以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、この発明の第1実施形態の加熱調理器における扉閉鎖時の概略正面図である。図2は、図1の加熱調理器における扉開放時の概略正面図である。
本加熱調理器は、図1および図2に示すように、直方体形状の本体ケーシング1と、この本体ケーシング1内に設けられ、前側に開口部2aを有する加熱室2と、加熱室2の開口部2aを開閉する扉3とを備えている。
上記本体ケーシング1の上側且つ後側に、吹出口5aを有する排気ダクト5を設けている。また、本体ケーシング1の前面の下部に露受容器6を着脱可能に取り付けている。この露受容器6は、扉3の下側に位置し、扉3の後面(加熱室2側の表面)や本体ケーシング1の前板55からの水滴を受けることができるようになっている。また、本体ケーシング1の前面の下部には、給水タンク26が着脱可能に取り付けられている。
上記扉3は、本体ケーシング1の前面側に下側の辺を軸に回動可能に取り付けられている。この扉3の前面(加熱室2側とは反対側の表面)には、耐熱性を有する透明な外ガラス7が設けられている。また、扉3は、外ガラス7の上側に位置するハンドル8と、上記前面から見て外ガラス7の右側に設けられた操作パネル9とを有している。
上記操作パネル9は、カラー液晶表示部10およびボタン群11を有している。このボタン群11は、途中で加熱を止める場合等に押圧される取り消しキー12と、加熱を開始する場合に押圧されるあたためスタートキー13とを含んでいる。また、操作パネル9には、スマートフォンなどからの赤外線を受ける赤外線受光部14が設けられている。
上記加熱室2内には、被加熱物15が収容される。また、加熱室2内には、金属製の調理トレイ91,92(図3参照)が出し入れ可能に装着される。上記前面から見て加熱室2の左側面部2b,右側面部2cの内面には、調理トレイ91を支持する上棚受け16A,16Bが設けられている。また、加熱室2の右側面部2c,左側面部2bの内面には、上棚受け16A,16Bよりも下側に位置するように、調理トレイ92を支持する下棚受け17A,17Bが設けられている。
図3は、上記加熱調理器の主要部の構成を説明するための模式図であり、加熱室2を上記左側から見た状態を示している。尚、図3においては、図1および図2と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
上記加熱調理器は、循環ダクト18と、循環ファン19と、上ヒータ20と、中ヒータ21と、下ヒータ22と、循環ダンパ23と、チューブポンプ25と、給水タンク26および蒸気発生装置70とを備えている。上記上ヒータ20,中ヒータ21および下ヒータ22は、夫々、例えばシーズヒータで構成されている。尚、チューブポンプ25は、駆動方向によって給水動作と排水動作とを切り替え可能なポンプであれば、どのようなポンプであっても差し支えない。
上記加熱室2の天面部2eは、後方に向かって徐々に低くなるように水平方向に対して傾斜する傾斜部2fを後部に有し、この傾斜部2fを介して加熱室2の後面部2dと連なっている。この傾斜部2fに、循環ファン19と対向するように複数の吸込口27を設けている(図2参照)。また、加熱室2の天面部2eに上吹出口28を複数設けている。また、加熱室2の後面部2dには、第1後吹出口29,第2後吹出口30および第3後吹出口31を、夫々複数設けている(図2参照)。尚、図3では、複数の吸込口27のうちの1個だけを示している。また、図3では、第1後吹出口29,第2後吹出口30および第3後吹出口31は、各1個だけで示している。
上記循環ダクト18は、吸込口27,上吹出口28および第1〜第3後吹出口29〜31を介して加熱室2内と連通している。この循環ダクト18は、加熱室2の上側から後側に亘って設けられて、逆L字形状を呈するように延在している。また、循環ダクト18の左右方向の幅は、加熱室2の左右方向の幅よりも狭く設定されている。
上記循環ファン19は、遠心ファンであって、循環ファン用モータ56によって駆動される。この循環ファン用モータ56が循環ファン19を駆動することによって、加熱室2内の空気や飽和蒸気(以下、「空気等」と言う)が、複数の吸込口27から循環ダクト18内に吸い込まれ、循環ファン19の径方向外側に吹き出される。より詳しくは、循環ファン19の上側では、空気等は、循環ファン19から斜め上方に流れた後、後方から前方に向かって流れる。一方、循環ファン19の下側では、空気等は、循環ファン19から斜め下方に流れた後、上方から下方に向かって流れる。
上記上ヒータ20は、循環ダクト18内に配置され、加熱室2の天面部2eに対向している。この上ヒータ20は、上吹出口28へ流れる空気等を加熱する。
上記中ヒータ21は、循環ファン19を取り囲んで環状に形成されている。この中ヒータ21は、循環ファン19から上ヒータ20に向かって流れる空気等と、循環ファン19から下ヒータ22に向かって流れる空気等とを加熱する。
上記下ヒータ22は、循環ダクト18内に配置され、加熱室2の後面部2dに対向している。この下ヒータ22は、第2,第3後吹出口30,31に向かって流れる空気等を加熱する。
ここで、上記上ヒータ20,中ヒータ21および下ヒータ22は、上記ヒータの一例である。
上記循環ダンパ23は、循環ダクト18内であり且つ中ヒータ21と下ヒータ22との間に回動可能に設けられている。この循環ダンパ23の回動は、循環ダンパ用モータ59(図5参照)によって行われる。
また、蒸気発生装置70は、上側開口を有する金属製の蒸気発生容器71と、その蒸気発生容器71の上側開口を覆う耐熱性樹脂(例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂)からなる蓋部72と、蒸気発生容器71の底部71aに鋳込まれたシーズヒータからなる蒸気発生用ヒータ73とを有する。この蒸気発生容器71の底部71a上には給水タンク26からの水が溜まり、この水は蒸気発生用ヒータ73によって蒸気発生容器71を介して加熱される。そして、蒸気発生用ヒータ73による加熱で発生した飽和蒸気は、樹脂製の蒸気チューブ35と金属製の蒸気管36とを流れて、複数の蒸気供給口37を介して加熱室2内に供給される(図2参照)。尚、図3においては、複数の蒸気供給口37のうちの1個だけを示している。
そして、上記複数の蒸気供給口37を介して加熱室2内に供給された飽和蒸気は、循環ファン19の機能によって、複数の吸込口27から循環ダクト18内に吸い込まれ、中ヒータ21と上ヒータ20または下ヒータ22とによって加熱されて100℃以上の過熱蒸気となり、上吹出口28,第1後吹出口29,第2後吹出口30および第3後吹出口31から、加熱室2内に吹き出される。こうして、上記過熱蒸気が、加熱室2内および循環ダクト18内を空気と共に循環して、加熱調理が行われる。
また、上記蓋部72には、一対の電極棒75a,75bから成る水位センサ75が取り付けられている。この電極棒75a,75bの間が導通状態になったか否かに基づいて、蒸気発生容器71の底部71a上の水位が所定水位になったか否かが判定される。
上記チューブポンプ25は、シリコンゴム等からなる弾性変形可能な給排水チューブ40を回転するローラ(図示せず)でしごき、そのローラの駆動方向によって、給水タンク26内の水を蒸気発生装置70に流したり、蒸気発生装置70内の水を給水タンク26に流したりする。
上記給水タンク26は、給水タンク本体41および連通管42を有する。この連通管42の一端部が給水タンク本体41内に位置する一方、連通管42の他端部が給水タンク26外に位置する。給水タンク26がタンクカバー43内に収容されると、連通管42の他端部がタンクジョイント部44を介して給排水チューブ40に接続される。すなわち、給水タンク本体41内が連通管42などを介して蒸気発生装置70内と連通する。
図4は、本体ケーシング1(図1参照)の上面と両側面を覆う上面板1aと裏面板(図示せず)を取り外した状態の本加熱調理器を、後方且つ斜め上方から見た斜視図を示す。図4において、図1〜図3と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
図4に示すように、上記加熱室2の後側且つ上記左側(図4では右側)に給気ユニット100を設けている。この給気ユニット100は、下側に配置された給気ファン54と、その給気ファン54から上方に向かって延在する給気通路101と、給気通路101の上側から分岐して、加熱室2の後側上部の中央に位置する循環ファン用モータ56に向かって延在する第1冷却通路102とを有している。すなわち、給気ユニット100は、給気ファン54から上方に逆L字形状を呈するように延在している。
上記加熱室2の後側且つ上記右側(図4では左側)に排気ユニット200を設けている。この排気ユニット200は、排気ユニット用カバー220を含むハウジング210と、ハウジング210の下側に配置された排気ファン47とを有している。排気ユニット200における上部の右側方(図4では左側)に排気ダンパ用モータ60を配置している。この排気ダンパ用モータ60により、排気ユニット200内の上部に設けられた排気ダンパ(図示せず)が開閉される。
また、上記加熱室2の天面部2eに設けられた凹部310に赤外線センサユニット300を配置している。
上記加熱室2の天面部2eで且つ赤外線センサユニット300の側方に、仕切板312を前後方向に立設している。この仕切板312によって、給気ダンパ51(図6参照)近傍に設けられた第2冷却通路103(図6参照)から赤外線センサユニット300が配置された流路に流れる冷却風が、本体ケーシング1内の上記左側面側に流れ出ないように遮っている。
上記加熱調理器は、マイクロコンピュータおよび入出力回路等からなる制御装置80を備えている。図5は、制御装置80による加熱調理器の制御ブロック図を示す。
上記制御装置80には、上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22,蒸気発生用ヒータ73,循環ファン用モータ56,排気ファン用モータ57,給気ファン用モータ58,循環ダンパ用モータ59,排気ダンパ用モータ60,給気ダンパ用モータ61,冷却ダンパ用モータ62,操作パネル9,湿度センサ53,庫内温度センサ76,水位センサ75,チューブポンプ25,マグネトロン4,赤外線センサ303,赤外線センサ用モータ304等が接続されている。この赤外線センサ用モータ304は、上記駆動部の一例である。
そして、上記制御装置80は、操作パネル9,湿度センサ53,庫内温度センサ76,水位センサ75,赤外線センサ303等からの信号に基づいて、上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22,蒸気発生用ヒータ73,循環ファン用モータ56,排気ファン用モータ57,給気ファン用モータ58,循環ダンパ用モータ59,排気ダンパ用モータ60,給気ダンパ用モータ61,冷却ダンパ用モータ62,チューブポンプ25,マグネトロン4,赤外線センサ用モータ304等を制御して、被加熱物15に対する暖め,蒸し,茹で,調理等を行う。
図6は、上記加熱調理器の給気ユニット100と赤外線センサユニット300とを含む構成を説明するための模式図を示す。図6においても、図3と同様に、加熱室2を上記左側方から見た状態を示している。尚、図6において、図3と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
図6に示すように、上記加熱室2の傾斜部2fには、給気ダンパ51で開閉される複数の給気口50を設けている(図2参照)。この複数の給気口50と給気ファン54とを給気通路101を介して接続している。また、給気通路101の給気口50近傍から分岐する第1冷却通路102には、冷却ダンパ52を設けている。尚、給気ファン54は、例えばシロッコファンからなる。
また、上記加熱室2の天面部2eに設けられた凹部310には、赤外線センサユニット300が配置されている。
上記給気ファン54は、循環ファン用モータ56(図3参照)と赤外線センサユニット300とを冷却するための冷却ファンを兼ねている。
図6における下側の円内に、上記赤外線センサユニット300の構成を示す模式図を示している。図6に示すように、赤外線センサユニット300は、筒状ハウジング301、センサ保持部302、赤外線センサ303、および、赤外線センサ用モータ304を有している。筒状ハウジング301は、加熱室2の天面部2eに設けられた凹部310に、軸方向が前後方向且つ水平方向になるように取り付けられている。また、センサ保持部302は、筒状ハウジング301内に、中心軸の回りに回動可能に支持されている。また、赤外線センサ303は、センサ保持部302で保持されている。また、赤外線センサ用モータ304は、筒状ハウジング301の前面側の一端に取り付けられて、センサ保持部302を駆動する。ここで、本第1実施形態においては、赤外線センサ303は、縦8×横8の64領域の温度を検出するエリアセンサを用いている。しかしながら、赤外線センサは、これに限らず、センサ部が直線状に並んだラインセンサであってもよい。
尚、上記赤外線センサユニット300の下側に、断熱材を設けてもよい。その場合、断熱材が無い場合よりも、赤外線センサユニット300の温度を10℃〜15℃低下させることができる。
この赤外線センサユニット300は、赤外線センサ用モータ304により円筒状のセンサ保持部302を回動させることにより、加熱室2内に向かって赤外線センサ303の検出面を向けると共に、赤外線センサ303の検出面に垂直な軸を、上記前面から見て本体ケーシング1の左右方向に、垂直平面に沿って所定の角度範囲(例えば20度)内で回動させる(図7参照)。
図6において、上記給気ダンパ51が開いた状態で、給気ファン54からの空気が複数の給気口50を介して加熱室2内に供給される。その場合、冷却ダンパ52によって第1冷却通路102は閉鎖されている。また、加熱室2内の余剰な空気等は、自然に、自然排気口45から第4風通路204へ流れ出る。
一方、上記給気ダンパ51が閉じて複数の給気口50が閉鎖され、冷却ダンパ52によって第1冷却通路102が開かれると、給気ファン54からの空気の一部が、給気通路101と第1冷却通路102を介して循環ファン用モータ56(図4および図5参照)に供給される。さらに、給気ダンパ51を閉じることにより、給気ダンパ51近傍に設けられた第2冷却通路103が開いて、給気ファン54からの空気の残りが天面側に配置された赤外線センサユニット300に供給される。
また、図7〜図10は、上記加熱調理器の赤外線センサ303の温度検出範囲を説明するための模式図を示す。尚、図7〜図10において、図1,図2と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
図7,図8は、上段に取り付けた調理トレイ91上の網棚93,94に載置された被加熱物の温度を検出する場合における赤外線センサユニット300の赤外線センサ303(図6参照)による温度検出範囲を示す。図7に示すように、加熱室2の天面部2eに加熱室2内に突出する凸部320に設けている。この凸部320は、図4に示す凹部310を形成することで形成されている。そして、凸部320に設けられた窓(図示せず)を介して、赤外線センサ303によって加熱室2内の被加熱物の温度が検出される。
ここで、図7に示す温度検出範囲は、正面視において調理トレイ91上の左側領域であり、図8に示す温度検出範囲は、正面視において調理トレイ91上の右側領域である。赤外線センサ用モータ304(図6参照)により赤外線センサ303を有する円筒状のセンサ保持部302(図6参照)を回動させて、赤外線センサ303の検出面を左右方向に振る。尚、本第1実施形態においては、赤外線センサ303の温度検出範囲は、図7に示す左側領域と、図8に示す右側領域と、左側領域と右側領域との間の中央領域の3つの領域に分けられているが、4以上の複数の領域に分けてもよい。
また、図9,図10は、上記加熱室2の底面上の被加熱物の温度を検出する場合における赤外線センサユニット300の赤外線センサ303(図6参照)による温度検出範囲を示す。図9に示す温度検出範囲は、正面視において加熱室2の底面上の左側領域であり、図10に示す温度検出範囲は、正面視において加熱室2の底面上の右側領域である。尚、本第1実施形態においては、図7,図8と同様に、赤外線センサ303の温度検出範囲は、図9に示す左側領域と、図10に示す右側領域の一部が重なり合う2つの領域に分けられているが、3以上の複数の領域に分けてもよい。
ところで、上述したように、上記赤外線センサ303が受ける赤外線量は、上記測定領域に在る被加熱物15からの距離の二乗に反比例して減少する。したがって、図7,図8に示すように、上段に取り付けた調理トレイ91上の網棚93,94に載置された被加熱物15の温度を検出する場合の図7に示す左側領域と、図8に示す右側領域と、中央領域とにおいては、赤外線センサ303に対して近距離の領域である上記左側領域では、雰囲気温度の影響を受けずに被加熱物15の温度を検出することが可能である。ところが、遠距離の領域である上記右側領域では、雰囲気温度の影響を大きく受けるために被加熱物15の温度を検出することができないことになる。
図11は、平面視における調理トレイ91上の温度検出領域を示す。図11(a)は上記左側領域331を示し、図11(b)は上記中央領域332を示し、図11(c)は上記右側領域333を示す。また、図11(a)〜図11(c)における上段は温度検出領域を示し、図11(a)〜図11(c)における下段は負荷位置、つまり被加熱物15の位置を示す。ここで、左側領域331,中央領域332および右側領域333は、上記温度検出領域の一例である。
図11に示すように、被加熱物15の位置が温度検出領域と一致する場合には、温度検出領域内における各分割領域での(各画素からの)検出温度の相対比較によって、被加熱物15の有無は検出できる。しかしながら、図11(b)の中央領域332および図11(c)の右側領域333の場合には、上述した理由によって被加熱物15の絶対温度を検出することはできない。
尚、図11(a)の上記左側領域331の場合には、赤外線センサ303に対して近距離の領域であるため被加熱物15の絶対温度は検出可能である。本加熱調理器においては、制御装置80は、赤外線センサ303からの検知信号に基づいて、被加熱物15に対する調理シーケンスを選択して実行するようにしている。具体的に言えば、冷凍食品の調理と冷蔵食品の調理とでは、初期温度が異なるために調理時間および調理温度の条件等が異なり、その違いに応じた調理シーケンスを選択する必要がある。尚、制御装置80は、上記加熱調理制御部の一例である。
そのために、上記上段の調理トレイ91上での調理において、冷凍食品と冷蔵食品との加熱調理を自動で行うには、赤外線センサ303が冷凍食品を必ず検知可能なように、ユーザーに対して赤外線センサ303の直近に、つまり左側領域331に冷凍食品を置くように取扱説明書や音声ガイダンスで指導する必要がある。
ところが、その場合には、ユーザーに対して負担を強いることになる。また、ユーザーが誤って中央領域332または右側領域333に冷凍食品を置いた場合には、冷蔵食品と誤って判断されて冷蔵食品用の調理シーケンスで調理が行われることが考えられ、食材が無駄になってしまう。
そこで、本第1実施形態においては、取扱説明書や音声ガイダンスでの指導の必要性を無くし、且つ加熱室2内の全領域において被加熱物の温度を正確に検出するのである。
図12は、上段の調理トレイ91上における左側領域331,中央領域332および右側領域333の夫々に同じ温度の被加熱物15を置いた場合の赤外線センサ303による検知温度を示す。但し、図12(a)は左側領域331であり、図12(b)は中央領域332であり、図12(c)は右側領域333である。また、図12(a)〜図12(c)における上段Aは、被加熱物15が−9℃の冷凍食品の場合であり、下段Bは、被加熱物15が8℃の冷蔵食品の場合である。
図12においては、図11の上段に示す台形状の温度検出領域を矩形で表し、この矩形の温度検出領域を縦8×横8の64領域に分割している。そして、各分割領域に、赤外線センサ303を構成する縦8×横8の64個の画素(センサ部)での検出温度を記載している。また、各温度検出領域における図外下側に、その温度検出領域での最低温度を記載している。
図12から分かるように、上記左側領域,上記中央領域および上記右側領域の夫々に同じ温度の被加熱物15を置いたにも拘わらず、上記左側領域,上記中央領域および上記右側領域における最低温度が異なり、赤外線センサ303から遠い領域ほど加熱室2内の雰囲気温度の影響を受けて高い温度を示している。
具体的に言えば、上段Aに示す−9℃の冷凍食品の場合には、赤外線センサ303に近い上記左側領域では、最低温度が「−6.5℃」であり、比較的被加熱物15の温度に近い温度を検出している。これに対して、上記中央領域では、最低温度が「2.3℃」であり、加熱室2内の雰囲気温度の影響を受けていることが分かる。また、上記右領域では、最低温度が「9.8℃」であり、さらに加熱室2内の雰囲気温度の影響を受けている。
また、上記下段Bに示す8℃の冷蔵食品の場合には、上記左側領域での最低温度が「10℃」であり、比較的被加熱物15の温度に近い温度を検出している。これに対して、上記中央領域での最低温度が「17.5℃」、上記右領域での最低温度が「22.8℃」であり、共に加熱室2内の雰囲気温度の影響を受けている。
ここで、上述した「加熱室2内の雰囲気温度の影響を受ける」とは、被加熱物15からの赤外線が少ないために、上記雰囲気からの多量の赤外線の中に埋没して検出されないことを意味する。
図12の場合、上記冷凍食品における上記右領域の場合には、最低温度が「9.8℃」である。また、上記冷蔵食品における上記左側領域の場合には、最低温度が「10℃」である。したがって、上記冷凍食品と上記冷蔵食品とでほぼ同様の温度を呈しており、赤外線センサ303による検出温度に対して、一律に同じ閾値(たとえば、図12の場合には0℃)を適用して冷凍食品と冷蔵食品との判定を行った場合には、冷凍食品を冷蔵食品と誤判定してしまう可能性がある。
そこで、本第1実施形態においては、上記左側領域,上記中央領域および上記右側領域の各温度検出領域毎に、上記冷凍食品および上記冷蔵食品の判定用の閾値を設定するのである。
例えば、図12の場合には、図12(a)に示す上記左側領域においては、上段Aの冷凍食品の場合、最低温度は−6.5℃を呈し、その周囲においても4℃未満の分割領域が複数存在している。これに対して、下段Bの冷蔵食品の場合、最低温度は10℃である。そこで、上記閾値としては、0℃〜4℃の温度を設定する。また、図12(b)に示す上記中央領域においては、上段Aの冷凍食品の場合、最低温度は2.3℃を呈し、その周囲においても12℃未満の分割領域が複数存在している。これに対して、下段Bの冷蔵食品の場合、最低温度は17.5℃である。そこで、上記閾値としては、8℃〜12℃の温度を設定する。また、図12(c)に示す上記右側領域においては、上段Aの冷凍食品の場合、最低温度は9.8℃を呈し、その周囲においても18℃未満の分割領域が複数存在している。これに対して、下段Bの冷蔵食品の場合、最低温度は22℃である。そこで、上記閾値としては、14℃〜18℃の温度を設定する。
図13は、上述のようにして設定された各温度検出領域別の上記閾値としての冷凍冷蔵判定基準温度(以下、単に基準温度という)の一例を示す。上記左側領域における基準温度は「2℃」である。したがって、図12に示すように、各分割領域別の最低温度(−6.5℃)が基準温度未満である上段Aの被加熱物15は、「冷凍食品」であると正しく判定可能となる。さらに、各分割領域別の最低温度(10℃)が基準温度以上である下段Bの被加熱物15は、「冷蔵食品」であると正しく判定可能となる。
また、上記中央領域における基準温度は「10℃」である。したがって、図12に示すように、各分割領域別での最低温度(2.3℃)が基準温度未満である上段Aの被加熱物15は、「冷凍食品」であると正しく判定可能となる。さらに、各分割領域別の最低温度(17.5℃)が基準温度以上の下段Bの被加熱物15は、「冷蔵食品」として正しく判定可能となる。
また、上記右側領域における基準温度は「16℃」である。したがって、図12に示すように、各分割領域別の最低温度(9.8℃)が基準温度未満である上段Aの被加熱物15は、「冷凍食品」であると正しく判定可能となる。さらに、各分割領域別の最低温度(22.3℃)が基準温度以上である下段Bの被加熱物15は、「冷蔵食品」であると正しく判定可能となる。
尚、図12では、上記左側領域331,中央領域332および右側領域333の夫々に被加熱物15を置いた場合の検知温度を示しているが、実際の検出時には、上記温度検出領域の全てに被加熱物15が存在するわけでは無い。被加熱物15が存在しない温度検出領域における最低温度は高く、最高温度または平均温度との差が低い。したがって、各温度検出領域毎に、最低温度と最高温度との差、または、最低温度と平均温度との差が、所定温度差よりも低いか否かを判別することによって、被加熱物15の有無を判別することができる。そこで、被加熱物15が存在すると判別された温度検出領域に対して、上述のようにして、被加熱物15の状態の判別、つまり「冷凍食品」か「冷蔵食品」かの判別を行うのである。
上記制御装置80は、図5に示すように、予め設定された各温度検出領域別の上記基準温度を格納する基準温度格納部341を有している。また、制御装置80の上記マイクロコンピュータは、被加熱物状態判定部342として機能することができるようになっている。
そして、上記制御装置80は、被加熱物状態判定部342によって、赤外線センサ303等からの信号に基づいて、各温度検出領域毎に、各分割領域別の検出温度を検知する。そして、各分割領域別の検出温度から各温度検出領域毎に最低温度を求め、求めた最低温度に基づいて被加熱物15が存在する温度検出領域を判定する。そして、被加熱物15が存在すると判定された温度検出領域に関して、上記最低温度を基準温度格納部341に格納された上記基準温度と比較する。そして、比較結果に基づいて、被加熱物15の状態、つまり冷凍食品であるか冷蔵食品であるか等を判定する。
以後、上記制御装置80は、判定された被加熱物15の状態に応じた加熱調理シーケンスを選択して実行する。したがって、本第1実施形態によれば、被加熱物15として冷凍食品と冷蔵食品とをランダムに取り替えて加熱調理する場合において、上記加熱調理を自動で行うことが可能になる。
以上のごとく、本第1実施形態においては、上記加熱室2の天面部2eにおける上記前面から見て左側に、赤外線センサ303を、検出面を加熱室2内に向けると共に、上記検出面に垂直な軸を、上記前面から見て左右方向に垂直平面に沿って回動可能に配置する。そして、上述したように赤外線センサ303を回動させた場合の加熱室2内の温度検出範囲を、図11(a)の左側領域331と、図11(b)の中央領域332と、図11(c)の右側領域333との、一方向に連なる複数の温度検出領域に分ける。
上記赤外線センサ303からの距離が遠い右側領域333にある被加熱物15からの赤外線が、赤外線センサ303によって検知される量は少ないため、雰囲気からの多量の赤外線に埋もれてしまい、被加熱物15の温度を正しく検知することができない。
そこで、上記左側領域331,中央領域332および右側領域333の各温度検出領域毎に、上記冷凍食品であるか上記冷蔵食品であるかの判定用の基準値(上記閾値)を設定する。その場合、赤外線センサ303からの距離が遠い上記温度検出領域での検出温度が本来の被加熱物15の温度よりも高くなるため、赤外線センサ303からの距離に応じて上記基準値の値を高くなるように設定する。
こうして予め設定された各温度検出領域別の上記基準温度は、制御装置80の基準温度格納部341に格納される。そして、制御装置80は、被加熱物状態判定部342によって、赤外線センサ303からの信号に基づいて各温度検出領域毎に最低温度を求め、基準温度格納部341に格納された上記基準温度との比較結果に基づいて、被加熱物15の状態、つまり冷凍食品であるか冷蔵食品であるか等を判定する。以後、制御装置80は、判定された被加熱物15の状態に応じた加熱調理シーケンスを選択して実行する。
したがって、被加熱物15として冷凍食品と冷蔵食品とを色々取り替えて加熱調理する場合において、上記加熱調理を自動で行うことが可能になる。
さらに、上記選択された加熱調理シーケンスによる上記加熱調理の開始後も、被加熱物状態判定部342によって、赤外線センサ303からの信号に基づいて、被加熱物15が存在する温度検出領域での被加熱物15の温度を表す上記最低温度の経時変化を求める。こうして、被加熱物15の温度変化を監視する。そして、制御装置80によって、被加熱物15の温度上昇率における上記選択された加熱調理シーケンスで規定された温度上昇率からのズレ量が所定量を超えた場合には、上記加熱調理シーケンスに対して補正を行うようにすることも可能である。
尚、上記第1実施形態においては、縦8×横8の64個の画素(センサ部)を有する赤外線センサ303を用いているために、加熱室2内の温度検出領域は左側領域331と中央領域332と右側領域333との3領域で十分である。しかしながら、赤外線センサ303の検出エリアの面積を変えて、4個以上や2個の温度検出領域としても構わない。要は、赤外線センサ303の視野角で上記温度検出領域の数を設定すれば良いのである。また、赤外線センサ303の検出エリアの面積を変えずに画素数を増やしても構わない。そうすることによって、より精度の高い温度検出が可能になる。その場合には、被加熱物15の上記状態の一つとして、「被加熱物15が加熱室2内の何れの位置にあるか」や、「下茹で等の予備調理食品であるか」を加えることが可能になる。
上記第1実施形態では、上記加熱室2内の空気等を吸い込む循環ファン19は遠心ファンであり、循環ファン用モータ56によって駆動される。そのため、循環ファン用モータ56による駆動方向によって、加熱室2内における加熱温度のバランスが上記左右何れかに偏る。そこで、上記判別された加熱室2内における被加熱物15の位置に応じて、循環ファン用モータ56の駆動方向を設定することによって、効率よく加熱室2内の被加熱物15を加熱調理することができる。
また、マイクロ波加熱を行う場合に、加熱室2内における調理トレイ91,92の下にマイクロ波吸収体(図示せず)を設け、マイクロ波の指向性を変更可能にする加熱方法がある。その場合には、上記判別された加熱室2内における被加熱物15の位置に応じて、被加熱物15の位置のみを加熱することが可能になる。
こうして、上記加熱室2内における被加熱物15の位置のみを加熱することにより、迅速な加熱調理や電力の削減を図ることができる。
ここで、上記加熱室2内における被加熱物15の位置の検出は、被加熱物15が冷凍食品や冷蔵食品ではなく常温の食品であっても、調理トレイ91,92との間に僅かな温度差があるので、被加熱物15の位置の検出は可能である。
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態においては、上記加熱室2内における被加熱物15の温度の検出は、通常では、加熱出力開始前、つまり循環ファン19の駆動前に行う。しかしながら、加熱出力開始10秒後、あるいは1分〜2分後に行っても差し支えない。そこで、この発明の第2実施形態の加熱調理器では、加熱出力開始10秒後、あるいは1分〜2分後に行う。この第2実施形態では、調理トレイ91,92の温度は上がるが、被加熱物15の温度は殆ど上がらない。そのため、常温の被加熱物15でも容易に検出することが可能になる。
また、加熱出力開始後約30秒後には、調理トレイ91,92の温度は上がる。これに対して、被加熱物15の温度はなかなか上がらない。そこで、加熱出力が開始された後に約30秒以上が経過した後に、左側領域331,中央領域332および右側領域333の何れの温度検出領域においても予め設定された温度以上の温度差が生じない場合には、制御装置80は、加熱室2内には被加熱物15が存在しないと判断して、カラー液晶表示部10に警告文を表示したり、警告音を発生したりすることが可能になる。
〔第3実施形態〕
上記第1実施形態においては、上記赤外線センサ303を、加熱室2の天面部2eにおける上記前面から見て左側に配置しているが、上記左側に限定されるものではない。そこで、この発明の第3実施形態の加熱調理器では、加熱室2の天面部2eにおける上記前面から見て、右側や手前側や奧側に配置している。何れの場合にも、加熱室2内における赤外線センサ303の回動方向に複数の温度検出領域を設け、各温度検出領域毎に、被加熱物15の状態判定用の基準値を、赤外線センサ303に近い側から遠い側に向かって高くなるように設定する。
〔第4実施形態〕
上記第1実施形態においては、赤外線センサ303からの信号に基づいて各温度検出領域毎に求めた最低温度によって、被加熱物15の状態を判定するようにしている。しかしながら、この発明は「最低温度」に限定されるものではなく、被加熱物15の温度を表す温度であれば如何様な温度であっても差し支えない。そこで、この発明の第4実施形態の加熱調理器では、例えば、温度検出領域内における各分割領域(各画素)の検出温度のうち低い方から所定数の温度の平均値によって、判定する。
〔第5実施形態〕
上記第1実施形態においては、上段の調理トレイ91上に載置した被加熱物15が冷凍食品であるか冷蔵食品であるか等を判定していたが、この発明の第5実施形態の加熱調理器は、下段の調理トレイ92上に載置した被加熱物15が冷凍食品であるか冷蔵食品であるか等を判定する。すなわち、被加熱物15が上段の調理トレイ91上に載置されても、下段の調理トレイ92上に載置されても、被加熱物15が冷凍食品であるか冷蔵食品であるか等の判定は、赤外線センサ303からの信号に基づいて行える。
〔第6実施形態〕
上記第1実施形態においては、左側領域331,中央領域332および右側領域333のそれぞれに、被加熱物15の状態判定用の基準値を1個ずつ設定していたが、左側領域331,中央領域332および右側領域333のうちの少なくとも1つに、被加熱物15の状態判定用の基準値を複数個設定してもよい。
例えば、図14に示すように、中央領域332に被加熱物15の状態判定用の基準値を2個設定する。
より詳しく説明すると、図14に示すように、図中点線左側(赤外線センサ303に比較的近い側)にある縦8×横5の40個の分割領域では、被加熱物15の状態判定用の基準温度として8℃を使用する。これにより、40個の分割領域の最低温度が8℃未満であれば、その40個の分割領域に冷凍食品があると判定される。一方、40個の分割領域の最低温度が8℃以上であれば、その40個の分割領域に冷蔵食品があると判定される。
また、図中点線右側(赤外線センサ303から比較的遠い側)にある縦8×横3の24個の分割領域では、被加熱物15の状態判定用の基準温度として12℃を使用する。これにより、24個の分割領域の最低温度が12℃未満であれば、その24個の分割領域に冷凍食品があると判定される。一方、24個の分割領域の最低温度が12℃以上であれば、その24個の分割領域に冷蔵食品があると判定される。
また、図14の各矩形内の数値は、図15に示すように、冷蔵食品のブロッコリと冷凍食品の鮭の切り身とが網棚93,94に載置された状態において、赤外線センサ303によって検出された温度を示す。
このように、上記中央領域332に被加熱物15の状態判定用の基準値を2個設定することにより、中央領域332内における冷蔵食品と冷凍食品の存在を確実に検出することができる。
仮に、図中点線右側にある縦8×横3の24個の分割領域において、被加熱物15の状態判定用の基準温度として8℃または10℃を使用していたなら、その24個の分割領域に冷蔵食品が存在すると判定されてしまう。
したがって、上記左側領域331,中央領域332および右側領域333のうちの少なくとも1つに、被加熱物15の状態判定用の基準値を複数個設定することにより、左側領域331,中央領域332および右側領域333の各領域内に状態が異なる被加熱物15があっても、被加熱物15の状態を正確に判別することができる。
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1〜第6実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第6実施形態に記載した内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
以上纏めると、この発明の加熱調理器は、
本体ケーシング1と、
上記本体ケーシング1内に配置された加熱室2と、
上記加熱室2内に配置された被加熱物15を加熱するためのヒータ20,21,22と、
上記加熱室2内の被加熱物15の温度を検出する赤外線センサ303と、
上記赤外線センサ303を回動させる駆動部304と、
上記赤外線センサ303からの信号に基づいて、上記被加熱物15の状態を判定する被加熱物状態判定部342と
を備え、
回動する上記赤外線センサ303による上記加熱室2内の全温度検出範囲は、複数の温度検出領域331,332,333でなり、
上記複数の温度検出領域331,332,333の夫々には、上記被加熱物状態判定部342による上記被加熱物15の状態判定用の基準温度が、上記赤外線センサ303からの距離の増加に応じて高い温度になるように設定されており、
上記被加熱物状態判定部342は、上記赤外線センサ303からの信号に基づく検出温度と、この検出温度に対応する上記温度検出領域331,332,333に設定された上記基準温度とを比較して、上記被加熱物15の状態を判定するようになっている
ことを特徴としている。
上記構成によれば、上記複数の温度検出領域331,332,333の夫々に、上記被加熱物状態判定部342による上記被加熱物15の状態判定用の基準温度が、上記赤外線センサ303からの距離の増加に応じて高い温度になるように設定されている。したがって、上記赤外線センサ303からの距離が最も遠い上記温度検出領域に上記被加熱物15が置かれていても、赤外線センサ303からの信号に基づく検出温度と、当該温度検出領域に設定された上記基準温度とを比較することにより、上記被加熱物15の検出温度が上記加熱室2内の雰囲気温度の影響を受けて実際の温度よりも高まっている場合でも、上記被加熱物15の状態を正しく判定することができる。
また、一実施の形態の加熱調理器は、
上記加熱室2の天面部2eから後面部2dに渡って設けられた循環ダクト18と、
上記加熱室2内の気体を上記循環ダクト18と上記ヒータ20,21,22を介して循環させる循環ファン19と
を備え、
上記ヒータ20,21,22は上記循環ダクト18内に配置され、
上記赤外線センサ303は上記加熱室2の天面部2e側且つ上記循環ダクト18の側方に配置され、
上記駆動部304による上記赤外線センサ303の回動方向は、上記加熱室2の前面側から見て左右方向である。
この実施の形態によれば、上記赤外線センサ303は、上記加熱室2の天面部2e側且つ上記循環ダクト18の側方に配置されている。つまり、上記加熱室2の前面側から見て左右何れか一方向の側部に配置されている。したがって、上記赤外線センサ303を、上記加熱室2の前面側から見て左右方向に、つまり上記加熱室2の平面視において長手方向にスイングさせることができ、幅の狭い上記赤外線センサ303であっても、上記加熱室2内の温度検出範囲を広く設定することが可能になる。
また、一実施の形態の加熱調理器では、
上記被加熱物状態判定部342によって判定される上記被加熱物15の状態には、上記被加熱物15が上記加熱室2内の何れの箇所に位置しているかが含まれている。
この実施の形態によれば、上記被加熱物状態判定部342によって、上記加熱室2内における上記被加熱物15の位置が判定される。したがって、上記判定された上記被加熱物15の位置に応じて、例えば上記ヒータ20,21,22および上記循環ファン19等を制御することによって、上記加熱室2内における上記被加熱物15の位置のみを加熱することが可能になる。こうして、迅速な加熱調理や電力の削減を図ることが可能になる。
また、一実施の形態の加熱調理器では、
上記被加熱物状態判定部342による上記被加熱物15の状態判定は、上記循環ファン19による上記加熱室2内の気体の循環が開始されてから所定時間が経過した後に実行される。
上記循環ファン19の駆動開始10秒〜2分後では、上記被加熱物15が載置されている調理トレイの温度は上がるが、上記被加熱物15の温度は殆ど上がらない。
この実施の形態によれば、上記循環ファン19による上記加熱室2内の気体の循環が開始されてから所定時間が経過した後に、上記被加熱物15の状態判定が実行される。したがって、上記所定時間を、上記調理トレイの温度は上がるが上記被加熱物15の温度は殆ど上がらない時間長に設定すれば、常温の被加熱物15であっても上記加熱室2内における上記被加熱物15の有無を容易に判定することが可能になる。
さらに、上記各温度検出領域331,332,333の何れにおいても、例えば最高温度または平均温度と最低温度との温度差が予め設定された温度以上にならない場合には、上記被加熱物状態判定部342は、上記加熱室2内には上記被加熱物15が存在しないと判断することができる。したがって、上記被加熱物15が存在しないと判断した場合には、警告文を表示したり、警告音を発生したりすることが可能になる。
また、一実施の形態の加熱調理器では、
上記被加熱物状態判定部342による上記被加熱物15の状態判定結果に基づいて、上記被加熱物15の状態に応じた加熱調理シーケンスを選択して実行する加熱調理制御部80を備え、
上記被加熱物状態判定部342は、上記加熱調理制御部80による加熱調理が開始された後も、上記赤外線センサ303からの信号に基づいて、上記温度検出領域における上記被加熱物15の温度を表す検出温度の経時変化を求めるようになっており、
上記加熱調理制御部80は、上記被加熱物15の温度上昇率における上記実行中の加熱調理シーケンスで規定された温度上昇率からのズレ量が所定量を超えた場合には、上記加熱調理シーケンスに対して補正を行うようになっている。
この実施の形態によれば、加熱調理が開始した後における上記被加熱物15の温度上昇率が、実行中の上記加熱調理シーケンスで規定されている温度上昇率から所定量を超えてズレた場合には、上記加熱調理シーケンスに対して補正を行うようになっている。したがって、何らかの理由で上記被加熱物15の温度上昇率が上記規定の温度上昇率からズレた場合でも、目標とする仕上がりに略近い仕上がり状態で加熱調理を行うことができる。その結果、食材の無駄や調理時間の多大なロスを無くすることができる。