JP2009252407A - 有機電界発光素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】湿式成膜法で成膜される発光層を有する有機電界発光素子の製造方法において、長寿命でかつ発光効率の高い素子を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】正孔注入層または正孔輸送層の下地層上に、発光材料および溶剤を含む発光層形成用組成物を湿式成膜した後、(大気圧−0.2)kPa〜(大気圧+0.2)kPaの気圧下で加熱して発光層を形成する有機電界発光素子を製造する。該発光層形成用組成物に含まれる溶剤の沸点は140℃以上であり、該発光層形成用組成物の該下地層の成膜面に対する接触角は10度未満である。
【選択図】図1

Description

本発明は、湿式成膜法で形成される発光層を有する有機電界発光(EL)素子の製造方法に関する。
有機電界発光素子は、通常、陽極と陰極との間に複数の有機層(発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層等)が積層して設けられており、これらの有機層の形成は、多くの場合、低分子量の有機層形成材料を真空蒸着することにより行なわれていた。
しかしながら、真空蒸着法では均質で欠陥の少ない薄膜を得ることが困難であり、また、複数の有機層を真空蒸着法で形成するには長時間を要するため、素子の製造効率の面でも課題があった。特に、有機ELディスプレイの大画面化に向けて、性能と効率の面でこれら課題を解決することが求められていた。
そこで、湿式成膜法により有機層を形成する方法が検討されており、例えば、特許文献1では、水分や酸素に対して耐久性を有する高分子化合物を用いて成膜した後、真空条件下での乾燥を行うことにより発光層を形成している。しかし、この方法では均質な膜が得られず、素子の短絡が生じたり、十分な発光効率や寿命が得られないという問題点があった。
また、特許文献2では、発光性の高分子化合物と他の高分子化合物による有機層積層膜とその有機層間の界面に混合層を有することによって発光効率の向上、および長寿命化を報告している。しかし、前記混合層を形成するためには乾燥条件のコントロールが難しく、電圧の上昇や色味の変化など、他の素子特性に悪影響を及ぼす可能性があった。
特開2004−319305号公報 特開2005−276749号公報
本発明は、湿式成膜法で成膜される発光層を有する有機電界発光素子の製造方法において、長寿命でかつ発光効率の高い素子を安定して製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、有機電界発光素子の製造において、成膜された発光層をほぼ大気圧の条件下で加熱乾燥することが素子の短絡防止に有効であることを見出した。また、ほぼ大気圧の条件下で加熱乾燥する工程を経て、長寿命で発光効率の高い素子を安定して得るためには、発光層形成用組成物をある特定の条件に調製することが必要であることが分かり、本発明に至った。
即ち、本発明は、正孔注入層または正孔輸送層上に、発光材料および溶剤を含む発光層形成用組成物を湿式成膜した後、(大気圧−0.2)kPa〜(大気圧+0.2)kPaの気圧下で加熱して発光層を形成する有機電界発光素子の製造方法において(以下、発光層が形成される正孔注入層または正孔輸送層を「下地層」と称し、この下地層の発光層形成用組成物が湿式成膜される面を「下地面」と称す。)、該発光層形成用組成物に含まれる溶剤の沸点が140℃以上であり、該発光層形成用組成物の該下地面に対する接触角が10度未満であることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法、に存する。
本発明によれば、発光層を湿式成膜法で形成して、長寿命でかつ発光効率の高い素子を提供することができる。
また、素子特性が安定して得られるため、素子製造における歩留まりが向上する。
しかも、大面積化が容易であり、有機電界発光素子の大型ディスプレイや照明といった用途への利用が可能となる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、これらの内容に特定はされない。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、正孔注入層または正孔輸送層上に、発光材料および溶剤を含む発光層形成用組成物を湿式成膜した後、(大気圧−0.2)kPa〜(大気圧+0.2)kPaの気圧下で加熱して発光層を形成する有機電界発光素子の製造方法において(以下、発光層が形成される正孔注入層または正孔輸送層を「下地層」と称し、この下地層の発光層形成用組成物が湿式成膜される面を「下地面」と称す。)、該発光層形成用組成物に含まれる溶剤の沸点が140℃以上であり、該発光層形成用組成物の該下地面に対する接触角が10度未満であることを特徴とする。
なお、本発明における湿式成膜とは、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷等の溶剤を含有するインクを用いて成膜する方法をいう。これらの湿式成膜法のうち、パターニングのし易さという点で、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法が好ましい。
本発明の製造方法により得られる有機電界発光素子は、通常基板上に形成された第1の電極、発光層および第2の電極を有し、本発明においては、陽極となる一方の電極と発光層との間にさらに、正孔注入層、或いは、正孔輸送層と正孔注入層を有する。正孔輸送層と正孔注入層のうち、正孔注入層のみが有機電界発光素子に設けられている場合、発光層は該正孔注入層の上に形成される。また、正孔輸送層と正孔注入層の両方が設けられている場合、発光層は、正孔注入層および正孔輸送層が積層された正孔輸送層上に形成される。なお、本発明の有機電界発光素子の製造方法で製造される有機電界発光素子は、これらの層以外にも、2つの電極の間には他の層を有していてもよい。また、陽極となる一方の電極と発光層との間に一層のみ有する場合、その層を正孔注入層とよぶ。
以下、本発明の有機電界発光素子の製造方法で製造される有機電界発光素子(以下、「本発明の有機電界発光素子」と称す場合がある。)の構造例を示す断面の模式図である図1を参照して本発明の方法を説明するが、本発明の有機電界発光素子は、発光層に加え、さらに正孔注入層、或いは正孔輸送層と正孔注入層を有していればよく、以下に説明する他の層は有していても、有していなくてもよい。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
[基板]
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[陽極]
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は発光層5側の層(正孔注入層3または発光層5など)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、
インジウムおよび/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などを用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でも良い。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
[正孔注入層]
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましい。湿式成膜法は、従来の真空蒸着法と比較して均質で欠陥がない薄膜が得られる点、成膜のための時間が短く生産性に優れる点などにおいて、工業的にも優れている。
正孔注入層3は、以下に記載する湿式成膜法または真空蒸着法、好ましくは湿式成膜法で形成されるが、その膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
<湿式成膜法による正孔注入層の形成>
湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物および溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型炭化水素化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 2009252407
(式(I)中、ArおよびArはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 2009252407
(上記各式中、Ar〜Ar16は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、または置換基を有していてもよい芳香族複素環由来の1価または2価の基を表す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または任意の置換基を表す。))
Ar〜Ar16としては、任意の芳香族炭化水素環または芳香族複素環由来の、1価または2価の基が適用可能である。これらはそれぞれ同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、任意の置換基を有していてもよい。
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素環および/または芳香族複素環由来の基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。
Ar、Arとしては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がさらに好ましい。また、Ar〜Arとしては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基がさらに好ましい。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、WO2005/089024号公報に記載のものが挙げられる。
また、低分子の正孔輸送性化合物としては、有機電界発光素子の正孔輸送材料として利用されてきた、従来公知の化合物が挙げられる。例えば、芳香族ジアミン化合物、芳香族トリアミン化合物、ベンジルフェニル化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン化合物、シラザン化合物、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン化合物、フタロシアニン誘導体またはポルフィリン誘導体などが挙げられる。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用することが好ましい。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(WO2005/089024号公報);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
上述した溶剤の中でも、正孔注入層3の構成材料を溶解する能力(溶解能)、若しくは該材料との親和性が高い溶剤が好ましい。これは正孔注入層形成用組成物の濃度を任意に設定して、成膜工程の効率に優れる濃度の組成物を調製できるためである。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
成膜工程における温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、13℃以上がより好ましく、16℃以上がさらに好ましく、また、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは100ppm以下である。相対湿度が低すぎると、湿式成膜法おける成膜条件の制御が困難となり、安定した環境を維持できない。また、相対温度高すぎると有機層への水分吸着が影響する可能性がある。
成膜工程における雰囲気中の酸素の体積濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、また、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは1%以下、中でも好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。酸素濃度が低すぎる環境は制御が難しく、安定した環境を維持できない。また酸素濃度が高すぎると、正孔注入層内部に酸素が拡散することで、素子特性に悪影響を与える可能性がある。
成膜環境下における微粒子の数(すなわち、パーティクル数)は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、ダークスポット低減の観点から、粒径0.5μm以上のパーティクルが、1m3あたり通常10000個以下、好ましくは5000個以下である。特に好ましくは、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり5000個以下である。この下限値に制限はないが、工業的実用性の観点から、通常、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり100個は存在することが考え得る。パーティクル数が多すぎるとダークスポットを生じる可能性があり、また、上記範囲を下回るほど環境制御が困難になる傾向がある。
なお、パーティクル数は、光散乱方式により検出され、例えば、ハンドヘルドパーティクルカウンターKR(リオン株式会社製)で検出できる。
成膜工程において形成される正孔注入層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
成膜後の処理には特に制限はないが、成膜後、長時間大気中に置いているとパーティクルや水分吸着等の原因により、ダークスポットや輝点などが生じる可能性があるため、できるだけ早く加熱工程に移すことが好ましい。通常、成膜後、加熱工程までの時間は30分以内、好ましくは10分以内、より好ましくは1分以内である。
成膜後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱方向は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。加熱方向の例を挙げると、例えば、ホットプレート上に基材を搭載しそのホットプレートを介して加熱させることで、塗布膜を基板の下面(有機層が塗布されていない面)から加熱していく方法、クリーンオーブン内に基板を投入することで、上下左右すべての方向から塗布膜を加熱する方法等が挙げられる。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、より好ましくは200℃以上、また、好ましくは410℃以下、より好ましくは300℃以下で加熱することが好ましい。これにより、膜中に含まれる溶剤を十分に揮発させることが可能となる。この加熱温度が高すぎると他の層の成分が拡散する可能性があり、また、低すぎると正孔注入層中に溶剤が残る可能性がある。なお、加熱に際しては、加熱温度を段階的または連続的に変化させてもよい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、さらに好ましくは1分以上、また、通常180分以下、好ましくは120分以下、さらに好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、さらに好ましくは10分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、好ましくは0.3×10−6Torr(0.4×10−4Pa)以上、さらに好ましくは0.5×10−6Torr(0.66×10−4Pa)以上である。また、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下、好ましくは6.0×10−6Torr(8.0×10−4Pa)以下、さらに好ましくは4.0×10−6Torr(5.3×10−4Pa)以下である。この範囲を下回る真空度を求める場合、真空引きに時間を費やすこととなり、また、この範囲を上回ると蒸着膜が不均質になる恐れがある。
蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、好ましくは0.4Å/秒以上、更に好ましくは0.6Å/秒以上である。また、通常5.0Å/秒以下、好ましくは4.0Å/秒以下、さらに好ましくは3.0Å/秒以下である。この範囲を下回ると、蒸着速度の制御が困難となり、安定した素子特性が得難くなる可能性があり、この範囲を上回ると、膜に欠陥が生じる可能性があり、均質な膜が得られなくなる。
蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上、より好ましくは13℃以上、さらに好ましくは16℃以上で行われる。また、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下で行われる。この温度範囲から外れると成膜された正孔注入層中に結晶が生じる可能性があり、膜の欠損が生じる恐れがあるためである。
[正孔輸送層]
正孔輸送層4の形成方法は特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4は湿式成膜により形成することが好ましい。
正孔輸送層4は、正孔注入層がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。
なお、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4''−トリス( 1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体などが挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。
湿式成膜で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
真空蒸着により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋基を有する化合物であって、架橋することによりポリマーを形成する。
この架橋基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合;ベンゾシクロブタンなどが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。
架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で有していてもよい。
この架橋基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合;ベンゾシクロブタンなどが挙げられる。
架橋基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーが有する架橋基の数に特に制限はないが、単位電荷輸送ユニットあたり通常2.0未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下となる数が好ましい。これは正孔輸送層4の材料の比誘電率を好適な範囲に納めるためである。また、架橋基の数が多すぎると、反応活性種が発生し、他の材料に悪影響を与える可能性があるためである。ここで、単位電荷輸送ユニットとは、架橋性ポリマーを形成する材料がモノマー体の場合、モノマー体そのものであり、架橋基をのぞいた骨格(主骨格)のことを示す。他種類のモノマーを混合する場合においても、それぞれのモノマーの主骨格のことを示す。架橋性ポリマーを形成する材料がオリゴマーやポリマーの場合、有機化学的に共役がとぎれる構造の繰り返しの場合は、その繰り返しの構造を単位電荷輸送ユニットとする。また、広く共役が連なっている構造の場合には、電荷輸送性を示す最小繰り返し構造、乃至はモノマー構造を示す。例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ペリレンなどの多環系芳香族、フルオレン、トリフェニレン、カルバゾール、トリアリールアミン、テトラアリールベンジジン、1,4−ビス(ジアリールアミノ)ベンゼンなどが挙げられる。
さらに、架橋性化合物としては、架橋基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物の分子量は、通常5000以下、好ましくは2500以下であり、また好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上である。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解または分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤および重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱および/または光などの電磁エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させてポリマー化する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。
加熱乾燥の場合の加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの電磁エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱および光などの電磁エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱および光を含む電磁エネルギー照射は、実施後に層に含有する水分および/または表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱および/または光などの電磁エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも正孔輸送層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[発光層]
正孔注入層3の上、または正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
本発明において、発光層は発光材料および溶剤を含む発光層形成用組成物を湿式成膜して形成される。また、本発明では、湿式成膜後、(大気圧−0.2)kPa〜(大気圧+0.2)kPaの環境下、すなわちほぼ大気圧に近い状態で加熱することを特徴とする。
従来、加熱乾燥は、多くの場合、溶剤除去のために減圧下で行われている。これは、大気圧下の加熱では、有機層内に溶剤が残存してしまい、寿命や発光効率が低下する傾向にあるためであった。しかしながら、減圧下での加熱乾燥は、素子の短絡を生じるなどの問題点があり、改善策が求められていた。
本発明者らは、ほぼ大気圧に近い状態での加熱でも、寿命や発光効率などの素子の特性に影響を与えることのない方法として、発光層形成用組成物の物性等に着目して検討を行ったところ、特定の条件を満たす組成物を使用すれば、寿命や発光効率などの素子の特性を良好に保つことができることを見出した。
以下にまず、本発明の特徴である発光層形成用組成物について説明する。
本発明に係る発光層形成用組成物は発光材料および溶剤を含有し、好ましくは、更に正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物などの電荷輸送性化合物を含有する。この発光層形成用組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。
<発光材料>
発光材料とは、不活性ガス雰囲気下、室温で、希薄溶液中における、蛍光量子収率が30%以上である材料であって、希薄溶液中における蛍光スペクトルとの対比から、それを用いて作製された有機電界発光素子に通電した際に得られるELスペクトルの一部または全部が、該材料の発光に帰属される材料、と定義される。
本発明において、発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。発光材料は、低分子材料であっても、高分子材料であってもよいが、色純度に優れていることから低分子材料であることが好ましい。また、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることは好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クリセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光材料として用いる化合物は、前述の如く、低分子化合物であることが好ましく、この場合、その分子量は通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光材料は、発光層形成用組成物を100重量%とすると、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下の割合で用いられる。
発光層5における発光材料の含有割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常35重量%以下、好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
<正孔輸送性化合物>
発光層5には、構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層3や正孔輸送層4に用いられる正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。
発光層5における正孔輸送性化合物の含有割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
<電子輸送性化合物>
発光層5には、構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)などのオキサジアゾール系化合物や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)などのピリジン系化合物や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)などのフェナントロリン系化合物、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)などのカルバゾール系化合物等が挙げられる。なお、発光層5において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層5における電子輸送性化合物の含有割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などの電荷輸送性化合物は、発光層形成用組成物を100重量%とすると、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下の割合で用いられる
<溶剤>
本発明において、発光層形成用組成物に用いられる溶剤は、その沸点が140℃以上であることを特徴とする。素子の特性を良好に保つために、溶剤の沸点は140℃以上でなければならず、より好ましくは160℃以上である。また、溶剤の沸点は通常、350℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは180℃以下である。溶剤の沸点がこの範囲を下回ると、乾燥条件の制御範囲が狭くなり、安定した素子特性が得られない恐れがある。また、この範囲を上回ると、高温、長時間の乾燥が必要となり、下地層の劣化、更には素子特性の低下につながる可能性がある。
発光層形成用組成物中に2種以上の溶剤が含まれる場合には、溶剤の総重量の半分以上、好ましくは80重量%以上が沸点140℃以上の溶剤であることが好ましい。
発光層形成用組成物に用い得る溶剤として具体的には、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類である。これらの溶剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、および比率で用いてもよい。
溶剤の使用量は、発光層形成用組成物100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上、また、好ましくは99.95重量部以下、より好ましくは99.9重量部以下、特に好ましくは99.8重量部以下である。発光層形成用組成物100重量部中の溶剤の含有量が10重量部を下回ると、粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、99.95重量部を上回ると、成膜後、溶剤を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。
発光層形成用組成物には、必要に応じて、上記の化合物等の他に、更に他の化合物を含有していてもよい。 例えば、上記の溶剤の他に、別の溶剤を含有していてもよい。そのような溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、および比率で用いてもよい。
また、成膜性の向上を目的として、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。
<接触角>
本発明における発光層形成用組成物は、下地面に対する接触角が10度未満であることを特徴とする。本発明において下地面とは、発光層を正孔注入層上に形成する場合には、当該正孔注入層の上面、発光層を正孔輸送層上に形成する場合には、当該正孔輸送層の上面をいう。
本発明において、発光層の下地層となる正孔注入層または正孔輸送層は湿式成膜により形成されることが好ましく、正孔注入層および正孔輸送層の両層とも湿式成膜により形成されることが好ましい。
本発明では、発光層と下地層との界面での素子劣化防止の観点から、該接触角は10度未満、好ましくは6度未満となるようにする。また、この接触角は好ましくは1度以上、より好ましくは3度以上である。ほぼ大気圧下での加熱乾燥の場合、この接触角の値が大きすぎると下地層と発光層との界面が均質でなくなり、素子特性が悪化する可能性がある。また、接触角の値が小さすぎるものは再現性が得がたい。
ここで、発光層形成用組成物の下地面に対する接触角を10度未満とする方法には特に制限はないが、例えば、次のような方法を選択することによりこの接触角を達成することができる。
・高沸点の溶剤を使用する。
・低粘度の溶剤を使用する。
・発光層の下地層となる正孔注入層または正孔輸送層を油系溶剤を用いて湿式成膜し、発光層形成用組成物にも油系溶剤を使用する。なお、油系溶剤とは、前述の例示溶剤のうちアルカン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、芳香族エーテル類、芳香族エステル類、脂肪族エーテル類等が挙げられる。
なお、本発明において、発光層形成用組成物の下地面に対する接触角は、以下の方法、条件にて測定される。
まず、接触角測定用基板に上記正孔注入層または正孔輸送層を、素子作成時と同様の条件で形成する。下地層である正孔注入層または正孔輸送層が形成された基板上に、発光層形成用組成物を滴下し、形成した液滴のなす角度を測定する。この接触角は、画像処理式固液界面解析システムを用いて測定することができる。また、接触角算出はTan−1θ/2法が適用される。
滴下する発光層形成用組成物の液量は、特に制限はないが、好ましくは1.0ml以下、更に好ましくは200μl以下、特に好ましくは0.7μl、また、好ましくは0.1μl以上、特に好ましくは0.4μl以上である。液滴の滴下量が多すぎると、測定する以前に液滴の重量で液滴が垂れてしまい、液滴の量が少なすぎると、液滴量の調整が難しいため、いずれの場合にも安定した測定が実施できない。
その他の測定条件は次の通りである。
温度:21〜25℃
相対湿度:40〜60%
雰囲気:大気中
<発光層の形成方法>
次に、上述の発光層形成用組成物を用いた発光層の形成方法について説明する。
本発明においては、下地層上に発光層形成用組成物を湿式成膜して、ほぼ大気圧下で加熱乾燥することにより、発光層を得る。
成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、組成物中に結晶や凝集が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、13℃以上がより好ましく、16℃以上がさらに好ましく、また、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
成膜時の相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは100ppm以下である。相対湿度が小さすぎると、成膜条件の制御が困難となり、安定した環境を維持できない。また、大きすぎると発光層への水分吸着が影響する可能性がある。
成膜時の雰囲気における酸素の体積濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.4ppm以上、また、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは1%以下、中でも好ましくは100ppm以下、特に好ましくは0.6ppm以下である。酸素濃度が低すぎる環境は制御が難しく、安定した環境を維持できない。また酸素濃度が高すぎると、発光層内部に酸素が拡散することで、素子特性に悪影響を与える可能性がある。
成膜環境下における微粒子の数(すなわち、パーティクル数)は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、ダークスポット低減の観点から、粒径0.5μm以上のパーティクルが、1m3あたり通常10000個以下、好ましくは5000個以下であ
る。特に好ましくは、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり5000個以
下である。この下限値に制限はないが、工業的実用性の観点から、通常、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり100個は存在することが考え得る。パーティクル数が多すぎるとダークスポットを生じる可能性があり、また、上記範囲を下回るほど環境制御が困難になる傾向がある。
なお、パーティクル数は、光散乱方式により検出され、例えば、ハンドヘルドパーティクルカウンターKR(リオン株式会社製)で検出できる。
成膜後の処理には特に制限はないが、成膜後、長時間大気中に置いているとパーティクルや水分吸着等の原因により、ダークスポットや輝点などが生じる可能性があるため、できるだけ早く加熱工程に移すことが好ましい。通常、成膜後、加熱工程までの時間は30分以内、好ましくは10分以内、より好ましくは1分以内である。
本発明においては、成膜後の膜をほぼ大気圧、すなわち(大気圧−0.2)kPa〜(大気圧+0.2)kPaの気圧下で加熱する。
加熱工程において使用する加熱手段は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるには、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱方向は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。加熱方向の例を挙げると、例えば、ホットプレート上に基材を搭載しそのホットプレートを介して塗布膜を加熱させることで、塗布膜を基板の下面(有機層が塗布されていない面)から加熱していく方法、クリーンオーブン内に基板を投入することで、上下左右すべての方向から塗布膜を加熱する方法等が挙げられる。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限はないが、通常、90℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは140℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程における加熱時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上、また、好ましくは6時間以下、より好ましくは3時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。これにより、塗布膜を十分に不溶化させることが可能となる。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、また、短すぎると十分な均質性が得られない。
本発明においては、特に、酸素濃度0.4〜0.6ppm、相対湿度0.1ppm以下の条件下で行うことが好ましく、また、発光層形成用組成物に含まれる沸点140℃以上の溶剤の沸点(以下、この沸点を「TBP」(℃)と称す。)よりも10℃以上低い温度で加熱することが好ましい。
加熱工程における雰囲気中の酸素濃度が0.6ppmを超えると発光層等の有機層に酸素が拡散し、素子に悪影響を与える恐れがあり、0.4ppm未満であると環境制御が難しく、安定した環境を維持することが困難な場合がある。
また、加熱工程における雰囲気中の相対湿度が0.1ppmを超えると発光層等の有機層へ水分が吸着する恐れがある。
また、発光層に含まれる沸点140℃以上の溶剤の沸点TBPよりも10℃以上低い温度、即ち、(TBP−10)℃を超える温度で加熱すると発光層形成用組成物に含まれる成分が、他の層へ拡散する恐れがある。加熱温度は、特に沸点140℃以上の溶剤の沸点よりも10℃以下低い温度よりも低く、該沸点よりも50℃低い温度よりも高い温度、即ち、(TBP−50)〜(TBP−10)℃の範囲であることが好ましい。
このようにして形成される発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると発光層に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると有機電界発光素子の駆動電圧が上昇する可能性がある。
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
[電子輸送層]
発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9または電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
[電子注入層]
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
[陰極]
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8または発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
[その他の層]
本発明の有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層3または正孔輸送層4と発光層5との間に設けられ、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層5を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号公報記載)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
さらに陰極9と発光層5または電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の製造方法により得られる有機電界発光素子は、有機ELディスプレイに使用される。本発明により得られる有機電界発光素子は、例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で有機ELディスプレイを形成することができる。
以下に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
なお、以下において、発光層形成用組成物の下地面(正孔輸送層の表面)に対する接触角は次のようにして測定した。
〈接触角の測定〉
まず、接触角測定用ガラス基板に、正孔輸送層を、素子作成時と同様の条件で形成した。正孔輸送層が形成された基板上に、発光層形成用組成物を0.7μl滴下し、形成した液滴のなす角度を画像処理式固液界面解析システムを用いて測定し、接触角をTan−1θ/2法で算出した。
なお、その他の測定条件は、温度23℃、相対湿度50%、大気中である。
[実施例1]
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
〈基板〉
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。
〈前処理〉
パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
〈正孔注入層〉
まず、下記式(P1)に示す繰り返し構造を有する高分子正孔輸送性化合物2重量%と、下記式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を、溶剤として安息香酸エチル(沸点213℃)に溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、正孔注入層形成用組成物を作製した。この組成物を上記ガラス基板上にスピンコートした。スピンコート条件は、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1500rpm、30秒の2段階で行った。乾燥条件は下記の2つの加熱工程を経る。第1の加熱工程として、80℃で1分間加熱を行った後、第2の加熱工程として、260℃で3時間乾燥を行い、室温まで冷却することで、均質な膜厚30nmの薄膜を形成した。このようにして、膜厚30nmの正孔注入層3を形成した。加熱の際用いた装置はホットプレートである。なお、以下に行う素子作成時の加熱はすべてホットプレートを用いた加熱である。
Figure 2009252407
〈正孔輸送層〉
次いで、正孔輸送層4を以下のように湿式成膜法によって形成した。正孔注入層の材料として下記式(HT−1)の繰り返し構造を有する高分子正孔輸送性化合物0.4重量%を、脱水トルエンに溶解させた正孔輸送層形成用組成物を調製し、孔径0.2μmPTFE製メンブレンフィルターを用いて濾過し、以下に示す条件で上記正孔注入層3上にスピンコートした。スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中にて行い、スピンコート条件として、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1500rpm、30秒の2段階で行った。その後、窒素雰囲気グローブボックス中にて230℃で1時間乾燥を行うことで、均質な膜厚20nmの薄膜を形成した。
Figure 2009252407
〈発光層〉
次いで、発光層5を以下のように湿式成膜法によって形成した。発光層の材料はホスト材料として下記式(H−1)で表される化合物およびドーパント材料(発光材料)として下記式(D−1)で表される化合物を用いた。(H−1):(D−1)=100:10(重量比)の割合で混合し、この混合物1.65重量%を溶剤として3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン(沸点:189℃)に溶解させた発光層形成用組成物を調製した。この組成物を孔径0.2μmPTFE製メンブレンフィルターを用いて濾過し、以下に示す条件で上記正孔輸送層4上にスピンコートした。
Figure 2009252407
スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中にて行い、スピンコート条件として、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1000rpm、30秒の2段階で行った。成膜時の温度は30℃、酸素濃度0.4ppm、相対湿度0.1ppmであった。その後、窒素雰囲気グローブボックス中にて、酸素濃度0.4ppm、相対湿度0.1ppmの大気圧下、100℃で1時間加熱乾燥を行うことで、均質な膜厚40.5nmの発光層を形成した。同様に窒素雰囲気グローブボックス中にて100℃で1時間真空乾燥を行うことで、均質な膜厚40.5nmの薄膜を形成した。
尚、正孔輸送層4に対するこの発光層形成用組成物の接触角は6.1度であった。
〈正孔阻止層〉
次に、正孔注入層3と正孔輸送層4と発光層5を湿式成膜した基板をチャンバー型真空蒸着装置内に移し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が1.5×10−6Torr(2.0×10−4Pa)以下になるまでクライオポンプを用いて排気し、下記構造式(HB−1)で表される化合物を真空蒸着法によって積層して正孔阻止層6を得た。蒸着時の真空度は1.5〜1.4×10−6Torr(2.0〜1.9×10−4Pa)、蒸着速度は0.7〜0.9Å/秒の範囲で制御し、膜厚10.0nmの膜を発光層5の上に積層して正孔阻止層6を形成した。
Figure 2009252407
〈電子輸送層〉
次いで、下記構造式(ET−1)で表されるトリス(8−キノリナート)アルミニウムを加熱して蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。蒸着時の真空度は0.9〜0.8×10−6Torr(1.2〜1.1×10−4Pa)、蒸着速度は0.7〜1.0Å/秒の範囲で制御し、膜厚30.1nmの膜を正孔阻止層6の上に積層して電子輸送層7を形成した。
Figure 2009252407
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を電子輸送層までを蒸着した有機層蒸着チャンバーから金属蒸着チャンバーへと移動し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、有機層蒸着時と同様にして装置内の真空度が2.5×10−4Pa以下になるまで排気した。
〈電子注入層〉
電子注入層8として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.08〜0.17Å/秒、真空度2.8×10−4Paで制御し、1.0nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。
〈陰極〉
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.7〜7.0Å/秒、真空度2.5〜2.9×10−4Paで制御して膜厚80.2nmのアルミニウム層を形成して陰極9を形成した。
以上の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
〈封止〉
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。得られた素子の輝度半減期、駆動電圧および発光効率等の素子特性を以下の方法により測定した。これらの結果は比較例1の素子と対比した相対値として結果を表1に示した。
〈輝度半減期〉
作製した素子に、試験開始時の輝度が1000nitとなる直流一定電流を通電したときの輝度変化をフォトダイオードにより観察した。輝度値が試験開始時の半分、すなわち500nitとなるまでの時間(輝度半減期)を求めた。通電試験は、室温を空調により23±1.5℃に制御した室内で行なった。
〈駆動電圧〉
作製した素子に、最初に直流一定電流を通電したときの輝度が、100nitとなる電圧を測定した。
〈発光効率〉
作製した素子に、100nitとなる電流値を測定し、発光効率を算出した。
[比較例1]
発光層5の加熱乾燥を大気圧−100kPaの減圧下で行った以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、素子特性を測定した。
実施例1の素子の素子特性は、比較例1の素子の特性と比較して、輝度半減期(寿命)、発光効率はそれぞれ2.6倍、1.2倍と長寿命化、高効率化された。また駆動電圧は0.8倍となり、低電圧化された。
[参考例1]
発光層5を以下のように形成した以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製し、素子特性を測定した。測定結果は、参考例2の素子と対比した相対値として結果を表1に示す。
実施例1と同様に、ホスト材料として前記式(H−1)で表される化合物およびドーパント材料(発光材料)として前記式(D−1)で表される化合物を用いて、(H−1):(D−1)=100:10(重量比)の割合で混合した混合物0.75重量%を、溶剤として脱水トルエン(沸点:111℃)に溶解させた発光層形成用組成物を調製した。この組成物を孔径0.2μmPTFE製メンブレンフィルターを用いて濾過し、以下に示す条件で上記正孔輸送層4上にスピンコートした。
スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中にて行い、スピンコート条件として、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1000rpm、30秒の2段階で行った。その後、窒素雰囲気グローブボックス中にて、大気圧下、100℃で1時間加熱乾燥を行うことで、均質な膜厚41.2nmの薄膜を形成した。同様に窒素雰囲気グローブボックス中にて100℃で1時間真空乾燥を行うことで、均質な膜厚41.2nmの薄膜を形成した。
尚、正孔輸送層4に対するこの発光層形成用組成物の接触角は4.2度であった。
[参考例2]
発光層5の加熱乾燥を大気圧−100kPaの減圧下で行った以外は、参考例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、素子特性を測定した。
参考例1の素子の特性は、参考例2の素子の特性と比較して、寿命は1.1倍、発光効率は同程度となったが、駆動電圧に関しては1.3倍となり、高電圧化してしまった。
[参考例3]
発光層5を以下のように形成した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す有機電界発光素子を作製し、素子特性を測定した。測定結果は参考例4の素子と対比した相対値として結果を表1に示す。
発光層の材料はホスト材料として下記式(H−2)で表される化合物およびドーパント材料(発光材料)として下記式(D−1)で表される化合物を用いた。(H−2):(D−1)=100:10(重量比)の割合で混合し、この混合物0.75%重量%を、溶剤として脱水トルエン(沸点:111℃)に溶解させた発光層形成用組成物を調製した。この組成物を、孔径0.2μmPTFE製メンブレンフィルターを用いて濾過し、以下に示す条件で正孔輸送層4上にスピンコートした。
Figure 2009252407
スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中にて行い、スピンコート条件として、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1000rpm、30秒の2段階で行った。その後、窒素雰囲気グローブボックス中にて、大気圧下、100℃で1時間加熱乾燥を行うことで、均質な膜厚34.6nmの薄膜を形成した。同様に窒素雰囲気グローブボックス中にて100℃で1時間真空乾燥を行うことで、均質な膜厚29.0nmの薄膜を形成した。
尚、正孔輸送層4に対するこの発光層形成用組成物の接触角は4.7度であった。
[参考例4]
発光層5の加熱乾燥を大気圧−100kPaの減圧下で行った以外は、参考例3と同様にして有機電界発光素子を作製し、素子特性を測定した。
参考例3の素子の特性は、参考例4の素子の特性と比較して、駆動電圧は同程度となったが、寿命は0.9倍、発光効率は0.8倍となり、短寿命化および低効率化してしまった。
[参考例5]
発光層5を以下のように形成した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す有機電界発光素子を作製し、素子特性を測定した。測定結果は参考例6の素子と対比した相対値として結果を表1に示す。
発光層の材料はホスト材料として前記式(H−2)で表される化合物およびドーパント材料(発光材料)として前記式(D−1)で表される化合物を用いた。(H−2):(D−1)=100:10(重量比)の割合で混合し、この混合物2.3重量%を、溶剤としてシクロヘキシルベンゼン(沸点:240℃)に溶解させた発光層形成用組成物を調製した。孔径0.2μmPTFE製メンブレンフィルターを用いて濾過し、以下に示す条件で正孔輸送層4上にスピンコートした。
スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中にて行い、スピンコート条件として、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1000rpm、30秒の2段階で行った。その後、窒素雰囲気グローブボックス中にて大気圧下、100℃で1時間加熱乾燥を行うことで、均質な膜厚44.1nmの薄膜を形成した。同様に窒素雰囲気グローブボックス中にて100℃で1時間真空乾燥を行うことで、均質な膜厚47.8nmの薄膜を形成した。
尚、正孔輸送層4に対するこの発光層形成用組成物の接触角は14.2度であった。
[参考例6]
発光層5の加熱乾燥を大気圧−100kPaの減圧下で行った以外は、参考例5と同様にして有機電界発光素子を作製し、素子特性を測定した。
参考例5の素子の特性は、参考例6の素子の特性と比較して、駆動電圧は0.9倍で低電圧化されたが、寿命は0.6倍、発光効率は0.5倍となり、短寿命化および低効率化してしまった。
Figure 2009252407
本発明の方法により製造される有機電界発光素子の一例を示す模式的断面図である。
符号の説明
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

Claims (5)

  1. 正孔注入層または正孔輸送層上に、発光材料および溶剤を含む発光層形成用組成物を湿式成膜した後、(大気圧−0.2)kPa〜(大気圧+0.2)kPaの気圧下で加熱して発光層を形成する有機電界発光素子の製造方法において(以下、発光層が形成される正孔注入層または正孔輸送層を「下地層」と称し、この下地層の発光層形成用組成物が湿式成膜される面を「下地面」と称す。)、
    該発光層形成用組成物に含まれる溶剤の沸点が140℃以上であり、
    該発光層形成用組成物の該下地面に対する接触角が10度未満であることを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
  2. 該加熱を、酸素濃度0.4〜0.6ppm、相対湿度0.1ppm以下の条件下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  3. 該加熱温度が、該発光層形成用組成物に含まれる沸点140℃以上の溶剤の沸点よりも10℃以上低い温度であることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  4. 該下地層が、湿式成膜により形成されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  5. 該発光材料が、低分子化合物であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
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