JP2012164725A - アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材及びその製造方法 Download PDF

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【課題】コンデンサケースに要求される高い成形性と、成形後の樹脂層に対する優れた耐スクラッチキズ性を有するアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材、ならびに、その製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム基材と;当該アルミニウム基材の少なくとも一方の面に形成された下側樹脂層と;当該下側樹脂層の表面に形成された上側樹脂層と;を含み、前記下側樹脂層がポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂の1種以上からなるベース樹脂を含み2〜16μmの乾燥厚さを有し、前記上側樹脂層がポリアミドイミド樹脂からなるベース樹脂を含み1〜6μmの乾燥厚さを有するアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、良好な深絞り成形性、ならびに、コンデンサケースとして成形した後のケース側壁部における耐スクラッチキズ性に優れ、更にコスト面や安全性・環境面にも優れたアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材及びその製造方法に関する。
近時、成形後の絶縁用樹脂被覆が不要な樹脂被覆アルミニウム合金板材が、アルミニウム電解コンデンサケース材として使用されるようになってきている。このアルミニウム電解コンデンサケースは円筒形であり、様々な高さ/直径比を有する。板材を円筒形に形成するため、深絞り成形やしごき成形を組み合わせた厳しい条件での成形が施される。そのため、建材などに用いられる一般的な樹脂被覆アルミニウム合金板材を適用すると、樹脂層に亀裂や剥離などが発生して十分な絶縁性が得られない。特に、高さ/直径比の大きいケースの成形において、この傾向が顕著である。
また、高さ/直径比の大きいケースほど、ケース側壁部における樹脂層厚さが加工により薄くなってスクラッチキズが付き易くなる場合があることから、耐スクラッチキズ性が要求されている。
特許文献1には、電解コンデンサケース等に利用され、成形性に優れ、耐熱変色性及び高温高湿耐久性を有する樹脂被覆アルミニウム材料が開示されている。これは、純アルミニウム又はアルミニウム合金表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜を形成し、その上層に数平均分子量が2000〜100000のエポキシ系樹脂をシランカップリング剤を介して被覆した構造を有する。前記無孔質陽極酸化皮膜の膜厚が30〜200nm、前記シランカップリング剤の無孔質陽極酸化皮膜上への塗布量が0.5〜10mg/m、ならびに、前記エポキシ系樹脂の数平均分子量が5000〜80000でその被覆厚さが2〜20μmとするのが好ましい。
特許文献2には、(A)水酸基含有樹脂とブロックイソシアネート硬化剤を含有する皮膜形成樹脂組成物、(B)アルデヒド化合物吸着能を有する窒素含有化合物で表面処理された無機化合物、及び(C)リン酸チタニウム系化合物を、(A)成分100重量部に対して(B)成分0.1〜10重量部及び(C)成分0.1〜10重量部の割合で含有することを特徴とするプレコート用熱硬化型塗料組成物とそれを金属板に塗装して得られるプレコート金属板が開示されている。さらに(A)成分に含まれる水酸基含有樹脂として、水酸基価5〜200mgKOH/g、数平均分子量が1000〜20000である水酸基含有ポリエステル樹脂が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の樹脂被覆アルミニウム被覆材は、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂が最表面に形成されているために、成形性には優れているも
のの、特に過酷な条件での成形を行ったコンデンサケースに対してはスクラッチキズが付き易いという問題があった。
特開2010−125722号公報 特開2007−204579号公報
本発明の目的は、高さ/直径比の大きなアルミニウム電解コンデンサケースに成形することができる良好な成形性、ならびに、コンデンサケースとして成形した後のケース側壁部の耐スクラッチキズ性に優れ、更にコスト面や安全性・環境面にも優れたアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、成形性の優れたエポキシ系樹脂又はポリエステル系樹脂をベース樹脂とする下側樹脂層の上に、塗膜硬度の大きなポリアミドイミド樹脂をベース樹脂とする上側樹脂層を形成することにより、成形性と耐スクラッチキズ性を高レベルで両立したアルミニウム樹脂被覆材及びその製造方法を見出した。
具体的には、本発明は請求項1において、アルミニウム基材と;当該アルミニウム基材の少なくとも一方の面に形成された下側樹脂層と;当該下側樹脂層の表面に形成された上側樹脂層と;を含み、前記下側樹脂層がポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂の1種以上からなるベース樹脂を含み2〜16μmの乾燥厚さを有し、前記上側樹脂層がポリアミドイミド樹脂からなるベース樹脂を含み1〜6μmの乾燥厚さを有することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材とした。
本発明は請求項2において、前記上側樹脂層が、ポリエチレンワックス及びカルナバワックスの1種以上からなる潤滑剤を当該上側樹脂層の乾燥重量の1.0〜10重量%含有するものとした。
本発明は請求項3において、アルミニウム基材の少なくとも一方の面に、ポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂の1種以上からなるベース樹脂を含む塗料組成物を塗布し、最高到達温度200〜320℃で20〜60秒間焼付け、乾燥厚さ2〜16μmを有する下側樹脂層を形成する工程と;前記下側樹脂層の表面に、ポリアミドイミド樹脂からなるベース樹脂を含む塗料組成物を塗布し、最高到達温度330〜370℃で10〜80秒間焼付け、乾燥厚さ1〜6μmを有する上側樹脂層を形成する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材の製造方法とした。
本発明は請求項4において、前記上側樹脂層用の塗料組成物が、ポリエチレンワックス及びカルナバワックスの一種以上からなる潤滑剤を上側樹脂層の乾燥重量の1.0〜10重量%含有するものとした。
本発明に係るアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材は、コンデンサケースに要求される高い成形性と、成形後の樹脂層に対する優れた耐スクラッチキズ性を有し、更にコスト面や安全性・環境面にも優れる。また、本発明に係るアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材の製造方法を用いることによって、当該被覆材に対する高い成形性と成形後の樹脂層に対する優れた耐スクラッチキズ性を付与することができる。
本発明に係るアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材の構成を示す模式図である。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
図1に示すように、本発明に係るアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材1は、アルミニウム基材2と、このアルミニウム基材2の少なくとも一方の面に形成された下側樹脂層3と、下側樹脂層3の表面に形成された上側樹脂層4とから構成される。図では、アルミニウム基材2の一方の面に下側樹脂層3が形成され、その上に上側樹脂層4が形成された構造を示す。
A.アルミニウム基材
本発明に用いるアルミニウム基材の材質は、純アルミニウム又はアルミニウム合金である。アルミニウム合金としては、1100系、3003系、3004系などが好適に用いられる。アルミニウム基材の形状は、板状のものが好適に用いられる。アルミニウム板の厚さは、0.2〜0.5mmが好ましい。
B.化成処理
アルミニウム基材には、下地処理として化成処理を施すのが好ましい。化成処理によって、アルミニウム基材表面に化成皮膜が形成される。下地処理としては、従来アルミニウム板に施されるリン酸クロメート処理の他に、塗布型クロメート処理やノンクロメート処理を用いることができる。ノンクロメート処理としては、反応型リン酸ジルコニウム処理、リン酸チタニウム処理の他、塗布型ジルコニウム処理などを用いることができる。なお、下地処理の前に、通常の、アルカリ脱脂処理とその後の水洗処理を行なうのが更に好ましい。
C.下側樹脂層
C−1.ベース樹脂
アルミニウム基材表面又は化成処理を施したアルミニウム基材表面に、下側樹脂層が形成される。コンデンサケースの成形は過酷な絞り加工を必要とするため高い成形性が要求されることから、下側樹脂層のベース樹脂としては成形性に優れるポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂の1種以上が用いられる。
ポリエステル系樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び変成アルキド樹脂等が用いられる。アルキド樹脂は、無水フタル酸などの多塩基酸とグリセリンなどの多価アルコールとの縮合物を骨格とし、これを脂肪酸の油脂で変性したものである。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸又は飽和多塩基酸とグリコール類をエステル化することによって合成される。多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びアジピン酸が用いられ、グリコール類としては、プロピレングリコールが多く用いられる。変成アルキド樹脂としては、天然樹脂、フェノール樹脂又はスチレンなどの重合性モノマーで変成されたものが用いられる。ポリエステル系樹脂の数平均分子量は8000〜32000が好ましい。数平均分子量が8000未満では十分な成形性が得られない場合があり、数平均分子量が32000を超えると密着性が低下して結果的に成形性が低下する場合がある。
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型やビスフェノールF型などのグリシジルエーテル型、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル型、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型、3、4−エポキシシクロヘキサシルメチル3、4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの環状オキシラン型が用いられる。エポキシ系樹脂の数平均分子量は5000〜13000が好ましい。数平均分子量が5000未満では樹脂層の伸びが不足して十分な成形性が得られない場合があり、数平均分子量が13000を超えるとアルミニウム基材との密着性が低下して結果として成形性が悪化する場合がある。
エポキシ系樹脂の硬度の増進又は硬化反応を促進若しくは制御するために、硬化剤を用いてもよい。エポキシ系樹脂の硬化剤としては、ユリア樹脂又はアクリル樹脂が好適に用いられる。これらは、他の硬化剤に比べて成形性に優れるためである。ユリア樹脂としては、ブチル化ユリア樹脂、ブチル化ユリアメラミン樹脂などが用いられる。アクリル樹脂としては、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチルなどが用いられる。他の硬化剤に比較して成形性に優れるからである。硬化剤であるユリア樹脂及びアクリル樹脂の含有量は、エポキシ系樹脂の総重量に対して5〜30重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。硬化剤含有率が5重量%未満であると、硬化が不十分となり下側樹脂層の密着性が不足する場合がある。一方、硬化剤含有率が30重量%を超えると、硬化後の強度が低下するなど下側樹脂層の物性が劣化する場合がある。
また、ポリエステル系樹脂の硬化剤としては、メラミン樹脂又はイソシアネート樹脂が好適に用いられる。エポキシ系樹脂の硬化剤と同様に、これらの硬化剤も他の硬化剤に比べて成形性に優れる。メラミン樹脂としては、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミンが用いられる。イソシアネート樹脂としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど、又はこれらのジイソシアネートをビューレット変性、アダクト変性、イソシアヌレート変性させた樹脂が用いられる。他の硬化剤に比較して成形性に優れるからである。硬化剤であるメラミン樹脂又はイソシアネート樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂の総重量に対して5〜30重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。硬化剤含有率が5重量%未満であると、硬化が不十分となり下側樹脂層の密着性が不足する場合がある。一方、硬化剤含有率が30重量%を超えると、硬化後の強度が低下するなど下側樹脂層の物性が劣化する場合がある。
C−2.下側樹脂層厚さ
下側樹脂層の厚さは、2〜16μmとする。上側樹脂層であるポリアミドイミド樹脂層のアルミニウム基材との密着性が劣るため、厚さが2μm未満では、下側樹脂層がプライマーとしての機能を果たせず成形時に樹脂層全体(下側樹脂層及び上側樹脂層を合わせた全樹脂層であり、以下、「塗膜」と記す)に剥離が発生してしまう。また、上側のポリアミドイミド樹脂層は硬化時に殆ど熱収縮しないが、下側樹脂層は硬化時に熱収縮する。そのため、両者における熱収縮性の差によって、下側樹脂層に微小なクラックが発生する。下側樹脂層の厚さが16μmを超えると、成形時にかかる樹脂層の内部応力が大きくなり過ぎ成形後に塗膜が剥離する場合がある。下側樹脂層の厚さは、4〜12μmとするのが好ましい。
C−3.下側樹脂層の形成工程
アルミニウム基材表面又は化成処理を施したアルミニウム基材表面に、ベース樹脂であるポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂の1種以上、すなわち、ポリエステル系樹脂又はエポキシ系樹脂又は両者の混合物を溶媒に溶解又は分散させた塗料組成物を塗布する。塗料組成物中のベース樹脂の含有量は、60〜95重量%である。なお、必要に応じて、防錆剤、レベリング剤、充填剤等を添加してもよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶媒や水等の水性溶媒が用いられる。
塗料組成物の塗布方法については、特に制限はない。例えば、ロールスクイズ法、ケミコーター法、ロールコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等が用いられる。これらの方法のうち下側樹脂層の均一性、生産性からロールコーター法が好ましい。そして、ロールコーター法としては、グラビアロールを用いる方法や、ナチュラルコート方式や、リバースコート方式等を採用することができる。
塗布した塗料組成物は、最高到達温度200〜320℃において20〜60秒間焼付を行うことによって硬化させる。ここで、最高到達温度220〜300℃において25〜40秒間焼付けを行うのが好ましい。最高到達温度が200℃未満、或いは、焼付時間が20秒未満では、硬化が不十分で下側樹脂層の密着性が低下する。その結果、成形時に下側樹脂層が剥離してしまい成形性が低下する。一方、最高到達温度が320℃を超え、或いは、焼付時間が60秒を超える場合、上側樹脂層の焼付けも合わせた加熱の影響によって下側樹脂層が劣化する。その結果、これまた下側樹脂層の成形性が低下する。なお、焼付けは、一般的な加熱法、誘電加熱法などを用いることができる。
D.上側樹脂層
D−1.ベース樹脂
下側樹脂層表面に、上側樹脂層が形成される。コンデンサケース材には、優れた耐熱性、機械特性、絶縁性、耐溶剤性、塗膜硬度なども要求される。そこで、上側樹脂層には、これらの要求を満たし、かつ、耐スクラッチキズ性が良好となるようにポリアミドイミド樹脂(以下、「PAI樹脂」と記す)を用いる。
本発明において用いるPAI樹脂の種類は特に限定されるものではなく、通常のイソシアネート法及び酸クロリド法のいずれかから合成することができる。PAI樹脂は、酸成分とジアミン成分から構成される。酸成分としては、トリメリット酸及びトリメリット酸無水物、ならびに、これらの各塩化物が好適に用いられる。ジアミン成分としては、脂肪族ジアミンとしてエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど;脂環族ジアミンとして1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミンなど;芳香族ジアミンとしてメチレンジフェニルアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンなど;が挙げられ、またそれらのジイソシアネートを用いることもできる。なお、ジアミン成分は酸成分1当量に対して、通常、0.8〜1.2当量、好ましくは0.9〜1.1当量である。ジアミン成分が酸成分1当量に対して0.8当量未満又は1.2当量を超える場合には、正常なPAI樹脂が合成できないので加工性及び耐スクラッチキズ製に劣る。
このようなPAI樹脂は、(1)耐熱性に優れる、(2)機械的強度が良好である、(3)摺動性に優れる、(4)ほとんどの有機溶剤に耐性を有する、(5)加工性に優れる、といった特長を有することから、上側樹脂層に適用した場合の耐熱性、機械特性、耐溶剤性、加工性及び耐スクラッチキズ性にも優れる。PAI樹脂の数平均分子量は10000〜50000であることが好ましい。数平均分子量が10000未満では、塗膜特性の低下(耐熱性、機械特性等)が現れる傾向がある。一方、数平均分子量が50000を超えると、塗料として適正な濃度で溶媒に溶解又は分散した際に、粘度が高くなり過ぎて塗装性に劣ることがある。
なお、PAI樹脂は、合成溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と記す)を使用して溶液重合し、上記のように分子量を十分に高めた樹脂を用いるのが好ましい。
D−2.上側樹脂層厚さ
経済性を考慮し、かつ、コンデンサケースとしての耐スクラッチキズ性の向上を図るため、上側樹脂層の厚さは1〜6μmとする。この厚さが1μm未満では、十分な表面硬度が得られないため耐スクラッチキズ性が低下する。一方、厚さが6μmを超えると、塗装性が悪化するため大幅なコスト高となる。上側樹脂層の厚さは、2〜6μmとするのが好ましい。
D−3.上側樹脂層の形成工程
下側樹脂層表面に、ベース樹脂であるPAI樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗料組成物を塗布する。塗料組成物中のPAI樹脂の含有量は、50〜94重量%である。なお、必要に応じて、防錆剤、レベリング剤、充填剤等を添加してもよい。溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が用いられるが、沸点の高いNMPが特に好ましい。
上側樹脂層の潤滑性を高めることにより、コンデンサケースの絞り加工やしごき加工において成形性を向上させることができる。そのためには、塗料組成物にワックスを添加するのが好ましい。添加するワックスの種類としては、ポリエチレンワックス及びカルナバワックスの1種以上からなる潤滑剤が用いられる。単独で用いる場合には、より良好な潤滑性を示すポリエチレンワックスを用いるのが好ましい。ポリエチレンワックスとカルナバワックスを混合して用いても、良好な潤滑性が得られる。
ワックスの添加量は、上側樹脂層の乾燥重量に対して1.0〜10重量%、好ましくは3.0〜8.0重量%となる量である。1.0重量%未満では、潤滑性が不足する場合がある。一方、10重量%を超えると、上側樹脂層表面にワックス濃度由来のクレーターが発生し易くなり、製品の外観を損ねる場合がある。
塗料組成物の塗布方法については、特に制限はない。例えば、ロールスクイズ法、ケミコーター法、ロールコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等が用いられる。これらの方法のうち上側樹脂層の均一性、生産性からロールコーター法が好ましい。そして、ロールコーター法としては、グラビアロールを用いる方法や、ナチュラルコート方式や、リバースコート方式等を採用することができる。
塗布した塗料組成物は、最高到達温度330〜370℃において10〜80秒間焼付を行うことによって硬化させる。ここで、最高到達温度340〜360℃において30〜60秒間焼付けを行うのが好ましい。最高到達温度が330℃未満、或いは、焼付時間が10秒未満では、硬化が不十分で下側樹脂層との密着性が低下する。その結果、成形時に上側樹脂層が剥離してしまい成形性が低下する。一方、最高到達温度が370℃を超え、或いは、焼付時間が80秒を超える場合、上側樹脂層だけでなく下側樹脂層も劣化する。その結果、これまた上側樹脂層の成形性が低下する。なお、焼付けには、一般的な加熱法、誘電加熱法などを用いることができる。
以下に本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明は特許請求の範囲における技術的範囲を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
本発明例1〜39及び比較例1〜19
アルミニウム基材として、アルミニウム合金板(3004系、板厚0.3mm)を用いた。まず、この両面を市販のアルカリ性脱脂液を用いて脱脂処理を施して水洗した。更に、下地処理として市販のリン酸クロメート処理液にて化成処理を施した。
次に、表1〜3に示す下側樹脂層用の塗料組成物を、化成処理を施したアルミニウム合金板の一方の面にバーコーターによって塗布し、表1〜3に示す条件で焼付けた。更に、表1〜3に示す上側樹脂層用の塗料組成物を下側樹脂層上にバーコーターによって塗布し、表1〜3に示す条件で焼付けた。このようにして、アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材の試料を作製した。このようにして作製した試料について、以下に示すように樹脂層厚さを測定し、成形性とケース側壁部の耐スクラッチキズ性を評価した。なお、下側樹脂層用の塗料組成物中のベース樹脂の含有量は85重量%であり、溶媒としてはメチルエチルケトンを用いた。また、上側樹脂層用の塗料組成物中のベース樹脂の含有量は80重量%であり、溶媒としてはNMPを用いた。
Figure 2012164725
Figure 2012164725
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また、下側樹脂層用の塗料組成物中のベース樹脂について、エポキシ樹脂の場合は数平均分子量が約10000のものを用い、ポリエステル樹脂の場合は数平均分子量が約20000のものを使用した。更に、各本発明例及び比較例において用いたPAI樹脂としては、化学式1、2に示す化学構造を有するものを用いた。化学式1の酸成分としてはトリメリット酸塩化物を、ジアミン成分としてはヘキサメチレンジアミンを用いた。化学式2の酸成分としてはトリメリット酸無水物を、ジアミン成分としてはメチレンジフェニルジイソシアネートを用いた。
Figure 2012164725
Figure 2012164725
なお、化学式1のPAI樹脂の数平均分子量は約30000であり、重合数を示すnは約110であった。また、化学式2のPAI樹脂の数平均分子量は約30000であり、重合数を示すnは約42であった。
(樹脂層厚さの測定)
試料の下側樹脂層厚さは、上側樹脂層を形成する前のものについて、渦電流式膜厚計を用いて任意の5箇所を測定して相加平均値を求めた。次いで、下側樹脂層上に上側樹脂層を形成し、全樹脂層厚さを渦電流式膜厚計を用いて任意の5箇所を測定して相加平均値を求めた。上側樹脂層厚さは、全樹脂層厚さから下側樹脂層厚さを差し引いて算出した。
(成形性)
試料の両面に動粘度1.6mm/sの揮発性プレス油を塗布し、樹脂層側が外側になるようにして、サイズ:φ10×20mmの円筒状コンデンサケースにプレス成形した。成形後の塗膜外観を下記の基準に基づいて目視観察により評価した。
◎:成形前後において変化がない。
○:塗膜外観に微少な亀裂が発生し、表面が若干荒れている。
△:塗膜外観に亀裂が発生し、表面が荒れている。
×:塗膜外観に亀裂が発生し、表面が荒れているとともに筋が観察される。
◎又は○であれば、コンデンサケース材として十分な絶縁性を有する。言い換えれば、
十分な成形性を有する。従って、◎及び○を合格とし、△及び×を不合格とした。
(耐スクラッチキズ性)
上述のようにしてプレス成形したコンデンサケースの側壁部を切り開いて、板状とした。次いで、樹脂層側の表面に対して45°の角度で10円硬貨を接触させることにより試料に1kgの荷重を加えつつ、一定速度で圧延方向と平行方向に試料を移動させることによって表面を10円硬貨で擦った。このときに塗膜外観の傷付き状態を肉眼で観察し、下記の基準に基づいて耐スクラッチキズ性を評価した。
◎:下側樹脂層の露出面積が10未満で、アルミニウム基材の露出なし
○:下側樹脂層の露出面積が10%以上70%未満で、アルミニウム基材の露出なし
△:下側樹脂層の露出面積が70%以上で、アルミニウム基材の露出面積が30%未満
×:下側樹脂層の露出面積が70%以上で、アルミニウム基材の露出面積が30%以上
◎及び○を合格とし、△及び×を不合格とした。
下側樹脂層及び上側樹脂層の厚さ、ならびに、成形性と耐スクラッチキズ性の評価結果を表1〜3に示す。
本発明例1〜39では、成形性及び耐スクラッチキズ性のいずれも合格であった。これに対して比較例1〜19では、成形性及び耐スクラッチキズ性の少なくともいずれかが不合格であった。
比較例1では、下側樹脂層の膜厚が薄いため、プライマーとしての機能が果たせず成形性に劣り、それに伴い耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例2では、下側樹脂層の膜厚が厚いため、成形時において下側樹脂層かかる内部応力が大きくなり過ぎ,成形後において下側樹脂層が剥離する場合があるため成形性が劣り、それに伴い耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例3では、下側樹脂層の焼付時間が短く硬化不足であるため、下側樹脂層の密着性に劣り成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例4では、下側樹脂層の焼付時間が長過ぎたため、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例5では、下側樹脂層の焼付温度が低く硬化不足であるため、下側樹脂層の密着性に劣り成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例6では、下側樹脂層の焼付温度が高過ぎたため、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例7では、上側樹脂層の膜厚が薄いため耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例8では、成形性及び耐スクラッチキズ性には優れるが上側樹脂層の膜厚が厚いため塗装性が悪化しコスト面で不合格であった。
比較例9では、上側樹脂層の焼付時間が短く硬化不足であるため、下側樹脂層との密着性が低下し成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例10では、上側樹脂層の焼付時間が長く上側樹脂層の焼付も合わせた加熱の影響によって下側樹脂層が劣化したため、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例11では、上側樹脂層の焼付温度が低く硬化不足であるため、下側樹脂層との密着性が低下し成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例12では、上側樹脂層の焼付温度が高く上側樹脂層の焼付も合わせた加熱の影響によって下層樹脂が劣化するため、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例13では、上側樹脂層を形成しておらず下側樹脂層のみであるため、耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例14では、下側樹脂層を形成しておらず、アルミニウム基材に直接PAI樹脂が塗装されており、成形時の塗膜剥離が発生する場合があるため、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例15では、上側樹脂層のベース樹脂としてアクリル樹脂を使用し、イソシアネート樹脂を硬化剤として用いたが、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例16では、下側樹脂層に塩化ビニル(ポリ塩化ビニル樹脂)を使用しておリ、成形性及び耐スクラッチキズ性には優れるが、安全性・環境面の点から不合格であった。
比較例17では、下側樹脂層のベース樹脂としてアクリル樹脂を使用し、イソシアネート樹脂を硬化剤として用いたが、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例18では、上側樹脂層のジアミン成分が酸成分に対して少な過ぎるため、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
比較例19では、上側樹脂層のジアミン成分が酸成分に対して多過ぎるため、成形性及び耐スクラッチキズ性が不合格であった。
本発明により、良好な成形性と耐スクラッチキズ性を備え、更にコスト面や安全性・環境面にも優れたアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材とその製造方法が提供される。
1……アルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材
2……アルミニウム基材
3……下側樹脂層
4……上側樹脂層

Claims (4)

  1. アルミニウム基材と;当該アルミニウム基材の少なくとも一方の面に形成された下側樹脂層と;当該下側樹脂層の表面に形成された上側樹脂層と;を含み、前記下側樹脂層がポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂の1種以上からなるベース樹脂を含み2〜16μmの乾燥厚さを有し、前記上側樹脂層がポリアミドイミド樹脂からなるベース樹脂を含み1〜6μmの乾燥厚さを有することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材。
  2. 前記上側樹脂層が、ポリエチレンワックス及びカルナバワックスの一種以上からなる潤滑剤を当該上側樹脂層の乾燥重量の1.0〜10重量%含有する、請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材。
  3. アルミニウム基材の少なくとも一方の面に、ポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂の1種以上からなるベース樹脂を含む塗料組成物を塗布し、最高到達温度200〜320℃で20〜60秒間焼付け、乾燥厚さ2〜16μmを有する下側樹脂層を形成する工程と;前記下側樹脂層の表面に、ポリアミドイミド樹脂からなるベース樹脂を含む塗料組成物を塗布し、最高到達温度330〜370℃で10〜80秒間焼付け、乾燥厚さ1〜6μmを有する上側樹脂層を形成する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材の製造方法。
  4. 前記上側樹脂層用の塗料組成物が、ポリエチレンワックス及びカルナバワックスの1種以上からなる潤滑剤を上側樹脂層の乾燥重量の1.0〜10重量%含有する、請求項3に記載のアルミニウム電解コンデンサケース用アルミニウム樹脂被覆材の製造方法。
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JP2015056488A (ja) * 2013-09-11 2015-03-23 株式会社Uacj コンデンサケース用アルミニウム塗装材

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