本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
(概要について)
図1および図2を参照して、本実施の形態に係る建物1の概要について説明する。
本実施の形態に係る建物1は、柱と梁を用いた軸組工法で造られた木造の住宅である。建物1は、たとえば2階建てであり、図1には、建物1の正面側の外観が示されている。なお、建物1の正面とは、外観上において象徴的な面(ファサード)を表わし、典型的には屋外の通路に面する。本実施の形態では、たとえば、玄関扉13が設けられた外壁の表面側を正面側という。
建物1は、平面視において略矩形形状であり、正面側の外壁部10と、外壁部10の両側端部に交差する側方外壁部91,92と、側方外壁部91,92に交差し、外壁部10と平行な背面外壁部とを有している。側方外壁部91は、外壁部10の横幅方向一方側(紙面上左側)に配置され、側方外壁部92は、外壁部10の横幅方向他方側(紙面上右側)に配置されている。図1には、外壁部10の横幅方向が矢印A1として示され、図2には、外壁部10の内外方向(厚み方向)のうちの屋外方向(すなわち正面側)が矢印A2として示されている。なお、屋外方向を前方、屋内方向を後方ともいう。
建物1は、勾配屋根(以下「屋根」と略す)14を備えている。屋根14は、たとえば寄棟屋根であるが、切妻屋根、片流れ屋根などであってもよい。屋根14の軒先は、正面側を向いていることが望ましい。そのため、本実施の形態において、正面側の外壁部10の上端部は、屋根14の軒天井15に交差(直交)している。
軒天井15は、水平方向に延在している。図2に示されるように、軒天井15の軒元側には、軒裏空間16と屋外空間とを連通する軒天通気口15aが設けられている。なお、軒天通気口15aは、軒先側に設けられていてもよい。
建物1は2階建てであるため、正面側の外壁部10は、1階外壁部11と2階外壁部12とを含む。1階外壁部11と2階外壁部12とは段差なく連続的に設けられている。
図2に示されるように、1階外壁部11は、基礎上の土台(図示せず)と、2階の床81を支持する階間梁25aとの間に形成され、2階外壁部12は、この階間梁25aと、屋根14を支持する屋根梁25bとの間に形成される。土台、階間梁25a、および屋根梁25bは、互いに平行である。本実施の形態において、これらは梁部材と称される。屋根梁25bは、2階の天井82付近に配置されている。
1階外壁部11には、窓がなく、玄関扉13だけが設けられている。あるいは、玄関扉13も1階外壁部11に配置されていなくてもよい。1階外壁部11の表面は、平面状(フラット)である。
2階外壁部12は、下側壁体部21と上側壁体部22と水切部材23とを含む。水切部材23の位置を境界として、2階外壁部12は、下側壁体部21と上側壁体部22とに分けられる。水切部材23については後述する。
下側壁体部21にも、窓がなく、下側壁体部21の表面は平面状である。また、下側壁体部21の表面は、1階外壁部11の表面と面一である。1階外壁部11および2階の下側壁体部21の表面は、1階の玄関扉13の部分を除き、外壁面である。外壁面は、後述する外装面部材31の表面に相当する。
上側壁体部22は、下側壁体部21の上方に位置し、屋根14の軒天井15に交差している。上側壁体部22の表面は、下側壁体部21の表面(外壁面)よりも後退した位置に配置されている。
本実施の形態において、上側壁体部22は、複数の窓部41(たとえば3つの窓部41a,41b,41c)が横幅方向に沿って(帯状に)連ねられた連窓40により構成されている。つまり、外壁面よりもインセットされた連窓40が、外壁部10(2階外壁部12)の全幅に亘って設けられている。各窓部41は、正面側から見て矩形形状であり、たとえば横幅方向に長さを有している。
このように、正面側の外壁部10における表面側には、大部分において外装面部材31が配置され、その上端部分にのみ、インセットされた連窓40が設けられている。また、連窓40は、正面方向に突出する軒天井15に交差している。そのため、建物1は、外観において、屋根14が外壁から浮きあがったような印象(浮遊感)を与えることができるとともに、重厚感を生じさせることができる。
また、図2に示されるように、連窓40の奥に位置する2階室内空間80の天井82の下面は、正面方向に突出する軒天井15の下面と略面一である。具体的には、これらの面の高さに差が無いか、あったとしても100mm以下であり、望ましくは50mm以下である。また、天井82の下面と軒天井15の下面とは同じ色調であり、かつ、これらの面を構成する柄(たとえば木目)が同じ規則性を持って連続的に表れている。
したがって、正面側から建物1を見た場合に、軒天井15が連窓40を超えて屋内側まで延びているような、奥行き方向の拡がりを感じることができる。屋根梁25bの中心位置からの屋根14の外方への突出寸法は、400mm以上であり、望ましくは900mm以上である。
また、2階外壁部12に隣接する室内空間80においても、室内空間80の天井82が、連窓40を超えて屋外側(正面側)にまで延びているような、開放的な雰囲気を味わうことができる。
屋根14の浮遊感をより向上させるために、図3および図4に示されるように、側方外壁部91,92の正面側端部には、正面側の窓部41a〜41cと連続するように、側方窓部41d,41eが設けられている。側方窓部41d,41eの高さ寸法は、正面側の窓部41a〜41cと同じである。側方窓部41d,41eもまた、他の外壁面よりも屋内方向に後退したインセット窓であることが望ましい。
これにより、正面側の連窓40が外壁部10のコーナー部を回り込んで略U字状に配置されているように見える。また、屋根14は、両側方にも突出しており、側方窓部41d,41eも、屋根14の側方側の軒天部に交差している。その結果、真正面から見た場合だけでなく、斜めから見た場合においても、屋根14が浮き上がっているような印象を強調することができる。
なお、図3に示すように、背面外壁部93や、側方外壁部91,92には、横幅方向の一部分に通常の窓(たとえば腰高窓)などが設けられていてもよい。あるいは、1階外壁部11にも、連窓以外の通常の窓が設けられていてもよい。
(2階外壁部の構造例について)
次に、図5および図6をさらに参照して、正面側の外壁部10における2階外壁部12の具体的な構造例について説明する。
2階外壁部12は、階間梁(第2梁部材)25aと屋根梁(第1梁部材)25bとの間において上下方向に延びる複数の柱24を含む。本実施の形態では、図2に示されるように、各柱24は、下側壁体部21が固定される下側柱241と、上側壁体部22が固定される上側柱242とに分割されており、これらの柱241,242間に中間梁(第3梁部材)26が配置されている。柱241,242、および、梁25a,25b,26は、四角柱形状である。
下側壁体部21は、柱24(241)よりも屋外側に配置されている。下側壁体部21は、柱24の屋外面(屋外側の面)に沿って配置される断熱材32と、屋外空間に面する外装面部材31と、外装面部材31および断熱材32の間に設けられた通気層33とを含む。
断熱材32は比較的厚みが大きく、その厚み寸法D1は、たとえば90mmである。この場合、柱24の屋外面24aから外装面部材31の表面までの突出寸法、すなわち下側壁体部21の厚み寸法D2は、たとえば120mm以上である。なお、下側壁体部21の厚み寸法には、後述の下地合板36の厚みが含まれなくてもよい。
外装面部材31は、たとえばサイディング材である。外装面部材31の表面は、たとえば、柄を排除し、漆喰調の素材で形成されている。また、外装面部材31の表面の色は、白色系である。
柱24(241)の屋内側には、2階の室内空間80に面する内装面部材35が配置されている。また、横幅方向において隣り合う柱24間にも、断熱材39が設けられていてもよい。
図2を参照して、窓部41の高さ寸法(つまり、窓部41の下端位置から天井82までの高さ寸法)L1は、室内空間80に面する内装面部材35の高さ寸法(つまり、床81から窓部41の下端位置までの高さ寸法)L2の1/2以下である。外観上において、窓部41の高さ寸法L1は、2階外壁部12全体の高さ寸法(たとえば2600mm程度)の1/3以下であることが望ましい。具体的には、窓部41の高さ寸法L1は、500mm以上800mm以下である。
なお、1階外壁部11の断面構造も、下側壁体部21と同じである。また、図7に示すように、側方外壁部92(91)の断面構造も、窓部41e(41d)の部分を除いて、下側壁体部21と同じである。図7には、通気層33内に設けられた胴縁34が示されている。
上側壁体部22は、柱24(242)間に固定された窓部41と、窓部41の側端部に隣接する柱被覆部44とを含む。柱被覆部44は、柱24ごとに設けられる。上側壁体部22は、上述の外装面部材31、断熱材32、および通気層33を含まない。また、柱242の外側面のうち屋内側の面は、室内空間80に露出していてもよい。
上側壁体部22の各窓部41(41a〜41c)は、互いに隣り合う柱24間に嵌め入れられたサッシ(窓枠)42と、サッシ42内に嵌め込まれた透光性を有する板状のガラス窓43とで構成される。窓部41のガラス窓43の屋外面(表面)と柱被覆部44の屋外面(表面)とが、上側壁体部22の表面を構成する。
なお、窓部41は、典型的には、ガラス窓43を開閉できないフィックス窓タイプである。これにより、外観において、上側壁体部22をスッキリと見せることができる。
窓部41は、内外方向において、柱24の屋外面24aの位置を跨ぐように配置されている。また、窓部41の外方端は、下側壁体部21における断熱材32の厚み範囲内に位置している。つまり、窓部41は、少なくとも、下側壁体部21の通気層33よりも屋内側に位置している。より具体的には、窓部41の外方端は、断熱材32の厚み方向中央位置よりも屋内側に位置していることが望ましい。窓部41のうちガラス窓43の表面は、柱24の屋外面より僅かに屋外方向に位置しているのみである。ガラス窓43の表面は、柱24の屋外面よりも屋内側に位置していてもよい。
図5に示すように、各窓部41には、サッシ42の上端部から上方に突出する取付け片42bと、サッシ42の下端部から下方に突出する取付け片42cとがさらに設けられている。取付け片42bは、屋根梁25b下の窓まぐさ(窓用横材)27に直接または間接的に固定される。取付け片42cは、中間梁26に直接または間接的に固定される。
サッシ42は、屋外方向に突出する突出枠42aを有していてもよい。突出枠42aは、サッシ42の外縁部分に設けられる。突出枠42aの外方端の位置も、断熱材32の厚み範囲内に位置していることが望ましい。これにより、下側壁体部21の厚みと、インセット窓とを強調することができる。
図1および図6に示されるように、柱被覆部44は、柱24の屋外面を覆うように配置されている。柱被覆部44と柱24との間には、下地合板45および胴縁46が介在している。下地合板45は、柱24の屋外面に面接触している。各窓部41には、サッシ42の両側部から側方に突出する取付け片42d,42eが設けられており、取付け片42d,42eが、この下地合板45を介して柱24に固定されている。柱被覆部44と下地合板45との間には、胴縁46の厚み分だけ通気空間47が形成されている。
柱被覆部44は、たとえばモールなどの装飾材によって構成される。柱被覆部44の屋外面(表面)の位置もまた、下側壁体部21における断熱材32の厚み範囲内に位置し、より具体的には、断熱材32の厚み方向中央位置よりも屋内側に位置する。
窓部41および柱被覆部44の表面が、下側壁体部21の表面よりも後退した位置に配置されることで、下側壁体部21の壁厚を強調することができる。具体的には、外張りの断熱材32の厚みが通常よりも大きく、建物1の断熱性能の良さを外観において示すことができる。
また、図6に示されるように、ガラス窓43の表面は、柱被覆部44の表面よりも屋内側に位置している。これにより、ガラス窓43が、軸組としての柱24間に嵌め込まれているように見えるため、屋根14下のインセット窓を強調することができる。
また、柱被覆部44および窓部41のサッシ42の色は、下側壁体部21および1階外壁部11の表面の色よりも濃い色(たとえば茶系、黒系、紺系)である。これにより、屋根14の浮遊感がより一層高められる。また、柱被覆部44および窓部41のサッシ42(突出枠42aを含む)の表面を、木質の材料で形成することで、建物1の木軸を表現することができる。
ここで、本実施の形態においては、上側壁体部22の表面が下側壁体部21の通気層33よりも屋内側に配置されるため、下側壁体部21の通気層33は上側壁体部22との境界部において途切れる。そのため、通気層33内の空気を、屋根14の軒裏空間16に到達させることができない。
図15には、公知の建物100における外壁部110の構造とその通気経路とが模式的に示されている。外壁部110には窓が全くないか、外壁部110の横幅方向の一部分にしか窓がないものとする。外壁部110は、建物1の2階外壁部12における下側壁体部21と同様に、外装面部材131、断熱材132、および通気層133を含む。また、柱24の屋内面には内装面部材135が配置され、横幅方向において隣り合う柱24間に断熱材139が設けられている。
建物100では、階間梁(図示せず)と屋根梁25bとの間に、中間梁26は存在しない。また、断熱材132の厚み寸法D3は、本実施の形態の断熱材32の厚み寸法D1より小さく、たとえば30mm(厚み寸法D1の1/3程度)である。
外装面部材131は、軒天井15と交差している。建物100においては、通気層133の上端部が軒裏空間16に向けて開放されているため、通気層133内の空気は、軒天通気口15aから適切に排気される。
これに対し、本実施の形態では、上述のように、下側壁体部21の通気層33は、軒裏空間16に連通されていない。その代わりに、下側壁体部21と上側壁体部22との間に設けられた水切部材23によって、通気層33内の空気が屋外空間に導かれる。
(水切部材の構成および配置例について)
図5および図6を参照して、水切部材23の構成および配置例について説明する。
水切部材23は、下側壁体部21の上端部を覆うように、上側壁体部22の下端縁に沿って配置されている。なお、本実施の形態では、連窓40が平面視においてU字状に配置されているため、水切部材23もまた、平面視においてU字状に配置されている。
水切部材23の詳細な説明に先立ち、まず、水切部材23の周辺の構造について説明する。下側壁体部21の断熱材32の上部には、下地桟木37が設けられている。下地桟木37の全体の厚みは、断熱材32と略同じ厚みである。本実施の形態では、断熱材32と下地桟木37とで、通気層33の屋内側に位置する内側面部材を構成する。
下地桟木37と中間梁26との間には、下地合板36が設けられている。窓部41の下方位置において、下地合板36の上端高さは、中間梁26の上端高さと略同じである。これに対し、柱被覆部44の下方位置においては、下地合板36は、図6に示した柱24に当接する下地合板45と一体的に設けられていてもよい。なお、柱24や中間梁26などの躯体部の屋外面に、下地合板36,45が存在しなくてもよい。
下地桟木37の上端高さ、すなわち内側面部材の上端高さは、中間梁26の上端高さより低い。外装面部材31の上端高さも、中間梁26の上端高さより低いが、下地桟木37よりも若干高い。
水切部材23は、下側壁体部21の上方において屋外方向(正面側)に向かって斜め下方に延びる被覆部51と、被覆部51の屋内側端部から上方に立ち上がる立上り部52と、被覆部51の屋外側端部から下方に垂れ下がる垂下部53とを含む。
水切部材23の被覆部51と外装面部材31の上端面との間には、隙間50が設けられている。この隙間50によって、下側壁体部21の通気層33と屋外空間とが連通される。
立上り部52は、中間梁26に、下地合板36を介してビス等により固定される。立上り部52は、窓部41の取付け片42c上に重ねられた状態で固定されている。
垂下部53は、外装面部材31の表面から少し離れた位置に配置される。図5および図8に示されるように、外装面部材31と垂下部53との間に、所定間隔(たとえば500mmピッチ)で、水抜き具54が設けられている。水抜き具54としては、窓サッシに取り付ける部品として流通している部材を流用可能である。水抜き具54は、外装面部材31の表面に当接するように配置されている。
水抜き具54の周囲には、シーリング材55が設けられている。具体的には、シーリング材55は、湿式のシーリング材であり、水抜き具54と垂下部53との間、および、互いに隣り合う水抜き具54間に設けられる。各水抜き具54は、水抜き孔を有しており、この水抜き孔が、水切部材23の通気口23aとして機能する。
水切部材23の垂下部53と外装面部材31との間の隙間がこのように構成されることで、屋外空間から下側壁体部21の上部への雨水の吹き込み防止と、下側壁体部21の通気性確保との双方を実現することができる。
通気層33よりも屋内側に配置された部材は防水性が求められるため、断熱材32および下地桟木37の屋外面に、防水シート38aが設けられている。また、下地桟木37の上面と下地桟木37の屋外面とに、L字状に折られた防水シート38bが貼り付けられている。防水シート38bは、防水シート38aに重ねられる。これにより、何らかの原因で水切部材23の被覆部51の下に水が浸入してきたとしても、下地桟木37および断熱材32を防水することができる。
上述のように、通気層33は、隙間50(および通気口23a)を介して屋外空間と連通する。そのため、2階外壁部12の上部に、その全幅に亘ってインセットされた連窓40を設けた場合であっても、通気層33内の空気の通気経路を確保することができる。したがって、下側壁体部21の劣化を抑制することができる。このことについて、図9〜図11を用いて具体的に説明する。
図9には、本実施の形態における2階外壁部12の躯体部の構成(軸組構造)が模式的に示されている。図10および図11には、それぞれ、比較例における特定階の外壁部110の躯体部の構成が模式的に示されている。図10および図11の外壁部110の基本構造は、図15に示した公知の建物100の外壁部110と同じであると仮定する。図9には、通気層33の空気の流れが、図10および図11には、通気層133の空気の流れが模式的に示されている。
図10を参照して、窓部141が外壁部110の横幅方向における一部にのみ設けられている場合、通気層133内の空気は窓部141を避けるようにして上昇し、軒天通気口15aから排気される。
一方、図11のように外壁部110の全幅に亘り連窓140が設けられている場合、通気層131内の空気は、隣り合う窓部141間(柱24の部分)に形成された通気路からしか、排気できない。そのため、この場合、軒天通気口15aからの排気量は図10の例に比べて少なくなる。
このように、一般的には、外壁部110の全幅に亘り連窓140を設けると、通気層133の十分な通気性を確保することができない。さらに、本実施の形態のように、断熱材32の厚みを大きくして連窓140をインセットすると、通気層133は、連窓140の下端位置で完全に途切れる。したがって、この場合、通気層133内の空気の抜け道を確保することは困難である。
これに対し、本実施の形態の2階外壁部12は、通気層33を有する下側壁体部21と連窓40(上側壁体部22)との間に、水切部材23を備え、水切部材23と外装面部材31との間に、屋外空間と連通する隙間50を設けている。そのため、図9に示されるように、通気層33内の空気は、隙間50を介して通気口(水切通気口)23aから適切に排気される。したがって、通気層33の通気性を十分に確保することができる。その結果、下側壁体部21の劣化を抑制することができる。
なお、本実施の形態においては、図6に示されるように、柱被覆部44と柱24との間に通気空間47が設けられている。通気空間47には、柱被覆部44の下端部と水切部材23の被覆部51の上面との間の隙間から、屋外の空気が取入れられる。柱被覆部44の下端部の隙間から通気空間47に取入れられた空気は、通気空間47内を上昇し、軒天通気口15aから排気されるように構成されている。
これにより、本実施の形態によれば、上側壁体部22の躯体部(上側柱242)の劣化を抑制することもできる。通気空間47に面する下地合板45および取付け片42d,42eには、防水シート48が貼り付けられることが望ましい。
以上説明したように、本実施の形態の建物1によれば、軸組構造を複雑にすることなく、意匠性の向上と外壁部10の通気性の確保とを両立させることができる。
さらに、本実施の形態では、2階外壁部12に中間梁26が設けられるため、下側壁体部21およびその支持体(躯体部)を、耐力壁として構成することができる。このことについて、上述の図9〜図11を用いて説明する。
一般的には、図10に示されるように、窓部141は非耐力壁95に設けられる。そのため、外壁部110の少なくとも一部を耐力壁94としたい場合、窓部141は外壁部110の横幅方向における一部分にしか設けることができない。すなわち、図11に示されるように、外壁部110の全幅に亘り連窓40を設ける場合、通常は、外壁部110の全てが非耐力壁95として構成される。耐力壁94は、一対の梁25a,25bと一対の柱24とで構成される枠体に、筋交などの耐力要素940を有している。
これに対し、本実施の形態では、連窓40は、中間梁26と屋根梁25bとの間に配置されるため、下側壁体部21およびその支持体の全体または一部を、自由に、耐力壁94とすることができる。その結果、建物1によれば、外壁部10の躯体部の強度を向上させることも可能となる。なお、図9に示す耐力壁94は、図10に示すような通常の耐力壁94よりも高さが低いため、「腰壁耐力壁」と称してもよい。
(連窓の他の配置例について)
連窓40の他の配置例を、図12および図13に示す。
図12に示されるように、連窓40は、正面側の外壁部10(上側壁体部22)にのみ配置されていてもよい。つまり、図3に示したように、側方外壁部91,92に、正面側のコーナーの窓部41に隣接する側方窓部41d,41eが設けられていなくてもよい。あるいは、連窓40が平面視においてL字状となるように、側方外壁部91,92のうちの一方にのみ、側方窓部が設けられていてもよい。
また、図13に示されるように、正面側の外壁部10に位置する連窓40は、外壁部10の全幅に亘り設けられていなくてもよい。つまり、外壁部10において、連窓40の側方位置には、下側壁体部21と同じ構造の壁体部22Aが、下側壁体部21と連続的に配置されていてもよい。なお、この場合、壁体部22A内の通気層33は、軒裏空間16に連通する。
(変形例)
本実施の形態では、建物1の屋根14が、最上階の上に位置する勾配屋根であることとしたが、下屋を有する建物においても、上述の2階外壁部12の構造を適用可能である。
図14には、本実施の形態の変形例に係る建物1Aの構成例が模式的に示されている。図14を参照して、建物1Aは、最上階(2階)の屋根14aと、1階の室内空間の上方に位置する下屋14bとを備えている。下屋14bは、2階外壁部12Aの下端部から正面方向に突出する片流れ屋根(勾配屋根)であり、その軒天井15が、1階外壁部11Aの上端に交差している。
この場合、下屋14b下の1階外壁部11Aが、上述の下側壁体部21と上側壁体部22とで構成されていてもよい。
なお、本実施の形態では、建物1(1A)が2階建てであることとしたが、1階建であってもよいし、3階以上の建物であってもよい。いずれにしても、軒先に軒天井15を有する屋根の直下に位置する特定階の外壁部が、上述の下側壁体部21および上側壁体部22を含んでいればよい。
また、上側壁体部22が、連窓40により構成されることとしたが、限定的ではない。上側壁体部22の表面が、下側壁体部21の表面(外装面部材31の表面)より後退した位置に配置され、かつ、下側壁体部21の表面とは素材および色調の少なくとも一方が異なっていればよい。具体的には、上側壁体部22の表面の色調は、下側壁体部21の表面よりも暗いことが望ましい。
また、下側壁体部21の内側面部材が、主に断熱材32により構成されることとしたが、限定的ではない。
また、外壁部10が建物1(1A)の正面側に配置されることとして説明したが、限定的ではない。また、建物1は、木造でなくてもよい。建物1は、住宅以外の建物に適用してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。