JP5203097B2 - アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材、それを用いたアルミニウム電解コンデンサケース、ならびに、アルミニウム電解コンデンサ - Google Patents

アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材、それを用いたアルミニウム電解コンデンサケース、ならびに、アルミニウム電解コンデンサ Download PDF

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本発明は、良好な深絞り成形性及びしごき成形性を有するとともに、耐高温高湿性にも優れる樹脂被覆アルミニウム材、特にアルミニウム電解コンデンサケースとして有用なアルミニウム電解コンデンサケース用樹脂被覆アルミニウム被覆材、アルミニウム電解コンデンサケース、ならびに、アルミニウム電解コンデンサに関する。
近時、成形後の絶縁用樹脂被覆が不要な樹脂被覆アルミニウム合金板材が、アルミニウム電解コンデンサケース材として使用されるようになってきている。このアルミニウム電解コンデンサケースは円筒形であり、さまざまな高さ/直径比を有する。板を円筒形に形成するため、深絞り成形やしごき成形を組み合わせた厳しい成形が施されることから、建材などに用いられる一般的な樹脂被覆アルミニウム合金板材を使用すると、樹脂層に亀裂や剥離などが発生し、十分な絶縁性が得られない。特に高さ/直径比の大きいケースの成形において、この傾向が顕著である。
また、自動車の高機能化に伴い、車載コンピュータが多数搭載されるようになってきており、そのコンピュータにコンデンサが用いられる。自動車の内部特にエンジンルームは高温になるとともに気候によっては高湿環境にもなる。そのため、車載用コンデンサとしてアルミニウム電解コンデンサが用いられる場合、そのケースにも高い耐高温高湿性が要求される。
成形性に優れるコンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材として、例えば、特許文献1には数平均分子量8000〜28000の水酸基を有するポリエステル樹脂を数平均分子量1000〜5000のポリオール変性ブロック化イソシアネート化合物で架橋した樹脂を形成したアルミニウム樹脂被覆材が提案されている。しかし、この樹脂層はポリエステル系樹脂であり、エステル結合を有することから加水分解されやすく、車載用に要求されるような耐高温高湿性は有していない。
:特開2002−319523号公報
また、特許文献2にはエポキシ系を主成分とし、フェノール系、アクリル系、ウレタン系、尿素系の1種以上を添加した樹脂であって、数平均分子量5000〜30000であり、潤滑剤を樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部含有するものが記載されている。この樹脂層の引張強度は、40N/mm以上、伸びが2%以上、厚さが3〜30μmであり、樹脂被覆アルミニウム板を圧下率40%まで圧延した場合の碁盤目試験での碁盤目残存率が60%以上であるコンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材が提案されている。この発明はエポキシ系樹脂であることから耐高温高湿性には優れるが、高さ/直径比の大きいケースに成形すると十分な絶縁性が得られない。
:特開2006−334917号公報
コンデンサケース材に必要な成形性と耐高温高湿性を両立させるために、成形性に優れるポリエステル系樹脂の表面を耐高温高湿性に優れる樹脂で覆うことが考えられる。例えば、特許文献3には下層塗膜がエポキシ系塗膜及び/又はポリエステル・アミノ系塗膜からなり、上層塗膜がポリエステル・フェノール系塗膜よりなる塗装金属板が提案されている。
:特開2002−355924号公報
特許文献3に記載される塗装金属板は飲料缶への適用を想定しているものと考えられ、耐高温高湿性評価として125℃×30分のレトルト処理後の塗膜表面状態を調べている。しかしながら、車載用コンデンサの耐高温高湿性は飲料缶のレトルト処理より過酷であり、この発明では車載用コンデンサケース材として十分な耐高温高湿性は得られなかった。また、高さ/直径比の大きいケースに成形すると塗膜に亀裂、剥離などが発生し、十分な絶縁性が得られなかった。
また、特許文献4にはポリエステル樹脂を含有する上層塗膜と、(1)芳香族ジカルボン酸を含有するジカルボン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物及び脂肪族グリコールとからなるポリエステル樹脂、ならびに、(2)ポリイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂からなる群から選ばれる硬化剤を含有する下層塗膜からなるプレコート鋼板が提案されている。
:特開平5−98210号公報
特許文献4に記載される塗膜をアルミニウム板に形成しても、車載用コンデンサケース材として十分な耐高温高湿性は得られなかった。また、高さ/直径比の大きいケースに成形すると塗膜に亀裂、剥離などが発生し、十分な絶縁性が得られなかった。
本発明が解決しようとする課題は、高さ/直径比の大きいアルミニウム電解コンデンサケースに成形することができる成形性と十分な耐高温高湿性を有する電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材、ならびに、これを用いた車載用のアルミニウム電解コンデンサケース及びアルミニウム電解コンデンサを提供することにある。
本発明は請求項1において、アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材であって、アルミニウム基材と、エポキシ系樹脂を含む上側樹脂層及びポリエステル系樹脂を含む下側樹脂層との2層の硬化樹脂層とを有し、全樹脂層厚さが2〜22μmであり、全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率が3〜30%になるように硬化されており、上側樹脂層の厚さが全樹脂層厚さの10〜80%であり、前記アルミニウム基材表面において、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値が10〜300μmであり、当該突起が50〜1000個/mm 存在するようにしたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材とした。
本発明は請求項2において、前記下側樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率を、下側樹脂層を形成した後であって上側樹脂層を形成する前において5〜50%とした。
本発明は請求項3において、前記上側樹脂層におけるエポキシ系樹脂の硬化剤をユリア樹脂又はアクリル樹脂とし、エポキシ系樹脂の数平均分子量を5000〜13000とした。また、本発明は請求項4において、前記下側樹脂層におけるポリエステル系樹脂の硬化剤をイソシアネート樹脂又はメラミン樹脂とし、ポリエステル系樹脂の数平均分子量を8000〜32000とした。更に本発明は請求項5において、前記上側樹脂層に潤滑剤として、ポリエチレンワックス又はカルナバワックスを乾燥エポキシ樹脂重量に対して0.1〜5重量%含有するようにした。
本発明は請求項6において、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム樹脂被覆材を用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケースとし、請求項7において、請求項6に記載のアルミニウム電解コンデンサケースを用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサとした。
本発明に係るアルミニウム樹脂被覆材を用いることにより、高さ/直径比の大きいアルミニウム電解コンデンサケースに成形することができる成形性を有しつつ、車載用コンデンサケース材として十分な耐高温高湿性を有するアルミニウム電解コンデンサケースを提供することが可能となる。
A.本発明の要旨について
2層構成のアルミニウム樹脂被覆材を高さ/直径比の大きいケースに成形した際、樹脂層の剥離や亀裂が発生する原因としては、下側樹脂層のアルミニウム基材との密着性不足、上下樹脂層の伸び不足、上側樹脂層の下側樹脂層との密着性不足が考えられる。また、アルミニウム樹脂被覆材の耐高温高湿性が不足する原因としてはポリエステル樹脂の加水分解が考えられる。
本発明者らは、コンデンサケース材に必要な成形性と耐高温高湿性を両立させるために、成形性に優れるポリエステル系樹脂の表面を耐高温高湿性に優れる樹脂で覆うという考え方に基づき、アルミニウム板に種々の樹脂を塗装条件を変えて塗装し、成形性、耐高温高湿性を評価した。
その結果、上側樹脂層、下側樹脂層それぞれに特定の樹脂を用いて特定の硬化状態で樹脂層を形成し、上側樹脂層と下側樹脂層の厚さの比及び全樹脂層厚さ、さらにはアルミニウム基材表面の形状を規定すれば、樹脂層の伸びが十分となり、それぞれの樹脂層の密着性も十分得られることが分かった。その結果、成形性、耐高温高湿性がともに優れるアルミニウム樹脂被覆材が得られることが判明した。
すなわち、全樹脂層厚さ2〜22μmの上下2層の樹脂層において、全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率を3〜30%になるように硬化させ、上側樹脂層の厚さが全樹脂層厚さの10〜80%とし、上側樹脂層をエポキシ系樹脂よりなる樹脂層とし、下側樹脂層をポリエステル系樹脂よりなる樹脂層とすればよいことが判明した。
また、さまざまな表面形状を有するアルミニウム基材に2層の樹脂を形成し、成形性、耐高温高湿性を評価した。その結果、アルミニウム基材の表面形状を以下のように調整することによりさらに成形性が向上することが判明した。すなわち、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値が10〜300μmとし、当該突起が50〜1000個/mm存在するのが好ましい。
B.アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材について
本発明のアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材は、アルミニウム基材表面のポリエステル系樹脂を含む下側樹脂層と、この下側樹脂層上のエポキシ系樹脂を含む上側樹脂層とから構成される。全樹脂層厚さを2〜22μmとする。全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率を3〜30%になるように硬化される。また、上側樹脂層の厚さを全樹脂層厚さの10〜80%とする。
B−2.下側樹脂層
下側樹脂層は、ポリエステル系樹脂から構成される。それ以外の樹脂では十分な成形性が得られないからである。ポリエステル樹脂はエステル基を有することから加水分解し易く、耐高温高湿性はエポキシ樹脂に劣るが、伸びが大きく成形性に優れている。成形時に上側樹脂層であるエポキシ樹脂層に亀裂が生じたとしても、成形性が良好なポリエステル樹脂が下層に存在することにより、絶縁性が確保される。また、従来プレス油はその成形性の良好さから高粘度プレス油が使用されてきたが、環境問題への対応から低粘度で脱脂工程を省略できる揮発性プレス油を使用するケースが増加している。本発明のコンデンサケース材は成形性に優れることから、いずれのプレス油を使用しても成形可能である。
ポリエステル系樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び変成アルキド樹脂等が用いられる。アルキド樹脂は、無水フタル酸などの多塩基酸とグリセリンなどの多価アルコールとの縮合物を骨格とし、これを脂肪酸の油脂で変性したものである。用いる油脂の種類と含有量によって、短油性アルキド樹脂、中油性アルキド樹脂、長油性アルキド樹脂及び超長油性アルキド樹脂に分類される。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸又は飽和多塩基酸とグリコール類をエステル化することによって合成される。多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びアジピン酸が用いられ、グリコール類としては、プロピレングリコールが多く用いられる。変成アルキド樹脂としては、天然樹脂、フェノール樹脂又はスチレンなどの重合性モノマーで変成されたものが用いられる。
ポリエステル系樹脂の硬化剤としては、メラミン樹脂又はイソシアネート樹脂が好適に用いられる。メラミン樹脂としてはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミンが用いられる。イソシアネート樹脂としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが用いられる。これらの硬化剤は、他の硬化剤に比較して成形性に優れるからである。
塗膜を形成するための塗料溶液中の、すなわち硬化前におけるポリエステル系樹脂の数平均分子量は、8000〜32000が好ましい。数平均分子量8000未満では樹脂層の伸びが不足して十分な成形性が得られず、数平均分子量が32000を超えるとアルミニウム基材との密着性が低下し、結果的に成形性が低下する。数平均分子量は、12000〜23000とするのが更に好ましい。
また、以下のように下側樹脂層を硬化させることにより、さらに成形性を向上させることができる。硬化が進むと架橋反応の進行、樹脂分子の絡み合いなどによって塗膜の強度が高くなるが、伸びは小さくなる。したがって、硬化不足の方が成形性に優れる傾向があるが、単に硬化不足にしたのでは樹脂分子同士の結合が弱く、耐高温高湿性が不足する場合がある。そこで本発明では、硬化不足状態に硬化させた後、その上にエポキシ式樹脂を焼き付けることが好ましい。
このように2層の樹脂層を形成することにより、成形性が向上する理由は明らかではないが、硬化不足状態のポリエステル樹脂と、その上のエポキシ樹脂との間で何らかの反応が生起するものと考えられる。また、ポリエステル樹脂層の上にエポキシ樹脂層の蓋をすることになり、ポリエステル樹脂層中に残留する溶媒(溶剤、水など)が揮発し難い状態で硬化することにより、従来のように、ポリエステル塗料溶液を塗布した上にエポキシ樹脂の塗料溶液を塗布して1回焼付にて硬化させた場合とは異なる分子構造を有するものと考えられる。
その結果、本発明の用途であるコンデンサケース材として理想的な成形性と耐高温高湿性を発揮するものと考えられる。下側樹脂層を通常より硬化不足状態で形成し、その上の上側樹脂層形成時に更に加熱することによって得られる樹脂層が、本発明にとって好ましい硬化状態である。一般に硬化状態の指標として抽出率が用いられるが、上側樹脂層を形成する前における下側樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率が、5〜50%となるように硬化させることが好ましい。テトラクロロエチレン抽出率は95℃テトラクロロエチレンにて1時間抽出を行い,樹脂層よりテトラクロロエチレン中に抽出された,言い換えれば溶解した割合と定義される。
なお、この下側樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率は下側樹脂層形成後であって、上層形成前の測定値として規定されるものであり、上側樹脂層を形成した後の測定値ではない。この下側樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率は上側樹脂層形成時の焼付によって変化するが、下側樹脂層形成後の値が上記範囲内にあればよい。上記抽出率が5%未満では硬化が進み過ぎて樹脂層の伸びが不足し、成形性が低下する傾向がある。一方、抽出率が50%を超えると、下側樹脂層の形成時と、その上の上側樹脂層の形成時にそれぞれ焼付を行っても(2回焼付)硬化が不足して、耐高温高湿性が低下する傾向がある。抽出率は、10〜30%とするのが更に好ましい。上記5〜50%のテトラクロロエチレン抽出率を達成するには、上記ポリエステル系樹脂に硬化剤を加えて溶媒に溶解又は分散した塗料溶液をアルミニウム基材に塗布し、金属板到達温度120〜320℃で20〜60秒間焼き付けて硬化する。好ましくは、金属板到達温度200〜280℃で20〜45秒間焼き付けて硬化する。
従来技術における抽出率は、例えば、特許文献3には実施例にポリエステル系塗膜の例として、抽出率が5.2〜21.6%の例がある。本発明は、この従来例に比べて抽出率が比較的大きなものとなっている。本発明では、上記のような樹脂層を成形性と耐高温高湿性とを最も高レベルでバランス良く両立させることができる。コンデンサは種類が多岐に渡るため、ケースに着色する場合があるが、各種顔料あるいは染料を添加することも可能である。
B−1.上側樹脂層
上側樹脂層は、エポキシ系樹脂から構成される。それ以外の樹脂系では2層構成の上側樹脂層として、十分な成形性と耐高温高湿性が得られないからである。つまり、エポキシ樹脂はポリエステル樹脂のように加水分解し易いエステル基を有しておらず、耐高温高湿性に優れるとともに、下側樹脂層のポリエステル樹脂との密着性も良好である。したがって、コンデンサケースに要求される成形性と耐高温高湿性を両立するためには、ポリエステル樹脂層の上にエポキシ樹脂層を形成することが非常に有効である。
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型やビスフェノールF型などのグリシジルエーテル型、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル型、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型、3,4−エポキシシクロヘキサシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの環状オキシラン型が用いられる。
エポキシ系樹脂の硬化剤としては、ユリア樹脂又はアクリル樹脂が望ましい。他の硬化剤に比較して成形性に優れるからである。ユリア樹脂としては、ブチル化ユリア樹脂、ブチル化ユリアメラミン樹脂などが用いられ、アクリル樹脂としてはメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチルなどが用いられる。
塗膜を形成するための塗料溶液中の、すなわち硬化前におけるエポキシ系樹脂の数平均分子量は、5000〜13000(重量平均分子量では40000〜90000)が好ましい。数平均分子量5000未満では樹脂層の伸びが不足して十分な成形性が得られず、数平均分子量が13000を超えると下側樹脂層との密着性が低下し、結果として成形性が悪化するからである。数平均分子量は、7000〜11000(重量平均分子量では60000〜83000)とするのが更に好ましい。エポキシ樹脂の分子量が大きいほど、1本1本が長い分子が絡みあうことになり、分子同士の変位の自由度が大きくなることから、樹脂層の伸びが大きくなる。その結果、成形時の下層樹脂への追従性を向上させることができる。
上側樹脂層の厚さは全樹脂層厚さの10〜80%である。上側樹脂層厚さが全樹脂層厚さの10%未満では十分な耐高温高湿性が得られず、全樹脂層厚さの80%を超えると十分な成形性が得られない。上側樹脂層の厚さを全樹脂層厚さの20〜50%とするのが更に好ましい。
上側樹脂層樹脂の潤滑性を向上させるために、潤滑剤を添加することも成形性を向上させる上で有効である。添加する潤滑剤としては、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、マイクロワックス等が好適に用いられ、これらを上側樹脂層の乾燥重量に対して0.1〜5%添加するのが好ましい。
上側樹脂層を形成するには、上記エポキシ系樹脂に硬化剤を加えて溶媒に溶解又は分散した塗料溶液を、硬化不足状態にある下側樹脂層(ポリエステル系樹脂層)上に塗布し、金属板到達温度230〜320℃で20〜60秒間、好ましくは、金属板到達温度
260〜300℃で20〜45秒間焼き付けて硬化する。
B−3.全樹脂層の厚さと抽出率
全樹脂層の厚さは、2〜22μmである。2μm未満では成形時に樹脂層が破れ易くなり十分な成形性が得られない。22μmを超えると成形時の面圧が大きくなり過ぎ、やはり十分な成形性が得られない。全樹脂層厚さを、4〜14μmとするのが更に好ましい。
全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率は3〜30%である。このテトラクロロエチレン抽出率は上下層を形成した後における上下の樹脂層全体の測定値として規定される。テトラクロロエチレン抽出率が3%未満では硬化が進み過ぎて、樹脂層全体の柔軟性が不足して十分な成形性が得られない。テトラクロロエチレン抽出率が30%を超えると硬化が不十分で、十分な耐高温高湿性が得られない。テトラクロロエチレン抽出率は、好ましくは7〜20%である。
B−4.アルミニウム基材
本発明で用いるアルミニウム基材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材(以下、これらを「アルミニウム基材」と呼称する)が用いられ、要求特性に応じて適宜選択することができる。アルミニウム合金としては、1000系、3000系等が好適に用いられる。アルミニウム基材は、通常0.2〜0.5mmの厚さのアルミニウム板が好適に用いられる。
アルミニウム樹脂被覆材をコンデンサケースに成形する際の成形性を向上するには、樹脂層のアルミニウム基材への追従性が重要である。十分な追従性を得るには樹脂層の伸びとアルミニウム基材への密着性が必要である。良好な密着性を得るには、アルミニウム基材表面がある程度の凹凸を有することが有効であるが、表面形状によっては成形性に悪影響を及ぼす場合がある。つまり、アルミニウム基材表面を適当な形状に調整することにより、成形性を更に向上させることが可能である。
本発明者らは、熱間圧延したアルミニウム基材板を種々の研磨方法で研磨したロールを用いて冷間圧延して、種々の表面形状を有するアルミニウム基材板を製造した。そのアルミニウム基材板にエポキシ樹脂及びポリエステル樹脂を塗装してコンデンサケースに成形し、表面形状と成形後の樹脂層の状態を詳細に調査した結果、圧延方向における長さが大き過ぎる突起が存在すると、かえって成形性が悪化することを見出した。このことは、円筒形状のコンデンサケースを成形する場合、圧延方向と垂直な方向に伸ばされた部分において樹脂層の損傷が特に大きいことに関係するものと考えられ、この部分を詳細に調査した。その結果、圧延方向における長さが大きな突起が存在するアルミニウム基材板では、その長過ぎる突起によって樹脂層が千切られるため、この部分における樹脂層の損傷が大きいことが判明した。
一般に、板材の表面粗度は、二次元粗度計を用いて、圧延方向に対して垂直な方向に走査して測定される。しかしながら、この方法では圧延方向の突起の長さに関する情報が得られない。そこで、本発明においては、三次元粗度計を用いてアルミニウム基材表面の粗度を測定して中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起を視覚化し、突起の圧延方向における長さを測定することにより表面形状を規定した。更に、良好な成形性を得るには突起の圧延方向の長さだけでなく、所定範囲内の存在個数を規定する必要があることを見出した。
具体的には、図1に示すように三次元粗度測定において、まず算術平均粗さRaを測定する。図において、算術平均粗さRaは、例えば以下のように、レーザーテック(株)製コンフォーカル顕微鏡HD100を用いてして測定される。対物レンズ50倍でアルミニウム基材板Bの表面において、レーザープローブを圧延方向と垂直に走査して二次元粗度を測定し,圧延方向の走査位置を変化させて3次元像を測定する。例えば、任意に選んだ320μm角の面積において、圧延方向に8μmずつずらしながら圧延方向と垂直な方向の二次元粗度を40箇所測定し、これら二次元の算術平均粗さRaを40箇所で平均して三次元測定における算術平均粗さRaとするものである。二次元の算術平均粗さRaはJIS B0601に規定される算術平均粗さRaに準拠して測定される。
次いで、前述した320μm角の所定面積について、中心面CSを基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起Pのみからなる3次元像を得て、その画像中に存在する各突起Pの圧延方向Dにおける長さLを計測する。図1において、中心面CSから算術平均粗さRaの2倍に達する面をSで示す。なお、中心面CSとは前述した320μm角の所定面積内において、基準となるアルミニウム基材裏面から最も低い谷の高さと最も高い山の高さを足して2で割った高さにある水平な面である。次いで、これら各突起の個数を計測し、これを1mm当りの個数に換算する。320μm角の所定面積は任意に5箇所選択し、各箇所についてこのような測定を行なって、Raの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値、ならびに、1mm当りにおける存在個数を求める。最後に、5箇所の算術平均値をもって、Raの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値及び存在個数とする。なお、測定面積は、320μm角に限定されるものではなく、任意の面積とすることができる。
中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値は、10〜300μmとするのが好ましい。10μm未満では、突起が小さ過ぎて密着性が不足し、十分な成形性が得られない。300μmを超えると、上述のように突起によって樹脂層が千切られ成形性が悪化する。この長さの平均値は、更に好ましくは20〜100μmである。
中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有し、圧延方向における長さの平均値が10〜300μmの突起数は、50〜1000個/mmとするのが好ましい。このような突起が樹脂層に食い込むことによって密着性が発揮されるため、50個未満では十分な密着性が得られない場合がある。一方、1000個を超えると、個々の突起が有する圧延方向における長さが300μm以下であっても、コンデンサケースの圧延方向と垂直な方向に伸ばされた部分において塗膜の損傷が発生する場合があるからである。
また、種々のアルミニウム基材板について多数試験した結果、ロールにて圧延するアルミニウム基材板の場合、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さ及び単位面積における個数のばらつきは小さいことが判明した。すなわち、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の状況(圧延方向における長さ及び単位面積における個数)と成形性の関係は、300μm角程度の範囲を数カ所測定して、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の状況を測定すれば十分な相関が得られることも判明した。
このようなアルミニウム基材板の表面形状は、以下のような形状を有する圧延ロールにて冷間圧延することによって得られる。圧延ロールの研磨を異なる条件で2回行う。1回目は砥石粒度が#200〜#1000の粗さの砥石にて研磨した後、2回目は#1000〜#3000の粗さの砥石にて研磨することが好ましい。1回目の研磨の際は長過ぎる凹部が形成されないように、送り速度1〜10m/分にて砥石を送る。次いで、2回目の研磨の際は、送り速度0.1〜3m/分にすることが好ましい。
1回目の研磨において、砥石粒度が#200未満であると砥石が粗過ぎてRaの2倍を超える高さを有する突起の個数が1000個/mmを超える場合がある。一方、#1000を超えると砥石が細か過ぎてRaの2倍を超える高さを有する突起の個数が50個/mm未満になる場合がある。1回目の研磨において、送り速度1m/分未満であると圧延方向に長い凹部が発生する。このロールでアルミニウム基材板を圧延すると、圧延方向における長さが大きな突起が多数発生する。その結果、Raの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における平均長さが300μmより長くなる場合がある。一方、送り速度が10m/分を超えるとロール表面の凹部が細かくなり過ぎ、Raの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における平均長さが10μm未満のものが多くなり過ぎる場合がある。
2回目の研磨において、砥石粒度が#1000未満であると砥石が粗過ぎてRaの2倍を超える高さを有する突起の個数が1000個/mmを超える場合がある。一方、#3000を超えると砥石が細か過ぎてRaの2倍を超える高さを有する突起の個数が50個/mm未満になる場合がある。2回目の研磨において、送り速度0.1m/分未満であると圧延方向に長い凹部が発生する。このロールでアルミニウム基材板を圧延すると、圧延方向における長さが大きな突起が多数発生する。その結果、Raの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における平均長さが300μmより長くなる場合がある。一方、送り速度が3m/分を超えるとロール表面の凹部が細かくなり過ぎ、Raの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さが10μm未満のものが多くなり過ぎる場合がある。
以上のようにロールを適切に研磨することにより、長過ぎる凹部の発生を抑制することが可能になり、このようなロールにて冷間圧延することにより本発明の表面形状を有するアルミニウム基材板が得られる。
B−5.樹脂層の下地処理
アルミニウム基材に樹脂層を形成する前にアルミニウム基材表面に下地処理を施して下地皮膜を形成することにより、アルミニウム基材に対する樹脂層の密着性が良好となり成形性の向上に寄与する。樹脂層の下地処理としては、従来よりアルミニウム合金用に用いられているリン酸クロメート処理の他に塗布型クロメート処理や環境問題に配慮したノンクロメート処理を用いることもできる。ノンクロメート処理としては、反応型のリン酸ジルコニウム処理、リン酸チタニウム処理の他、塗布型ジルコニウム処理などを用いることもできる。更に、下地処理の前に、アルミニウム基材をアルカリ脱脂等によって前処理するのが好ましい。
以下に、本発明例と比較例に基づいて本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明例1〜8、10〜15、18〜23、26〜42、44〜52、54〜59、62〜67、70〜75、ならびに、比較例25、43、53、60、61、68、69、76〜78
JIS A3004のアルミニウム合金板を以下の方法にて製造した。すなわち、520℃×4時間の均質処理後,開始温度450℃,終了温度330℃で熱間圧延して、厚さ2.3mmとした。その後、厚さ0.25mmまで冷間圧延し,焼鈍炉にて350℃×2時間の最終焼鈍を実施した。冷間圧延には、表1、表2に示す研磨条件で研磨したロールを用いることにより、これら表に示すところの中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値、1mm当たり存在個数を有する表面形状を備えたアルミニウム基材板を得た。
このアルミニウム基材板材に下地処理として、市販のアルカリ性脱脂液にて脱脂し、次いで市販のリン酸クロメート処理液にて化成処理した。下地処理したアルミニウム基材板の片面に表3、表4に示すベース樹脂と硬化剤を含有する各種塗料をそれぞれの焼付温度(金属到達温度)にて40秒間焼付け試料を作製した。
下側樹脂層のポリエステル樹脂には、種々の数平均分子量の非結晶性ポリエステル樹脂を用いた。上側樹脂層のエポキシ樹脂には、種々の数平均分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂を使用した。ポリエステル樹脂の硬化剤としては、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂を用いた。エポキシ樹脂の硬化剤としては、ユリア樹脂、アクリル樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂を用いた。イソシアネート樹脂としては、ポリオール変性ブロック化トリレンジイソシアネートを用いた。メラミン樹脂としては、メチル化メラミン樹脂を用いた。ユリア樹脂としては、ブチル化ユリア樹脂を用いた。フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂を用いた。アクリル樹脂としては、メタクリル酸を用いた。ベース樹脂及び硬化剤を、メチルエチルケトン(MEK)を主成分とする溶媒に溶解又は分散して塗料溶液を調製した。ベース樹脂:硬化剤は、重量比で,エポキシ樹脂においては90:10であり、ポリエステル樹脂においては70:30であり、ベース樹脂と硬化剤の300gをMEKを主成分とする溶媒1リットルに溶解又は分散した。
アルミニウム基材板の表面形状の測定
冷間圧延後のアルミニウム基材板の表面形状はレーザーテック(株)製コンフォーカル顕微鏡HD100を用いて測定した。対物レンズ50倍でアルミニウム基材板Bの表面において,レーザープローブを圧延方向と垂直に走査して二次元粗度を測定し、圧延方向の走査位置を変化させて3次元像を測定する。320μm角の面積において、圧延方向に8μmずつずらしながら圧延方向と垂直な方向の二次元粗度を40箇所測定し、これら二次元の算術平均粗さRaを40箇所で平均して三次元測定における算術平均粗さRaとした。前述した320μm角の面積部分において、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起のみからなる3次元画像を作成した。そして、その画像に存在する突起の圧延方向における長さ及び突起の個数を計測し、個数については1mm当りの個数に換算した。測定箇所を任意に5箇所選択して5回測定し、Ra、Raの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さ、1mm当りの突起個数の平均値を算出した。
樹脂層厚さの測定
アルミニウム基材板上に形成した下側樹脂層厚さは、渦電流式膜厚計にて5箇所測定して平均値を求めた。下側樹脂層上に上側樹脂層を形成し、全樹脂層厚さを渦電流式膜厚計にて5箇所測定して平均値を求めた。上側樹脂層厚さは、求めた全樹脂層厚さから下側樹脂層厚さを差し引いて算出した。
テトラクロロエチレン抽出率の測定
テトラクロロエチレン抽出率は100mm角に切断した試料を用い、初期重量を測定後、95℃テトラクロロエチレンに1時間浸漬後にこれを乾燥し、95℃テトラクロロエチレン浸漬後重量を測定した。その後濃硫酸に5分浸漬して脱膜し、水洗、乾燥後、脱膜後重量を測定した。テトラクロロエチレン抽出率は下記の式より算出した。測定試料は5試料であって、5つの算術平均値をもってテトラクロロエチレン抽出率とした。また、下側樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率は下側樹脂層形成後であって上側樹脂層形成前に測定し、全体のテトラクロロエチレン抽出率は下側樹脂層及び上側樹脂層形成後に測定した。
テトラクロロエチレン抽出率(%)={(初期重量−テトラクロロエチレン浸漬後重量)/(初期重量−脱膜後重量)}×100
下側樹脂層及び上側樹脂層の厚さ、焼付温度、下樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率、上側樹脂層厚さの全樹脂層厚さに対する比率、全樹脂層厚さを、表3、4に記載する。
成形性の評価
成形性は5段の絞りしごき成形方式にて、樹脂層側を外面にして各種サイズのコンデンサケースに成形し、成形後樹脂層を目視観察して評価した。成形の際、動粘度1.6mm/sの揮発性プレス油を使用した。下記の基準に基づいて評価した。
◎:成形前後において変化がない。
○:樹脂層に微少な亀裂が発生し、表面が若干荒れている。
△:樹脂層に亀裂が発生し、表面が荒れている。
×:樹脂層に亀裂が発生し、表面が荒れているとともに筋が観察される。
◎又は○であれば、コンデンサケース材として十分な絶縁性を有する。言い換えれば、十分な成形性を有する。従って、◎及び○を合格とし、△及び×を不合格とした。
耐高温高湿性の評価
耐高温高湿性は温度80℃、相対湿度85%の環境に2000時間暴露前後の樹脂層表面抵抗によって評価した。すなわち、JIS K6911に準拠した方法にて上記暴露後の表面抵抗を測定した。下記の基準に基づいて評価した。
◎:表面抵抗≧1013Ω
◎○:1013Ω>表面抵抗≧1012Ω
○:1012Ω>表面抵抗≧1010Ω
△:1010Ω>表面抵抗≧10Ω
×:10Ω>表面抵抗
◎、◎○又は○であれば、コンデンサケース材として十分な耐高温高湿性を有する。従って、◎、◎○及び○を合格とし、△及び×を不合格とした。
全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率、成形性、ならびに、耐高温高湿性を、表5、6に記載する。
本発明例ではいずれも、全樹脂層厚さが2〜22μmであり、全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率が3〜30%となるように硬化されており、上側樹脂層厚さの全樹脂層厚さに対する比率が10〜80%であり、アルミニウム基材表面において、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値が10〜300μmであり、当該突起が50〜1000個/mm 存在した。その結果、コンデンサケース材として十分な成形性、耐高温高湿性を有していた。
比較例25では、上側及び下側の両方の樹脂層にエポキシ樹脂を用いたため、成形性に劣った。
比較例43では、上側及び下側の両方の樹脂層にポリエステル樹脂を用いたため、耐高温高湿性に劣った。
比較例53では、上側樹脂層厚さの全樹脂層厚さに対する比率が8%と低過ぎたため、高温高湿性に劣った。
比較例60では、上側樹脂層厚さの全樹脂層厚さに対する比率が86%と高過ぎたため、成形性に劣った。
比較例61では、全樹脂層厚さが1.5μmと薄過ぎたため、成形性に劣った。
比較例68では、全樹脂層厚さが24μmと厚過ぎたため、成形性に劣った。
比較例69では、全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率が2%と低過ぎ、成形性に劣った。
比較例76では、全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率が32%と高過ぎ、高温高湿性に劣った。
比較例77では、上側樹脂層を形成しなかったため、成形性及び高温高湿性に劣った。
比較例78では、下側樹脂層を形成しなかったため、成形性に劣った。
このように、比較例ではいずれも成形性又は耐高温高湿性が劣り、コンデンサケース材としては適さない。
本発明に係るアルミニウム樹脂被覆材により、良好な成形性と耐高温高湿性を有し高さ/直径比の大きい車載用のアルミニウム電解コンデンサケース及びアルミニウム電解コンデンサを提供することが可能となる。
図1は、アルミニウム基材板表面の3次元像を模式的に示す斜視図である。
符号の説明
B‥‥‥アルミニウム基材板
CS‥‥‥中心面
D‥‥‥圧延方向
L‥‥‥中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さ
P‥‥‥中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起
S‥‥‥中心面から算術平均粗さRaの2倍に達する面

Claims (7)

  1. アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材であって、アルミニウム基材と、エポキシ系樹脂を含む上側樹脂層及びポリエステル系樹脂を含む下側樹脂層との2層の硬化樹脂層とを有し、
    全樹脂層厚さが2〜22μmであり、全樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率が3〜30%になるように硬化されており、上側樹脂層の厚さが全樹脂層厚さの10〜80%であり、
    前記アルミニウム基材表面において、中心面を基準として算術平均粗さRaの2倍を超える高さを有する突起の圧延方向における長さの平均値が10〜300μmであり、当該突起が50〜1000個/mm 存在することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材(ここでいう中心面とは粗度測定を実施した面積内でもっとも低い谷の高さともっとも高い山高さを足して2で割った高さにある水平面である)
  2. 前記下側樹脂層のテトラクロロエチレン抽出率が、下側樹脂層を形成した後であって上側樹脂層を形成する前において5〜50%である、請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材。
  3. 前記上側樹脂層におけるエポキシ系樹脂の硬化剤がユリア樹脂又はアクリル樹脂であり、エポキシ系樹脂の数平均分子量が5000〜13000である、請求項1又は2に記載のアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材。
  4. 前記下側樹脂層におけるポリエステル系樹脂の硬化剤がイソシアネート樹脂又はメラミン樹脂であり、ポリエステル系樹脂の数平均分子量が8000〜32000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材。
  5. 前記上側樹脂層に潤滑剤として、ポリエチレンワックス又はカルナバワックスが乾燥エポキシ樹脂重量に対して0.1〜5重量%含有される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム樹脂被覆材を用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケース。
  7. 請求項6に記載のアルミニウム電解コンデンサケースを用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
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