JP6459729B2 - 塗装基材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装基材の製造方法に関する。より詳しく言えば、本発明は、塗料固形分濃度の低い塗料を用いて比較的厚い塗膜を形成することにより塗装基材を製造するための方法に関する。
例えば、金属板や有機フィルムなどの基材上に塗膜を形成して塗装基材を製造するのは、広く知られた技術である。とは言え、塗膜を形成する塗料の固形分濃度が低い場合には、厚い塗膜(例えば乾燥膜厚0.5μm以上)を備えた基材をロールコート法などの一般的方法により工業的に製造するのは煩雑である。と言うのは、このような場合には、1回の塗装工程で所定の膜厚を得ることができず、複数回の塗装を余儀なくされるからである。
例えば、予め下層塗膜を設けた金属板上に導電性高分子PEDOT/PSSの水分散液を塗布して有機半導体デバイス用の電極層を形成する技術(特許文献1)が知られているが、PEDOT/PSS電極層は従来多用されているITO電極層に比べて導電率が低い。そのため、電極層としてごく一般的なITO電極層並みの導電率を得ようとすれば、厚いPEDOT/PSS電極層を形成する必要がある。厚い電極層形成のためには、塗布液の固形分濃度の上昇が有益であるが、PEDOT/PSS塗布液は固形分濃度が2%以上になるとゲル化することが報告されている(一般に用いられているPEDOT/PSS水分散液中のPEDOT/PSS濃度は1.3%である)。このような低固形分濃度の水系塗布液から基材上に塗膜を形成するための現在主流の工業的な塗布方式であるロールコート方式によって1回の塗装工程で厚い電極層を形成することは、不可能である。
また、固形塗料成分として用いられる材料の中には、それを含有する塗布液のポットライフを長くするために塗布液を高濃度化することができないものもある。
このような固形分濃度を高くすることができない塗布液、より一般的に言えば固形分濃度が3wt%以下の塗布液で、基材上に乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層を工業的に形成する有効な製造方法は、これまで知られていなかった。
特開2013−185137号公報
本発明は、上述の課題の解決のために、3wt%以下の低固形分濃度の塗布液を用いて基材上に乾燥膜厚0.5μm以上の比較的厚い塗膜を工業的に簡単に形成することを可能にする塗装基材の製造方法の提供を目的とするものである。
本発明者は、鋭意検討の末に、基材上に固形分濃度3%以下の塗布液を塗布して乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層を工業的に形成するためには、基材上に塗布液をカーテンコート又はスリットコートで塗布し、続いて基材を少なくとも片側から加熱して50〜250℃の温度範囲内で1秒〜2分間保持することが有効であることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
こうして完成させた本発明の塗装基材の製造方法の要旨は次のとおりである。
(1)基材上に固形分濃度3%以下の塗布液を塗布して乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層を形成することを含む塗装基材の工業的製造方法であって、塗布液をカーテンコート又はスリットコートで塗布し、続いて基材を、熱風併用型誘導加熱により50〜250℃の温度範囲内で1秒〜2分間保持することにより前記塗膜層を形成することを特徴とする、塗装基材の製造方法。
(2)前記乾燥膜厚が0.5〜3.0μmであることを特徴とする、上記(1)に記載の塗装基材の製造方法。
(3)前記塗膜層をポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)を含有する塗布液により形成することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の塗装基材の製造方法。
(4)前記基材が金属板の表面に予め塗装膜を設けた塗装金属板であり、その塗装膜上に形成する前記塗膜層が有機半導体デバイスのための電極層であることを特徴とする、上記(3)に記載の塗装基材の製造方法。
(5)前記電極層が100Ω/□以下のシート抵抗を示すことを特徴とする、上記(4)に記載の塗装基材の製造方法。
(6)前記電極層の表面の算術平均粗さRaの値が20nm以下であり、前記基材としての塗装金属板の電圧100V印加時の漏れ電流値が10-6A/cm2未満、該塗装金属板の塗装膜のうちの最表層のゴム状弾性領域における動的貯蔵弾性率の最小値が1×108Pa以下、該塗装膜の総膜厚が1〜30μmであることを特徴とする、上記(4)又は(5)に記載の塗装基材の製造方法。
(7)前記電極層の表面の最大山高さRpと最大谷深さRvの合計粗さRzの値が200nm以下であることを特徴とする、上記(6)に記載の塗装基材の製造方法。
(8)前記塗装金属板が亜鉛系めっきで被覆された鋼板上に前記塗装膜を形成した塗装金属板であることを特徴とする、上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載の塗装基材の製造方法。
)前記加熱のヒートパターンを、基材温度50℃から80℃までの間を5〜30秒かけて昇温するよう制御することを特徴とする、上記(3)〜(8)のいずれか1つに記載の塗装基材の製造方法。
本発明によれば、固形分濃度3%以下の塗布液を塗布する1回の塗装工程で、基材上に乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層を工業的に形成することが可能になる。
以下、本発明の塗装基材の製造方法について詳細に説明する。
本発明において、基材上に固形分濃度3%以下の塗布液を塗布して乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層を工業的に形成するためには、基材上に塗布液をカーテンコート又はスリットコートで塗布する必要がある。カーテンコート方式又はスリットコート方式による塗布は、固形分濃度3%以下の塗布液を用いた場合にも、基材上に0.5μm以上の膜厚で且つ均一に製膜することができる。その上、カーテンコート方式又はスリットコート方式は、ロールコート方式で課題となるローピング模様も発生しないという利点も併せ持つ。
本発明の製造方法で塗膜層を形成する基材としては、塗装により塗膜を形成するのに用いられる一般的なものを用いることができる。一例を挙げれば、鋼板を始めとする金属板、金属板の表面に予め塗装膜を形成した塗装金属板、あるいは有機フィルムなどを用いることができる。塗装金属板における塗装膜は、一層で形成されていても、複数層で形成されていてもよい。
本発明においては、カーテンコート方式又はスリットコート方式により塗布液を塗布した基材を、少なくとも片側から加熱して50〜250℃の温度範囲内で1秒〜2分間保持することも必要である。50℃未満の加熱では、塗布液の乾燥に要する時間が長くなり、生産性の低下につながる。250℃を超える温度での加熱では、形成する塗膜層の劣化を招きかねず、またこの問題は基材が有機フィルムである場合にも発生し、基材が塗装金属板(例えば亜鉛系めっきで被覆された鋼板上に塗装膜を形成した金属板)である場合にも発生する(250℃を超える温度で金属板上の塗装膜が劣化する可能性がある)。1秒未満の加熱では塗布液の乾燥に不十分であり、2分を超えると生産性の低下を招く。特に生産性を考慮すれば、好ましい加熱条件は、80〜230℃の温度範囲で5〜60秒間加熱、より好ましくは100〜170℃の温度範囲で10〜30秒加熱である。
本発明では、加熱により0.5μm以上の乾燥膜厚の塗膜層を形成する。乾燥膜厚の上限は、塗膜層の構成成分(塗布液中の固形分)の種類や、塗膜層の用途などに応じて様々であるが、3.0μm程度であるのが好ましい。固形分濃度3wt%以下の塗布液で乾燥膜厚3μmを超える塗膜層を形成しようとすると、塗布液の流動性にも依存するが、加熱前の厚いウェット膜厚の保持が困難になりかねないからである。また、後述する導電性高分子のPEDOT/PSSで電極層を形成するために本発明の方法を適用した場合には、0.5μm未満では導電性が不足し、3.0μmより厚いと密着不良が発生し、また原料コストも高くなり、不都合である。
基材上に低固形分濃度の塗布液で厚膜を製膜するためには、ウェット膜厚が厚くなり、これを現行主流の熱風炉や直火炉を用いて工業生産に見合う高速(〜2分)で加熱乾燥すると、「わき」と呼ばれる製膜欠陥が発生しやすくなる。ここで、「わき」とは、塗布液の乾燥過程で液中の溶媒など揮発性の残留成分が、硬化し始めた塗膜表面を通過しきれず、突沸的に蒸発することで、塗膜表面に発生する噴火口状の欠陥であり、わき欠陥は乾燥膜表面の平滑性を著しく損なうこととなる。わきの発生防止のためは、基材が鋼板などの金属板、あるいは金属板の表面に塗装膜を形成した塗装金属板である場合、塗布液を塗布した金属板(又は塗装金属板)の両側から加熱して、塗布液を基材側とその反対側の両方から乾燥させるヒートパターンにするのが好適であり、そのためには熱風併用型誘導加熱が最適な手段である。このほかに、近赤外線加熱や、熱風併用型の近赤外線加熱などを利用してもよい。一方、基材が有機材料製のフィルムなどの場合には誘導加熱は有効でないため、近赤外線加熱や、熱風併用型の近赤外線加熱などを利用して基材を加熱し、塗膜層を形成する。この場合には、より穏やかなヒートパターン(よりゆっくりの加熱時間、低めの加熱温度)により、わきの発生を抑制することができ、加熱は片側からだけでも両側からでもよい。
本願発明の方法で使用する固形分濃度3%以下の塗布液の一例として、太陽電池や有機ELデバイスなどの有機半導体デバイスのための電極材料であり、塗布液が固形分濃度2%以上ではゲル化することが知られている、導電性高分子PEDOT/PSSの水分散液を挙げることができる。PEDOT/PSS水分散液のような水系塗布液の基材上への工業的な塗布方式は、ロールコート方式が現在主流であり、このほかに、ディップ方式やスプレー方式などの例も見られる。しかし、これらのいずれによる場合も、基材への付着特性を鑑みると、0.5μm以上の厚膜を得るためには、塗布液の固形分濃度を3%超に濃縮する必要がある。例えば、ロールコート方式の場合に達成可能なウェット膜厚は15μm程度が上限であり、固形分濃度1.3%のPEDOT/PSS塗布液で乾燥膜厚0.5μmの電極層を得るために必要なウェット膜厚38μmには遠く及ばない。従って、固形分濃度1.3%の塗布液でも乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層の形成を可能にする本発明の塗装基材の製造方法は、PEDOT/PSS塗布液による電極層の形成に好適な方法である。
このように、本発明によって、低固形分濃度の有機材料を含有する塗布液により電極層を形成して、有機半導体デバイスのための電極層を備えた塗装基材を製造することができる。特に同一基材上に複数のデバイスを形成する場合、一般に電極層は絶縁体の上に形成する必要があり、従って基材としては上述の塗装金属板や有機フィルムが用いられる。また、この場合、実用的な有機半導体デバイスのためには、形成した電極層は100Ω/□以下のシート抵抗を示すべきである。より好ましいシート抵抗値は10Ω/□以下(現行主流のITO電極層相当のシート抵抗値)である。シート抵抗値は、JIS K 7194準拠の4探針法により、例えば三菱化学製ロレスタ−GPなどの測定装置を用いて測定される。
本発明の方法により有機半導体デバイスのための電極層を備えた塗装基材を製造するために、基材として塗装金属板を用いる場合には、実用的な絶縁性の確保のために、塗装金属板はその塗装膜の表面の算術平均粗さRaの値が20nm以下、塗装膜のうちの最表層のゴム状弾性領域における動的貯蔵弾性率の最小値が1×10Pa以下、塗装膜の総膜厚が1〜30μm、電圧100V印加時の漏れ電流値が10-6A/cm2未満であるのが好ましい。更に、この場合には、電極層の表面の最大山高さRpと最大谷深さRvの合計粗さRzの値が200nm以下であることが好ましい。
上述のように、塗装金属板における塗装膜は複数層で形成されていてもよいが、塗装膜が2層以上の塗膜からなる場合には、以下に説明するように、最表層の塗膜の物性が、塗装金属板、ひいては塗装金属板を用いて作製される半導体デバイスの特性に大きく影響する。このことから、上述の塗装膜についての規定は、主に、最表層の膜に関するものとなっている。
電極層の表面の算術平均粗さRaの値は、上述のように20nm以下であることが好ましく、より好ましくは最大山高さRpと最大谷深さRvの合計粗さRzの値が200nm以下である。最表層のRaが20nmより大きいと、下地金属板の表面の凹凸を十分に平坦化することができず、電気的性能の低下を引き起こす恐れがある。また、最表層膜のRzの値が200nmより大きいと、たとえRaが20nm以下であっても、その上に形成する電極層に特異的にピンホールが発生し、短絡の原因となるため、好ましくない。
電極層の表面粗さは、測定方法の違いによって得られる数値が異なることが知られている。本発明で規定する算術平均粗さRaや、最大山高さRpと最大谷深さRvの合計粗さRzは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて塗装膜の表面形状を撮像し、得られた像から測定した粗さ曲線を元に算出した値である。
塗装膜の総膜厚は、1〜30μmであることが好ましい。総膜厚が1μm未満では、絶縁性が確保できず、30μm超では、コスト面から不利になる。塗装膜のより好ましい総膜厚は5〜20μmである。
塗装膜の総膜厚は、塗装膜の断面観察や電磁膜厚計等の利用により測定できる。そのほかに、基材金属板の単位面積当りに付着した塗装膜の質量を、塗装膜の比重又は塗布溶液の乾燥後比重で除算して算出してもよい。塗装膜の付着質量を求める方法は、基材金属板の塗装前後の質量差を算出すること、塗装後の塗装膜を剥離した前後の質量差を算出すること、又は、塗装膜を蛍光X線分析して予め膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定すること等、既存の手法から適切に選択すればよい。塗装膜の比重又は塗布溶液の乾燥後比重を求める方法は、単離した塗装膜の容積と質量を測定すること、適量の塗布溶液を容器に取り乾燥させた後の容積と質量を測定すること、又は、塗装膜構成成分の配合量と各成分の既知の比重から計算すること等、既存の手法から適切に選択すればよい。
上述した各種測定方法の中でも、比重等が異なる複数の塗料から形成した塗装膜でも簡便に精度よく測定できることから、塗装膜の総膜厚の測定方法としては、塗装膜の断面観察を利用することが好適である。
塗装膜の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗装膜の厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法や、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗装膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗装膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
本発明により製造した、電極層としての塗膜層を備えた塗装基材を用いて有機半導体デバイスを製造する場合、その有機半導体デバイスは低温で製作可能であるから、基材とその上の電極層との間で、両者の熱膨張率の差により生じる熱応力の問題が深刻になることはない。とは言え、より高い信頼性のためには、その問題を解消しておくことが好ましい。そのためには、電極層と基材との界面応力を緩和するのが好適であり、後に有機半導体デバイスを作製するため熱履歴が与えられた際に蓄積される歪みエネルギーを小さくするとよい。
基材として予め塗装膜を設けた塗装金属板を使用する場合、前記歪みエネルギーは、一般に塗装金属板の塗装膜(半導体デバイスの電極層の下に位置する)の内部に蓄積され、塗装膜を構成する主樹脂の粘弾特性により小さくすることができる。本発明で使用する塗装金属板において、主樹脂は特に限定されないが、例えば、架橋構造を持つ熱硬化型樹脂の場合、歪みエネルギーは架橋点間分子量に依存し、架橋点間分子量は、一般に樹脂のゴム状弾性領域の平衡弾性率と相関がある。
粘弾性体である樹脂は、温度や時間(動的貯蔵弾性率の場合は周波数)に依存して弾性率が変化する。架橋された熱硬化型樹脂の場合、低温もしくは短時間(動的貯蔵弾性率の場合は高周波)の領域(一般にはこの領域をガラス状弾性領域と呼ぶ)で、高い弾性率(一般に109〜1010Pa付近の値)を示す。そして、温度が高くなるか、もしくは時間が長くなるに従い(動的貯蔵弾性率の場合、周波数が低くなるに従い)、弾性率が急激に減少する領域が現れる(一般にはこの領域を転移領域と呼ぶ)。更に高温もしくは長時間(動的貯蔵弾性率の場合、低周波数)になると、一定の平衡弾性率となり、この平衡弾性領域をゴム状弾性領域と呼ぶ(一般には、106〜108Pa付近の値を示す)。
本発明では、動的粘弾性測定装置によって、一定周波数(角周波数6.28rad/sec)、温度−50〜200℃の領域で測定した動的貯蔵弾性率のうち、高温のゴム状弾性領域で現れる動的貯蔵弾性率の最小値で、基材として使用する塗装金属板の塗装膜の特性を定義している。なお、動的貯蔵弾性率とは、一般にE’で表され、E’=(σ0/γ0)cosδで定義される。ここでのσ0は応力の最大振幅、γ0は歪みの最大振幅、δは応力と歪みとの間の位相角を表す。
基材として使用する塗装金属板の塗装膜のうちの最表層塗膜を構成する主樹脂のゴム状弾性領域における動的貯蔵弾性率の最小値は、1×10Pa以下が好ましい。動的貯蔵弾性率の最小値が1×10Pa超では、塗装膜を構成する主樹脂の架橋点間分子量が小さくなり、熱応力を受けた際に塗装膜内部に蓄積する弾性的な歪みエネルギーが大きくなる。すなわち、有機半導体デバイスの形成直後は塗装膜が外観上健全に見える場合であっても、熱履歴を受けた際に塗装膜の破壊や剥離が生ずる恐れがある。より好ましくは、動的貯蔵弾性率の最小値は2×107Pa以下である。
基材として使用する塗装金属板は、電圧100V印加時の漏れ電流値が10-6A/cm2未満であることが好ましい。その理由は、有機半導体デバイスの支持体として用いられる塗装金属板には、半導体層と下地金属板との導通による電気的性能の低下を抑制するための絶縁性が必要であり、上記漏れ電流値が10-6A/cm2以上では半導体の品質を担保することが困難となるからである。漏れ電流値は10-7A/cm2以下であるのが好ましく、10-9A/cm2以下であるのがより好ましい。漏れ電流値は、測定塗膜上に、真空蒸着装置を用いて白金電極を1cmに形成した後、高抵抗測定装置(例えばKEITHLEY社製237)により、電圧を0〜100Vまで印加し、電圧100V印加時の前記塗膜面と裏面金属面との間の電流値を測定することで得ることができる。
基材として使用する塗装金属板の塗装膜の主樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂などが例として挙げられ、特に限定されないが、加工が厳しい用途に使用される場合には、熱硬化型の樹脂がより好ましい。熱硬化型の樹脂としては、エポキシポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミンポリエステル樹脂、ウレタンポリエステル樹脂などのポリエステル系樹脂やアクリル樹脂が挙げられ、これらは他の樹脂と比べて加工性が良く、厳しい加工の後にも塗膜層に亀裂が発生しにくい。
塗装膜の最表層をポリエステル系樹脂によって形成する場合、ポリエステル系樹脂の種類は特に限定されないが、一般に公知の多塩基酸と多価アルコールとのエステル化合物であって、一般に公知のエステル化反応によって合成されるものが好ましい。
多塩基酸としては特に限定されないが、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸などを挙げることができる。これらの多塩基酸は、1種を使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
多価アルコールとしては特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの多価アルコールは、1種又は2種類以上を混合して用いてもよい。
ポリエステル系樹脂を用いるに当たっては、硬化剤を配合すると、塗膜層の硬度が向上するため好ましい。硬化剤としては特に限定されないが、一般に公知のアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物のいずれか一方または双方を用いることができる。
アミノ樹脂としては特に限定されないが、例えば、尿素、ベンゾグアナミン、メラミン等とホルムアルデヒドとの反応で得られる樹脂、及びこれらをアルコールによりアルキルエーテル化したものなどが使用できる。具体的には、メチル化尿素樹脂、n−ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、iso−ブチル化メラミン樹脂等を挙げることができる。
塗装金属板の分野で広く用いられる樹脂は、ポリエステル系樹脂を主樹脂とし、メラミン系樹脂を硬化剤としたポリエステル/メラミン系樹脂である。なお、ここで言うメラミン系樹脂は、メチル化メラミン、n−ブチル化メラミン、iso−ブチル化メラミンのうちの少なくとも1種以上を指す。
ポリイソシアネート化合物としては特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、芳香族第二級アミン、第三級アルコール、ラクタム、オキシム等のブロック剤でブロック化したイソシアネート化合物が好ましい。さらに好ましいポリイソシアネート化合物としては、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)及びその誘導体、TDI(トリレンジイソシアネート)及びその誘導体、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)及びその誘導体、XDI(キシリレンジイソシアネート)及びその誘導体、IPDI(イソホロンジイソシアネート)及びその誘導体、TMDI(トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)及びその誘導体、水添TDI及びその誘導体、水添MDI及びその誘導体、水添XDI及びその誘導体等が挙げられる。
予め表面に塗装膜を設けた塗装金属板を基材として使用する場合、その塗装膜の構成は、特に限定されないが、塗装膜が2つ以上の塗膜層からなる場合は、少なくとも1つの塗膜層が防錆顔料を含有することが、後に作製する半導体デバイスの耐食性を高める上で好ましい。
防錆顔料としては特に限定されないが、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛、トリポリリン酸アルミニウムなどのリン酸系防錆顔料や、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウムなどのモリブデン酸系防錆顔料や、酸化バナジウムなどのバナジウム系防錆顔料や、カルシウムシリケートなどのシリケート系防錆顔料や、水分散シリカ、ヒュームドシリカ、カルシウムイオン交換シリカなどのシリカ系防錆顔料や、フェロシリコンなどのフェロアロイ系防錆顔料などの一般に公知のクロメートフリー系防錆顔料、あるいは、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カリウム、クロム酸バリウム、クロム酸カルシウムなどの一般に公知のクロム系防錆顔料を用いることができる。ただし、近年の環境保全の観点から、防錆顔料としてはクロメートフリー系防錆顔料の使用が好ましい。これらの防錆顔料は、単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
防錆顔料の添加量は、塗膜層の固形分基準で1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。防錆顔料の添加量が1質量%未満では、耐食性の改良が十分でなく、40質量%超では加工性が低下して、加工時に塗膜層が脱落する場合があり、耐食性も劣る傾向にある。
基材として用いる塗装金属板の下地金属板とその上の塗装膜との間には、必要に応じて化成処理層を設けてもよい。化成処理層は、下地金属板と塗装膜との密着性の強化、及び耐食性の向上などを目的に設けられる。化成処理としては公知の技術を使用でき、例えば、リン酸亜鉛処理、クロメート処理、シランカップリング処理、複合酸化被膜処理、クロメートフリー処理、タンニン酸系処理、チタニア系処理、ジルコニア系処理、Ni表面調整処理、Co表面調整処理、これらの混合処理等が挙げられる。これらの処理のうち、環境保全の観点から、クロメートフリー系の処理が好ましい。
本発明で基材として金属板を用いる場合、その表面の塗装膜の有無にかかわらず、例えば、鉄、鉄基合金、アルミニウム、アルミニウム基合金、銅、銅基合金等の板を用いることができ、金属板上に任意のめっき層を有するめっき金属板を使用することもできるが、使用可能な金属板はこれらに限定はされない。ここに挙げた金属板の中で最も好適なものは、亜鉛系めっき層又はアルミニウム系めっき層を有する鋼板である。
亜鉛系めっき層としては、例えば、亜鉛めっき層、亜鉛−ニッケルめっき層、亜鉛−鉄めっき層、亜鉛−クロムめっき層、亜鉛−アルミニウムめっき層、亜鉛−チタンめっき層、亜鉛−マグネシウムめっき層、亜鉛−マンガンめっき層、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっき層、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコンめっき層等を挙げることができ、更には、これらのめっき層に、少量の異種金属元素又は不純物として、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を含有したもの、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物を分散させたものを挙げることもできる。
アルミニウム系めっき層としては、例えば、アルミニウムめっき層、又は、アルミニウムと、シリコン、亜鉛、マグネシウムのうちの少なくとも1種とからなる合金のめっき層、例えば、アルミニウム−シリコンめっき層、アルミニウム−亜鉛めっき層、アルミニウム−シリコン−マグネシウムめっき層等を挙げることができる。
更には、上述しためっき層と、他の種類のめっき層、例えば、鉄めっき層、鉄−リンめっき層、ニッケルめっき層、コバルトめっき層等とが積層された複層めっき層を有する金属板も適用可能である。
めっき方法としては、特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法であってもよい。
本発明により有機半導体デバイスの電極層を備えた塗装基材を製造する場合について言うと、電極層の形成に用いる有機導電性材料としては、有機半導体デバイスの電極層に求められる上述の要件を満足することに加えて、基材上に塗布して低温加熱による製膜が可能であり、且つ仕事関数の観点から実用的なものを使用する必要がある。このような要件を満たす好適な電極層材料の例として、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート)を挙げることができる。PEDOT/PSSは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホネート(PSS)からなる高分子化合物である(例えば特開2013−185137号公報参照)。架橋PPSは直鎖PPSと比べて、形成したPEDOT/PSS電極層の導電性を低下させると推定される(特開2011−225789号公報参照)ことから、また調達性の観点からも、PSSは直鎖タイプのものを用いることが好ましい。
PEDOT/PSSを含有する塗布液としては、市販品を使用することができる。市販品の例として、H.C.Starck社のCLEVIOSシリーズ、Aldrich社のPEDOT−PASS483095、560598、Nagase Chemtex社のDenatronシリーズを挙げることができる。
有機薄膜太陽電池(OPV)などの有機半導体デバイスで要求されるより高度な導電性を確保するために、PEDOT/PSS構造の改質などが活発に研究されている。しかし、実際には、PEDOT/PSS膜の厚膜化なしでは、ITO相当の導電性を得ることはできない。導電性の向上に関しては、PEDOT/PSS膜に炭素繊維などの導電性フィラーを添加し複合化することで、導電性の向上を図る検討も数多くなされている。しかし、導電フィラーの添加は形成した電極層の表面平滑性の観点から、有機半導体デバイスの電極層として用いるには不適である。
先に説明したように、特許文献1に、PEDOT/PSSを水分散させた塗布液による電極層の作製が記載されている。しかし、特許文献1に示されたPEDOT/PSS製電極層では、本発明の方法により得られる電極層の100Ω/□以下というシート抵抗値を達成することができない(特許文献1の実施例参照)。一方、特許文献1には、膜厚を増大させることで導電性が向上する旨記載されている。一般に、膜厚の増大には塗布液の固形分濃度(NVC)の上昇が好適だが、PEDOT/PSS塗布液は固形分濃度2%以上に濃縮するとゲル化することが報告されている(一般に用いられているPEDOT/PSS水分散液中のPEDOT/PSS濃度は1.3%である)。しかし、特許文献1に、固形分濃度2%以下の塗布液で膜厚の増大を実現する技術の開示は見当たらない。
一方、特開2011−225789号公報によれば、PEDOT/PSSのPSSを直鎖タイプから架橋タイプに変更することで、PEDOT/PSS塗布液の固形分濃度を8%まで上昇させることに成功している(実施例参照)。しかしながら、開示されたPEDOT/PSS厚膜(本発明における好ましい上限膜厚3.0μmの4倍以上)でも、本発明の方法により得られる電極層の100Ω/□以下というシート抵抗値に達していない。また、架橋PPSは直鎖PPSと比べて導電性に劣る傾向が認められる(特開2011−225789号公報の実施例参照)。これは、導電体PEDOTを可溶化するPSSが架橋化により緻密な三次元構造を取ったことで、高導電化に有効なPEDOT均一配向を妨げたためと推定される。
本発明の方法によれば、直鎖タイプのPSSを採用した市販のPEDOT/PSS塗布液(固形分濃度1.3wt%程度)用い、膜厚3.0μm以下の電極層を形成した場合においてさえ、電極層は100Ω/□以下という実用的なシート抵抗値を示す。上述のとおり、形成するPEDOT/PSS電極層の膜厚は0.5〜3.0μmとするのが好ましい。0.5μm未満では導電性が不足し、3.0μmより厚いと密着不良が発生し、また原料コストも高くなって不都合である。PEDOT/PSS電極層の膜厚は、1.0〜2.0μmであることがより好ましい。電極層の膜厚は、塗装金属板の塗装膜の膜厚測定について先に説明した方法と同様の方法で測定することができる。
高分子導電性材料のPEDOT/PSSについては、PEDOT/PSS構造の改質により導電性を高める試みが盛んに行われており、PEDOTの配向を均一に制御することがPEDOT/PSS膜の高導電化に極めて有効であることが報告されている。塗装金属板上のPEDOT/PSS塗布液の加熱乾燥において、基材塗装金属板の片側からの加熱のみでは、マランゴニ対流(温度差など不均質性を有する液体で発生する対流)により製膜の均一性が失われやすく、PEDOTの配向の均一性を損ないやすいため、その点からも塗装金属板の両側から加熱する熱風併用型誘導加熱などは好適である。
PEDOTの配向性は、PEDOT/PSS塗布液を塗布後、ウェット状態の塗布液中で形成され、これが乾燥、製膜後もそのまま保持されることが知られている。ジメチルスルホキシド(DMSO)(沸点190℃)など高極性溶媒の少量添加で、PEDOT/PSS膜の導電性が著しく向上する研究例では、配向性が効率的に形成される比較的高温(50℃〜80℃)で、塗布液ウェット状態を一定時間保持することが塗膜中PEDOTの配向性に寄与しているとの解釈もある。本発明を適用する場合、PEDOT/PSS塗布液を乾燥製膜する際に、熱風併用型誘導加熱を用いることで、ヒートパターンをより高精度に制御することができ、加熱乾燥時のPEDOT/PSS塗布液ウェット状態での、すなわち、板温50〜80℃の温度域での保持制御が可能となり、必要なPEDOTの配向性を得ることが可能となる。例えば、板温50℃から80℃までの間を5〜30秒かけて昇温する。5秒未満では、PEDOTの配向制御が不足し、30秒より長いと、生産性が低下して製造コストが高くなり、不都合である。より好ましい昇温時間は8〜15秒である。
このように、本発明によれば、PEDOT/PSS塗布液のカーテンコート方式(あるいはスリットコート方式)による塗布と、塗布液を塗布した塗装金属板の両側からの加熱を可能にする熱風併用型誘導加熱などによる乾燥によって、ITO相当の導電性が得られるPEDOT/PSS厚膜を、工業生産により実現することができる。カーテンコートあるいはスリットコート自体は、広く知られた塗布方式であり、ここで詳しく説明するまでもない。同様に、熱風併用型誘導加熱を始めとする上述の加熱方式も広く知られており、ここで詳しく説明するまでもない。
ここまでは主に、塗装金属板上にPEDOT/PSS塗布液から形成した電極層を備えた有機半導体デバイス用基材の製造に関して本発明を説明してきたが、本発明はこのような実施形態に限定されない。例えば、基材を塗装金属板から有機フィルムに変更して、本発明により上記電極層を備えた有機半導体デバイス用基材を製造してもよい。PEDOT/PSS塗布液に限らず、固形分濃度を3wt%超にできない塗布液(例えば、ポットライフの関係で固形分濃度を高くできない塗布液)を使用し、乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層を設けた塗装基材の製造が求められる場合などにも、本発明が利用できる。
次に、実施例により本発明を更に説明することにする。以下に示す実施例は、本発明を例示するものであって、本発明の限定を意図するものではない。
基材として塗装金属板を使用し、塗布液としてPEDOT/PSS水分散液を使用して、有機半導体デバイス用の電極層を設けた塗装基材を作製した。
塗装金属板としては、板厚0.5mm、亜鉛付着量が片面40g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板の片面に、下地化成処理層(シランカップリング剤、水分散シリカ、水系アクリル樹脂を含む処理液を用いて形成)を形成後、その上に1層の塗装膜(メラミン硬化ポリエステル樹脂膜)を設けたものを使用した。塗装金属板について測定した電圧100V印加時の漏れ電流値、塗装膜の総膜厚、塗装膜のゴム状弾性領域における動的貯蔵弾性率の最小値を、上述の方法により測定した(総膜厚の測定は塗装膜断面のTEM観察により、動的粘弾性測定装置としては、レオメトリックサイエンティフィックエフィー社製RSA−11を使用した)。測定結果を表1に示す。
Figure 0006459729
電極層を形成するための塗布液組成物は、市販のPEDOT/PSS水分散液であるH.C.Starck社製Clevios P HC V4に、Aldrich社製DMSOを5.0%(PEDOT/PSS水分散液に対する質量%)と、界面活性剤としてAldrich社製TritonX−100を0.5%(PEDOT/PSS水分散液に対する質量%)添加し、スターラーで撹拌することで調製した。尚、使用した市販品PEDOT/PSS水分散液中のPEDOT/PSS固形分濃度(水分散液に対する質量%)は、1.3%であった。前記塗布液を表2に示す塗布方式で塗装し、表3に示す加熱方式を用いて電極層を形成して、塗装基材を作製した。
Figure 0006459729
Figure 0006459729
[電極層厚]
作製した電極層被覆塗装金属板を塗膜層の厚み方向と垂直にし、常温乾燥型エポキシ樹脂中に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。次いで、得られた電極層被覆塗装金属板の断面像から、電極層の厚みを計測した。
計測した電極層厚を、電極層被覆塗装金属板の作製条件とともに表4にまとめて示す。
Figure 0006459729
表4に示した電極層被覆塗装金属板について、以下の評価試験を実施した。尚、何れの試験についても、電極層被覆面を評価面とした。
[電極層の表面外観]
作製した電極層被覆塗装金属板の表面外観を目視にて観察し、ランダムに選出した100cm2面積におけるわき発生数を以下の評価点で評価した。
5:わき発生なし
4:わき発生数3個未満
3:同4個以上、10個未満
2:同10個以上、20個未満
1:同20個以上
[電極層の導電性]
作製した電極層被覆塗装金属板上の異なる10点の接触抵抗を、三菱化学(株)製抵抗率計ロレスタ−GPを用いた4探針法で測定し、相加平均値をその電極層被覆塗装金属板の表面接触抵抗値とした。次いで、以下の評価点を用いて、導電性を評価した。
5:表面接触抵抗値が5Ω/□以下
4:同5Ω/□より大きく、10Ω/□以下
3:同10Ω/□より大きく、10Ω/□以下
2:同10Ω/□より大きく、106Ω/□以下
1:同106Ω/□より大きい
[電極層の平滑性]
電極層の表面形状をAFM(原子間力顕微鏡)を用いて撮像し、得られた像から測定した粗さ曲線を元に、算術平均粗さRa、最大山高さRpと最大谷深さRvの合計粗さRzを算出した。次いで、以下の評点表を用いて、平滑性を評価した。
5:Raが10nm以下、且つRzが200nm以下
4:Raが10nm以下、且つRzが200nmより大きく、400nm以下
3:Raが10nmより大きく、20nm以下、且つRzが200nm以下
2:Raが20nmより大きく、30nm以下、且つRzが200nmより大きく、400nm以下
1:Raが30nmより大きい、またはRzが400nmより大きい
[密着性]
作製した電極層被覆塗装金属板上に金属素地に達する疵を、縦横各11本1mm間隔で碁盤目状になるようカッターで入れ、テープ剥離後の電極層剥離状態を目視にて観察した。次いで、以下の評価点を用いて、密着性を評価した。
5:碁盤目内における塗膜残存部が100/100
4:同99.5/100以上、100/100未満
3:同95/100以上、99.5/100未満
2:同50/100以上、95/100未満
1:同50/100未満
作製した電極層被覆塗装金属板を評価した結果を表5にまとめる。
Figure 0006459729
表5にまとめた評価結果から明らかなように、本発明に係る電極層被覆塗装金属板は、評点3以上の優れた表面外観と導電性、平滑性、密着性を示し、有機半導体デバイス用の電極層を設けた塗装基材として実用レベルにあることが示された。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的概念の範疇内において、各種の変更例、または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (9)

  1. 基材上に固形分濃度3%以下の塗布液を塗布して乾燥膜厚0.5μm以上の塗膜層を形成することを含む塗装基材の工業的製造方法であって、塗布液をカーテンコート又はスリットコートで塗布し、続いて基材を、熱風併用型誘導加熱により50〜250℃の温度範囲内で1秒〜2分間保持することにより前記塗膜層を形成することを特徴とする、塗装基材の製造方法。
  2. 前記乾燥膜厚が0.5〜3.0μmであることを特徴とする、請求項1に記載の塗装基材の製造方法。
  3. 前記塗膜層をポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)を含有する塗布液により形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装基材の製造方法。
  4. 前記基材が金属板の表面に予め塗装膜を設けた塗装金属板であり、その塗装膜上に形成する前記塗膜層が有機半導体デバイスのための電極層であることを特徴とする、請求項3に記載の塗装基材の製造方法。
  5. 前記電極層が100Ω/□以下のシート抵抗を示すことを特徴とする、請求項4に記載の塗装基材の製造方法。
  6. 前記電極層の表面の算術平均粗さRaの値が20nm以下であり、前記基材としての塗装金属板の電圧100V印加時の漏れ電流値が10-6A/cm2未満、該金属板の塗装膜のうちの最表層のゴム状弾性領域における動的貯蔵弾性率の最小値が1×10Pa以下、該塗装膜の総膜厚が1〜30μmであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の塗装基材の製造方法。
  7. 前記電極層の表面の最大山高さRpと最大谷深さRvの合計粗さRzの値が200nm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の塗装基材の製造方法。
  8. 前記塗装金属板が亜鉛系めっきで被覆された鋼板上に前記塗装膜を形成した塗装金属板であることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1つに記載の塗装基材の製造方法。
  9. 前記加熱のヒートパターンを、基材温度50℃から80℃までの間を5〜30秒かけて昇温するよう制御することを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1つに記載の塗装基材の製造方法。
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