図1に並列接続した無停電電源装置の主回路構成を示す。この図では、例として無停電電源装置3台を並列接続した構成としている。
交流電源1には、3台の無停電電源装置UPS1,UPS2,UPS3が並列接続される。この交流電源1は、バイパス電源としても使用する。3台の無停電電源装置UPS1〜UPS3には負荷2が接続される。
無停電電源装置UPS1は、 交流電源1に接続され、交流電力を直流電力に変換するコンバータCNV1と、交流電源1とコンバータCNV1の間に接続され、コンバータCNV1のスイッチングノイズを除去するLCLフィルタ3と、コンバータCNV1の直流バスに接続されるコンデンサC1と、交流電源1が停電した場合代わりに負荷2に電力を供給する直流電源4と、直流電源4と直流バスの間に接続され、直流電源4の電圧を昇圧するチョッパCHP1と、コンバータCNV1やチョッパCHP1の出力する直流電力を交流電力に変換し、負荷2に供給するインバータINV1と、インバータINV1のインバータ出力電流Iinv1を検出する検出器5と、インバータINV1のスイッチングノイズを除去するLCフィルタ6と、フィルタ出力電圧V1を検出する検出器7と、フィルタ出力電流Iups1を検出する検出器8と、バイパス電圧Vbyp1を検出する検出器9と、無停電電源装置UPS1の異常時に交流電源1とフィルタ出力を短絡し、無停電電源装置UPS1をバイパスして交流電源1から負荷2に直接電力を供給するスイッチTS1と、を備える。
通常時において、スイッチTS1は開放状態である。無停電電源装置UPS1の出力端から並列接続点まではケーブルで接続され、ケーブルの寄生抵抗R1・インダクタンス成分L1をあわせて図示している。コンバータCNV1やチョッパCHP1の制御に使用する検出器は省略している。なお、無停電電源装置UPS2,UPS3も同様に構成されている。
図2にインバータINV1の出力電圧制御回路10を示す。図2に示すようにローパスフィルタLPFにおいて、フィルタ出力電圧V1の検出信号からPWMスイッチングノイズなどを除去する。次に、dq変換器11により、制御回路の内部位相情報ωt+θ1*を元に、フィルタ出力電圧V1の固定座標上の検出信号を回転座標上の値Vd1,Vq1に変換する。ここでは、回転座標のd軸は内部位相に同期した成分、q軸は内部位相に対して90deg遅れの成分を表すものとする。
このVd1と指令値であるV1*+Vstdとの偏差を減算器12により求める。振幅指令値V1*は、後述する横流電流抑制制御ブロックにて演算する。Vstdは定格の電圧振幅を表し、制御回路上では1である。Vq1と指令値である0との偏差を減算器13により求める。通常、Vq1の指令値は零固定である。
アンプAMP1は減算器12の出力(偏差)を入力し、例えば比例積分などのアンプ処理を行う。アンプAMP2は減算器13の出力(偏差)を入力し、例えば、比例積分などのアンプ処理を行う。dq逆変換器14は、制御回路の内部位相情報ωt+θ1*を元に、アンプAMP1,AMP2の出力する回転座標上の電圧指令値を固定座標上の値に変換する。
PWM変調器PWMは、固定座標上の電圧指令値を入力し、ゲート信号Gate1を出力する。出力されたゲート信号Gate1は、インバータINV1に入力される。なお、PLL処理器PLLは、バイパス電圧Vbyp1の検出信号を入力し、同期した位相信号ωtを出力する。そして、加算器15においてPLL処理器PLLの出力結果に補正用の位相信号(位相指令値)θ1*を加算する。この加算器15の出力する位相信号ωt+θ1*はdq変換器11やdq逆変換器14に用いられる。
その他、図2では省略しているが、波形ひずみ改善のためフィルタ出力電圧V1の検出信号に異なる処理を行い、結果を電圧指令値に加算することや、安定性や応答改善のためインバータ出力電流Iinv1やフィルタ出力電流Iups1の検出信号に適切なゲイン処理を行い電圧指令値に加算することもある。
図2の制御ブロックは、単にインバータINV1の出力電圧を振幅V1*+Vstd,位相指令値θ1*の正弦波にすることを目的としていて、単独では横流電流を抑制する機能はない。
図3に、本実施形態1におけるインバータINV1のパラメータ推定前の横流電流抑制制御ブロックを示す。このブロックでは、通信を使用したフィードバック制御により横流電流を抑制する。横流抑制制御ブロックは、以下により構成される。
まず、dq変換器21は、制御回路の内部位相情報ωt+θ1*を元に、フィルタ出力電流Iups1の検出値を回転座標上の値に変換する。このdq変換器21の出力からローパスフィルタLPFにより交流成分を除去し、フィルタ出力電流Iups1の基本波における有効電力成分Id1と無効電力成分Iq1を抽出する。
なお、上記フィルタ出力電流Iups1をインバータ出力電流Iinv1に置き換えてもよい。
出力電流指令値の有効電力成分Idref,出力電流指令値の無効電力成分Iqrefは、代表となる無停電電源装置を1台決めて、その代表の無停電電源装置の出力電流を通信により入力したものとする。または、すべてのフィルタ出力電流もしくはインバータ出力電流の平均値を通信により求めたものとしても良い。自身が代表の無停電電源装置である、または平均値を求める場合は他の無停電電源装置に有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1を送信する。図3の破線は、通信を用いて異なる無停電電源装置間で送受信する信号を表している。
次に、減算器22a,22bにおいて、出力電流指令値Idref,Iqrefと有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1との偏差を求める。乗算器23a,23b,23c,23dは、減算器22a,22bの出力(偏差)を入力し、それぞれに係数α、βとの積を演算する。
この係数について説明する。α=1,β=0ならば、出力電流の有効電力成分Id1が出力電流指令値Idrefよりも小さい場合は電圧振幅を増加させ、無効電力成分(遅れ)Iq1が出力電流指令値Iqrefよりも小さい場合は位相を遅らせることにより、出力電流を指令値に近づけようとする。これは、無停電電源装置間のインピーダンスが抵抗である場合に有効な方式である。
α=0,β=1ならば、出力電流の有効電力成分Id1が出力電流指令値Idrefよりも小さい場合は電圧位相を進め、無効電力成分(遅れ)Iq1が出力電流指令値Iqrefよりも小さい場合は電圧振幅を増加する。これは、無停電電源装置間のインピーダンスがリアクトルである場合に有効となる。
通常、基本波成分に対しては無停電電源装置間のインピーダンスを抵抗とリアクトルの直列接続で表すことができ、抵抗とリアクトルどちらかインピーダンスの大きな方にあわせて係数αと係数βの片方を1に設定,またはインピーダンスに応じて中間の値に設定することで、横流電流の抑制にかかる時間を短縮できる。ただし、係数α,係数βの設定が不適切でも横流電流の抑制に時間がかかるだけで抑制制御が不安定になることはない。そのため、係数α,βは自動調整の対象外としている。
次に、加算器24aにおいて乗算器23aと23cの出力を足し合わせ、加算器24bにおいて乗算器23bと23dの出力を足し合わせる。
加算器24a,24bの出力に、アンプAMP3,AMP4により積分などの処理を行い横流電流抑制フィードバックの振幅ずれV1cmp、位相ずれθ1cmpを出力する。
得られた振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpは、(1)式に示すように、そのまま制御による振幅指令値V1*と、位相指令値θ1*となる。
この振幅指令値V1*,位相指令値θ1*を出力することにより、横流電流を抑制するフィードバックが構成される。
図4に実施形態1における横流抑制用のパラメータ推定ブロック51aの構成を示す。
フィルタ出力電流Iups1と出力電流指令値の偏差の実効値を、有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1,出力電流指令値Idref,Iqrefを用いて以下の(2)式で求める。
具体的には、乗算器31a,31bにより、横流抑制制御ブロックで求めた偏差Idref−Id1,Iqref−Iq1の二乗を求める。この乗算器31a,31bの出力を加算器32により加算し、演算器33により加算器32の出力の平方根を求める。
次に、比較器34により、演算器33で求めた平方根の出力が第1閾値Ithaに満たない場合に1を出力する。 通常、第1閾値Ithaは1%など零に近い値を設定する。
比較器34の出力が1になった場合、ホールド器35において1を出力し続ける。バッファ36は、ホールド器35の出力が0から1に変化した時の出力電流指令値Idref,Iqref,振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpを記憶する。記憶した出力電流指令値Idref,Iqref,振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpはIdA,IqA、振幅指令値はV1A*,位相指令値θ1A*となる。
このバッファ36の記憶した出力電流指令値Idref,Iqref,(IdA,IqAとする)と、現時点での出力電流指令値Idref,Iqrefとの偏差を減算器37a,37bにより演算する。そして、減算器37a,37bの出力(Idref−IdA,Iqref−IqA)の二乗を乗算器38a,38bにより求める。次に、乗算器38aと乗算器38bの出力を加算器39により加算する。そして、演算器40により、加算器39の出力の平方根を求める。比較器41により演算器40で求めた平方根の出力が第2閾値Ithbを超える場合に1を出力する。通常、第2閾値Ithbは50%など大きな値を設定する。これは、負荷条件の離れた2点の測定点を用いることで、推定精度を向上させるためである。
AND素子42において、2つの比較器34,41の出力が両方とも1を出力していることを検出した場合1を出力する。ホールド器43はAND素子42の出力が1になった場合、1を出力し続ける。バッファ44は、ホールド器43の出力が0から1に変化した時の出力電流指令値Idref,Iqref,振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpを記憶する。記憶した値はそれぞれIdB,IqB,振幅指令値V1B*,位相指令値θ1B*となる。
演算器45は、バッファ36,44で記憶されたデータを入力し,後述する式(16),(17),(18),(19)に基づいてインピーダンス差R1,X1,振幅差ΔV1,位相差Δθ1の演算を行う。AND素子46において、ホールド器35,43の両方が1を出力している場合のみスイッチSWを短絡し、演算器45の出力(式(16),(17),(18),(19)の演算結果)を出力し、横流電流抑制制御ブロックにて用いる。
なお、バッファ36,44で記憶されるIdref、Iqrefは、記憶される時点でのId1、Iq1との差は微小である。そこで、バッファ36,44に入力する値に、Idref、Iqrefの代わりに、フィルタ出力電流Iups1もしくはインバータ出力電流Iinvの基本波における有効電力成分Id1と無効電力成分Iq1を用いてもよい。
図5に、本実施形態1におけるインバータINV1のパラメータ推定後の横流電流抑制制御ブロックを示す。dq変換器50により、制御回路の内部位相情報ωt+θ1*に基づいて、フィルタ出力電流Iups1の検出値を回転座標上の値に変換する。ローパスフィルタLPFにおいて、dq変換器50の出力から交流成分を除去し、直流成分(基本波成分)のみの信号である有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1を抽出する。
有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1と推定ブロック51aの出力するインピーダンス差R1,X1との積を乗算器52a,52b,52c,52dにより演算する。加算器53aにより、乗算器52a,52cの出力を足し合わせ、電圧降下Vdrop1を求める。また、加算器53bにより、乗算器52bの出力から52dの出力を減算し、電圧降下による位相遅れθdrop1を求める。
そして、減算器54aにおいて、電圧降下Vdrop1から推定ブロック51aの出力である振幅差ΔV1を減算し振幅指令値V1*を出力する。また、減算器54bにおいて、電圧降下による位相遅れθdrop1から推定ブロック51の位相差Δθ1を減算し、位相指令値θ1*を出力する。減算器54a,54bから出力される振幅指令値V1*,位相指令値θ1*は、図2のインバータ制御ブロックに入力される。
電圧降下Vdrop1,電圧降下による位相遅れθdrop1から推定ブロック51aで得られた振幅差ΔV1,位相差Δθ1を減算することでずれを打ち消すことができる。インピーダンス差R1,X1については、例えばId1>0の条件ならばインピーダンス差R1との積が電圧指令値に加算され、インピーダンス差X1との積が位相の進み指令として加算される。これにより、インピーダンス差R1,X1での電圧降下に相当する分を無停電電源装置UPSから過剰に出力することにより電圧降下を打ち消すことができる。Iq1についてもId1と同様である。以上により得られる振幅指令値V1*,位相指令値θ1*は、(3)式となる。
この時、Vstd=1であり、さらにId1=Id,Iq1=Iqであれば、(3)式は後述する(12)式,(13)式に一致する。(12)式,(13)式が成立していれば横流電流は拡大せず、零を保ち続ける。
Id1≠Id,Iq1≠Iqとなり横流電流が発生した場合を考える。インピーダンス差R1,X1の電圧降下は横流電流を含む条件で打ち消されるが抵抗成分Rc,リアクタンス成分Xcによる電圧降下は制御による打ち消しが行われない。例えば、Rc>Xcの条件で無停電電源装置UPS1の出力電流が他の無停電電源装置よりも過剰となってしまった場合、抵抗成分Rcによる電圧降下が他の無停電電源装置よりも大きくなるため、無停電電源装置UPS1のフィルタ出力電圧は他の無停電電源装置よりも小さくなる。そのため、自身の出力電流は減少させ、他の無停電電源装置の出力電流は増加を促し、横流電流は減少する。最終的にId1=Id,Iq1=Iqとなるところで定常となるため、横流電流は抑制される。
以上の動作により、推定したパラメータを用いることで、他の無停電電源装置の出力電流や負荷電流の検出信号を使用せずとも横流電流を抑制することができる。そのため、図5の制御ブロックでは図3とは異なり他の無停電電源装置の出力電流検出信号を使用しない。
実際の運用では、横流電流抑制制御ブロックとして図3のものを用意し、試運転を行う。試運転では、適当なダミー負荷を2つ用意する(1つは無負荷でも良い)。まず、1つめの負荷で運転を行い、制御ブロックにより横流が零に近くなり図4のバッファ36に値が記憶されたことを確認する。次に、2つめの負荷に切り換え、再度横流が零に近くなるまで待ち、バッファ44に値が記憶されたことを確認し、試運転は終了する。この時、図4の推定ブロック51aによりパラメータの推定が完了する。
その後は、横流電流抑制制御ブロックを図5のものに切り換え、負荷をダミー負荷から実負荷に切り換え、実運用運転を行うことになる。この実運用運転時には、試運転時に用いた他の無停電電源装置の出力電流検出信号用の接続線を撤去してもよい。また、そのまま布線しておいた状態でその接続線に断線事故が発生しても、横流電流を抑制しながら無停電電源装置の並列運転を継続できる。
この方法では代表の無停電電源装置を1台決めるが、代表の無停電電源装置は出力電流指令値Idref,Iqrefが常に自身の出力電流に一致するため、横流電流抑制アンプや推定ブロック51aは動作しない。他の無停電電源装置が出力電流を代表の無停電電源装置に合わせるように動作するため、代表の無停電電源装置は特に何もしなくても横流電流を抑制することができる。または、出力電流指令値Idref,Iqrefを平均値として、すべての無停電電源装置で出力電流を平均電流にあわせるように調整を行っても良い。
横流電流抑制制御ブロックのアンプは、基本波数周期〜数秒に1回動作させることを想定している。これは、以下の理由による。
振幅指令値V1*,位相指令値θ1*を更新してから横流電流の変化として現れるまで時間がかかる。
通信負荷を低減し、安価な通信システムでも本実施形態1の方法を動作できるようにする。
実施形態1におけるパラメータの推定方法と、それにより横流電流を抑制する原理を図6により説明する。本実施形態1は、交流電源が停電していない状態であり、すぐにバイパス電源に切り換えられるようフィルタ出力電圧をバイパス電圧に同期させた状態において適用することを想定している。図6では、簡略化のため基本波成分のみに着目し、無停電電源装置のインバータを交流電圧源に置き換え、チョッパCHP1やコンバータCNV1は省略、フィルタやインバータの内部インピーダンス、ケーブルの寄生インピーダンスを抵抗とリアクトルで表している。3つの負荷は同じものとし、各無停電電源装置UPS1〜UPS3は等しい有効電力成分の電流Id、遅れ無効電力成分の電流Iqを出力しているものとする。また、説明のため各無停電電源装置UPS1〜UPS3を並列接続バスにスイッチを設ける。
実際の構成ではスイッチはなく、常に短絡状態となる。この時、スイッチを開放した状態において負荷電圧の振幅と位相が下記(4)式 となっていれば、各スイッチ間の電位差は零になるため、スイッチを短絡しても横流電流は流れない。
無停電電源装置UPS3を基準にとり、定格電圧振幅をVstd、無停電電源装置UPS3の出力する電圧振幅をV、バイパス電圧を基準とした時の電圧位相をθと置く。定格電圧振幅Vstdは、制御回路上では正規化により1となる。無停電電源装置UPS3のインバータ内部インピーダンス、フィルタやケーブル寄生インピーダンスの抵抗成分をRc、リアクタンス成分をXcと置く。無停電電源装置UPS1の出力する電圧振幅は、無停電電源装置UPS3に等しい値Vとそこからの振幅差ΔV1、さらに制御による振幅指令値としてV1*が加算される。
位相についても同様で、無停電電源装置UPS3に等しい値θと位相差Δθ1、制御による位相指令値θ1*の和として表すことができる。無停電電源装置UPS1のインピーダンスについても、無停電電源装置UPS3に等しい値抵抗成分Rc、リアクタンス成分Xcとそこからのインピーダンス差R1,X1との和で表すことができる。無停電電源装置UPS3について、スイッチを開放した状態においてバイパス電圧と同相成分の電圧の関係式を以下の(5)式のように立てることができる。
この(5)式は、無停電電源装置UPS3の出力電圧Vからインピーダンスによる電圧降下を減算したものが出力電圧VLになることを表している。リアクタンス成分Xcについては、電圧降下が通過電流に対して90deg進みとなるので、90deg遅れ電流Iqとの積が同相成分となる。バイパス電圧と直交成分の電圧についても関係式を以下の(6)式のように立てることができる。
この(6)式では、位相遅れを正としている。無停電電源装置UPS3の出力電圧Vの位相遅れにインピーダンスによる位相遅れを加算したものが出力電圧VLの位相遅れとなる。リアクタンス成分Xcについては、通過電流の同相成分Idによる位相ずれは進みとなるので、(6)式では減算となる。以上の式について、出力電圧はバイパス電圧に同期するようPLL処理器PLLにより制御されているため、θ≒0,θL≒0が成り立つ。また、振幅についても定格電圧Vstdになるよう制御を行うため、V≒Vstd,VL≒Vstdである。これを利用して(5)式,(6)式を近似すると、(7)式が得られる。電圧検出器における検出誤差は一般的に振幅1%,位相ずれ2/3deg=0.0116rad、調整は無停電電源装置間インピーダンス0.1%として1%=0.01rad=0.57degで10%の横流抑制効果となる。両方足してもせいぜい3%=0.03rad程度であるため、近似の適用は妥当である。
無停電電源装置UPS1,UPS2についても、同様に関係式を立てて近似を適用することにより、以下の(8)式,(9)式が得られる。
振幅差ΔV1や位相差Δθ1は装置の個体差の他、検出器の誤差や検出信号の遅延によっても発生する。インピーダンス差R1,X1は無停電電源装置から並列接続点までのケーブル長のずれや、フィルタLCの製造誤差、スイッチング素子のデッドタイムのずれなどを表している。図6のスイッチを短絡しても横流電流が零になるならば、スイッチ開放状態においても(4)式が成立するため、(4)式を使用し、さらに(8),(9)式より(7)式を引くと、以下の(10)式,(11)式が得られる。
無停電電源装置UPS1 については、振幅指令値V1*,位相指令値θ1*を(10)式より以下(12)式,(13)式のように求めることができる。
しかし、現段階ではまだインピーダンス差R1,X1,振幅差ΔV1,位相差Δθ1が未知数であるため、振幅指令値V1*,位相指令値θ1*を直接求めることはできない。そこで、スイッチ短絡状態で横流電流を検出し振幅指令値V1*,位相指令値θ1*を調整、横流電流を抑制するフィードバック制御を構成し、横流電流が零になる振幅指令値V1*,位相指令値θ1*をフィードバック制御により求める。横流電流を零にするための振幅指令値V1*,位相指令値θ1*が求まっても、(10)式は式2つに対して未知数がインピーダンス差R1,X1,振幅差ΔV1,位相差Δθ1の4つであるため、これだけでは未知数を求めることができない。
そこで、負荷条件を変えて出力電流IdA,IqAとIdB,IqBの2通りでフィードバック制御により横流電流を零にできた場合を考える。出力電流IdA,IqAにおける振幅指令値,位相指令値をV1A*,θ1A*、出力電流IdB,IqBにおける振幅指令値,位相指令値をV1B*,θ1B*とすると、(10)式は以下のような(14)式,(15)式となる。
以上の式より、インピーダンス差R1,X1,振幅差ΔV1,位相差Δθ1を以下のように求めることができる。
以上の結果を(12)式,(13)式に代入し、さらに出力電流Id,Iqは自身のフィルタ出力電流検出値を用いることにより、フィードバックを行わなくても任意の負荷条件に対して横流電流を零にするための適切な振幅指令値V1*,位相指令値θ1*を求めることができるようになる。
以上は無停電電源装置UPS2についても同様である。出力電流IdA,IqAにおける無停電電源装置UPS2の振幅指令値,位相指令値をV2A*,θ2A*,出力電流IdB,IqBにおける振幅指令値をV2B*,位相指令値をθ2B*とし、これらの値を(11)式に代入して連立方程式を解くことで、以下の(20)〜(23)式が得られる。
従来法では、特に過渡的な横流電流を小さくするには通信周期をできる限り短くする必要があった。しかし、本実施形態1では通信による横流電流抑制は試運転に限るため、試運転に使用する負荷としてある程度の横流が流れても装置が耐えられるものを選定すれば、高速な通信が不要となる。
また、試運転中に通信を用いて横流電流抑制制御に必要なパラメータを推定することにより、実運用運転では異なる無停電電源装置間の通信レスで横流電流を抑制することができる。
さらに、通信レスで横流電流を抑制できるため、実運用運転時には異なる無停電電源装置間の通信線の布線が不要である。また布線があっても使用していないため、その通信線の事故による断線は横流電流の抑制効果に影響しない。したがって、装置の信頼性を向上することができる。
また、試運転においても従来法に比べて高速な通信が不要であり、負荷電流を検出して分配する必要もないため、コストを下げることができる。
さらに、試運転でのパラメータ推定は自動で行うことができるため、手動調整が不要であり試験時間を短縮できる。
また、推定のための負荷パターンは2つ必要であるが、適当なダミー負荷を用意して無負荷とダミー負荷での運転を行えばよく、負荷の種類や力率を問わず試運転を行うことができる。
また、主回路上に除去できない負荷がある場合においては、負荷パターンの一方は完全な無負荷でなくともパラメータを推定できる。したがって、主回路上に除去できない負荷がある場合でも、短時間で試運転を行うことができる。
さらに、負荷変動が生じた際の過渡的な横流電流も小さくすることができる。
[実施形態2]
図7に本実施形態2におけるインバータINV1の横流電流抑制制御ブロックを示す。このブロックは、実施形態1の図3と図5を組み合わせた構成である。以下に、実施形態1との相違点を示す。
有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1は、出力電流指令値Idref,Iqrefとの偏差を演算する減算器22a,22bと、インピーダンス差R1,X1との積を演算する乗算器52a〜52dにも入力する。
通信が正常であることを示す信号を入力する。通信の状態検出には、例えば、予め決められたデータを周期的に送信するように決めておき、そのデータを受信した際に誤りがある場合や一定時間データを受信しなかった場合に通信異常と判断する方法がある。
振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpを出力するアンプAMP3,AMP4の前段にスイッチSW1,SW2を設け、通信が正常である場合にスイッチSW1,SW2を短絡する。
通信が正常であることを示す信号は、推定ブロック51bにも入力する。振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpを出力するアンプAMP3,AMP4は推定ブロック51bからのリセット信号を受け付け、リセット信号入力時はアンプAMP3,AMP4の積分要素をリセットし出力を零とする。
インバータ制御ブロックの入力信号である振幅指令値V1*は、振幅ずれV1cmpから推定ブロック51bから出力された振幅差ΔV1を減算し、さらに、電圧降下Vdrop1を加算したものとする。インバータ制御ブロックの入力信号である位相指令値θ1*は、アンプAMP4出力の位相ずれθ1cmpから推定ブロック51bから出力された位相差Δθ1を減算し、さらに、電圧降下による位相遅れθdrop1を加算したものとする。
図8に、本実施形態2における横流抑制用のパラメータ推定ブロックの構成を示す。実施形態1からの変更点を以下に示す。
AND素子56に通信が正常であることを示す通信正常信号と、比較器34の出力とを入力する。AND素子56は通信正常信号と比較器34の出力が共に「1」レベルである時「1」レベルの信号をホールド器35、AND素子42に出力する。AND素子42はAND素子56と比較器41の出力が共に「1」レベルの時、「1」レベルの信号をホールド器43に出力する。すなわち、ホールド器35,43の動作条件として通信が正常であることを含める。
AND素子46は、ホールド器35、43の両方が「1」レベルの信号を出力した時リセット信号を出力し、横流抑制制御ブロックのアンプAMP3,AMP4をリセットする。
演算器45の後段にあるスイッチSWの後段に遅延器57a〜57dを追加する。遅延器58はAND素子42から出力されたリセット信号を1演算時間遅らせる。ホールド器35,43は、遅延器58の出力を入力するようにし、信号入力時は出力を0に戻す。
本実施形態2 は、インピーダンス差R1,X1,振幅差ΔV1,位相差Δθ1の推定を繰り返し行い、得られた前回の推定結果からの変動分を前回の推定結果に積算して出力するようにした方式である。
パラメータ推定手順は実施形態1と同じであるが、図8の横流電流抑制制御ブロックは推定完了時にアンプAMP3,AMP4のリセットを行うだけで、推定完了後もアンプAMP3,AMP4を動作させ続ける。これにより、推定完了後に生じたケーブルインピーダンスやスイッチング素子特性の温度変化・経時変化によって発生する横流電流を抑制することができる。
この時、振幅差ΔV1,位相差Δθ1,電圧降下Vdrop1,電圧降下による位相遅れθdrop1によって特性変化前の外乱による横流電流は抑制されるため、推定完了後に生じる振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpは特性の変動分による横流電流の抑制に必要な値となる。この振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpを使用して再推定を行うと、得られるパラメータ
(演算を行う図8の演算器45の出力)は前回の推定結果
(R1,X1,ΔV1,Δθ)からの変動分となる。
よって右辺が(16)式〜(19)式と同じである下記(28)式〜(31)式により、変動分(Rn,Xn,ΔVn,Δθn)が演算される。
そこで、図8に示すように変動分(図8の演算器45の出力)を前回の推定結果(R1,X1,ΔV1,Δθ1)に遅延器57a〜57dによって積算することで、再推定後のパラメータ(R1,X1,ΔV1,Δθ1の再推定結果)に変動分を反映させることができる。実運用運転中に生じる負荷変動を利用して繰り返し推定を行うことで、ケーブルインピーダンスやスイッチング特性の温度変化や経時変化にも追従することができ、常に横流電流を抑制することができる。
図9に、図7,図8の各部信号のタイムチャートの例を示す。負荷変動(電流指令値Idrefの急変)後に、Id1≒Idrefとなる動作(過渡的に生じた横流電流を抑制する動作)とインピーダンス差R1を再推定・補正する動作を表している。
本実施形態2では、図8にある推定ブロック51bの遅延器57a〜57dにあらかじめ初期値を設定することで、試運転を省略することができる。例えばダミー負荷を用意できない場所への設置や、実負荷への給電を中断せずに無停電電源装置の追加増設を行う場合にも対応することができる。そのときに生じる横流電流は初期値の精度に依存するが、精度が低い場合でも横流電流抑制ブロックがあるため、横流電流は過渡的に生じるだけであり、パラメータ再推定によりパラメータの誤差を打ち消すことができ、再推定後は過渡的な横流電流も小さくすることができる。
ここで、異なる無停電電源装置間の通信が故障などにより停止した場合、電流指令値Idref,Iqrefを受信することができないため、アンプAMP3,AMP4を停止し、パラメータ推定も中断する必要がある。そこで、通信が正常であることを示す信号を入力し、通信が異常である場合にはアンプ前段のスイッチSW1,SW2を開放してアンプAMP3,AMP4の入力を零とすることでアンプAMP3,AMP4を停止する。
また、推定ブロック51bも内部のホールド器35,43の動作条件に通信が正常であることを含めることにより、通信が停止した場合にはパラメータ推定が中断され、前回の推定結果である遅延器52a〜52dの出力がそのまま出力される。これにより、通信停止中は実施形態1と同じ動作になる。しかし、通信停止直前まで推定を繰り返していたため、通信停止直前までの特性変動をパラメータに反映させることができ、実施形態1よりも高い横流電流抑制効果を得ることができる。
なお、本実施形態2では、実施形態1での実運用運転時には不要であった異なる無停電電源装置間の通信線の接続は必要である。しかし、実施形態2では、この接続線が事故等により断線・通信停止となった場合でも上記のような動作をとることによって、横流電流を抑制しながら無停電電源装置の並列運転を継続できる。
本実施形態2も代表の無停電電源装置を1台決めて運転を行う。代表の無停電電源装置が異常などにより停止した場合、別の無停電電源装置が代表となり横流電流抑制制御やパラメータ推定を停止し、他の無停電電源装置は新しい代表の無停電電源装置に出力電流をあわせるように動作することで、そのまま運転を継続することができる。例えば、図6において無停電電源装置UPS3が停止し無停電電源装置UPS1が新しい代表の無停電電源装置となった場合を考えると、無停電電源装置UPS1は無停電電源装置UPS3停止直前まで振幅差ΔV1やインピーダンス差R1などを推定していたため、無停電電源装置UPS1は振幅差ΔV1やインピーダンス差R1などの外乱の影響を打ち消した無停電電源装置UPS3に等しい電圧を出力する。そのため、無停電電源装置UPS2は代表の無停電電源装置が切り替わっても無停電電源装置UPS3に等しい電圧を出力すれば良く、横流電流を拡大させることなく運転を継続することができる。
また、出力電流指令値Idref,Iqrefを平均値とした場合は、平均を求める際に停止した無停電電源装置を除外すればそのまま運転を継続することができる。
本実施形態2でも、横流電流抑制のための通信(出力電流指令値Idref,Iqrefを読み込む通信)は基本波数周期〜数秒に1回動作させることを想定している。これは、いったんパラメータの推定が完了すれば、通信をしなくても横流電流抑制ができるためであり、通信による横流電流抑制は特性変動への追従を目的とした補助的なものだからである。
一般的に温度や経時による特性変動は急激には生じないため、低速な通信でも十分な効果を得ることができる。また、推定ブロックにおいて横流電流の大きさを検出する周期も通信にあわせるため、平方根といった複雑な演算の回数を少なくし、演算負荷を低減する効果も得られる。
本実施形態2によれば、 実施形態1の作用効果に加え、以下の効果が得られる。
パラメータ推定完了後も通信を有効にして推定を繰り返し行うことで、精度を向上させることができ、インピーダンスやスイッチング素子特性の温度変化や経時変化にも対応できる。
パラメータ推定には負荷変動が生じればよい。例えば、無効電力だけが変動した場合や、負荷電流振幅は変わらず力率だけが変動した場合でもパラメータ推定を行うことができ、適用範囲を拡大できる。
積算器の初期値として手動であらかじめ推定したパラメータを入力すれば、最初から過渡的な横流電流を小さくすることができ試運転を省略できる。効果の程度は初期値の推定精度に依存するが、精度が低くても自動で再推定を行うことができる。
[実施形態3]
図10に、本実施形態3におけるインバータINV1のパラメータ推定前の横流電流抑制制御ブロックを示す。実施形態1における図3や図5からの変更点は図10の破線で囲った箇所である。また、本実施形態3では出力電流指令値Idrefとして、加算器61a,61b,除算器62a,62bで算出した各無停電電源装置のd軸の出力電流Id1,Id2,Id3の平均電流を使用している。出力電流指令値Iqrefについても同様である。実施形態1からの変更箇所を以下に示す。
乗算器63a,63bにより、出力電流指令値Idref,Iqrefの二乗を求める。次に、加算器64により、乗算器63a,63bの出力を足し合わせ、演算器65により加算器64の出力の平方根を求める。得られた値は出力電流指令値の基本波振幅である
比較器66は、前記出力電流指令値Idref,Iqrefの基本波振幅が第3閾値Ithcを超えた時に1を出力する。AND素子67は、比較器66の出力が「1」レベルで、かつ、通信正常信号が「1」レベルである場合、「1」レベルの信号を出力し、スイッチSW1a,SW1bを短絡する。NOT素子68は比較器66の出力を論理反転する。AND素子69は、比較器66の出力が0で、かつ、通信正常信号が「1」レベルである場合に「1」レベルの信号を出力し、スイッチSW1c,SW1dを短絡する。
出力電流指令値Idrefを除算器70aで出力電流指令値の基本波振幅で除算し、出力電流指令値の力率を演算する。また、出力電流指令値Iqrefを除算器70bで出力電流指令値の基本波振幅で除算する。
乗算器71a〜71dにおいて、除算器70a,70bの出力とスイッチSW1a,SW1bとの積を求める。加算器72aにおいて乗算器71aと71cの出力を足し合わせ、加算器72bにおいて乗算器71bの出力から71dの出力を減算する。加算器72a,72bの出力を元に積分などの処理を行い、インピーダンス差R1,X1として出力する。
本実施形態3におけるパラメータ推定後の横流電流抑制制御ブロックは、実施形態1と同様に図5に示すものを使用する。ただし、図5にある推定ブロック51aの出力する振幅差ΔV1、位相差Δθ1は、それぞれ図10のアンプAMPが出力する振幅ずれV1cmp、位相ずれθ1cmpの符号を反転したものとなる。
本実施形態3におけるパラメータの推定方法について説明する。本実施形態3では、試運転において負荷パターンの1つが無負荷となる場合を想定している。無負荷では、(10)式においてId=Iq=0となるため、振幅差ΔV1,位相差Δθ1は(24)式となる。
また、図10においてもId=Iq=0ならば振幅指令値V1*,位相指令値θ1*は(1)式が成り立つため、(25)式となる。
フィードバックで得られた振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpがそのまま振幅差ΔV1,位相差Δθ1の符号を反転したものとなる。そこで、最初に無負荷で試運転を行い、通信を用いて横流電流を抑制する。図10のブロックでは、各フィルタ出力電流Iups1〜Iups3の平均値は、√(Idref2+Iqref2)の式で演算されて、65より出力される。この65の出力が第3閾値Ithc(例えば10%など零に近い値)より小さいことを検出して無負荷であると認識し、スイッチSW1c,SW1dを短絡して横流電流が零になるように振幅ずれV1cmp、位相ずれθ1cmpを調整して振幅差ΔV1,位相差Δθ1を求める。この時スイッチSW1a,SW1bは開放され、インピーダンス差R1,X1は初期値(通常は0)のまま変化しない。
次に、適当な負荷を投入して試運転を行いインピーダンス差R1,X1を求める。先ほどの無負荷での試運転で求めた振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpをそれぞれ振幅指令値V1A*,位相指令値θ1A*,出力電流をId1A=Iq1A=0とし、負荷投入時には実施形態1を適用して振幅指令値V1B*,位相指令値θ1B*,出力電流Id1B=Iq1Bを求めて(16)式,(17)式に代入して求めることもできる。
しかし、インピーダンス差R1は出力電流Id1が流れている時は電圧振幅の調整要素となり、出力電流Iq1が流れている時は電圧位相の調整要素となることに注意すれば、インピーダンス差R1,X1をフィードバックループにより直接操作して横流電流を抑制することができる。
すなわち、振幅ずれV1cmpを増加する代わりとして、有効電力の出力があればインピーダンス差R1を大きく設定し、遅れ無効電力の出力があればインピーダンス差X1を大きく設定して電圧降下の推定結果であるVdrop1を増加させればよい。位相ずれθ1cmpを進める代わりとして、有効電力の出力があればインピーダンス差X1を小さく設定、遅れ無効電力の出力があればインピーダンス差R1を大きく設定して、電圧降下による位相遅れの推定結果θdrop1を増加させればよい。
このように、電流偏差(22a、22bの出力)に基づく信号である24a、24bの出力に、負荷の力率(=有効電力/√(有効電力2+無効電力2)=Idref/√(Idref2+Iqref2))に基づく信号である70a、70bの出力をかけた値(71a、71b、71c、71dの出力)をアンプAMP1、AMP2に入力することで、フィードバックループにより直接インピーダンス差R1,X1を変更して横流電流を抑制することができる。先の無負荷での試運転で振幅差ΔV1,位相差Δθ1を求めているため、以上の手順で調整を行い横流電流が零となった時のインピーダンス差R1,X1がそのまま適正値となる。このような考え方と(3)式に基づいて、図10の点線内のインピーダンス差R1とX1を推定するブロックが組まれている。
図10のブロックでは、各無停電電源装置のフィルタ出力電流Iups1〜Iups3の平均値が第3閾値Ithcより大きいことを検出して負荷があることを認識し、スイッチSW1a,SW1bを投入しインピーダンス差R1,X1を直接操作する動作に切り換える。この時スイッチSW1c,SW1dは開放され、振幅ずれV1cmp、位相ずれθ1cmpを出力するアンプAMP3,AMP4は動作を停止する。振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpはアンプAMP3,AMP4の積分要素によりスイッチSW1c,SW1dを開放する直前の値(無負荷における調整結果)が出力される。
そして、横流電流が所定の値以下に抑制されたところでインピーダンス差R1,X1は適正値に調整完了したとみなして、試運転を終了する。(なお、この試運転終了の処理の制御ブロックは、図10には示していない。図10に追加してもよいし、試験者が計測器で横流電流を測定することで、試運転終了を判断してもよい。)
以上により必要なパラメータ振幅差ΔV1,位相差Δθ1,インピーダンス差R1,X1が求まるため、後は実施形態1と同様に図5の制御ブロックに求めたパラメータを設定し、実運用運転を行う。これにより実施形態1と同様の効果を得られ、さらに実施形態1よりも記憶用バッファアが不要になるなど制御ブロックが簡単になるという利点が得られる。
また、上記のパラメータ推定後も図10の制御ブロックを用いて実運用運転を行うことにより、実施形態2と同様に特性の温度変化や経時変化に追従させることもできる。特に、温度変化に対しては主にインピーダンス差R1が変動するため、ある程度負荷がある状態でインピーダンス差R1を直接調整することで、温度変化に追従させることができる。
なお、この制御方法で通信異常(Id2などの検出の異常)が発生した場合は、図10の通信正常信号が0となり、スイッチSW1a,SW1b,SW1c,SW1dが開放する。これにより、図10の4つのアンプAMP1〜AMP4の入力はすべて0となるため、積分要素を持つ各アンプAMP1〜AMP4の出力は変化しなくなる。したがって、異常発生直前のパラメータ推定値を用いての無停電電源装置の並列運転が継続される。
本実施形態3では出力電流指令値Idref,Iqrefを各無停電電源装置のフィルタ出力電流Iups1〜Iups3の平均値としたが、実施形態1と同様に代表の無停電電源装置のフィルタ出力電流Iupsをそのまま出力電流指令値とすることもできる。
なお、本実施形態3のフィルタ出力電流をインバータ出力電流に置き換えてもよい。
本実施形態3によれば、 負荷条件の1つを無負荷に限定することで、記憶用バッファが不要になるなどパラメータ推定の演算ブロックを簡略化できる。これにより、実施形態1と比較して制御回路部の小型化・低コスト化が図れる。
また、実施形態2と同様に、実運用運転中も有効にすることができ、インピーダンスやスイッチング素子特性の温度変化や経時変化に追従できる。
[実施形態4]
図11に本実施形態4におけるインバータINV1の出力電圧制御ブロックを示す。実施形態1から追加したブロックを以下に示す。
減算器73により、無停電電源装置UPS1の定格周波数fstd1から周波数補正値f1を減算する。積分器74は、減算器73の出力を積分し、さらに2πをかけて周波数から位相を求める。
スイッチ75は、通常時PLL出力を後段に出力し、停電などのバイパス電圧異常時には積分器74の出力を後段に出力する。加算器76により、スイッチ75の出力に、位相指令値θ1*を加算する。
図12に実施形態4におけるインバータINV1の横流電流抑制制御ブロックを示す。実施形態1の図5から追加したブロックを以下に示す。
乗算器77a〜77dにより、出力電流の有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1と係数α、βとの積を演算する。加算器78aにより乗算器77aと77cの出力を足し合わせ、加算器78bにより乗算器77bの出力から77dの出力を減算する。乗算器79a,79bにより、加算器78a,78bの出力とゲインG0との積を求める。減算器80a,80bにより、電圧降下Vdrop1と電圧降下による位相遅れθdrop1から乗算器79a,79bの出力を減算する。
乗算器81により、加算器78bの出力とゲインG1との積を求める。この乗算器81の出力は周波数補正値f1となる。
本実施形態4は、実施形態1に対して既存技術であるPQ垂下方式を組み合わせることで、停電などバイパス電源に異常が発生した場合への対応として出力電圧をバイパス電圧に同期させずに運転できるようにした方式である。
図11の出力電圧制御ブロックでは、バイパス電源異常時にはPLLではなく設定された周波数を各無停電電源装置の制御回路が積分して位相に変換し、出力電圧の制御を行う。出力電圧の周波数は、各無停電電源装置個別の定格周波数fstd1と周波数補正値f1の他、制御回路内部発振器による積分器74の内部の積算回路の動作回数によって決まる。
図12の横流電流抑制制御ブロックでは、出力電流の有効電力成分Id1,無効電力成分Iq1により出力電圧の振幅と位相を変化させる。例として、α=1,β=0の場合は、出力電流の有効電力成分Id1が増加したら出力電圧の振幅指令値V1*を減少させる。遅れ無効電力成分Iq1が増加したら出力電圧の位相指令値θ1*を進ませ、またバイパスに同期させない運転の場合は位相を進ませるほか周波数も増加させる。
これにより、他に出力電流の小さな無停電電源装置がある場合は、自身の出力電流の減少と他方の無停電電源装置の出力電流増加が促される。周波数の異なる交流電源を並列に接続すると横流電流が拡大するが、出力電流に応じて周波数を調整することで、すべての無停電電源装置で電圧周波数を揃えることができ、横流電流の拡大を防ぐことができる。
他の無停電電源装置の出力電流が等しい場合は、他の無停電電源装置も電圧振幅・位相・バイパス非同期であれば周波数を同じように変化させるため、横流電流は零に保たれる。
以上の機能は従来のPQ垂下方式と同等であるが、ノイズなどによりパラメータ推定ブロックの出力に誤差が生じた場合や温度変化や経時変化が生じた場合でも、推定を繰り返し行わなくても横流電流の拡大を抑制することができる。また、この機能はバイパス同期運転においても横流電流を抑制するように作用するため、バイパス同期・非同期運転にかかわらず適用することができる。
バイパス 非同期運転では位相ずれではなく周波数ずれが横流電流の原因であるため、周波数ずれをできる限り小さくすることが重要となる。方法としては、バイパス非同期運転中の横流電流を通信により検出して周波数ずれを補償する方法や、無停電電源装置の制御機能を搭載したプリント基板の製造段階で内部発振器の周波数を合わせることが考えられる。
しかし、前者はバイパス非同期運転になるまで周波数ずれを補償する手段がなく、通信停止と停電が重なったら対応できないという問題がある。後者は、内部発振器の経時変化に対応できない。
この対応策の例を図13に示す。まず、零クロス検出部104にバイパス電圧Vbyp1を入力し、バイパス電圧Vbyp1の極性が負から正に変化する零クロス点を検出する。バイパス電圧Vbyp1は各無停電電源装置で同じ系統であるが、測定場所や検出器の個体差などから検出遅延が異なる。しかし、検出遅延の大きさが急変することはないため、2つの零クロス点間の時間(バイパス電圧1周期)の検出結果はすべての無停電電源装置で同じ値となる。
無停電電源装置の内部発振器でカウンタ105をバイパス電圧1周期の間動作させ、得られた値C1を出力する。C1はバイパス電圧Vbyp1の周波数の逆数(周期)に相当するが、無停電電源装置UPS1の内部発振器を基準としている。これと参照値Crefとを比較する。Crefは、通信により各無停電電源装置のカウンタ出力の平均を求めたものとしても良いし、代表の無停電電源装置を1台決めてそのカウンタ出力値としても良い。比較には除算器106を使用する。乗算器107により、比較結果と定格周波数f0(通常50Hzまたは60Hz)との積により定格周波数fstd1を求める。
例えば、調整対象の無停電電源装置の内部発振器の周波数が他の無停電電源装置よりも高い場合、図11の積分器74は内部で積算を行うが、積算回数が他の無停電電源装置よりも多くなるため、対象の無停電電源装置の出力周波数は他の無停電電源装置より高くなってしまう。しかし、カウンタ出力も他の無停電電源装置より増加するため、Cref/C1は1よりも小さくなり、定格周波数fstd1も小さくなる。これにより、過剰な積算回数を補償することができ、他の無停電電源装置と同じ周波数の電圧を出力することができる。
なお、停電時にはバイパス電圧Vbyp=0となるため、図13による定格周波数fstdの演算はできない。したがって、バイパス電圧Vbypの正常状態時に図13による定格周波数fstdの演算を行って記憶しておく。そして、停電時には、記憶したfstd1を適用して図11の制御ブロックに適用する。
本 実施形態4は実施形態2と組み合わせ、温度変化や経時変化に対して横流電流をさらに抑制することもできる。本実施形態4ではPQ垂下による電圧降下を新たに加えたが、この電圧降下はすべての無停電電源装置で等しく生じるため、図6のインピーダンスの抵抗成分Rc,リアクタンス成分Xcに該当する。推定ブロックの動作は(16)〜(19)式にあるようにインピーダンスの抵抗成分Rc,リアクタンス成分Xcには依存しないため、推定ブロックとは干渉を起こさず、PQ垂下特性を追加することができる。
しかし、実施形態2と組み合わせた場合の注意すべき点として、バイパス非同期運転の場合は各無停電電源装置が横流電流の大きさに応じて出力周波数を独自に決めるため、位相ずれθ1cmp(図7に記載)を変更しても定常的な横流電流を抑制することができない。また、基準となる位相が定まらないため、横流電流が零になった時の位相ずれθ1cmpの値を推定に用いることはできない。
そのため、バイパス非同期運転では位相ずれθ1cmpを出力するアンプは動作を停止する必要がある。すなわち、図7の位相ずれθ1cmpのアンプAMP4の入力に接続しているスイッチSW2を開放する。さらに、推定ブロック51bも停止する必要がある。すなわち、図8のスイッチSWをすべて開放する。インピーダンス差R1,X1による電圧降下やPQ垂下特性により位相を変更する機能については、バイパス非同期運転でも負荷変動時の過渡的な横流電流抑制に効果があるため有効とする。
本 実施形態4によれば、実施形態1の作用効果に加え、以下の効果が得られる。
停電などバイパス電圧異常時で共通となる同期信号がない場合でも横流電流を小さくすることができる。
PQ垂下方式を追加してもパラメータ推定機能と干渉しない。
PQ垂下方式と同じ効果も得られる。パラメータ推定が完了する前やパラメータ推定結果に誤差が含まれる場合、インピーダンスやスイッチング素子特性の温度変化や経時変化が生じた場合でも横流電流を小さくすることができる。
実施形態2と組み合わせ、パラメータ推定を繰り返し行い、横流電流抑制効果を高めることもできる。
また、実施形態3と組み合わせ、パラメータ推定ブロックを簡略化することもできる。
[実施形態5]
図14に本実施形態5におけるインバータINV1の出力電圧制御ブロックを示す。実施形態1から追加したブロックを以下に示す。
乗算器81a,81bにより制御回路の内部位相情報ωt+θ1*をn倍する。また、乗算器81cにより、制御回路の内部位相情報ωt+θ1*をn−1倍する。
dq変換器82aにおいて、n倍した内部位相情報ωt+θ1*を元に、V1検出信号を回転座標上の値に変換する。 ローパスフィルタLPFにより、dq変換器82aの出力から交流成分を除去し、直流成分(n次高調波成分)であるVdn1,Vqn1を抽出する。
dq変換器82bにおいて、n倍した内部位相情報ωt+θ1*を元に、フィルタ出力電流Iups1の検出信号を回転座標上の値に変換する。ローパスフィルタLPFにより、dq変換器82bの出力から交流成分を除去し、直流成分(n次高調波成分)であるIdn1,Iqn1を抽出する。
乗算器83a〜83dにおいて、直流成分Idn1,Iqn1と、推定ブロック51の出力する係数であるインピーダンス差R1とX1をn倍したnX1との積を演算する。加算器84aにおいて乗算器83aと83cの出力を足し合わせ、加算器84bにおいて乗算器83bの出力から83dの出力を減算する。これにより、n次高調波電流が推定したケーブルインピーダンス差R1,X1を通過した際に発生する電圧降下Vdndrop1,Vqndrop1を求める。この電圧降下Vdndrop1,Vqndrop1が、フィルタ出力電圧のn次高調波における指令値となる。
乗算器85a,85bにより、直流成分Idn1,Iqn1の二乗を求め、加算器86により乗算器85a,85bの出力を加算する。加算器86の出力の平方根を演算器87により求め、出力電流のn次高調波振幅(実効値)In1として出力する。
減算器88により、n次高調波振幅(実効値)In1と高調波指令値Inrefとの偏差を求める。高調波指令値Inrefは、代表となる無停電電源装置を1台決めて、その代表の無停電電源装置のn次高調波電流振幅を通信により入力したものとする。または、すべてのフィルタ出力電流のn次振幅平均値を通信により求めたものとしても良い。
スイッチSWは通信正常信号により、スイッチの開閉を制御する。アンプAMPは前記減算器88で求めた偏差を入力し、積分などのアンプ処理を行う。
減算器89a,89bは、指令値である電圧降下Vdndrop1,Vqndrop1と検出値であるn次高調波成分Vdn1,Vqn1との偏差を求める。減算器89a,89bの出力する偏差と、アンプAMP出力となるゲインとの積を乗算器90a,90bにより求める。
dq逆変換器91により、n−1倍した内部位相情報ωt+θ1*を元に、乗算器90a,90bの出力を回転座標上の値に変換する。dq変換器82aでn×(ωt+θ1*)回転の座標変換をしているため、このdq逆変換器91によって(n−1)×(ωt+θ1*)逆回転の座標変換を行うことにより、dq逆変換器91の出力は、dq変換器82aの入力の座標に対して(ωt+θ1*)回転の座標変換を行うことになる。これにより、図14の点線内のAVR部のdq変換器11の出力の回転座標と同じ座標軸となる。
dq逆変換器91の出力は、加算器92a,92bにより、出力電圧制御ブロックの電圧指令値であるAMP1,AMP2の出力に加算される。
本実施形態5は、実施形態1に高調波電圧のひずみ抑制機能と高調波電流の横流抑制機能を追加した方式である。
まず、dq変換とローパスフィルタLPFを使用してフィルタ出力電圧V1の検出信号からn次高調波成分Vdn1,Vqn1を抽出する。これに高調波電圧指令値である電圧降下Vdndrop1,Vqndrop1との偏差を演算しゲインをかけて電圧制御ブロックと同じ回転座標に変換して電圧指令値に加算する。
次に、電圧降下Vdndrop1,Vqndrop1を求める。dq変換とローパスフィルタLPFを使用してフィルタ出力電流Iups1の検出信号からn次高調波成分Idn1,Iqn1を抽出する。これに、パラメータ推定ブロックで求めたインピーダンス差R1,X1との積を取り、さらにインピーダンス差X1については高調波の次数であるnとの積を取る。
これにより、直流成分Idn1,Iqn1が図6のインピーダンス差R1,X1を通過する際に生じる電圧降下Vdndrop1,Vqndrop1を求めることができる。この電圧降下を高調波電圧の指令値とすることにより、電圧降下を補償でき出力電圧VLのひずみを小さくすることができる。
さらに、n次高調波に対しては、負荷から見るとインピーダンス差R1,X1が補償により打ち消されるため、無停電電源装置UPS1の入力インピーダンスは抵抗成分Rc,リアクタンス成分Xcのみになり無停電電源装置UPS3の入力インピーダンスと等しくすることができる。よって、負荷をn次高調波電流発生源と見立てれば、高調波電流は無停電電源装置UPS1とUPS3に均等に流れ込むことになる。無停電電源装置UPS2にも同じ制御を適用すれば、図6のすべての無停電電源装置UPS1〜UPS3でn次高調波の横流電流を零にすることができる。
さらに、通信により横流電流を検出しゲイン(図14のアンプAMPの出力)を調整する。n次高調波電流の振幅In1と通信により入力するn次高調波電流の高調波指令値Inrefを比較、横流を検出してアンプAMPに入力する。自身の出力電流が小さい場合、電圧ひずみ抑制制御のゲインを増加することでインバータ内部インピーダンスである抵抗成分Rc,リアクタンス成分Xcを小さく見せかけ、出力する高調波電流を増加させることができる。
ゲイン調整機能では高調波電流をd軸q軸に分けずに振幅として扱う。これは電圧降下の補償だけでも横流電流の十分な抑制効果が得られ、ゲイン調整は横流電流をさらに零に近づけるため補助的に使用するからである。また、d軸q軸の電流指令値を別々に通信するよりも通信の負担を軽減できる効果もある。実際の運用では、ダミー負荷として高調波負荷を用意して試運転中にゲインを調整し、実運用運転では調整したゲインで固定する。または、実運用運転中も通信を有効にし、ゲイン調整機能を動作させ続けても良い。
ゲイン調整機能を動作させ続ける場合で通信異常(Inrefの検出の異常)が発生した場合は、図14の通信正常信号が0となり、スイッチSWが開放する。これにより、図14のアンプAMPの入力は0となるため、積分要素を持つアンプAMPの出力は変化しなくなる。したがって、異常発生直前のアンプAMPの出力値を用いての横流電流を抑制する無停電電源装置の並列運転が継続される。
以上は制御対象の高調波電圧がn次のみの場合である。しかし、この制御ブロックを複数並列に構成することで、同時に複数の高調波電圧を制御することができる。また、n=−1とすることで不平衡負荷駆動時における出力電圧VLの不平衡率を改善することができる。
[実施形態6]
本実施形態6は、実施形態2に高調波電圧のひずみ抑制機能と高調波電流の横流抑制機能を追加した方式である。この方式は、図14の制御ブロック(実施形態5)に、図7の制御ブロック(実施形態2)と図8のパラメータ推定ブロック(実施形態2)を組み合わせることにより実現できる。また、実施形態5と同様に、図14の制御ブロックを複数並列に構成することで、同時に複数の高調波電圧を制御することができる。また、n=−1とすることで不平衡負荷駆動時における出力電圧VLの不平衡率を改善することができる。
[実施形態7]
本実施形態7は、実施形態3に高調波電圧のひずみ抑制機能と高調波電流の横流抑制機能を追加した方式である。この方式は、図14の制御ブロック(実施形態5)に、図10の制御ブロック(実施形態3)を組み合わせることにより実現できる。また、実施形態5と同様に、図14の制御ブロックを複数並列に構成することで、同時に複数の高調波電圧を制御することができる。また、n=−1とすることで不平衡負荷駆動時における出力電圧VLの不平衡率を改善することができる。
さらに、上記の実施形態5〜7は、実施形態4と組み合わせてもよい。この方式は、図14の制御ブロック(実施形態5)に、図11の制御ブロック(実施形態4)の位相ωt+θ1*生成部と図10の制御ブロック(実施形態4)を組み合わせることにより実現できる。
以上の実施形態では無停電電源装置を例に説明した。本発明の適用は無停電電源装置に限らない。交流電圧を出力する他の電力変換装置に適用してもよい。
以上示したように、実施形態5〜7によれば、 実施形態1〜3に加え、以下の効果が得られる。
通信などにより横流電流を検出しなくても、高調波の横流電流を抑制することができる。
ケーブルインピーダンスによる電圧降下を補償し、負荷電圧のひずみを抑制することができる。
パラメータ推定が完了する前やパラメータ推定結果に誤差が含まれる場合でも、通信による横流電流抑制制御により高調波の横流電流を小さくすることができる。
実施形態4と組み合わせこともできる。
[実施形態8]
実施形態1〜7では無停電電源装置のインバータを電圧源と内部インピーダンスとを分離して考え、通信を有効にした状態で試運転を行い電圧源の出力する電圧振幅と電圧位相のずれと、内部インピーダンスの抵抗成分とインダクタンス成分の4つのパラメータを推定し、実運用運転時には推定したパラメータを用いることで、通信を行わなくても横流電流を抑制する方法を提案した。
実施形態3では、試運転の負荷パターンの1つを無負荷に限定することで、無負荷時に電圧振幅と電圧位相のずれの調整を行い、負荷投入時にはフィードバックループにより直接内部インピーダンスの抵抗成分とインダクタンス成分を調整する方法を説明した。この方法は、他の実施形態に比べて演算ブロックが簡単になる利点がある。
しかし、試運転用の回路にトランスが接続されていて励磁電流が流れる、フィルタコンデンサが接続されている、など完全な無負荷にはならない条件においては、以下のような動作となり試運転に時間がかかるという問題がある。
図15に本実施形態8で検討する主回路の条件を示す。この図15では、簡略化のため各無停電電源装置のインバータの電圧位相にずれはなく、インバータ内部インピーダンスは抵抗成分Rcのみ、負荷も力率1の同じ抵抗が3つ接続されていると仮定する。この仮定により、負荷電流は有効電力成分Idのみが流れ、調整対象は電圧振幅と内部インピーダンスの抵抗成分Rcのみとなる。スイッチを開放した時、各無停電電源装置の出力する出力電圧VL1、VL2、VLが等しければ、スイッチを短絡しても横流電流は発生しない。そのため、任意の大きさの負荷において、無停電電源装置UPS1の出力電圧VL1の特性を基準である無停電電源装置UPS3の出力電圧VLに合わせることを検討する。
図16(a)に調整対象の無停電電源装置UPS1と基準となる無停電電源装置UPS3の電圧特性を示す。(a)は初期状態で出力電圧にずれがあるため、ずれに比例した横流電流が発生する。この例では、無停電電源装置UPS1の出力電流が過剰となり、無停電電源装置UPS3の責務が無停電電源装置UPS1よりも少なくなってしまう。
図16(b)〜(e)に無負荷にならない条件で実施形態3を適用し、図16(a)の無停電電源装置UPS1の電圧特性を無停電電源装置UPS3の電圧特性に合わせていった時の動作を示す。
適用にあたり第3閾値Ithcを設定し、無停電電源装置UPS1の出力電流が第3閾値Ithcよりも小さい場合は電圧振幅を、大きい場合は内部インピーダンスを調整させる。図16(b)では各無停電電源装置の出力電流がIdAであり、IdA<Ithcの関係があるため、無停電電源装置UPS1の出力電圧特性のうち切片(IdA=0の時の出力電圧VL1)を小さくして電圧振幅を減少させ、出力電流IdAにおける出力電圧VL1(IdA)を無停電電源装置UPS3の出力電圧VL(IdA)と一致させる。
次に、負荷が変動し、(c)の状態になった場合を検討する。(c)では出力電流はIdBであり、IdB>Ithcの関係があるため、無停電電源装置UPS1の内部インピーダンスを制御により大きくする。その結果、無停電電源装置UPS1の出力電圧特性のうち傾きが小さくなる(符号はマイナスで絶対値は大きくなる)ことで電圧振幅を減少させ、出力電流IdBにおける出力電圧VL1(IdB)を無停電電源装置UPS3の出力電圧VL(IdB)と一致させる。しかし、この時、出力電流IdAにおいては出力電圧VL1(IdA)と出力電圧VL(IdA)に差が生じてしまう。
その後、(d)のように負荷変動が発生し出力電流がIdAに戻った場合を考える。IdA<Ithcのため、電圧特性の切片を増加させて出力電圧VL1(IdA)と出力電圧VL(IdA)を一致させる。しかし、ここでも出力電圧VL1(IdB)と出力電圧VL(IdB)に差が生じてしまう。しかし、(b)に比べると出力電圧VL1(IdB)と出力電圧VL(IdB)の差は小さくなる。
さらに、(e)に示すように負荷が変動して出力電流が再度IdBになった場合を考える。(d)でずれてしまった出力電圧VL1(IdB)を傾きにより調整すると、出力電圧VL1(IdA)と出力電圧VL(IdA)の差が増加してしまう。しかし、(c)に比べると出力電圧VL1(IdA)と出力電圧VL(IdA)の差は小さくなっている。
以上の動作により、IdAとIdBの負荷変動を繰り返すことで無停電電源装置UPS1の出力電圧の特性は少しずつ無停電電源装置UPS3の特性に近づいているが、完全に特性を合わせるには、負荷変動の繰り返し回数が多い分だけ時間がかかってしまうことがわかる。
また、実運用運転中にもこの方式を適用し、特性の温度変化や経時変化に追従させることも可能ではあるが、横流電流の抑制に時間がかかり、特性変動からしばらくの間は負荷変動のたびに無停電電源装置間で横流電流が発生してしまうことになる。
図17に本実施形態8におけるインバータINV1のパラメータ推定前の横流電流抑制制御ブロックを示す。
このブロックは、以下の点が実施形態3とは異なる。
出力電流指令値Idref,Iqrefの二乗を加算し平方根を演算して求めた出力電流指令値の基本波振幅の、横流電流抑制制御における1演算周期前の値を記憶するバッファア93を設置する。
記憶した1演算周期前の出力電流指令値の基本波振幅が第3閾値Ithcを上回ることを検出する比較器94を設ける。
1演算周期前の出力電流指令値の基本波振幅は第3閾値Ithcを上回るが、現在の振幅は第3閾値Ithcを下回る時に1を出力するAND素子95を設ける。AND素子95の出力はスイッチSW1e,Sw1fに入力され、AND素子95が「1」レベルの信号を出力する時スイッチSW1e,Sw1fは短絡となる。
スイッチSW1e,SW1fの入力は、スイッチSW1a,Sw1bと同じく、出力電流指令値Idref,Iqrefと出力電流検出値Id1,Iq1との偏差に係数α、βをかけたものと、出力電流指令値Idref,Iqrefを指令値振幅で除算したものとをかけあわせたものとする。
定格電流振幅を表す1から1演算周期前の出力電流指令値振幅を減算する減算器96を設ける。減算器96の出力は、あらかじめ設定したゲインG1との積を取る乗算器97に入力する。また、乗算器97とスイッチSW1e,SW1fとの積を取る乗算器98a,98bを設ける。スイッチSW1a,Sw1bの出力から前記乗算器97の出力を減算器99a,99bで減算する。減算器99a,99bの出力は、それぞれインピーダンス差R1を求めるアンプAMPと、インピーダンス差X1を求めるアンプAMPに入力する
1演算周期前の出力電流指令値の基本波振幅は第3閾値Ithcを下回るが、現在の振幅は第3閾値Ithcを上回る時に「1」レベルの信号を出力するAND素子100を設ける。AND素子100の出力はスイッチSW1g,SW1hに入力し、AND素子100が「1」レベルの信号を出力する時、スイッチSW1g,SW1hは短絡となる。
スイッチSW1g,SW1hの入力は、スイッチSW1c,SW1dと同じく、出力電流指令値Idref,Iqrefと出力電流検出値Id1,Iq1との偏差に係数α、βをかけたものとする。
乗算器101により、1演算周期前の出力電流指令値振幅にあらかじめ設定したゲインG2との積を取る。乗算器102a,102bは、スイッチSW1g,SW1hの出力と乗算器101出力との積を取る。減算器103a,103bにより、スイッチSW1c,SW1dの出力信号から前記乗算器102a,102bの出力を減算する。減算器103aの出力は、振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpを求めるアンプAMPに入力する。
なお、ゲインG1,G2は、図1モデル、図17モデルを用いてのシミュレーションを行うことなどによって設定できる。
図16の(b)と(c)を比べると、負荷増加により出力電圧が過剰となり横流電流が発生してしまった場合は、内部インピーダンスを増加(傾きを減少)させて横流電流を抑制するが、出力電圧特性を揃えるには電圧振幅(切片)を増加させる必要もあることがわかる。本実施形態8では実施形態3に対してこのような点を考慮することにより、少ない負荷変動で出力電圧の特性を合わせることができるよう、改良を加えたものである。
本実施形態8の動作について、図18を用いて説明する。この図18でも、説明の簡略化のため主回路条件は図15とし、各無停電電源装置のインバータの電圧位相にずれはなく、インバータ内部インピーダンスは抵抗成分Rcのみ、負荷も力率1の抵抗であると仮定した上で、無停電電源装置UPS1の出力電圧VL1を基準である無停電電源装置UPS3の出力電圧VLに合わせることを検討する。
まず、図18(a)では負荷増加前の各無停電電源装置の出力電流がIdAであり、VL1(IdA)=VL(IdA)であった。しかし、負荷増加により各無停電電源装置の出力電流がIdBとなり、VL1(IdB)>VL(IdB)となってしまった。電流が第3閾値Ithcを超えているため、傾きを減少(内部インピーダンスを増加)すると、出力電圧特性は図18(b)の破線になり、VL1(IdB)=VL(IdB)となり横流電流が抑制される。
しかし、ここで同時に切片を増加(電圧振幅を増加)させることにより出力電圧VL1は図18(b)の実線になり、任意の電流に対する出力電圧をVLに近づけることができる。
負荷増加によりVL1(IdB)<VL(IdB)となってしまった場合も同様である。この状態を図18(c)に示す。この場合では、傾きを増加(内部インピーダンスを減少)させてVL1(IdB)=VL(IdB)を成立させようとする。これにより得られる出力電圧VL1は図18(d)の破線となる。この時、同時に切片を減少(電圧振幅を減少)させることにより出力電圧VL1は図18(d)の実線になり、無停電電源装置UPS3の出力電圧VLに近づけることができる。
次に、図18(e)に負荷減少前の各無停電電源装置の出力電流がIdBであり、VL1(IdB)=VL(IdB)であったが、負荷減少によりVL1(IdA)>VL(IdA)となってしまった状態を示す。出力電流IdAが第3閾値Ithcよりも小さいため、切片を減少(電圧振幅を減少)することになり、出力電圧VL1は図18(f)の破線のように変化し、VL1(IdA)=VL(IdA)となり横流電流が抑制される。
ここで、同時に傾きを増加(内部インピーダンスを減少)させることにより出力電圧VL1は図18(f)の実線になり、無停電電源装置UPS3の出力電圧VLに近づけることができる。このように、負荷減少時には傾き(内部インピーダンス)を調整することで基準の無停電電源装置との電圧特性ずれを小さくすることができる。
負荷減少によりVL1(IdA)<VTL(IdA)となってしまった場合も同様である。この状態を図18(g)に示す。この場合では切片を増加(電圧振幅を増加)させ、出力電圧VL1は図18(h)の破線のような電圧特性となる。この時、同時に傾きを減少(内部インピーダンスを増加)させることにより電圧出力電圧VL1は図18(h)の実線になり、無停電電源装置UPS3の電圧特性に近づけることができる。
以上の動作により、本実施形態8は実施形態3に比べて負荷変動後の出力電圧特性を基準の無停電電源装置により近づけることができる。そのため、次に負荷変動が発生した場合の電圧特性ずれが小さくなり、負荷変動により発生する横流電流を小さくすることができる。また、電圧特性を揃えるまでに必要な負荷変動回数を少なくすることができ、試運転にかかる時間を短縮することができる。
以上の動作において、変動前の負荷の大きさと必要な調整量の関係を説明する。図19(a)は、負荷が増加した時の無停電電源装置UPS1の電圧特性であるが、実線は増加前の負荷が小さく、破線は増加前の負荷が大きい状態を示している。条件を揃えるため、負荷変動前はUPS1とUPS3との電圧差が零、負荷変動後の電圧差は図18(a)と同じ大きさとしている。
この時、基準となる無停電電源装置UPS3の電圧特性に比べ、実線よりも破線の方が切片の差が大きい。よって、増加前の負荷が大きく無負荷状態から離れていく度合いが大きいほど、切片の調整量を大きくする必要があることがわかる。増加前の負荷が零であれば、切片を正しく推定することができるため、負荷増加
時の切片の調整は不要である。
図19(b)は、負荷が減少した時の無停電電源装置UPS1の電圧特性であり、実線は減少前の負荷が大きく、破線は減少前の負荷が小さい状態を示している。図19(b)でも負荷変動後の電圧差を揃えている。この時、基準となる無停電電源装置UPS3の電圧特性に比べ、実線よりも破線の方が傾きの差が大きい。このことは、負荷が減少する場合は、減少前の負荷が小さいほど傾きの調整量を大きくする必要があることを示している。
図17は、以上の動作を実現するための制御ブロックである。出力電流指令値Idref,Iqrefの2乗と平方根により求めた振幅の1演算周期前の値を記憶するバッファを設置し、現在の出力電流指令値振幅(65の出力)と、1演算周期前の出力電流指令値振幅(93の出力)の2つの信号で第3閾値Ithcとの比較を行う。
現在の指令値振幅が第3閾値Ithcよりも大きく1演算周期前の振幅が第3閾値Ithcよりも小さいことを検出して負荷が増加したと判断し、現在の指令値振幅が第3閾値Ithcよりも小さく1演算周期前の振幅が第3閾値Ithcよりも大きいことを検出して負荷が減少したと判断する。
切片(振幅ずれV1cmpと位相ずれθ1cmp)について説明する。現在の出力電流指令値振幅が第3閾値Ithcよりも小さい場合はスイッチSW1c,SW1dが短絡し電流偏差に基づく信号(24aおよび24bの出力)がアンプAMPに入力され振幅ずれV1cmp,位相ずれθ1cmpが調整されるフィードバックループが構成される。なお、アンプAMPは入力された電流偏差に基づく信号を積分する機能を持つ。負荷が増加して電流指令値振幅が第3閾値Ithcを上回るとスイッチSW1c,SW1dは開放され、スイッチSW1g,SW1hが1演算周期だけ短絡され切片の補正が行われる。この時、乗算器102a,102bにより前記電流偏差に基づく信号と1演算周期前の電流指令値振幅にあらかじめ決められたゲインG2をかけたものとの積を演算する。
これにより、増加前の負荷が大きいほど切片の調整量を大きくする動作を実現している。この動作は、前述の図19説明時の動作と合致している。
その後、減算器103a,103bにより符号を反転してアンプAMPに入力する。以下に符号を反転させる理由について説明する。図17の電圧制御ブロックについて、無停電電源装置間のインピーダンスが抵抗と仮定してα=1、β=0とし、横流電流抑制制御部分だけを抽出したものを図20に示す。減算器108により電流指令値Idrefから出力電流Id1を減算し、アンプAMPにかけて振幅ずれV1cmpを出力する。このブロックでは、無停電電源装置UPS1自身の出力電流Id1が電流指令値Idrefより小さい場合、振幅ずれV1cmpすなわち無停電電源装置UPS1の出力電圧特性の切片を増加して出力電流Id1の増加を促す。
図21に制御前の無停電電源装置UPS1とUPS3の特性を示す。現在の出力電流平均値がIdAであり、VL1<VLであるため無停電電源装置UPS1の出力電流Id1は電流指令値Idrefよりも小さい。このとき制御ブロックは振幅ずれV1cmpを増加させる。
図22に制御後の無停電電源装置UPS1とUPS3の特性を示す。出力電圧VL1の切片が増加し、出力電流平均値IdAにおいて無停電電源装置UPS1の出力電圧が無停電電源装置UPS3の出力電圧に一致する。
図23に無停電電源装置の出力電流平均値がIdBに増加したときの特性を示す。このときもVL1<VLであり無停電電源装置UPS1の出力電流Id1は指令値Idrefよりも小さいため、制御ブロックは振幅ずれV1cmpを増加させようとする。しかし、図23より無停電電源装置UPS1の振幅ずれV1cmpは無停電電源装置UPS3の切片よりも大きいため、特性を合わせるためには逆に振幅ずれV1cmpを減少させる必要がある。そのため、負荷増加時に一時的に投入されるスイッチSW1gのブロックの符号を反転させることによって、スイッチSW1gの短絡時には振幅ずれV1cmpを減少させる。
以上が符号を反転させる理由である。スイッチSW1hのブロックも同様の理由で符号を反転させる。
次に、傾き(内部インピーダンス)について説明する。現在の出力電流指令値振幅が第3閾値Ithcよりも大きい場合はスイッチSW1a,SW1bが短絡し電流偏差がアンプAMPに入力されインピーダンス差R1,X1が調整されるフィードバックループが構成される。
負荷が減少して電流指令値振幅が第3閾値Ithcを下回るとスイッチSW1a,SW1bは開放され、スイッチSW1e,SW1fが1演算周期だけ短絡され傾きの補正が行われる。
この時、定格電流(図17のゲインG1に入力する減算器96の入力「1」)から1演算周期前の電流指令値振幅を減算し、さらにゲインG1をかけたものが入力され、乗算器98a,98bにより電流偏差に基づく信号である72a、72bの出力との積を取りアンプAMPに入力される。これにより、減少前の負荷が小さいほど傾きの調整量を大きくする動作を実現している。傾きも、アンプAMPに入力する前に減算器により符号を反転する。これも、切片の調整と同じ理由である。
以上の構成により、負荷変動時に切片(電圧振幅)や傾き(内部インピーダンス)の追加補正を行うことができる。この追加補正によって、短時間で基準である無停電電源装置UPS3の電圧特性に近づけることができる。
以上の動作は、簡略化のため各無停電電源装置のインバータの電圧位相にずれはなく、インバータ内部インピーダンスは抵抗成分Rcのみ、負荷も力率1の抵抗である場合を例として説明した。各無停電電源装置のインバータの電圧位相にずれがある場合、リアクトル成分の内部インピーダンスがある場合、負荷力率が1以外の場合についても、本実施形態8の適用によって各無停電電源装置の電圧特性を短時間で揃えることができる。
また、実運用運転中にもこの方式を適用することができる。実施形態3とは異なり、負荷変動のたびに発生する無停電電源装置間の横流電流を抑制することができ、特性の温度変化や経時変化に対する追従速度を向上することができる。
本実施形態8によれば、実施形態3と比較して、以下の効果が得られる。
電圧振幅や電圧位相に追加の調整を行うことで、より少ない負荷変動回数で出力電圧の特性を合わせることができるようになり、試運転にかかる時間を短縮することができる。
実運用運転中にこの方式を適用した場合、負荷変動のたびに発生する無停電電源装置間の横流電流を抑制することができ、特性の温度変化や経時変化に対する追従速度を向上することができる。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。