以下、実施形態にかかる車両検査装置1の構造について図面を用いて説明する。
車両検査装置1は、車検場の検査ラインで、排ガス検査装置、ヘッドライト検査装置、サイドスリップ検査装置等とともに配置される検査装置の一つである。検査車両は、検査ラインに配置されたこれらの各検査装置を用いて順番に各種の検査を実行される。
図1および図2に示すように、車両検査装置1は、車検場の床面に設けられた孔(以下、ピットという。)に埋め込まれて設置される。車両検査装置1は、検査車両の移動方向Pの前方に固定ユニット20を備え、固定ユニット20の後方に可動ユニット30を備えている。以下の説明では、検査車両の移動方向Pを前方とし、移動方向Pと逆方向を後方とする。
始めに、固定ユニット20について説明する。
固定ユニット20は、検査車両の左右のタイヤを乗せて回転可能に支持する第1支持部22と、検査時に検査車両が左右に移動することを防止するための横流れ防止機構40と、検査車両のタイヤに回転負荷を与える慣性重量付加機構60とを有している。
固定ユニット20の第1支持部22は、車検場の床面の高さに合わせて配置され、検査車両が第1支持部22に進入するときに凹凸が少なくなるように、適当な深さでピット内に埋設される。
第1支持部22は、検査車両の左右のタイヤを乗せるローラユニット24とローラユニット26とを有している。検査車両の移動方向Pの左側のタイヤは、ローラユニット24に乗せられる。そして、検査車両の右側のタイヤは、ローラユニット26に乗せられる。
ローラユニット24は、移動方向Pの前方に配置されたスピードローラ24aと移動方向Pの後方に配置されたブレーキローラ24bとを含む。ローラユニット26は、移動方向Pの前方に配置されたスピードローラ26aと移動方向Pの後方に配置されたブレーキローラ26bとを含む。
スピードローラ24aとスピードローラ26aは、同軸に配置され、クラッチ21aおよびカップリング21bを介して接続される。
例えば、ブレーキ検査においては、各タイヤのブレーキの性能を測定する必要がある。そこで、クラッチ21aは、スピードローラ24aとスピードローラ26aとの連結を切り、スピードローラ24aとスピードローラ26aを独立して回転させる。
また、スピード検査においては、検査車両の両輪の回転速度を同じにする必要がある。そこで、クラッチ21aは、スピードローラ24aとスピードローラ26aとを繋ぎ、一体的に回転させる。
固定ユニット20は、横流れ防止機構40および慣性重量付加機構60が連結されている。
横流れ防止機構40は、棒状部材とシリンダとスプリングとを含む(図示せず)。横流れ防止機構40は、固定ユニット20へ検査車両が進入すると、両側から棒状部材をタイヤへ向かって延出する。これにより、横流れ防止機構40は、タイヤを側面から支えることにより、検査時に検査車両が左右に移動することを防止する。なお、慣性重量付加機構60の構造の詳細については後述する。
次に可動ユニット30について説明する。
図1および図2に示すように、可動ユニット30は、第2支持部32と第3支持部34とを有する。第2支持部32および第3支持部34は、可動フレーム36aに取り付けられ、一体に移動可能となっている。第2支持部32および第3支持部34は、固定ユニット20の後方に並べて配置され、固定ユニット20に対して離接する方向に移動可能となっている。
可動ユニット30は、ピット内の台座36cの上に設けられた台座レール36bの上に配置される(図2)。なお、台座レール36bは、車両の移動方向Pに沿って、固定ユニット20の後方に配置される2本のレールを有する。可動ユニット30は、固定ユニット20と同様に、車検場の床面の高さに合わせて、検査車両の検査装置への進入を妨げない程度の凹凸になるように、適当な深さでピット内に埋設される。
第2支持部32は、検査車両の左右のタイヤそれぞれを乗せるローラユニット33とローラユニット35とを有する。検査車両の移動方向の左側のタイヤは、ローラユニット33に乗せられる。そして、検査車両の右側のタイヤは、ローラユニット35に乗せられる。
ローラユニット33は、移動方向Pの前方に配置されたスピードローラ33aと移動方向Pの後方に配置されたブレーキローラ33bとを含む。ローラユニット35は、移動方向Pの前方に配置されたスピードローラ35aと移動方向Pの後方に配置されたブレーキローラ35bとを含む。
スピードローラ33aとスピードローラ35aは、同軸に配置され、クラッチ21aを介して接続される。また、ローラユニット33およびローラユニット35の外側の端部には、凸部38が設けられる。凸部38には、検査車両の運転席からミラー等を用いて確認できる位置に、検査車両のタイヤを乗せるローラユニットを運転者に示すためのランプ106(図11参照)が設けられている。
同様に、ローラユニット37およびローラユニット39の外側の端部には、凸部38が設けられる。凸部38には、検査車両の運転席からミラー等を用いて確認できる位置に、検査車両のタイヤを乗せるローラユニットを運転者に示すためのランプ106(図11参照)が設けられている。
さらに、ローラユニット24およびローラユニット26の外側の端部に設けられた横流防止装置40の上面には、同様にランプ106が設けられている。このランプ106は、検査車両のタイヤを乗せるべき検査ユニットを指示するように発光する。
つまり、ランプ106は、全てのローラユニット24、26、33、35、37、39の外側の端部に設けられている。すなわち、ランプ106は、6か所に配置されている。
第3支持部34は、検査車両の左右のタイヤを乗せるローラユニット37とローラユニット39とを有している。検査車両の移動方向の左側のタイヤは、ローラユニット37に乗せられる。そして、検査車両の右側のタイヤは、ローラユニット39に乗せられる。
ローラユニット37は、移動方向Pの前方に配置されたスピードローラ37aと移動方向Pの後方に配置されたブレーキローラ37bとを含む。ローラユニット39は、移動方向Pの前方に配置されたスピードローラ39aと移動方向Pの後方に配置されたブレーキローラ39bとを含む。
スピードローラ37aとスピードローラ39aは、同軸に配置され、クラッチ21aを介して接続される。また、ローラユニット37および39の外側の端部には、凸部38が設けられる。凸部38には、検査車両の運転席から確認できる位置に、検査車両のタイヤを乗せるローラユニットを運転者に示すためのランプ106(図11参照)が設けられている。このランプ106は、検査車両のタイヤを乗せるべき検査ユニット指示するように発光する。
なお、本実施形態においては、ローラユニットの一方のローラをスピードローラと呼称し、他方をブレーキローラと呼称したが、両ローラとも駆動機構およびブレーキ機構を備えている。このため、どちらのローラでも駆動および制動の両方の働きをすることが可能である。
次に、ローラユニット26のスピードローラ26a、ローラユニット35のスピードローラ35aおよびローラユニット39のスピードローラ39aを連結するローラ同調部200について説明する。
図1および図2に示すように、スピードローラ26aとスピードローラ35aは、複数のプーリ201,202,203,204,205,206,207,208と、これらのプーリを繋ぐ歯付ベルト211,212,213,214,215,216により連結されている。なお、本実施形態においては、動力伝達機構として、プーリと歯付ベルトを用いたが、他の動力伝達手段として、例えば、Vベルトやフラットベルトを用いることも可能である。
そして、スピードローラ26aと歯付ベルト211を介して連結するプーリ202と、ローラユニット35のスピードローラ35aと歯付ベルト214を介して連結するプーリ205は、連結アーム210を介して連結されている。連結アーム210は、2本の棒状の部材の一端同士をプーリ203で回動可能に連結した構造である。また、連結アーム210の端部には、プーリ202,203およびプーリ205が回転可能に設けられている。このため、可動ユニット30が移動しても歯付ベルト212,213が緩むことがない。
ローラユニット39のスピードローラ39aは、同軸でプーリ208と接続される。プーリ208とプーリ207は、歯付ベルト216により連結される。そして、プーリ207は、プーリ205と歯付ベルト215で連結される。これにより、ローラユニット26のスピードローラ26aの回転は、ローラ同調部200によりローラユニット39のスピードローラ39aに伝達される。
また、ローラユニット26のスピードローラ26aとローラユニット35のスピードローラ35aとは、ローラ同調部200に配置されたクラッチ27により、連結、非連結を選択することができる。
同様に、ローラユニット26のスピードローラ26aとローラユニット39のスピードローラ39aとは、ローラ同調部200に配置されたクラッチ27により、連結、非連結を選択することができる。
クラッチ27により、ローラ同調部200とスピードローラ35a,39aの連結、非連結を選択できるようにしたことで、検査の種類に合わせて使用するローラユニットを選択できる。例えば、第1支持部22と第2支持部32に検査車両のタイヤを乗せて、第3支持部34のスピードローラ37a,39aを使用しない検査においては、第3支持部34のスピードローラ39aとの連結は切る。そして、車両検査装置1は、検査に必要な第1支持部22のスピードローラ26aと第2支持部32のスピードローラ35aのみをローラ同調部200により連結させて検査することができる。このため、本実施形態に係る車両検査装置1は、検査に使用されないローラユニットが回転することがないため、安全である。さらに、車両検査装置1は、検査に不要なローラユニットが回転することがなく、必要とする動力を低減することができる。
なお、実施形態の車両検査装置1においては、図1に示すように、ローラ同調部200と同様の機構(ローラ同調部220)を反対側に予備的に配置することもできる。左右にローラ同調部200,220を設けることにより、一方のローラ同調部に不具合があった場合においても、他方のローラ同調部が起動することにより、可動ユニット30の動きを保障することができる。
次にブレーキローラ24b,26bの構造について、図1、図2および図6を用いて説明する。なお、ブレーキローラ24b,26bとブレーキローラ33b,35b,37b,39bは同一の構造であるため、ここでは、ブレーキローラ24b,26bについてのみ代表して説明する。
図1および図6に示すように、ガイドレール10,11の内側に設けられたブレーキローラ24b,26bは、回転軸84の両端付近において、内側フレーム(図示せず)に回転可能に保持されている。回転軸84の外側端には、ギアボックス81、クラッチ82が取り付けられている。
ギアボックス81は、連結ベルト83により電動モータ71と接続される。クラッチ82としては、例えば、いわゆるワンウェイクラッチが使用される。
本実施形態の車両検査装置1においては、ブレーキローラ24b,26bと接続するギアボックス81をブレーキローラ24b,26bと同軸状に配置したことにより、ギアボックス81、クラッチ82を床面近くへ配置でき、ギアボックス81,クラッチ82へのアクセスが容易になる。したがって、ローラユニット24,26の下側に作業者が潜り込んでギアボックス81,クラッチ82のメンテナンス作業する必要がなく、作業性に優れている。
続いて、移動式踏板50R、50Fの構成について説明する。
図2に示すように、可動ユニット30は、ピット内を前後方向に(台座レール36b上を)移動自在に設けられている。可動ユニット30の移動方向の前方には移動式踏板50Fが設けられている。可動ユニット30の移動方向の後方には、移動式踏板50Rが設けられている。
車両検査装置1は、図1に示すように、ピットの前後方向に沿って平面視左側にガイドレール10を備え、平面視右側にガイドレール11を備えている。各移動式踏板50F,50Rの左右の端は、これら2本のガイドレール10および11によってスライド可能に支持される(図3参照)。
移動方向Pに沿って、ガイドレール10,11の前方端は、固定ユニット20の後方でピットの底方向に落ち込むように折り曲げられている。また、ガイドレール10,11の後方端も同様に、ピットの後端近くでピットの底方向に落ち込むように折り曲げられている。つまり、ガイドレール10,11は逆U字状に折り曲げられている。
移動式踏板50R,50Fは、図2および図3に示すように、複数の移動式踏板ユニット50を移動方向に繰り返し連結した構造を有する。移動式踏板ユニット50の構造とは、ガイドレール10とガイドレール11に渡る長さを有する2本の大パイプ51と、2本の大パイプの間の下側に配置される小パイプ52と、小パイプ52と対向して検査車両の走行面に配置される踏板53と、を有する。移動式踏板50R,50Fは、この移動式踏板ユニット50を複数並べて連結部55で連結することにより構成される。
1つの移動式踏板ユニット50に着目すると、大パイプ51の両端部には、移動式踏板50Fおよび移動式踏板50Rをガイドレール10,11に対してスムーズにスライドさせるための、コロ54が取付けられている。
上記のように構成された移動式踏板ユニット50は、逆U字状に折り曲げられたガイドレールの上を約90度の角度で内側に折り曲がる。ここで、移動式踏板ユニット50は、大パイプ51の下に小パイプ52を略逆三角形に配置することで逆U字状のガイドレールを通過する時の回転半径を小さくするとともに十分な強度を確保している。
また、移動式踏板ユニット50を断面円形の大パイプ51、小パイプ52を組み合わせた構成とすることにより、移動式踏板ユニット50が折り曲がるときの隙間を最小限に抑えられるように形成している。
これにより、移動式踏板ユニット50は、ガイドレールの逆U字箇所の隙間における異物の噛み込みや、指等の抹消部の挟み込みを防ぐことができる。
このため、本実施形態に係る移動式踏板50F,50Rは、移動式踏板ユニット50を複数連結する構造とすることで、軸重で10tの車両の通過に耐えうる十分な強度を維持するとともに、安全面においても有効である。
ここで、以下、移動式踏板50R,50Fの動作を説明する。
可動ユニット30が前方に移動した場合は後方の移動式踏板50Rがガイドレール10、11をスライドして床面へ引き出される。これにより、ピットの開口部の大部分は、可動ユニット30と移動式踏板50Rにより塞がれる。
一方、可動ユニット30が後方に移動した場合は、前方の移動式踏板50Fがガイドレール10,11をスライドして、床面へ引き出される。同様に、ピットの開口部は、可動ユニット30と移動式踏板50Fにより塞がれる。移動式踏板50Rおよび50Fが可動ユニット30の前後の移動に合わせてピットの開口部を塞ぐ方向へ引き出されることにより開口部は常に閉じられる。また、移動式踏板50F,50Rは、一方が床面に露出した場合には、他方は床下に収納されるため、可動ユニット30の移動を妨げることがない。
このように、ピットの開口部は常に移動式踏板50F,50Rにより塞がれているため、可動ユニット30が移動中であっても安全に検査車両の走行が可能である。
さらに、上述の移動式踏板ユニット50を用いることにより、検査車両の左右のタイヤ毎に2つの移動式踏板を設置する必要がない。つまり、ピットの中心に別のガイドフレームを設けて、このガイドフレームの左右両側に、左右のタイヤをそれぞれ乗せる2つの移動式踏板を設ける必要がない。
このため、固定ユニット20の左右のローラユニット24および26のスピードローラ24aと26aとの接続(図4参照)と同じように、可動ユニット30の左右のローラユニット33および35のスピードローラ33aと35aを、カップリング21bおよびクラッチ21aを介して同軸に接続することができる。同様に、可動ユニット30の左右のローラユニット37および39のスピードローラ37aと39aも、カップリング21bおよびクラッチ21aを介して同軸に接続することができる。
これにより、カップリング21bおよびクラッチ21aを床面近くに配置でき、車両検査装置1のピットの蓋90を取り外すことで、カップリング21bおよびクラッチ21aへ容易にアクセスすることができる。したがって、カップリング21bおよびクラッチ21aの部品の交換等が容易であり、メンテナンス性に優れている。
また、第2支持部32において、クラッチ21aをスピードローラ33a,35aと同軸に接続するため、装置構成を簡略化でき、部品点数を減少することができる。スピードローラ33aと35aの接続構造が簡易となるため、故障の発生も抑制することができる。同様に、第3支持部34において、クラッチ21aをスピードローラ37a,39aと同軸に接続するため、装置構成を簡略化でき、部品点数を減少することができる。スピードローラ37aと39aの接続構造が簡易となるため、故障の発生も抑制することができる。
また、第1支持部22において、クラッチ21aをスピードローラ24a,26aと同軸に接続するため、装置構成を簡略化でき、部品点数を減少することができる。スピードローラ24aと26aの接続構造が簡易となるため、故障の発生も抑制することができる。
次に、車両検査装置1の固定ユニット20と連結された慣性重量付加機構60について説明する。
本実施形態に示す車両検査装置1の慣性重量付加機構60は、固定ユニット20のさらに前方のピット内に、配置されている(図2参照)。
図5に示すように、慣性重量付加機構60は、2つフライホイール61と、2つのクラッチ62と、2つのカップリング63とを同軸に有する。そして、慣性重量付加機構60の略中央部にプーリ64を備えている。
一方、第1支持部22のスピードローラ26aの回転軸84には、プーリ21cが設けられている。プーリ64とプーリ21cは、連結ベルト25で連結される。
2つのフライホイール61の内側に2つのクラッチ62を備え、さらに内側に2つのカップリング63が設けられている。
慣性重量付加機構60は、例えば、速度制限装置付の車両のスピード検査を実施する場合に使用するものである。
慣性重量付加機構60を使用せずに、速度制限装置付の検査車両の駆動タイヤをローラユニット24,26に乗せて、エンジンを始動して駆動タイヤを回転させると、ローラユニット24,26が短時間に高速回転する。
例えば、時速90キロメートルの速度制限装置が付いている場合には、時速90キロメートルに達した時点で速度制限装置が起動して、エンジンの駆動を止める。車両検査装置1における検査においては、道路走行と異なり車両重量を含む慣性が働かない。このため、速度制限装置の制御は、高速回転と低速回転を繰り返して乱調を起こすことになり、速度が安定しない。
そこで、車両検査装置1は、図5に示すような、慣性重量付加機構60と、スピードローラ24a,26aとを連結ベルト25を介して連結し、スピードローラ24a,26aにフライホイール61の慣性力を付加することが出来るようにしている。そして、車両検査装置1は、フライホイール61の働きにより、タイヤの速度の変化を穏やかにし、速度制限装置の乱調を防ぐ。車両検査装置1は、慣性重量付加機構60を設けることにより、検査車両の速度変化を穏やかにし、検査車両の速度の制御を安定させることができる。
2つのフライホイール61は、それぞれ、クラッチ62を介して回転軸66に取り付けられている。このため、検査車両に必要な慣性重量に合わせて使用するフライホイールを選択することができる。つまり、2つのフライホイール61の両方を回転軸66に接続して使用することも、一方を接続し、他方の接続を切った状態で使用することもできる。もちろん、両方のフライホイール61のクラッチ62を切ること(固定ユニット20のスピードローラ24a,26aから、慣性重量付加機構60を切離すこと)も可能である。また、検査車両の重量に応じてフライホイール61を交換することもできる。
本実施形態の慣性重量付加機構60は、図2に示すように、ピットを塞ぐ蓋90の直下にフライホイール61を配置している。よって、蓋90を取り外すことで、容易にフライホイール61へアクセスすることができる。このため、フライホイール61の交換が容易である。加えて、その他のクラッチ62やカップリング63のメンテナンス性も良好である。
続いて、実施形態の車両検査装置1の動作を制御する制御系について説明する。
図11に示すように、車両検査装置1の制御部100は、固定ユニット20と、可動ユニット30と、慣性重量付加機構60と、ローラ同調部200,220とを制御する。また、制御部100は、検査車両のタイヤが指示通りのローラユニットに乗っていることを確認するカメラ101と、カメラ101からのデータを画像として映し出し、操作者に検査工程の説明等の情報を提供するモニタ102と、検査の選択などの各種操作入力を受ける操作パネル103と、各種センサ104と、操作者に検査車両のタイヤを乗せるべきローラユニット24,26,33,35,37,39を指示するためのランプ106と、前工程の前検査装置制御部105と電気的に接続される。
具体的には、制御部100は、固定ユニット20の駆動手段71aを制御して、第1支持部22のローラユニット24,26を動作させる。また、アクチュエータ72aを制御して、クラッチ21aを動作させる。加えて、制御部100は、アクチュエータ41を制御して、横流れ防止機構40を動作させる。また、制御部100は、アクチュエータ65を制御して、慣性重量付加機構60のクラッチ62を動作させる。
制御部100は、可動ユニット30の駆動手段71bを制御して、第2支持部32のローラユニット33,35を動作させる。また、アクチュエータ72bを制御して、クラッチ21aを動作させる。同様に、制御部100は、駆動手段71cを制御して、第3支持部34のローラユニット37,39を動作させる。また、アクチュエータ72cを制御して、クラッチ21aを動作させる。
さらに、制御部100は、駆動手段71dを制御し、可動ユニット30を固定ユニット20に対して離接する方向に移動させる。より具体的には、制御部100は、前検査装置制御部105から当該検査車両に関するデータを取得し、取得した当該検査車両のホイールベースのデータに合わせて可動ユニット30を移動させる。
そして、制御部100は、アクチュエータ271を制御して、ローラ同調部200および/または、220のクラッチ27を動作させる。
また、制御部100は、上記ホイールベースを含む、固定ユニット20および可動ユニット30の制御に必要な検査車両のデータを前検査装置制御部105から取得する。
続いて、実施形態の車両検査装置1の基本的な検査工程について説明する。
検査を実施する場合、初めに、操作者は、操作パネル103において、必要な車両情報と受検すべき検査項目を入力する。必要な車両情報は、例えば、検査車両の車種(2軸車,3軸車,4軸車等)とその車両の駆動軸である。また、受検すべき検査項目は、サイドスリップ検査、ブレーキ検査、スピード検査等から選択することができる。必要事項を入力後、操作者は、前検査装置を経た検査車両を車両検査装置1に進入させ、初期検査位置まで移動させる。ここで言う初期検査位置とは、検査車両の左右のタイヤを第1支持部22上に乗せた位置を指す。
制御部100は、入力された情報および、前検査装置制御部から得られた検査車両の情報に基づき、検査車両を誘導する。具体的には、制御部100は、タイヤをセットするローラユニットの端部に設けられたランプ106を点灯する。検査車両の左右のタイヤが固定ユニット20の第1支持部22に正確にセットされているか否かを固定ユニット20に配置された複数のセンサ104からの信号とカメラ101の映像から判断する。検査車両のタイヤが第1支持部22に正確にセットされた場合、制御部100は、モニタ102にタイヤが正確にセットされたことを表示する。
同時に、制御部100は、前検査装置制御部105から当該検査車両のデータを取得し、操作パネル103を介して入力された各種データや検査の種類に基づいて可動ユニット30を適切な位置に移動する。この可動ユニット30の移動は、前検査装置制御部105から当該検査車両のホイールベースに関するデータを取得した時点から開始することもできる。つまり、操作者が検査車両を初期検査位置へ移動させているときに、可動ユニット30を移動させることもできる。
検査車両が初期検査位置へセットされると、制御部100は、入力されたデータに基づき必要であれば、横流れ防止機構40を駆動してタイヤの左右の滑りを防止する。なお、横流れ防止機構40は、特に、車両検査装置1で普通乗用車等の2軸車を検査する場合に用いられる。さらに、必要であれば、制御部100は、慣性重量付加機構60と固定ユニット20とをクラッチ62を用いて繋ぐ。
制御部100は、検査車両に必要な検査項目に応じて、ローラ同調部200,220のクラッチ27を動作させる。具体的には、第1支持部22と第2支持部32を用いる検査の場合は、クラッチ27を制御して使用しない第3支持部34との連動を切ることができる。
なお、駆動手段71a,71b,71c,71dとしては、例えば、電動モータを使用することができるが、これに替えて油圧モータや空気圧モータをローラユニットの駆動に用いることもできる。
続いて、本実施形態に係る車両検査装置1における車両タイプ別の検査工程について説明する。
図7に示すように、本実施形態に係る車両検査装置1は、進行方向の前方に固定ユニット20、その後方に可動ユニット30を備えている。固定ユニット20は、第1支持部22を有する。そして、可動ユニット30は、第2支持部32と第3支持部34とを可動フレーム36aとを一体に有する。可動フレーム36aは、台座レール36bの上に設けられている。
可動ユニット30をその可動範囲の最後方まで移動した場合(図示の状態)、第3支持部34と第1支持部22の間の距離は、4000mmとなる。これに対して、可動ユニット30をその可動範囲の最前方まで移動した場合、両者間の距離は、2575mmとなる。なお、ここで言う支持部同士の距離は、各支持部が車輪を支持した場合の車輪の中心軸同士の距離に相当する。
また、可動ユニット30をその可動範囲の最後方まで移動した場合、第2支持部32と第1支持部22の間の距離は、2575mmとなる。これに対して、可動ユニット30をその可動範囲の最前方まで移動した場合の距離は、1150mmである。
また、可動ユニット30の移動ストロークは、1425mmである。可動ユニット30の第3支持部34と第2支持部32との間の距離は、1425mmである。
このため、車両検査装置1は、ホイールベースが4000mmのバス等から乗用車、大型トラック等の3軸,4軸車まで多種の長さのホイールベースに対応可能である。
さらに、本実施形態の車両検査装置1は、第1支持部22の後方に連続して第2支持部32および第3支持部34を配置しているため、2軸車両のみだけではなく、3軸車両や4軸車両であっても車両の移動を最小限に(本実施形態では1回)に抑えることができる。その上、車両検査装置1は、可動ユニット30の移動量も少なくできるため、総検査時間を短縮することができる。
以下、図8から図10を用いて2軸車から4軸車の検査車両の例を挙げて車両検査を説明する。
図8(a)に示すように、例えば、ホイールベースが最も短い乗用車を車両検査装置1で検査する場合、制御部100は、前検査装置制御部105からの情報に基づいて、当該乗用車のホイールベースを確定する。
制御部100は、モニタ102に検査車両のタイヤT1を固定ユニット20の第1支持部22に乗せるように表示する。制御部100は、センサ104およびカメラ101でタイヤT1の位置を確認する。その後、制御部100は、必要に応じて横流れ防止機構40を操作してタイヤT1の横方向の移動を規制する。そして、この動作と並行して、制御部100は、第2支持部32を検査車両のタイヤT2が止まる位置に移動させる。
なお、制御部100は、前検査装置制御部105から検査車両のデータを取得すると同時に可動ユニット30の移動を開始することも可能である。
この場合には、車両検査装置1に検査車両が進入する前に可動ユニット30の移動を開始することができる。このため、車両検査装置1は、可動ユニット30の移動距離が長い場合においても、検査開始までの待ち時間を低減することができる。なお、場合によっては、検査車両の操作者は、固定ユニット20の第1支持部22にタイヤT1を乗せると同時に、タイヤT2を位置の調整がされた後の第2支持部32へタイヤT2を乗せることもできるため、効率的である。
制御部100は、全てのタイヤが第1支持部22および第2支持部32に乗っていることをセンサ104からの信号およびカメラ101からの映像により確認後、スピード検査およびブレーキ検査を開始する。
続いて、図8(b)に示すような、大型2軸車両でホイールベースの長さが2575mm〜4000mmの車両、例えばバスの場合について説明する。
制御部100は、上記の乗用車と同様に固定ユニット20の第1支持部22にタイヤT1が乗せられたことをセンサ104、カメラ101により確認する。そして、この動作と並行して、制御部100は、第3支持部34を検査車両のタイヤT2が止まる位置に移動させる。
また、乗用車と同様に、制御部100は、前検査装置制御部105から検査車両のデータを取得すると同時に可動ユニット30の移動を開始することも可能である。
制御部100は、検査車両のタイヤT1が第1支持部22に乗せられ、第3支持部34にタイヤT2が乗せられたことを、カメラ101およびセンサ104の信号から確認後、スピード検査及びブレーキ検査を開始する。
上記のような2軸車両の場合、車両検査装置1は、検査車両を固定ユニット20の第1支持部22にセット後は、検査車両を移動させることなく、スピード検査およびブレーキ検査が可能である。
次に、大型の多軸車の場合の検査方法について簡単に説明する。
大型の多軸車としては、例えば、3軸車両のトラックを図9に示した。なお、本実施形態に示したトラックの駆動輪は、トラックの後方にある2組の車輪のうち前方のタイヤT2とした。
図9(a)(b)に示すように、制御部100は、検査車両のT1が第1支持部22にセットされたことを確認する。この状態で、制御部100は、検査車両のタイヤT1のブレーキ検査を実施する。その後、制御部100は、モニタ102で操作者に検査車両の位置移動の指示を表示する。制御部100は、検査車両のタイヤT2が固定ユニット20の第1支持部22にセットされていることを、カメラ101およびセンサ104からの信号により確認する。制御部100は、検査車両の位置移動の指示と同時に可動ユニット30を駆動させる。そして、制御部100は、第2支持部32を検査車両のタイヤT3が止まる位置に移動させる。
なお、可動ユニット30は、制御部100が、前検査装置制御部105からの検査車両のデータを取得すると同時に、可動ユニット30の位置の調整を開始することもできる。このように制御することで、タイヤT1の検査終了直後に検査車両を移動開始でき、かつ、検査までの時間も短縮することができる。加えて、検査車両の移動は前方への1回で済み、操作者への負担が少なく効率的である。また、操作者は、固定ユニット20を目印とすることで、検査車両の移動時におけるタイヤT2の位置合わせが簡易である。つまり、固定ユニット20の位置は、常に固定されているため、操作者が車両を進入させすぎ、ローラユニットを乗り越えることや、タイヤがローラユニットへセット後に外れる等のエラーが発生しにくい。
次に、図10(a)(b)に示すような、4軸車両のトラックの場合について検討する。
実施形態に示したトラックは、後輪の2軸のタイヤT3、T4が駆動輪の場合を示している。制御部100は、モニタ102に検査車両のタイヤT1を固定ユニット20の第1支持部22に乗せるように表示させる。制御部100は、センサ104およびカメラ101でタイヤT1の位置を確認する。そして、制御部100は、第2支持部32を検査車両のタイヤT2が止まる位置に移動させる。
なお、制御部100は、前検査装置制御部105から検査車両のデータを取得すると同時に可動ユニット30の移動を開始することも可能である。
この場合には、車両検査装置1に検査車両が進入する前に可動ユニット30の移動を開始することができる。このため、検査車両の操作者は、固定ユニット20の第1支持部22にタイヤT1を乗せると同時に、タイヤT2を位置の調整がされた後の第2支持部32へタイヤT2を乗せることができる。
制御部100は、検査対象となるタイヤが第1支持部22および第2支持部32に乗っていることをセンサ104からの信号およびカメラ101からの映像により確認後、ブレーキ検査を開始する。
次に、タイヤT1、T2のブレーキ検査が終了すると、制御部100は、モニタ102で操作者に検査車両の位置移動の指示を表示する。操作者は、移動方向Pに検査車両を移動させ、タイヤT3を固定ユニット20の第1支持部22に乗せる。制御部100は、検査車両のタイヤT3が固定ユニット20の第1支持部22にセットされていることを、カメラ101およびセンサ104からの信号により確認する。そして、制御部100は、第2支持部32を検査車両のタイヤT4が止まる位置に移動させる。なお、制御部100は、前検査装置制御部105から検査車両のデータを取得すると同時に可動ユニット30の移動を開始することも可能である。
この場合には、車両検査装置1に検査車両が進入する前に可動ユニット30の移動を開始することができる。このため、検査車両の操作者は、固定ユニット20の第1支持部22にタイヤT3を乗せると同時に、タイヤT4の位置の調整がされた後の第2支持部32へタイヤT4を乗せることができる。
このように制御することで、タイヤT1,T2の検査終了直後に検査車両を移動開始でき、かつ、可動ユニット30の位置の調整時間分だけ、検査までの時間も短縮することができる。加えて、検査車両の移動は前方への1回で済み、操作者への負担が少なく効率的である。
この状態で、制御部100は、タイヤT3およびT4のスピード検査およびブレーキ検査を実施する。このように、車両検査装置1は、一回の移動動作でトラック(4軸車)の全てのタイヤT1からT4のスピード検査およびブレーキ検査が可能となる。また、固定ユニット20は、固定されているため、上記同様に、操作者は検査車両の移動時においてタイヤT3の位置合わせが容易である。
上記のように、本実施形態の車両検査装置1は、大きな特徴として前方に固定ユニット20を配置し、後方に可動ユニット30を配置している。このため、操作者は、位置が変わらない固定ユニット20を目印として検査車両を車両検査装置1に進入させてタイヤを位置決めすることができる。また、制御部100は、操作者が検査対象のタイヤを固定ユニット20に乗せる作業をしている間に、前検査装置制御部105からのデータに基づいて可動ユニット30の位置を調整することができる。よって、車両検査装置1は、可動ユニット30の位置調整のための待ち時間がほとんど発生しない。
本実施形態に係る車両検査装置1は、多種類のホイールベースを有する検査車両がランダムに進入するような場合に、検査車両の進入時の待ち時間および途中の検査タイヤ変更時の待ち時間を削減し、総検査時間を短縮することができる。よって、車両検査装置1は、より多くの車両を検査することができる。
また、車両検査装置1は、前方に位置する固定ユニット20に横流れ防止機構40を取り付けている。横流れ防止機構40は、車幅よりもさらに外側に大きくはみ出した凸状の構造を有している。横流れ防止機構40は、不用意なハンドル操作によりタイヤが連動して回動し、検査中に車体が左右に移動することを防ぐためのものである。横流れ防止機構40は、通常、車両検査装置の前方に設けられる。ここで、車両検査装置1において、第1支持部22は、固定であるため、横流れ防止機構40の設置も簡易である。
さらに、横流れ防止機構40は、ピットの短手方向にはみ出して配置されている。このため、横流れ防止機構がピットの長手方向に移動する場合には、移動時に操作者等が、横流れ防止機構の移動ラインに進入することが無いように、特別な配慮が必要であるが、車両検査装置1においては、固定ユニット20に横流れ防止機構40を配置しているため、その必要もない。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態における、検査車両の例として、2軸車、3軸車および4軸車を挙げたが試験が可能な車両はこれに限らない。また、検査車両のデータは、前検査装置制御部から取得するものとしたが、種々の検査で得られるデータを一括して管理するサーバ等へアクセスして取得するものでもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]検査車両の左右一対の車輪を乗せてその場で回転可能に支持する第1支持部を備えた固定ユニットと、
前記固定ユニットに対して前記検査車両の移動方向の後方で、前記固定ユニットに離接する方向に移動可能に設けられ、前記検査車両の左右一対の車輪を乗せて回転可能に支持する第2支持部およびこの第2支持部の後方で前記検査車両の左右一対の車輪を乗せて回転可能に支持する第3支持部を備えた可動ユニットと、
を有する車両検査装置。
[2]検査車両の車両データに基づいて、可動ユニットの位置を調整する制御部をさらに備えていることを特徴とする[1]に記載の車両検査装置。