JP2015093938A - 有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置 Download PDF

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【課題】湿式成膜法による有機電界発光素子の製造工程では、様々な機能を有する層を形成するための材料を溶剤に溶解または分散させたインクを製造し、これを用いて塗布膜を作製する。しかしながら、これらのインクは、使用時までの期間に劣化し、素子特性が低下するという問題点があった。特に、発光層形成用組成物においては、発光材料が酸素や水に対して敏感なため、長期保管安定性を得ることが容易ではなく、さらなる組成物の保管安定性を得ることが望まれていた。【解決手段】発光性能を低下させる故に添加するべきではないと考えられていた酸化防止剤を、発光層形成用組成物に添加することにより、発光材料の機能を損なうことなく、発光層形成用組成物の長期保管安定性を実現できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の組成物を用いることにより、長期保管した組成物を用いて有機電界発光素子を作製しても、駆動寿命が低下しない良好な素子を得ることができる。すなわち、長期保管可能な組成物を得ることができる。【選択図】図1

Description

近年、有機電界発光照明(有機EL照明)や有機電界発光ディスプレイ(有機ELディスプレイ)など、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と称すこともある。)を利用する各種電子デバイスが実用化されつつある。有機ELパネルは、印加電圧が低く消費電力が小さく、面発光であり、三原色発光も可能であることから、照明やディスプレイへの適用が盛んに検討されている。さらに、製造コストを低減したり、大面積の有機ELパネルを用いた電子デバイスの実用化が求められている。
有機ELパネルの製造方法は、従来、陽極と陰極との間に複数の有機層(発光層、正孔注入層、正孔輸送膜、電子輸送層等)を、低分子系色素等の有機層の材料を真空蒸着することにより行なわれていた。しかしながら、真空蒸着法では材料の利用効率が低く、製造コストが高くなるという問題があった。
さらに、大面積パネルを真空蒸着法で形成する場合、蒸着源からの輻射熱による基板や蒸着マスクの熱膨張が不均一に起こるため、均質で欠陥がない大面積の薄膜を得ることが困難であった。
ところで近年、有機層を湿式成膜法によって形成する技術が報告されている。湿式製膜法によれば、必要な材料を必要な量だけ必要な箇所に塗布することが可能であるため、材料の利用効率を高くすることが可能である。また、不均一な熱輻射が無いため、大面積であっても均一に成膜することが可能である。
このような湿式成膜法による有機電界発光素子の製造工程は、大面積の有機ELデバイス製造の簡便化、効率化、低コスト化が可能になることが期待され、種々の検討がなされている。具体的には、例えば、インクジェット方式やノズルコート方式などを使用して、大面積の有機ELデバイスを低コストで実現できると考えられている。
湿式成膜法による有機電界発光素子の製造工程では、様々な機能を有する層を形成するための材料を溶剤に溶解または分散させたインクを製造し、これを用いて塗布膜を作製する。しかしながら、これらのインクは、使用時までの期間に劣化し、素子特性が低下するという問題点がある。その要因の一つは、空気などによる酸化である。そのため、酸化防止剤などを添加することが検討されている。これは、特に樹脂などに酸化防止剤をいれて、酸化を抑制する効果を転用したものであり、特に高分子系の有機電界発光材料に対して添加されている。また、一部では蛍光の発光層に添加することにより、特性を改善された例が見られる(特許文献1)。
一方で、燐光発光材料に対して酸化防止剤を添加することは試みられていない。何故ならば、酸化防止剤は、基底3重項の酸素と材料との間の酸化反応を阻害するが、同時に酸化防止剤は、ラジカルを補足する機能を有するが故に、自身がラジカルとなって、発光材料を消光、劣化させるためである。例えば、ルテニウム系錯体は、代表的な酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤により劣化を引き起こすことが知られている(特許文献2)。また、燐光発光材料であるTetrakis(μ−pyrophosphito)diplatinate(II)は、オレフィン、燐、アミンなどの幅広い材料により消光を受けることが示されている(非特許文献1)。
BHT(ブチルヒドロキシトルエン)や亜リン酸系酸化防止剤などの一般的な酸化防止剤は、ヒドロキシル基や燐の孤立電子対などを利用したラジカル補捉などを原理とした酸化防止剤の系のため、同種の要因で、燐光発光層の特性が劣化すると推測され、そのためこれまで検討されていなかったと考えられる。
特開2007−59935号公報 特開平11−194094号公報
J.Phys.Chem.1988,29、4088−4094
湿式成膜法による有機電界発光素子の製造工程では、様々な機能を有する層を形成するための材料を溶剤に溶解または分散させたインクを製造し、これを用いて塗布膜を作製する。しかしながら、これらのインクは、使用時までの期間に劣化し、素子特性が低下するという問題点があった。特に、発光層形成用組成物においては、発光材料が酸素や水に対して敏感なため、長期保管安定性を得ることが容易ではなく、さらなる組成物の保管安定性を得ることが望まれていた。本発明は、上記課題を解決した組成物を提供することを目的とする。
上記課題に対して、本発明者らは鋭意検討を行った結果、従来、発光性能を低下させる故に添加するべきではないと考えられていた酸化防止剤を、発光層形成用組成物に添加することにより、発光材料の機能を損なうことなく、発光層形成用組成物の長期保管安定性を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を要旨とする。
[1]少なくとも一つ以上の燐光発光材料、溶媒及び酸化防止剤を含有する組成物。
[2]前記組成物が、有機電界発光素子の発光層を形成するための組成物である、[1]に記載の組成物。
[3]前記燐光発光材料は、金属錯体である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記金属錯体は、遷移金属を含有する金属錯体である、[3]に記載の組成物。
[5]前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤である、[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
[6][1]から[5]のいずれかに記載の組成物を湿式成膜することによって形成された層を有する、有機電界発光素子。
[7][6]に記載の有機電界発光素子を用いて作られた有機ELディスプレイ。
[8][6]に記載の有機電界発光素子を用いて作られた有機EL照明。
本発明の組成物を用いることにより、長期保管した組成物を用いて有機電界発光素子を作製しても、駆動寿命が低下しない良好な素子を得ることができる。すなわち、長期保管可能な組成物を得ることができる。
本発明の作用機構は、以下のように推定される。
通常、発光層に用いる燐光発光材料は、3重項状態を経由する発光機構を有する。3重項状態は、電子状態としては安定であるが、基底状態が3重項である酸素や、孤立電子対を持つ水などを補足しやすく、化合物としては不安定である。そのため、酸素や水などによる酸化を阻害するために、酸化防止剤を入れることにより、その作用を止めることができる。一方で、酸化防止剤は、ラジカルに対する活性点は持つが、立体障害などにより反応点を保護しているため、燐光発光材料を壊すことなく、発光の阻害も行わないと推定される。
さらに、遷移金属を持つ錯体は、IrやPt錯体のような燐光発光材料に代表されるように、3重項状態を形成しやすい。また、より原子核から遠いところに電子雲(軌道)を持つ為、配位子に因る配位を受けるなど、通常よりも弱い結合の形成を起こすことからも分かる通り、孤立電子対、ラジカル、空軌道を有する物質、3重項状態の材料などの影響を受けやすい。そのため、基底三重項の酸素の影響を防ぐために、酸化防止剤が有効である。
図1は有機電界発光素子に係る好適な素子断面の模式図を示す。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
本発明は、少なくとも一つ以上の燐光発光材料、溶媒及び酸化防止剤を含有する組成物、である。
<燐光発光材料>
本発明の燐光発光材料とは、励起三重項状態から発光を示す材料をいう。例えば、Ir、Pt、Eu などを有する金属錯体化合物がその代表例である。中でも、材料の構造として、
金属錯体を含むものが好ましい。
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。好ましくは下記式(I)又は式(II)で表される化合物が挙げられる。
ML(q−j)L’ ・・・(I)
(式(I)中、Mは金属を表し、qは上記金属の価数を表す。また、L及びL’は二座配位子を表す。jは0、1又は2の数を表す。LまたはL’が複数ある場合、複数のLまたは複数のL’はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
Figure 2015093938
(式(II)中、Mは金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92〜R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。)
以下、まず、式(I)で表される化合物について説明する。
式(I)中、Mは周期表第7〜11族から選ばれる金属であり、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられ、中でもより好ましくはイリジウム又は白金であり、安定性が高い点および発光効率
が高い点から、最も好ましくはイリジウムである。
また、式(I)中、二座配位子Lは、以下の式(III)で表される部分構造を有する配位子を示す。
Figure 2015093938
上記式(III)の部分構造において、環A1は、置換基を有していてもよい、芳香環基を表わす。本発明における芳香環基は、芳香族炭化水素環基でもよいし、芳香族複素環基でもよい。
また、上記式(III)の部分構造において、環A2は、置換基を有していてもよい、含窒素芳香族複素環基を表す。
また、式(I)中、二座配位子L’は、以下の部分構造を有する配位子を示す。
Figure 2015093938
中でも、L’としては、錯体の安定性の観点から、以下に挙げる配位子が好ましい。
Figure 2015093938
式(I)で表される化合物として、更に好ましくは、下記式(Ia)、(Ib)、(Ic)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2015093938
(式(Ia)中、Mは、Mと同様の金属を表し、wは、上記金属の価数を表し、環A1は、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。wが2以上で環A1および環A2が複数ある場合、複数の環A1または環A2はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
Figure 2015093938
(式(Ib)中、Mは、Mと同様の金属を表し、w−1は、上記金属の価数を表し、環A1は、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。wが3以上で環A1および環A2が複数ある場合、複数の環A1または環A2はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
Figure 2015093938
(式(Ic)中、Mは、Mと同様の金属を表し、wは、上記金属の価数を表し、jは、0、1又は2を表し、環A1及び環A1’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2及び環A2’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。w−jが2以上またはjが2以上で環A1、環A1’、環A2または環A2’が複数ある場合、複数の環A1、環A1’、環A2または環A2’はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
上記式(Ia)〜(Ic)、(III)において、環A1及び環A1’の芳香環は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であり、好ましくは、2個の遊離原子価を有するベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。ここで、本発明において、遊離原子価とは、有機化学・生化学命名法(上)(改定第2版、南江堂、1992年発行)に記載のとおり、他の遊離原子価と結合を形成できるものを言う。すなわち、例えば、「1個の遊離原子価を有するベンゼン環」はフェニル基のことを言い、「2個の遊離原子価を有するベンゼン環」はフェニレン基のことを言う。
上記式(Ia)〜(Ic)、(III)において、環A2及び環A2’の含窒素芳香族複素環基として好ましくはピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ピラジル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、フェナントリジル基であり、さらに好ましくはピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基が好ましく、特に好ましくはピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基であり、最も好ましくはピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基である。
上記式(Ia)〜(Ic)、(III)において、環A1と環A2の組合せ構造、あるいは環A1‘と環A2’の組合せ構造として最も好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル−ピリジン構造、置換基を有していてもよいフェニル−キノリン構造、置換基を有していてもよいフェニル−キノキサリン構造、置換基を有していてもよいフェニル−イミダゾール構造、置換基を有していてもよいフェニル−キナゾリン構造である。
上記式(Ia)〜(Ic)、(III)における環A1、環A1’、環A2及び環A2’が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜24のアラルキル基、炭素数1〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜24のジアルキルアミノ基、炭素数8〜24のジアリールアミノ基、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基、炭素数6〜24の芳香族炭化
水素基、カルバゾリル基、アシル基、ハロアルキル基、シアノ基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜24のアラルキル基、炭素数8〜24のジアリールアミノ基、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基、炭素数4〜24の芳香環基、カルバゾリル基である。炭素数8〜24のジアリールアミノ基、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環である芳香族炭化水素環基、炭素数6〜24の1価の芳香族炭化水素基、カルバゾリル基は、その基を構成するアリール部位にさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜24のアラルキル基、炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜24の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。炭素数6〜24の1価の芳香族炭化水素基としては、好ましくはベンゼン環が1ないし4連結した1価の基である。
なお、これら置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、又は、環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基とが結合することにより、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。これら置換基が互いに連結して形成した環は、さらに前記置換基を有していてもよい。また、前記置換基は1つ有してもよいし、同じかまたは異なる2以上の置換基を有してもよい。
また、式(Ia)〜(Ic)におけるMの好ましい例としては、式(I)におけるMと同様である。
次に、式(II)で表される化合物について説明する。
式(II)中、Mは金属を表す。具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金または金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、式(II)において、R92およびR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
更に、Tが炭素原子の場合、R94およびR95は、それぞれ独立に、R92およびR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94またはR95は存在しない。
また、R92〜R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記の置換基とすることができる。
更に、R92〜R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。燐光発光性有機金属錯体として好ましくは式(I)で表される化合物である。
Figure 2015093938
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<酸化防止剤>
酸化防止剤の種類としては、フェノール系としては、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)や、Irganoxシリーズ(BASF社)、アデカスタブAOシリーズ(ADEKA社)、ヨシノックスシリーズ(エーピーアイコーポレーション社)に代表されるヒンダードフェノール系が好ましい。また、トコフェロール、アスコルビン酸など食品用酸化防止剤などはBHTなどと同様の機構で機能するため、同種の効果が期待できる。また、亜リン酸エステル類も、フェノール系と同様、ラジカルの捕捉と自身の酸化による機能材料の保護の効果が期待されるため、同種の機能が作用すると考えられる。特に、BHTやBHA、炭素数20以下のアルキル鎖または、炭素数30以下のアリ−ル基を有する亜リン酸エステルが好ましい。
<組成物>
本発明の組成物は、少なくとも前記燐光発光材料、前記酸化防止剤、および溶媒を含有する。本発明の組成物は通常湿式成膜法で層や膜を形成するために用いられ、特に有機電界発光素子の有機層を形成するために用いられることが好ましい。該有機層は、特に発光層であることが好ましい。
すなわち、本発明の組成物は、有機電界発光素子用組成物であることが好ましく、更に有機電界発光素子の発光層形成用組成物として用いられることが特に好ましい。
本発明の組成物における燐光発光材料の含有量は、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。組成物中の燐光発光材料の含有量をこの範囲とすることにより、例えば、この組成物を用いて発光層を形成した場合、隣接する層(例えば、正孔輸送層や正孔阻止層)から発光層へ効率よく、正孔や電子の注入が行われ、駆動電圧を低減することができる。尚、燐光発光材料は組成物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
本発明の組成物における溶媒に対する酸化防止剤の含有量は、通常0.0001重量%以上であり、通常10重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは、0.01重量%以下、更に好ましくは0.001重量%以下である。酸化防止剤含有量をこの範囲とすることにより、組成物中の燐光発光材料の劣化を良好に抑えられ、かつ、発光層における発光効率の低下が無く好ましい。
<その他の成分>
本発明の組成物を例えば有機電界発光素子用に用いる場合、組成物には、上述の燐光発光材料、酸化防止剤および溶媒の他、有機電界発光素子、特に発光層に用いられる電荷輸送性化合物を含有することができる。
本発明の組成物を用いて有機電界発光素子の発光層を形成する場合には、本発明の燐光発光材料をドーパント材料とし、他の電荷輸送性化合物をホスト材料として含むことが好ましい。
本発明の組成物が含有し得る電荷輸送性化合物としては、従来有機電界発光素子用材料として用いられているものを使用することができる。例えば、ピリジン、カルバゾール、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クリセン、ナフタセン、フェナントレン、コロネン、フルオランテン、ベンゾフェナントレン、フルオレン、アセトナフトフルオランテン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体、キナクリドン誘導体、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザ
ベンゾチオキサンテン、アリールアミノ基が置換された縮合芳香族環化合物、アリールアミノ基が置換されたスチリル誘導体等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、および比率で用いてもよい。
本発明の組成物における電荷輸送性化合物の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
また、本発明の組成物における電荷輸送性化合物の含有量は、金属錯体化合物に対して、通常100重量%以上、好ましくは200重量%以上、さらに好ましくは300重量%以上であり、通常100000重量%以下、好ましくは10000重量%以下、さらに好ましくは2000重量%以下である。
本発明の組成物に含有される溶媒は、湿式成膜により金属錯体化合物を含む層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分である。
該溶媒は、溶質である金属錯体化合物、後述の電荷輸送性化合物、および酸化防止剤が良好に溶解する溶媒であれば特に限定されない。好ましい溶媒としては、例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、フェニルシクロヘキサン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類であり、特に、フェニルシクロヘキサンは湿式成膜プロセスにおいて好ましい粘度と沸点を有している。
これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、および比率で用いてもよい。
溶媒の沸点は、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上である。また、溶媒の沸点は、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下である。溶媒の沸点が上記下限を下回ると、湿式成膜時において、組成物からの溶媒蒸発により、成膜安定性が低下する可能性がある。
本発明の組成物における溶媒の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、また、好ましくは99.95重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下、さらに好ましくは99.8重量%以下である。例えば、発光層は通常3〜200nm程度の厚みに形成されるが、本発明の組成物を用いてこのような厚みの発光層を形成する場合、溶媒の含有量がこの下限を下回ると、組成物の粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、この上限を上回ると、成膜後、溶媒を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。
本発明の金属錯体化合物含有組成物には、必要に応じて、上記の化合物等の他に、更に他の化合物等を含有していてもよい。例えば、上記の溶媒の他に、別の溶媒を含有していてもよい。そのような溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、および比率で用いてもよい。
<湿式成膜法>
湿式成膜法とは、基板上に、溶媒を含む組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去して膜を形成する方法をいう。塗布方法としては、限定はされないが、例えばスピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
溶媒を乾燥除去する方法としては、通常、加熱乾燥を行う。加熱工程において使用する加熱手段の例としては、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線加熱が挙げられる。赤外線加熱としては、ハロゲンヒーターやセラミックコートしたハロゲンヒーター、セラミックヒーター等が使用できる。赤外線による加熱は基板あるいは膜に直接熱エネルギーを与えるため、オーブンやホットプレートを用いた加熱と比べて短時間での乾燥が可能となり、加熱雰囲気のガス(水分や酸素)の影響や、微小なごみの影響を最小限に抑えることができ、生産性が向上し、好ましい。
加熱温度は、通常70℃以上、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常150℃以下、好ましくは、140℃以下、より好ましくは、130℃以下である。
加熱時間は、通常10秒以上、好ましくは60秒以上、より好ましくは90秒以上であり、通常120分以下、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
また、加熱乾燥の前に真空乾燥を行うことも好ましい。
本発明の組成物を湿式成膜法にて成膜した有機層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
[有機電界発光素子]
本発明に係る有機電界発光素子は、陽極、陰極、及びこれらの間に少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層のうち少なくとも1層が、本発明の組成物を用いて湿式製膜により形成された層であることを特徴とする。この層は発光層であることが好ましい。
図1は本発明にかかる有機電界発光素子に好適な構造例を示す断面の模式図であり、図1において、符号1は基板、符号2は陽極、符号3は正孔注入層、符号4は正孔輸送層、符号5は発光層、符号6は正孔阻止層、符号7は電子輸送層、符号8は電子注入層、符号9は陰極を各々表す。
[1]基板
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸
化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[2]陽極
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は発光層側の層(正孔注入層3、正孔輸送層4又は発光層5など)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などを用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理をしたり、酸素プラズマ処理や、アルゴンプラズマ処理をすることが好ましい。
[3]正孔注入層
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
<湿式成膜法による正孔注入層の形成>
湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して塗布用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶媒を含有する。正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4−ethylenedioxythiophene(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が高すぎると膜厚にムラが生じる可能性があり、また、低すぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、塩化鉄(III)(日本国特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(日本国特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号);フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン
等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(溶媒)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶媒のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶媒の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、通常300℃以下、好ましくは280℃以下であることが好ましい。溶媒の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶媒の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶媒として例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
これらの溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
塗布工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
塗布工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
塗布後、必要に応じて、真空乾燥などにより大雑把に溶媒を除去し、その後加熱により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥する。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線ヒーター(ハロゲンヒーター)などが
挙げられる。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶媒の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶媒が2種類以上含まれている混合溶媒の場合、少なくとも1種類がその溶媒の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶媒の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは300℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶媒の沸点以上であり、かつ膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上で、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して正孔注入層3の構成材料を蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層3を形成する。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−7Torr(1.3×10−6Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。
蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。
[4]正孔輸送層
正孔輸送層4は、正孔注入層がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、
ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(V)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(V)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ar又はArが異なっているものであってもよい。
Figure 2015093938
(式(V)中、Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、1個または2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、1個または2個の遊離原子価を有する、6員環の単環若しくは2〜5縮合環又はこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えば1個または2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、1個または2個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環若しくは2〜4縮合環又はこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
有機溶媒に対する溶解性、耐熱性の点から、Ar及びArは、各々独立に、1個または2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基(ビフェニレン基)やターフェニル基(ターフェニレン基))が好ましく、中でも、1個ま
たは2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ビフェニル環、フルオレン環が好ましい。
Ar及びArにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(V)におけるArやArとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(VI)及び下記式(VII)からなる繰り返し単位のうち少なくとも一方を有する重合体が好ましい。
Figure 2015093938
(式(VI)中、R、R、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を表す。v及びwは、各々独立に、0〜3の整数を表す。v又はwが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRa又はRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するR又はR同士で環を形成していてもよい。)
Figure 2015093938
(式(VII)中、R及びRは、各々独立に、上記式(VI)におけるR、R、R又はRと同義である。x及びyは、各々独立に、0〜3の整数を表す。x又はyが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRe及びRfは同一であっても異なっていてもよく、隣接するR又はR同士で環を形成していてもよい。Qは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
Qの具体例としては、−O−、−BR−、−NR−、−SiR−、−PR−、−SR−、−CR−又はこれらが結合してなる基などが挙げられる。尚、ここでのRは、水素原子又は任意の有機基を表す。本発明における任意の有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基であればよい。
また、ポリアリーレン誘導体としては、前記式(VI)及び前記式(VII)からなる繰り返し単位のうち少なくとも一方に加えて、さらに下記式(VIII)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2015093938
(式(VIII)中、Ar〜Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。γ及びδは、各々独立に0又は1を表す。)
Ar〜Ar及びArの具体例としては、前記式(V)における、Ar及びArと同様である。
上記式(VI)〜(VIII)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、日本国特開2008−98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、塗布し、加熱乾燥する。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶媒を含有する。用いる溶媒は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、塗布条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、電子受容性化合物、バインダー樹脂、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層4はまた、不溶化基を有する化合物(以下、「不溶化性化合物」と称する)を不溶化して形成される層であることが、耐熱性あるいは成膜性の観点から好ましい。不溶化性化合物は、不溶化基を有する化合物であって、不溶化することにより不溶化ポリマーを形成する。
不溶化基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により反応する基であり、反応後は反応前に比べて有機溶媒や水への溶解性を低下させる効果を有する基である。本発明においては、不溶化基は、脱離基又は架橋性基であることが好ましい。
脱離基とは、結合している芳香族炭化水素環から70℃以上で解離し、さらに溶媒に対して可溶性を示す基をいう。ここで、溶媒に対して可溶性を示すとは、化合物が熱及び/又は活性エネルギー線の照射によって反応する前の状態で、常温でトルエンに0.1重量%以上溶解することをいい、化合物のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
この脱離基として好ましくは、芳香族炭化水素環側に極性基を形成せずに熱解離する基であり、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。またさらに、100℃以上で熱解離する基であることが好ましく、300℃以下で熱解離する基であることが好ましい。
また、架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモ
イル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブタン由来の基などが挙げられる。
不溶化性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。不溶化性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
不溶化性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
不溶化性化合物を不溶化して正孔輸送層4を形成するには、通常、不溶化性化合物を溶媒に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜法により成膜して不溶化させる。
正孔輸送層形成用組成物は、不溶化性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で不溶化性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、不溶化性化合物を不溶化させる。
塗布時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。塗布後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの電磁エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
[5]発光層
正孔輸送層4の上には通常、発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極9から電子輸送層7を通じて注入された電子との再結合により励起された、主たる発光源となる層である。発光層5は発光材料(ドーパント)と1種又は2種以上のホスト材料を含むことが好ましい。発光材料は本発明に係る金属錯体化合物であることが好ましく、ホスト材料は本発明に係る電荷輸送性化合物であることが好ましい。発光層5は、本発明の組成物を湿式成膜して形成した層であることが好ましい。発光層5は、さらに真空蒸着法で形成した層を有していても良い。
なお、発光層5は、本発明の性能を損なわない範囲で、発光材料(ドーパント)とホス
ト材料以外の他の材料、成分を含んでいてもよい。
有機電界発光素子は、発光層が2層以上であってもよい。発光層を2層以上設ける場合は、いずれかの発光層が本発明の規定を満たせばよい。2層以上の場合、各々の発光層が直接接していてもよいし、間に他の層を介していてもよい。間に介する他の層としては、電荷輸送層、ブロック層、電荷発生層等が挙げられる。
好ましくは、本発明の組成物を湿式成膜して形成した層の上に、蒸着法にて形成した発光層を有する構成であり、さらに好ましくは、本発明の組成物を湿式成膜して形成した層の上に、蒸着法にて形成した蛍光発光層を有する構成である。本発明の組成物を湿式成膜して形成した層の上に蒸着法にて発光層を形成することにより均一に発光層を積層することができ、好ましい。さらに、本発明の組成物を湿式成膜して形成した層の上に蒸着法にて形成する発光層が蛍光発光層であれば、蛍光発光層材料は通常重原子を含まず比較的低い温度で蒸着できるため、蛍光発光材料が下層である本発明の組成物を湿式成膜して形成した層へ付着した際のエネルギーが低く、下層へのダメージが無く好ましい。
[6]正孔阻止層
正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極側の界面に接するように積層形成される。特に、発光層5の発光材料として燐光発光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合、正孔阻止層6を設けることは効果的である。正孔阻止層6は正孔と電子を発光層5内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。即ち、正孔阻止層6は、発光層5から移動してくる正孔が電子輸送層7に到達するのを阻止することで、発光層5内で電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、電子輸送層7から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割がある。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
このような条件を満たす正孔阻止層材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(日本国特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(日本国特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(日本国特開平10−79297号公報)が挙げられる。さらに、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も正孔阻止材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上で、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
正孔阻止層6も正孔注入層3と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
[7]電子輸送層
電子輸送層7は素子の発光効率をさらに向上させることを目的として、正孔注入層6と後述の電子注入層8との間に設けられる。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物
より形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(日本国特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号公報)、キノキサリン化合物(日本国特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(日本国特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層7の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
電子輸送層7は、正孔注入層3と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により形成されるが、通常は、真空蒸着法が用いられる。
[8]電子注入層
電子注入層8は陰極9から注入された電子を効率よく発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行うには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましく、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属が用いられる。
電子注入層8の膜厚は0.1〜5nmが好ましい。
また、陰極9と電子輸送層7との界面に電子注入層8として、LiF、MgF、LiO、CsCO等の極薄絶縁膜(膜厚0.1〜5nm程度)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;日本国特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年;SID 04 Digest,154頁)。
さらに、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(日本国特開平10−270171号公報、日本国特開2002−100478号公報、日本国特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子注入層8は、発光層5と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により形成される。真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
アルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行う。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼ
に入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
このとき、電子注入層8の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
[9]陰極
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たす。
陰極9として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることも可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極9の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
[10]その他の構成層
以上、図1に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子における陽極2及び陰極9と発光層5との間には、その性能を損なわない限り、上記説明にある層の他にも、任意の層を有していてもよく、また発光層5以外の任意の層を省略してもよい。
例えば、正孔阻止層8と同様の目的で、正孔輸送層4と発光層5の間に電子阻止層を設けることも効果的である。電子阻止層は、発光層5から移動してくる電子が正孔輸送層4に到達することを阻止することで、発光層5内で正孔との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔輸送層4から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割がある。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。また、発光層5を湿式成膜法で形成する場合、電子阻止層も湿式成膜法で形成することが、素子製造が容易となるため、好ましい。
このため、電子阻止層も湿式成膜適合性を有することが好ましく、このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号)等が挙げられる。
なお、図1とは逆の構造、即ち、基板1上に陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。
さらには、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV等を電荷発生層として用いると段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子
、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
[表示装および照明装置]
本発明の表示装置及び照明装置は、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の表示装置及び照明装置の形式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の表示装置および照明装置を形成することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
まず、ガラス基板上1に、ITO透明導電膜を150nmの厚さに堆積し、2mm幅のストライプにパターニングして、ITOの陽極2を形成した基板(三容真空社製、スパッタ成膜品)について、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄した後、圧縮空気で乾燥させ、紫外線オゾン洗浄を施した。
次に、下記(P1)で表される繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子化合物を2.0重量%と、下記(A1)で表される4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを0.8重量%含む安息香酸エチル溶液(正孔注入層形成用組成物)を調製した。
Figure 2015093938
この正孔注入層形成用組成物を、下記に示す条件でスピンコート法により上記ITO基板上に塗布し、さらに下記に示すベーク条件にてベークすることにより、膜厚40nmの正孔注入層3を得た。
<成膜条件>
スピンコート雰囲気 大気雰囲気下
ベーク条件 大気雰囲気下、230℃、1時間
その後、下記(H1)で表される正孔輸送性高分子化合物の1重量%シクロヘキシルベンゼン溶液(正孔輸送層形成用組成物)を調製し、これを下記に示す条件で正孔注入層3上にスピンコートにて塗布し、ベークによる架橋処理を行うことで、膜厚10nmの正孔輸送層4を形成した。
Figure 2015093938
<成膜条件>
スピンコート雰囲気 窒素雰囲気下
ベーク条件 窒素雰囲気下、230℃、1時間
次に、発光層5を形成するにあたり、以下に示す発光材料(D−1)と、電荷輸送材料(h−1〜h−3)、及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を用いて、下記に示す組成の発光層形成用組成物を調製した。
Figure 2015093938
<発光層形成用組成物組成>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
成分濃度 (D−1):0.6重量%
(h−1):2.25重量%
(h−2):0.375重量%
(h−3):0.375重量%
BHT :0.01重量%
この発光層形成用組成物を調整した当日に、この溶液を用いて、以下に示す条件で正孔輸送層4上にスピンコート法にて塗布し、下記に示すベーク条件でベーク処理を行うことで、膜厚50nmの発光層5を形成した。
<成膜条件>
スピンコート雰囲気 窒素雰囲気下
ベーク条件 窒素雰囲気下、230℃、10分
次に、正孔注入層3、正孔輸送層4及び発光層5を湿式成膜した基板を真空蒸着装置内
に搬入し、粗排気を行った後、クライオポンプを用いて装置内の真空度が3.0×10−4Pa以下になるまで排気した。発光層5の上に、真空度を2.2×10−4Pa以下に保った状態で、正孔阻止材料としてBAlq(CAS:146162−54−1)を蒸着速度0.6〜1.2Å/秒で膜厚10nm積層することにより正孔阻止層6を形成した。
次いで、真空度を2.2×10−4Pa以下に保った状態で、正孔阻止層6の上に、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)を加熱して、蒸着速度0.7〜1.3Å/秒で膜厚20nm積層することにより電子輸送層7を形成した。
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を、有機層蒸着用チャンバーから金属蒸着用チャンバーへと搬送した。陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させて設置した。有機層蒸着時と同様にして装置内を真空度が1.1×10−4Pa以下になるまで排気した。
その後、真空度を1.0×10−4Pa以下に保った状態で、電子輸送層7の上に、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて加熱することにより蒸着速度0.07〜0.15Å/秒で膜厚0.5nm積層することにより電子注入層8を形成した。次に、同様にして、真空度を2.0×10−4Paに保った状態で、アルミニウムを、モリブデンボートを用いて加熱することにより、蒸着速度0.6〜10.0Å/秒で膜厚80nm蒸着することにより、陰極9を形成した。以上の電子注入層8及び陰極9の蒸着時の基板温度は、室温に保持した。
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極の形成を終了した基板を搬入し、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
[実施例2]
発光層形成用組成物を塗布する前に、発光層形成用組成物を60℃に加温したエスペック社製小型環境試験機「SU−221」に2週間保管して用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例1]
発光材料(D−1)と電荷輸送材料(h−1〜h−3)及びシクロヘキシルベンゼンのみを用いて、発光層形成用組成物を調整した以外は、実施例1と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例2]
発光材料(D−1)と電荷輸送材料(h−1〜h−3)及びシクロヘキシルベンゼンのみを用いて、発光層形成用組成物を調整した以外は、実施例2と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
実施例1、2及び比較例1、2について、初期輝度5000cd/mにおける電流値を用いて、定電流駆動を行った。その際の50時間後の初期輝度に対する輝度の相対比率(L/L0、%)について、比較例1を基準とした時の差(ΔL/L0)を表1にまとめた。実施例1と比較例1との間で駆動寿命に対して変化がほとんど見られないことから、
BHTが素子特性に影響を与えていないことが示唆された。また実施例2と比較例2を比較することにより、BHTを添加することにより、60℃の発光層形成用組成物の保管安定性が極めて良好になることが分かった。
Figure 2015093938
[実施例3]
実施例1に於いて、正孔輸送層4の形成までは、同様の操作で行った。次に発光層5の形成の際に、同様の発光層形成用組成物を用いて、膜厚を30nmに変更して形成した。次に、正孔注入層3、正孔輸送層4及び発光層5を湿式成膜した基板を真空蒸着装置内に搬入し、粗排気を行った後、クライオポンプを用いて装置内の真空度が3.0×10−4Pa以下になるまで排気した。発光層5の上に、真空度を2.2×10−4Pa以下に保った状態で、下記に示す蛍光材料D−2と電荷輸送材料h−5を、h−5の蒸着速度が0.8〜1.2Å/秒に保ち、D−2を体積比でh−5:D−2=100:10になるように調整しながら、膜厚10nm積層することにより発光層5−2を形成した。その後、実施例1と同様の方式で、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、陰極を形成し、封止処理を行うことで、有機電界発光素子を得た。
Figure 2015093938
[実施例4]
発光層形成用組成物を塗布する前に、発光層形成用組成物を60℃に加温したエスペック社製小型環境試験機「SU−221」に2週間保管して用いた以外は、実施例3と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例3]
発光材料(D−1)と電荷輸送材料(h−1〜h−3)及びシクロヘキシルベンゼンのみを用いて、発光層形成用組成物を調整した以外は、実施例3と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例4]
発光材料(D−1)と電荷輸送材料(h−1〜h−3)及びシクロヘキシルベンゼンのみを用いて、発光層形成用組成物を調整した以外は、実施例4と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
実施例3、4及び比較例3、4について、電流密度50mA/cm2による定電流駆動を行った。その際の50時間後の初期輝度に対する輝度の相対比率(L/L0、%)について、比較例3を基準とした時の差(ΔL/L0)を表2にまとめた。実施例3と比較例3との間で駆動寿命に対して変化がほとんど見られないことから、BHTが素子特性に影響を与えていないことが示唆され、隣接層の発光挙動にも影響を与えないことが示唆された。また実施例4と比較例4を比較することにより、BHTを添加することにより、60℃の発光層形成用組成物の保管安定性が極めて良好になることが分かった。
Figure 2015093938
[実施例5]
発光材料(D−1)の代わりに下記に示す発光材料(D−3)を用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
Figure 2015093938
[実施例6]
発光層形成用組成物を塗布する前に、発光層形成用組成物を60℃に加温したエスペック社製小型環境試験機「SU−221」に2週間保管して用いた以外は、実施例5と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例5]
発光材料(D−3)と電荷輸送材料(h−1〜h−3)及びシクロヘキシルベンゼンのみを用いて、発光層形成用組成物を調整した以外は、実施例5と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例6]
発光材料(D−3)と電荷輸送材料(h−1〜h−3)及びシクロヘキシルベンゼンのみを用いて、発光層形成用組成物を調整した以外は、実施例6と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例7]
まず60℃に加温したエスペック社製小型環境試験機「SU−221」に保管する段階に於いては、電荷輸送材料(h−1〜h−3)、BHTおよびシクロヘキシルベンゼンのみを用いて調液した組成物の状態で保管した。2週間保管後、該組成物に発光材料(D−3)を実施例6の発光層形成用組成物と同じ濃度になるように追加し、発光層形成用組成物を調整した。その発光層形成用組成物を用いて発光層を形成した以外は、実施例6と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
[比較例8]
まず60℃に加温したエスペック社製小型環境試験機「SU−221」に保管する段階に於いては、電荷輸送材料(h−1〜h−3)、シクロヘキシルベンゼンのみを用いて調液した組成物の状態で保管した。2週間保管後、該組成物に発光材料(D−3)を実施例6の発光層形成用組成物と同じ濃度になるように追加し、発光層形成用組成物を調整した。その発光層形成用組成物を用いて発光層を形成した以外は、実施例6と同様の方法を用いることにより有機電界発光素子を得た。
実施例5、6及び比較例5、6について、初期輝度5000cd/mにおける電流値を用いて、定電流駆動を行った。その際の50時間後の初期輝度に対する輝度の相対比率(L/L0、%)について、比較例5を基準とした時の差(ΔL/L0)を表3にまとめた。実施例5と比較例5との間で駆動寿命に対して変化がほとんど見られないことから、BHTが素子特性に影響を与えていないかやや寿命が伸びる効果があることが示唆された。また実施例6と比較例6を比較することにより、BHTを添加することにより、60℃の発光層形成用組成物の保管安定性が極めて良好になることが示唆された。また、実施例1〜2、比較例1〜2と表3の結果を比較することにより、ドーパントの種類を変えても機能することが示唆された。また、比較例7、8から、燐光発光をする材料が存在していない場合においては、BHTの有無に依らず保管安定性が損なわれていない。このことから、特に燐光発光材料を含有するときに効果的であることが分かった。
Figure 2015093938
符号1 基板
符号2 陽極
符号3 正孔注入層
符号4 正孔輸送層
符号5 発光層
符号6 正孔阻止層
符号7 電子輸送層
符号8 電子注入層
符号9 陰極

Claims (8)

  1. 少なくとも一つ以上の燐光発光材料、溶媒及び酸化防止剤を含有する組成物。
  2. 前記組成物が、有機電界発光素子の発光層を形成するための組成物である、請求項1記載の組成物。
  3. 前記燐光発光材料は、金属錯体である、請求項1又は2記載の組成物。
  4. 前記金属錯体は、遷移金属を含有する金属錯体である、請求項3記載の組成物。
  5. 前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤である、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物を湿式成膜することによって形成された層を有する、有機電界発光素子。
  7. 請求項6に記載の有機電界発光素子を用いて作られた有機ELディスプレイ。
  8. 請求項6に記載の有機電界発光素子を用いて作られた有機EL照明。
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