以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータのかごを示す平面図である。また、図2は、図1のかごの上部を示す正面図である。さらに、図3は図1の矢印IIIに沿って見たときのかごの上部を示す左側面図、図4は図1の矢印IVに沿って見たときのかごの上部を示す右側面図である。図において、昇降路内には、かご1が上下方向へ移動可能に設けられている。かご1は、昇降路内に設置された図示しない駆動装置の駆動力により上下方向へ移動する。
かご1は、底面、上面2a、正面2b、背面2c及び一対の側面2dを持つかご本体2を有している。かご本体2の正面2b及び背面2cは、かご1の奥行き方向について互いに対向している。かご本体2の一対の側面2dは、かご1の幅方向について互いに対向している。かご本体2の正面2bには、かごドアにより開閉されるかご出入口3が設けられている。
建物の各階には、図示しない乗場出入口がそれぞれ設けられている。各階の乗場と昇降路内とは、各乗場出入口を通して互いに連通されている。各乗場出入口は、乗場ドアにより開閉される。かご1が階に停止している状態では、かご1の停止階に設けられた乗場出入口とかご出入口3とが同時に開くことにより、乗場とかご1内との間で乗客の移動が可能になる。
エレベータの運転は、昇降路内に設置された図示しない制御装置により制御される。また、エレベータの運転は、通常のサービス運転を行う通常運転モードと、通常運転モード時よりもかご1を低速で移動させる保守運転モードとの間で切り替え可能になっている。駆動装置及び制御装置の少なくともいずれかは、昇降路1内の上部に昇降路内上部機器として設置されている。
エレベータでは、作業者がかご本体2の上面2aに乗った状態で昇降路内の機器の保守点検作業を行うことがある。かご1の上部には、図示しない保守時かご上操作部が設けられている。保守運転モード時には、かご本体2の上面2aに乗った作業者が、かご1を低速で移動させるために保守時かご上操作部を操作する。作業者は、乗場の床の高さ位置にかご本体2の上面2aの高さ位置を合わせてかご1を停止させた状態で、乗場から乗場出入口を通してかご本体2の上面2aに乗り込む。
かご1の上部には、かご上手摺装置4が設けられている。かご上手摺装置4は、左側手摺11、背面手摺12及び右側手摺13を複数の手摺として有している。左側手摺11、背面手摺12及び右側手摺13は、左側手摺11、背面手摺12、右側手摺13の順に並んでかご1の上部に配置されている。また、左側手摺11、背面手摺12及び右側手摺13は、かご本体2の上面2aに設定された設定作業範囲の周囲に設定作業範囲を囲むように連続して並んでいる。左側手摺11は一方の側面2dに沿って配置され、右側手摺13は他方の側面2dに沿って配置されている。背面手摺12は、背面2cに沿って配置されている。
左側手摺11、背面手摺12及び右側手摺13(以下、「手摺11,12,13」という)のそれぞれは、かご本体2の上面2aから上方へ突出した状態でかご本体2の上面2aに固定されている固定手摺部材21と、固定手摺部材21に設けられている可動手摺部材22とを有している。
固定手摺部材21は、水平方向について互いに離して配置された複数の固定縦材を有している。この例では、固定手摺部材21の各固定縦材が上下方向に沿ったパイプになっている。
可動手摺部材22は、固定手摺部材21の各固定縦材にスライド可能にそれぞれ設けられた複数の可動縦材と、複数の可動縦材間に固定された可動横材とを有している。この例では、可動手摺部材22の可動縦材が、固定手摺部材21の固定縦材であるパイプに挿入されている。これにより、可動手摺部材22は、かご1の上部及び固定手摺部材21に対して上下方向へ変位可能になっている。また、可動手摺部材22は、かご1及び固定手摺部材21に対する上下方向への変位によって、低手摺位置と、低手摺位置よりも高い高手摺位置との間でかご1及び固定手摺部材21に対して変位される。手摺11,12,13のそれぞれの高さ寸法は、可動手摺部材22が低手摺位置にあるときよりも、可動手摺部材22が高手摺位置にあるときのほうが高くなる。
かご上手摺装置4の状態は、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22が高手摺位置になると組み立て状態になり、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22が低手摺位置になると収納状態になる。なお、図1〜図4では、組み立て状態になっているときのかご上手摺装置4を示している。
左側手摺11は、かご本体2の上面2aに基準手摺として配置されている。基準手摺である左側手摺11には、図3に示すように、左側手摺11の可動手摺部材22を高手摺位置に保持する保持機構14が設けられている。
ここで、図5は、図3の保持機構14を示す斜視図である。保持機構14は、左側手摺11の固定手摺部材21に設けられた留め具である保持ボルト15を有している。左側手摺11の可動手摺部材22の可動縦材には、複数の位置決め穴16が設けられている。複数の位置決め穴16は、上下方向について互いに間隔を置いて配置されている。左側手摺11の可動手摺部材22は、保持ボルト15が複数の位置決め穴16に選択的に挿入されることにより高手摺位置に保持される。また、手摺11の可動手摺部材22は、保持ボルト15が位置決め穴16から外れることにより重力で低手摺位置へ変位される。
基準手摺である左側手摺11からは、背面手摺12及び右側手摺13が係合手摺として順次隣り合って配置されている。なお、この例では、2つの手摺12,13が左側手摺11から順次隣り合っているが、3つ以上の手摺が左側手摺11から順次隣り合って配置されてもよい。
基準手摺である左側手摺11と、左側手摺11の隣に位置する係合手摺である背面手摺12とのうち、一方の可動手摺部材22には、他方の可動手摺部材22に掛かる板状の突起物23が固定されている。この例では、左側手摺11の可動手摺部材22に掛かる突起物23が、背面手摺12の可動手摺部材22に固定されている。また、この例では、突起物23が背面手摺12の可動手摺部材22の上端部から左側手摺11の上方に突出している。これにより、この例では、かご上手摺装置4を上から見たとき、図1に示すように、背面手摺12に固定されている突起物23の一部が左側手摺11の一部に重なっている。基準手摺である左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、背面手摺12の可動手摺部材22が突起物23を介して左側手摺11の可動手摺部材22に掛かることにより、背面手摺12の可動手摺部材22の変位が阻止され、背面手摺12の可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。
また、互いに隣り合う2つの係合手摺である背面手摺12及び右側手摺13のうち、一方の可動手摺部材22には、他方の可動手摺部材22に掛かる板状の突起物24が固定されている。この例では、背面手摺12の可動手摺部材22に掛かる突起物24が、右側手摺13の可動手摺部材22に固定されている。
図6は、図1のVI部の可動手摺部材22及び突起物24を示す斜視図である。この例では、突起物24が右側手摺13の可動手摺部材22の上端部から背面手摺12の上方に突出している。これにより、この例では、かご上手摺装置4を上から見たとき、右側手摺13に固定されている突起物24の一部が背面手摺12の一部に重なっている。背面手摺12の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、右側手摺13の可動手摺部材22が突起物24を介して背面手摺12の可動手摺部材22に掛かることにより、右側手摺13の可動手摺部材22の変位が阻止され、右側手摺13の可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。
即ち、基準手摺である左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、左側手摺11の隣に位置する背面手摺12の可動手摺部材22が左側手摺11の可動手摺部材22に突起物23を介して掛かるとともに、互いに隣り合う係合手摺である背面手摺12及び右側手摺13のうち、左側手摺11から遠い側の右側手摺13の可動手摺部材22が左側手摺11に近い側の背面手摺12の可動手摺部材22に突起物24を介して掛かることにより、各手摺12,13のそれぞれの可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。
従って、かご上手摺装置4では、各手摺11,12,13のそれぞれの各可動手摺部材22が変位されても互いに干渉することはないが、各突起物23,24が隣の手摺の可動手摺部材22に掛かることにより、互いに隣り合う一方の可動手摺部材22に対する他方の可動手摺部材22の変位が規制される。
この例では、手摺11,12,13によって構成されている手摺群の一端部に左側手摺11が基準手摺として配置され、手摺群の他端部に右側手摺13が終端手摺として配置されている。左側手摺11の可動手摺部材22の高手摺位置での保持が解除されると、各手摺12,13のそれぞれの可動手摺部材22の保持が、基準手摺である左側手摺11に近い手摺から順次解除される。
基準手摺である左側手摺11には、左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に達したことを検出可能な保守運転スイッチ25が設けられている。
図7は、図2のVII部内の保守運転スイッチ25を示す拡大図である。保守運転スイッチ25は、被検出体であるキー26と、キー26を検出可能なスイッチ本体27とを有している。キー26は、左側手摺11の可動手摺部材22の可動縦材の下端部に設けられている。スイッチ本体27は、左側手摺11の固定手摺部材21の固定縦材の上端部に設けられている。
左側手摺11の固定手摺部材21の固定縦材には、上下方向に沿った長穴28が設けられている。キー26は、長穴28内に通されている。左側手摺11では、可動手摺部材22が高手摺位置と低手摺位置との間で変位されると、固定手摺部材21に対してキー26が長穴28に沿って上下方向へ移動する。
スイッチ本体27は、挿入穴を有している。左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に達すると、キー26がスイッチ本体27の挿入穴に挿入される。スイッチ本体27は、キー26が挿入穴に挿入されると、キー26を検出して検出信号を制御装置へ出力する。
終端手摺である右側手摺13には、図4に示すように、右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置に達したことを検出する通常運転スイッチ29が設けられている。通常運転スイッチ29は、被検出体であるキー30と、キー30を検出可能なスイッチ本体40とを有している。キー30は、右側手摺13の可動手摺部材22の上端部に設けられている。スイッチ本体40は、右側手摺13の固定手摺部材21の固定縦材の上端部に設けられている。
図8は、図4の右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置にあるときの通常運転スイッチ29を示す拡大図である。通常運転スイッチ29のスイッチ本体40は、挿入穴を有している。右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置に達すると、キー30がスイッチ本体40の挿入穴に挿入される。スイッチ本体40は、キー30が挿入穴に挿入されると、キー30を検出して検出信号を制御装置へ出力する。
制御装置には、保守運転スイッチ25及び通常運転スイッチ29のそれぞれからの情報が送られる。制御装置は、保守運転スイッチ25及び通常運転スイッチ29のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの運転を制御する。即ち、制御装置は、保守運転スイッチ25からの検出信号を受けると、左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に達したと判定し、エレベータの運転モードを保守運転モードにする。また、制御装置は、通常運転スイッチ29からの検出信号を受けると、右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置に達したと判定し、エレベータの運転モードを通常運転モードにする。
次に、エレベータの保守点検作業の手順について説明する。エレベータのサービス運転は、通常運転モードで行われる。通常運転モード時には、かご上手摺装置4の状態が収納状態になっている。このとき、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22が低手摺位置に達しており、保守運転スイッチ25からの検出信号の出力が停止されているとともに、通常運転スイッチ29からの検出信号が制御装置へ送られている。
作業者がかご本体2の上面2aに乗って保守点検作業を行うときには、例えば最上階の乗場で操作盤を操作して、かご本体2の上面2aが乗場の床の高さに合うようにかご1を停止させ、最上階の乗場出入口を開く。
この後、作業者は、かご本体2の上面2aに乗って、右側手摺13、背面手摺12、左側手摺11の順に、各手摺11,12,13の可動手摺部材22を低手摺位置から高手摺位置へ順次持ち上げる。これにより、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22が高手摺位置に達し、かご上手摺装置4の状態が組み立て状態になる。右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置から外れると、通常運転スイッチ29からの検出信号の出力が停止される。なお、このとき、かご上手摺装置4では、互いに隣り合う可動手摺部材22が突起物23,24を介して順次掛かっているので、作業者は、乗場から左側手摺11の可動手摺部材22を高手摺位置へ持ち上げることにより、背面手摺12及び右側手摺13のそれぞれの可動手摺部材22を左側手摺11の可動手摺部材22と連動させて同時に高手摺位置へ変位させるようにしてもよい。
この後、作業者は、左側手摺11の可動手摺部材22の位置を高手摺位置にしたまま、保持機構14の保持ボルト15を締め込んで保持ボルト15を位置決め穴16に差し込み、左側手摺11の可動手摺部材22を高手摺位置に保持する。これにより、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22が高手摺位置に保持され、かご上手摺装置4の組み立て状態が維持される。
左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に達すると、保守運転スイッチ25のスイッチ本体27の挿入穴にキー26が挿入される。これにより、キー26がスイッチ本体27によって検出され、保守運転スイッチ25のスイッチ本体27から制御装置へ検出信号が送られる。制御装置が保守運転スイッチ25からの検出信号を受けると、エレベータの運転モードが保守運転モードになる。これにより、保守時かご上操作部の操作によるかご1の移動が可能になる。
この後、かご本体2の上面2aに乗った作業者は、開いている乗場出入口を閉じた後、保守時かご上操作部を操作してかご1を低速で移動させる。これにより、昇降路内の機器に対する保守点検作業が可能になる。
作業者は、昇降路内の機器に対する保守点検作業が終わると、保守時かご上操作部を操作しながらかご1を下方へ低速で移動させ、かご本体2の上面2aが例えば最上階の乗場の床の高さに合うようにかご1を停止させる。
この後、作業者は、最上階の乗場出入口を開いてかご本体2の上面2aから乗場へ乗り移った後、かご上手摺装置4を組み立てるときと逆の手順でかご上手摺装置4の状態を収納状態にする。即ち、作業者は、保持ボルト15を位置決め穴16から外して左側手摺11の可動手摺部材22の保持を解除し、左側手摺11の可動手摺部材22を高手摺位置から低手摺位置へ変位させる。このとき、背面手摺12及び右側手摺13のそれぞれの可動手摺部材22が、左側手摺11の可動手摺部材22の低手摺位置への変位に連動して左側手摺11に近い手摺の順に、高手摺位置から低手摺位置へ順次変位される。これにより、かご上手摺装置4の状態が収納状態になる。
右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置に達すると、通常運転スイッチ29のスイッチ本体40の挿入穴にキー30が挿入される。これにより、キー30がスイッチ本体40によって検出され、通常運転スイッチ29のスイッチ本体40から制御装置へ検出信号が送られる。制御装置が通常運転スイッチ29からの検出信号を受けると、エレベータの運転モードが通常運転モードになる。これにより、通常のサービス運転が可能になり、エレベータの保守点検作業が終了する。
このようなエレベータのかご上手摺装置4では、背面手摺12の可動手摺部材22が左側手摺11の可動手摺部材22に突起物23を介して掛かるようになっており、互いに隣り合う係合手摺である背面手摺12及び右側手摺13のうち、一方の可動手摺部材22に、他方の可動手摺部材22に掛かる突起物24が設けられているので、基準手摺である左側手摺11の可動手摺部材22を高手摺位置に保持することによって、すべての手摺11,12,13を高手摺位置に保持することができ、一部の手摺が組み立てられないままになることをより確実に防止することができる。また、かご上手摺装置4の状態を収納状態にするときにも、基準手摺である左側手摺11の可動手摺部材22の高手摺位置での保持を解除することによって、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22を連動させて低手摺位置へ変位させることができる。これにより、一部の手摺が収納されないままになることも防止することができる。
また、かご上手摺装置4の状態を組み立て状態にするときには、基準手摺である左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に達しているか否かを確認するだけで、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22が高手摺位置に達しているか否かを確認することができる。さらに、かご上手摺装置4の状態を収納状態にするときには、終端手摺である右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置に達しているか否かを確認するだけで、すべての手摺11,12,13の可動手摺部材22が低手摺位置に達しているか否かを確認することができる。これにより、かご上手摺装置4の状態を組み立て状態にするときの作業の手間の軽減化を図ることができるとともに、かご上手摺装置4の状態を収納状態にするときの作業の手間の軽減化も図ることができる。
また、基準手摺である左側手摺11の可動手摺部材22を高手摺位置に保持するだけで、かご上手摺装置4の状態を組み立て状態に維持することができるので、すべての手摺11,12,13に保持機構14を個別に設ける必要がなくなる。これにより、保持機構14の設置数を1つにまで減らすことができ、コストの低減化を図ることができる。
また、各手摺11,12,13のそれぞれの可動手摺部材22は、かご1の上部に対して上下方向へ変位することにより高手摺位置と低手摺位置との間で変位されるので、各手摺11,12,13の高さ寸法の調整を簡単な構成でかつ容易にすることができる。
また、基準手摺である左側手摺11には、左側手摺11の可動手摺部材22が高手摺位置に達したことを検出する保守運転スイッチ25が設けられているので、かご上手摺装置4の状態が組み立て状態になったか否かに応じてエレベータの運転を制御することができる。これにより、かご上手摺装置4の状態が不完全な組み立て状態のまま保守点検作業が行われることを回避することができる。さらに、すべての手摺11,12,13に保守運転スイッチ25を個別に設ける必要がないので、保守運転スイッチ25の数を1つにまで減らすことができ、コストの低減化を図ることができる。
また、終端手摺である右側手摺13には、右側手摺13の可動手摺部材22が低手摺位置に達したことを検出する通常運転スイッチ29が設けられているので、かご上手摺装置4の状態が収納状態になったか否かに応じてエレベータの運転を制御することができる。これにより、かご上手摺装置4の状態が不完全な収納状態のままエレベータの通常運転が行われることを回避することができる。さらに、すべての手摺11,12,13に通常運転スイッチ29を個別に設ける必要がないので、通常運転スイッチ29の数を1つにまで減らすことができ、コストの低減化を図ることができる。
なお、上記の例では、各手摺11,12,13が固定手摺部材21及び可動手摺部材22を有し、可動手摺部材22が固定手摺部材21に対して上下方向へスライド可能になっているが、固定手摺部材21をなくして、背面手摺12の可動手摺部材22をかご本体2の背面2cに沿って上下方向へスライド可能にするとともに、左側手摺11及び右側手摺13の可動手摺部材22をかご本体2の各側面2dに沿って上下方向へスライド可能にしてもよい。
また、上記の例では、左側手摺11の可動手摺部材22に掛かる突起物23が背面手摺12の可動手摺部材22に固定され、背面手摺12の可動手摺部材22に掛かる突起物24が右側手摺13の可動手摺部材22に固定されているが、背面手摺12の可動手摺部材22に掛かる突起物23を左側手摺11の可動手摺部材22に固定し、右側手摺13の可動手摺部材22に掛かる突起物24を背面手摺12の可動手摺部材22に固定してもよい。この場合、突起物23は左側手摺11の可動手摺部材22から背面手摺12の可動手摺部材22の可動横材の下方へ突出し、突起物24は背面手摺12の可動手摺部材22から右側手摺13の可動手摺部材22の可動横材の下方へ突出する。
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2によるエレベータのかごを示す平面図である。また、図10は、図9の矢印Xに沿って見たときのかごの上部を示す右側面図である。さらに、図11は、図9のかご上手摺装置4の状態が収納状態になっているときのかごを示す平面図である。かご1の上部に設けられているかご上手摺装置4は、背面手摺31、第1の左側手摺32、第2の左側手摺33、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35を複数の手摺として有している。背面手摺31、第1の左側手摺32、第2の左側手摺33、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35は、設定作業範囲の周囲に設定作業範囲を囲むように連続して並んでいる。第1の左側手摺32及び第2の左側手摺33は一方の側面2dに沿って配置され、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35は他方の側面2dに沿って配置されている。背面手摺31は、背面2cに沿って配置されている。
背面手摺31、第1の左側手摺32、第2の左側手摺33、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35(以下、「手摺31〜35」という)のそれぞれは、かご本体2の上面2aに設けられている可動手摺部材22を有している。
可動手摺部材22は、水平方向について互いに離して配置された複数の可動縦材と、複数の可動縦材間に固定された可動横材とを有している。かご本体2の上面2aには、複数の取付具41が設けられている。各可動手摺部材22は、複数の取付具41を介してかご1の上部に取り付けられている。
各取付具41は、かご本体2の上面2aに固定された固定部材42と、固定部材42に水平に設けられた取付軸43とを有している。各可動手摺部材22は、取付軸43を中心としてかご1の上部に対して回動可能になっている。
具体的には、背面手摺31の可動手摺部材22は、かご1の幅方向に沿った取付軸43を中心に回動可能になっている。第1の左側手摺32、第2の左側手摺33、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35のそれぞれの可動手摺部材22は、かご1の奥行き方向に沿った取付軸43を中心に回動可能になっている。
各可動手摺部材22は、かご1の上部に対する回動によって、低手摺位置と、低手摺位置よりも高い高手摺位置との間で変位される。可動手摺部材22は、かご1の上部に対して倒れることにより低手摺位置に達し、かご1の上部に対して起立することにより高手摺位置に達する。各手摺31〜35のそれぞれの高さ寸法は、可動手摺部材22が低手摺位置にあるときよりも、可動手摺部材22が高手摺位置にあるときのほうが高くなる。
かご上手摺装置4の状態は、すべての手摺31〜35の可動手摺部材22が高手摺位置になると組み立て状態(図9及び図10)になり、すべての手摺31〜35の可動手摺部材22が低手摺位置になると収納状態(図11)になる。
背面手摺31は、かご本体2の上面2aに基準手摺として配置されている。基準手摺である背面手摺31には、背面手摺31の可動手摺部材22を高手摺位置に保持する保持機構36が設けられている。
ここで、図12は、図9のXII−XII線に沿った断面図である。背面手摺31の可動手摺部材22をかご本体2の上面2aに取り付ける固定部材42には、上下方向に沿った長穴45が設けられている。背面手摺31の取付軸43は、固定部材42の長穴45に通されている。これにより、背面手摺31の取付軸43は、固定部材42に対して長穴45に沿ってスライド可能になっている。背面手摺31の可動手摺部材22は、取付軸43が長穴45に沿ってスライドすることにより、かご1の上部に対して上下方向へ変位される。
保持機構36は、背面手摺31の可動手摺部材22の可動縦材に固定された突起部37を有している。突起部37は、取付軸43の上方で取付軸43と平行に配置されている。固定部材42の上端部には、突起部37が嵌る凹部38が設けられている。凹部38は、上方に向けて開放されている。突起部37が凹部38に嵌った状態では、背面手摺31の可動手摺部材22が起立した状態で保持され、背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。突起部37が凹部38から外れると、背面手摺31の可動手摺部材22が起立した状態からかご1の内側へ倒れて、背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置から低手摺位置へ変位される。
基準手摺である背面手摺31の一端部からは、図9に示すように、第1の左側手摺32及び第2の左側手摺33が係合手摺として順次隣り合って配置され、背面手摺31の他端部からは、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35が係合手摺として順次隣り合って配置されている。この例では、2つの手摺32,33が手摺31の一端部から順次隣り合っており、2つの手摺34,35が手摺31の他端部から順次隣り合っているが、3つ以上の手摺が背面手摺31から順次隣り合って配置されていてもよい。
基準手摺である背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、背面手摺31の隣に位置する係合手摺である第1の左側手摺32及び第1の右側手摺34のそれぞれの可動手摺部材22が背面手摺31の可動手摺部材22に掛かることにより、第1の左側手摺32及び第1の右側手摺34のそれぞれの可動手摺部材22の変位が阻止され、可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。
互いに隣り合う2つの係合手摺である第1の左側手摺32及び第2の左側手摺33のうち、一方の可動手摺部材22には、他方の可動手摺部材22に掛かる板状の突起物46が固定されている。また、互いに隣り合う2つの係合手摺である第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35のうち、一方の可動手摺部材22には、他方の可動手摺部材22に掛かる板状の突起物47が固定されている。この例では、第1の左側手摺32の可動手摺部材22に掛かる突起物46が第2の左側手摺33の可動手摺部材22に固定され、第1の右側手摺34の可動手摺部材22に掛かる突起物47が第2の右側手摺35の可動手摺部材22に固定されている。
図13は、図10のXIII部内の可動手摺部材22及び突起物47を示す斜視図である。この例では、突起物47が第2の右側手摺35の上端部から第1の右側手摺34よりもかご1の外側へ突出している。第1の右側手摺34の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、第2の右側手摺35の可動手摺部材22が突起物47を介して第1の右側手摺34の可動手摺部材22に掛かることにより、第2の右側手摺35の可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。
同様に、第1の左側手摺32の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、第2の左側手摺33の可動手摺部材22が突起物46を介して第1の左側手摺32の可動手摺部材22に掛かることにより、第2の左側手摺33の可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。
即ち、基準手摺である背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、背面手摺31の隣に位置する第1の左側手摺32の可動手摺部材22が背面手摺31の可動手摺部材22に掛かるとともに、互いに隣り合う係合手摺である第1の左側手摺32及び第2の左側手摺33のうち、背面手摺31から遠い側の第2の左側手摺33の可動手摺部材22が背面手摺31に近い側の第1の左側手摺32の可動手摺部材22に突起物46を介して掛かることにより、各手摺32,33のそれぞれの可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。また、背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に保持されている状態では、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35のうち、背面手摺31から遠い側の第2の右側手摺35の可動手摺部材22が背面手摺31に近い側の第1の右側手摺34の可動手摺部材22に突起物47を介して掛かることにより、各手摺34,35のそれぞれの可動手摺部材22が高手摺位置に保持される。
この例では、手摺31〜35によって構成されている手摺群の中間部に背面手摺31が基準手摺として配置され、手摺群の両端部に第2の左側手摺33及び第2の右側手摺35が終端手摺としてそれぞれ配置されている。背面手摺31の可動手摺部材22の高手摺位置での保持が解除されると、各手摺32〜35のそれぞれ可動手摺部材22の変位の阻止が、基準手摺である背面手摺31に近い手摺から順次解除される。
基準手摺である背面手摺31には、背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に達したことを検出可能な保守運転スイッチ51が設けられている。
図14は、図9の保守運転スイッチ51を示す拡大図である。保守運転スイッチ51は、かご本体2の上面2aに支持されている。また、保守運転スイッチ51は、スイッチ本体52と、スイッチ本体52に設けられている操作部53とを有している。
操作部53は、スイッチ本体52から突出する前進位置と、スイッチ本体52からの突出量が前進位置よりも少なくなる後退位置との間で変位可能になっている。スイッチ本体52は、操作部53が後退位置に達することにより制御装置へ検出信号を出力する。スイッチ本体52から制御装置への検出信号の出力は、操作部53が後退位置から前進位置へ戻ることにより停止する。
背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に達すると、操作部53が背面手摺31の可動手摺部材22に押されて前進位置から後退位置に変位される。これにより、保守運転スイッチ51から検出信号が制御装置へ送られる。また、背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置から低手摺位置へ変位されると、背面手摺31の可動手摺部材22か操作部53から外れて、操作部53が後退位置から前進位置へ変位される。これにより、保守運転スイッチ51から制御装置への検出信号の送信は停止する。
2つの終端手摺である第2の左側手摺33及び第2の右側手摺35には、第2の左側手摺33及び第2の右側手摺35のそれぞれの可動手摺部材22が低手摺位置に達したことを検出可能な通常運転スイッチ54が設けられている。
図15は、図11の通常運転スイッチ54を示す拡大図である。通常運転スイッチ54は、被検出体であるキー55と、キー55を検出可能なスイッチ本体56とを有している。第2の左側手摺33及び第2の右側手摺35のうち、一方の可動手摺部材22にはキー55が設けられ、他方の可動手摺部材22にはスイッチ本体56が設けられている。この例では、第2の右側手摺35の可動手摺部材22にキー55がワイヤ57を介して接続され、第2の左側手摺33の可動手摺部材22にスイッチ本体56が固定されている。ワイヤ57の長さは、第2の左側手摺33及び第2の右側手摺35のそれぞれの可動手摺部材22が低手摺位置にあるときにキー55がスイッチ本体56に届く程度の長さになっている。
スイッチ本体56には、挿入穴が設けられている。スイッチ本体56は、キー55が挿入穴に挿入されると、キー55を検出して検出信号を制御装置へ出力する。
制御装置には、保守運転スイッチ51及び通常運転スイッチ54のそれぞれからの情報が送られる。制御装置は、保守運転スイッチ51及び通常運転スイッチ54のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの運転を制御する。制御装置による制御は、実施の形態1と同様である。
次に、エレベータの保守点検作業の手順について説明する。まず、作業者は、実施の形態1と同様にしてかご本体2の上面2aに乗った後、第2の左側手摺33、第1の左側手摺32の順に可動手摺部材22を低手摺位置から高手摺位置へ順次持ち上げ、第2の右側手摺35、第1の右側手摺34の順に可動手摺部材22を低手摺位置から高手摺位置へ順次持ち上げる。この後、基準手摺である背面手摺31の可動手摺部材22を低手摺位置から高手摺位置へ持ち上げる。これにより、すべての手摺31〜35の可動手摺部材22が高手摺位置に達し、かご上手摺装置4の状態が組み立て状態になる。
この後、作業者は、背面手摺31において、保持機構36の突起部37を固定部材42の凹部38に嵌める。これにより、背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に保持され、かご上手摺装置4の状態が組み立て状態に維持される。
背面手摺31の可動手摺部材22が高手摺位置に達すると、保守運転スイッチ51の操作部53が背面手摺31の可動手摺部材22に押されて、保守運転スイッチ51から検出信号が制御装置へ送られる。制御装置が保守運転スイッチ51からの検出信号を受けると、エレベータの運転モードが保守運転モードになる。これにより、保守時かご上操作部の操作によるかご1の移動が可能になる。
この後、実施の形態1と同様にして、昇降路内の機器に対する保守点検作業が終わり、かご1を低速で移動させ、かご本体2の上面2aが例えば最上階の乗場の床の高さに合うようにかご1を停止させる。この後、作業者は、保持機構36の突起部37を凹部38から外すことにより背面手摺31の可動手摺部材22の高手摺位置での保持を解除し、背面手摺31の可動手摺部材22を高手摺位置から低手摺位置へ変位させる。このとき、第1の左側手摺32、第2の左側手摺33、第1の右側手摺34及び第2の右側手摺35のそれぞれの可動手摺部材22が、背面手摺31の可動手摺部材22の低手摺位置への変位に連動して背面手摺31に近い手摺の順に、高手摺位置から低手摺位置へ順次変位される。これにより、かご上手摺装置4の状態が収納状態になる。
この後、作業者は、乗場出入口を通って乗場に移動した後、通常運転スイッチ54のキー55をスイッチ本体56の挿入穴に差し込む。これにより、キー55がスイッチ本体56によって検出され、通常運転スイッチ54から制御装置へ検出信号が送られる。制御装置が通常運転スイッチ54からの検出信号を受けると、エレベータの運転モードが通常運転モードになる。これにより、通常のサービス運転が可能になり、エレベータの保守点検作業が終了する。
このように、各手摺31〜35のそれぞれの可動手摺部材22をかご1の上部に対して回動するようにしても、各手摺31〜35の高さ寸法の調整を簡単な構成でかつ容易にすることができる。また、互いに隣り合う可動手摺部材22同士が突起物46,47を介して掛かるようにすることにより、すべての手摺31〜35を高手摺位置に保持することができ、一部の手摺が組み立てられないままになることをより確実に防止することができる。さらに、かご上手摺装置4の状態を収納状態にするときにも、基準手摺である背面手摺31の可動手摺部材22の高手摺位置での保持を解除することによって、すべての手摺31〜35の可動手摺部材22を連動させて低手摺位置へ変位させることができ、一部の手摺が収納されないままになることも防止することができる。
なお、上記の例では、通常運転スイッチ54のキー55がワイヤ57を介して可動手摺部材22に接続されているが、かご上手摺装置4の状態が収納状態であるときの第2の左側手摺33及び第2の右側手摺35のそれぞれの可動手摺部材22間の隙間が狭い場合には、可動手摺部材22にキー55を直接固定してもよい。この場合、第2の左側手摺33及び第2の右側手摺35のそれぞれの可動手摺部材22が低手摺位置に変位されると、キー55がスイッチ本体56の挿入穴に自動的に挿入される。
また、上記の例では、第1の左側手摺32の可動手摺部材22に掛かる突起物46が第2の左側手摺33の可動手摺部材22に固定され、第1の右側手摺34の可動手摺部材22に掛かる突起物47が第2の右側手摺35の可動手摺部材22に固定されているが、第2の左側手摺33の可動手摺部材22に掛かる突起物46を第1の左側手摺32の可動手摺部材22に固定し、第2の右側手摺35の可動手摺部材22に掛かる突起物47を第1の右側手摺34の可動手摺部材22に固定してもよい。この場合、第2の左側手摺33の可動手摺部材22から第1の左側手摺32よりもかご1の内側へ突起物46が突出し、第2の右側手摺35の可動手摺部材22から第1の右側手摺34よりもかご1の内側へ突起物47が突出する。