以下、この発明の加熱調理器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態の加熱調理器の扉閉鎖時の概略正面図を示し、図2は上記加熱調理器の扉開放時の概略正面図を示している。
この第1実施形態の加熱調理器は、図1,図2に示すように、直方体形状の本体ケーシング1と、この本体ケーシング1内に設けられ、前側に開口2aを有する収容部の一例としての加熱庫2と、加熱庫2の開口2aを開閉する扉3とを備えている。
上記本体ケーシング1の上側かつ後側に、吹出口5aを有する排気ダクト5を設けている。また、本体ケーシング1の前面の下部に露受容器6を着脱可能に取り付けている。この露受容器6は、扉3の下側に位置し、扉3の後面(加熱庫2側の表面)や本体ケーシング1の前板55からの水滴を受けることができるようになっている。また、本体ケーシング1の前面の下部には、給水タンク26も着脱可能に取り付けられている。
上記扉3は、本体ケーシング1の前面側に下側の辺を軸に回動可能に取り付けられている。この扉3の前面(加熱庫2とは反対側の表面)には、耐熱性を有する透明な外ガラス7が設けられている。また、扉3は、外ガラス7の上側に位置するハンドル8と、外ガラス7の右側に設けられた操作パネル9とを有している。
上記操作パネル9は、カラー液晶表示部10およびボタン群11を有している。このボタン群11は、途中で加熱を止めるときなどに押す取り消しキー12と、加熱を開始するときに押すあたためスタートキー13とを含んでいる。また、操作パネル9には、スマートフォンなどからの赤外線を受ける赤外線受光部14が設けられている。
上記加熱庫2内には被加熱物15が収容される。また、加熱庫2内への金属製の調理トレイ91,92(図3に示す)の出し入れが可能になっている。加熱庫2の左側部2b,右側部2cの内面には、調理トレイ91を支持する上棚受け16A,16Bが設けられている。また、加熱庫2の右側部2c,左側部2bの内面には、上棚受け16A,16Bよりも下側に位置するように、調理トレイ92を支持する下棚受け17A,17Bが設けられている。
図3は、上記加熱調理器の主要部の構成を説明するための模式図である。この図3では、加熱庫2を左側から見た状態が示されている。なお、図3において、図1,図2と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
上記加熱調理器は、循環ダクト18と、循環ファン19と、上ヒータ20と、中ヒータ21と、下ヒータ22と、循環ダンパ23と、チューブポンプ25と、給水タンク26および蒸気発生装置70を備えている。この上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22は、加熱部の一例であって、それぞれ、例えばシーズヒータから成っている。なお、チューブポンプ25はポンプの一例であり、駆動方向によって給水動作と排水動作とを切り替え可能なポンプであればよい。
上記加熱庫2の上部2eは、水平方向に対して傾斜する傾斜部2fを介して加熱庫2の後部2dと連なっている。この傾斜部2fに、循環ファン19と対向するように複数の吸込口27を設けている(図2参照)。また、加熱庫2の上部2eに上吹出口28を複数設けている。また、加熱庫2の後部2dに、第1後吹出口29、第2後吹出口30および第3後吹出口31を、それぞれ、複数設けている(図2参照)。なお、図3では、複数の吸込口27のうちの1個だけを示している。また、図3では、第1後吹出口29、第2後吹出口30および第3後吹出口31は各1個だけを示している。
上記循環ダクト18は、吸込口27、上吹出口28および第1〜第3後吹出口29〜31を介して加熱庫2内と連通している。この循環ダクト18は、加熱庫2の上側から後側に亘って設けられて、逆L字形状を呈するように延在している。また、循環ダクト18の左右方向の幅は、加熱庫2の左右方向の幅より狭く設定されている。
上記循環ファン19は、遠心ファンであって、循環ファン用モータ56によって駆動される。この循環ファン用モータ56が循環ファン19を駆動すると、加熱庫2内の空気や飽和蒸気(以下、「空気など」と言う)は、複数の吸込口27から循環ダクト18内に吸い込まれ、循環ファン19の径方向外側に吹き出す。より詳しくは、循環ファン19の上側では、空気などは、循環ファン19から斜め上方に流れた後、後方から前方に向かって流れる。一方、循環ファン19の下側では、空気などは、循環ファン19から斜め下方に流れた後、上方から下方に向かって流れる。なお、上記空気などは熱媒体の一例である。
上記循環ダクト18内かつ循環ファン19の外側近傍に庫内温度センサ76(図7に示す)を配置している。この庫内温度センサ76により、加熱庫2内から吸込口27を介して吸い込まれた熱媒体の温度すなわち庫内温度を検出する。
上記上ヒータ20は、循環ダクト18内に配置され、加熱庫2の上部2eに対向している。この上ヒータ20は、上吹出口28へ流れる空気などを加熱する。
上記中ヒータ21は、環状に形成され、循環ファン19を取り囲んでいる。この中ヒータ21は、循環ファン19から上ヒータ20に向かう空気などを加熱したり、循環ファン19から下ヒータ22に向かう空気などを加熱したりする。
上記下ヒータ22は、循環ダクト18内に配置され、加熱庫2の後部2dに対向している。この下ヒータ22は、第2,第3後吹出口30,31へ流れる空気などを加熱する。
上記循環ダンパ23は、循環ダクト18内かつ中ヒータ21と下ヒータ22との間に回動可能に設けられている。この循環ダンパ23の回動は循環ダンパ用モータ(図示せず)によって行われる。
また、蒸気発生装置70は、上側開口を有する金属製の蒸気発生容器71と、その蒸気発生容器71の上側開口を覆う耐熱性樹脂(例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂)からなる蓋部72と、蒸気発生容器71の底部71aに鋳込まれたシーズヒータから成る蒸気発生用ヒータ73とを有する。この蒸気発生容器71の底部71a上には給水タンク26からの水が溜まり、熱源の一例としての蒸気発生用ヒータ73が蒸気発生容器71を介して上記水を加熱する。そして、蒸気発生用ヒータ73による加熱で発生した飽和蒸気は、樹脂製の蒸気チューブ35と金属製の蒸気管36とを流れて、複数の蒸気供給口37を介して加熱庫2内に供給される(図2参照)。なお、図3では、複数の蒸気供給口37のうちの1個だけを示している。
また、上記加熱庫2内の飽和蒸気は、循環ファン19により上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22に送られ、上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22で加熱することにより、100℃以上の過熱蒸気となる。
また、上記蓋部72には、一対の電極棒75a,75bから成る水位センサ75が取り付けられている。この電極棒75a,75bの間が導通状態になったか否かに基づいて、蒸気発生容器71の底部71a上の水位が所定水位になったか否かが判定される。
上記チューブポンプ25は、シリコンゴム等からなる弾性変形可能な給排水チューブ40をローラ(図示せず)でしごいて、そのローラの駆動方向によって、給水タンク26内の水を蒸気発生装置70に流したり、蒸気発生装置70内の水を給水タンク26に流したりする。この給排水チューブ40は、給水経路の一例である。
上記給水タンク26は、給水タンク本体41および連通管42を有する。この連通管42の一端部が給水タンク本体41内に位置する一方、連通管42の他端部が給水タンク26外に位置する。給水タンク26がタンクカバー43内に収容されると、連通管42の他端部がタンクジョイント部44を介して給排水チューブ40に接続される。すなわち、給水タンク本体41内が連通管42などを介して蒸気発生装置70内と連通する。
上記チューブポンプ25と給水タンク26と給排水チューブ40とタンクカバー43とタンクジョイント部44で給水装置を構成している。
図4は上記加熱調理器の給気ユニット100を含む構成を説明するための模式図を示している。この図4でも、図3と同様に、加熱庫2を左側方から見た状態が示されている。なお、図4において、図3と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
また、上記加熱庫2の傾斜部2fに、給気ダンパ51で開閉される複数の給気口50を設けている(図2参照)。この複数の給気口50と給気ファン54を給気通路101を介して接続している。また、給気通路101の給気口50近傍から分岐する第1冷却通路102に冷却ダンパ52を設けている。例えば、給気ファン54はシロッコファンからなる。
また、上記加熱庫2の上部2eに設けられた凹部110に赤外線センサユニット300を配置している。
上記給気ファン54は、循環ファン用モータ56(図3に示す)と赤外線センサユニット300を冷却するための冷却ファンを兼ねている。また、上記給気ダンパ51は、給気口開閉部の一例である。また、冷却ダンパ52は、冷却通路開閉部の一例である。上記給気ダンパ51(給気口開閉部)と冷却ダンパ52(冷却通路開閉部)で切換機構を構成している。
図4の下側の円部分に赤外線センサユニット300の構成を示す模式図を示している。上記赤外線センサユニット300は、図4に示すように、加熱庫2の上部2eに設けられた凹部110に軸方向が前後方向かつ水平方向に取り付けられた筒状の保持部材301と、その保持部材301内に回転可能に支持された略円筒状の可動部材302と、保持部材301の前面側の一端に取り付けられ、可動部材302を駆動する駆動部の一例としての赤外線センサ用モータ304とを有する。上記可動部材302は、赤外線センサ303を有する。
この実施形態では、赤外線センサ303は、縦8×横8の64領域の温度を検出するエリアセンサを用いたが、赤外線センサはこれに限らず、センサ部が直線状に並んだラインセンサでもよい。
この赤外線センサユニット300は、赤外線センサ用モータ304により略円筒状の可動部材302を回動させることにより、加熱庫2内に向かって赤外線センサ303の検出面303a(図11に示す)を向けると共に、赤外線センサ303の検出面303aに垂直な軸を、本体ケーシング1の左右方向かつ垂直平面に沿って所定の角度範囲(例えば20度)内で回動させる(図6A〜図6D参照)。このとき、加熱庫2の上部2eに設けられた凹部110に、開口部の一例としてのセンサ窓部120(図13に示す)を設けている。このセンサ窓部120を介して赤外線センサ303は、加熱庫2内の温度を検出する。
上記加熱庫2のセンサ窓部120(図13に示す)の開口面に沿った軸を中心に可動部材302が回転することによって、可動部材302が直線的にスライド移動する場合に比べて、駆動機構の構成を簡略化できると共に、可動部材302と保持部材301および赤外線センサ用モータ304(駆動部)の設置スペースをコンパクトにできる。
図4では、給気ダンパ51が開いた状態で給気ファン54からの空気が複数の給気口50を介して加熱庫2内に供給される。このとき、冷却ダンパ52により第1冷却通路102を閉じている。また、加熱庫2内の余剰な空気などが、自然に、自然排気口45から第4風通路204へ流れ出る。
次に、給気ダンパ51が閉じて複数の給気口50が閉鎖され、冷却ダンパ52により第1冷却通路102を開くと、給気ファン54からの空気の一部が、給気通路101と第1冷却通路102を介して循環ファン用モータ56(図3に示す)に供給される。
さらに、給気ダンパ51を閉じることにより、給気ダンパ51近傍に設けられた第2冷却通路103が開いて、給気ファン54からの空気の残りが天面側に配置された赤外線センサユニット300に供給される。上記給気通路101と第1冷却通路102および第2冷却通路103で、循環ファン用モータ56(図3に示す)と赤外線センサ303を冷却するための冷却通路を構成している。
図5は本体ケーシング1(図1に示す)の上面と両側面を覆う上面板1aと裏面板(図示せず)を取り外した加熱調理器を後方かつ斜め上方から見た斜視図を示している。図5において、図1〜図7と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
図5に示すように、加熱庫2の後側かつ左側(図5では右側)に給気ユニット100を設けている。この給気ユニット100は、下側に配置された給気ファン54と、その給気ファン54から上方に向かって延在する給気通路101と、給気通路101の上側から分岐して、加熱庫2の後側上部の中央に位置する循環ファン用モータ56に向かって延在する第1冷却通路102を有している。詳しくは、給気ユニット100は、給気ファン54から上方に逆L字形状を呈するように延在している。
また、加熱庫2の後側かつ右側(図5では左側)に排気ユニット200を設けている。この排気ユニット200は、排気ユニット用カバー220を含むハウジング210と、ハウジング210の下側に配置された排気ファン47とを有する。
上記排気ユニット200の上部の右側方(図5では左側)に排気ダンパ用モータ60を配置している。この排気ダンパ用モータ60により、排気ユニット200内の上部に設けられた排気ダンパ(図示せず)を開閉する。
上記加熱庫2の上部2eに、仕切板111を前後方向に立設している。この仕切板111によって、給気ダンパ51(図4に示す)近傍に設けられた第2冷却通路103(図4に示す)から赤外線センサユニット300の領域に流れる冷却風が本体ケーシング1内の左側面に流れないように遮っている。
また、図6A〜図6Dは上記加熱調理器の赤外線センサ303の動作を説明するための模式図を示している。
図6A,図6Bは上段に載置された調理トレイ91上の被加熱物の温度を検出するときの赤外線センサユニット300の赤外線センサ303(図4に示す)による温度検出範囲を示している。図6Aに示す温度検出範囲は、正面視において調理トレイ91上の左側領域であり、図6Bに示す温度検出範囲は、正面視において調理トレイ91上の右側領域である。赤外線センサ用モータ304により赤外線センサ303を有する円筒状の可動部材302を回動させて、赤外線センサ303の検出面303a(図11に示す)を左右方向に振る。なお、この実施形態では、赤外線センサ303の温度検出範囲は、図6Aに示す左側領域と、図6Bに示す右側領域と、左側領域と右側領域との間の中央領域の3つの領域に分けられているが、4以上の複数の領域に分けてもよい。
また、図6C,図6Dは加熱庫2の底面上の被加熱物の温度を検出するときの赤外線センサユニット300の赤外線センサ303(図4に示す)による温度検出範囲を示している。図6Cに示す温度検出範囲は、正面視において加熱庫2の底面上の左側領域であり、図6Dに示す温度検出範囲は、正面視において加熱庫2の底面上の右側領域である。なお、この実施形態では、図6A,図6Bと同様に、赤外線センサ303の温度検出範囲は、図6Cに示す左側領域と、図6Dに示す右側領域と、左側領域と右側領域との間の中央領域の3つの領域に分けられているが、4以上の複数の領域に分けてもよい。
図7は上記加熱調理器の赤外線センサユニット300を斜め上方から見た斜視図を示しており、図8は上記赤外線センサユニット300の分解斜視図を示している。
この赤外線センサユニット300は、図7,図8に示すように、半円筒部311aと半円筒部311aの一端に連なるモータ取付部311bを有するベース311と、ベース311の略中央下側に取り付けられた耐熱性樹脂からなるパッキン310と、ベース311の半円筒部311aに回転可能に嵌合された第1可動筒部312と、第1可動筒部312に取り付けられた基板取付部材313と、基板取付部材313に取り付けられた基板314と、基板314に実装された赤外線センサ303と、赤外線センサ303を覆うように第1可動筒部312に取り付けられた第2可動筒部315と、上記第1可動筒部312,基板取付部材313,基板314,赤外線センサ303,第2可動筒部315を囲むように、ベース311の半円筒部311aに取り付けられた半円筒部316と、半円筒部316上に取り付けられた補強金具317とを有する。上記基板314に配線320が接続されている。
上記第1可動筒部312と基板取付部材313と基板314と赤外線センサ303と第2可動筒部315で可動部材302(図4に示す)を構成している。第1可動筒部312と第2可動筒部315は、耐熱性と疎水性を有するPPS(polyphenylene sulfide:ポリフェニレンサルファイド)からなる。
また、ベース311と半円筒部316で保持部材301(図4に示す)を構成している。ベース311と半円筒部316は、PPSからなる。
上記第1可動筒部312は、半円筒部312aと、半円筒部312aの一端に設けられた第1環状部312bと、半円筒部312aの他端に設けられた第2環状312cと、第2環状312cの軸方向外側に突出するボス312dを有する。
上記ベース311の半円筒部311aの軸方向の一端(モータ取付部311bと反対の側)に半円弧形状の案内溝部311cを設けている。このベース311の案内溝部311cによって、可動部材302の環状突部(図示せず)を案内することによって、保持部材301内における可動部材302の軸方向の移動を規制している。この可動部材302は、保持部材301内に回転可能に保持される。
そして、第1可動筒部312のボス312dに、赤外線センサ用モータ304の駆動軸304a(図12に示す)が連結されている。この赤外線センサ用モータ304により可動部材302を回転駆動する。
図8に示す可動部材302は、赤外線センサ303が外側を向いた状態であり、この状態から可動部材302が180度回転することにより、赤外線センサ303が下側すなわち加熱庫2側を向いた状態になる。
図9は上記赤外線センサユニット300の赤外線センサ303が加熱庫2側を向いた状態の上面図を示し、図10は上記赤外線センサユニット300の赤外線センサ303が加熱庫2側を向いた状態の側面図を示している。
また、図11は上記赤外線センサユニット300の赤外線センサ303が加熱庫2側を向いた状態の下面図を示している。図11に示すように、可動部材302の赤外線センサ303の検出面303aが、保持部材301を構成するベース311の半円筒部311aに設けられた窓部330を介して下方を向いている。
図12は図9のXII−XII線から見た縦断面図を示している。図12において、図8と同一の構成部には同一参照番号を付している。
図12に示すように、第1可動筒部312のボス312dに、赤外線センサ用モータ304の駆動軸304a(図12に示す)が連結されている。また、赤外線センサ303の検出面303aは、窓部330とパッキン310を介して、下側の加熱庫2の天面の右側方に設けられた開口部の一例としてのセンサ窓部120(図13に示す)側に露出している。上記センサ窓部120は、図5に示す加熱庫2の上部2eの凹部110に設けられている。
また、ベース311の半円筒部311aの窓部330の軸方向の一方(赤外線センサ用モータ304側)に、窓部330に隣接する穴340が設けられている。一方、半円筒部311aの窓部330の軸方向の他方に、窓部330に隣接する穴350設け、その外側に穴360が設けられている。穴340,穴350は、案内部の一例である。
図13は図12のXIII−XIII線から見た縦断面図を示している。図13に示すように、赤外線センサ303の検出面303aは、窓部330とパッキン310を介して下側の加熱庫2の上部2eに設けられたセンサ窓部120側に露出している。
また、図14は図12のXIV−XIV線から見た縦断面図を示している。図14において、図14と同一の構成部には同一参照番号を付している。図14に示すように、ベース311の半円筒部311aには、案内部の一例としての穴340を設けている。
図15は上記赤外線センサユニット300の赤外線センサ303が外側を向いた状態の上面図を示している。図15において、図9と同一の構成部には同一参照番号を付している。
また、図16は上記赤外線センサユニット300の赤外線センサ303が外側を向いた状態の下面図を示している。図16に示すように、可動部材302の第1可動筒部312の一部が、保持部材301を構成するベース311の半円筒部311aに設けられた窓部330から露出している。
また、図17は図15のXVII−XVII線から見た縦断面図を示している。図17において、図12と同一の構成部には同一参照番号を付している。
この図17の要部拡大図を図18に示している。図18に示すように、保持部材301を構成するベース311の半円筒部311aに設けられた窓部330の近傍では、可動部材302(図8に示す)の第1可動筒部312の外周面と、その外周面に対向するベース311の半円筒部311aの内周面との隙間の間隔dを0.4mmとしている。このときの寸法公差を+0.0mm、−0.1mm〜−0.2mmとしている。
この実施の形態の加熱調理器では、略円筒状の可動部材302の半径を10mmとすると共に、軸方向のシール長を4mmとしている。ここで、軸方向のシール長とは、ベース311の半円筒部311aに設けられた窓部330と隣接する穴340との間、および、窓部330と隣接する穴350との間において、第1可動筒部312の外周面とベース311の半円筒部311aの内周面とが対向する領域の軸方向の長さである。
なお、上記軸方向のシール長は、可動部材の曲率半径などに応じて適宜設定される。
上記構成の加熱調理器によれば、蒸し調理などにおいて、可動部材302(図8に示す)の第1可動筒部312の外周面と、その外周面に対向するベース311の半円筒部311aの内周面との隙間に、加熱庫2内からの蒸気がパッキン310,窓部330を介して侵入して結露水の膜が形成されて、上記隙間がウォーターシールにより密閉状態になる。
このように、加熱庫2のセンサ窓部120(開口部)と可動部材302との隙間に水の膜が形成されることにより上記隙間を密閉状態にするシール構造を設けることによって、加熱庫2内の温度を検出する赤外線センサ303のために設けられた加熱庫2のセンサ窓部120を、センサ不使用時にウォーターシールによって密閉することができる。これにより、例えば蒸気を用いた蒸し調理において、従来のように冷却ファンからの冷却風が加熱庫2内に流入して、庫内蒸気量や庫内温度を下げてしまったり、加熱庫2のセンサ窓部120から蒸気が漏れ出たりするのを防ぐことが可能になる。また、上記シール構造には、パッキンを用いた摺接部分がなく、摩擦などによる回転不良を防止できる。
また、過熱蒸気または飽和蒸気を用いたオーブン調理において、上記シール構造により加熱庫2のセンサ窓部120からの蒸気漏れを確実に防ぐことによって、過熱蒸気または飽和蒸気で加熱庫2内の酸素を追い出して低酸素状態で調理することが可能になる。これにより、食品の酸化を抑えて栄養分を損なわない調理ができる。
また、上記赤外線センサ用モータ304(駆動部)により回転する可動部材302と、可動部材302を回転可能に保持する保持部材301を、樹脂成形により高い寸法精度で形成することが可能である。したがって、加熱庫2のセンサ窓部120の周縁部分と保持部材301の窓部330の周縁部分との間をパッキン310によりシールし、保持部材301の窓部330の周縁部分と可動部材302との隙間に水の膜が形成されることにより上記隙間を密閉状態にするシール構造とすることによって、可動部材302と保持部材301の互いに対向するシール面の間隔dを高精度に保つことができ、加熱庫2内に蒸気が発生したときに上記隙間に水の膜を確実に形成でき、加熱庫2のセンサ窓部120と可動部材302との隙間を確実に密閉できる。
また、上記赤外線センサ303を使用しない加熱モード(例えば蒸し調理)では、赤外線センサ用モータ304により可動部材302を回転させて、赤外線センサ303が加熱庫2内に露出しないようにしたとき、加熱庫2のセンサ窓部120と可動部材302との隙間をシール構造で密閉状態にして、加熱庫2内で発生した蒸気が上記隙間から外部に漏れ出さないようにできる。
なお、上記可動部材302に搭載するセンサは、加熱庫2内の温度を検出する赤外線センサ303に限らず、加熱庫内の被加熱物の大きさを検出する画像センサなどでもよく、加熱庫2内における所定の物理量を検出するセンサであればよい。
また、上記シール構造の水の膜が形成される領域の外側に漏れ出た水を排出する穴340,穴350(案内部)を設けることによって、上記水の膜が形成される領域から水が漏れ出ても、その外側の穴340,穴350により案内されて、可動部材302を保持する保持部材301から容易に排出することができる。
上記シール構造の水の膜が形成される隙間の間隔dを0.1mm以上かつ0.4mm以下にすることによって、上記隙間に水の膜を確実に形成でき、安定したウォーターシール効果が得られる。
なお、保持部材301と可動部材302の材料に疎水性を有するPPSを用いたが、保持部材や可動部材に親水性を有する材料を用いてもよい。また、保持部材や可動部材の材料の疎水性,親水性に応じて隙間の間隔dを適宜設定すればよい。
また、図19は図17のXIX−XIX線から見た縦断面図を示している。図19において、図13と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
さらに、図20は図17のXX−XX線から見た縦断面図を示している。図20において、図14と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
〔第2実施形態〕
また、この発明の第2実施形態の加熱調理器は、赤外線センサユニットの構成を除いて第1実施形態の加熱調理器の図19と同一の構成をしており、図1〜図8を援用する。
この第2実施形態の加熱調理器は、加熱庫2の上部2eに配置された赤外線センサユニットを備えている。
この赤外線センサユニットは、加熱庫2の上部2eに設けられた凹部110に取り付けられた保持部材と、その保持部材内に水平方向にかつ直線的にスライド移動可能に支持され、赤外線センサを有する可動部材と、その可動部材を駆動する駆動部とを有する。
上記加熱調理器は、加熱庫2のセンサ窓部120(開口部)と可動部材との隙間に水の膜が形成されることにより上記隙間を密閉状態にするシール構造を設けている。これによって、加熱庫2内の温度を検出する赤外線センサのために設けられた加熱庫2のセンサ窓部120を、センサ不使用時にウォーターシールによって密閉することができる。
上記第2実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器と同様の効果を有する。
〔第3実施形態〕
図21はこの発明の第3実施形態の加熱調理器の要部の縦断面図を示している。詳しくは、この発明の第3実施形態の加熱調理器は、ブラシ400を除いて第1実施形態の加熱調理器の図19と同一の構成をしており、図1〜図8を援用する。図21において、図19と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
この第3実施形態の加熱調理器は、図21に示すように、半円筒部316に設けられた取付穴316aにブラシ400を取り付けている。
上記可動部材302(図8に示す)の回転に伴って、ブラシ400の毛先で赤外線センサ303の検出面303aを清掃する。これにより、赤外線センサ303の検出面303aに付着した異物を除去でき、赤外線センサ303の検出性能の低下を防止できる。
なお、上記ブラシ400による清掃は、赤外線センサユニット300の赤外線センサ303が加熱庫2側を向いた状態から加熱庫2の外側を向いた状態に回転させるときに、赤外線センサ303の検出面303aがブラシ400側を通過するときに行ってもよいし、赤外線センサ303の検出面303aがブラシ400の位置で往復動することにより行ってもよい。
上記第3実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器と同様の効果を有する。
なお、上記第3実施形態では、ブラシ400を用いて赤外線センサ303の検出面303aを清掃したが、ブラシに限らす、弾性材料からなるヘラ状の部材で赤外線センサの検出面に付着した異物を除去してもよい。
上記第1〜第3実施形態では、赤外線センサ303を有する可動部材302を搭載した加熱調理器について説明したが、赤外線センサを可動部材に取り付けずに別に搭載して、加熱庫の開口部を開閉する役割の可動部材を備えた加熱調理器にこの発明を適用してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、赤外線センサ303を加熱庫2の上部2eに設けられた凹部110に、すなわち、加熱庫2の天面に、開口部であるセンサ窓部120を設けたが、加熱庫2の側面に開口部を設けてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、赤外線センサ303を備えた加熱調理器について説明したが、加熱庫2内における所定の物理量を検出するセンサに限らず、調味料や油などを加熱庫2内の被加熱物に吹き付ける吐出ノズルを搭載してもよく、また、加熱庫2内の被加熱物に差し込んで温度などを直接測定する探針を搭載してもよい。この場合、可動部材に吐出ノズルや探針を取り付けた構造としてもよいし、可動部材とは別に、吐出ノズルや探針を取り付けた構造としてもよい。
この発明の加熱調理器では、オーブンレンジなどにおいて、過熱蒸気または飽和蒸気を用いることによって、ヘルシーな調理を行うことができる。例えば、この発明の加熱調理器では、温度が100℃以上の過熱蒸気または飽和蒸気を食品表面に供給し、食品表面に付着した過熱蒸気または飽和蒸気が凝縮して大量の凝縮潜熱を食品に与えるので、食品に熱を効率よく伝えることができる。また、凝縮水が食品表面に付着して塩分や油分が凝縮水と共に滴下することにより、食品中の塩分や油分を低減できる。さらに、加熱庫内は過熱蒸気または飽和蒸気が充満して低酸素状態となることにより、食品の酸化を抑制した調理が可能となる。ここで、低酸素状態とは、加熱庫内において酸素の体積%が10%以下(例えば0.5〜3%)である状態を指す。
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第3実施形態で記載した内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
この発明の加熱調理器は、
加熱庫2と、
上記加熱庫2の天面または側面に設けられた開口部120と、
上記加熱庫2の上記開口部120を介して上記加熱庫2内に一部が露出する可動部材302と、
上記可動部材302を回転可能または移動可能に保持する保持部材301と、
上記可動部材302を駆動する駆動部304と
を備え、
上記加熱庫2の上記開口部120と上記可動部材302との隙間に水の膜が形成されることにより上記隙間を密閉状態にするシール構造を設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、加熱庫2の開口部120と可動部材302との隙間に、加熱庫2内からの蒸気が結露して水の膜が形成されることにより上記隙間を密閉状態にするシール構造を設けることによって、例えば、加熱庫2内の温度を検出する赤外線センサなどのために設けられた加熱庫2の開口部120を、センサ不使用時にウォーターシールにより密閉できる。これにより、例えば蒸気を用いた蒸し調理において、従来のように冷却ファンからの冷却風が加熱庫2内に流入して、庫内蒸気量や庫内温度を下げてしまったり、加熱庫2の開口部120から蒸気が漏れ出たりするのを防ぐことが可能になる。
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記加熱庫2の上記開口部120に対向する上記保持部材301の位置に窓部330が設けられ、
上記加熱庫2の上記開口部120の周縁部分と上記保持部材301の上記窓部330の周縁部分との間をシールするパッキンを備え、
上記シール構造は、上記保持部材301の上記窓部330の周縁部分と上記可動部材302との隙間に水の膜が形成されることにより上記隙間を密閉状態にする。
駆動部304により回転または移動する可動部材302と、可動部材302を回転可能または移動可能に保持する保持部材301を、樹脂成形などにより高い寸法精度で形成することが可能である。したがって、上記実施形態によれば、加熱庫2の開口部120の周縁部分と保持部材301の窓部330の周縁部分との間をパッキンによりシールし、保持部材301の窓部330の周縁部分と可動部材302との隙間に水の膜が形成されることにより上記隙間を密閉状態にするシール構造とすることによって、可動部材302と保持部材301の互いに対向するシール面の間隔dを高精度に保つことができ、加熱庫2内に蒸気が発生したときに上記隙間に結露水の膜を確実に形成でき、加熱庫2の開口部120と可動部材302との隙間を確実に密閉できる。
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記可動部材302は、上記加熱庫2内における所定の物理量を上記加熱庫2の上記開口部120を介して検出するセンサ303を有する。
上記実施形態によれば、可動部材302のセンサ303により加熱庫2内における所定の物理量(例えば被加熱物の温度)を加熱庫2の開口部120を介して検出する。そして、センサ303を使用しない加熱モードでは、駆動部304により可動部材302を回転または移動させて、センサ303が加熱庫2内に露出しないようにしたとき、加熱庫2の開口部120と可動部材302との隙間をシール構造で密閉状態にして、加熱庫2内で発生した蒸気が上記隙間から外部に漏れ出さないようにできる。
なお、上記可動部材302のセンサ303は、加熱庫2内の温度を検出する赤外線センサ303や、加熱庫2内の被加熱物の大きさを検出する画像センサなどのように、加熱庫2内における所定の物理量を検出するセンサであればよい。
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記可動部材302は、上記加熱庫2の上記開口部120の開口面に沿った軸を中心に回転する。
上記実施形態によれば、加熱庫2の開口部120の開口面に沿った軸を中心に可動部材302が回転することによって、可動部材302が直線的にスライド移動する場合に比べて、駆動機構の構成を簡略化できると共に、可動部材302と保持部材301および駆動部304の設置スペースをコンパクトにできる。
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記シール構造の上記水の膜が形成される領域の外側に漏れ出た水を排出する案内部を設けた。
上記実施形態によれば、シール構造の水の膜が形成される領域の外側に漏れ出た水を排出する案内部を設けることによって、上記水の膜が形成される領域から水が漏れ出ても、その外側の案内部により案内されて、可動部材302を保持する保持部材301から容易に排出できる。
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記シール構造の上記水の膜が形成される隙間の間隔は、0.1mm以上かつ0.4mm以下である。
上記実施形態によれば、上記シール構造の水の膜が形成される隙間の間隔を0.1mm以上かつ0.4mm以下にすることによって、上記隙間に水の膜を確実に形成でき、安定したウォーターシール効果が得られる。