以下、本発明に係る加熱調理器をビルトイン型(組込み型)IHクッキングヒータに適用した場合を例に説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、図面に示す加熱調理器は、本発明の加熱調理器が適用される機器の一例を示すものであり、図面に示された加熱調理器によって本発明の適用機器が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器100の設置例を説明する図である。本実施の形態の加熱調理器100は、上部に調理台を備えたキッチン家具200に組み込まれて使用される。加熱調理器100は、第1筐体1と、第1筐体1の上に設置されたトッププレート3とを有する。トッププレート3は、キッチン家具200の天面を構成するキッチン天板の上に露出している。トッププレート3の後方には、排気口カバー4が設けられている。排気口カバー4は、通気性を有するパンチングメタル又は格子状の金属部材で構成されていて通気性があり、通気抵抗が少ない。加熱調理器100からの排気は、排気口カバー4を通過して加熱調理器100の外へ流出する。加熱調理器100は、調理庫20を有し、調理庫20の調理庫扉26がキッチン家具200の前面に露出している。
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100のトッププレート3が取り外された状態の外観斜視図である。図2では、調理庫20の調理庫扉26が開けられた状態が示されており、調理庫20に収容される調理容器300とその蓋301も併せて図示されている。
加熱調理器100は、第1筐体1と、第1筐体1内に収容されている第2筐体2と、操作表示ユニット5と、第1冷却ファン8と、加熱コイル9と、冷却ダクト10とを備える。第1筐体1は、加熱調理器100を構成する部材を収容する筐体である。第2筐体2は、第1筐体1よりも高さの低い筐体であり、第1筐体1内であって調理庫20の上側に設置されている。第2筐体2の底は、第1筐体1内を上下に仕切る仕切板として機能する。操作表示ユニット5は、使用者の操作入力を受け付けるスイッチ等の入力装置と、使用者に視覚的に情報を報知するランプ又は液晶表示装置等の表示装置とを有する。操作表示ユニット5は、静電容量式のスイッチと表示装置とが一体化されたタッチパネルで構成されうる。
第1筐体1の左側の側面には、筐体吸気口6が形成されている。筐体吸気口6は、第1筐体1内への冷却風の流入口である。第1筐体1の左側の側面の筐体吸気口6は、左へ向かって開口している。第1筐体1の後部上面には、筐体排気口7が形成されている。筐体排気口7は、上へ向かって開口している。筐体排気口7は、第1筐体1内からの排気の流出口である。筐体排気口7の下には、調理庫排気ダクト40と冷却風排気ダクト41とが設けられている。調理庫排気ダクト40からの排気と、冷却風排気ダクト41からの排気とは、筐体排気口7の下流側にて混合されて、筐体排気口7から排出される。
加熱コイル9は、トッププレート3の上に載置される鍋又はフライパンなどの調理容器を加熱する加熱手段である。本実施の形態では、2つの加熱コイル9が左右に並んで配置されている。加熱コイル9の数は2つに限定されず、1つあるいは3つ以上であってもよい。また、トッププレート3の上に載置される調理容器を加熱する加熱手段として、加熱コイル9に代えてあるいはこれに加えて、シーズヒータ又は赤外線ヒータを設けてもよい。
第1冷却ファン8は、加熱調理器100の発熱部品を冷却する冷却風を生成する。本実施の形態において、発熱部品は、加熱コイル9、加熱コイル9を駆動する後述の第1駆動回路11及び第2駆動回路12、並びに加熱調理器100の動作を制御する制御回路等が該当する。本実施の形態では、2つの第1冷却ファン8が前後に並んで配置されているが、第1冷却ファン8の数及び配置は例示のものに限定されない。
冷却ダクト10は、第1冷却ファン8が送出する冷却風を冷却対象である発熱部品に導くための部材である。本実施の形態の冷却ダクト10は、第1筐体1の左側に設けられた第1冷却ファン8の吹出し口から右へ向かって延びる流路を内部に有しており、冷却風を左から右へ導く。
調理庫20は、調理庫20内に収容される調理容器300内の被調理物を加熱又は冷却するための装置である。調理庫20は、引き出し可能な調理庫扉26を有する。調理庫扉26は、スライドレールによって、調理容器300を下方から支持する容器支持部材71と一体的に引き出される。スライドレールは、調理庫20内に設けられ前後に延びる固定レール74と、容器支持部材71及び調理庫扉26と連結され前後に延びる可動レール75とを有する。固定レール74に対して可動レール75が摺動することで、調理庫扉26及び容器支持部材71が前後に移動する。
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器100の下からの斜視図である。筐体吸気口6は、第1筐体1の下部にも設けられている。第1筐体1の下部に設けられた筐体吸気口6は、前に向かって開口している。より詳しくは、第1筐体1の下面の一部には、高低差が設けられており、前方にある高部と後方にある低部とを接続する傾斜面1aに、筐体吸気口6が形成されている。傾斜面1aは、後から前に向かって上昇しているので、筐体吸気口6の開口面もまた前から後に向かって上昇している。このように、傾斜面1aに筐体吸気口6を設けることで、上下方向に平行な面に筐体吸気口6を設ける場合よりも、筐体吸気口6の面積、すなわち空気の流路断面積を大きくすることができる。筐体吸気口6の面積を大きくすることで、筐体吸気口6における圧力損失を低下させ、筐体吸気口6から空気を吸引する送風手段の風量を増加させることができる。
図4は、実施の形態1に係る第2筐体2及びこれに収容される部材を説明する図である。図4では、図2に示した加熱コイル9及び冷却ダクト10が取り外された状態を示している。第2筐体2内には、第1駆動回路11と、第2駆動回路12と、放熱手段13と、制御部16とが設けられている。
第1駆動回路11は、図2に示した2つの加熱コイル9のうちの一方に高周波電流を供給するインバータ回路である。第2駆動回路12は、図2に示した2つの加熱コイル9のうちの他方に高周波電流を供給するインバータ回路である。
放熱手段13は、第1駆動回路11及び第2駆動回路12の放熱を促進する部材である。放熱手段13は、アルミ等の熱伝導性の高い金属で構成された平板部材であるフィンを複数有し、第1駆動回路11及び第2駆動回路12と熱的に接続される。本実施の形態の放熱手段13は、平板面が上下に向くようにして配置された複数の平板部材が、上下に隙間をあけて配置されており、平板部材同士の隙間が、冷却風の流路として機能する。
第2筐体2の底には、第1貫通孔14と、第2貫通孔15とが形成されている。第1貫通孔14は、図2に示した調理庫排気ダクト40が挿入される孔である。第2貫通孔15は、図2に示した冷却風排気ダクト41が挿入される孔である。第1貫通孔14及び第2貫通孔15は、筐体排気口7の下に形成されている。
制御部16は、加熱調理器100を構成する電気部品の動作を制御する。制御部16は、加熱調理器100を構成する部材の動作を制御する制御回路などの電子部品が実装された電子回路基板である。
図5は、実施の形態1に係る第2筐体2の下からの斜視図である。第2筐体2の底には、冷却ファン吸気口17が設けられている。冷却ファン吸気口17は、図4に示した第1冷却ファン8と連通しており、第1冷却ファン8に吸引される空気が通過する開口である。
図6は、実施の形態1に係る第1筐体1内の調理庫20とこれに関連する部材を説明する図である。図6では、図2に示した第2筐体2及び調理庫扉26が取り外された状態を示している。筐体吸気口6は、第1筐体1の前面にも設けられている。第1筐体1の前面に設けられた筐体吸気口6は、前に向かって開口している。
調理庫20は、外郭を構成する外断熱材30を有している。外断熱材30は、調理庫20内からの熱及び冷気の漏れを抑制するための部材である。外断熱材30は、第1筐体1及び第2筐体2を構成する金属又は合成樹脂よりも、熱伝導率の低い材料で構成されている。外断熱材30は、外断熱材30の内側に配置される部材との間に隙間を設けて配置される。外断熱材30の内側に配置される部材と外断熱材30との間の隙間には、空気層あるいはグラスウール等の断熱材が設けられうる。
外断熱材30の上面の一部には、下に凹んだ凹部31が形成されている。凹部31は、図4に示した第1冷却ファン8及び図5に示した冷却ファン吸気口17の下に配置される。図4に示した第2筐体2が第1筐体1内に設置された状態において、図5に示した冷却ファン吸気口17の下に凹部31が位置し、凹部31の上側の空間が、冷却ファン吸気口17へ流入する空気の流路として機能する。
図7は、実施の形態1に係る調理庫20の後ろからの斜視図である。調理庫20の後部には、調理庫排気ダクト40と、冷却風排気ダクト41とが取り付けられている。調理庫排気ダクト40は、調理庫20内で生じた排気を導くダクトである。調理庫排気ダクト40の出口401は、上に向いて開口しており、図2に示したように筐体排気口7に連通するようにして第1筐体1内に設置される。冷却風排気ダクト41は、発熱部品を冷却した後の冷却風を、調理庫20外へと導くダクトである。冷却風排気ダクト41の出口411は、上に向いて開口しており、図2に示したように筐体排気口7に連通するようにして第1筐体1内に設置される。調理庫排気ダクト40と冷却風排気ダクト41とは、連通しておらず、独立したダクトとして構成されている。
冷却風排気ダクト41内には、送風手段である第2冷却ファン42が設けられている。第2冷却ファン42は、冷却風排気ダクト41内に、出口411へ向かう気流を生じさせる。第2冷却ファン42は、例えば軸流ファン又は遠心ファンである。
図8は、実施の形態1に係る調理庫20の下からの斜視図である。冷却風排気ダクト41は、調理庫20の後方下部に接続されている。調理庫20の底には、吸気口28が形成されている。吸気口28は、調理庫20内に流入する冷却風の入口である。吸気口28は、前に向かって開口している。本実施の形態の吸気口28は、調理庫20の前端よりも後ろ寄りに設けられている。また、調理庫20の底の一部には、高低差が設けられており、前方にある高部と後方にある低部とを接続する傾斜面に、吸気口28が設けられている。吸気口28が設けられた傾斜面は、後から前に向かって上昇しており、吸気口28の開口面もまた前から後に向かって上昇している。このように、吸気口28の開口面を前後に傾斜させることで、上下方向に平行な吸気口28を設ける場合よりも、吸気口28の面積、すなわち空気の流路断面積を大きくすることができる。吸気口28の面積を大きくすることで、吸気口28における圧力損失を低下させ、吸気口28を吸引する送風手段の風量を増加させることができる。吸気口28は、図3に示した傾斜面1aに設けられた筐体吸気口6と対向する位置に、配置される。また、吸気口28と冷却風排気ダクト41との間には、調理庫20の最下面の一部を構成する外底板32が設けられている。
図9は、実施の形態1に係る調理庫20の下からの斜視図である。図9は、図8の調理庫20から外底板32が取り外された状態を示している。調理庫20の下部には、放熱部材64が設けられている。放熱部材64は、後述する冷却手段に生じた廃熱の放出を促進する部材である。本実施の形態の放熱部材64は、アルミ等の熱伝導性の高い金属で構成された平板部材であるフィンを有する。本実施の形態の放熱部材64は、平板面が左右に向くようにして配置された複数の平板部材が、左右に隙間あけて配置されており、平板部材同士の隙間が、冷却風の流路として機能する。
調理庫20の後方下部には、冷却風排気ダクト41への冷気の入口となる第1流出口34が設けられている。放熱部材64の後端と第1流出口34との間には、隙間が設けられており、この隙間を合流部36と称する。前述のとおり、放熱部材64を構成する平板部材同士の隙間は、冷却風の流路として機能するが、平板部材同士の間に形成される流路を流れた冷却風が、この合流部36にて合流し、第1流出口34を介して冷却風排気ダクト41に流入する。冷却風の流れの詳細については後述する。
図10は、実施の形態1に係る調理庫20の斜視図である。図10は、図7等で示した外断熱材30が取り外された状態を示している。調理庫20の外郭を構成する外断熱材30の内側においては、左右の側面及び底面が、内断熱材29によって覆われている。内断熱材29は、調理庫20内からの熱及び冷気の漏れを抑制するための部材である。内断熱材29は、内断熱材29の内側に配置される第1側壁22及び第2側壁23等よりも熱伝導率の低い材料で構成されている。内断熱材29は、グラスウールを含んでいてもよい。また、内断熱材29と、内断熱材29の内側に配置される部材との間に、断熱層として空気層が設けられていてもよい。
左右の内断熱材29の内側には、第1側壁22と、第2側壁23とが設けられている。第1側壁22と第2側壁23の上端に跨るようにして、天板25が設けられている。第1側壁22、第2側壁23及び天板25と、後述する図11に示す底板21及び後壁24とで、調理容器300を収容する調理空間が形成される。
天板25の上には、上部加熱手段53が設けられている。上部加熱手段53は、調理庫20内を上から加熱する。上部加熱手段53は、シーズヒータ又は赤外線ヒータ等の電気ヒータである。上部加熱手段53として、加熱コイルと、加熱コイルによって誘導加熱される金属板とを設けてもよい。
図11は、実施の形態1に係る調理庫20の内部構造を説明する図である。図11は、図10から上部加熱手段53及び天板25が取り外された状態を示している。調理庫20の後壁24には、第2流出口35が形成されている。第2流出口35は、調理庫排気ダクト40と連通しており、調理庫20内の排気は第2流出口35を介して調理庫排気ダクト40に流入する。
調理庫排気ダクト40は、後壁24の後面に接続されている。調理庫排気ダクト40は、後壁24の後面から後ろへ向かって上昇するように傾斜しており、後端部において曲がって上に延びている。調理庫排気ダクト40は、側面視において概ねL字状である。調理庫排気ダクト40の出口401は、上に向かって開口している。
冷却風排気ダクト41は、後壁24の後面に接続されている。冷却風排気ダクト41の出口411は、上に向かって開口している。
底板21の上には、容器支持部材71が設けられている。容器支持部材71は、図2等に示した調理容器300を下から支持する部材である。容器支持部材71は、概ね平板状の部材であり、中央には開口73が形成されている。本実施の形態の開口73は、円形であり、調理容器300の底が開口73に嵌まるようになっている。調理容器300の底が開口73に嵌まった状態において、図2に示すように調理庫扉26が引き出されたときに、調理容器300の少なくとも一部が調理庫20から外に出る位置に、開口73が設けられているとよい。このようにすることで、調理庫20内への調理容器300の出し入れの利便性を向上させることができる。
容器支持部材71に設けられた開口73は、開口73から離れるほど上へ向かって傾斜する斜面72となっている。斜面72は、開口73から放射状に広がり、容器支持部材71の平板部分に連なっている。
調理庫20の底板21は、容器支持部材71の下に位置している。容器支持部材71の開口73を介して、底板21が露出している。調理容器300が開口73に嵌め込まれると、調理容器300の底が底板21に接触する。
第1側壁22の内面には、調理庫温度センサ76が設けられている。調理庫温度センサ76は、調理庫20内の空気温度を検出するセンサである。調理庫温度センサ76は、サーミスタ又は赤外線センサなどの温度センサである。
容器支持部材71の斜面72には、調理容器温度センサ77が設けられている。調理容器温度センサ77は、調理容器300に直接または間接的に熱的に接続され、調理容器300の温度を検出する。調理容器温度センサ77は、例えばサーミスタである。本実施の形態では、3つ以上の調理容器温度センサ77が設けられている。
図12は、実施の形態1に係る調理庫20の内部構造を説明する図である。図12は、図11から第2側壁23、容器支持部材71及び底板21が取り外された状態を示している。調理庫20の下部には、加熱コイル50と、加熱コイル50を支持するコイル支持体51と、フェライト52とが設けられている。コイル支持体51は、図11に示した底板21の下側に、加熱コイル50を挟んで底板21と対向するようにして配置される。フェライト52は、加熱コイル50からの漏洩磁束を抑制するための防磁部材である。加熱コイル50は、導線が環状に巻かれて構成されており、中央には導線のない領域がある。コイル支持体51には、加熱コイル50の導線のない領域と概ね同じ位置に、この領域と概ね同じ形状の開口54が形成されており、開口54にペルチェ素子60が配置されている。
ペルチェ素子60は、調理庫20内の調理容器300を冷却する冷却手段である。ペルチェ素子60は、吸熱面が上、すなわち調理容器300側に向くようにして、設置されている。ペルチェ素子60の放熱面は、下を向いており、コイル支持体51の下側に配置されている放熱部材64と熱的に接続されている。
図13は、実施の形態1に係る調理庫20の内部構造を説明する図である。図13は、図12に示す状態からコイル支持体51が取り外された状態を示している。放熱部材64の上には、ペルチェ素子60を中心として、複数のフェライト52が放射状に配置されている。本実施の形態のフェライト52は、放熱部材64の上面に沿って延びる長尺部分521と、長尺部分521の端部から上へ延びる起立部分522とを有し、側面視でL字形状を有している。フェライト52の上下に起立する起立部分522が、ペルチェ素子60の周囲を囲むようにして、複数のフェライト52が配置されている。フェライト52の起立部分522で、ペルチェ素子60の周囲を囲むことで、図12に示した加熱コイル50からの磁束によって、ペルチェ素子60が加熱されることを抑制することができる。なお、ここで例示したL字形状のフェライト52に代えて、円筒状又は角筒状のフェライト又はアルミ板等を、ペルチェ素子60の周囲に設けてもよい。
放熱部材64の前端と吸気口28との間には、隙間33が設けられている。隙間33は、複数の開口で構成されている吸気口28から流入した空気を、調理庫20の左右幅方向に分散させるための空間である。吸気口28から流入した空気を、調理庫20の幅方向に分散させることで、放熱部材64の幅方向にまんべんなく空気を通過させることができ、放熱部材64の放熱効果を高めることができる。
調理庫20の後壁24の下部には、第1流出口34が形成されている。第1流出口34は、冷却風排気ダクト41と連通している。
図14は、実施の形態1に係る加熱調理器100の縦断面模式図である。図14では、調理庫20のペルチェ素子60を通る前後縦断面を、キッチン家具200も併せて図示している。
調理庫20の下部に設けられた、調理庫20の冷却に係る構成を説明する。調理庫20の底板21の下面には、冷却手段であるペルチェ素子60の吸熱面が接触している。ペルチェ素子60と底板21との間には、サーマルグリス又はサーマルシートなどの熱抵抗を軽減する部材を設けるとよい。ペルチェ素子60と底板21との間の熱抵抗を軽減することで、ペルチェ素子60は効率よく底板21を冷却でき、この底板21を介して調理容器300も効率よく冷却される。加熱コイル50を支持するコイル支持体51には、環状の加熱コイル50の中央の導線が設けられていない部分に対応した位置に、開口54が設けられている。開口54の外形は、加熱コイル50の内周端の外形と概ね一致する。上下方向において、ペルチェ素子60と加熱コイル50とは概ね同じ位置にある。ペルチェ素子60の上面と加熱コイル50の上面との高低差は、なるべく少なくするとよい。このようにすることで、高さ寸法に制限のある組み込み式の加熱調理器100において、調理庫20の高さ方向の内寸を確保することができる。
ペルチェ素子60と放熱部材64との間には、伝熱部材63が設けられている。伝熱部材63は、ペルチェ素子60の放熱面と熱的に接触しており、ペルチェ素子60で生じた廃熱を放熱部材64に伝える。伝熱部材63は、サーマルグリス、サーマルシート、又はヒートパイプ等で構成される。伝熱部材63を設けることで、ペルチェ素子60の放熱面からの廃熱の放熱部材64への熱伝達が促進される。
調理庫20の底板21と、底板21の下側にある加熱コイル50又はコイル支持体51との間には、内断熱材29が設けられている。また、ペルチェ素子60と、フェライト52又はコイル支持体51との間にも、内断熱材29が設けられている。内断熱材29は、調理庫20の底板21よりも熱伝導率が低く、磁束を透過する材料で構成されている。このような内断熱材29を設けることで、加熱コイル50から底板21への熱伝達及び加熱コイル50からペルチェ素子60への熱伝達を抑制することができる。加熱コイル50での加熱を行った後は、加熱コイル50が高温化しうるが、内断熱材29を設けることにより、加熱コイル50からペルチェ素子60及び底板21への熱伝達が抑制され、ペルチェ素子60による冷却効率を高めることができる。
放熱部材64の下側に配置された外底板32と、コイル支持体51との間には、空気を冷却風排気ダクト41へと導く底部風路43が形成されている。この底部風路43への空気の入口は吸気口28であり、出口は第1流出口34である。なお、吸気口28と、図3に示した傾斜面1aに設けられた筐体吸気口6とは、重なるようにして設けられるが、図14では図の煩雑化を回避するために、筐体吸気口6の符号の図示を省略している。吸気口28から第1流出口34に至る底部風路43に、放熱部材64が配置されている。底部風路43は、冷却風排気ダクト41に連なっており、底部風路43と冷却風排気ダクト41内の風路からなる一連の風路により、冷却手段であるペルチェ素子60からの廃熱を排出する第1風路が形成されている。この第1風路の入口は吸気口28、出口は冷却風排気ダクト41の出口411である。
冷却風排気ダクト41内には、第2冷却ファン42が設けられている。第2冷却ファン42が動作すると、吸気口28から底部風路43内に空気が流入し、底部風路43に流入した空気は放熱部材64の周囲を第1流出口34に向かって流れる。放熱部材64は、周囲を流れる空気との熱交換によって冷却される。放熱部材64の周囲を通過した空気は、放熱部材64の後端と第1流出口34との間に設けられた合流部36に流れ込む。前述のように、放熱部材64は、複数の平板部材が隙間をあけて配置されて構成されており、この隙間それぞれが空気の流路となる。放熱部材64に形成された複数の流路を流れた空気が、合流部36において合流することで、流路間での空気の流量の偏りが軽減され、空気流れのよどみを軽減することができる。合流部36に流入した空気は、第1流出口34を介して冷却風排気ダクト41内に流入する。
冷却風排気ダクト41は、上昇する風路を内部に有している。冷却風排気ダクト41の出口411は、筐体排気口7の下に位置し、上に向かって開口している。冷却風排気ダクト41内に流入した空気は、出口411及び筐体排気口7を通って、加熱調理器100の外へと流出する。底部風路43と冷却風排気ダクト41内の風路からなる風路であって、ペルチェ素子60からの廃熱を発する放熱部材64が配置された第1風路の入口である吸気口28と出口である出口411は、異なる方向に向かって開口している。このように、前へ向かって開口した吸気口28から空気が吸い込まれ、上へ向かって開口した出口411及び筐体排気口7から空気が流出するので、流出した空気がたちまち吸気口28に吸い込まれるショートサイクルが発生しにくい。したがって、吸気口28には、比較的低温の室内空気が流入しやすく、ペルチェ素子60の廃熱の排出を促進することができる。なお、第1風路の入口と出口とは、互いに異なる方向に向かって開口していればよく、具体的な方向はここで例示したもの以外であってもよい。
冷却風排気ダクト41の出口411は、加熱コイル9等が収容される第2筐体2の底よりも高い位置にある。図14では図示されていないが、調理庫排気ダクト40の出口401もまた、第2筐体2の底よりも高い位置にある。このようにすることで、図4等に示した第1冷却ファン8から送出され、加熱コイル9、第1駆動回路11及び第2駆動回路12等を冷却して高温化して第2筐体2内を流れる排気が、調理庫排気ダクト40及び冷却風排気ダクト41内に流入することを抑制できる。
調理庫20内を冷却する場合には、ペルチェ素子60に通電されるとともに、第2冷却ファン42が動作する。ペルチェ素子60の吸熱面は、底板21に熱的に接続されており、底板21の上には調理容器300の底が接触している。このため、ペルチェ素子60によって底板21が冷却され、冷却された底板21からの熱伝達によって調理容器300が冷却される。調理容器300が冷却されることで、調理容器300内の被調理物も冷却される。また、第2冷却ファン42が動作することで、吸気口28から底部風路43へ流入した空気が底部風路43を流れ、底部風路43内に配置されている放熱部材64と空気との間で強制対流熱伝達が生じる。放熱部材64には、ペルチェ素子60の放熱面が熱的に接続されているため、放熱部材64を介してペルチェ素子60の放熱面からの放熱が促進される。ペルチェ素子60の放熱が促進されることで、ペルチェ素子60による冷却効率を向上させることができる。
調理庫20内を加熱する場合には、加熱コイル50に高周波電流が供給される。加熱コイル50への高周波電流の供給は、図4に示した第1駆動回路11又は第2駆動回路12によって行われうる。第1駆動回路11及び第2駆動回路12のそれぞれは、トッププレート3上の被加熱物を加熱する加熱コイル9に高周波電流を供給するものであるが、第1駆動回路11と第2駆動回路12のいずれかは、加熱コイル50にも高周波電流を供給する。例えば、第1駆動回路11が、加熱コイル9と加熱コイル50の双方に高周波電流を供給する。加熱コイル9と加熱コイル50の両方で加熱を行う場合には、第1駆動回路11は、加熱コイル9と加熱コイル50に時分割で高周波電流を供給する。このようにすることで、駆動回路の数を加熱コイルの数よりも少なくすることができる。駆動回路の数を少なくすることで、第1筐体1内の部品の実装スペースを小さくすることができ、また駆動回路及びこれを冷却する放熱部材に係るコストを低減できる。
次に、調理庫扉26に関連する構造を説明する。調理庫扉26は、例えば前後一対の二重ガラス構造であり、二重ガラスの間には、扉内断熱材37が配置されている。扉内断熱材37は、空気層であってもよいし、グラスウールであってもよい。調理庫扉26の後面には、パッキン38が設けられている。パッキン38は、調理庫20の前面開口の縁と接触し、調理庫扉26が閉じられたときに調理庫20内の気密性を確保する。
次に、調理庫20の上部の構造を説明する。調理庫20の天板25の上側には、内断熱材29が設けられている。内断熱材29の上側には、外断熱材30が設けられている。このように、調理庫20の上部は、外断熱材30、内断熱材29、及び天板25の三重壁構造である。天板25に対して内断熱材29と外断熱材30とを重ねて設けることで、調理庫20の上に配置される第2筐体2内の部材への伝熱を抑制している。本実施の形態では、天板25の上に、上部加熱手段53が配置されていて、上部加熱手段53の熱は、調理庫20内のみならず上方へも漏洩しうるが、内断熱材29を設けることで上部加熱手段53から上方への熱漏洩を抑制している。内断熱材29のみで必要な断熱性能を得られる場合には、外断熱材30を設けなくともよい。
図15は、実施の形態1に係る調理庫排気ダクト40の部分断面図である。図16は、実施の形態1に係る調理庫排気ダクト40の部分断面図であり、シャッター44が開いた状態を示す図である。図15及び図16では、調理庫排気ダクト40の、後壁24周辺の前後方向の縦断面を示している。図15及び図16に示すように、調理庫排気ダクト40は、後壁24に形成された第2流出口35に接続されている。調理庫排気ダクト40内には、シャッター44が設けられている。シャッター44は、軸441にて前後に回動可能に調理庫排気ダクト40の側壁に取り付けられている。図16に示すシャッター44は、シャッター44の上部に取り付けられた軸441を中心に、後ろへ回動した状態である。シャッター44は、第2流出口35を覆うことのできる形状及び大きさである。
図15に示すシャッター44が閉じられた状態において、シャッター44は第2流出口35を閉じている。なお、シャッター44は、軸441から重力で垂れ下がり、図15に示す状態となる。このとき、調理庫20内と調理庫排気ダクト40内との間では、空気の流れが遮断されている。
調理庫20内が高温となった場合、あるいは調理庫20内での調理に伴って蒸気が発生した場合には、調理庫20内の圧力が上昇する。そうすると、調理庫20内の上昇した圧力によって、シャッター44が第2流出口35側から押され、シャッター44は軸441を中心に後方へ回動し、図16に示す状態となる。シャッター44が開かれた状態において、調理庫20内と調理庫排気ダクト40内との間で、空気が流通可能となり、調理庫20内の蒸気等が調理庫排気ダクト40内に流入する。調理庫排気ダクト40内に流入した蒸気等は、図2に示すように調理庫排気ダクト40の上にある筐体排気口7を介して、排出される。調理庫20内及び第1筐体1内に蒸気が拡散した状態となると、拡散した蒸気が結露して、電気部品の絶縁低下等が生じ、加熱調理器100の動作不良が生じうる。しかし、本実施の形態のように、調理庫20内の蒸気を排出することで、このような不具合を回避しうる。
また、シャッター44が開いて調理庫20から蒸気等が排出された後、あるいは調理庫20内が冷却されて調理庫20内の温度が低下した場合には、調理庫20内の圧力が低下する。そうすると、シャッター44は、調理庫20内の圧力低下に伴って、第2流出口35側に引き寄せられ、第2流出口35を閉じ、図15に示す状態となる。調理庫20内が安定的に冷却されている状態において、シャッター44は第2流出口35を閉じるように構成されている。このようにシャッター44が第2流出口35を閉じることで、調理庫20内の温度変化が抑制され、調理庫20内の加熱時には加熱効率の低下が抑制され、調理庫20内の冷却時には冷却効率の低下が抑制される。
図17は、実施の形態1に係る調理庫20の、縦断面模式図である。図17では、調理庫20のペルチェ素子60を通る左右縦断面を図示している。
調理庫排気ダクト40と冷却風排気ダクト41とを正面視した状態において、調理庫排気ダクト40と冷却風排気ダクト41との間には、隙間45が設けられている。底部風路43と冷却風排気ダクト41内の風路からなる一連の風路を第1風路とし、調理庫排気ダクト40内の風路を第2風路とすると、第1風路の出口411と、第2風路の出口401とは、左右方向に隙間45の距離だけ離間して配置されているといえる。前述のように、調理庫20内を冷却しているときには、放熱部材64を冷却した冷却風が、冷却風排気ダクト41を通って出口411から排出され、出口411から出る気流の周囲は負圧となる。このとき、調理庫排気ダクト40の出口401と冷却風排気ダクト41の出口411との距離が近いと、調理庫排気ダクト40の出口401の周囲も負圧となり、シャッター44が開いて調理庫20内の空気が調理庫排気ダクト40から流出しうる。そうすると、調理庫20内の冷却効率及び加熱効率が低下してしまう。しかし、本実施の形態では、調理庫排気ダクト40と冷却風排気ダクト41との間に、左右方向に隙間45を設けることで、出口401と出口411との間に距離をおいている。このため、上述した不具合が生じにくい。なお、隙間45の具体的な長さは特に限定されず、第2冷却ファン42を動作させたときに、シャッター44が閉じた状態を維持できるような寸法の隙間45とすればよい。また、調理庫20の左右方向に隙間45を設けることに加えて、あるいはこれに代えて、調理庫20の前後方向において出口401と出口411との間に隙間を設けてもよい。このように調理庫20の前後方向において、出口401と出口411との間に隙間を設けても、上述の負圧による影響を低減しうる。なお、第1風路の出口411と第2風路の出口401とを、上下方向に異なる位置に配置することでも、上述の負圧による影響を低減しうる。そのような構成の場合、図2等に示した筐体排気口7から出口411と出口401の一方が突出しないようにするとよい。また、筐体排気口7から出口411と出口401までの距離をなるべく短くして、第1筐体1内又は第2筐体2内への排気の滞留を抑制するとよい。
次に、調理庫20の側部の構造を説明する。調理庫20の第1側壁22及び第2側壁23の外側には、内断熱材29が設けられている。内断熱材29の外側には、外断熱材30が設けられている。このように、調理庫20の側部は、外断熱材30、内断熱材29、及び第1側壁22又は第2側壁23の三重壁構造である。第1側壁22又は第2側壁23と内断熱材29と外断熱材30とを重ねて設けることで、調理庫20の横に配置される第1筐体1内の部材への伝熱を抑制している。
図18は、図17の調理容器温度センサ77を中心とした部分拡大図である。図11に示した容器支持部材71に形成された開口73の縁が、斜面72である。斜面72には、調理容器温度センサ77が設けられている。調理容器温度センサ77は、斜面72の表面から突出している。調理容器300が開口73に挿入されると、突出した調理容器温度センサ77が、調理容器300の表面に接触する。調理容器温度センサ77は、接触している調理容器300の温度を検出することができる。図11に示したように、本実施の形態では、複数の調理容器温度センサ77が設けられているが、すべての調理容器温度センサ77が、斜面72から突出して設けられている。調理容器300の底部は、調理容器温度センサ77によって支持されている。
図19は、実施の形態1に係る調理庫20の、加熱手段と冷却手段の平面的な位置関係を説明する図である。図19では、上部加熱手段53、加熱コイル50及びペルチェ素子60を上面透視した状態を示している。ペルチェ素子60は、上部加熱手段53の外周よりも内側に配置されている。また、ペルチェ素子60は、加熱コイル50の外周よりも内側に配置されている。また、上部加熱手段53の中心は、ペルチェ素子60の外周よりも内側に配置されている。より具体的には、角丸矩形の外形を有する上部加熱手段53の中心は、ペルチェ素子60と重なる。また、加熱コイル50の中心は、ペルチェ素子60の外周よりも内側に配置されている。より具体的には、環状の外形を有する加熱コイル50の中心は、ペルチェ素子60と重なる。このように、調理庫20の加熱手段である上部加熱手段53と加熱コイル50の中心を、冷却手段であるペルチェ素子60の中心と近づけている。このような構成とすることで、加熱時の調理容器300の温度分布と、冷却時の調理容器300の温度分布との差を、抑制することができる。加熱時の調理容器300の温度分布と冷却時の調理容器300の温度分布との差を抑制することで、加熱時と冷却時とで、同じ温度センサを用いて調理容器300の温度を精度よく検出することができる。本実施の形態では、容器支持部材71の開口73の縁である斜面72に設けた調理容器温度センサ77を用いて、加熱時と冷却時の双方で、調理容器300の温度を検出することができる。
また、図11等で示した容器支持部材71の開口73は、上面透視した状態において、加熱コイル50及び上部加熱手段53の外周よりも内側、かつペルチェ素子60の外周よりも内側の領域を含む位置に、設けられている。また、開口73の中心は、ペルチェ素子60の外周よりも内側に位置している。このため、開口73に底が嵌め込まれた調理容器300は、加熱コイル50及び上部加熱手段53によって効率よく加熱されるとともに、ペルチェ素子60によって効率よく冷却される。
図20は、実施の形態1に係る操作表示ユニット5を説明する図である。図20では、操作表示ユニット5のうち、調理庫20での調理に関する表示及び操作に関する構成を示している。操作表示ユニット5は、制御部16と電気的に接続されており、制御部16に操作に基づく信号を入力するとともに、制御部16からの信号に基づいて表示を切り替える。制御部16は、タイマー161を有しており、タイマー161の計時結果に基づいて、後述する調理庫20内での加熱及び冷却の制御を行う。
本実施の形態の操作表示ユニット5は、情報を表示する表示部として、メニュー表示部501と、調理後の動作を表示する調理後動作表示部502と、予約調理の内容を表示する予約表示部503と、設定された調理条件を表示する条件表示部504とを備える。操作表示ユニット5は、使用者の操作入力を受け付ける入力部として、開始停止入力部510と、メニュー入力部511と、調理後動作入力部512と、予約入力部513と、自動手動入力部514と、仕上がり入力部515と、時間入力部516とを備える。
開始停止入力部510は、調理庫20内における加熱又は冷却の、開始と停止とが入力される入力部を有している。
メニュー表示部501は、調理庫20内で実行される加熱調理メニューの一覧を表示する。メニュー表示部501では、メニュー入力部511で選択されたメニューが、他のメニューと区別されて表示される。メニュー入力部511は、煮物、炊飯、再加熱などの調理の種類を選択する種類入力部と、調理の種類ごとに詳細な調理メニューを選択する調理メニュー入力部とを有している。図20の例では、種類入力部及び調理メニュー入力部への入力がなされる度に、メニュー表示部501において選択された項目が切り替えられて表示される。煮物の調理メニューの例として、みそ汁、カレー、シチュー、肉じゃが、おでん、ポトフ、ロールキャベツ、麻婆豆腐、麻婆茄子が挙げられる。炊飯の調理メニューとして、白米、急速、玄米、おかゆ、炊込みが挙げられる。再加熱の調理メニューとして、冷蔵再加熱メニュー、冷凍再加熱メニューが挙げられる。冷蔵再加熱とは、調理庫20内で後述する冷蔵モードにて冷却されていた調理容器300を、冷蔵に続けて加熱するメニューである。冷凍再加熱とは、調理庫20内で後述する冷凍モードにて冷却されていた調理容器300を、冷凍に続けて加熱するメニューである。
調理後動作表示部502は、調理庫20内での加熱調理の後に実行可能な動作項目の一覧を表示する。調理後動作表示部502では、調理後の動作を入力する調理後動作入力部512で選択された調理後の動作項目が、他の動作項目と区別されて表示される。調理後動作表示部502に表示される動作項目としては、「停止」、「保温」、「保冷(冷蔵)」、「冷凍」が例示される。「停止」は、加熱調理後に加熱も冷却も行わない動作モードである。「保温」は、加熱調理後に、加熱コイル50と上部加熱手段53のいずれか又は両方にて調理庫20内を保温する動作モードである。「保冷(冷蔵)」は、加熱調理後に、加熱コイル50及び上部加熱手段53の動作を停止させた状態で、ペルチェ素子60及び第2冷却ファン42に通電させて調理庫20内を冷蔵温度帯に保冷する動作モードであり、冷蔵モードとも称する。この冷蔵モードでは、制御部16は、調理容器300の温度が0℃以上10℃未満の温度に維持されるように、ペルチェ素子60及び第2冷却ファン42を動作させる。「冷凍」は、加熱調理後に、加熱コイル50及び上部加熱手段53の動作を停止させた状態で、ペルチェ素子60及び第2冷却ファン42に通電させて調理庫20内を冷凍温度帯に保冷する動作モードであり、冷凍モードとも称する。この冷凍モードでは、制御部16は、調理容器300の温度が-22℃以上0℃未満の温度に維持されるように、ペルチェ素子60及び第2冷却ファン42を動作させる。また、加熱調理の後に冷凍モードが実行されることで、調理済みの食品から冷凍食品を作ることができ、使用者の利便性が高まる。夜間等の加熱調理器100での加熱調理を行わない時間帯に、冷凍食品を作ることで、使用者の時間を有効活用できるとともに、加熱調理器100の稼働率を高めることができる。
なお、冷蔵モード及び冷凍モードの温度帯は、ここで例示した値に限定されないが、いずれの場合であっても10℃未満であるのが好ましい。食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌、ボツリヌスA型及びボツリヌスB型の毒素産生限度温度は、10℃であるので、この10℃よりも低温に調理庫20内を冷却することで、これらの菌による食中毒の発生を抑制することができる。
予約表示部503は、調理庫20内で実行される予約調理モードでの予約調理メニューの一覧を表示する。予約表示部503では、予約調理の設定を入力する予約入力部513で選択された予約調理メニューが、他のメニューと区別されて表示される。予約表示部503に表示される予約調理メニューは、調理庫20内での冷却と加熱とを実行する順番を規定したものである。予約調理メニューの一例としては、冷蔵モード、加熱調理、保温加熱を連続して実行するメニュー、冷蔵モード、冷蔵再加熱、保温加熱を連続して実行するメニュー、が挙げられる。予約入力部513への入力が行われると、予約表示部503において、選択された予約調理メニューが切り替えられて表示される。
条件表示部504は、調理庫20内での加熱及び冷却の条件を表示する。表示する条件の例としては、自動調理と手動調理の区別、加熱又は冷却の温度、仕上がりの強度、予約調理の調理完了時間、が挙げられる。自動調理とは、制御部16が、予め記憶されたシーケンスで、加熱コイル50、上部加熱手段53及びペルチェ素子60のいずれか一以上を制御して、調理庫20内での加熱と冷却の何れか又は両方を行うものである。上述した調理メニューは、自動調理の一例である。手動調理は、使用者が設定した加熱又は冷却条件に従って、制御部16が加熱コイル50、上部加熱手段53及びペルチェ素子60のいずれか一以上を制御して、調理庫20内での加熱又は冷却を行うものである。自動調理と手動調理の切り替えは、自動手動入力部514への入力によって行われる。加熱又は冷却の温度は、仕上がり度合いを入力する仕上がり入力部515によって設定される。仕上がり入力部515は、温度設定を上昇させる入力部と、低下させる入力部とを有し、仕上がり入力部515への入力に基づいて設定された温度が、加熱又は冷却の温度として、条件表示部504に表示される。仕上がりの強度は、加熱及び冷却の度合いを、温度又は時間ではなく、強、中、弱のように強度で表示するものである。本実施の形態では、仕上がり入力部515への入力が行われると、条件表示部504において、強、中、弱のうち選択された項目が切り替えられて表示される。調理完了時間は、予約調理において調理を完了させる時間である。調理完了時間は、時間入力部516によって設定される。時間入力部516への入力が行われると、条件表示部504に、時間入力部516に入力された時刻が表示される。
制御部16は、操作表示ユニット5にて設定された内容に基づいて、加熱コイル50、上部加熱手段53、ペルチェ素子60及び第2冷却ファン42の動作を制御する。調理庫20内での加熱調理及び冷却においては、制御部16は、調理庫温度センサ76が検出する調理庫20内の温度及び調理容器温度センサ77が検出する調理容器300の温度を利用する。本実施の形態のように複数の調理容器温度センサ77を設けた場合、複数の調理容器温度センサ77の検出温度の平均値又は中央値を、調理容器300の温度として扱ってもよい。
図21は、実施の形態1に係る加熱調理器100の予約調理動作を説明するフローチャートである。予約調理の設定がなされた時点から調理完了時間までの時間の長さの方が、調理完了に要する時間よりも長い場合を例に、予約調理動作を説明する。図21に示す処理は、制御部16によって実行される。
まず、使用者から操作表示ユニット5に対し、予約設定が入力される(S1)。予約設定は、予約調理の調理完了時間と、調理内容とを含む。調理内容は、自動調理と手動調理のいずれかを含む。自動調理の場合には、前述した調理メニューを含み、手動調理の場合には、加熱又は冷却の温度と時間のいずれか又は両方を含む。
ステップS1にて予約設定が入力されると、調理容器300の初期温度T0が測定される(S2)。調理容器300の初期温度T0は、調理容器温度センサ77の検出値に基づいて測定される。次に、保冷が開始される(S3)。保冷が開始されると、ペルチェ素子60及び第2冷却ファン42が駆動される。第1時間が経過するまでは保冷を継続し(S4:NO)、第1時間が経過すると(S4:YES)、調理容器300の温度T1が測定される(S5)。第1時間が経過したか否かは、制御部16に設けられたタイマー161によって測定される。調理容器300の温度T1は、調理容器温度センサ77の検出値に基づいて測定される。続けて、熱容量判定が行われる(S6)。
ここで、熱容量判定は、調理容器300及び調理容器300内の被調理物の熱容量を判定する処理である。熱容量判定は、ステップS2で測定された調理容器300の初期温度T0とステップS5で測定された温度T1との温度差Tdと、調理庫温度センサ76で検出された調理庫20内の空気温度Taと、を用いて行われる。制御部16は、温度差Tdと、空気温度Taと、熱容量とを対応づけたテーブルを記憶している。制御部16は、このテーブルを参照して、測定された温度差Td及び測定された空気温度Taから調理容器300及び被調理物の熱容量を判定する。
続けて、加熱開始タイミングが決定される(S7)。加熱開始タイミングは、ステップS6にて判定された熱容量と、ステップS1にて設定された予約設定の加熱又は冷却条件に基づいて決定される。調理容器300及び調理容器300内の被調理物の熱容量の大きさによって、調理容器300の温度を目標温度に到達させるのに要する時間が異なる。このため、ステップS6にて判定された熱容量に応じて、加熱開始タイミングを決定している。
続けて、ステップS7で決定された加熱開始タイミングになっていない場合には(S8:NO)、調理庫20内の冷却が行われる(S9)。ステップS9の調理庫20内の冷却においては、調理容器300の温度が、冷蔵温度帯又は冷凍温度帯になるように、ペルチェ素子60及び第2冷却ファン42が駆動される。加熱開始タイミングになると(S8:YES)、加熱が開始される(S10)。加熱開始タイミングは、制御部16に設けられたタイマーの計時結果に基づいて判定される。ステップS10においては、ステップS1での予約設定入力と、その予約設定入力に対応づけられた制御プログラムに基づいて、加熱コイル50と上部加熱手段53のいずれか又は両方が駆動制御される。
このように、予約調理の際に、加熱開始前に調理庫20内を第1時間保冷し、保冷したときの調理容器300の温度変化に基づいて、調理容器300及び被調理物の熱容量を判定するようにした。そして、判定した熱容量に基づいて、予約調理の加熱開始タイミングを決定することで、被調理物の内容量が異なることにより調理容器300及び被調理物の熱容量が異なる場合でも、被調理物の内容量に応じた予約調理を行うことができる。
また、ステップS10にて加熱開始する前に、ステップS9にて調理容器300を冷蔵温度帯又は冷凍温度帯の何れかに冷却することで、加熱開始タイミングに至る前の期間における被調理物の劣化又は雑菌の繁殖を抑制することができる。なお、加熱開始タイミングに至るまで調理庫20内を冷却することに代えて、予約設定された加熱調理を実行した後に調理容器300を例えば60℃以上に保温することでも、被調理物の雑菌の繁殖を抑制できる。しかし、長時間高温で保存すると、葉野菜及び根菜等が柔らかくなりすぎたり、肉及び魚等がぱさついたり、といった食味の低下が生じうる。本実施の形態のように、調理庫20内を保冷した後に、加熱調理を開始することで、上述した食味の低下を抑制しつつ雑菌の繁殖を抑制することができる。
調理庫20内での調理において、制御部16は、上部加熱手段53での加熱を実行すると同時に、ペルチェ素子60による冷却を実行してもよい。このような調理制御は、例えば、刺身の上面を炙り焦げ目をつける炙りサーモン等の調理、又はプリンの上面のカラメルに焦げ目を付けるクレームブリュレ等の調理に適している。このように、上部加熱手段53とペルチェ素子60とを同時に動作させることで、被調理物の上面を加熱しながら被調理物全体の温度上昇を抑えて、多様な調理メニューを調理庫20内で実現することができる。なお、被調理物の上面に焦げ目を付ける調理の場合には、調理庫20内の調理容器300から蓋301を取り外すことを促す表示を操作表示ユニット5にて行うことで、使用者に円滑な調理作業を促すことができる。
また、本実施の形態の加熱調理器100は、トッププレート3に載置された被調理物を加熱する第2加熱手段として、加熱コイル9を備える。加熱コイル9を用いた被調理物の加熱は、被調理物の下方からの加熱が中心となるが、被調理物が入れられた鍋又はフライパンなどの調理容器内を攪拌する、調味するといった調理動作を、使用者が行いやすい。このように、加熱調理器100において、調理庫20に加えてトッププレート3での加熱調理を可能とすることで、多様な調理を実現し、使用者の利便性を向上させることができる。
上述した実施の形態1の制御部16の各機能は、処理回路によって実現される。各機能を実現する処理回路は、専用のハードウェアであってもよく、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御部16が有する機能それぞれを個別の処理回路で実現してもよいし、各機能をまとめて1つの処理回路で実現してもよい。
一方、処理回路がプロセッサの場合、制御部16の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリに格納される。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、制御部16は、図21で示した各処理が実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを備える。
これらのプログラムは、上述した制御部16の制御手順をコンピュータに実行させるものである。ここで、メモリとは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリが該当する。
なお、上述した各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
このように、制御部16の各機能を実現する処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。
なお、実施の形態1では、調理庫20内の調理容器300を冷却する冷却手段として、ペルチェ素子60を用いた例を示した。冷却手段は、ペルチェ素子60に限定されず、ヒートポンプを用いることもできる。ヒートポンプを用いる場合、冷却手段の具体的構造としては、冷媒を圧縮する圧縮機と、凝縮器と、減圧器と、蒸発器と、蒸発器で冷却された空気を吹き出す吹出口を有するダクトとを少なくとも備える。この場合、冷却手段の一部であるダクトの吹出口を、実施の形態1で説明したペルチェ素子60と同じ場所に配置する。
また、実施の形態1では、調理庫20内の調理容器300を加熱する加熱手段として、誘導加熱により調理容器300を加熱する加熱コイル50と、輻射によって調理庫20内を加熱する上部加熱手段53を設けた例を示した。しかし、調理庫20内を加熱する加熱手段として、加熱コイル50と上部加熱手段53のいずれか一方のみを設けてもよい。