成位置とすることにより、両タイプの車両間において、フロントサイドフレーム20の荷重吸収変形モードを同じ特性とすることができ、車体前部の設計思想等の共通化と安全性を両立することができる。
この発明は上述した実施形態に限定するものではなく、その他にも多くの実施形態に採用してもよい。
図10は図6に対応して示した他の実施形態の締結部材支持ブラケットの構成説明図、図11は図10のF−F線要部断面図である。
他の実施形態の締結部材支持ブラケットは、上述した傾斜ブラケット60のように、前側の第2支持部73が高く、後側の第3支持部74が低くなるような前高後低状の傾斜姿勢で形成するに限らず(図6、図7参照)、例えば、図10に示すように、第2支持部73’と第3支持部74’とが略同じ高さになるように例えば、底面部61’が水平な水平ブラケット60’で形成してもよい。
なお図10、図11に示すように、水平ブラケット60’は、傾斜ブラケット60と同様に、底面部61’と、左右一対の側壁部62’,62’(図11参照)とで形成されているなど、特に示す以外は、傾斜ブラケット60と同様の構成であるとともに、キックアップ部21の側壁部21cへの取付け形態であるものとする。
この構成によれば、第2支持部73’および第3支持部74’によって、ナット33上部の前倒れに対する支持剛性を飛躍的に高めることができるという効果に加えて、水平ブラケット60Fに備えた底面部61’が水平(ナット33の軸方向と垂直)に配置されているため、側壁部62’とキックアップ部21の側壁部21cとの溶接や、底面部61に形成した挿通孔61aへのナット33の挿通等の各部材の組み付け性を高めることができる。