JP2010239127A - 有機電界発光素子、有機elディスプレイ及び有機el照明。 - Google Patents
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Abstract
本発明は、駆動電圧が低く、発光効率が高く、有機電界発光素子、並びにそれを備えた有機ELディスプレイ及び有機EL照明を提供することを課題とする。
【解決手段】
基板上に、陽極、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に含み、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、湿式成膜法で形成された層であり、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、この順に隣接して設けられた有機電界発光素子であって、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層のうち、隣接する少なくとも2層が、常圧、及び酸素の体積濃度が15%以上の環境下、5分以上、200℃以上で加熱した層であることを特徴とする、有機電界発光素子。
【選択図】なし
Description
例えば、特許文献1には、有機電界発光素子の特定の層を、不活性ガス雰囲気下、又は、減圧下で加熱して製造することが開示されている。
しかしながら、得られる素子の特性には、更なる改良が必要であった。
しかしながら、本発明は、常圧、酸素の体積濃度が15%以上の環境下で、特定の温度以上で、加熱することで、上記課題を解決することを見出して、本発明に到達した。
本発明の有機電界発光素子は、高い発光効率を有し、さらに、定電流駆動時の発光輝度の低下、電圧上昇、非発光部分(ダークスポット)の発生、短絡欠陥等が抑制される。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に含み、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、湿式成膜法で形成された層であり、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、この順に隣接して設けられた有機電界発光素子であって、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層のうち、隣接する少なくとも2層が、常圧、及び酸素の体積濃度が15%以上の環境下にて、5分以上、200℃以上で加熱したことを特徴とする、有機電界発光素子である。
本発明の有機電界発光素子は、酸素の体積濃度が15%以上の環境下、5分以上、200℃以上で加熱した隣接する少なくとも2層を有する(この加熱処理を経て得られた層を「特定有機層」と称する場合がある)。尚、互いに隣接する特定有機層は、上記条件を満たす、ほぼ同一の加熱処理工程を得て得られることが好ましい。
上記範囲内であると、得られる素子の駆動電圧が小さくなるため好ましい。
これは、層中に存在すると電荷輸送の妨げになる、電荷輸送の関与が小さい部分構造又は不純物が酸化されて、層から除去されるためであると推測される。
また、加熱する温度は、通常200℃以上、好ましくは220℃以上、さらに好ましくは230℃以上、また通常350℃以下、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは260℃以下である。
加熱手段は、特に制限は無いが、オーブン、ホットプレート、ハロゲンヒーター、赤外線加熱装置などを用いることができる。
尚、加熱する時期は、後述の[湿式成膜法]で記載の項における、湿式成膜法で塗布した後の加熱として行う。
本発明の有機電界発光素子は、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、及び発光層のうち、隣接する少なくとも2層が、塗布後の乾燥を上記の<特定有機層の形成方法>の項に記載の加熱を行った層である。
つまり、少なくとも、第一の電荷輸送層及び第二の電荷輸送層、又は第二の電荷輸送層及び発光層が、上記<特定有機層の形成方法>の項で記載の加熱を行った層であるが、第一の電荷輸送層及び第二の電荷輸送層を上記<特定有機層の形成方法>の項で記載の加熱で行った層であることが好ましい。
尚、上記<特定有機層の形成方法>の項で記載の加熱を、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、及び発光層の全てに行ってもよい。
本発明における第一の電荷輸送層は、陽極から発光層へ向かって正孔を注入・輸送する層である。
第一の電荷輸送層は、正孔輸送材料を含有することが好ましい。
(正孔輸送材料の構造)
第一の電荷輸送層を形成する材料としては、正孔輸送能が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ara又はArbが異なっているものであってもよい。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)及びフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する高分子化合物が好ましい。
Xの具体例としては、―O―、―BR―、―NR―、―SiR2―、―PR―、―SR―、―CR2―又はこれらが結合してなる基である。尚、Rは、水素原子又は任意の有機基を表す。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
Arc〜Arjの具体例としては、前記式(II)における、Ara及びArbと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008−98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
得られるため、熱的、電気的安定性に優れ、好ましい。
第一の電荷輸送層を形成する材料は、上記構造に、後述の[第二の電荷輸送層][不溶化基]の項に記載の不溶化基を有する化合物を用いてもよい。
また、後述の[第二の電荷輸送層]の項に記載の材料を用いて形成してもよい。
第一の電荷輸送層には、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、各種の電子受容性化合物、発光材料、バインダー樹脂、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤などが挙げられる。尚、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任煮の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
第一の電荷輸送層を湿式成膜法により形成する場合、第一の電荷輸送層を構成する正孔輸送性化合物、及び必要に応じて、その他の成分を適切な溶媒と混合して成膜用の組成物(第一の電荷輸送層形成用組成物)を調製して用いる。
第一の電荷輸送層形成用組成物における、正孔輸送性化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。尚、第一の電荷輸送層形成用組成物には、正孔輸送性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
本発明にかかる、第一の電荷輸送層形成用組成物は、通常溶媒を含む。
溶媒の沸点は、通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶媒の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶媒の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
陽極と発光層との間に有機層が一層である場合、つまり、第一の電荷輸送層のみである場合は、第一の電荷輸送層形成用組成物に、電子受容性化合物を含有することが好ましい。
電子受容性化合物の例としては、例えば、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられ、その好ましい例も同様である。例えば、下記構造式で表わされる化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第一の電荷輸送層形成用組成物における、電子受容性化合物の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。尚、第一の電荷輸送層形成用組成物には、電子受容性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
本発明における第一の電荷輸送層は、湿式成膜法で形成される。
尚、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。これは、有機電界発光素子に用いられる塗布用組成物特有の液性に合うためである。
不溶化性化合物を用いて膜を形成する場合は、上記の通り塗布後、加熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、不溶化性化合物が不溶化反応を起こして層を形成する。
また、加熱手段としては特に限定されないが、形成された膜を有する基板あるいは積層体をホットプレート上にのせたり、オーブン内で加熱したりするなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
このようにして形成される本発明における不溶化膜の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、また通常100nm以下、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
本発明における第二の電荷輸送層は、第一の電荷輸送層上に設けられ、第一の電荷輸送層から運ばれたホールを発光層に輸送する層である。
第二の電荷輸送層を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
式(II)中、Ar11及びAr12は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
また、Ar11〜Ar15としては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は―CH=CH―基により連結した2価の基も好ましく、ビフェニレン基及びターフェニレン基、がさらに好ましい。
Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が後述の不溶化基以外に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、下記[置換基群Z]から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基;
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
溶解性の点から、Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
各々、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、Ar14同士、Ar15同士は、各々互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
前記式(II)においてqは、0〜3の整数を表す。
qは、通常0以上であり、通常3以下、好ましくは2以下である。qが2以下である方が、原料となるモノマーの合成が容易である。
[1−4.繰り返し単位の割合等]
本発明における第二の電荷輸送層を形成するための高分子化合物は、1種又は2種以上の式(II)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
本発明における高分子化合物は、置換基として不溶化基を含む基を有することが好ましい。
本発明においては、不溶化基は、解離基又は架橋性基であることが好ましい。
高分子化合物は、置換基として不溶化基を含む基を有するが、不溶化基を有する位置は、式(II)で表される繰り返し単位中にあってもよく、また式(II)で表される繰り返し単位以外の部分、例えば、末端基に有していてもよい。
本発明における高分子化合物は、不溶化基として、解離基を有していることが不溶化後(解離反応後)の電荷輸送能に優れる点で好ましい。
ここで、解離基とは、結合している芳香族炭化水素環から70℃以上で解離し、さらに溶媒に対して可溶性を示す基をいう。ここで、溶媒に対して可溶性を示すとは、化合物が熱及び/又は活性エネルギー線の照射によって反応する前の状態で、常温でトルエンに0.1重量%以上溶解することをいい、化合物のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
またさらに、100℃以上で熱解離する基であることが好ましく、300℃以下で熱解離する基であることが好ましい。
解離基が2価の基である場合の具体例は、以下の<2価の解離基群A>の通りである。
<2価の解離基群A>
<1価の解離基群B>
本発明において、1つの高分子化合物鎖の中に含まれる解離基は、好ましくは平均5以上、より好ましくは平均10以上、より好ましくは平均50以上である。この下限値を下回ると加熱前の該高分子化合物の塗布溶媒に対する溶解性が低い場合があり、またさらに加熱後の化合物の溶媒への溶解性の低下の効果も低くなる可能性がある。
また、本発明における高分子化合物は、不溶化基として、架橋性基を有していることが、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる点で好ましい。
ここで、架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
架橋性基としては、不溶化がしやすいという点で、例えば、架橋性基群Tに示す基が挙げられる。
[架橋性基群T]
エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
また、架橋性基の中でも、不溶化後の構造が特に安定な点で、ベンゾシクロブテン環由来の基が特に好ましい。
架橋性基は分子内の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に直接結合してもよいが、2価の基を介して結合してもよい。この2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH2−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に結合することが好ましい。
本発明における高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、通常20000以上、好ましくは40000以上であり、また通常2000000以下、好ましくは1000000以下である。
また、数平均分子量(Mn)は、通常1000000以下、好ましくは800000以下、より好ましくは500000以下であり、また通常5000以上、好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上である。
また、本発明の共役高分子化合物の分散度(Mw/Mn:Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す)は、通常2.40以下、好ましくは2.10以下、より好ましくは2.00以下であり、また好ましくは1.00以上、さらに好ましくは1.10以上、特に好ましくは1.20以上である。この上限値を上回ると、精製が困難となったり、溶媒に対する溶解性が低下したり、電荷輸送能が低下したりする等、本発明の効果が得られないおそれがある。
カラムは、TSKgel GMHXL(東ソー社製)又はこれと同等以上の分離能を示すもの、すなわち、
粒子径 :9mm
カラムサイズ:7.8mm内径×30cm長さ
保証理論段数:14000TP/30cm程度
のものを2本用い、カラム温度は40℃とする。
分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、分子量分布が決定される。なお、SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなる。
以下、第二の電荷輸送層を形成するための、高分子化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明における第二の電荷輸送層は、湿式成膜法で形成される。
第二の電荷輸送層を製造するための第二の電荷輸送層用組成物の塗布後、得られた塗膜を乾燥し、第二の電荷輸送層用溶媒を除去することにより、第二の電荷輸送層が形成される。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、例えば、前記[第一の電荷輸送層]の項で記載した、本発明における湿式成膜法が挙げられ、中でも好ましくは、スピンコート法及びインクジェット法である。
[発光層]
本発明における発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層は、発光材料と電荷輸送材料を含有する層である。
以下、各々について説明する。
本発明に発光材料は、本発明の効果を損なわない限り、任意の発光材料を用いることができる。
以下、その他の発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光発光材料は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光発光材料)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クマリン、クリセン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光発光材料)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
上記発光材料の中でも、本発明の有機電界発光素子は、発光層に、発光材料としてアリールアミン化合物を含有することが好ましい。
アリールアミン化合物としては、耐久性に優れる点からから下記式(I’)で表される、N,N,N’,N’−テトラアリールアリーレンジアミン化合物が好ましい。
Ar1〜Ar5の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、ベンゾフェナントレン環等の、ベンゼン環、或いは、ベンゼン環の2〜5個が縮合してなる縮合環由来の基が挙げられる。
中でも、電流効率が高い点で、Ar5はクリセン環由来の基であることが好ましく、特に、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
Ar1〜Ar4は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar1〜Ar4の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、ベンゾフェナントレン環等の、ベンゼン環、或いは、ベンゼン環の2〜5個が縮合してなる縮合環由来の基が挙げられる。特に、青色も発光を得るためにはフェニル基が好ましい。
また、置換基の分子量は、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。Ar1〜Ar4が置換基を有する場合、その置換位置は、窒素原子の置換位置に対して、パラ位、メタ位であることが好ましく、特にパラ位であることが好ましい。
<式(I)で表される化合物の具体例>
本発明における電荷輸送材料とは、正孔輸送性や電子輸送性などの電荷輸送性を有する化合物である。
本発明においては、電荷輸送材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層において、発光性低分子化合物をドーパント材料とし、電荷輸送材料をホスト材料として用いることが好ましい。
電荷輸送材料は、従来有機電界発光素子の発光層に用いられている化合物であればよく、特に発光層のホスト材料として使用されている化合物が好ましい。
アントラセン環を部分構造として有する化合物の中でも、耐久性に優れる点から、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
Ar5及びAr6は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar5及びAr6の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、ベンゾフェナントレン環等の、ベンゼン環、或いは、ベンゼン環の2〜5個が縮合してなる縮合環由来の基が挙げられる。
Ar7及びAr8は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar5及びAr6の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、ベンゾフェナントレン環等の、ベンゼン環、或いは、ベンゼン環の2〜5個が縮合してなる縮合環由来の基が挙げられる。
アントラセン化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。アントラセン化合物の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、アントラセン化合物の分子量が大き過ぎると、アントラセン化合物の精製が困難となってしまったり、溶媒に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
<アントラセン化合物の具体例>
また、溶媒は、発光性低分子化合物及び電荷輸送材料が良好に溶解する溶媒であれば特に限定されない。
溶媒の溶解性としては、常温・常圧下で、発光性低分子化合物及び電荷輸送材料を、各々、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上溶解することが好ましい。
例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶媒が適当な速度で蒸発することが好ましい。このため、溶媒の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下である。
本発明における発光層の形成方法は、成膜性に優れる点で、湿式成膜法で行うことが好ましい。
発光層を製造するための発光層用組成物の塗布後、得られた塗膜を乾燥し、発光層用溶媒を除去することにより、発光層が形成される。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、例えば、前記[第一の電荷輸送層]の項で記載した、本発明における湿式成膜法が挙げられ、中でも好ましくは、スピンコート法及びインクジェット法である。
本発明の構成とすることで、発光効率が高く、駆動電圧が低い素子となる理由を以下の通り推測する。本発明の有機電界発光素子は、隣接する2層の加熱条件を、同じ常圧大気中、高温にして製造する。この条件で製造することで、隣接する2層の状態、つまり層の水分量、残留溶媒量、及び密度が近い状態となる。これより、隣接する2層の界面における電荷注入が向上して、本発明の効果が奏される。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、基板上に、陽極、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に含み、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、湿式成膜法で形成された層であり、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、この順に隣接して設けられた有機電界発光素子の製造方法であって、該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層のうち、隣接する少なくとも2層を、常圧、及び酸素の体積濃度が15%以上の環境下にて、5分以上、200℃以上で加熱することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法である。
また、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、及び発光層を構成する材料、及び方法についても、各々、前記[第一の電荷輸送層]、[第二の電荷輸送層]、及び[発光層]に記載のものと同様である。好ましい態様も同様である。
以下に、本発明の有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
尚、図1に示す素子の場合、正孔注入層が第一の電荷輸送層、正孔輸送層が第二の電荷輸送層に相当する。以下に述べる各層は、各々、これらが相当する第一の電荷輸送層、及び第二の電荷輸送層の条件として前述した各条件を満たす材料を選択して形成する。
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
陽極2は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成する。
本発明における正孔注入層を形成するための材料、及び方法は、前記[第一の電荷輸送層]の項に記載の材料及び方法で形成することができる。好ましい態様も同様である。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
本発明に係る正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成する。
本発明における正孔輸送層を形成するための材用及び方法は、前記[第二の電荷輸送層]の項で記載の材料及び方法で形成することができる。また、好ましい態様も同様である。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
正孔注入層3の上、又は正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層5の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層5の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料として、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
<電子阻止層>
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を備えるものである。有機ELディスプレイ及び有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明を形成することができる。
[電流−電圧特性の評価]
(参考例1)
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの素子面積を有する単層素子が得られた。
得られた単層素子を2400型ソースメーター(Keithley社製)に接続し、電圧を順次印加していき電流値を読み取った。
図2に示すが如く、常圧大気雰囲気中、230℃で1時間加熱した素子は、比較参考例1の素子に比べて、低い電圧で電流が流れた。このことから、常圧大気雰囲気中高温で加熱することで、層の抵抗を低減できることが明らかとなった。
(参考例2)
参考例1において、前記式(P1)で表される高分子化合物を、下記式(P2)で表される高分子化合物(重量平均分子量(Mw)=70000、分散度(Mw/Mn)=1.9)に変更した他は、参考例1と同様にして、図1に示す素子を作製した。
この素子の電流-電圧特性を図2に表す。
図2に示すが如く、常圧大気雰囲気中、230℃で1時間加熱した素子は、比較参考例2の素子に比べて、低い電圧で電流が流れた。
つまり、本発明の有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率が高い素子であることが分かる。
参考例1において、加熱温度を、230℃から、180℃に変更した他は、参考例1と同様にして、図1に示す素子を作製した。
この素子の電流-電圧特性を図2に表す。
参考例2において、加熱温度を、230℃から、180℃に変更した他は、参考例2と同様にして、図1に示す素子を作製した。
この素子の電流-電圧特性を図2に表す。
(実施例1)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。
パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
溶媒 安息香酸エチル
組成物濃度 P1:2.0重量%
A1:0.4重量%
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 3時間
引き続き、下記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子化合物(重量平均分子量:66000,数平均分子量:42000)を含有する有機電界発光素子用組成物を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜して、加熱により不溶化させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4(第二の電荷輸送層)を形成した。
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
固形分濃度 P1:1.4重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中、230℃、1時間
次に、発光層5を形成するにあたり、下記式(H1)で表される化合物、及び下記(D1)で表される化合物を用いて、以下に示す発光層形成用組成物を調製し、以下に示す条件で正孔輸送層4上にスピンコートして膜厚45nmで発光層5を得た。
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 H1:3.40重量%
D1:0.34重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 減圧下(0.1MPa)、130℃、1時間
ここで、発光層5までを成膜した基板を、窒素グローブボックスに連結された真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が1.8×10-4Pa以下になるまで排気した後、下記式(C2)で表される材料を真空蒸着法によって積層し正孔阻止層6を得た。蒸着速度を0.5〜1.5Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層して膜厚10nmの膜の正孔阻止層6を形成した。蒸着時の真空度は2.5〜4.0×10-5Paであった。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
このようにして得られた2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性は以下の通りである。
1000cd/m2時の電圧: 6.3 V
1000cd/m2時の効率: 4.8cd/A
正孔輸送層4の成膜条件を、下記のように大気中から窒素中に代えた以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作成した。
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
このようにして得られた2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性は以下の通りである。
1000cd/m2時の電圧: 7.4 V
1000cd/m2時の効率: 4.0 cd/A
以上より、本発明の有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、また発光効率が高い有機電界発光素子であることがわかる。
Claims (10)
- 基板上に、陽極、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に含み、
該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、湿式成膜法で形成された層であり、
該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、この順に隣接して設けられた有機電界発光素子であって、
該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層のうち、隣接する少なくとも2層が、
常圧、及び酸素の体積濃度が15%以上の環境下にて、5分以上、200℃以上で加熱した層であることを特徴とする、有機電界発光素子。 - 上記隣接する層が、第一の電荷輸送層、及び第二の電荷輸送層であることを特徴とする、有機電界発光素子。
- 上記発光層が、アリールアミン化合物を含有する層であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
- 上記発光層が、部分構造として、アントラセン環を含む化合物を含有する層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
- 上記高分子化合物が、置換基として不溶化基を有することを特徴とする、請求項7に記載の有機電界発光素子。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする、有機ELディスプレイ。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする、有機EL照明。
- 基板上に、陽極、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に含み、
該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、湿式成膜法で形成された層であり、
該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層は、この順に隣接して設けられた有機電界発光素子の製造方法であって、
該第一の電荷輸送層、該第二の電荷輸送層、及び該発光層のうち、隣接する少なくとも2層を、
常圧、及び酸素の体積濃度が15%以上の環境下、5分以上、200℃以上で加熱することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
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