以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1から図3は、本実施例の主要部分を示すもので、図1は加熱調理器本体を前面側から見た斜視図、図2は同本体の外枠を除いた状態で後方側から見た斜視図、図3は図1のA−A断面図である。
図において、加熱調理器の本体1は、加熱室28の中に加熱する食品を入れ、マイクロ波やヒータの熱、過熱水蒸気を使用して食品を加熱調理する。
ドア2は、加熱室28の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱や過熱水蒸気を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられており、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
入力手段71は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、マイクロ波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱する時間等と加熱温度の入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成されている。
外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。
水タンク42は、加熱水蒸気を作るのに必要な水を溜めておく容器であり、加熱調理器の本体1の前面下側に設けられ、本体1の前面から着脱可能な構造とすることで給水および排水が容易にできるようになっている。
後板10は、前記したキャビネットの後面を形成するものであり、上部に外部排気ダクト18が取り付けられ、食品から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風(廃熱)39を外部排気ダクト18の外部排気口8から排出する。
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47、制御手段23a(制御基板23に搭載した制御手段23a、図11参照)を実装した制御基板23、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却するファン装置15等が取り付けられている。
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波エネルギーが導波管47、回転アンテナ26の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26の出力軸46aは回転アンテナ駆動手段46に連結されている。
ファン装置15は、底板21に取り付けた冷却モータに取り付けられた冷却ファンとで構成する。このファン装置15によって発生する冷却風39は、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33やインバータ回路(図示無し)、奥側重量センサ25c,左側重量センサ25bなどを冷却する。また、加熱室28の外側と外枠7の間および前記したように熱風ケース11aと後板10の間を流れ、外枠7と後板10を冷却しながら外部排気ダクト18の外部排気口8より排出される。さらに、後述する熱風モータ13を冷却するためのダクト16aと、後述する赤外線ケース48内に収められた赤外線ユニット50を冷却するためのダクト16bが設けられ、赤外線ユニット50を冷却した冷却風39は、加熱室28内の排熱(水蒸気など)を廃棄する排気ダクト28eの反対側から排出された後外部排気ダクト18より外に排出される。
レンジ加熱手段330(図11)はマグネトロン33とインバータ回路(図示せず)よりなり前記制御手段23aによって制御される。
加熱室28の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、該熱風ユニット11内には加熱室28内の空気を効率良く循環させる熱風ファン32が取り付けられ、加熱室後部壁面28bには空気の通り道となる熱風吸気孔31と熱風吹出し孔30が設けられている。
熱風ファン32は、熱風ケース11aの外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
また、熱風ユニット11は、加熱室奥壁面28bの後部側に熱風ケース11aを設け、加熱室奥壁面28bと熱風ケース11aとの間に熱風ファン32とその外周側に位置するように熱風ヒータ14を設け、熱風ケース11aの後側に熱風モータ13を取り付け、そのモータ軸を熱風ケース11aに設けた穴を通して熱風ファン32と連結している。
熱風モータ13は、加熱室28や熱風ヒータ14からの熱によって温度上昇するため、それを防ぐために、熱風モータカバー17によって囲い、略筒状に形成されてダクト16aを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16aの上端開口部を熱風モータカバー17の下面に接続し、下端開口部をファン装置15の吹出し口に接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を熱風モータカバー17内に取り入れるようにしている。
加熱室28の加熱室天面28cの裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
また、加熱室28の加熱室天面28cの奥側には後述する赤外線ユニット50が設けられ、赤外線ユニット50を冷却するために赤外線ケース48にて覆い、略筒状に形成されてダクト16bを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16bの上端開口部を赤外線ケース48の側面に接続し、下端開口部を熱風モータカバー17上面と接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を取り入れるようにしている。
また、加熱室底面28aには、複数個の重量センサ25、例えば前側左右に左側重量センサ25b、右側重量センサ(図示無し)、後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。
テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良い材料で成形されている。
ボイラー43は、熱風ユニット11の熱風ケース11aの外側面に取り付けられ、飽和水蒸気を熱風ユニット11内に臨ませ、熱風ユニット11内に噴出した飽和水蒸気は熱風ヒータ14によって加熱され過熱水蒸気となる。
ポンプ手段87は、水タンク42の水をボイラー43まで汲み上げるもので、ポンプとポンプを駆動するモータで構成される。ボイラー43への給水量の調節はモータのON/OFFの比率で決定する。
加熱手段はレンジ加熱手段330、熱風ヒータ14、熱風モータ13、グリル加熱手段12、ボイラー43などである。
次に、図4〜図7を用いて加熱室28の上方に設けられた非接触で被加熱物の温度を検出する赤外線センサについて詳細を説明する。
51はモータで、モータ51の向きは、回転軸51aと加熱室奥壁面28bと並行となるように取り付けられている。そして、回転軸51aが後述する筒状のユニットケース54を回転(駆動)させることで、ユニットケース54に収めた赤外線センサ52搭載した基板53を回転させて赤外線センサ52のレンズ部52aの向きを加熱室底面28aの奥側(加熱室奥壁面28b側)から加熱室開口部28dの高さ方向に下方から30%程度までの範囲を回転移動して温度を検出できるようにしている。モータ51はステッピングモータを使用し制御基板23に設けられた制御手段の制御によって回転軸51aを正転、逆転、また回転角度を好みに動作可能となっている。
52は赤外線センサで、赤外線検出素子(例えばサーモパイル)を複数個設けたもので、ここでは、回転軸51aの鉛直方向に一列に8素子整列した赤外線センサを使用している。そのため、加熱室底面28aの左右方向は一度に前記複数個所の温度の検出が可能であり、加熱室28の奥側(加熱室奥壁面28b側)から前側(ドア2側)かけては、赤外線センサ52を回転させることで加熱室底面28aの全域の温度を検出するものである。
54は筒状のユニットケースで、最大径部に基板53を配置し赤外線センサ52のレンズ部52aを臨ませる窓部54aを設けている。また、ユニットケース54の材料にはカーボンを含ませることでユニットケース54の特性を導電材とすることで外来ノイズのユニットケース54内への侵入を防止している。
55は金属板から成るシャッタである。シャッタ55は、赤外線センサ52を使用しない時に後述する観測窓44aを閉じるものである(図7参照)。また加熱室28の温度がユニットケース53に伝わるのを防止するために、ユニットケース53の外周に冷却風を流せるようにユニットケース53の外周に沿って隙間を設けた風路55cを形成するようにシャッタ55を配置し、前記風路55cに冷却風39流す出入り口となる開口55aと開口55bを設けている。
56は位置決め凸部で、赤外線センサ52の検知点を基準位置(図4の検知点a)に合わせるように前記制御部がモータ51の回転を制御した時、赤外線センサ52の検知点の基準位置を補正できるように、シャッタ55によって観測窓44aを閉じた時に、位置決め凸部56が赤外線ケース48に設けられたストッパ(図示無し)に当接させた状態で回転軸51aをスリップさせることで、前記制御部の制御する基準位置と赤外線センサ52の検知する基準位置となる検知点aの位置を補正することができる。
44は加熱室28の内方向に吐出した円弧状の観測部で、回転軸51aの回転中心と筒状のユニットケース54の中心とユニットケース54の外周に沿って設けられて円弧状に曲げられたシャッタ55の円弧の中心と円弧状の観測部44の各中心位置は全て同一位置となっている。44aは観測部44に設けた観測窓で、赤外線センサ52の検出する視野範囲となる範囲を開口している。また、マイクロ波加熱時に観測窓44aからのマイクロ波漏洩を防止するために、観測窓44aの周囲外側には立上壁(バーリング)44bを2mm程度設けている。
観測部44を加熱室28の内側に突出させることで、最低限の狭い観測窓開口範囲で広範囲の温度検知が可能となる。
49は凸部であり、加熱室天面28cから赤外線ケース48と赤外線ユニット50を離すもので、加熱室天面28cとの接触を凸部49のみとすることで加熱時にグリル加熱手段12や熱風ユニット11などのヒータによって加熱された加熱室天面28cの温度が赤外線ユニット50に伝わりにくいようにしている。
制御基板23に搭載された制御手段23aの赤外線センサ52の測定要領について説明する。
赤外線センサ52は、一度の測定で8点を測定するセンサをモータ51で基準位置(図4、検知点a)から終点位置(図4、検知点i)まで赤外線センサ52を3度ずつ14回、回転移動させて計15列の測定が行われる。そして8点×15列の120か所の温度を記憶する。前記終点位置から前記基準位置までは赤外線センサ52は測定せずに直接前記基準位置に戻る。再び前記基準位置から前記終点位置まで赤外線センサ52を3度ずつ14回移動させて15列で測定する。8個×15列で120か所の温度を測定して、初めに記憶した温度から13℃高くなった位置を食品であると判定して、初期温度Sfと決定する。これで被加熱物60cの初期温度Sfの検知を終了する。
次に、赤外線センサ52の回転移動について説明する。
被加熱物(牛乳)60cの入っている上方が開口した容器60の例としてコップを加熱室底面28aに設けられているテーブルプレート24に載置して加熱を開始した時、マグネトロン33が安定発信する1〜2秒間はシャッタ55にて観測窓44aを閉じて(図7参照)マグネトロン33の発信開始時の不安定発信によるノイズが赤外線センサ52に入り込むのを防止する。
マグネトロン33の発信が安定した後に、制御手段23aはモータ51の回転軸51aを基準位置に回転するように制御する。回転軸51aが基準位置へと回転することでユニットケース54を回転し、赤外線センサ52のレンズ部52aの向きも基準位置の検知点aを検知できる位置に回転(図4,図5参照)する。この時、冷却風39は赤外線センサ52のレンズ部52aを流れてセンサ窓部44aから加熱室28へと流れるので、レンズ部52aへの汚れ付着を防止している。
ユニットケース54を回転することで、被加熱物60cの温度の検出は前述した基準位置(検知点a)からテーブルプレート24の検知点b、検知点cへと進み、さらにユニットケース54が回転するとコップ(容器60)の外側の温度を高さ方向に検知し、検知点dから検知点eの温度を検知する。検知点がコップ(容器60)の開口部の頂点に達した後は、被加熱物60cの表面の温度を検知点fで検知し、次にコップ(容器60)の内側の温度を検知点gで検知し、次にテーブルプレート24の温度を検知点hで検知し、終点のドア2の温度を検知点iで検知する。
検知点a〜検知点iの温度検知範囲の温度の検知は、ユニットケース54を回転する往路の片方で行い、一度終点まで温度検知を行った後、復路は途中で測定せず温度の検知をしないで、再度基準位置に戻ってから再び検知点a〜検知点iと順次行う。
温度の検知数は好みに変えられ、前述した検知点a〜検知点iは、説明上の例で、前記したように15列のデータを測定する。
また、温度の検知は、温度を検知している間はモータ51の回転を止めて検知し、検知した後に回転を行う。正確に温度を検知するため回転を止めて測定する方が良い。
例えば、加熱初めは、ユニットケース54の回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行い、回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行うことをくりかえしてマス目状に温度分布を測定する。そうすることで、等角度で一定位置の温度を測定することにより加熱室28をまんべんなく測定するものである。
また、温度の検知点iの終点がドア2の温度を検知する位置まで設けているのは、被加熱物60cを入れたコップ(容器60)が加熱室28の手前側に載置された場合でも、コップ(容器60)の上部開口部から被加熱物60cの表面温度を検知できる位置まで拡大しているためである。コップ60を加熱室28の奥側に載置した時は、赤外線センサ50の直下になり検知点aもしくは検知点bでコップ内の被加熱物60cの温度を検知可能となる。コップ60を左右の一方側に置いたときは、赤外線センサ50は加熱室28の横方向の略中央に設けられているため、加熱室28の前後方向より測定範囲が狭いので、赤外線センサ50内に設けられている一列に整列した8素子の両側の赤外線センサによって被加熱物の温度の検出が可能である。
さらに、重量センサ25による重量情報と赤外線センサ52による検知した温度分布情報から重量情報が軽く温度分布の温度上昇が広範囲に認められるときは、被加熱物60cが薄くて広いものと判断できる。また、重量情報が重く温度分布の温度上昇が狭い範囲のみに認められるときは、例えば背の高いコップ(容器60)に被加熱物60cが入れられていると判断できる。
本実施例では、加熱室天面28cに赤外線ユニット50を設けたが、赤外線ユニット50の取り付ける位置は、加熱室天面28cの手前側に取り付けた場合でも前述した同様の考えに基づいて設置すれば、被加熱物60cの温度を正確に検知可能である。赤外線センサ52の回転は、温度の測定範囲が広い方に回転させる方が、コップ60に入れられた被加熱物60cの温度を検知するのに向いている。
さらに、本実施例では、コップ60に入れた被加熱物60cの温度検知の方法を詳細説明したが、容器を使用しない被加熱物60cがブロック状の大きな塊の場合でも、ブロック状の被加熱物60cの側面の高さ方向と上面の温度を検知できるため、被加熱物60cの温度分布を詳細に検知することが可能となる。
次に、図8から図12によって赤外線センサ52と重量センサ25の両方を用いて被加熱物60cの温度を制御する方法について説明する。前段の説明においては、被加熱物60cを牛乳、容器60の例でコップで説明したが、以下の説明では、被加熱物60cをはごはん、容器60の例は茶碗で説明する。
始めに、図10と図11を用いて、加熱する被加熱物60cの初期温度と加熱するときの加熱時間との関係について簡単に説明する。入力手段71で選択したメニューで加熱される被加熱物60cが選択され設定される。これは、被加熱物60cの違いによる誘電特性(誘電率、誘電力率)によってマイクロ波によって加熱される度合いが異なるためである。また、加熱の度合いに影響する大きな要因として被加熱物60cの重量と初期温度があげられる。一般的に重量の違いによる加熱の度合いの違いは、重量が小さい程に加熱され難い特性があり、また、被加熱物60cの温度の違いにより誘電特性(誘電率、誘電力率)が異なるためである。
加熱時間は、重量が重い程特定の温度まで加熱するのに要する時間は長くなり、初期温度が低い程特定の温度まで加熱するのに要する時間は長くなる。例えば、被加熱物60cの温度が−3℃以下の場合は、最終設定温度まで加熱する場合、解凍時間(T1)と融解時間(T2)とあたため時間(T3)の時間が必要となる。
たとえば、ごはんを温める場合には、冷凍から温める場合には、加熱時間TRはT1+T2+T3の合計になる。常温保存では、加熱時間TJはT3のみとなる。
図11は加熱時間の制御を説明する制御ブロック図で、入力手段71から制御手段23aに入力してメニューを決定してスタートするキーを入力され赤外線センサ52と、重量センサ25から入力されてレンジ加熱手段330の加熱動作が開始する。赤外線センサ52と、重量センサ25から入力されて、加熱時間が補正されて決定される。
図8と図9は、赤外線センサと重量センサを用い基本加熱時間を決定するためのフローチャート図である。
このフローチャートの流は、ごはんのあたためを設定したときの基本加熱時間の決定について説明する。
加熱室28に被加熱物60cであるごはんを入れた容器60をテーブルプレート24に載せてドア3を閉める。入力手段71でメニューを選択する(S1)。入力手段71でス
タートを入力する(S2)。制御手段23aは選択されたメニューに応じた加熱手段の加熱出力Pを決定する。ここでは、レンジ出力700Wのレンジ加熱手段330で温める(S3)。
重量センサ25でテーブルプレート24に載置した被加熱物60cと容器60の合計の重量Wを検出する(S4)。容器60の重量については、被加熱物60cと同じ程度の重さを想定して加熱時間を決定している。重量センサ25によって重量Wを検出した後に制御手段23aはレンジ加熱を開始する(S5)。
前記した赤外線センサ52の初期温度Sfの測定要領によって被加熱物60cの表面温度の初期温度Sfを検出する(S6)。
次に検出した初期温度に応じて被加熱物60cの温度の状態を冷凍、冷蔵、常温と判別する。ここでは、−2℃以下を冷凍と判別(S9)、−2℃より検出温度が高い場合は常温/冷蔵モード(S8)と判別している(S7)。
常温/冷蔵モードと判別した場合は、常温/冷蔵モードにおける基準となる補正前の加熱時間(TJ)を決定する。補正前の加熱時間(TJ)は、S4工程で測定した重量Wから加熱時間を決定する(S10)。論理式Jは事前に確認された式で、この計算時に用いられる被加熱物60cの誘電特性は、被加熱物60cの初期温度は特定の温度と決めている。
冷凍モードに判別した場合には、冷凍モードで基準となる補正前の加熱時間を決定する。工程S10と同様に、補正前の加熱時間(TJ)は、S4工程で測定した重量Wから加熱時間を決定する(S31)。論理式Rは事前に確認された式で、この計算時に用いられる被加熱物60cの誘電特性は、被加熱物60cの初期温度Sfを特定の温度と決めている。
ここまでは、重量センサ25によって測定された重量Wと被加熱物60cの初期温度Sfの状態に応じて大別される論理式を用いて加熱時間を算出している。
この論理式を冷凍と常温/冷蔵の二本に分けた理由は、被加熱物60c(ごはん)の誘電特性(誘電率、誘電力率)が、冷凍の温度帯と常温/冷蔵の温度帯とで変化が大きく異なるため二本の論理式に分けたもので、冷凍、冷蔵、常温の三本に分けても良い。また、温度を状態(冷凍、冷蔵、常温)に置き換えて説明しているが何℃〜何℃の温度域で表しても良い。また、論理式の分ける数は被加熱物60cとなる物質の特性や演算式の立て方などによって異なるものである。さらに、被加熱物60cに応じた初期温度Sfと重量Wから求めた後述する基本加熱時間のデータベースを作成し、検出した初期温度Sfと重量Wから基本加熱時間を直接導いても良い。その場合、以下説明する制御にて補正する工程は必要が無くなる。
次に論理式より求めた加熱時間に対して、被加熱物60cの誘電特性補正と負荷特性補正の係数を算出して前記加熱時間を補正して基準加熱時間を決定する。誘電特性補正は被加熱物60cの初期温度Sfに応じて補正するものであり、負荷特性補正は被加熱物60cと容器60の合計の重量Wに応じて補正するものである。
被加熱物の温度を常温/冷蔵モードに判別した後、被加熱物60cの温度を常温と冷蔵とで分ける工程(S11)を経て、被加熱物60cの初期温度Sfが10℃以下の場合は誘電特性補正の式Ky1で初期温度Sfを入力して係数Ky11を算出する(S12)。また、初期温度Sfが10℃より高い場合は誘電特性補正の式Ky2で初期温度Sfを入力して係数Ky12を算出する(S13)。
次に、測定した重量Wに応じて負荷特性の補正を行うため、ここでは300g以下の場合、300gより重い場合で分けている(S14)。重量Wが300g以下の場合は負荷特性補正の式Kf1に重量Wを入力して係数Kf11を算出する(S15)。また、重量Wが300gより重い場合は負荷特性補正の式Kf2に重量Wを入力して係数Kf12を算出する(S16)。ここで言う重量Wには、前述したように容器の重量も含まれている。実質のごはんの重量は半分の150gとなる。
そして、常温/冷蔵モードにおいて、初期温度Sfに応じた誘電特性補正の式を使い分ける(S11)と、重量Wに応じた負荷特性補正の式を使い分ける(S14)ことにより補正は4通り行われる。
常温/冷蔵モードの理論式Jによる加熱時間TJに係数Ky11と係数Kf11を掛けて加熱時間を補正する(S17)。常温/冷蔵モードの理論式Jによる加熱時間TJに、係数Ky11と係数Kf12を掛けて加熱時間を補正する(S18)。常温/冷蔵モードの理論式Jによる加熱時間TJに、係数Ky12と係数Kf11を掛けて加熱時間を補正する(S19)。常温/冷蔵モードの理論式Jによる加熱時間TJに、係数Ky12と係数Kf12を掛けて加熱時間を補正する(S20)。
以下同様に冷凍モードについて図9を用いて説明する。
初期温度Sfが−5℃以下の場合、−5℃より高い場合で誘電特性補正の式を使い分ける(S32)。初期温度Sfが−5℃以下の場合は誘電特性補正の式Ky3で初期温度Sfを入力して係数Ky23を算出する(S33)。また、初期温度Sfが−5℃より高い場合は誘電特性補正の式Ky4で初期温度Sfを入力して係数Ky24を算出する(S34)。
そして、重量Wが300g以下の場合、300gより重い場合で負荷特性補正の式を使い分ける(S35)。重量Wが300g以下の場合は負荷特性補正の式Kf3に重量Wを入力して係数Kf23を算出する(S36)。また、重量Wが300gより重い場合は負荷特性補正の式Kf4に重量Wを入力して係数Kf24を算出する(S37)。
そして、初期温度Sfによって誘電特性補正の式を使い分ける(S32)と、重量Wによって負荷特性補正の式を使い分ける(S35)ことにより、冷凍モードに判別した場合の補正は4通りできる。
冷凍モードの理論式Rによる加熱時間TRに、係数Ky23と係数Kf23を掛けて加熱時間を補正する(S38)。冷凍モードの理論式Rによる加熱時間TRに、係数Ky23と係数Kf24を掛けて加熱時間を補正する(S39)。冷凍モードの理論式Rによる加熱時間TRに、係数Ky24と係数Kf23を掛けて加熱時間を補正する(S40)。冷凍モードの理論式Rによる加熱時間TRに、係数Ky24と係数Kf24を掛けて加熱時間を補正する(S41)。
これにより、初期温度Sfで常温/冷蔵と冷凍を判別して算出した加熱時間を常温冷蔵モードと冷凍モードの其々に重量に応じた負荷特性と、初期温度に応じた誘電特性とで加熱時間を補正して基準加熱時間として算出する。
次に、図12を用いて被加熱物60cの重量補正について説明する。
重量センサ25によって検出できるのは、前述したように加熱する被加熱物60cとこの被加熱物60cを入れている容器60の重さを合計した値として、制御手段23aに入力されている。ごはんのあたための設定では、ごはん(被加熱物60c)と容器60(茶碗)の重量を同等の重さとして設定している。以後説明する重量補正により、同等の重さが不均衡の場合に発生する、加熱不足、過加熱を防止するための補正するものである。
前述までは、被加熱物60cの加熱終了温度を85℃までにあたためるのに必要な基準加熱時間の算出方法を説明した。同時に被加熱物60cの温度が途中判定温度、例えば60℃に加熱されるのに必要な基準時間α1を算出し、被加熱物60cを加熱している間は常に被加熱物60cの温度を検出し、被加熱物60cの温度が途中判定温度の60℃に到達した時の加熱開始からの経過時間が前述した基準時間α1に対して早いか、遅いかを判断して基準加熱時間を補正して最終加熱時間を算出するものである。
例えば、経過時間がβ1のように基準時間α1より早い場合、この場合は、容器60の重量に対してごはんの重量が少ないと判断して、経過時間β1から基準加熱時間を補正して最終加熱時間を短くしてごはんの過加熱を防止する。また、経過時間がγ1のように基準時間α1より遅い場合、容器60の重量に対してごはんの重量が多いと判断して、経過時間γ1から基準加熱時間を補正して最終加熱時間を長くしてごはんの加熱不足を防止する。経過時間が基準時間α1と略同じ場合は容器60の重量とごはんの重量が略同じと判断して、基準加熱時間を最終加熱時間として加熱を継続する。また経過時間と基準時間α1との差が、基準時間α1の約10%以内の場合は、誤検知などの要因もあるため補正しないで基準加熱時間で加熱を継続している。この10%とは加熱の結果に悪影響を与えない程度の許容値となっている。前記補正の最終加熱時間は基準加熱時間と基準時間と経過時間の比より容易に補正が可能である。
また、長年使用してマグネトロン33からのマイクロ波出力が弱くなった場合、加熱時の被加熱物60cの温度上昇は遅くなり、前述した途中判定温度に到達する経過時間が遅くなるため、加熱開始からの経過時間から基準加熱時間を補正して最終加熱時間を求める事で、被加熱物60cの加熱温度をある程度一定に維持することができる。
この途中判定温度は、加熱されたごはんから水蒸気が出る前の温度として決めた一例である。
可能なら、赤外線センサ52を用いて常にごはんの温度を検出し、検出温度が設定温度の85℃を検出した時に加熱を終了できれば良いが、ごはんが加熱され水蒸気が発生すると、赤外線センサ52は水蒸気によりごはんの温度を正確に検出できない課題が有る。そのため途中判定温度を定め、加熱されるごはんの温度上昇の検出は途中判定温度に到達まで行い、この到達時に前述した内容で基準加熱時間を補正した最終加熱時間を定めてごはんの加熱する時間を管理している。
赤外線センサ52が故障した場合やレンズ部52aが汚れて、被加熱物60cの温度を検出できなくなった場合は、バックアップ制御として重量センサ52で検出した重量Wに基づく加熱時間を算出して、該加熱時間を最終加熱時間として管理する事も可能である。
そして、途中判定温度を赤外線センサ52で検出した後は、赤外線センサのシャッタ55で観測窓44aを閉める事で、万が一、被加熱物60cの異状温度上昇による突沸などの発生時に起こる、被加熱物60cの飛散物によるレンズ部52aの汚れを防止している。
上記した本実施例によれば、被加熱物60cの温度、重量に影響を受ける事無く、ちょうど良い温度に加熱できる加熱調理器を提供できる。