JP5900164B2 - 塗布膜の乾燥装置及び乾燥方法 - Google Patents
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Description
これに対し、基板の品質を損ねることなく、コンパクトな設備で加熱するため、塗布前に基板を予備加熱することにより、塗布後の乾燥効率を上げる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
基板上の塗布膜と対面する凝縮板を備え、当該凝縮板により塗布膜からの溶媒の蒸気を凝縮し、乾燥する凝縮乾燥装置と、
前記塗布膜の塗布の直後、前記凝縮乾燥装置による乾燥の直前に配置され、前記基板及び塗布膜を予備的に加熱する加熱装置と、
を備える塗布膜の乾燥装置が提供される。
前記加熱装置が、赤外線の輻射熱により前記基板及び塗布膜を加熱する請求項1に記載の塗布膜の乾燥装置が提供される。
前記加熱装置による加熱後の塗布膜の粘度が、5mPa・s以下である請求項1又は2に記載の塗布膜の乾燥装置が提供される。
前記凝縮乾燥装置による溶媒の乾燥量が、前記塗布膜が含有する溶媒の全体積に対し、10〜80体積%の範囲内である請求項1〜3の何れか一項に記載の塗布膜の乾燥装置が提供される。
基板上の塗布膜と凝縮板を対面させ、当該凝縮板により塗布膜からの溶媒の蒸気を凝縮し、乾燥する塗布膜の乾燥方法において、
前記塗布膜の塗布の直後、前記凝縮による乾燥の直前に、前記基板及び塗布膜を予備的に加熱する工程を含む塗布膜の乾燥方法が提供される。
図1に示す製造ラインは、ローラー22、23によって把持され、搬送される基板f1上に、塗布装置3により有機層の塗布液を塗布し、乾燥装置1によりその塗布膜を乾燥する。
なお、乾燥装置1より後に、残留溶媒の除去等を目的として、後処理用の乾燥装置を設置してもよい。その乾燥方法としては、特に限定されず、例えば熱風、赤外線、平面加熱等の固体伝熱乾燥、マイクロ波等を用いた内部発熱乾燥、真空乾燥、超臨界乾燥、超音波乾燥等の固定非加熱系乾燥、吸湿乾燥、冷却乾燥、凝縮乾燥等の気体乾燥のような公知の方法を選択することができる。
基板f1は、アンワインダー21によって塗布装置3に送り出され、塗布、乾燥後に、ワインダー24によって巻き取られる。
陽極と陰極間に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の有機層が順に積層された有機EL素子の場合、正孔輸送層の有機材料として、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。
具体的には、発光層の有機材料として、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有する化合物、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換された誘導体を表す。)等が挙げられる。
また、発光層の有機材料として燐光性化合物も挙げられる。燐光性化合物は、元素の周期表で8族〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、イリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物、希土類錯体等が挙げられる。
界面活性剤としては、溶媒に含まれる水分の影響、レベリング性、基板f1への濡れ性等の観点から、例えばアニオン性又はノニオン性の界面活性剤等が挙げられる。具体的には、含フッ素系活性剤等、国際公開第08/146681パンフレット、特開平2−41308号公報等に挙げられた界面活性剤を用いることができる。
塗布膜の膜厚としては、具体的には1〜90μmの範囲内であることが好ましい。
塗布膜の粘度としては、具体的には0.3〜100mPa・sの範囲内であることが好ましく、0.5〜10mPa・sの範囲内であることが好ましい。
塗布膜の乾燥装置1は、図1に示すように凝縮乾燥装置Bを備え、当該凝縮乾燥装置Bにより基板f1上の塗布膜を乾燥する。また、乾燥装置1は加熱装置Aを備え、凝縮乾燥装置Bによる乾燥前に、加熱装置Aにより基板f1を予備的に加熱する。
加熱装置Aは、塗布装置3による塗布膜の塗布後、凝縮乾燥装置Bによる乾燥前に配置されている。加熱装置Aは、基板f1及び塗布膜を加熱する。加熱装置Aは、図1に示すように基板f1上の塗布膜と対面して配置してもよいし、基板f1と対面して配置してもよい。基板及び塗布膜を予め加熱することにより、凝縮乾燥装置Bの乾燥時において塗布膜面内の温度ムラを減じることができ、塗布膜の乾燥の均一性を向上させることができる。また、凝縮乾燥装置Bにおいて塗布膜から溶媒を蒸発させやすく、乾燥の効率も向上する。
乾燥の均一性を高める観点からすれば、加熱装置Aが赤外線ヒーター51を備え、赤外線ヒーター51からの輻射熱により基板f1及び塗布膜を加熱することが好ましい。
例えば、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)の吸収波長が1.50μm以上、ポリエチレンテレフタレートの吸収波長が8.0、6.0、3.3、2.9μm付近、ポリエチレンナフタレートの吸収波長が8.0、3.3μm付近であることが知られている。また、溶媒として用いられる酢酸ノルマルプロピルの吸収波長は、8.0、6.0、3.3、2.9μm付近であることが知られている。
ポリエチレンテレフタラートは酢酸ノルマルプロピルに比べ、2.9μm付近の吸収が比較的少なく、溶媒を選択的に加熱するのであれば、赤外線ヒーター51が、最大エネルギー波長が2.50〜4.00μmの範囲内にある中波長の赤外線を輻射することが好ましい。
塗布膜の粘度が大きいほど流動による乾燥ムラが減少するため、5mPa・s以下の粘度に至るまで加熱しておくことにより、凝縮乾燥装置Bにおける乾燥ムラを抑え、乾燥の均一性をより向上させることができる。
また、加熱を緩和するため、赤外線ヒーター51と塗布膜間にセラミックスを配置してもよいし、赤外線ヒーター51を空冷又は水冷してもよい。
図2は、凝縮乾燥装置B内部を基板f1の搬送方向yから見た正面図である。
凝縮乾燥装置Bは、図1及び図2に示すように、基板f1上の塗布膜f2と対面する凝縮板11を備え、当該凝縮板11により塗布膜f2からの溶媒の蒸気を凝縮し、乾燥する。凝縮板11は固定的に配置されてもよいし、ローラーにより搬送される構成でもよい。
また、凝縮乾燥装置Bは、溶媒の蒸発を促すため、基板f1を加熱する加熱装置12を備えている。加熱方法は特に限定されず、例えば熱風(加熱ガス)、赤外線、UV、平面加熱等の伝熱による加熱、マイクロ波による電気抵抗を用いた内部加熱等の加熱方法が挙げられる。
具体的には、熱容量が2700kJ/m3・K以上であることが好ましく、大きいほどよい。
例えば、汚れ防止又は凝縮した溶媒の効率的な排出のため、凝縮面11aを撥水処理又は親水処理することができる。
撥水処理としては、特開2005−343016号公報、特開2000−254582号公報に記載されているように、フルオロアルキル基、アルキル基等を有するシラン化合物等の撥水性材料を、フローコーティング法、ディップコーティング法等によって塗布する処理が挙げられる。また、特開2005−23122号公報に記載されているように、撥水撥油性を持つポリフロオロアルキル基を有する重合体を用いて作製されたハニカム構造又はピラー構造のフィルムを凝縮面に貼付してもよい。
他の表面処理としては、乾燥ムラを防ぐためのラビング処理が挙げられる。また、濡れ性を向上させるため、凝縮面11aを粗く仕上げることもできる。
その他、ベルト、ワイプ、ポンプ等の機械力によって、凝縮面11a上の溶媒を排出してもよい。
凝縮板11の温度制御方法としては、特に限定されず、例えば熱風(加熱ガス)、赤外線、UV、平面加熱等の伝熱による加熱、マイクロ波による電気抵抗を用いた内部加熱等の加熱方法と、冷媒を用いた冷却、送風による空冷、ペルチェ素子を用いた電気的な冷却等の冷却方法とを組み合わせて、温度Tcを制御することができる。
また、必要に応じて、加熱装置12に上述の冷却方法による冷却装置を併用し、塗布膜面f2aの温度Thを制御することが可能である。
また、凝縮板11以外の凝縮乾燥装置Bの部材、例えば筐体等に溶媒が凝縮することを防ぐため、凝縮板11以外の部材の温度を、凝縮面11aの温度Tc以上に調整することが好ましい。
加熱装置Aの予備加熱によっても溶媒が蒸発し、乾燥されるが、加熱装置Aよりも乾燥の均一性に優れた凝縮乾燥装置Bにより、上記範囲内の溶媒を乾燥することにより、乾燥工程全体としての乾燥の均一性を高めることができる。
上記塗布膜の乾燥装置1による塗布膜の乾燥方法は、塗布装置3による塗布工程の後、加熱装置Aにより基板f1及び塗布膜f2を予備的に加熱する工程と、加熱後、凝縮乾燥装置Bにより、基板f1上の塗布膜f2と凝縮板11を対面させ、当該凝縮板11により塗布膜f2からの溶媒の蒸気を凝縮し、乾燥する工程と、を含む。
アルミ部材(幅手方向の長さ0.4m、搬送方向の長さ2.0m、厚さ10mm)を凝縮板として用いて、図1及び図2に示す凝縮乾燥装置Bと同じ構成の凝縮乾燥装置を作製した。次に、赤外線ヒーターBSG500/300(ヘレウス社製、最大エネルギー波長2.50μm)を搬送方向に複数配列して加熱装置を作製した。図1に示すように、作製した加熱装置を、塗布装置の直後において基板上の塗布膜と対面するように配置し、加熱装置の直後に上記凝縮乾燥装置を配置して、塗布膜の乾燥装置K1を試作した。
上記乾燥装置K1の試作において、赤外線ヒーターを用いた加熱装置に代えて、エアノズルDX−300(キクチ社製)を有するドライヤーを配置し、乾燥装置K3を試作した。ドライヤーは、熱風の温度、風速を選択できる。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人・デュポン社製、幅手方向の長さ0.33m、搬送方向の長さ40m、厚さ100μm)の基板上に、スパッター装置を用いて厚さ100nmのITO膜を陽極として形成した。
(正孔輸送層の塗布液)
モノクロロベンゼン 100.0g
ADS254BE(ポリ−(N,N′−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)ベンジジン、アメリカン・ダイ・ソース社製) 0.5g
(発光層の塗布液)
酢酸ノルマルプロピル 10.0000g
H−A 0.1000g
D−A 0.0110g
D−B 0.0002g
D−C 0.0002g
(塗布条件)
塗布速度:10m/min
塗布時の環境温度:25℃
塗布した幅手方向の長さ: 0.1m
塗布した搬送方向の長さ:40.0m
ウェット膜厚:4μm
なお、塗布速度は、レーザードップラー速度計LV203により測定した。
また、ウェット膜厚は、下記式により算出した。
ウェット膜厚=塗布液の供給量/(塗布した幅手方向の長さ×塗布速度)
(加熱装置の加熱条件)
加熱時の塗布膜面の温度 :120℃
赤外線ヒーターと塗布膜面間の距離 :20mm
(凝縮乾燥装置の乾燥条件)
凝縮面の温度Tc :20℃、
塗布膜面の温度Th :25℃
凝縮面と塗布膜面間の距離 :2.00mm
発光層に用いた塗布液と同じ塗布液を容器に入れ、上記加熱時の塗布膜面の温度と同じ120℃で加熱して、加熱中の粘度をデジタル粘度計HV-50(ブルックフィールド社製)で測定した。塗布膜面の温度は、デジタル放射温度センサーFT-H10(キーエンス社製)で測定した。
また、塗布膜の膜厚を、塗布直後及び凝縮乾燥の前後でLT−9000(キーエンス社製)を用いて測定し、測定された膜厚から、下記式により凝縮乾燥による乾燥量(体積%)を求めたところ、70体積%であった。
凝縮乾燥による乾燥量(体積%)=(凝縮乾燥直前の膜厚−凝縮乾燥直後の膜厚)/塗布直後の膜厚
(電子輸送層の塗布液)
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 100.00g
ET−A 0.75g
ET−Aは、下記化合物を表している。
まず、フッ化カリウムの入った抵抗加熱ボートを通電して加熱し、基板上にフッ化カリウムからなる電子注入層を3nm形成した。次いで、アルミニウムの入った抵抗加熱ボートを通電、加熱し、蒸着速度1〜2nm/sで、アルミニウムからなる膜厚100nmの陰極を形成した。
有機EL素子1の作製において、乾燥装置K1の凝縮乾燥装置の凝縮板と基板間の距離、凝縮面と塗布膜面の温度差を調整し、凝縮乾燥装置による乾燥量を下記表1に示すように変更した以外は、有機EL素子1と同様にして有機EL素子2〜5を作製した。
有機EL素子1の作製において、発光層の塗布液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾルを添加し、その添加量を調整して、加熱後の塗布膜の粘度を下記表1に示すように異ならせた以外は、有機EL素子1と同様にして有機EL素子6〜9を作製した。
有機EL素子1の作製において、発光層の乾燥に、乾燥装置K1に代えて乾燥装置K3を用いた以外は、有機EL素子1と同様にして有機EL素子10を作製した。乾燥装置K3のドライヤーの加熱条件は下記の通りである。
(ドライヤーの加熱条件)
風速 :1.5m/s
熱風の温度 :120℃
乾燥装置K3に用いたドライヤーと凝縮乾燥装置を分離し、塗布装置の直前にドライヤーを配置して発光層の塗布液の塗布前に基板を加熱し、塗布装置の直後に凝縮乾燥装置を配置して発光層の乾燥を行った以外は、有機EL素子1と同様にして有機EL素子11を作製した。ドライヤーの乾燥条件は下記の通りである。
(ドライヤーの乾燥条件)
風速 :1.5m/s
熱風の温度 :120℃
〔乾燥の均一性〕
有機EL素子の輝度は、発光層の膜厚と相関関係があり、発光層の膜厚は乾燥の均一性と相関関係があることから、各有機EL素子1〜11の輝度を測定し、そのばらつきを発光層の膜厚の均一性、すなわち乾燥の均一性として評価した。まず、輝度計CS2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、各有機EL素子1〜11の輝度を、幅手方向に0.01m間隔で搬送方向の位置を変えて300点測定した。300点の測定値のうち、最大輝度値、最小輝度値、平均輝度値を求めて、下記式により輝度のばらつきを求めた。
輝度のばらつき={(最大輝度値−最小輝度値)/平均輝度}×100
◎:輝度のばらつきが0.5未満であり、非常に均一な乾燥ができている。
○:輝度のばらつきが0.5以上1.0未満であり、均一な乾燥ができている。
△:輝度のばらつきが1.0以上5.0未満であり、膜厚にばらつきはみられるが、実用可能な程度に均一な乾燥ができている。
×:輝度のばらつきが5.0以上であり、均一に乾燥できていない。
A 加熱装置
51 赤外線ヒーター
B 凝縮乾燥装置
11 凝縮板
11a 凝縮面
12 加熱装置
3 塗布装置
f1 基板
f2 塗布膜
f2a 塗布膜面
Claims (5)
- 基板上の塗布膜と対面する凝縮板を備え、当該凝縮板により塗布膜からの溶媒の蒸気を凝縮し、乾燥する凝縮乾燥装置と、
前記塗布膜の塗布の直後、前記凝縮乾燥装置による乾燥の直前に配置され、前記基板及び塗布膜を予備的に加熱する加熱装置と、
を備える塗布膜の乾燥装置。 - 前記加熱装置が、赤外線の輻射熱により前記基板及び塗布膜を加熱する請求項1に記載の塗布膜の乾燥装置。
- 前記加熱装置による加熱後の塗布膜の粘度が、5mPa・s以下である請求項1又は2に記載の塗布膜の乾燥装置。
- 前記凝縮乾燥装置による溶媒の乾燥量が、前記塗布膜が含有する溶媒の全体積に対し、10〜80体積%の範囲内である請求項1〜3の何れか一項に記載の塗布膜の乾燥装置。
- 基板上の塗布膜と凝縮板を対面させ、当該凝縮板により塗布膜からの溶媒の蒸気を凝縮し、乾燥する塗布膜の乾燥方法において、
前記塗布膜の塗布の直後、前記凝縮による乾燥の直前に、前記基板及び塗布膜を予備的に加熱する工程を含む塗布膜の乾燥方法。
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