JP5241048B2 - 金属包装体用塗料及びその塗料を用いた金属包装体 - Google Patents
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従来、それらの塗料としては、エポキシ−フェノール系塗料、エポキシ−アミノ系塗料、エポキシ−アクリル系塗料等のエポキシ系の溶剤型塗料や水性塗料が広く使用されているが、エポキシ系塗料は環境ホルモンの一つであるビスフェノールAを含有するため、その溶出が懸念される。また製缶用塗料として塩化ビニル系塗料も使用されているが、塩化ビニルには安定剤の問題や焼却時にダイオキシンが発生する問題があり、このような観点からビスフェノールA及び塩化ビニルを含有しない塗料が望まれている。
従って、本発明の目的は、ビスフェノールA等の環境ホルモンや焼却時にダイオキシンを発生する塩化ビニル等が含有されておらず、レトルト性、フレーバー性、耐食性等に優れた金属包装体用塗料及びそれを用いた金属包装体を提供することにある。
本発明によれば、(A)テレフタル酸を主体とするポリカルボン酸成分と、ポリアルコール成分とから誘導されたポリエステル樹脂60乃至90重量%、(B)石炭酸及び/またはメタクレゾールを主体とするフェノール類から誘導されたレゾール型フェノール樹脂5乃至30重量%、及び(C)ベンゾグアナミン、或いはベンゾグアナミン及びメラミンから誘導されたアミノ樹脂0.5乃至10重量%から成ることを特徴とする金属包装体用塗料が提供される。
(1)ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸60乃至100モル%及びテレフタル酸以外のポリカルボン酸0乃至40モル%から成るカルボン酸成分と、脂環族ポリアルコール及び/または側鎖を有するポリアルコール50乃至100モル%及び脂環族ポリアルコール及び/または側鎖を有するポリアルコール以外のポリアルコール0乃至50モル%から成るポリアルコール成分とから誘導されたポリエステル樹脂であること、
(2)ポリエステル樹脂(A)が全酸成分及び全アルコール成分に対して0.01乃至3モル%の3官能以上のポリカルボン酸及び/またはポリアルコール成分を含有するものであること、
(3)ポリエステル樹脂(A)が10000乃至30000の数平均分子量(Mn)、50℃以上のガラス転移点(Tg)及び4.0以下の酸価(mgKOH/g)を有するものであること、
が好ましい。
本発明の金属包装体においては、
(1)硬化塗膜が60℃以上のガラス転移点(Tg)を有すること、
(2)硬化塗膜のMEK抽出率が40重量%以下であること、
が好ましい。
相互貫入網目構造(IPN)とは、2種以上の三次元ポリマーネットワークが共有結合で結ばれることなく、互いに絡み合って形成された構造と定義されるが、本発明では、ポリエステル樹脂を取り込んだ形でレゾール型フェノール樹脂の硬化に伴うネットワークが形成されており、このネットワークに絡んだ形でポリエステル樹脂が貫入しており、この構造が優れた密着性及び加工性を保持しながら、硬化性及び耐レトルト性を向上させる理由と考えられる。
更に、レゾール型フェノール樹脂(B)は、5乃至30重量%、特に10乃至25重量%の量で含有されているべきであり、上記範囲よりも多い場合は、フレーバー性、耐食性に劣るようになり(比較例3)、一方上記範囲よりも少ない場合は硬化性、耐レトルト性に劣るようになる(比較例5)。
このことは後述する実施例の結果からも明らかである。すなわち、上記アミノ樹脂を配合せず、ポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂からのみ成る場合には、アミノ樹脂(C)を含有する場合に比して密着性及び耐食性に劣っている(比較例1参照)。
本発明において、金属包装体用塗料のベースとなるポリエステル樹脂は、前述した通り、テレフタル酸を主体とするポリカルボン酸成分と、ポリアルコール成分とから誘導されたポリエステル樹脂であることが重要である。
本発明に使用できるテレフタル酸以外のポリカルボン酸としては、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、また1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボンサン等を挙げることができる。
また本発明に用いるポリエステル樹脂においては、全酸成分及び全アルコール成分に対して0.01乃至3モル%、特に0.1乃至2モル%の3官能以上のポリカルボン酸及び/又はポリアルコール成分を含有することが好ましい。3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸乃至その無水物、ピロメリット酸乃至その無水物等を挙げることができ、また3官能以上のポリアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
すなわち、ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)が上記範囲を下回ると、缶詰製品等のレトルト殺菌等の加熱殺菌に必要な耐湿熱性や耐デント性が低下する傾向があると共に、腐食成分に対するバリアー性が低下し、缶の耐腐食性が不十分なものとなる。
更に、ポリエステル樹脂の酸価が上記範囲を上回ると、組み合わせで使用するフェノール樹脂及びアミノ樹脂との間に相互貫入網目構造は形成されにくくなり、優れた密着性及び加工性を保持しながら、硬化性、耐レトルト性及び耐デント性を向上させることが困難になる。
ポリエステル樹脂は、エステル交換法や直接エステル化法による通常の高分子量ポリエステルの製造方法により製造される。ただし食品用途を考えた場合には、衛生上問題となる重金属や化合物を触媒、添加剤として使用することは避けるべきである。
フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド乃至その機能誘導体から誘導される樹脂であるが、本発明においては、フェノール類として石炭酸及び/又はメタクレゾールを主体とするフェノール類を用いること、及びレゾール型のフェノール樹脂を用いることが重要な特徴である。
本発明において、石炭酸及び/又はメタクレゾールを主体とするとは、石炭酸及び/又はメタクレゾールを50%より多く含有すること、可級的には100%近く含有するという意味であり、100%であることは勿論、50%未満の他のフェノール類を含有していてもよい。
石炭酸、メタクレゾール以外のフェノール類としては、特に限定されないが、単環1価フェノール類を好適に用いることができ、例えば、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール等の3官能性フェノール類;o−クレゾール、p−クレゾール、p−tertブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、p−tert−アミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール等の2官能性フェノール;2,4−キシレノール、2,6−キシレノール等の1官能性フェノール類;を挙げることができる。
生成する樹脂はそれ自体公知の手段で精製することができ、例えば、反応生成物たる樹脂分を例えばケトン、アルコール、炭化水素溶媒或はこれらの混合物で反応媒体から抽出分離し、必要により水で洗浄して未反応物を除去し、更に共沸法或は沈降法により水分を除去して、ポリエステル樹脂に混合し得る形のレゾール型フェノール樹脂とすることができる。
また、レゾール型フェノール樹脂のメチロール基をアルキルエーテル化したものを用いることができる。アルキルエーテル化に用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜4個のアルコールを好適に使用することができ、好適なアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等を挙げることができる。
レゾール型フェノール樹脂のアルキルエーテル化は、一般にレゾール型フェノール樹脂、アルコール、酸触媒の存在下に100乃至130℃の温度で加熱し、縮合水を除きながら1乃至10時間程度の反応を行えばよい。
本発明に用いるフェノール樹脂は、数平均分子量(Mn)が400乃至2000の範囲にあることが好ましい。
特に好適なレゾール型フェノール樹脂は、石炭酸及び/またはm−クレゾール1モルに対し、3乃至6モルの過剰のホルムアルデヒドを反応させ、更にアルキルエーテル化した数平均分子量(Mn)が500乃至1500の範囲、ベンゼン環1核当たりのメチロール基乃至エーテル化メチロール基濃度が1乃至3の範囲、特に1.2乃至2.2の範囲にあるレゾール型フェノール樹脂である。
本発明においては、上記ポリエステル樹脂(A)及びフェノール樹脂(B)と組み合わせて、メラミン及び/又はベンゾグアナミンから誘導されたアミノ樹脂(C)を用いる。
またアミノ樹脂としては、樹脂100グラム当り、塩基性窒素原子濃度が7乃至15グラム原子、特に8乃至13グラム原子で、メチロール基及びエーテル化メチロール基の濃度が0.5乃至1.5ミリモル、特に0.7乃至1.2ミリモルの範囲内にあるものが、前記特性の点で好都合である。
本発明の金属包装体用塗料では、上述したように、配合したレゾール型フェノール樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)が硬化してネットワークを形成していることが重要である。この硬化の目的で、塗料には酸触媒を配合することが好ましい。酸触媒が配合されていることにより、硬化性、耐レトルト性等の塗膜性能を焼付け条件に左右されることなく向上させることが可能となる。
酸触媒の配合量は塗膜物性に大きな影響を与え、好適には樹脂成分100重量部当たり0.01乃至0.7重量部、特に0.1乃至0.5重量部の量で含有することが望ましい。酸触媒の量が上記範囲を下回ると、塗膜の耐腐食性や耐熱性が不十分であり、一方酸触媒の量が上記範囲を上回ると、やはり耐腐食性が低下したり、塗膜の加工性が低下したりする傾向がある。
また、アミン中和物の形で使用してもよい。
また本発明の金属包装体用塗料においては、上記成分に加えて滑剤が樹脂成分当り0.5乃至3重量部、特に1乃至2重量部の量で配合されていることが好ましい。滑剤を配合することにより、塗膜表面の動摩擦係数を低くすることができ、加工時の塗膜の傷付きを有効に防止することが可能となる。
塗膜の動摩擦係数を低下させるために配合すべき滑剤としては、(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、カルナバワックス等の炭化水素系のもの、(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステルから成る脂肪酸系のもの、(ハ)ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、(ニ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、(ホ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、(ヘ)ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケンおよび(ト)それらの混合系等を挙げることができるが、特にラノリン、カルナバワックス等を好適に用いることができる。
本発明の金属包装体用塗料は、溶剤型の塗料として用いることが望ましい。
溶剤は樹脂成分100重量部当たり180乃至400重量部の量で含有して成ることが好ましい。即ち、溶剤の量が上記範囲を下回ると、塗装作業性が低下したり、或いは密着性や耐腐食性に優れた塗膜を形成させることが困難となる。一方、溶剤の量が上記範囲を上回ると、十分な厚みの塗膜を形成させることが難しくなり、また多量の溶媒を必要とし、塗料の焼き付けにも熱エネルギーを多く必要とするため、経済的に好ましくない。
溶剤としては、前述した樹脂成分を溶解可能なものであれば、それ自体公知の任意のものを用いることができる。以下のものを好適に使用することができるが、勿論この例に限定されない。
イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸イソブチル、n−ブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(GIP)、メトキシプロピルアセテート、シクロヘキサノン、ソルベッソ100、DBE(二塩基酸エステル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ブチルジグリコールアセテート等の溶剤で沸点の異なるものを多種混合して使用する。
本発明においては、塗膜にピンホール等の塗膜欠陥が生じないように、沸点の異なる2種以上の溶剤を混合して用いるのが特に好ましい。
本発明の塗料は、前記各成分を含有してなる。この塗料中の各成分の含有比率は前述した範囲にあることが好ましい。
塗料粘度としては、#4フォード・カップ粘度(25℃)で20乃至150秒の範囲が好適である。塗料粘度が20秒を下回ると塗装面でのたれ、たるみ、ハジキ等の塗装欠陥の発生が顕著となる。150秒を越えて高粘度となる場合は、塗装後のフローが悪化し、平滑な塗面が得られ難くなる。
本発明の金属包装体用塗料は、例えば、金属素材の表面に塗装し、これを焼き付けすることにより上述した相互貫入網目構造を有する硬化塗膜を金属素材表面に形成することができる。
硬化塗膜における相互貫入網目構造の存在は、MEK抽出率の塗料焼き付け時間依存性で確認することができる。
最も代表的な製缶用熱硬化性塗料であるエポキシ/フェノール系塗料の場合、焼き付け時間が長くなるほどMEK抽出率が減少するという負の相関を示す。これは、焼き付け時間が長くなればなるほど網状化が進行するので当然のことと認められる。
これに対して、相互貫入網目構造の塗料では、極めて短時間の焼き付けでMEK抽出率は極小値を示し、この極小値を過ぎるような焼き付け時間では時間の増加と共にMEK抽出率が増大するという正の相関を示すのである。
勿論、本発明の塗料では、硬化に必要な時間が極めて短時間でよく、また硬化のためのエネルギーも著しく少なくてよく、塗料の焼き付けのための工程を著しく簡略化し、短縮できるという画期的な利点をも有するものである。
また、フェノール樹脂及びアミノ樹脂相互の硬化に伴うネットワークが緻密になるほど、熱硬化性樹脂のネットワークと熱可塑性ポリエステルとの溶融に伴う相分離が起こりにくくなり、焼き付け時間によるMEK抽出率の増大傾向が小さくなる。これにより、広い焼き付け条件範囲で一定性能を示す塗膜が得られるという好ましい性質を示すようになる。
塗布量としては10乃至200mg/dm2、特に30乃至150mg/dm2の塗膜量となるように塗布することが好ましく、前述した焼付け条件で塗膜を加熱硬化させて、膜厚にして1乃至20μm、特に3乃至15μmの範囲にあることが好ましい。
本発明の金属包装体用塗料は、各成分の配合量等によっても相違し、一概に規定できないが、一般的にいって、160乃至300℃の温度で10秒乃至20分焼き付けることが好ましい。
アルミニウム板としては、工業用純アルミニウム(#1000系)、アルミニウム・マンガン合金(#3000系)、アルミニウム・マグネシウム合金(#5000系)等が用いられ、リン酸クロメートやリン酸ジルコニウム等の表面処理が施されたアルミニウム板が使用される。
金属板の厚みは、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、一般に0.10乃至0.50mm、特に0.10乃至0.30mmの厚みを有するのがよい。
また、後述する方法で求めたMEK抽出率は、40%以下、特に20%以下となっていることが好ましい。
また、他に内容物注出用開口を形成するためのスコア及び開封用のタブが設けられたイージーオープンエンド、金属キャップ等、従来公知の金属包装体を挙げることができる。
以下、本発明を実施例を挙げ具体的に説明する。本実施例で用いる「部」は、特に表示のない限りは重量を基準とする。尚、実施例6は参考例である。
(製造例1〜2)
以下のようにして、製造例1(実施例)、製造例2(比較用)の各ポリエステル樹脂を作製した。
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレス製オートクレーブに、原料である多塩基酸類、多価アルコール類、触媒を適宜仕込み、昇温して反応温度210〜250℃、減圧2mmHg以下、反応時間3〜6時間の範囲で調製して各種ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂の樹脂組成、ガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、酸価を表1に示した。
ポリエステル樹脂および塗膜のTgは、示差走査熱量計を用いた示差熱分析(DSC)により決定した。この時の測定条件は昇温速度を10℃/分、測定温度域は20〜300℃とした。
ポリエステル樹脂のMnは、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により決定した。この時の展開溶剤にはクロロホルムを使用し、スチレン標準サンプルによる検量線からスチレン換算のMnを決定した。
ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070に規定の方法で行った。サンプルが溶解しない場合には溶媒にジオキサンまたはテトラヒドロフラン等の溶媒を使用した。
(製造例3〜5)
以下のようにして、製造例3および4(実施例)、製造例5(比較用)のレゾール型フェノール樹脂を作成した。
原料であるフェノール類に、37%ホルムアルデヒド水溶液および苛性ソーダを適宜加え、50〜60℃で3〜6時間加熱した。その後n−ブタノールおよび塩酸を適宜加え、60℃で10分間撹拌後静置し、二層に分離したところで下層の水分を除去した。さらに残った有機層を水で洗浄後、n−ブタノールの沸点で2時間煮沸しながら還流し、レゾール型フェノール樹脂を得た。これらのフェノール樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、およびベンゼン1核当たりのメチロール基およびエーテル化メチロール基数を表2に示した。
(MEK抽出率の測定)
金属包装体用塗料の硬化性評価として、MEK抽出率を測定した。アルミニウム板(缶蓋用5052、板厚0.30mm)に各実施例のポリエステル塗料を、バーコート塗装法により塗膜量60mg/dm2となるように塗装し、205℃で10分間焼付けた。この塗装板を切り出してサンプルとし、重量測定後(W1)、塗膜2cm2当たり1mlのMEK(メチルエチルケトン)を用い、沸点で1時間の抽出を行った。抽出後の塗装板を130℃、1時間の条件で乾燥し、抽出後の塗装板の重量(W2)を測定した。さらに塗膜を濃硫酸による分解法で剥離し、板の重量(W3)を測定した。塗装板のMEK抽出率は、以下の式で求められる。
(MEK抽出率%)=(W1−W2)/(W1−W3)*100
評価 ○:20%未満、△:20〜40%、×:40%以上
作製したポリエステル塗料の耐レトルト性を評価した。各実施例の塗料をぶりき(めっき量#25規格)表面にバーコートで塗装し、205℃、10分間で焼付け、その後、蒸留水中で125℃、30分間のレトルト処理を行った。なお、この時の塗膜量は60mg/dm2とした。レトルト処理後、乾燥させて塗膜の表面状態を目視観察し、白化の程度・ブリスターなどの有無について評価した。
評価 ○:良好、△:若干の白化、ブリスター、ただれの発生
×:著しい白化、ブリスター、ただれの発生
上記レトルト性評価で作製したものと同様の塗装板を用い、蒸留水中で125℃、30分間のレトルト処理を行った。レトルト処理後、乾燥させた塗膜で碁盤目テープ剥離試験を行い、密着性の評価を行った。剥離試験の方法としては、まず塗膜表面にカッターナイフで金属素地に到達するように、直行する縦横11本の平行な直線傷を幅1mm間隔で入れ、合計100個の1mm四方のマス目を作成する。その後碁盤目を覆うようにセロハンテープ(3M製スコッチテープ#600)を密着させ、急激に引き剥がし、剥離の見られるマス目を数えて評価した。
評価 ○:剥離マス目が10個未満、△:10〜40個、×:40個以上
作製したポリエステル塗料をアルミ箔表面上に、塗膜量が60mg/dm2となるように塗装し、これをサンプルとして水フレーバー性を評価した。サンプリングしたアルミ塗装箔と蒸留水を用意し、塗布面積:蒸留水が1cm2:1mlとなるように耐熱圧ガラス製ボトルに入れ、蓋をした後125℃、30分間のレトルト処理を行った。評価は、このレトルト後の試験水を用い、10人以上のパネラーによるフレーバー性の官能試験を行い、過半数の回答を持って結果とした。
評価 ○:蒸留水と変化なし、△:蒸留水と比べ、若干の違和感
×:蒸留水と明らかな違いを感じる
塗膜のレトルト処理による溶出性の評価を行った。前記フレーバー性評価同様、作製したポリエステル塗料をアルミ箔表面上に、塗膜量が60mg/dm2となるように塗装し、塗布面積:蒸留水が1cm2:1mlとなるように耐熱圧ガラス製ボトルに入れ、蓋をした後レトルト釜中で125℃、30分間加熱殺菌した。評価はレトルト後の蒸留水をサンプルとし、過マンガン酸カリウム消費量を測定することで行った。なお、この測定は厚生省告示第20号で指定の方法で行った。
評価 ○:5ppm未満、△:5〜10ppm、×:10ppm以上
作製したポリエステル塗料をTNS板(東洋鋼鈑(株)製、錫−ニッケルメッキ鋼板、板厚0.18mm)に塗装し、耐食性の評価を行った。評価方法は、まず塗装板にカッターナイフを用いて、金属素地に到達するような互いに直行する傷を付与した。これを蒸留水中で、37℃、2週間保存し、塗膜下腐食を腐食の進行幅で評価した。
評価 ○:塗膜下腐食1mm未満
△:塗膜下腐食2mm未満
×:塗膜下腐食2mm以上
前記にて耐食性評価に使用したTNS塗装板をサンプルとして、塗膜の耐衝撃性(デント性)を評価した。評価方法としては、このサンプルを蒸留水中で125℃、30分間のレトルト処理を行い、その後25℃の湿潤雰囲気中において、このサンプルの塗装面を下側にして、荷重1kg、直径1/2inchの鉄球を高さ4cmから落下させ、デント傷を付与する。その後塗装面のデント傷部分に電圧6Vで5秒間通電し、5秒後の電流値を測定した。
評価 ○:5mA未満、△:5〜40mA、×:40mA以上
前記同様TNS板にポリエステル塗料を塗装し、この塗装板をサンプルとして折曲げ加工性を評価した。このサンプルの塗装面を外側になるように塗装板を折り曲げ、塗装板と同板厚の板を2枚挟んだ後、2kgの錘を50cmの高さから落下させ、180度の折り曲げ加工を行った(2T折曲げ加工試験)。加工部1cm幅に電圧6Vで4秒間通電し、4秒後の電流値を測定した。
評価 ○:5mA未満、△:5〜40mA、×:40mA以上
表1に詳細を示すポリエステル樹脂(製造例1)80部と、表2に詳細を示すフェノール樹脂(製造例3)15部、さらにマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)5部を用意し、シクロヘキサノンおよびソルベッソ100の混合溶剤に溶解した。さらに酸触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸を0.3部、滑剤としてラノリン1.5部を混合して、金属包装体用塗料を調整した。混合溶剤は、塗料中の固形分濃度が25%となるように量を調整した。
この塗料を用いて、上記に示す各塗膜評価を実施した。その結果、硬化性評価はMEK抽出率10.4%、レトルト性評価は白化、ただれ等無く良好な表面状態であった。密着性評価は剥離0%、フレーバー性評価は問題なし、溶出性評価は3.2ppmの溶出量、耐食性良好、耐デント性は0.33mA、加工性評価は0.15mAという良好な結果が得られた。
また以下に述べる実施例2〜6、及び比較例1〜8において、作製した塗料の組成一覧を実施例1と併せて表3に示した。さらに、それぞれにおける各塗膜性能評価結果を表4にまとめて示した。
製造例1で得たポリエステル樹脂80部と、製造例4で得たフェノール樹脂15部、マイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)5部を用意し、実施例1と同様に金属包装体用塗料を作製した(表3参照)。
この塗料を用いて、実施例1同様、各塗膜評価を実施した。その結果を表4にまとめて示したが、いずれも良好であった。
製造例1で得たポリエステル樹脂70部と、製造例3で得たフェノール樹脂10部、製造例4で得たフェノール樹脂15部、マイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)5部を用意し、実施例1と同様に金属包装体用塗料を作製した(表3参照)。
この塗料を用いて、実施例1同様、各塗膜評価を実施した。その結果を表4にまとめて示したが、いずれも良好であった。
製造例1で得たポリエステル樹脂80部と、製造例3で得たフェノール樹脂10部、マイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)4部およびマイコート508(三井サイテック社製メラミン樹脂)1部を用意し、実施例1と同様に金属包装体用塗料を作製した(表3参照)。
この塗料を用いて、実施例1同様、各塗膜評価を実施した。その結果を表4にまとめて示したが、いずれも良好であった。
製造例1で得たポリエステル樹脂85部と、製造例3で得たフェノール樹脂14部、マイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)1部を用意し、実施例1と同様に金属包装体用塗料を作製した(表3参照)。
この塗料を用いて、実施例1同様、各塗膜評価を実施した。その結果を表4にまとめて示したが、いずれも良好であった。
製造例1で得たポリエステル樹脂85部と、製造例3で得たフェノール樹脂14部、マイコート508(三井サイテック社製メラミン樹脂)1部を用意し、実施例1と同様に金属包装体用塗料を作製した(表3参照)。
この塗料を用いて、実施例1同様、各塗膜評価を実施した。その結果を表4にまとめて示したが、いずれも良好であった。
表1に示したポリエステル樹脂(製造例1)80部と、表2に示したフェノール樹脂(製造例3)20部を用意し、シクロヘキサノンおよびソルベッソ100の混合溶剤に溶解した。さらに酸触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸を0.3部、滑剤としてラノリン1.5部を混合して、ポリエステル塗料を調整した。なお混合溶剤は、塗料中の固形分濃度が25%となるように量を調整した。
この比較例1は、ポリエステル樹脂とフェノール樹脂の組成は適切であるが、アミノ樹脂を含有していない場合の例である。各塗膜性能評価の結果、密着性および耐食性が劣るようになった。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例1で得たポリエステル樹脂90部と、マイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)10部を用意し、実施例1と同様にポリエステル塗料を作製した(表3参照)。比較例2はポリエステル樹脂とアミノ樹脂の組成は適切であるが、フェノール樹脂を含有していない場合の例である。各塗膜性能評価の結果、有機系溶出量が増加し、フレーバー性、耐レトルト性が劣るようになった。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例1で得たポリエステル樹脂60部と、製造例3で得たフェノール樹脂35部、そしてマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)5部を用意し、実施例1と同様にポリエステル塗料を作製した(表3参照)。比較例3はポリエステル樹脂とアミノ樹脂の組成は適切であるが、フェノール樹脂が適正量を越えて多く含有する場合の例である。各塗膜性能評価の結果、密着性および耐食性が劣るようになった。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例1で得たポリエステル樹脂60部と、製造例3で得たフェノール樹脂25部、そしてマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)15部を用意し、実施例1と同様にポリエステル塗料を作製した(表3参照)。比較例4はポリエステル樹脂とフェノール樹脂の組成は適切であるが、アミノ樹脂が適正量を越えて多く含有する場合の例である。各塗膜性能評価の結果、フレーバー性が劣り、溶出量が増大した。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例1で得たポリエステル樹脂95部と、製造例3で得たフェノール樹脂4部、そしてマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)1部を用意し、実施例1と同様にポリエステル塗料を作製した(表3参照)。比較例5はポリエステル樹脂が適正量を越えて多く含有し、フェノール樹脂が適正量よりも少なくなった場合の例である。各塗膜性能評価の結果、硬化性および耐レトルト性が劣るようになった。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例1で得たポリエステル樹脂55部と、製造例4で得たフェノール樹脂35部、そしてマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)15部を用意し、実施例1と同様にポリエステル塗料を作製した(表3参照)。比較例5はポリエステル樹脂が適正量よりも含有量が少なく、フェノール樹脂を適正量を越えて多く含有し、さらにアミノ樹脂も適正量を越えて多く含有する場合の例である。各塗膜性能評価の結果、密着性、フレーバー性および溶出性が劣るようになった。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例2で得たポリエステル樹脂80部と、製造例3で得たフェノール樹脂15部、そしてマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)5部を用意し、実施例1と同様にポリエステル塗料を作製した(表3参照)。比較例7はポリエステル樹脂の成分構成を、カルボン酸成分をテレフタル酸45モル%、イソフタル酸成分55モル%、ポリアルコール成分を1,2−プロピレングリコール50モル%、エチレングリコール50モル%、および3官能以上の成分をトリメチロールプロパン1モル%とした場合の例である。ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂の組成は適正量にしている。各塗膜性能評価の結果、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸成分が低下した結果、耐レトルト性、耐食性、耐デント性が劣るようになった。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例1で得たポリエステル樹脂80部と、製造例5で得たフェノール樹脂15部、そしてマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)5部を用意し、実施例1と同様にポリエステル塗料を作製した(表3参照)。比較例8はp−クレゾールを原料としたフェノール樹脂を用い、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂の組成は適正量にした場合の例である。各塗膜性能評価の結果、硬化性および耐食性が劣るようになった。この結果を実施例と合わせて表4に示した。
製造例1と同様にして表5に示す製造例6〜8の3種のポリエステル樹脂を作製した。
製造例6〜8の各ポリエステル樹脂80部に対し、それぞれ製造例4のフェノール樹脂15部、さらにマイコート106(三井サイテック社製ベンゾグアナミン樹脂)1部を用意し、シクロヘキサノンおよびソルベッソ100の混合溶剤に溶解した。さらに酸触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸を0.2部を混合して、実施例7〜9の金属包装体用塗料を調整した。混合溶剤は、塗料中の固形分濃度が25%となるように量を調整した。
この塗料を用いて、実施例1同様、各塗膜評価を実施した。その結果を表4にまとめて示したが、いずれも良好であった。
これらの塗料を用いて、実施例1同様、各塗膜評価を実施した。その結果を表6にまとめて示したが、いずれも良好であった。
製造例1と同様にして表5に示す製造例9のポリエステル樹脂を作製した。このポリエステル樹脂80部に対し、実施例7と同様にしてフェノール樹脂、アミノ樹脂、酸触媒を配合して比較例9のポリエステル塗料を調製した。
本比較例で用いたポリエステル樹脂は、テレフタル酸以外のカルボン酸が主体となり、脂環族ポリアルコール及び/または側鎖を有するポリアルコールの含有量が60モル%より低くなっている。また、数平均分子量が10000より小さく、Tgが50℃未満であった。酸価は4.0mgKOH/gを越えて大きい。
塗膜性能評価の結果を表6に示したが、上記のようなポリエステル樹脂を用いたために硬化性、耐レトルト性、密着性、耐食性、耐デント性、加工性が著しく劣る結果となった。
Claims (7)
- (A)テレフタル酸を主体とするポリカルボン酸成分と、ポリアルコール成分とから誘導されたポリエステル樹脂60乃至90重量%、(B)石炭酸及び/またはメタクレゾールを主体とするフェノール類から誘導されたレゾール型フェノール樹脂5乃至30重量%、及び(C)ベンゾグアナミン、或いはベンゾグアナミン及びメラミンから誘導されたアミノ樹脂0.5乃至10重量%から成ることを特徴とする金属包装体用塗料。
- ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸 60乃至100モル%及びテレフタル酸以外のポリカルボン酸0乃至40モル%から成るカルボン酸成分と、脂環族ポリアルコール及び/または側鎖を有するポリアルコール50乃至100モル%及び脂環族ポリアルコール及び/または側鎖を有するポリアルコール以外のポリアルコール0乃至50モル%から成るポリアルコール成分とから誘導されたポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の金属包装体用塗料。
- ポリエステル樹脂(A)が全酸成分及び全アルコール成分に対して 0.01乃至3モル%の3官能以上のポリカルボン酸及び/またはポリアルコール成分を含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属包装体用塗料。
- ポリエステル樹脂(A)が10000乃至30000の数平均分子量(Mn)、50℃以上のガラス転移点(Tg)及び4.0以下の酸価(mgKOH/g)を有するものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属包装体用塗料。
- 請求項1乃至4の何れかに記載の塗料で形成された硬化塗膜を備えていることを特徴とする金属包装体。
- 硬化塗膜が60℃以上のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする請求項5に記載の金属包装体。
- 硬化塗膜のMEK抽出率が40重量%以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の金属包装体。
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