以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1から図3は、本実施例の主要部分を示すもので、図1は加熱調理器本体を前面側から見た斜視図、図2は同本体の外枠を除いた状態で後方側から見た斜視図、図3は図1のA−A断面図である。
図において、加熱調理器の本体1は、加熱室28の中に加熱する食品を入れ、マイクロ波やヒータの熱、過熱水蒸気を使用して食品を加熱調理する。
ドア2は、加熱室28の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱や過熱水蒸気を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられており、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
入力手段71は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、マイクロ波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱する時間等と加熱温度の入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成されている。
外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。
水タンク42は、加熱水蒸気を作るのに必要な水を溜めておく容器であり、加熱調理器の本体1の前面下側に設けられ、本体1の前面から着脱可能な構造とすることで給水および排水が容易にできるようになっている。
後板10は、前記したキャビネットの後面を形成するものであり、上部に外部排気ダクト18が取り付けられ、食品から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風(廃熱)39を外部排気ダクト18の外部排気口8から排出する。
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47、制御手段23a(図12参照)を実装した制御基板23、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却するファン装置15等が取り付けられている。
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波エネルギーが導波管47、回転アンテナ26の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26の出力軸46aは回転アンテナ駆動手段46に連結されている。
ファン装置15は、底板21に取り付けた冷却モータに取り付けられた冷却ファンとで構成する。このファン装置15によって発生する冷却風39は、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33やインバータ回路(図示無し)、奥側重量センサ25c,左側重量センサ25bなどを冷却する。また、加熱室28の外側と外枠7の間および前記したように熱風ケース11aと後板10の間を流れ、外枠7と後板10を冷却しながら外部排気ダクト18の外部排気口8より排出される。さらに、後述する熱風モータ13を冷却するためのダクト16aと、後述する赤外線ケース48内に収められた赤外線ユニット50を冷却するためのダクト16bが設けられ、赤外線ユニット50を冷却した冷却風39は、加熱室28内の排熱(水蒸気など)を廃棄する排気ダクト28eの反対側から排出された後外部排気ダクト18より外に排出される。
レンジ加熱手段330(図12)はマグネトロン33とインバータ回路(図示せず)よりなり前記制御手段23aによって制御される。
加熱室28の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、該熱風ユニット11内には加熱室28内の空気を効率良く循環させる熱風ファン32が取り付けられ、加熱室後部壁面28bには空気の通り道となる熱風吸気孔31と熱風吹出し孔30が設けられている。
熱風ファン32は、熱風ケース11aの外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
また、熱風ユニット11は、加熱室奥壁面28bの後部側に熱風ケース11aを設け、加熱室奥壁面28bと熱風ケース11aとの間に熱風ファン32とその外周側に位置するように熱風ヒータ14を設け、熱風ケース11aの後側に熱風モータ13を取り付け、そのモータ軸を熱風ケース11aに設けた穴を通して熱風ファン32と連結している。
熱風モータ13は、加熱室28や熱風ヒータ14からの熱によって温度上昇するため、それを防ぐために、熱風モータカバー17によって囲い、略筒状に形成されてダクト16aを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16aの上端開口部を熱風モータカバー17の下面に接続し、下端開口部をファン装置15の吹出し口に接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を熱風モータカバー17内に取り入れるようにしている。
加熱室28の加熱室天面28cの裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
また、加熱室28の加熱室天面28cの奥側には後述する赤外線ユニット50が設けられ、赤外線ユニット50を冷却するために赤外線ケース48にて覆い、略筒状に形成されてダクト16bを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16bの上端開口部を赤外線ケース48の側面に接続し、下端開口部を熱風モータカバー17上面と接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を取り入れるようにしている。
加熱室28の加熱室天面28cの左奥側にはサーミスタによって加熱室28の雰囲気の加熱室温度TH1を検出する加熱室温度センサ80を設けている。
また、加熱室底面28aには、複数個の重量センサ25、例えば前側左右に左側重量センサ25b、右側重量センサ(図示無し)、後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。
テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良い材料で成形されている。
ボイラー43は、熱風ユニット11の熱風ケース11aの外側面に取り付けられ、飽和水蒸気を熱風ユニット11内に臨ませ、熱風ユニット11内に噴出した飽和水蒸気は熱風ヒータ14によって加熱され過熱水蒸気となる。
ポンプ手段87は、水タンク42の水をボイラー43まで汲み上げるもので、ポンプとポンプを駆動するモータで構成される。ボイラー43への給水量の調節はモータのON/OFFの比率で決定する。
加熱手段はレンジ加熱手段330、熱風ヒータ14、熱風モータ13、グリル加熱手段12、ボイラー43などである。
次に、図4〜図8を用いて加熱室28の上方に設けられた非接触で被加熱物の温度を検出する赤外線センサについて詳細を説明する。
図4は図3で示す断面図を使用して茶わんにごはんを入れて加熱する場合の赤外線センサの動作説明図、図5は図3で示す断面図を使用してラップに包んだ冷凍ごはんを加熱する場合の赤外線センサの動作説明図、図6は基準位置を示す赤外線センサ部の説明用の拡大図、図7は、終点位置を示す赤外線センサの説明用の拡大図、図8は、観測窓を閉めた状態を示す赤外線センサの説明用の拡大図である。
51はモータで、モータ51の向きは、回転軸51aと加熱室奥壁面28bと並行となるように取り付けられている。そして、回転軸51aが後述する筒状のユニットケース54を回転(駆動)させることで、ユニットケース54に収めた赤外線センサ52を搭載した基板53を回転させて赤外線センサ52のレンズ部52aの向きを加熱室底面28aの奥側(加熱室奥壁面28b側)から加熱室開口部28dまでの範囲を回転移動して温度を検出できるようにしている。モータ51はステッピングモータを使用し制御基板23に設けられた制御手段23aの制御によって回転軸51aを正転、逆転、また回転角度を好みに動作可能となっている。
52は赤外線センサで、赤外線検出素子(例えばサーモパイル)を複数個設け被加熱物を非接触で温度を検出するもので、ここでは、回転軸51aの鉛直方向に一列に8素子整列した赤外線センサを使用している。そのため、加熱室底面28aの左右方向は一度に前記複数個所の温度の検出が可能であり、加熱室28の奥側(加熱室奥壁面28b側)から前側(ドア2側)かけては、赤外線センサ52を回転させることで加熱室底面28aの全域の温度を検出するものである。具体的には、加熱室底面28aに載置するテーブルプレート24の全面の温度を検知する。
54は筒状のユニットケースで、最大径部に基板53を配置し赤外線センサ52のレンズ部52aを臨ませる窓部54aを設けている。また、ユニットケース54の材料にはカーボンを含ませることでユニットケース54の特性を導電材とすることで外来ノイズのユニットケース54内への侵入を防止している。
55は金属板から成るシャッタである。シャッタ55は、赤外線センサ52を使用しない時に後述する観測窓44aを閉じるものである(図8参照)。また加熱室28の温度がユニットケース54に伝わるのを防止するために、ユニットケース54の外周に冷却風を流せるようにユニットケース54の外周に沿って隙間を設けた風路55cを形成するようにシャッタ55を配置し、前記風路55cに冷却風39流す出入り口となる開口55aと開口55bを設けている。
56は位置決め凸部で、赤外線センサ52の検知点を基準位置(図4の検知点a)に合わせるように前記制御部がモータ51の回転を制御した時、赤外線センサ52の検知点の基準位置を補正できるように、シャッタ55によって観測窓44aを閉じた時に、位置決め凸部56が赤外線ケース48に設けられたストッパ(図示無し)に当接させた状態で回転軸51aをスリップさせることで、前記制御部の制御する基準位置と赤外線センサ52の検知する基準位置となる検知点aの位置を補正することができる。
44は加熱室28の内方向に突出した円弧状の観測部で、回転軸51aの回転中心と筒状のユニットケース54の中心とユニットケース54の外周に沿って設けられて円弧状に曲げられたシャッタ55の円弧の中心と円弧状の観測部44の各中心位置は全て同一位置となっている。44aは観測部44に設けた観測窓で、赤外線センサ52の検出する視野範囲となる範囲を開口している。また、マイクロ波加熱時に観測窓44aからのマイクロ波漏洩を防止するために、観測窓44aの周囲外側には立上壁(バーリング)44bを2mm程度設けている。
観測部44を加熱室28の内側に突出させることで、最低限の狭い観測窓開口範囲で広範囲の温度検知が可能となる。
49は凸部であり、加熱室天面28cから赤外線ケース48と赤外線ユニット50を離すもので、加熱室天面28cとの接触を凸部49のみとすることで加熱時にグリル加熱手段12や熱風ユニット11などのヒータによって加熱された加熱室天面28cの温度が赤外線ユニット50に伝わりにくいようにしている。
制御基板23に搭載された制御手段23aの赤外線センサ52の測定要領について図4、図5により説明する。
図4では、茶わんにごはんを入れて加熱する場合、図5はラップに包んだ冷凍ごはんを加熱する場合の赤外線センサの動作を説明する図である。図4では、検知点fにおいて被加熱物60cの表面を直接検出する事ができる。図5では、被加熱物60cの表面を食用ラップ越しに検出している。
赤外線センサ52は、一度の測定で8点を測定するセンサをモータ51で基準位置(図4、検知点a)から終点位置(図4、検知点h)まで赤外線センサ52を3度ずつ14回、回転移動させて計15列の測定が行われ、左右方向8点×前後方向15列の120か所の温度を検出する。そして前記終点位置から前記基準位置までは赤外線センサ52は測定せずに直接前記基準位置に戻る。
温度検知は、前記基準位置から前記終点位置まで赤外線センサ52を3度ずつ14回移動させて15列で測定し、終点位置から基準位置までは戻ることを繰り返す。
赤外線センサ52によって検知した被加熱物60cの温度と、制御手段23aに記憶している所定温度H(例えば30℃)とを比較して、検知した温度が所定の判定温度Hに到達した到達時間(加熱開始からの経過時間)を初期加熱時間T1として記憶する。制御手段23aの制御は後述する。
次に赤外線センサ52の回転移動について説明する。
図4のように被加熱物(ごはん)60cが入った茶碗を熱室底面28aに設けられているテーブルプレート24に載置して加熱を開始した時、マグネトロン33が安定発信する1〜2秒間はシャッタ55にて観測窓44aを閉じて(図8参照)マグネトロン33の発信開始時の不安定発信によるノイズが赤外線センサ52に入り込むのを防止する。
マグネトロン33の発信が安定した後に、制御手段23aはモータ51の回転軸51aを基準位置に回転するように制御する。回転軸51aが基準位置へと回転することでユニットケース54を回転し、赤外線センサ52のレンズ部52aの向きも基準位置の検知点aを検知できる位置に回転(図4,図6参照)する。この時、冷却風39は赤外線センサ52のレンズ部52aを流れてセンサ窓部44aから加熱室28へと流れるので、レンズ部52aへの汚れ付着を防止している。
ユニットケース54を回転することで、被加熱物60cの温度の検出は前述した基準位置(検知点a)からテーブルプレート24の検知点b、検知点cへと進み、さらにユニットケース54が回転すると茶わん(容器60)の外側の温度を高さ方向に検知し、検知点dから検知点eの温度を検知する。検知点が茶わん(容器60)の開口部の頂点に達した後は、被加熱物60cの表面の温度を検知点fで検知し、次に茶わん(容器60)の内側の温度を検知点gで検知し、次にテーブルプレート24の温度を検知点hで検知する。
検知点a〜検知点hの温度検知範囲の温度の検知は、ユニットケース54を回転する往路の片方で行い、一度終点まで温度検知を行った後、復路は途中で測定せず温度の検知をしないで、再度基準位置に戻ってから再び検知点a〜検知点hと順次行う。
温度の検知数は好みに変えられ、前述した検知点a〜検知点hは、説明上の例で、前記したように15列のデータを測定する。
また、温度の検知は、温度を検知している間はモータ51の回転を止めて検知し、検知した後に回転を行う。正確に温度を検知するため回転を止めて測定する方が良い。
例えば、加熱初めは、ユニットケース54の回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行い、回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行うことをくりかえしてマス目状に温度分布を測定する。そうすることで、等角度で一定位置の温度を測定することによりテーブルプレート24の全面をまんべんなく測定するものである。
赤外線センサ52は、加熱室底面28aに載置されたテーブルプレート24の四辺から加熱室天井28cに垂直に伸ばした仮想線の内側の加熱室天井28cの左右方向の略中央に設けられている。
そして、赤外線センサ52の視野は、検知点aと検知点hはテーブルプレート24の前後のフランジ部の温度を検知する範囲に略定め、赤外線センサ52の整列した複数素子の両側のセンサはテーブルプレート24の左右のフランジ部の温度を検知する範囲に略定められている。こうすることで、テーブルプレート24の略中央に載置された被加熱物の温度を正確に検出する事が可能となる。また赤外線センサ52の回転は、温度の測定範囲が広い方に回転させる方が、茶わん60に入れられた被加熱物60cの温度を検知するのに良い。
このような設定で、茶わん60をテーブルプレート24の奥側に載置した時は、赤外線センサ50の略下側の検知点bでコップ内の被加熱物60cの温度を検知可能となり、茶わん60をテーブルプレート24の左右の一方側に載置したときは、赤外線センサ50は加熱室28の左右横方向の略中央に設けられているため、赤外線センサ50内に設けられている一列に整列した8素子の両側の赤外線センサによって被加熱物の温度の検出が可能となる。
さらに、重量センサ25による重量情報と赤外線センサ52による検知した温度分布情報から重量情報が軽く温度分布の温度上昇が広範囲に認められるときは、被加熱物60cが薄くて広いものと判断できる。
本実施例では、茶わん60に入れた被加熱物60cの温度検知の方法を詳細説明したが、容器を使用しない被加熱物60cがブロック状の大きな塊の場合でも、ブロック状の被加熱物60cの側面の高さ方向と上面の温度を検知できるため、被加熱物60cの温度分布を詳細に検知することが可能となる。
次に、図9から図15を用いて赤外線センサ52と重量センサ25の両方を用いて被加熱物60cの自動調理の制御方法について説明する。加熱対象物の条件としては、冷蔵のごはん60cを茶わんに入れて加熱する場合を条件1、冷凍のごはん60cをラップに包んで(容器を使用せずテーブルプレートに置く)加熱する場合を条件2として、例に説明する。
ここで、条件2の食用ラップに関しては、材質にもよるが厚みが十数μm程度で薄く、赤外線エネルギーを透過しやすいため、食用ラップの有無では大きな誤差は無いものと考える。しかし食用ラップを2重、3重と重ねて覆った場合やラップが重なる折りたたみ面を上面にした場合等は極めて検出しにくい条件となる。
図12に示すように制御手段23aに入力手段71、赤外線センサ52、重量センサ25、加熱室温度センサ80から入力され、制御手段23aによってレンジ加熱手段330は制御される。
初めに図13を用いて赤外線センサを用いてごはんを加熱する加熱動作について概略説明する。重量Wの検出W1後の加熱動作は大別すると初期加熱のレンジ加熱1と追加加熱のレンジ加熱2と延長加熱のレンジ加熱3の3動作に分かれる。
レンジ加熱1の初期加熱の動作は、加熱されている被加熱物60cの温度を赤外線センサ52で検出し、検出する温度が所定の判定温度に到達するまでの経過時間(初期加熱時間T1)を計測し、所定温度に到達するまでの昇温速度を算出し、該昇温速度から加熱状況を判定する工程である。
レンジ加熱2の追加加熱の動作は、前記判断に基づいて仕上がり温度まで被加熱物表面温度が到達するまでの追加加熱の時間を算出するもので、昇温速度から最終加熱温度までの加熱時間を算出して算出した加熱時間T2に基づいて追加加熱する。
レンジ加熱3の延長加熱の動作は、被加熱物表面が仕上がり温度になった後、表面以外の部分があたたまるまで加熱し続ける時間を算出するものであり、被加熱物の保存状態(冷凍であるか、冷蔵または常温であるか)と重量によって必要な時間が異なる。そのため、状態の判別を行うための状態判別温度に到達する時間により保存状態を判定した上で、保存状態と特定温度までの昇温速度から算出した加熱時間T3に基づいて延長加熱する。
以上の工程を図9から図11のフローチャートを用いて詳細に説明する。
ごはんの温めは、前述のように常温/冷蔵のごはん60cを茶わん60に入れて加熱する場合、冷凍のごはん60cをラップに包んで加熱する場合の条件が主に考えられる。延長時間T3に関しては、図14に示す通り、同じ重量、同じ昇温速度であっても、食品状態が冷蔵常温であるか、冷凍であるかによって必要な時間が大きく異なる。冷凍状態の食品をマイクロ波加熱する場合、冷凍部分におけるマイクロ波の吸収効率は低く、溶けかけた部分におけるマイクロ波の吸収効率は高いため、結果的に加熱のムラが大きくなり、その分長く延長加熱をする必要があるためである。そのため、食品状態が冷凍であるか、常温/冷蔵であるかを判定する必要がある。
初めに、図9において、加熱室28に被加熱物60cであるごはんを入れた容器60をテーブルプレート24に載せてドア3を閉める。本実施例ではごはんを例に説明するがごはん以外の食品であっても良いのはもちろんである。
まず、レンジ加熱1(初期加熱)を説明する。入力手段71でごはんメニューが選択される(工程S0)。次に、入力手段71で仕上がり調節から強、やや強、中、やや弱、弱のいずれかが選択される(工程S1)。仕上がり調節の中は標準の温度で仕上がり、強は仕上がり温度が標準より約5℃高く設定し、弱は仕上がり温度が標準より約5℃低く設定することが可能である。次に、スタート入力される(工程S2)。
次に重量センサ25でテーブルプレート24に載置されている被加熱物60cと容器60との合計の重量Wを検出する(工程S3)。
次に、加熱室温度センサ80で加熱室温度TH1を検出し(工程S4)、加熱室の温度TH1が所定の温度より高い場合(工程S5)は、高温モード(工程S6)に移行して被加熱物を加熱する工程である。
高温モード(工程S6)は、オーブン調理後の加熱室28の温度が高い場合、赤外線センサ52が被加熱物60cの温度を正確に検出できなくなるので、その課題を回避するものである。高温モード(工程S6)では、入力手段71でごはんが常温冷蔵か冷凍かを選択し、検出した重量を基に、入力された温度にごはんが加熱できる程度の加熱時間を事前に確認した結果に基づいて総加熱時間Tzを算出して加熱する工程である。
加熱室の温度TH1が所定の温度より低い場合(工程S5)は、被加熱物の初期温度Ts1を検出する(工程S7)。
次に重量センサ25と被加熱物の初期温度Ts1から加熱にかかる目安時間を算出し、表示する(工程S8)。そして、レンジ加熱を開始する(工程S9)。レンジ加熱を開始した後に被加熱物60cの温度Tdetect(赤外線センサ52で検出した温度)の検出(工程S10)に移る。
工程S9〜S16までは、被加熱物60cの温度が初期温度Ts1から状態判別温度Tj1に昇温するまでの経過時間taj1と、状態判別温度Tj1から状態判別温度Tj2に昇温するまでの経過時間taj2を測定する工程である。
図10において、被加熱物60cの温度Tdetect(赤外線センサ52で検出した温度)を検出する(工程S10)。なお、被加熱物60cの温度は赤外線センサ52以外の他の種類のセンサで検出しても良い。次に、経過時間taj1を計測する(工程S11)。被加熱物60cの温度Tdetectが状態判別温度Tj1へ到達してれば(工程S12)、被加熱物60cの温度Tdetectの検出(工程S13)に移る。ここで、被加熱物60cの温度Tdetectが状態判別温度Tj1へ到達した時の時間が、初期温度Ts1から状態判別温度Tj1に昇温するまでの経過時間taj1として格納される。
一方、状態判別温度Tj1への到達していなければ(工程S12)、被加熱物60cの温度Tdetectを検出(工程S10)に戻る。
被加熱物60cの温度Tdetectを検出する(工程S13)。次に、経過時間taj2を計測する(工程S14)。被加熱物60cの温度Tdetectが状態判別温度Tj2へ到達していれば(工程S15)、被加熱物の状態判別(工程S16)に移る。ここで、被加熱物60cの温度Tdetectが状態判別温度Tj2へ到達した時の時間が、状態判別温度Tj1から状態判別温度Tj2に昇温するまでの経過時間taj2として格納される。
一方、状態判別温度Tj2への到達していなければ(工程S15)、被加熱物60cの温度Tdetectを検出(工程S13)に戻る。
次に、被加熱物の状態判別を行う(工程S16)。すなわち、被加熱物60cが冷凍状態(冷凍モード)であるいか被加熱物60cが冷蔵/常温状態(冷蔵/常温モード)であるいかを判別する。図15を用いて、常温/冷蔵状態と冷凍状態を判別する方法を説明する。図15は常温/冷蔵ごはんと、冷凍ごはんの加熱開始から加熱終了までの検出温度を表したグラフである。常温/冷蔵ごはんの加熱初期から加熱終了までは食品状態が加熱初期から終了までほぼ一定であるため、マイクロ波の吸収効率もかわらず、ほぼ直線を描く。しかし、冷凍ごはんは、加熱初期は氷の状態から、加熱後徐々に水の状態に変わっていくため、氷が水に変わる融解潜熱区間である検出温度Tj1までの区間においては、検出温度がほぼ上昇しないまま、経過時間が過ぎていく。一方で、冷凍ごはんの氷が水にかわった区間である、検出温度Tj1以降においては、冷凍ごはんは局部加熱がおこりやすいため、検出温度Tj2までの経過時間であるtaj2が常温/冷蔵のtaj2に比べ短くなる。
そのため、経過時間taj1と経過時間taj2を用いて状態判別の一次式が算出でき、経過時間taj2>a×taj1+bであるか判断する(工程S16)。経過時間taj2>a×taj1+b(工程S16)であれば、ごはんが常温/冷蔵モードと判別し (工程S18)、そうでない場合は冷凍モードと判別する(工程S17)(aは0.15〜0.4程度。bは負)。ごはんが常温/冷蔵モードと判別 (工程S18)された場合は、被加熱物60cの実初期温度(℃)>0と判断したことを意味する。一方、ごはんが冷凍モードと判別(工程S17)された場合は実初期温度(℃)≦0と判断したことを意味する。
この方法で食品の状態を判別することで、食用ラップを2重3重にも重ねた状態で冷凍ごはんを包んだ場合において、初期温度Ts1が0℃以上の常温と検出された場合であっても、Tj1までの経過時間taj1が長くなる一方で、ごはんの加熱が進みラップの隙間から蒸気が出るタイミングでTj1からTj2までの区間を一気に通過するため、経過時間taj2が短くなり、冷凍と判別される。ふた付きの容器に冷凍ごはんを入れた場合も同様である。そのため、食用ラップでの包み方や容器のふたの有無にかかわらず、食品60cの状態を判別できる。
ごはんが常温/冷蔵モードと判別され (工程S18)、また、冷凍モードと判別されると(工程S17)、被加熱物の温度Tdetectの検出(工程S19)に移る。
図11において、被加熱物60cの温度Tdetectを検出する(工程S19)。次に、経過時間taを計測する(工程S20)。被加熱物60cの温度Tdetectが特定温度Ts2への到達していれば(工程S21)、昇温速度Tv1を算出(工程S22)に移る。ここで、被加熱物60cの温度Tdetectが状態判別温度Ts2へ到達した時の時間が、初期温度Ts1から経過した経過時間taとして格納される。
一方、特定温度Ts2へ到達していなければ(工程S21)、被加熱物60cの被加熱物60cの温度Tdetectの検出(工程S19)に戻る。
次に、特定温度Ts2から初期温度Ts1を引いた上昇温度と加熱開始から特定温度Ts2に到達するまでの経過時間taとから、昇温速度Tv1(℃/秒)を算出する(工程S22)。
ここまでの加熱がレンジ加熱1(初期加熱)である。
次にレンジ加熱2(追加加熱)について説明する。
レンジ加熱2(追加加熱)は、特定温度Ts2(例えば75℃)より高く、仕上がり温度に近い特定温度Ts4(例えば仕上がり温度より5度低い温度。例えば85℃。)を設定し、加熱開始からごはんの温度が特定温度Ts4に到達するまでの経過時間taを計測し、特定温度Ts4から初期温度Ts1を除いた上昇温度から昇温速度を求め、仕上がり温度に到達する残りの加熱時間をT2算出して(工程S23)加熱を行う。特定温度Ts4を仕上がり温度近傍にすることで、仕上がり温度の精度を良くしている。
次にレンジ加熱3(延長加熱)について説明する。
レンジ加熱1と並行して判別されたごはん状態とに応じて延長加熱時間T3を算出する(工程S24)。必要なT3時間は図14にあらわすように、食品状態と特定温度Ts4までの昇温速度Tv1(℃/秒)で算出できる。
次に、食品の実重量が多い場合のレンジ加熱3のT3の算出方法について説明する。
図14のように、常温/冷蔵状態(工程S18で常温/冷蔵モードと判断された場合)では、昇温速度Tv1に基づいて必要T3時間を算出する。昇温速度Tv1が1.5℃/秒、0.6℃/秒、0.4℃/秒に対して、それぞれ、必要T3時間を0秒、20秒、40秒として算出する。
一方、冷凍状態(工程S17で冷凍モードと判断された場合)では、昇温速度Tv1((℃/秒))が0.7以上であれば昇温速度Tv1に基づいて、昇温速度Tv1((℃/秒))が0.7未満であれば昇温速度Tv1と共に実重量Wt(g)をも考慮して、必要T3時間を算出する(工程S24)。昇温速度Tv1が0.8℃/秒、0.7℃/秒に対して、それぞれ、必要T3時間を20秒、150秒として算出する。昇温速度Tv1が0.5℃/秒の場合は、実重量Wt400g、600gに対して、それぞれ、必要T3時間を200秒、300秒として算出する。
なお、例えば、昇温速度Tv1が1.5℃/秒と0.6℃/秒の間であれば必要T3時間0秒と20秒の間で補間計算する。
食品の実重量Wt(g)が多くなると、特定温度Ts4までの昇温速度が一定になってくる。しかし、食品状態が常温/冷蔵の場合は、昇温速度が一定になると同時に必要T3時間も一定になる。そのため、昇温速度Tv1が特定の値(図14では0.4)よりも小さい場合は、固定値(図14では40)とすることで、400g(約4人分)以上の常温/冷蔵ごはんについても、適温にあたためられる。
食品状態が冷凍の場合は、昇温速度Tv1が特定の値(図14では0.5)よりも小さい場合は、重量センサで検出した重量Wを用いてT3を算出する事で、適温にあたためる事が出来る。この方法を用いる事で、ある一定量のごはん(図14では300g)までは重たい容器に載っている場合、軽い容器に載っている場合、ラップで包んでいる場合すべてにおいて、適切にあたためることができ、ある一定量以上のごはんにおいても、軽い容器やラップで包んでいる場合に適切にあたためられる。冷凍ごはんは、ラップに包んである状態や、プラスチック保存容器に入れて冷凍してある状態で、マイクロ波加熱される場合がほとんどであるため、一度に大量の冷凍ごはんを加熱でき、作業性がよく、便利である。
上記した本実施例によれば、ごはんの加熱に適した高周波加熱調理器を提供する。