JP6531796B2 - 導電性薄膜積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、導電性薄膜積層体の製造方法及び該方法により得られる導電性薄膜積層体、並びに有機電界発光素子、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ及び有機EL照明に関する。
近年、導電性薄膜積層体に関する技術は、TFT、太陽電池、有機ELディスプレイ、有機EL照明の分野において、開発が進められている。特に、湿式成膜法は、真空蒸着法と比べ、材料の利用効率、製造コスト、大面積化の点で有利である。また多種類の材料を混合し組成物を形成することにより、材料の設計に自由度を与えることができるという利点を有する。また湿式成膜法では、溶媒に様々な材料を溶解又は分散させる必要があり、薄膜形成に際しては溶媒を除去する必要がある。そのため、溶媒を除去する方法において、いくつかの方法が提案されている。
特許文献1〜4においては、電磁波、特に赤外線を用いて加熱することが有効であると記載されている。また加熱することにより、薄膜の緻密性をあげ、薄膜の強度や導電性を向上することができると考えられている。さらに導電性薄膜が架橋性基を有する場合に、加熱により架橋し、溶媒に対して、不溶となり、更なる塗布による機能層の積層が可能となる。
日本国特開2008−091316公報 日本国特開2008−226642公報 国際公開第2006/070713号 日本国特開2004−127897公報
しかし、膜厚が1μmに満たないような導電性薄膜においては、単なる電磁波加熱では、導電性薄膜への損傷が深刻となり、期待した性能を出すことができなかった。また、導電性薄膜が架橋性基を有する場合、架橋性基を架橋するために長時間を要し、さらには必要なエネルギー量が大きく、生産コストの抑制が望まれていた。
本発明は、上記課題を解決した導電性薄膜積層体の製造方法を提供することを目的とする。さらには導電性薄膜積層体、特に、駆動電圧が低く、発光効率が高く加えて駆動寿命が長い有機電界発光素子、及びそれを備えた有機ELディスプレイ並びに有機EL照明を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、導電性薄膜に、加熱手段として特に赤外線を用いて加熱を行うことにより、本願課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下[1]〜[36]を要旨とするものである。
[1]基板と該基板上に形成された導電性薄膜とを含む、導電性薄膜積層体の製造方法であって、
前記導電性薄膜は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含み、且つ架橋基を有する高分子化合物を含有する導電性薄膜前駆体を、基板上又は基板上に形成された導電性薄膜上に塗布し、次いで赤外線で加熱して架橋することによって形成される、導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式(1)中、ArまたはArは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
[2]前記架橋基が下記<架橋性基群T>から選ばれる架橋基である、前記[1]に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
<架橋性基群T>
Figure 0006531796
(式中、R21〜R25は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。Ar41は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。)
[3]前記架橋性基が下記式(3)で表されるベンゾシクロブテン環である、前記[2]に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
[4]前記導電性薄膜前駆体が、下記式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有するものである、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式中、pは0〜3の整数を表し、Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Tは架橋性基を表す。)
[5]前記導電性薄膜前駆体が、下記式(4)からなる部分構造を含む高分子化合物を含有するものである、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式(4)中、Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香環基を示し、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基を示し、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい芳香環基を示す。R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。pは、1〜5の整数を示す。)
[6]前記導電性薄膜前駆体が、下記式(6)からなる部分構造を含む高分子化合物を含有するものである、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式(6)中、Ar31、Ar33、Ar34及びAr35は、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示し、Ar32は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。
11は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基を示し、R12〜R12は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。
12及びR13は、互いに結合して環を形成してもよい。R14及びR15は、互いに結合して環を形成してもよい。R16及びR17は、互いに結合して環を形成してもよい。
l、m及びnは各々独立に0〜2の整数を示す。)
[7]前記基板は、波長2000〜3300nmの範囲に赤外線透過率の極小値を有し、
前記赤外線透過率の極小値における波長と該赤外線のピーク波長との積(α)が2μm以上、16μm以下である、前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[8]基板の赤外線透過率の極小値が95%以下である、前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[9]赤外線のピーク波長が、0.8μm以上、25μm以下である、前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[10]前記導電性薄膜前駆体が、基板の温度が赤外線照射時において、150℃以上、300℃以下で加熱され、前記温度範囲での保持時間が、5秒以上、30分以下である、前記[1]〜[9]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[11]前記導電性薄膜前駆体が、基板の温度が赤外線照射時において、150℃以上、300℃以下で加熱され、前記温度範囲で、一定の温度で保持される時間が、20秒以上、15分以下である、前記[1]〜[10]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[12]前記基板を10℃/min以上、250℃/min以下の昇温速度で、赤外線により加熱する、前記[1]〜[11]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[13]基板の赤外線透過率の極小値における波長と該赤外線のピーク波長との積(α)と、前記基板の温度が150℃以上での保持時間t(秒)とした場合、下記式(7)の関係を満たす、前記[1]〜[12]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
0.002≦α/t(μm/s)≦0.2 ・・・(7)
[14]基板と基板上に形成された導電性薄膜の膜厚が50nm以上、1μm以下であることを含む、導電性薄膜積層体の製造方法であって、
前記導電性薄膜は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含み、且つ架橋基を有する高分子化合物を含有する導電性薄膜前駆体を、基板上又は基板上に形成された導電性薄膜上に塗布し、次いで赤外線で加熱して架橋することによって形成される、導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式(1)中、ArまたはArは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
[15]前記架橋基が下記<架橋性基群T>から選ばれる架橋基である、前記[14]に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
<架橋性基群T>
Figure 0006531796
(式中、R21〜R25は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。Ar41は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。)
[16]前記架橋性基が下記式(3)で表されるベンゾシクロブテン環である、前記[15]に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
[17]前記導電性薄膜前駆体が、下記式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する、前記[14]〜[16]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式中、pは0〜3の整数を表し、Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Tは架橋性基を表す。)
[18]前記導電性薄膜前駆体が、下記式(4)からなる部分構造を含む高分子化合物を含有する、前記[14]〜[17]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式(4)中、Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香環基を示し、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基を示し、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい芳香環基を示す。R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。pは、1〜5の整数を示す。)
[19]前記導電性薄膜前駆体が、下記式(6)からなる部分構造を含む高分子化合物を含有する、前記[14]〜[18]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
Figure 0006531796
(式(6)中、Ar31、Ar33、Ar34及びAr35は、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示し、Ar32は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。
11は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基を示し、R12〜R17は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。
12及びR13は、互いに結合して環を形成してもよい。R14及びR15は、互いに結合して環を形成してもよい。R16及びR17は、互いに結合して環を形成してもよい。
l、m及びnは各々独立に0〜2の整数を示す。)
[20]前記基板は、波長2000〜3300nmの範囲に赤外線透過率の極小値を有し、
前記赤外線透過率の極小値における波長と該赤外線のピーク波長との積(α)が2μm以上、16μm以下である、前記[14]〜[19]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[21]基板の赤外線透過率の極小値が95%以下である、前記[14]〜[20]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[22]赤外線のピーク波長が、0.8μm以上、25μm以下である、前記[14]〜[21]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[23]前記導電性薄膜前駆体が、基板の温度が赤外線照射時において、70℃以上、300℃以下の温度で加熱され、前記温度範囲で保持される時間が、5秒以上、30分以下である、前記[14]〜[22]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[24]前記導電性薄膜前駆体が、基板の温度が赤外線照射時において、70℃以上、300℃以下の温度で加熱され、前記温度範囲で一定の温度で保持される時間が、20秒以上、15分以下である、前記[14]〜[23]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[25]前記基板を10℃/min以上、250℃/min以下の昇温速度で、赤外線により加熱する、前記[14]〜[24]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[26]前記基板の赤外線透過率の極小値における波長と該赤外線のピーク波長との積(α)と、赤外線を照射した時間(t:秒)とした場合、下記式(7)の関係を満たす、前記[14]〜[25]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
0.002≦α/t(μm/s)≦0.2 ・・・(7)
[27]基板と基板上に形成された導電性薄膜とを含む、導電性薄膜積層体の製造方法であって、
導電性薄膜前駆体が、発光材料を含有するものであって、
前記発光材料及び溶媒を含むインクを、基板上又は基板上に形成された導電性薄膜上に塗布し、次いで赤外線で前記基板の温度を150℃以下で加熱する工程を含み、
前記基板の温度を赤外線照射時において、70℃以上、150℃以下での状態で、5秒以上、20分以下、保持することを含む、導電性薄膜積層体の製造方法。
[28]前記導電性薄膜前駆体が、基板の温度が赤外線照射時において、70℃以上、150℃以下で加熱され、前記温度範囲で、一定の温度で保持される時間が、20秒以上、10分以下である、前記[27]に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[29]前記基板を10℃/min以上、250℃/min以下の昇温速度で、赤外線により加熱する、前記[27]または[28]に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[30]インクに含有する溶媒の沸点(t1)と基板温度の最高温度(t2)との差(Δt=t1−t2)が5℃以上である、前記[27]〜[29]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[31]インクに含有する溶媒の沸点が、75℃以上、350℃以下である、前記[27]〜[30]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
[32]前記基板の赤外線透過率の極小値における波長と該赤外線のピーク波長との積(α)と、前記基板の温度が70℃以上での保持時間t(秒)とした場合、下記式(8)の関係を満たす、前記[27]〜[31]のいずれか1つに記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
0.003≦α/t(μm/s)≦0.5 ・・・(8)
[33]前記[1]〜[32]のいずれか1つに記載の方法により得られる導電性薄膜積層体。
[34]前記[33]に記載の導電性薄膜積層体を備えた有機電界発光素子。
[35]前記[34]に記載の有機電界発光素子を備えた有機ELディスプレイ。
[36]前記[34]に記載の有機電界発光素子を備えた有機EL照明。
本発明によれば、導電性薄膜に損傷を与えることなく、短時間の加熱により導電性薄膜積層体を得ることができる。得られた導電性薄膜積層体は、導電性が高く、特に有機電界発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低い素子であるばかりでなく、定電流駆動時の発光輝度低下、電圧上昇、非発光部分(ダークスポット)の発生、短絡欠陥等が抑制される。
図1は、有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。 図2は、実施例8及び比較例6で得られた正孔注入層形成用組成物の初期膜厚と残膜率との関係を示す図である。 図3は、実施例9で得られた正孔注入層形成用組成物の加熱時間と残膜率との関係を示す図である。 図4は、実施例10と比較例7で得られた正孔注入層形成用組成物の初期膜厚と残膜率との関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明の趣旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
本発明は、基板と基板上に形成された導電性薄膜とを含む、導電性薄膜積層体の製造方法であって、前記導電性薄膜は、導電性薄膜前駆体を基板上又は該基板上に形成された導電性薄膜上に塗布し、次いで赤外線で加熱され形成されるものである。
前記基板は、波長2000〜3300nmの範囲に赤外線透過率の極小値を有し、前記赤外線透過率の極小値における波長と該赤外線のピーク波長との積(α)が2μm以上、16μm以下である。
1.基板
本発明において、導電性薄膜積層体に使用される基板は、無機ガラスや各種樹脂を用いることができる。例えば、無アルカリガラス、青板ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等の無機ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、セルロースアセテートプロピオネート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂ガラスが挙げられる。また、金属板、金属箔等も使用することができる。好ましくは無機ガラスである。
基板の厚みは、通常、0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。また、通常、10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下である。
基板の厚さが上記範囲であると、赤外線によって加熱され過ぎた導電性薄膜の熱を基板が取り除き、導電性薄膜の破壊を抑制することができる。また、基板は適度に加熱され、その熱で導電性薄膜が加熱される。つまり、この基板の厚さを持って、導電性薄膜を適度に加熱することができ、導電性薄膜の性能を高めることができる。
2.導電性薄膜(前駆体)
本発明において、導電性薄膜は前記基板上に配置、積層される。導電性薄膜は複数、積層されていてもよい。導電性薄膜としては、導電性があればどのような膜でもかまわないが、通常、10MΩ/□以下であり、好ましくは1MΩ/□以下、さらに好ましくは1000Ω/□以下、特に好ましくは500Ω/□以下である。導電性薄膜の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは、8nm以上、また通常1μm以下、好ましくは800nm以下、さらに好ましくは、500nm以下、特に好ましくは400nm以下である。
導電性薄膜前駆体とは、導電性薄膜を形成するに際し調整される組成物をいう。当該組成物は、導電性材料を含む組成物であり、詳細は後述する。
3.導電性薄膜積層体
本発明において、導電性薄膜積層体は、基板上に導電性薄膜が配置、積層された構造を有する。基板に導電性薄膜を配置、積層する方法としては、基板上に導電性薄膜前駆体、例えば、導電性材料を含む組成物を塗布し、塗布後に赤外線により加熱することにより達成できる。導電性薄膜を積層する場合は、基板上に先に形成された導電性薄膜上に導電性薄膜前駆体塗布し、塗布後に赤外線により加熱する。本発明では、赤外線を使用することにより、短時間で且つ前記効果を有する導電性薄膜積層体の製造が可能となる。また、熱風炉やホットプレートを使用するのに比して、短時間での焼成が可能となり、焼成雰囲気のガスの影響(酸素や水分)やゴミの影響を最小限にできるといった利点も生じる。
4.赤外線加熱
赤外線加熱に際しては、ハロゲンヒーターやセラミックコートしたハロゲンヒーター、セラミックヒーター等が使用できる。ハロゲンヒーターとしては、例えば、ウシオ電機社製(UH−USC、UH−USD、UH−MA1、UH−USF、UH−USP、UH−USPN、およびこれらをセラミックコート(ブラックコート)したハロゲンヒーター)、ヘレウス社製等が挙げられる。遠赤外線ヒーターとしては、例えば、AMK社製(遠赤外線パネル型クリーンヒーター)がある。
加熱方法としては、例えば前記赤外線ヒーターを基板の上部に設置し、赤外線加熱を行う方法が例示できる。
赤外線の加熱に際し、基板の赤外線透過は、2000nm〜3300nmの波長範囲に極小値を持つことが好ましい。また、赤外線透過率について、その上限値は、通常、95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下、特に好ましくは75%以下である。また下限値については、通常、5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。
上記の範囲であると、基板は適度に加熱され、その熱伝導で導電性薄膜前駆体が加熱される。つまりこの基板の厚さを持って、導電性薄膜前駆体を適度に加熱することができ、導電性薄膜の性能を高めることができる。また、導電性薄膜前駆体が加熱されすぎた場合も、適度に熱を逃がす熱浴となることができる。
また、赤外線ヒーターのピーク波長については、その下限値は、通常0.8μm以上、好ましくは0.9μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは1.1μm以上である。またその上限値は、25μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
この範囲であれば、導電性薄膜前駆体は、赤外線を吸収することにより、加熱することができる。また、この範囲にある赤外線ヒーターのピーク波長により、基板は適度に加熱され、その熱を持って導電性薄膜前駆体を加熱することができる。また、導電性薄膜前駆体に有機材料を用いた場合、有機材料が赤外線ヒーターの赤外線を吸収し、赤外線誘導加熱により、導電性薄膜前駆体を加熱することができる。
上記の基板と赤外線との組み合わせにおいては、前述の通り、基板の赤外線透過率が、波長2000〜3300nmの範囲における透過率の極小値をもち、且つその極小値における波長と赤外線ヒーターのピーク波長の積(α)は、その下限値は、通常、2μm以上、好ましくは2.5μm以上、さらに好ましくは、3μm以上である。またその上限値は、通常、16μm以下、好ましくは15.5μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
基板の赤外線透過率の極小値における波長と赤外線ヒーターのピーク波長の積(α)がこの範囲にあることにより、適切に導電性薄膜前駆体を加熱することができ、導電性薄膜の性能を高めることができる。
以下に、基板の赤外線透過率の極小値における波長と赤外線ヒーターのピーク波長の積(α)を、発明を特定するためのパラメータとして用いた理由を以下に述べる。
基板の赤外線吸収における2000〜3300nmの範囲における極小値の波長は、基板を加熱し過ぎず、適切に加熱できるものである。この基板を加熱するための赤外線ヒーターは、その特徴を示す代表的な値として、赤外線ヒーターのピーク波長があげられる。波長とエネルギーとの関係は、反比例の関係にあり、そのため、本パラメータ(α)の値が小さいほど、基板が得られるエネルギーが大きいことを示す。また、パラメータ(α)の値が大きいほど、基板が得るエネルギーが低いことを示す。本発明では、導電性薄膜前駆体を適度に加熱することが必要となるため、基板が適切に加熱され、導電性薄膜が加熱されすぎた場合は、熱浴となり、加熱されにくいときには、基板から熱を導電性薄膜に与えることが必要となる。本パラメータは本発明において、その指標となる。
5.高分子化合物
以下、導電性薄膜に含まれる好ましい化合物として、高分子化合物について説明する。
本発明の高分子化合物は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む。
Figure 0006531796
(式(1)中、Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数4〜60の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、トリフェニレン環、クリセン環、ナフタセン環、ペリレン環、コロネン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の5又は6員環の単環又は2〜5縮合環およびこれらの環が複数個直接結合している環等が挙げられる。ここで、本発明において、遊離原子価とは、有機化学・生化学命名法(上)(改定第2版、南江堂、1992年発行)に記載のとおり、他の遊離原子価と結合を形成できるものを言う。すなわち、例えば、「1個の遊離原子価を有するベンゼン環」はフェニル基のことを言い、「2個の遊離原子価を有するベンゼン環」はフェニレン基のことを言う。
芳香族複素環基としては、例えば、1個又は2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環、トリアジン環等の5又は6員複素環の単環又は2〜4縮合環及びこれらの環が複数個直接結合している環等が挙げられる。
ここで、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基が1個又は2個の遊離原子価を有する縮合環である場合、該縮合している単環の数は、環の安定性が高い点では、少ないことが好ましく、8個以下であることが好ましく、5個以下であることが更に好ましい。一方、下限は、2個である。芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基は、具体的には、溶解性及び耐熱性の点から、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環等の単環;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環等の縮合環、及び、フルオレン環、ビフェニル、ターフェニル等の芳香環が2〜8個連結した芳香族炭化水素環が好ましい。これらのうち、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、フルオレン環、ビフェニル、ターフェニルが、溶解性が高くかつ安定性が高い点で、更に好ましい。
芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、炭素数1〜20の飽和炭化水素基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素環基、炭素数3〜20の芳香族複素環基、炭素数12〜60のジアリールアミノ基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基、シアノ基などが挙げられる。これらのうち、溶解性及び耐熱性の点から、炭素数1〜20の飽和炭化水素基及び炭素数6〜25の芳香族炭化水素環基が好ましい。
具体的には、炭素数1〜20の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさや安価さなどの点から、メチル基、エチル基及びイソプロピル基が好ましく、メチル基及びエチル基が更に好ましい。
炭素数6〜25の1価の芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基;9−フェナンチル基、3−フェナンチル基などのフェナンチル基;1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基などのアントリル基;1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基などのナフタセニル基;1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基などのクリセニル基;1−ピレニル基などのピレニル基;1−トリフェニレニル基などのトリフェニレニル基;1−コロネニル基などのコロネニル基;4−ビフェニル基、3−ビフェニル基のビフェニル基;フルオランテン環を有する基;フルオレン環を有する基;アセナフテン環を有する基及びベンズピレン環等を有する置換基などが挙げられる。これらのうち、化合物の安定性の点からフェニル基、2−ナフチル基及び3−ビフェニル基が好ましく、精製のし易さからフェニル基が特に好ましい。
炭素数3〜20の芳香族複素環基としては、2−チエニル基などのチエニル基;2−フリル基などのフリル基;2−イミダゾリル基などのイミダゾリル基;9−カルバゾリル基などのカルバゾリル基;2−ピリジル基などのピリジル基及び1,3,5−トリアジン−2−イル基などのトリアジニル基等が挙げられる。中でも、カルバゾリル基、特に9−カルバゾリル基が安定性の点から好ましい。
炭素数12〜60のジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−2−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−9−フェナントリル−N−フェニルアミノ基、N−(ビフェニル−4−イル)−N−フェニルアミノ基、ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ基等が挙げられる。中でもジフェニルアミノ基、N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−2−ナフチル−N−フェニルアミノ基が好ましく、特にジフェニルアミノ基が安定性の点で好ましい。
炭素数1〜20のアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びオクタデシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、9−アントラニルオキシ基等のアリールオキシ基及び2−チエニルオキシ基等のヘテロアリールオキシ基を有する置換基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基及びシクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、9−アントラニルチオ基等のアリールチオ基及び2−チエニルチオ基等のヘテロアリールチオ基等が挙げられる。
本発明における高分子化合物が、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基以外の基が結合したアリールアミノ構造を繰り返し単位中に有する場合、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基以外の基としては、炭素数1〜70の脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、鎖式でも環式でもよく、飽和でも不飽和でもよい。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基、オクタデシル基等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさや安価さなどから、メチル基、1,2−エチル基、1,3−プロピル基、1,4−ブチル基、1,5−ペンチル基及び1,8−オクチル基等の炭素数1〜10の基が好ましく、炭素数1〜8の基が更に好ましい。また、合成が容易なことなどから、メチル基、エチル基及びイソプロピル基等の炭素数1〜3の基が特に好ましく、メチル基及びエチル基等の炭素数1〜2の基が最も好ましい。脂肪族炭化水素基は、酸化還元耐久性の点から、飽和炭化水素基が好ましい。
脂肪族不飽和炭化水素基としては、アルケニレン基が好ましく、その具体的な例としては、1,2−ビニレン基、1,3−プロペニレン基、1,2−プロペニレン基及び1,4−ブテニレン基等が挙げられる。これらのうち、分子の平面性向上により共役面が広がり、電荷が非局在化して化合物の安定性が高くなりやすいことから、ビニレン基が特に好ましい。不飽和脂肪族炭化水素基が有する炭素数は、平面性や電荷の広がりの観点から、2以上が好ましく、また、一方、10以下が好ましく、6以下が更に好ましい。
脂肪族炭化水素基が有する炭素数は、溶解性を上げる点では多いことが好ましいが、一方、化合物の安定性や膜密度の観点では少ない方が好ましい。該炭素数は、具体的には、通常1以上、好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、また、一方、通常70以下、好ましく60以下、更に好ましくは36以下である。
本発明における高分子化合物としては、下記式(11)、(12)、(13)、(14)で表される繰り返し単位を有する重合体などの構造がさらに好ましい。
下記式(11)で表される繰り返し単位を有する重合体は、Buchwald−Hartwig反応やUlmann反応などのN−Ar結合を形成する反応によって合成される。
Figure 0006531796
式(11)中、Ar〜Arは、各々独立に、前述と同義の芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、Zは、2価の基を表し、好ましくは、−CR−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SiR−からなる群より選ばれる基を1〜24個連結した基を表す。R〜R、は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、前述と同義の芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、RとR、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。aは、0〜8の整数を表す。なお、aが2〜8の整数である場合、Ar、Zは、各々異なっていてもよい。nは繰り返し単位の繰り返し数を示す。
式(M1−1)〜式(M1−3)中、Ar〜Ar、Z、aは、式(11)中における定義と同義である。bは、0〜8の整数を表す。Xは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(CFSOO−)等のスルホン酸エステル基を示す。
式(M1−1)〜式(M1−3)で表される単量体は、各々独立に、1種類、又は、2種類以上用いてよく、10種類以下であることが好ましい。
なお、式(11)、式(M1−1)〜式(M1−3)中において、Ar〜Ar、Z、a、Xが2以上存在する場合、各々異なっていてもよい。
下記式(12)で表される繰り返し単位を有する重合体は、Yamamoto反応、Negishi反応、Migita−Kosugi−Stile反応、Suzuki−Miyaura反応などのAr−Ar結合を形成する反応によって合成される。
Figure 0006531796
式(12)、式(M2−1)、式(M2−2)中、Ar〜Ar、Z、a、b、X、nは、式(11)、式(M1−1)〜式(M1−3)中における定義と同義である。
式(M2−2)中、Gは、Negishi反応であれば、BrZn−等の置換基を有する亜鉛原子、Migita−Kosugi−Stile反応であれば、(CHSn−等の置換基を有するスズ原子、Suzuki−Miyaura反応であれば、(RO)B−(Rは水素原子又は互いに結合して環を形成してもよいアルキル基)等の置換基を有するホウ素原子を示す。
なお、式(12)、式(M2−1)、式(M2−2)中において、Ar〜Ar、Z、a、b、Xが2以上存在する場合、各々異なっていてもよい。
下記式(13)で表される繰り返し単位を有する重合体は、O−Ar結合やS−Ar結合を形成する反応によって合成される。
Figure 0006531796
式(13)、式(M3−1)、式(M3−2)中、Ar〜Ar、Z、a、b、X、nは、式(11)、式(M1−1)〜式(M1−3)中における定義と同義である。
式(13)、式(M3−2)中、Qは、酸素原子、又は硫黄原子を表す。
なお、式(13)、式(M3−1)、式(M3−2)中において、Ar〜Ar、Z、a、b、Q、Xが2以上存在する場合、各々異なっていてもよい。
下記式(14)で表される繰り返し単位を有する重合体は、エステル結合やアミド結合を形成する反応によって合成される。
Figure 0006531796
式(14)、式(M4−1)、式(M4−2)中、Ar〜Ar、Z、a、b、nは、式(11)、式(M1−1)〜式(M1−3)中における定義と同義である。
式(14)、式(M4−1)、式(M4−2)中、Qはカルボニル基、又はスルホニル基を表し、Qは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR−基(Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、前述と同義の芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表す。)を表し、Xはハロゲン原子を表す。
なお、式(14)、式(M4−1)、式(M4−2)中において、Ar〜Ar、Z、a、b、Q、Qが2以上存在する場合、各々異なっていてもよい。
これらのうち、本発明における高分子化合物としては、式(11)及び式(12)で表される繰り返し単位を有する重合体が好ましく、式(11)で表される繰り返し単位を有する重合体が正孔輸送性及び耐久性の点で更に好ましい。また、式(11)〜(14)において、正孔注入輸送性に優れる点では、aは0が好ましい。また、バンドギャップが広く、正孔輸送性に優れる点では、aは1又は2が好ましく、1が更に好ましい。そして、Zは、耐久性に優れることから、−CR−が好ましい。
また、本発明における高分子化合物として、架橋性基を有さない化合物である場合は、例えば、PEDOT/PSS(Adv. Mater.,2000年、12巻、481ページ)やエメラルジン塩酸塩(J. Phys. Chem.,1990年、94巻、7716頁)等の酸化重合体を用いてもよい。
<不溶化基>
本発明に係る高分子化合物は、不溶化基を有していることが好ましい。不溶化基は、架橋性基または解離基であることが好ましい。3次元的に化学結合することから、不溶化基は架橋性基であることが好ましい。
<架橋性基>
本発明に係る高分子化合物は、架橋性基を有していることが好ましい。
ここで、架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
高分子化合物が架橋性基を有することで、塗布後、これらの架橋性基を用いて、架橋し、導電性薄膜を不溶化することができる。これにより、この導電性薄膜層の上にさらに機能性薄膜を塗布により積層することができる。
架橋性基としては、結合のしやすさから、下記<架橋性基群T>から選ばれる。
<架橋性基群T>
Figure 0006531796
式中、R21〜R25は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。Ar41は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
尚、ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。
架橋性基としてはエポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性基が、反応性が高く有機溶剤に対する架橋が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
架橋性基としてはシンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、ベンゾシクロブテン環などの環化付加反応する基が、電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましく、架橋後の構造の安定性が高い点で、ベンゾシクロブテン環が特に好ましい。
本発明に係る高分子化合物の分子内において、架橋性基は分子内の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に直接結合してもよく、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に結合してもよい。これら2価の基を介する架橋性基、すなわち、架橋性基を含む基の具体例は以下の<架橋性基を含む基群T’>に示す通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<架橋性基を含む基群T’>
Figure 0006531796
Figure 0006531796
本発明における高分子化合物は、下記式(2)からなる繰り返し単位を含むことが好ましい。
Figure 0006531796
式中、pは0〜3の整数を表し、Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Tは架橋性基を表す。
Ar21、Ar22及びAr24に用いることのできる置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基は、前述のArで表される構造と同じである。Ar23、Ar25に用いることのできる置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基は、前述のArで表される構造と同じである。
は上述の架橋性基群T及びT’の中から選ばれる。また、Tは特に、下記式(3)で表される基を含む基が好ましい。
Figure 0006531796
(式(3)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。また、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。)
Ar21〜Ar25が有していてもよい置換基は、前述のArまたはArで表される芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基と同じである。
また、本発明における高分子化合物は、下記式(4)からなる部分構造を含むことが好ましい。
Figure 0006531796
式(4)中、Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香環基を示し、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基を示し、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい芳香環基を示す。
及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。
pは、1〜5の整数を示す。
なお、式(4)中にAr〜Ar、R及びRが複数ある場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、本発明における高分子化合物は、下記式(6)からなる部分構造を含むことが好ましい。
Figure 0006531796
式(6)中、Ar31、Ar33、Ar34及びAr35は、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示し、Ar32は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。
11は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基を示し、R12〜R17は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。
12及びR13は、互いに結合して環を形成してもよい。R14及びR15は、互いに結合して環を形成してもよい。R16及びR17は、互いに結合して環を形成してもよい。
l、m及びnは各々独立に0〜2の整数を示す。
なお、式(6)中にAr31〜Ar35またはR12〜R17が複数ある場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
Ar31、Ar33、Ar34、Ar35及びAr、Arに用いることのできる置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基は、前述のArに用いることのできる2価の芳香族炭化水素基と同じである。
Ar32、Arに用いることのできる置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基は、前述のArに用いることのできる芳香族炭化水素基と同じである。
12〜R17及び、R、Rは、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、互いに結合して環を形成してもよい。R11、R12〜R17及び、R、Rは、溶解性の点から、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
Ar31、Ar33、Ar34、Ar35、Ar、Ar、R12〜R17、R、Rが有していてもよい置換基は、前述のArまたはArで表される芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基または、前記架橋性基が挙げられる。
<高分子化合物の分子量>
本発明における高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常2,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上である。
また、高分子化合物の数平均分子量(Mn)は、通常3,000以上、好ましくは6,000以上であり、通常1,000,000以下、好ましくは500,000以下である。重量平均分子量又は数平均分子量がこの範囲の下限値を下回ると、架橋層の有機溶剤に対する不溶性が低減して、積層できなくなる可能性があり、ガラス転移温度が低下して耐熱性が損なわれる可能性がある。また、この範囲の上限値を上回ると架橋前においても有機溶剤に溶解せずに、平坦な膜が得られない可能性がある。
さらに、本発明における高分子化合物の分散度(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。高分子化合物の分散度がこの範囲の上限値を上回ると精製が困難となったり、有機溶剤に対する溶解性が低下したり、電荷輸送能が低下したりする可能性がある。なお、分散度は、理想的には1.0である。
通常、この重量平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量が算出される。
以下、上述した高分子化合物を含む導電性薄膜前駆体の加熱方法について説明する。
導電性薄膜前駆体は、前述した高分子化合物などの導電性薄膜形成材料及び必要に応じてその他の成分を、溶解又は分散可能な溶媒と混合することにより調製される。
導電性薄膜前駆体に含有される溶媒としては、特に制限されるものではないが、前記高分子化合物を通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1.0重量%以上溶解する溶媒である。
溶媒の沸点は、通常110℃以上、好ましくは140℃以上、さらに好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶媒の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶媒の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
導電性薄膜前駆体に含有される溶媒としては、上記の要求特性を満たすものであればよく、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、含ハロゲン有機溶媒、アミド系溶媒などを用いることができ、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が溶解性が高くかつ残留溶媒の悪影響が少なく好ましい。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル及び酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル及び安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イソプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン及びメチルナフタレン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒などが挙げられる。
含ハロゲン有機溶媒としては、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
また、これらの他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
これらの溶媒は、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
導電性薄膜前駆体に含まれる溶媒の量は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上であり、通常99.99重量%以下である。
導電性薄膜前駆体に含まれる導電性薄膜形成用材料の量は、該組成物の粘度が高くなる点では多い方が好ましいが、一方で、溶解性の点では少ない方が好ましい。そこで、具体的には、導電性薄膜形成用に含まれる導電性薄膜形成用材料の量は、通常0.01重量%以上であり、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることが更に好ましく、また、一方、通常50重量%以下であり、40重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましい。尚、導電性薄膜形成用組成物には、導電性薄膜形成材料が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
(加熱条件)
導電性薄膜前駆体の赤外線での加熱は、赤外線照射における基板の温度の下限値が、通常150℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。またその上限値は、通常300℃以下、好ましくは290℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
基板の温度が上述の範囲であれば、導電性薄膜が必要以上に熱せられず、さらに導電性薄膜が赤外線により、加熱されにくい材料である場合には、基板から熱を導電性薄膜に与えることができる。
さらに、上述の範囲であれば、塗布で導電性薄膜を形成した場合は、溶媒を除去することができ、さらに、層内の密度を上げ、さらには、層間の密着性を高めることができ、導電性薄膜の持つ特性を上げることができる。
さらに上述温度範囲での保持時間は、その下限値は、通常5秒以上、好ましくは20秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。またその上限値は、通常30分以下、好ましくは25分以下、さらに好ましくは20分以下である。
本範囲とすることにより、導電性薄膜が必要以上に熱せられず、さらに導電性薄膜が赤外線により、加熱されにくい材料である場合には、基板から熱を導電性薄膜に与えることができる。
さらに、上述の範囲であれば、塗布で導電性薄膜を形成した場合は、溶媒を除去することができ、層内の均一性・膜強度を上げ、さらには、層間の密着性を高めることができ、導電性薄膜の持つ特性を上げることができる。
そして、上述の範囲であれば、塗布で導電性薄膜を形成した場合、本発明に係る高分子化合物が架橋性基を有している場合、架橋性基によって架橋し、不溶化することができて好ましい。
また、赤外線照射における基板の温度が150℃以上、300℃以下の温度範囲で、一定の温度で保持される時間は、その下限値は、通常20秒以上、好ましくは30秒以上、さらに好ましくは1分以上である。またその上限値は、通常15分以下、好ましくは8分以下、さらに好ましくは5分以下である。
この範囲内であると、導電性薄膜が求める特性を出せない状態で準安定な状態を形成することを妨げ、安定に導電性薄膜を形成することができる。具体的には、膜の成分が相分離を引き起こすことを妨げることや、相分離に基づく表面構造のラフネスが増大することを抑えることができる。
なお、上記「一定の温度で保持」とは、±5℃の範囲内の温度で保持されていることをいう。
導電性薄膜積層体における基板の昇温速度は、その下限値は、通常10℃/min以上、好ましくは20℃/min以上、より好ましくは30℃/min以上である。またその上限値は、通常250℃/min以下、好ましくは200℃/min以下、より好ましくは150℃/min以下である。
またこの昇温速度は、30秒間での測定とすることとする。
この昇温速度範囲とすることにより、導電性薄膜の急激な収縮を抑えるとともに、導電性薄膜を効果的に加熱でき、生産性を上げることができる。
また、基板の赤外線透過率が、波長2000〜3300nmの範囲における透過率の極小値をもち、且つその極小値における波長と赤外線ヒーターのピーク波長の積(α)を、基板の温度が150℃以上での保持時間(t)で除した値(α/t)は、以下の式(7)の関係を満たす。
0.002≦α/t(μm/s)≦0.2 ・・・(7)
α/tの下限値は、通常0.002μm/s以上、好ましくは0.005μm/s以上、より好ましくは0.01μm/s以上、さらに好ましくは0.02μm/s以上である。またその上限値は、通常0.2μm/s以下、好ましくは0.1μm/s以下、より好ましくは0.05μm/s以下、さらに好ましくは0.04μm/s以下である。
α/tがこの範囲であると、赤外線によって加熱され過ぎた導電性薄膜の熱を基板が取り除き、導電性薄膜の破壊を抑制することができる。また、導電性薄膜が赤外線による加熱が弱い場合にも、基板は適度に加熱されその熱を持って薄膜を加熱される。つまり、α/tがこの範囲にあることにより、導電性薄膜を適切に加熱することができ、導電性薄膜の性能を高めることができる。
このパラメータα/tについて以下に説明する。パラメータαは上述の通り、基板の加熱されやすさと反比例の関係にある。つまり、αが小さいとき、基板が加熱されやすく、導電性薄膜を加熱するには、保持時間tは短くてすみ、αが大きいとき、基板は加熱されにくく、時間tは長くなる。
そのため、αをtで割ることにより、本発明による導電性薄膜積層体を製造する上で、適切な加熱条件を設定でき、その範囲は上述の通りとなる。
(膜厚について)
ここで、上記高分子化合物を含む導電性薄膜であって、導電性薄膜前駆体として高分子化合物に架橋基を含む場合、厚膜の方が不溶化しやすいことを見出した。厚膜とは形成される膜の厚みが、通常50nm以上、好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは120nm以上、通常1μm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下である膜厚をいう。
赤外線で前記導電性薄膜前駆体を加熱する場合、赤外誘導加熱により、前記高分子化合物を構成する分子が振動する。しかしながら、基板や透明電極上の正孔輸送性材料は、その表面での分子の吸着により、分子運動が束縛されるため、架橋反応等の不溶化が進行しにくくなる。一方、導電性薄膜の膜厚が50nm以上であれば、十分に分子運動することができ、架橋基同士の衝突確率をあげ、架橋反応を進行させることができる。さらに、導電性薄膜の膜厚が50nm以上あれば、赤外誘導加熱による熱が伝熱により、基板に熱を奪われ過ぎることなく、その熱が高分子化合物の架橋反応の促進に寄与することができる。
また、導電性薄膜を厚膜とする別の利点は、リーク源となる異物の被覆率を高めることも挙げられる。さらには、光の干渉に基づく有機電界発光素子の光学設計の自由度を上げることも可能である。
一方、導電性薄膜の膜厚を1μm以下とすることにより、溶媒の乾燥の時間を短縮することができる、また高分子化合物の使用量が制限できコストを抑えることができる。
膜厚が50nm以上である前記導電性薄膜の加熱に際し、赤外線加熱における基板の温度の下限値は、通常70℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。またその上限値は、通常300℃以下、好ましくは290℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
基板の温度が上述の範囲であれば、導電性薄膜が必要以上に熱せられず、さらに赤外線により、加熱されにくい材料である場合には、基板から熱を導電性薄膜に与えることができる。
さらに、上述の範囲であれば、塗布で導電性薄膜を形成した場合は、溶媒を除去することができ、さらに、層内の密度を上げ、さらには、層間の密着性を向上することができ、導電性薄膜の持つ特性を向上することができる。
さらに上述温度範囲での保持時間は、その下限値は、通常5秒以上、好ましくは20秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。またその上限値は、通常30分以下、好ましくは25分以下、さらに好ましくは20分以下である。
本範囲とすることにより、導電性薄膜が必要以上に熱せられず、さらに赤外線により加熱されにくい材料である場合には、基板から熱を導電性薄膜に与えることができる。
さらに、上述の範囲であれば、塗布で導電性薄膜を形成した場合は、溶媒を除去することができ、層内の均一性・膜強度を上げ、さらには、層間の密着性を高めることができ、導電性薄膜の持つ特性を上げることができる。
そして、上述の範囲であれば、塗布で導電性薄膜を形成した場合、本発明に係る高分子化合物が架橋性基を有している場合、架橋性基によって架橋し、不溶化することができて好ましい。
また、基板の温度が70℃以上、300℃以下の温度範囲で、一定の温度で保持される時間が、その下限値は、通常20秒以上、好ましくは、30秒以上、さらに好ましくは1分以上である。またその上限値は、通常15分以下、好ましくは、8分以下、さらに好ましくは5分以下である。
この範囲内であると、導電性薄膜が求める特性を出せない状態で準安定な状態を形成することを妨げ、安定に正孔輸送性材料層を形成することができる。具体的には、膜の成分が相分離を引き起こすことを妨げることや、相分離に基づく表面構造のラフネスが増大することを抑えることができる。
なお、上記「一定の温度で保持」とは、±5℃の範囲内の温度で保持されていることをいう。
基板の昇温速度は、その下限値は、通常10℃/min以上、好ましくは20℃/min以上、より好ましくは30℃/min以上である。またその上限値は、通常250℃/min以下、好ましくは200℃/min以下、より好ましくは150℃/min以下である。
またこの昇温速度は、30秒間での測定とすることとする。
この昇温速度範囲とすることにより、導電性薄膜が急激に収縮することなく、導電性薄膜を効果的に加熱でき、生産性を上げることができる。
また、基板の赤外線透過率が、波長2000〜3300nmの範囲における透過率の極小値をもち、且つその極小値における波長と赤外線ヒーターのピーク波長の積(α)を、赤外線を照射した時間(t)で除した値(α/t)は、その下限値は、通常0.002μm/s以上、好ましくは0.005μm/s以上、より好ましくは0.01μm/s以上、さらに好ましくは0.02μm/s以上である。
またその上限値は、通常0.2μm/s以下、好ましくは、0.15μm/s以下、より好ましくは0.10μm/s以下、さらに好ましくは0.08μm/s以下である。
α/tがこの範囲であると、赤外線によって加熱され過ぎた導電性薄膜の熱を基板が取り除き、導電性薄膜の破壊を抑制することができる。また、導電性薄膜が赤外線による加熱が弱い場合にも、基板は適度に加熱されその熱を持って導電性薄膜を加熱する。つまり、α/tがこの範囲にあることにより、導電性薄膜を適切に加熱することができ、導電性薄膜の性能を高めることができる。
(成膜方法)
本発明における導電性薄膜前駆体組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法及びフレキソ印刷法等の方法が採用可能である。
成膜時の温度は、組成物中に生じる結晶による膜欠損が起こり難い点等から10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。成膜時の相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
本発明に係る赤外線で加熱する工程の前に、加熱や減圧乾燥等により塗布膜を乾燥して乾燥膜を得てもよい。加熱手段としては、ホットプレート、クリーンオーブン等が挙げられる。具体的には、例えば、塗布膜が形成された基板をホットプレート上に載せるか、または、オーブン内で加熱する、などの手段で加熱し、乾燥膜を得ることが出来る。減圧乾燥では、塗布膜が形成された基板を減圧装置に入れて減圧することで乾燥膜を得ることが出来る。赤外線加熱後の導電性薄膜表面がより平坦となることから、本発明に係る赤外線で加熱する工程の前に塗布膜を乾燥して乾燥膜とすることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、導電性薄膜に必要以上の熱を与えることなく導電性薄膜積層体が製造可能となる。一般に高分子材料は、通常溶液中で、糸まり状態(コイル)を形成している。しかし、高分子材料のガラス転移温度もしくは軟化温度以上に加熱し、溶媒をキャストすると、少しシュリンクした形となる。このような薄膜を十分な時間加熱すると、糸まりが広がり、お互いが絡み合ったランダムな状態となる。本発明では、加熱時間を短くしているので、このような糸まり状態を保持していると考えられる。その構造を判別する方法は、適宜選択できるが、薄膜層の構造を測定するには、微小角X線散乱(GI−SAXS)での測定が好ましい。この構造は、通常1〜50nm、好ましくは2〜40nm、より好ましくは3〜30nmである。この範囲外であると導電パスが十分に得られない恐れがある。
上記のごとく形成された高分子化合物を含む導電性薄膜は、後述する有機電界発光素子においては正孔注入層又は正孔輸送層として設けられることが好適である。次に、導電性薄膜積層体の好適な例として、有機電界発光素子について説明する。
6.有機電界発光素子
有機電界発光素子は、陽極、陰極、及びこれらの間に導電性薄膜として少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子である。図1は有機電界発光素子に好適な構造例を示す断面の模式図であり、図1において、符号1は基板、符号2は陽極、符号3は正孔注入層、符号4は正孔輸送層、符号5は発光層、符号6は正孔阻止層、符号7は電子輸送層、符号8は電子注入層、符号9は陰極を各々表す。図1において、本発明の導電性薄膜層に該当する層は、符号3〜8である。これらの導電性薄膜層の少なくとも1層は、湿式成膜法により形成され、さらに赤外線加熱によって層が形成されることが好ましい。次に導電性薄膜として、発光層について説明する。
[発光層]
(発光層の形成方法)
発光層は、発光材料及び溶媒を含む発光層組成物を塗布し、焼成を行うことにより形成される。
(発光材料)
発光材料としては、公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよい。詳細は後述する。
(発光層組成物)
発光層組成物には少なくとも発光材料及び溶媒が含まれる。溶媒としては、前述した導電性薄膜形成用組成物に含有される溶媒と同様の溶媒が使用できる。組成物中に含まれる発光材料は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上含有されていることがよい。また、発光材料が通常35重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有されていることがよい。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにするのが好ましい。
また、溶媒の沸点は通常75℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、通常350℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは275℃以下、さらに好ましくは、260℃以下である。
この下限値以上であれば、発光層の加熱・焼成を行う前に、塗布膜が乾燥によって、膜が均一でなくなってしまうおそれがない。また、この上限値以下であれば、溶媒を十分に除去することができ、有機電界発光層の所望の特性を得ることができる。また溶媒の除去も短時間で達成でき、生産性が向上する。前記発光層組成物の塗布方法としては、前述した導電性薄膜形成用組成物の塗布方法を使用することができる。
(赤外線加熱)
上述のごとく塗布された発光層組成物は赤外線加熱により焼成される。赤外線加熱の条件としては、基板の下限温度が通常70℃以上、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上であり、上限温度は、通常150℃以下、好ましくは、140℃以下、より好ましくは、130℃以下である。この温度範囲で通常5秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは、20秒以上、特に好ましくは30秒以上、通常20分以下、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、さらに好ましくは8分以下で保持する。
この温度及び保持時間の下限値以上であると、十分に緻密な膜を形成することができ、前記発光層組成物を先に形成された正孔注入層や正孔輸送層に塗布した場合、十分に溶媒が揮発し、溶媒が残留することなく、所望の素子特性実現することができる。
また、上記温度及び保持時間の上限値以下であると、赤外線の吸収により、発光層を破壊するおそれもなく、そのため素子特性を維持することができる。
さらには、基板の温度が前記の温度範囲で温度が一定に保持される時間が、通常20秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上であり、通常10分以下、好ましくは8分以下、より好ましくは5分以下である。
上記上限時間以下で温度を保持すると、準安定な状態を形成することなく所望の特性を発揮することができる。通常、発光層はホストやドーパントなどの混合物から形成されるため、定常温度で長時間保持されると、膜中において、発光層成分が相分離を引き起こしたり、表面構造のラフネスが大きくなってしまう虞があるからである。また、上記下限時間以上で温度を保持すると、発光層の状態が制御され、発光を再現することができる。
ここで、「一定温度」とは、±5℃の範囲に温度は保持されている状態をいう。
基板の昇温速度は、通常10℃/min以上、好ましくは20℃/min以上、より好ましくは、30℃/min以上であり、通常50℃/min以下、好ましくは200℃/min以下、より好ましくは150℃/min以下である。
上記昇温速度以下であると急激な温度上昇もなく、発光層は破壊されることはない。一方この昇温速度以上であると、必要な特性を出すための温度に達するまでに時間がかからず、生産性の観点から好ましい。なお、昇温速度は、30秒間での測定とする。
通常、発光層には、ホストとドーパントを含み、その量比は精密な制御が必要である。蒸着法ではそれぞれの蒸着速度を長時間にわたって一定に保つことが困難であり、量比の誤差が大きい。湿式成膜法では、発光材料及び溶媒を含むインクを予め材料を秤量して精密に調整するため、量比変化が無く、素子のばらつきを抑えることができる点で有効な方法である。
また、蒸着法では、一度、成膜装置の蒸着源に投入された材料は、長時間にわたって加熱されつづけ、大型装置になるほどその時間が増大し、材料劣化の問題が顕在化してくる。
湿式成膜法では、乾燥時のみ加熱されるため、成膜装置に投入した材料が長期にわたって劣化せず安定に存在し、素子の品質を一定に保つことができる。さらに、加熱に際して、本発明の赤外線を用いる加熱によって、加熱時間を短縮することができる点で有用な方法となりうる。なお、加熱手段として赤外線を用いることにより、熱風炉やホットプレートを用いるよりも、比較的短時間での焼成が可能となり、そのため、酸素や水分といった焼成雰囲気のガスの影響やゴミの影響を最小限にできるといった利点も挙げられる。
発光層を形成する前に、少なくとも一つの有機層、具体的には正孔注入層、正孔輸送層が、前記発光層の焼成温度よりも、高い温度で赤外線により焼成されていることが好ましい。
これは、前記発光層の加熱により、正孔注入層や正孔輸送層から脱ガスが発生し、発光層を汚染する可能性があるためである。さらに、正孔注入層や正孔輸送層を赤外線以外の方法で加熱する場合、表面にスキン層ができて、残留溶媒などを正孔注入層や正孔輸送層に閉じ込める可能性があるためである。これは、赤外線加熱による分子振動がおこり、残留溶媒を取り除きやすくまたスキン層が分子振動のために形成されにくい、または形成されても、溶媒が取り除きやすいためである。
(基板と赤外線の関係)
赤外線加熱に際し、使用できるヒーターの種類、基板の赤外線透過の極小値、赤外線透過率、赤外線ヒーターのピーク波長及び基板の赤外線透過率の極小値における波長と赤外線ピーターのピーク波長の積(α)は、前述した導電性薄膜の赤外線加熱と同様である。
また、基板の赤外透過率が、波長2000〜3300nmの範囲における透過率の極小値をもち、且つその極小値における波長と赤外線ヒーターのピーク波長の積(α)を、基板の温度が70℃以上150℃以下での保持時間(t)で除した値(α/t)は、以下の式(8)の関係を満たす。
0.003≦α/t(μm/s)≦0.5 ・・・(8)
α/tの下限値は、通常0.003μm/s以上、好ましくは、0.004μm/s以上、より好ましくは0.005μm/s以上、さらに好ましくは、0.008μm/s以上である。またその上限値は、通常0.5μm/s以下、好ましくは0.4μm/s以下、さらに好ましくは0.3μm/s以下、特に好ましくは0.2μm/s以下である。
α/tがこの範囲であると、赤外線によって加熱され過ぎた発光層の熱を基板が取り除き、発光層の破壊を抑制することができる。また発光層が赤外線による加熱が弱い場合にも、基板は適度に加熱され、その熱を持って、発光層を加熱する。つまり、α/tがこの範囲にあることにより、発光層を適切に加熱することができ、有機電界発光素子の性能を高めることができる。
(加熱温度と溶媒の関係)
発光層を塗布によって形成する場合、発光層組成物に用いる溶媒の沸点(t1)と基板温度の最高温度(t2)との差(Δt=t1−t2)が通常5℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、通常230℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは185℃以下、特に好ましくは180℃以下である。
赤外線で加熱を行う場合、前記上限値以下であると、赤外電磁誘導加熱により、溶媒が急激に蒸発又は沸騰することで、薄膜である発光層を破壊するおそれがない。この下限値以上であると、溶媒を十分に除去することができ、有機電界発光層の所望の特性を得ることができる。また溶媒の除去も短時間で達成でき、生産性が向上する。
なお発光層の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
(発光材料)
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、クリセン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
高分子系の発光材料としては、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(1,4−ベンゾ−2{2,1’−3}−トリアゾール)]などのポリフルオレン系材料、ポリ[2−メトキシ−5−(2−ヘチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]などのポリフェニレンビニレン系材料が挙げられる。
また、前述の高分子化合物を発光材料として用いることもできる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、あるいはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。また、重い元素であるIrなどを有する金属錯体化合物は耐熱性に優れるため、さらに好ましい。
特に、燐光発光材料の燐光性有機金属錯体としては、好ましくは下記式(III)又は式(IV)で表される化合物が挙げられる。
ML(q−j)L’j ・・・(III)
(式(III)中、Mは金属を表し、qは上記金属の価数を表す。また、L及びL’は二座配位子を表す。jは0、1又は2の数を表す。LまたはL’が複数ある場合、複数のLまたは複数のL’はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
Figure 0006531796
(式(IV)中、Mは金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92〜R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。)
以下、まず、式(III)で表される化合物について説明する。
式(III)中、Mは周期表第7〜11族から選ばれる金属であり、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられ、中でもより好ましくはイリジウム又は白金であり、安定性が高い点および発光効率が高い点から最も好ましくはイリジウムである。
また、式(III)中、二座配位子Lは、以下の部分構造を有する配位子を示す。
Figure 0006531796
上記Lの部分構造において、環A1は、置換基を有していてもよい、芳香環基を表わす。本発明における芳香環基は、芳香族炭化水素環基でもよいし、芳香族複素環基でもよい。
該芳香族炭化水素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環などが挙げられる。
該芳香族炭化水素環基の具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
該芳香族複素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環などが挙げられる。
具体例としては、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
また、上記Lの部分構造において、環A2は、置換基を有していてもよい、含窒素芳香族複素環基を表す。
該含窒素芳香族複素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環などが挙げられる。
具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環などが挙げられる。
環A1又は環A2がそれぞれ有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;アルコキシ基;アラルキル基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基;芳香族炭化水素環基等が挙げられる。また、環A1が含窒素芳香族複素環基である場合及び環A2は、芳香族炭化水素環基を置換基として有していてもよい。
また、式(III)中、二座配位子L’は、以下の部分構造を有する配位子を示す。但し、以下の式において、「Ph」はフェニル基を表す。
Figure 0006531796
中でも、L’としては、錯体の安定性の観点から、以下に挙げる配位子が好ましい。
Figure 0006531796
式(III)で表される化合物として、更に好ましくは、下記式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006531796
(式(IIIa)中、Mは、Mと同様の金属を表し、wは、上記金属の価数を表し、環A1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表し、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。環A1または環A2が複数ある場合、複数の環A1または環A2はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
Figure 0006531796
(式(IIIb)中、Mは、Mと同様の金属を表し、w−1は、上記金属の価数を表し、環A1は、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。環A1または環A2が複数ある場合、複数の環A1または環A2はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
Figure 0006531796
(式(IIIc)中、Mは、Mと同様の金属を表し、wは、上記金属の価数を表し、jは、0、1又は2を表し、環A1及び環A1’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2及び環A2’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。環A1、環A1’、環A2または環A2’が複数ある場合、複数の環A1、環A1’、環A2または環A2’はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
上記式(IIIa)〜(IIIc)において、環A1及び環A1’の芳香環基の好ましい例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
上記式(IIIa)〜(IIIc)において、環A2及び環A2’の含窒素芳香族複素環基の好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
上記式(IIIa)〜(IIIc)における環A1及び環A1’の芳香環基、環A2及び環A2’の含窒素芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子;炭素数1〜12のアルキル基;炭素数1〜12のアルケニル基;炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基;炭素数1〜12のアルコキシ基;炭素数1〜24のアラルキル基;炭素数1〜12のアリールオキシ基;炭素数1〜24のジアルキルアミノ基;炭素数8〜24のジアリールアミノ基;5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。炭素数8〜24のジアリールアミノ基、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基は、その基を構成するアリール部位にさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜24のアラルキル基、炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基が挙げられる。
なお、これら置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、又は、環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基とが結合することにより、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
中でも、環A1、環A1’、環A2及び環A2’の置換基として、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜24のアラルキル基、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜24のアラルキル基、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基であり、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基は、その基を構成するアリール部位にさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜24のアラルキル基、炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基が挙げられる。
また、式(IIIa)〜(IIIc)におけるM〜Mの好ましい例としては、Mと同様である。
上記式(III)及び(IIIa)〜(IIIc)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
Figure 0006531796
Figure 0006531796
Figure 0006531796
Figure 0006531796
上記式(III)で表される有機金属錯体の中でも、特に、配位子L及び/又はL’として2−アリールピリジン系配位子、即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、及び、これに任意の基が縮合してなるものを有する化合物が好ましい。
また、国際公開第2005/019373号に記載の化合物も、発光材料として使用することが可能である。
次に、式(IV)で表される化合物について説明する。
式(IV)中、Mは金属を表す。具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属などが挙げられる。Mとしては、中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、式(IV)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香環基を表す。
更に、Tが炭素原子の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93として挙げたものと同様の置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。
また、R92〜R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、その種類に特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。
更に、R92〜R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
式(IV)で表される有機金属錯体の具体例(T−1、T−10〜T−15)を以下に示すが、下記の例示物に限定されるものではない。また、以下の化学式において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
Figure 0006531796
これらの発光材料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよいが、本発明において、発光層内には5種類以上の電荷輸送材料と発光材料が含まれる。
<分子量>
本発明における発光材料の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。本発明における発光材料の分子量は、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、本発明における発光材料の分子量は、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上である。
発光材料の分子量は、ガラス転移温度や融点、分解温度等が高く、発光層材料及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーションなどに起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇などが起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易で、溶剤に溶解させやすい点では小さいことが好ましい。
また発光層には、上述の発光材料に加えて正孔輸送材料や電子輸送材料などのホスト材料が含まれることが好ましい。
低分子系の正孔輸送材料の例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(日本国特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
低分子系の電子輸送材料の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)等がある。
その他のホスト材料の具体例としては、日本国特開2007−067383号公報、日本国特開2007−88433号公報、日本国特開2007−110093号公報に記載のものが挙げられる。
<一般式(A)>
Figure 0006531796
(上記一般式(A)において、Hetero構造は下記構造式(A−1)、(A−2)及び(A−3)のいずれかを表し、Xa、Xa、Ya、Ya、Za及びZaは各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を表し、Xa、Ya及びZaは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。)
Figure 0006531796
<一般式(E)>
Figure 0006531796
(上記一般式(E)において、Xe、Xe、Ye、Ye、Ze及びZeは各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を表し、Xe、Ye及びZeは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。)
上記一般式(A)におけるXa、Xa、Ya、Ya、Za及びZa、上記一般式(E)におけるXe、Xe、Ye、Ye、Ze及びZeは、いずれも各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。中でも、化合物の安定性の点からは好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である。
置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を形成する芳香族炭化水素環としては、6員環の単環、又は2〜5縮合環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環が挙げられる。中でも、化合物の安定性や溶解性の点から、好ましくはベンゼン環である。
上記一般式(A)におけるXa、Xa、Ya、Ya、Za及びZa、の少なくとも1つが1,2−フェニレン基または、1,3−フェニレン基であることが好ましく、1,3−フェニレン基であることがより好ましく、さらに、Xa、Xaのいずれか一方、Ya、Yaのいずれか一方、またはZa、Zaのいずれか一方の内、少なくとも2つが1,2−フェニレン基または、1,3−フェニレン基であることが特に好ましく、1,3−フェニレン基であることが最も好ましい。1,2−フェニレン基または、1,3−フェニレン基で連結されることにより、分子構造の立体性が高くなり、溶媒に対する溶解性が高くなるとともに非共役結合であるため分子のエネルギーギャップが大きくなり好ましく、特に、励起3重項エネルギーが高くなることから、燐光発光材料のHOST材料として好ましい。さらに、1,3−フェニレン基であることが、化合物の安定性および合成のしやすさからより好ましい。
同様に、上記一般式(E)におけるXe、Xe、Ye、Ye、Ze及びZe、の少なくとも1つが1,2−フェニレン基または、1,3−フェニレン基であることが好ましく、1,3−フェニレン基であることがより好ましく、さらに、Xe、Xeのいずれか一方、Ye、Yeのいずれか一方、またはZe、Zeのいずれか一方の内、少なくとも2つが1,2−フェニレン基または、1,3−フェニレン基であることが特に好ましく、1,3−フェニレン基であることが最も好ましい。
置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を形成する芳香族複素環としては、5または6員環の単環、或いはこれらの2〜5縮合環が好ましい。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環が挙げられる。中でも、化合物の安定性や電荷輸送性が高い点からは、好ましくはカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環であり、電子輸送性が高い点からは、好ましくはピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環である。
また上記一般式(A)におけるXa、Ya及びZa、上記一般式(E)におけるXe、Ye及びZeは、いずれも各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。
置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を形成する芳香族炭化水素環としては、6員環の単環、又は2〜5縮合環が好ましい。具体的には一般式(A)におけるXaなどの例として前掲したものと同様の環が挙げられる。中でも化合物の安定性の点から、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環またはフェナントレン環である。
置換基を有していてもよい炭素数3〜30の芳香族複素環基を形成する芳香族複素環としては、5または6員環の単環、或いはこれらの2〜5縮合環が好ましい。具体的には、一般式(A)におけるXaなどの例として前掲したものと同様の環が挙げられる。中でも化合物の安定性や電荷輸送性が高い点から、好ましくはカルバゾール環、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環である。
上記一般式(A)におけるHetero構造の3つの置換基である、−Xa−Xa−Xa、−Ya−Ya−Ya、および、−Za−Za−Zaは、同一であっても異なっていてもよい。化合物の対象性を落として溶媒に対する溶解性を高める点から、少なくとも一つは異なることが好ましい。
上記一般式(E)におけるNの3つの置換基である、−Xe−Xe−Xe、−Ye−Ye−Ye、および、−Ze−Ze−Zeは、同一であっても異なっていてもよい。化合物の対象性を落として溶媒に対する溶解性を高める点から、少なくとも一つは異なることが好ましい。
芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、炭素数1〜20の飽和炭化水素基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基、炭素数12〜60のジアリールアミノ基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基、シアノ基などが挙げられる。これらのうち、溶解性及び耐熱性の点から、炭素数1〜20の飽和炭化水素基及び炭素数6〜25の芳香族炭化水素基が好ましい。また、化合物の安定性の点からは置換基を有さないことも好ましい。
具体的には、炭素数1〜20の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさや安価さなどの点から、メチル基、エチル基及びイソプロピル基が好ましく、メチル基及びエチル基が更に好ましい。
炭素数6〜25の1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基;9−フェナンチル基、3−フェナンチル基などのフェナンチル基;1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基などのアントリル基;1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基などのナフタセニル基;1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基などのクリセニル基;1−ピレニル基などのピレニル基;1−トリフェニレニル基などのトリフェニレニル基;1−コロネニル基などのコロネニル基;4−ビフェニル基、3−ビフェニル基のビフェニル基;フルオランテン環を有する基;フルオレン環を有する基;アセナフテン環を有する基及びベンズピレン環等を有する置換基などが挙げられる。これらのうち、化合物の安定性の点からフェニル基、2−ナフチル基及び3−ビフェニル基が好ましく、精製のし易さからフェニル基が特に好ましい。
炭素数3〜20の芳香族複素環基としては、2−チエニル基などのチエニル基;2−フリル基などのフリル基;2−イミダゾリル基などのイミダゾリル基;9−カルバゾリル基などのカルバゾリル基;2−ピリジル基などのピリジル基及び1,3,5−トリアジン−2−イル基などのトリアジニル基等が挙げられる。中でも、カルバゾリル基、特に9−カルバゾリル基が安定性の点から好ましい。
炭素数12〜60のジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−2−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−9−フェナントリル−N−フェニルアミノ基、N−(ビフェニル−4−イル)−N−フェニルアミノ基、ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ基等が挙げられる。中でもジフェニルアミノ基、N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−2−ナフチル−N−フェニルアミノ基が好ましく、特にジフェニルアミノ基が安定性の点で好ましい。
炭素数1〜20のアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びオクタデシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、9−アントラニルオキシ基等のアリールオキシ基及び2−チエニルオキシ基等のヘテロアリールオキシ基を有する置換基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基及びシクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、9−アントラニルチオ基等のアリールチオ基及び2−チエニルチオ基等のヘテロアリールチオ基等が挙げられる。
以上、発光層について説明したが、以下ではその他の構成について説明する。
[基板]
基板については、前述した基板を使用することができる。この中で好ましくは、無機ガラスである。
[陽極]
陽極は、発光層側の層(正孔注入層又は発光層など)への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。更に、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成し、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Applied Physics Letters,1992年,Vol.60,pp.2711参照)。陽極は異なる物質で積層して形成することも可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。不透明でよい場合、陽極は基板と同一でもよい。また、更には上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
なお、陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理することが好ましい。
[正孔注入層]
正孔注入層は、陽極から発光層へ向かって正孔を注入・輸送する層である。
正孔注入層を形成する材料としては、正孔輸送能が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔注入層の材料としては、前述した高分子化合物の他、従来、正孔注入層の構成材料として用いられている材料が使用できる。例えば、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
また、例えばポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共高分子化合物、ランダム高分子化合物、ブロック高分子化合物又はグラフト共高分子化合物のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも正孔輸送能が高いことからポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体は、下記式(2)からなる繰り返し単位を含むことが好ましい。
Figure 0006531796
(式中、pは0〜3の整数を表し、Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Tは上述の架橋性基群T及びT’の中から選ばれるが、特に、下記式(3)で表される基を含む基が好ましい。
Figure 0006531796
(式(3)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。また、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。)
また、正孔注入層が本発明における導電性薄膜であることがさらに好ましい。
<正孔注入層形成用組成物>
正孔注入層を湿式成膜法により形成する場合、正孔注入層を構成する正孔輸送性化合物、及び必要に応じて、その他の成分を適切な溶媒と混合して成膜用の組成物(正孔注入層の電荷輸送層形成用組成物)を調製して用いる。
正孔注入層形成用組成物における正孔輸送性化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。尚、正孔注入層形成用組成物には、正孔輸送性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい
本発明にかかる、正孔注入層形成用組成物は、通常溶媒を含む。
本発明にかかる、正孔注入層形成用組成物に含有される溶媒としては、特に制限されるものではないが、前記正孔輸送性化合物を通常0.1重量%、好ましくは0.5重量%、さらに好ましくは1.0重量%以上溶解する溶媒である。
溶媒の沸点の範囲、具体例は、前述の本発明における導電性薄膜形成材料を含む組成物に用いることが出来る溶媒の場合と同じである。
<電子受容性化合物>
正孔注入層には、正孔輸送性化合物の酸化により、正孔注入層の導電率を向上させることができるため、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、電子親和力が5eV以上である化合物が更に好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。具体的には、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩;塩化鉄(III)(日本国特開平11−251067号公報);ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物;トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(日本国特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;(国際公開第2005/089024号)記載のイオン化合物;フラーレン誘導体及びヨウ素等が挙げられる。
上記化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩及び高原子価の無機化合物等が好ましい。また、有機溶媒に対する溶解性が高く、湿式成膜法で膜を形成しやすい点では、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物及び芳香族ホウ素化合物等が好ましい。
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物又は芳香族ホウ素化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号に記載のものが挙げられ、その好ましい例も同様である。
また、以下に、本発明における電子受容性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記一般式(I−1)中のn1、下記一般式(I−2)中のn2、下記一般式(I−3)中のn3は各々独立に、対アニオンZn1−〜Zn3−のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1〜n3の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
Figure 0006531796
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Figure 0006531796
Figure 0006531796
上記具体例のうち、電子受容性、耐熱性及び溶剤に対する溶解性の点で、A−1〜48、54、55、60〜62、64〜75、79〜83、B−1〜20、24、25、27、30〜37、39〜43、S−1〜10、19〜21、25〜27、30、31の化合物が好ましく、A−1〜9、12〜15、17、19、24、29、31〜33、36、37、65、66、69、80〜82、B−1〜3、5、7〜10、16、30、33、39、S−1〜3、5、10、21、25、31の化合物が更に好ましく、A−1〜7、80の化合物が特に好ましい。
なお、電子受容性化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
正孔注入層形成用組成物における、電子受容性化合物の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。尚、正孔注入層形成用組成物には、電子受容性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
<カチオンラジカル化合物>
正孔注入層は、陽極からの正孔注入性を高める点および、正孔輸送性を高める点でカチオンラジカル化合物を含むことが好ましい。
カチオンラジカル化合物としては、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンとからなるイオン化合物が好ましい。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
カチオンラジカルとしては、正孔輸送性化合物として前述した化合物から一電子取り除いた化学種であることが、非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、及び溶解性などの点から好ましい。
ここで、カチオンラジカル化合物は、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンとからなるカチオンイオン化合物が生成する。
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、又は、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
<成膜方法>
正孔注入層を湿式成膜法により形成する場合、本発明における導電性薄膜形成用組成物の塗布方法と同様に塗布、乾燥することが出来る。乾燥は2回以上行ってもよい。
正孔注入層が本発明にかかる導電性薄膜である場合、前述の赤外線加熱工程を有する。
<正孔注入層の膜厚>
正孔注入層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
[正孔輸送層]
本発明における正孔輸送層は、正孔注入層上に設けられ、正孔注入層から運ばれたホールを発光層に輸送する層である。
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
この様な、正孔輸送層を形成する材料は、上記[正孔注入層]の項で記載した構造などを含む化合物でもよいが、電荷輸送能、及び有機溶媒に対する溶解性が優れる点で、下記式(5)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
Figure 0006531796
(式(5)中、qは0〜3の整数を表し、Ar11及びAr12は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は直接結合を表し、Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
但し、Ar11及びAr12のいずれもが、直接結合であることはない。)
式(5)中、Ar11及びAr12は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
溶媒に対する溶解性、及び耐熱性の点から、Ar11〜Ar15は、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基が好ましい。
また、Ar11〜Ar15としては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は―CH=CH―基により連結した2価の基も好ましく、ビフェニレン基及びターフェニレン基がさらに好ましい。
Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が後述の不溶化基以外に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、下記[置換基群Z]から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
<置換基群Z>
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基;チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基。
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が後述の不溶化基以外に有してもよい置換基の分子量としては、さらに置換した基を含めて500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
溶解性の点から、Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
<qの説明>
前記式(5)においてqは、0〜3の整数を表す。
qは、通常0以上であり、通常3以下、好ましくは2以下である。qが2以下である方が、原料となるモノマーの合成が容易である。
<繰り返し単位の割合等>
本発明における正孔輸送層を形成するための高分子化合物は、1種又は2種以上の式(5)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
本発明における正孔輸送層を形成するための高分子化合物が2種以上の繰り返し単位を有する場合は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。溶媒に対する溶解性の点からランダム共重合体であることが好ましい。電荷輸送能がさらに高められる点で交互共重合体であることが好ましい。
<架橋性基>
本発明における正孔輸送層を形成するための高分子化合物は、上述の架橋性基群T及びT’の中から選ばれる架橋性基を有することが好ましい。この架橋性基は、好ましくは、前記式(3)で示したベンゾシクロブテン環が好ましい。
<解離基>
本発明における正孔輸送層を形成するための高分子化合物は、解離基を有していてもよい。ここで解離基とは、結合している芳香族炭化水素環から70℃以上で解離し、さらに溶媒に対して可溶性を示す基をいう。ここで、溶媒に対して可溶性を示すとは、化合物が熱及び/又は活性エネルギー線の照射によって反応する前の状態で、常温でトルエンに0.1重量%以上溶解することをいい、化合物のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。このような解離基を有していることが、乖離反応後の電荷輸送能に優れる点で好ましい。
このような解離基として好ましくは、芳香族炭化水素環側に極性基を形成せずに熱解離する基であり、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。
またさらに、100℃以上で熱解離する基であることが好ましく、300℃以下で熱解離する基であることが好ましい。
解離基の具体例は、以下の通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
解離基が2価の基である場合の具体例は、以下の<2価の解離基群A>の通りである。
<2価の解離基群A>
Figure 0006531796
解離基が1価の基である場合の具体例は、以下の<1価の解離基群B>の通りである。
<1価の解離基群B>
Figure 0006531796
上述の正孔注入層、正孔輸送層に用いられる高分子化合物の具体例は、日本国特開2009−263665号公報や日本国特開2010−239127号公報に記載のものなどが挙げられる。
また、正孔輸送層が本発明における導電性薄膜であることがさらに好ましい。
<正孔輸送層形成用組成物>
正孔輸送層は湿式成膜法で形成される。湿式成膜法は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、正孔輸送層形成用組成物における溶媒、添加剤、乾燥方法、塗布方法は、例えば<正孔注入層形成用組成物>の項目で記述したものと同様に使用することができる。
<正孔輸送層の膜厚>
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
[正孔阻止層]
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(日本国特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(日本国特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(日本国特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
[電子輸送層]
電子輸送層は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層と電子注入層との間に設けられる。
電子輸送層は、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(日本国特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号明細書)、キノキサリン化合物(日本国特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(日本国特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
電子輸送層は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
[電子注入層]
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく、電子輸送層又は発光層へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行うには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、後述するバソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(日本国特開平10−270171号公報、日本国特開2002−100478号公報、日本国特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は通常、5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層又はその上の正孔阻止層上に積層することにより形成される。
湿式成膜法の場合の詳細は、正孔注入層及び発光層の場合と同様である。
一方、真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板上の発光層、正孔阻止層又は電子輸送層上に電子注入層を形成する。
電子注入層としてのアルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行う。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
このとき、電子注入層の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
[陰極]
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たす。陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
[その他]
本発明における有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
上述とは逆の構造、即ち、基板上に陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明における有機電界発光素子を設けることも可能である。
さらには、層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、電流効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
7.有機ELディスプレイ及び有機EL照明
本発明における有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、上述のような本発明における有機電界発光素子を用いたものである。本発明における有機ELディスプレイ及び有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明における有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明における有機ELディスプレイ及び有機EL照明を形成することができる。
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施できる。
(実施例1)
厚さ0.7mm、無機ガラス基板(無アルカリガラス)を、基板として用いた。この無機ガラス基板は、波長2.8μmに赤外線透過率の極小値を持ち、その赤外線透過率は、39.6%であった。
この無機ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を70nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
<正孔注入層>
下記式(P1)に示す高分子化合物(重量平均分子量(Mw)=98000、分散度(Mw/Mn)=1.66)を100重量部、下記構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを20重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、正孔注入層形成用組成物を調製した(2.5重量%)後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、塗布組成物を作製した。
Figure 0006531796
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートした。スピンコートの回転数は4000rpmで、時間は30秒間で成膜した。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥した。その後、ガラス基板の周囲をトルエンでふき取った。この時の膜厚は、およそ35nmであった。
<焼成>
その基板を電磁波加熱として、ハロゲンヒーター(ウシオ電機社製;ヒーターピーク波長1.2μm)を用いて、30℃から230℃まで昇温した。
この時の2000nm〜3300nmの範囲における吸収値の極小値における波長とハロゲンヒーターのピーク波長との積αは、3.4μmであった。
基板の温度測定には、赤外線カメラ(NEC Avio赤外線テクノロジー社製)を用い、ガラス基板のむき出し部分(上記トルエンでふき取ったガラス基板の周囲)を測定した。
加熱時間は3分間であった。昇温速度は、初期の30秒は140℃/minであった。150℃に達する時間は、開始から1分後であった。つまり、本焼成温度条件は、150℃以上の時間は2分であった。この間、温度は常に上昇しており、一定温度で保持しなかった。なお、基板を150℃以上の温度で保持した時間tでαを割った値(α/t)は、0.028μm/sであった。
以上の工程は、大気下で行った。これにより、正孔注入層を得た。
<正孔輸送層>
下記式(P2)に示す高分子材料((重量平均分子量(Mw)=57000、分散度(Mw/Mn)=1.9)を溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、1.0wt%の正孔輸送層塗布液を作製した。この正孔輸送層塗布液を先に作成した正孔注入層の上に窒素下でスピンコートした。スピンコートの回転数2100rpmで、120秒間で成膜した。その後、230℃のホットプレートで30秒溶媒を乾燥した。この時の膜厚は10nmであった。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。焼成は、大気下で上述の正孔注入層を焼成した時と同様にハロゲンヒーターを用いて、同条件により行った。これにより、正孔輸送層を得た。
Figure 0006531796
<発光層>
下記式で表される化合物、H1、H2、D1をそれぞれ、25重量部、75重量部、15重量部を、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、5.75wt%となるように調液し、発光層塗布液を作製した。この発光層塗布液を先に作製した正孔輸送層の上に窒素下にてスピンコートした。スピンコートの回転数1800rpmで、120秒間で成膜した。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。成膜後、ホットプレートにより、120℃で20分加熱した。この時の膜厚は、60nmであった。こうして、発光層を得た。
Figure 0006531796
<正孔阻止層>
ここで、発光層を、真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が1.8×10−4Pa以下になるまで排気した後、下記式で表される化合物(HB1)を真空蒸着法によって10nmの膜厚まで積層した。
Figure 0006531796
<電子輸送層>
続いて、真空蒸着法により、電子輸送材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)を、30nmの膜厚まで積層した。
<電子注入層>
次に、陰極蒸着用マスクとして、2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように阻止に密着させ、真空蒸着法により、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの膜厚まで積層した。
<陰極>
続いて、上述シャドーマスクを用いて、真空蒸着法により、陰極としてアルミニウム層を80nmの膜厚まで積層した。
<封止処理>
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子1が得られた。
(実施例2)
正孔注入層と正孔輸送層の焼成を6分間行った以外は、実施例1と同様に有機電界発光素子2を得た。この焼成において、加熱開始から30秒までは、昇温速度は140℃/minで、150℃に達する時間は、開始から1分後であった。その後、さらに3分間で267まで昇温した。すなわち、本焼成温度条件により、150℃以上の時間は5分であった。なお、α/tは0.011μm/sであった。
(比較例1)
正孔注入層と正孔輸送層の焼成を、熱風加熱炉(炉内温度230℃)を用いた以外は、実施例1と同様に作製して、有機電界発光素子Aを得た。熱風加熱炉(230℃)における赤外線のピーク波長は、以下のウィーンの式により求め、5.76μmであった。
ウィーンの式:ピーク波長=2897/T (*Tは絶対温度)
この時、基板の2000〜3300nmの波長範囲における赤外線透過の極小値と赤外線のピーク波長の積は、16.1μmであった。なお、基板の温度は123℃までしか到達しなかった。
(比較例2)
正孔注入層と正孔輸送層の焼成を40分間行った以外は、実施例1と同様に作製して、有機電界発光素子Bを得た。この焼成において、加熱開始から30秒までは、昇温速度は140℃/minで、150℃に達する時間は、開始から1分後であった。その後、さらに12分間で280℃まで昇温した。そのままの温度でさらに27分間温度を保持した。本焼成温度条件により、150℃以上の時間は39分であった。なお、α/tは0.0014μm/sであった。
(比較例3)
正孔注入層と正孔輸送層の焼成時間を30秒とした以外は、実施例1と同様に作製して、有機電界発光素子Cを得た。なおこの焼成において、基板の温度は100℃までしか到達しなかった。
(実施例3)
正孔注入層と正孔輸送層の焼成方法を、セラミックコートした赤外線ヒーター(ウシオ電機社製:ヒーターピーク波長2.5μm)を用いた以外は、実施例1と同様に作製して、有機電界発光素子3を得た。このヒーターを用いた焼成条件では、150℃に達する時間は、加熱開始から50秒後であった。その後、2分10秒間で230℃となった。また、基板の2000〜3300nmの波長範囲における赤外線透過の極小値とセラミックコートした赤外線ヒーターのピーク波長の積は、7.0μmであった。なお、α/tは0.026μm/sであった。
(実施例4)
正孔注入層にPEDOT/PSSとした以外は、実施例1と同様に作製し、有機電界発光素子4を得た。PEDOT/PSS(Aldrich社製)を溶媒として水を用いて、0.65wt%に調整し、スピンコートした。スピンコートの回転数1000rpmで、30秒間で成膜した。
(比較例4)
正孔注入層と正孔輸送層との焼成方法を電磁波加熱ではない熱風加熱炉(炉内温度230℃)を用いた以外は、実施例4と同様に作製して、有機電界発光素子Dを得た。なお、なお、基板の温度は123℃までしか到達しなかった。
(比較例5)
正孔注入層と正孔輸送層の焼成を40分間行った以外は、実施例4と同様に作製して、有機電界発光素子Eを得た。この焼成において、加熱開始から3分間までは、昇温速度は67℃/minで、150℃に達する時間は、開始から50秒後であった。その後、さらに12分間で280℃まで昇温した。そのままの温度でさらに25分間温度を保持した。本焼成温度条件により、150℃以上の時間は39分10秒であった。なお、α/tは0.0014μm/sであった。
(実施例5)
正孔注入層の焼成方法を、遠赤外線セラミックヒーター(日本ガイシ社製:ヒーターピーク波長5.2μm)で焼成時間を3分間とした以外は、実施例3と同様に作製して、有機電界発光素子5を得た。基板温度が150℃に達する時間は、開始から120秒後であった。本焼成温度条件により、150℃以上の時間tは60秒であった。基板の2000〜3300nmの波長範囲における赤外線透過の極小値とこの遠赤外線セラミックヒーターのピーク波長の積αは、14.6μmであった。α/tは0.24μm/sであった。
(実施例6)
正孔注入層の焼成時間を6分間とし、さらに正孔輸送層の焼成時間を6分間とした以外は、実施例3と同様に作製して、有機電界発光層積層体素子6を得た。
この時、基板温度が150℃に達する時間は、加熱開始から50秒後であった。その後、5分10秒間で270℃となった。なお、α/tは0.023μm/sであった。
(実施例7)
正孔輸送層の焼成方法を、遠赤外線セラミックヒーター(日本ガイシ社製:ヒーターピーク波長5.2μm)で焼成時間を20分間とした以外は、実施例5と同様に作製して、有機電界発光素子7を得た。基板温度が150℃に達する時間は、開始から120秒後であった。本焼成温度条件により、150℃以上の時間tは18分であった。α/tは0.013μm/sであった。
以上、実施例1〜7及び比較例1〜5の2500cd/mの時の駆動電圧と電流効率を測定した結果を表12に示す。
Figure 0006531796
実施例1〜7においては、駆動電圧が低く、電流効率が高く有機電界発光素子としての性能が高い。
しかしながら、比較例1及び比較例4においては、駆動電圧が高く、電流効率が低い。また、比較例2及び比較例5においては、駆動電圧が高い。比較例3においては、電流効率が低い。
(実施例8)
厚さ0.7mm、無機ガラス基板を、基板として用いた。この無機ガラス基板は、波長2.8μmに赤外線透過率の極小値を持ち、その赤外線透過率は、68.84%であった。
この無機ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を70nmの厚さに堆積した。このITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
<正孔注入層>
下記式(P1’)に示す高分子化合物(重量平均分子量(Mw)=39000、分散度(Mw/Mn)=1.8)を100重量部、下記構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを15重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、正孔注入層形成用組成物を調製した(5.50重量%および2.75重量%)。
Figure 0006531796
Figure 0006531796
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートした。所望の膜厚にするため、スピンコートの回転数を3000rpmから700rpmまで変化させた。回転時間は30秒間とした。
<焼成>
その基板を赤外線加熱として、ハロゲンヒーター(ウシオ電機社製;ヒーターピーク波長1.2μm)を用いた。この時の2000nm〜3300nmの範囲における吸収値の極小値における波長とハロゲンヒーターのピーク波長との積αは、3.4μmであった。
赤外線の照射時間は1分間とした。赤外線照射から10秒で、70℃以上となった。基板の最高到達温度は160℃であった。この時の昇温速度は、初期の30秒は180℃/minであった。基板が70℃以上である時間tは50秒であった。α/tは、0.067μm/secであった。
以上の工程は、大気下で行った。得られた初期膜厚は、52nm〜345nmであった。
<残膜率>
この初期膜厚に、シクロヘキシルベンゼンに浸漬し、10秒後にスピンコーターで1500rpmの回転数で30秒間、シクロヘキシルベンゼンを除去した。その後、熱風乾燥機にて230℃で5分間、シクロヘキシルベンゼンを乾燥した。
その後、膜厚(溶解後膜厚)を測定した。残膜率は以下の式(9)によって求めた。
残膜率(%)=溶解後膜厚/初期膜厚×100 ・・・(9)
得られた結果を図2に示す。50nm〜345nmの初期膜厚では、残膜率はほぼ100%で不溶化できたことがわかった。
(比較例6)
2.75重量%の正孔注入層用組成物のみを使用し、スピンコートの回転数を4500rpmから1500rpmとした以外は、実施例8と同様にして、成膜、焼成、残膜率測定を行った。初期膜厚は、21.4nm、34.4nm、40.4nmであった。得られた結果を図2に記載する。その結果、残膜率が低く、正孔輸送性材料層が不溶化できていないことがわかった。
(実施例9)
スピンコートの回転数を1400rpmとし、焼成方法を熱風炉(炉内温度230℃)とし、焼成時間を3分間〜60分間とした以外は、実施例8と同様にして、成膜、焼成、残膜率測定を行った。初期の膜厚は、150nmであった。その結果を図3に示す。45分の加熱により残膜率100%で不溶化することができた。
(実施例10)
高分子化合物を下記式(P3)(重量平均分子量(Mw)=58000、分散度(Mw/Mn)=1.6)とした以外は、実施例8と同様に成膜、焼成、残膜率測定を行った。得られた初期膜厚は、71nmから505nmの計5点を得た。その結果を図4に示す。残膜率は、ほぼ100%で、高分子化合物層は不溶化することができた。
Figure 0006531796
(比較例7)
2.75重量%の正孔注入層用組成物のみを用いて、スピンコートの回転数を4500rpmと2000rpmとした以外は、実施例10と同様にして、成膜、焼成、残膜率測定を行った。得られた初期膜厚は、20.1nmと39.4nmであった。得られた結果を図4に記載する。その結果、残膜率が低く、正孔輸送層が不溶化できていないことがわかった。
(実施例11)
ハロゲンヒーターをセラミックコートのハロゲンヒーター(ウシオ電機社製;ヒーターピーク波長2.5μm)を用い、焼成時間を2.5分間とし、正孔輸送層用組成物の濃度を5.50wt%とし、スピンコートの回転数1400rpmとした以外は、実施例10と同様にして実験を行った。得られた初期膜厚は、200nmであった。残膜率は100%であった。
この時の基板の2000nm〜3300nmの範囲における吸収値の極小値における波長とハロゲンヒーターのピーク波長との積αは、7.0μmであった。赤外線照射から10秒で、70℃以上となった。基板の最高到達温度は230℃であった。この時の昇温速度は、初期の30秒は192℃/minであった。α/tは、0.050μm/secであった。
(比較例8)
正孔輸送層用組成物の濃度を2.75%とし、スピンコートの回転数を4500rpmとした以外は、実施例11と同様にして、実験を行った。初期膜厚は21nmであった。
その結果、残膜率は0%で正孔輸送性材料層は溶解してなくなった。
以上のように、正孔輸送層の膜厚が50nm以上で、赤外線による所定の焼成プロセスを施した実施例8〜11では、正孔輸送層が不溶化されていた。一方、膜厚が50nm以下もしくは所定の焼成プロセスを施さない比較例6〜8は、正孔輸送性材料層は十分に不溶化されなかった。
(実施例12)
実施例1において、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の焼成条件を以下の通り変更した以外は、実施例1と同様に有機電界発光素子8を得た。
・正孔注入層、正孔輸送層:
熱風炉にて230℃、1時間で焼成を行った。
・発光層:
発光層の焼成には、ハロゲンヒーター(ウシオ電機社製;ヒーターピーク波長1.2μm)を用いて、30℃から95℃まで1.5分で昇温した。
基板の温度測定には、赤外線カメラ(NEC Avio赤外線テクノロジー社製)を用い、ガラス基板のむき出し部分を測定した。
昇温速度は、初期の30秒は50℃/minであった。70℃に到達したのは48秒後であった。つまり70℃以上である時間は、42秒であった。この間、温度は常に上昇しており、一定温度で保持することはなかった。焼成工程は、大気下で行った。この時の膜厚は、60nmであった。こうして、発光層積層体1を得た。
なお、この時の赤外線ヒーターのピーク波長とガラス基板の波長2000nm〜3300nmにおける透過率極小値における波長との積は、3.4μmであった。α/tは0.080μm/sであった。
<実施例13>
発光層の焼成条件を、30℃から110℃まで、5分間で焼成した以外は、実施例12と同様に有機電界発光素子9を作製した。
発光層の焼成における昇温速度は、初期の30秒は90℃/minであった。加熱後27秒で70℃に達した。つまり70℃以上である時間は、4分33秒であった。110℃に達したのは、加熱後3分後であり、その後、焼成終了まで温度は一定に保たれた。α/tは0.012μm/sであった。
<実施例14>
発光層の焼成条件を、セラミックコートのハロゲンヒーター(ウシオ電機社製:ヒーターピーク波長2.5μm)を用いた以外は、実施例13と同様にして有機電界発光素子10を作製した。
発光層の焼成における昇温速度は、初期の30秒は80℃/minであった。加熱後30秒で70℃に達した。つまり70℃以上である時間tは、1分間であった。この間、温度は常に上昇しており、一定温度で保持しなかった。加熱開始から1分30秒で基板の温度は110℃に達した。
なお、この時の赤外線ヒーターのピーク波長とガラス基板の波長2000nm〜3300nmにおける透過率極小値における波長との積αは、7.0μmであった。α/tは0.12μm/sであった。
(実施例15)
以下の点を変更した以外は実施例14と同様にして、有機電界発光素子11を得た。
<正孔注入層及び正孔輸送層の焼成>
正孔注入層および正孔輸送層の焼成を、セラミックコートのハロゲンヒーター(ウシオ電機社製:ヒーターピーク波長2.5μm)を用いて行った。焼成条件を、30℃から230℃まで、3分間でそれぞれ焼成した。基板が150℃に達する時間は、加熱開始から50秒後であった。その後、2分10秒間で230℃となった。また、基板の2000〜3300nmの波長範囲における赤外線透過の極小値とセラミックコートした赤外線ヒーターのピーク波長の積αは、7.0μmであった。なお、α/tは0.026μm/sであった。
<発光層の焼成>
実施例14と同様に発光層の焼成を行った。
(比較例9)
<高温焼成>
発光層の焼成条件を、1.5分間で30℃から193℃まで焼成した以外は、実施例12と同様にして、有機電界発光素子Fを得た。発光層の焼成における昇温速度は、初期の30秒は150℃/minであった。
(比較例10)
<長時間焼成>
発光層の焼成条件を、25分間で30℃〜125℃まで焼成した以外は、実施例12と同様にして、有機電界発光素子Gを得た。焼成開始から、28秒後に70℃に達し、2分後には125℃となった。その後、温度は一定に保持した。つまり、70℃以上で保持した時間tは、24分32秒間であった。ここで、α/tは0.002μm/sであった。
以上、実施例、比較例で得られた素子の特性を表13にまとめた。なお電流効率は、10mA/cmでの値を示している。
Figure 0006531796
このように、実施例12〜15で得られた有機電界発光素子8〜11は、比較例9及び10で得られた有機電界発光積層体F及びGと比べて高い電流効率を示した。
(実施例16)
基板として以下のものを用い、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の形成条件を以下の通り変更した以外は、実施例14と同様に有機電界発光素子12を得た。
厚さ0.7mm、無機ガラス基板を、基板として用いた。この無機ガラス基板は、波長2.8μmに赤外線透過率の極小値を持ち、その赤外線透過率は、68.84%であった。
この無機ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を110nmの厚さに堆積した。このITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
<正孔注入層>
下記式(P4)に示す高分子化合物を100重量部、前記式(A1)で表される化合物を20重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、2.5重量%の正孔注入層形成用組成物を調製した。
Figure 0006531796
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートした。スピンコートの回転数は1500rpmで、時間は30秒間で成膜した。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥した。その後、ガラス基板の周囲をトルエンでふき取った。
正孔注入層の焼成には、セラミックコートした赤外線ヒーター(ウシオ電機社製:ヒーターピーク波長2.5μm)を用いた。この時の2000nm〜3300nmの範囲における吸収値の極小値における波長と赤外線ヒーターのピーク波長との積αは、7.0μmであった。赤外線の照射時間は7分間とした。70℃に達する時間は赤外線照射開始から10秒後であり、150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は6分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.019μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、50nmであった。
<正孔輸送層>
下記式(P5)に示す高分子材料を溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、2.5wt%の正孔輸送層塗布液を作製した。この正孔輸送層塗布液を先に作成した正孔注入層の上に窒素下でスピンコートした。スピンコートの回転数1500rpmで、100秒間で成膜した。その後、230℃のホットプレートで30秒溶媒を乾燥した。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。
焼成は、正孔注入層と同じ赤外線ヒーターを用いて行った。赤外線の照射時間は6分間とした。150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は5分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.023μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、37nmであった。
Figure 0006531796
<発光層>
下記式で表される化合物、H3、H4、D2をそれぞれ、25重量部、75重量部、10重量部を、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、4.0wt%となるように調液し、発光層塗布液を作製した。この発光層塗布液を先に作製した正孔輸送層の上に窒素下にてスピンコートした。スピンコートの回転数2500rpmで、120秒間で成膜した。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。発光層の加熱は、正孔注入層と同じ赤外線ヒーターを用いて大気下で行った。加熱時間は60秒とした。発光層の焼成における昇温速度は、初期の30秒は80℃/minであった。加熱後30秒で70℃に達し、70℃以上である時間tは、30秒であった。この間、温度は常に上昇しており、一定温度で保持しなかった。加熱開始から60秒で基板の温度は100℃に達した。発光層の膜厚は、54nmであった。
この時の赤外線ヒーターのピーク波長とガラス基板の波長2000nm〜3300nmにおける透過率極小値における波長との積αは、7.0μmであった。α/tは0.23μm/sであった。
Figure 0006531796
(実施例17)
発光層の焼成条件を以下の条件とした以外は、実施例16と同様にして有機電界発光素子13を作製した。
発光層への赤外線照射時間は7分とした。発光層の焼成における昇温速度は、初期の30秒は80℃/minであった。加熱後30秒で70℃に達した。従って、70℃以上である時間tは、6分30秒間であった。基板の温度は加熱開始から3分で120℃に達し、その後120℃で定温加熱した。α/tは0.018μm/sであった。
(実施例18)
正孔注入層と正孔輸送層の形成条件を以下の通り変更した以外は、実施例16と同様に有機電界発光素子14を得た。
<正孔注入層>
下記式(P6)に示す高分子化合物を100重量部、前記式(A1)で表される化合物を15重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、3.5重量%の正孔注入層形成用組成物を調製した。
Figure 0006531796
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートした。スピンコートの回転数は1500rpmで、時間は30秒間で成膜した。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥した。その後、ガラス基板の周囲をトルエンでふき取った。
焼成は、実施例16と同じ赤外線ヒーターを用いて行った。赤外線の照射時間は10分間とした。70℃に達する時間は、赤外線照射から10秒後であり、150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は9分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.013μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、50nmであった。
<正孔輸送層>
前記式(P5)に示す高分子材料を溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、2.5wt%の正孔輸送層塗布液を作製した。この正孔輸送層塗布液を先に作成した正孔注入層の上に窒素下でスピンコートした。スピンコートの回転数1500rpmで、100秒間で成膜した。その後、230℃のホットプレートで30秒溶媒を乾燥した。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。
焼成は、実施例16と同じ赤外線ヒーターを用いて行った。赤外線の照射時間は10分間とした。150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は9分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.013μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、37nmであった。
(実施例19)
発光層を形成するための組成物を以下の条件とした以外は、実施例16と同様にして有機電界発光素子15を作製した。
<発光層>
下記式で表される化合物、H5、H6、D3をそれぞれ、25重量部、75重量部、10重量部を、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いた以外は、実施例16と同様にして発光層を形成した。
Figure 0006531796
(実施例20)
正孔注入層及び正孔輸送層の形成は実施例18と同じとし、発光層の形成は実施例19と同じとして有機電界発光素子16を作製した。
(実施例21)
発光層の焼成条件を以下の条件とした以外は、実施例20と同様にして有機電界発光素子17を作製した。
発光層への赤外線照射時間は7分とした。発光層の焼成における昇温速度は、初期の30秒は80℃/minであった。加熱後30秒で70℃に達した。従って、70℃以上である時間tは、6分30秒間であった。α/tは0.018μm/sであった。
(比較例12)
実施例16の正孔注入層の形成条件を以下の通り変更すると、正孔注入層が不溶化せず、有機電界発光素子を作製できなかった。
<正孔注入層>
前記式(P4)に示す高分子化合物を100重量部、前記式(A1)で表される化合物を20重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、2.5重量%の正孔注入層形成用組成物を調製する。
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートする。スピンコートの回転数は1500rpmで、時間は30秒間で成膜する。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥する。その後、正孔注入層の焼成方法を、230℃の熱風乾燥機にて10分間加熱とする。
(比較例13)
実施例18の正孔注入層の形成条件を以下の通り変更すると、正孔注入層が不溶化せず、有機電界発光素子を作製できなかった。
<正孔注入層>
前記式(P6)に示す高分子化合物を100重量部、前記式(A1)で表される化合物を20重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、3.5重量%の正孔注入層形成用組成物を調製する。
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートする。スピンコートの回転数は1500rpmで、時間は30秒間で成膜する。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥する。その後、正孔注入層の焼成方法を、230℃の熱風乾燥機にて10分間加熱とする。
(比較例14)
実施例18の正孔輸送層の形成条件を以下の通り変更すると、正孔輸送層が不溶化せず、有機電界発光素子を作製できなかった。
<正孔輸送層>
下記式(P5)に示す高分子材料を溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、2.5wt%の正孔輸送層塗布液を調製する。
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートする。スピンコートの回転数は1500rpmで、時間は100秒間で成膜する。その後、230℃のホットプレートで30秒溶媒を乾燥する。その後、正孔注入層の焼成方法を、230℃の熱風乾燥機にて10分間加熱とする。
以上の実施例で得られた素子の特性を表14にまとめた。なお、電圧及び電流効率は、有機電界発光素子12および、有機電界発光素子15の10mA/cmにおける電圧(V)および電流効率(cd/A)で除した、電圧相対値及び電流効率相対値で示した。
Figure 0006531796
このように、実施例16〜21の条件で正孔注入層、正孔輸送層、発光層を形成すると、それぞれの層を短時間焼成することで積層塗布でき、熱風乾燥炉やホットプレートによる焼成では達成できない短時間のタクトタイムを達成でき、低コストに有機電界発光素子を製造することができる。
(実施例22)
正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の形成条件を以下の通り変更した以外は、実施例3と同様にして有機電界発光素子18を得た。
<正孔注入層>
下記式(P7)に示す高分子化合物を100重量部、前記式(A1)で表される化合物を15重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、3.0重量%の正孔注入層形成用組成物を調製した。
Figure 0006531796
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートした。スピンコートの回転数は3500rpmで、時間は30秒間で成膜した。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥した。その後、ガラス基板の周囲をトルエンでふき取った。
正孔注入層の焼成には、セラミックコートした赤外線ヒーター(ウシオ電機社製:ヒーターピーク波長2.5μm)を用いた。赤外線の照射時間は6分間とした。70℃に達する時間は、赤外線照射から10秒後であり、150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は5分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.023μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、50nmであった。
<正孔輸送層>
下記式(P8)に示す高分子材料を溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、3.0wt%の正孔輸送層塗布液を作製した。
Figure 0006531796
この正孔輸送層塗布液を先に作成した正孔注入層の上に窒素下でスピンコートした。スピンコートの回転数1500rpmで、100秒間で成膜した。その後、230℃のホットプレートで30秒溶媒を乾燥した。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。
焼成は、正孔注入層の形成時と同じ赤外線ヒーターを用いて行った。赤外線の照射時間は6分間とした。150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は5分50秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.023μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、40nmであった。
<発光層>
下記式で表される化合物、H3、H4、D4をそれぞれ、25重量部、75重量部、10重量部を、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、4.5wt%となるように調液した。この発光層塗布液を先に作製した正孔輸送層の上に窒素下にてスピンコートした。スピンコートの回転数2400rpmで、120秒間で成膜した。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。成膜後、窒素下にてホットプレートにより、120℃で20分加熱した。この時の膜厚は、50nmであった。
Figure 0006531796
(実施例23)
正孔注入層の形成条件を以下の通り変更した以外は、実施例22と同様にして有機電界発光素子19を得た。
<正孔注入層>
基板の加熱として、ハロゲンヒーター(ウシオ電機社製;ヒーターピーク波長1.2μm)を用いて、赤外線の照射時間を15分間とした。70℃に達する時間は、赤外線照射から10秒後であり、150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は14分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.0040μm/secであった。
(実施例24)
正孔注入層及び正孔輸送層の形成条件を以下の通り変更した以外は、実施例23と同様にして有機電界発光素子20を得た。
<正孔注入層>
赤外線の照射時間を10分間とした。70℃に達する時間は、赤外線照射から10秒後であり、150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は9分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.0061μm/secであった。
<正孔輸送層>
下記式(P9)に示す高分子材料を溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、3.0wt%の正孔輸送層塗布液を作製した。この正孔輸送層塗布液を先に作成した正孔注入層の上に窒素下でスピンコートした。スピンコートの回転数1500rpmで、100秒間で成膜した。その後、230℃のホットプレートで30秒溶媒を乾燥した。その後、基板の周囲をトルエンにてふき取った。焼成は、正孔注入層と同じハロゲンヒーターを用いて行った。赤外線の照射時間は6分間とした。150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は5分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.023μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、40nmであった。
Figure 0006531796
(実施例25)
正孔注入層の形成条件を以下の通り変更した以外は、実施例24と同様にして有機電界発光素子21を得た。
<正孔注入層>
下記式(P10)に示す高分子化合物を100重量部、前記式(A1)で表される化合物を15重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、3.0重量%の正孔注入層形成用組成物を調製した。
Figure 0006531796
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートした。スピンコートの回転数は3500rpmで、時間は30秒間で成膜した。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥した。その後、ガラス基板の周囲をトルエンでふき取った。
正孔注入層の焼成は、実施例22と同じ赤外線ヒーターを用いて行った。赤外線の照射時間は6分間とした。70℃に達する時間は、赤外線照射から10秒後であり、150℃に達する時間は、赤外線照射から50秒後であった。従って、150℃以上の時間は5分10秒であった。基板の最高到達温度は270℃であった。α/tは、0.023μm/secであった。以上の工程は、大気下で行った。膜厚は、50nmであった。
(比較例15)
実施例23の正孔注入層の形成条件を以下の通り変更すると、正孔注入層が不溶化せず、有機電界発光素子を作製できなかった。
<正孔注入層>
前記式(P7)に示す高分子化合物を100重量部、前記式(A1)で表される化合物を15重量部として、溶媒として安息香酸エチルを用いて、3.0重量%の正孔注入層形成用組成物を調製する。
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートする。スピンコートの回転数は3500rpmで、時間は30秒間で成膜する。スピンコート後、ホットプレートにて、80℃で30秒間、溶媒を乾燥する。その後、正孔注入層の焼成方法を、230℃の熱風乾燥機にて15分間加熱とする。
(比較例16)
実施例22の正孔輸送層の形成条件を以下の通り変更すると、正孔輸送層が不溶化せず、有機電界発光素子を作製できなかった。
<正孔輸送層>
前記式(P8)に示す高分子材料を溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを用いて、3.0wt%の正孔輸送層塗布液を調製する。
この塗布組成物を上記基板上にスピンコートする。スピンコートの回転数は1500rpmで、時間は100秒間で成膜する。その後、正孔輸送層の焼成方法を、230℃のホットプレートにて6分間加熱とする。
(比較例17)
前記式(P8)に示す高分子材料の代わりに前記式(P9)に示す高分子材料を用いる以外は比較例16と同様に正孔輸送層を形成しても、正孔輸送層が不溶化せず、有機電界発光素子を作製できなかった。
以上の実施例で得られた素子の特性を表15にまとめた。なお、電圧及び電流効率は、有機電界発光素子18の2500cd/mにおける電圧(V)および電流効率(cd/A)で除した、電圧相対値及び電流効率相対値で示した。
Figure 0006531796
このように、実施例22〜25の条件で正孔注入層、正孔輸送層を形成すると、それぞれの層を短時間焼成することで積層塗布でき、熱風乾燥炉やホットプレートによる焼成では達成できない短時間のタクトタイムを達成でき、低コストに有機電界発光素子を製造することができる。
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2012年5月28日出願の日本特許出願(特願2012−121147)、2012年6月27日出願の日本特許出願(特願2012−144392)及び2012年8月21日出願の日本特許出願(特願2012−182611)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

Claims (4)

  1. 基板と基板上に形成された導電性薄膜として少なくとも1層の発光層とを含む、導電性薄膜積層体の製造方法であって、
    前記発光層は発光層組成物を塗布し、焼成を行うことにより形成され、
    前記発光層組成物が、発光材料及び沸点120℃以上の溶媒を含有するものであって、
    前記発光層組成物を、基板上又は基板上に形成された有機層上に塗布し、次いで赤外線で前記基板の温度を150℃以下で加熱することにより焼成し
    前記溶媒の沸点(t1)と前記基板の温度の最高温度(t2)との差(Δt=t1−t2)は5℃以上であり、
    前記基板の温度を赤外線加熱において、70℃以上、150℃以下での状態で、5秒以上、10分以下、保持
    前記基板の赤外線透過率の極小値における波長と該赤外線のピーク波長との積(α)と、前記基板の温度が70℃以上150℃以下での保持時間t(秒)とした場合、下記式(8)の関係を満たす、導電性薄膜積層体の製造方法。
    0.003≦α/t(μm/s)≦0.5 ・・・(8)
  2. 前記発光層組成物が、基板の温度が赤外線加熱において、70℃以上、150℃以下で加熱され、前記温度範囲で、一定の温度で保持される時間が、20秒以上である、請求項1に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
  3. 前記基板を10℃/min以上、250℃/min以下の昇温速度で、赤外線により加
    熱する、請求項1又は2に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
  4. 前記溶媒の沸点が、350℃以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性薄膜積層体の製造方法。
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