JP2012119471A - 有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機el表示装置及び有機el照明 - Google Patents

有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機el表示装置及び有機el照明 Download PDF

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宏一朗 飯田
Koichi Ishibashi
孝一 石橋
Yanjun Li
延軍 李
Kyoko Endo
恭子 遠藤
Akira Uda
章 右田
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Abstract

【課題】本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、湿式製膜法により形成された層を有する有機電界発光素子であって、該層が青色に発光し、発光効率が高い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
本発明はまた、高品質の表示装置及び照明装置子を提供することを課題とする。
【解決手段】発光材料、電荷輸送材料、及び溶剤を含有する有機電界発光素子用組成物であって、
発光材料として、特定の構造で表される化合物を含み、該発光材料及び該電荷輸送材料として、各々、ガラス転移温度140℃以下の化合物を含有することを特徴とする、有機電界発光素子用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機電解発光素子の発光層等を形成するために用いられる有機電界発光素子用組成物に関する。詳しくは、発光効率が高い有機電界発光素子を湿式製膜法により容易に製造し得る有機電界発光素子用組成物と、該有機電界発光素子用組成物を用いて形成された有機電界発光素子、並びに、有機EL表示装置及び有機EL照明装置に関する。
近年、薄膜型の電界発光素子としては、無機材料を使用したものに代わり、有機薄膜を用いた有機電界発光素子の開発が行われるようになっている。有機電界発光素子は、通常陽極と陰極との間に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などを有し、この各層に適した赤、緑、青などの発光素子の開発が進んでいる。
また、有機電界発光素子の各層の形成方法としては、蒸着成膜法や湿式成膜法がある。蒸着成膜法では、テレビやモニタ用の中・大型フルカラーパネルなどを製作する場合、歩留まりの観点で課題を有する。そのため、中でもこれら大面積の用途には湿式成膜法が好適である。
しかしながら、湿式成膜法で有機電界発光素子の各層を形成するためには、各層を形成する材料が溶剤に溶解し、また湿式成膜後には素子として高い性能を有することが望まれていた。しかし、従来開発されている蒸着成膜法に使用されてきた材料は、湿式成膜法には適さないものが多かった(特許文献1参照)。
表示装置及び照明装置に用いられる青色発光材料に関しては、これまで主に蒸着成膜法用途に開発されてきた。例えば、特許文献1には、以下に示す化合物(mc3及びmc25)が例示されている。
Figure 2012119471
また、緑色発光材料に関しては、これまでに蒸着成膜法用途のものに加え、湿式成膜法用途にも適した化合物、及び、それを含む組成物が開発されてきた。例えば、特許文献2には、下記の化合物(A−1)を含む組成物が開示されている。
Figure 2012119471
しかしながら、青色発光層を形成するための有機電界発光素子用組成物には、改善の余地があった。
国際公開第2006/014599号パンフレット 特開2010−202644号公報
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、湿式製膜法により形成された層を有する青色発光の有機電界発光素子であって、発光効率が高い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
本発明はまた、高品質の有機EL表示装置及び有機EL照明を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の構造を有する発光材料と電荷輸送材料を含む有機電界発光素子用組成物において、各材料のガラス転移温度を特定の範囲内に調整することで、上記課題を解決できることを見出して、本発明に到達した。
即ち、本発明は、発光材料、電荷輸送材料、及び溶剤を含有する有機電界発光素子用組成物であって、該発光材料及び該電荷輸送材料として、各々、ガラス転移温度140℃以下の化合物を含有し、当該ガラス転移温度140℃以下の発光材料として、或いはそれ以外の発光材料として、下記式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機EL表示装置及び有機EL照明に存する。
Figure 2012119471
(上記式(1)中、
Xは、窒素原子又は炭素原子を表し、Yは、Xが窒素原子である場合は炭素原子を表し、Xが炭素原子である場合は窒素原子を表す。
〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
〜Rは、各々隣接するR〜Rと互いに結合して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。
Lは1価の2座配位子を表し、mは1〜3の整数を表す。)
本発明によれば、発光効率が高い青色発光の有機電界発光素子を提供できる。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
[語句の説明]
本発明において、単に「芳香環」と称した場合には、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環のいずれも含むものとする。
本発明において、「(ヘテロ)アリール」と称した場合には、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環のいずれも含むものとする。
本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1又は2以上有していてもよいことを意味するものとする。
また、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。これは、有機電界発光素子に用いられる湿式成膜用の組成物特有の液性に合うためである。
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、発光材料、電荷輸送材料、及び溶剤を含有し、該発光材料及び該電荷輸送材料として、各々、ガラス転移温度140℃以下の化合物を含有し、当該ガラス転移温度140℃以下の発光材料として、或いはそれ以外の発光材料として、下記式(1)で表される化合物を含む。
[ガラス転移温度]
本発明において、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC分析)により測定することができる。
得られる素子の発光効率が高い点で、本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる発光材料のガラス転移温度(以下、「TgD」と称する場合がある)は140℃以下で、且つ電荷輸送材料のガラス転移温度(以下、「TgH」と称する場合がある)も140℃以下であることが好ましい。
<示差走査熱量分析(DSC分析)>
本発明において、ガラス転移温度の測定は、下記の装置及び条件で測定を行う。
装置: エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 D S C 6 2 2 0
試料量:4 m g
試料容器: A l 製液体用試料容器
雰囲気: N , 5 0 m l / m i n
温度範囲: 室温〜 2 5 0 ℃
昇温速度: 1 0 ℃ / m i n
本発明の特定に用いる測定機器は、上記と同様の測定が可能であれば、上記の測定機器に限定されるものでなく、その他の測定機器を用いてもよいが、上記の測定機器を用いることが好ましい。
[発光材料]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、発光材料として、ガラス転移温度140℃以下の化合物(TgD140℃以下の発光材料)と下記式(1)で表される化合物を含有する。
本発明において、TgD140℃以下の発光材料と下記式(1)で表される化合物は、同じでもよく、また異なっていてもよい。但し、本発明の効果が良好に得られる点で、TgD140℃以下の発光材料と下記式(1)で表される化合物とは、同じであることが好ましい。
先ず、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される、式(1)で表される化合物について説明する。
Figure 2012119471
(上記式(1)中、
Xは、窒素原子又は炭素原子を表し、Yは、Xが窒素原子である場合は炭素原子を表し、Xが炭素原子である場合は窒素原子を表す。
〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
〜Rは、各々隣接するR〜Rと互いに結合して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。
Lは1価の2座配位子を表し、mは1〜3の整数を表す。)
(R〜Rについて)
〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
[ハロゲン原子]
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、特に好ましくはフッ素原子である。
特に、フッ素原子を導入することで、配位子のイリジウムに対する配位強度が高まり、錯体の非発光励起準位を押し上げ、励起状態からの非発光励起準位熱遷移が抑制されるため、得られる素子の発光効率・発光強度が向上する点で好ましい。
[炭化水素基]
炭化水素基としては、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素環基が挙げられる。飽和炭化水素基としては、アルキル基が挙げられる。これらのうち炭化水素基としては、有機溶剤に対する溶解性が向上する点、及び電気化学的に安定であることにより、アルキル基又は芳香族炭化水素環基が好ましい。
アルキル基の炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、通常15以下、好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。
上記範囲内であると、有機溶剤に対する溶解性が良好で、また熱処理時に熱劣化が起き難いため好ましい。
アルキル基は、直鎖であっても分岐であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基、オクタデシル基などのアルキル基が挙げられる。
また、アルキル基は、パーフルオロアルキル基であってもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などが挙げられ、中でもトリフルオロメチル基が好ましい。
これらは、式(1)中のR〜Rの置換位置は、錯体の発光波長、イオン化ポテンシャル(Ip)の準位、及び電子親和性(Ea)準位の調整がし易いため、特にパーフルオロアルキル基などであることが好ましい。
不飽和炭化水素基としては、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。
アルケニル基の炭素数は、通常2〜12、好ましくは3〜10、さらに好ましくは5〜8である。
上記範囲内であると、溶剤に対する溶解性が良好で、また熱処理時の酸化劣化が起き難くなるため好ましい。アルケニル基としては具体的には、ビニル基、アリル基、ヘキセニ
ル基などが挙げられる。
アルキニル基の炭素数は、通常2〜8、好ましくは3〜5、特に好ましくは3である。炭素数を上記範囲内とすることにより、溶剤に対する溶解性が良好で、また熱処理時の酸化劣化が起き難くなるため好ましい。アルキニル基としては具体的には、アセチレニル基、プロピニル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素環基の炭素数は、通常6以上、通常16以下、好ましくは14以下、さらに好ましくは10以下である。上記範囲内であると、錯体を容易に安定的に形成することができるため好ましい。中でも、6員環の単環、又は2〜5縮合環由来の芳香族炭化水素環基が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの芳香族炭化水素環由来の基が挙げられる。特に、ベンゼン環由来の基(フェニル基)であることが好ましい。
[アルコキシ基]
〜Rにおけるアルコキシ基の炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、通常12以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。炭素数を上記範囲内とすることにより、溶剤に対する溶解性が良好で、また熱処理時の酸化劣化が起き難くなるため好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクタデシルオキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。
[芳香族複素環基]
〜Rにおける芳香族複素環基の炭素数は、通常3〜15である。
炭素数を上記範囲内とすることにより、式(1)で表される化合物の安定性が担保され易く、また合成が容易である点で好ましい。
芳香族複素環基としては、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、ソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの芳香族複素環由来の基が挙げられる。
尚、R〜Rにおける炭化水素基、アルコキシ基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、下記<置換基群Z>が挙げられる。
<置換基群Z>
ハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、(ヘテロ)アリールオキシ基、アルキルチオ基、(ヘテロ)アリールチオ基、シアノ基、アミノ基などの有機基。
上記の中でも、アルキル基及び芳香族炭化水素環基が、錯体の安定性の面から好ましく、芳香族炭化水素環基が特に好ましい。
また、R〜Rは、発光波長の制御や、発光効率・発光強度の観点からは、R〜Rのいずれか一つが、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基で置換されていることが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。また、パーフルオロアルキル基の具体例及び好ましいものについては、前述のとおりである。
アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基、オクタデシル基等が挙げられる。中でも、n−ペンチル基などのペンチル基、n−ヘキシル基及び2−エチルブチル基などのヘキシル基は、非極性溶剤に対して高い溶解性を担保することが出来る点で好ましい。
芳香族炭化水素環基としては、炭素数6〜25の芳香族炭化水素環基が好ましく、6員環の単環、又は2〜5縮合環由来の芳香族炭化水素環基が好ましい。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、フルオランテン環などの芳香族炭化水素環由来の基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、炭素数3〜20の芳香族炭化水素環基が好ましい。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの芳香族複素環由来の基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
(ヘテロ)アリールオキシ基としては、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、9−アントラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数1〜20のアルキルチオ基が好ましく、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
(ヘテロ)アリールチオ基としては、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基好ましく、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、9−アントラニルチオ基、2−チエニルチオ基等が挙げられる。
[好ましい例]
〜Rのいずれか1つが、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、又はこれらいずれかの基を有する基であると好ましい。
ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を有する基としては、例えばこれらいずれかの基で置換された炭化水素基、アルコキシ基及び芳香族複素環基が挙げられる。ここで、炭化水素基としては、好ましくはフェニル基等の芳香族炭化水素環基が挙げられるが、R〜Rのいずれかそれ自体が、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。ハロゲン原子の中でも特にフッ素原子が、以下に述べる効果が顕著に現れる点から好ましい。
また、パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基が好ましい。これらの好ましい理由は、前述の通りである。
〜Rのうち少なくとも1つは、炭素数5以上のアルキル基又はこれを有する置換基であると好ましい。このような基を有することにより、ガラス転移温度が低下し、湿式成膜時の発光材料の動きが促進されるため好ましい。
炭素数5以上のアルキル基を有する置換基としては、アルキル基で置換された芳香族炭化水素環基が好ましく、当該炭化水素基の中ではフェニル基が好ましい。炭素数5以上のアルキル基としては、好ましくは炭素数15以下、より好ましくは炭素数12以下のアルキル基が挙げられる。
炭素数5以上のアルキル基としては直鎖のアルキル基であることが好ましく、具体的にはn−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などが挙げられる。
なお、前記式(1)の配位子に含まれるフェニル基において、Ir(イリジウム)への配位位置に対してp−位(すなわちR)にフェニル基を有することにより、Irのd軌道と当該フェニル基(R基)におけるベンゼン環の電子軌道による混成軌道の安定性が向上、つまり錯体の安定性が向上し、耐久性の高い化合物となるため、ましい。
従って、Rは炭素数5以上のアルキル基を有するフェニル基であることが、特に好ましい。中でも、当該フェニル基のp−位が、炭素数5以上のアルキル基で置換されていることが最も好ましい。p−位に当該アルキル基を有することにより、アルキル基が電子供与性基としての効果を発揮しやすい。
また、前記式(1)において、R及びRのうち少なくとも一方が水素原子以外の基である場合、錯体の安定性が向上するため好ましい。中でも、R及びRのうち少なくとも一方が、置換基を有していてもよいアルキル基である場合が、より好ましい。
(X及びYについて)
Xは、窒素原子又は炭素原子を表し、Yは、Xが窒素原子である場合は炭素原子を表し、Xが炭素原子である場合は窒素原子を表す。
Xが窒素原子であり、Yが炭素原子であることが、イミダゾール環の2−位がフェニル基に結合したより安定な構造であるため好ましい。
(配位子L)
前記式(1)において、Lは1価の2座配位子を表す。
1価の2座配位子Lに特に制限は無いが、例えば以下の配位子などが挙げられる。
Figure 2012119471
これらの中でも、錯体の安定性の観点から、特に好ましくは以下の配位子などが挙げられる。
Figure 2012119471
前記式(1)において、mは1〜3の整数を表す。
尚、前記式(1)で表される化合物の性能、特に配位子の効果がより顕著である点から、mは2又は3が好ましく、3が最も好ましい。
[分子量について]
式(1)で表される化合物の分子量は、通常850〜3000、好ましくは900〜2000である。上記範囲とすることにより、式(1)で表される化合物の安定性が高い点で好ましい。
[発光強度]
式(1)で表される化合物は、10−5Mのトルエン溶液の波長400〜550nmの範囲における最大発光強度が30以上である化合物であることが好ましい。このような発光強度を示す錯体は、発光効率が高い。つまり、式(1)で表される化合物を用いて形成された有機電界発光素子は、発光効率が高い。
<具体例>
以下に、式(1)で表される化合物であり、更にガラス転移温度が140℃以下である化合物の好ましい具体例を示すが、本発明の有機電界発光素子用組成物は、以下の例示に限定されるものではない。
Figure 2012119471
Figure 2012119471
Figure 2012119471
[含有量]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、発光材料として、前記式(1)で表される化合物を含有するが、その他の発光材料を含有していてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物における発光材料の全含有量は、通常0.005〜10重量%、好ましくは0.05〜2重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
また、発光材料の全含有量中、前記式(1)で表される化合物の含有量は、通常10〜100重量%、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは100重量%である。
更に、発光材料として含有されるガラス転移温度140℃以下の化合物は、全発光材料に対する含有割合で、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、また通常100重量%以下である。
本発明の効果が良好に得られる点で、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される発光材料は、全て(つまり、100重量%)ガラス転移温度140℃以下の化合物からなることが好ましい。
また、発光材料として含まれるガラス転移温度140℃以下である化合物は、前記式(1)で表される化合物であることが、本発明の効果を良好に得られる点で好ましい。
この場合、前記式(1)で表される化合物の含有量は、ガラス転移温度140℃以下の化合物が含まれる前記含有量の範囲を満たす。
また、前記式(1)で表される化合物におけるガラス転移温度は、好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下、また好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上である。
上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる点で好ましい。
(式(1)以外の発光材料)
本発明の有機電界発光素子用組成物は、前記式(1)で表される化合物以外の発光材料を含んでいてもよい。
その他の発光材料としては、例えば周期表7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表7〜11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体における金属の好ましい例としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記式(V)又は式(VI)で表される化合物が挙げられる。
ML(q-j)L'j (V)
(式(V)中、Mは金属を表し、qは上記金属の価数を表す。また、L及びL'は二座配
位子を表す。jは0〜2の整数を表す。)
Figure 2012119471
(式(VI)中、Mdは金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92〜R95は、そ
れぞれ独立に置換基を表す。ただし、Tが窒素の場合は、R94及びR95は無い。)
以下、まず、式(V)で表される化合物について説明する。
式(V)中、Mは任意の金属を表し、好ましいものの具体例としては、周期表7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
また、式(V)中の二座配位子L及びL'は、それぞれ、以下の部分構造を有する配位
子を示す。
Figure 2012119471
Figure 2012119471
L'として、錯体の安定性の観点から、特に好ましくは、下記のものが挙げられる。
Figure 2012119471
上記L,L'の部分構造において、環A1は芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を
表し、環A2は含窒素芳香族複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
環A1、A2が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基等の芳香族炭化水素環基等が挙げられる。
式(V)で表される化合物として、更に好ましくは、下記式(Va)、(Vb)、(Vc)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2012119471
(式(Va)中、Maは金属を表し、wは前記金属の価数を表す。また、環A1は置換基
を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表し、環A2は置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
Figure 2012119471
(式(Vb)中、Mbは金属を表し、wは前記金属の価数を表す。また、環A1は置換基
を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、環A2は置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
Figure 2012119471
(式(Vc)中、Mcは金属を表し、wは前記金属の価数を表す。また、jは0〜2の整
数を表す。さらに、環A1及び環A1'は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい
芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。また、環A2及び環A2'は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表
す。)
上記式(Va)、(Vb)、(Vc)において、環A1及び環A1'を構成する基とし
ては、好ましくは、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
また、環A2、環A2'を構成する基としては、好ましくは、例えばピリジル基、ピリ
ミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
更に、環A1、環A1'環A2及び環A2'が有していてもよい置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
上記置換基がアルキル基である場合は、その炭素数は通常1〜6である。更に、置換基がアルケニル基である場合は、その炭素数は通常2〜6である。また、置換基がアルコキシカルボニル基である場合は、その炭素数は通常2〜6である。さらに、置換基がアルコキシ基である場合は、その炭素数は通常1〜6である。また、置換基がアリールオキシ基である場合は、その炭素数は通常6〜14である。さらに、置換基がジアルキルアミノ基である場合は、その炭素数は通常2〜24である。また、置換基がジアリールアミノ基である場合は、その炭素数は通常12〜28である。さらに、置換基がアシル基である場合は、その炭素数は通常1〜14である。また、置換基がハロアルキル基である場合は、その炭素数は通常1〜12である。
なお、これら置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、又は、環A1'が有する置換基と
環A2'が有する置換基とが結合して、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合
環基としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
中でも、環A1、環A1'、環A2及び環A2'の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が好ましい。
また、Ma、Mb、Mcとしては上記Mと同様の金属が挙げられ、中でもルテニウム、ロ
ジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が好ましい。
上記式(V)、(Va)、(Vb)又は(Vc)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない(以下において、Ph’はフェニル基を表す。)。
Figure 2012119471
Figure 2012119471
上記式(V)、(Va)、(Vb)、(Vc)で表される有機金属錯体の中でも、特に、配位子L及び/又はL'として2−アリールピリジン系配位子、即ち、2−アリールピ
リジンを有する錯体、これに置換基が結合した錯体、及び、置換基が互いに結合して縮合環を形成している錯体が好ましい。
また、国際公開第2005/019373号パンフレットに記載の化合物も使用することができる。
次に、前記式(VI)で表される化合物について説明する。
式(VI)中、Mdは金属を表し、具体例としては、周期表7〜11族から選ばれる金属
として前述した金属が挙げられる。中でも、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が好ましい。
また、式(VI)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。
さらに、Tが炭素原子の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、前述の如く、Tが窒素原子の場合はR94及びR95は無い。
また、R92〜R95は更に置換基を有していてもよい。この場合の置換基として特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。
さらに、R92〜R95は互いに連結して環を形成してもよく、この環が更に任意の置換基を有していてもよい。
式(VI)で表される有機金属錯体の具体例(T−1,T−10〜T−15)を以下に示すが、下記の例示化合物に限定されるものではない。なお、以下において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
Figure 2012119471
[電荷輸送材料]
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる電荷輸送材料としては、ガラス転移温度が140℃以下の化合物を含有していれば、従来有機電界発光素子用材料として用いられているものを使用することができる。
例えば、ピリジン、カルバゾール、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クリセン、ナフタセン、フェナントレン、コロネン、フルオランテン、ベンゾフェナントレン、フルオレン、アセトナフトフルオランテン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体、キナクリドン誘導体、DCM(4−(dicyan
omethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminost
yryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン、アリールアミノ基が置換された縮合芳香族環化合物、アリールアミノ基が置換されたスチリル誘導体等が挙げられる。
その他、以下に挙げる各化合物も、好適に使用することができる。
<具体例>
以下に、本発明における電荷輸送材料中、ガラス転移温度が140℃以下である化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2012119471
Figure 2012119471
これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
(含有量)
本発明の有機電界発光素子用組成物における電荷輸送材料の全含有量は、通常0.05〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
電荷輸送材料として含有されるガラス転移温度140℃以下である化合物の、全電荷輸送材料に対する含有割合は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、また通常100重量%以下である。
本発明の効果が良好に得られる点で、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される電荷輸送材料は、全て(つまり100重量%)ガラス転移温度140℃以下の化合物からなることが好ましい。
[本発明が効果を奏する理由]
本発明の構成とすることで効果を奏する理由について下記の通り推測する。
発光材料として含有される前記式(1)で表される化合物は、配位子としてフェニルイミダゾール誘導体を有する金属錯体である。前記式(1)で表される化合物は、例えば、前記特許文献1に記載のフェニルピリジン誘導体に比べ、最低空軌道準位(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO準位)が高い傾向にある。
つまり、前記式(1)で表される化合物は、例えば、フェニルピリジン誘導体を有する金属錯体に比べ、三重項励起準位が高く、青色発光材料として有用である可能性が高い。
しかしながら、前記式(1)で表される化合物は、下記の理由により、湿式成膜時に化
合物同士の凝集や会合が起き易く、その結果、非発光性の状態となり易い。
前記式(1)で表される化合物は、例えば、フェニルピリジン誘導体とは異なり、イリジウム金属に配位する窒素原子の他に、もう1つの窒素原子(以下、「非配位窒素原子」という)を有する(式(1)におけるX又はY)。
上記非配位窒素原子を含有するため、前記式(1)で表される化合物は、フェニルピリジンに較べて極性が高くなる。
これより、前記式(1)で表される化合物及び溶剤を含有する組成物を用いて、湿式成膜により塗布膜を形成する際に、凝集や会合し、その結果、非発光性の状態となることもある。これより、得られる素子の発光効率が十分ではないとのことがある。
ここで、本発明は、発光材料及び電荷輸送材料として、各々ガラス転移温度140℃以下の化合物を含有する。
ガラス転移温度が140℃以下の化合物を含むことにより、湿式成膜法で塗布膜を形成後の加熱乾燥時に塗布膜中で化合物が極めて微小に動くことで、組成物中において凝集や会合された状態であった化合物が、塗布膜中でその凝集や会合が解消されうるものとなる。また、非発光性の状態から、発光性の構造に容易に変化しうるものとなる。
以上より、本発明の組成物は、前記式(1)で表される化合物を発光材料として含み、且つ、ガラス転移温度が140℃以下である化合物を、発光材料及び電荷輸送材料として含有することで、前記式(1)で表される化合物の特性を効率よく引き出すことができる。
また、発光材料として含有されるガラス転移温度140℃以下の化合物のガラス転移温度が、電荷輸送材料として含有されるガラス転移温度140℃以下の化合物のガラス転移温度よりも低いことが、本発明の効果をより良好に得られる点で好ましい。
発光材料として含有されるガラス転移温度140℃以下の化合物、及び電荷輸送材料として含有されるガラス転移温度140℃以下の化合物が、各々、2種以上含有される場合は、発光材料又は電荷輸送材料中における含有量が最も多いものを比較すればよい。
また、本発明の効果がより得られ易い点で、全ての発光材料のガラス転移温度が、全ての電荷輸送材料のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。
[溶剤]
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有され得る溶剤は、湿式成膜により層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分である。
該溶剤は、溶質である発光材料や電荷輸送材料が良好に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、好ましい溶剤としては以下のものが挙げられる。
例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル
、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類(芳香族炭化水素系溶剤)であり、特に好ましくは芳香族炭化水素類(芳香族炭化水素系溶剤)である。
溶剤の沸点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上である。この範囲を下回ると、湿式成膜時において、組成物からの溶剤蒸発により、成膜安定性が低下する可能性がある。
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが好ましい。このため、溶剤の沸点は、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下である。
これらの溶剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物において、溶剤の含有量は、組成物100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上、また、好ましくは99.99重量部以下、より好ましくは99.8重量部以下、特に好ましくは99.5重量部以下である。溶剤の含有量がこの下限を下回ると、組成物の粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、この上限を上回ると、成膜後、溶剤を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、陽極及び陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有するものであり、該有機層が、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成された層を有する有機電界発光素子である。
本発明においては、上記の湿式成膜法で形成された有機層は、特に発光層であることが好ましい。
また、本発明においては、特に有機層の中でも正孔注入層、正孔輸送層、及び発光層を、湿式成膜により形成することが好ましい。
[有機電界発光素子の構成]
以下に、本発明の方法で製造される有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
[基板]
基板は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[陽極]
陽極は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
[正孔注入層]
正孔注入層は、陽極から発光層へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極上に形成される。
本発明に係る正孔注入層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
{湿式成膜法による正孔注入層の形成}
湿式成膜により正孔注入層を形成する場合、通常は、正孔注入層を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の
例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000〜1000000の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 2012119471
(式(I)中、Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Zは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 2012119471
(上記各式中、Ar〜Ar16は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R及びRは、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。))
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが好ましい。
及びRが任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメ
タクリレート等でキャップしたものであってもよい。
尚、正孔輸送性化合物は、下記[正孔輸送層]の項に記載の架橋性重合体であってもよい。該架橋性重合体を用いた場合の成膜方法についても同様である。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる
可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アン
モニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
塗布工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
塗布工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常相対湿度80%以下である。
塗布後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層を形成する場合には、正孔注入層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1
×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。 蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない
限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
[正孔輸送層]
本発明に係る正孔輸送層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層は、正孔注入層がある場合には正孔注入層の上に、正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成することができる。 また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層
を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ar又はArが異なっているものであってもよい。
Figure 2012119471
(式(II)中、Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。)
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
溶解性、耐熱性の点から、Ar及びArは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基(ビフェニル基)やターフェニレン基(ターフェニレン基))が好ましい。
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)及びフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
Ar及びArにおける芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるArやArとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
Figure 2012119471
(式(III−1)中、Ra、Rb、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルコキ
シ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を表す。t及びsは、各々独立に、0〜3の整数を表す。t又はsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRa又はRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRa又はRb同士で環を形成していてもよい。)
Figure 2012119471
(式(III−2)中、R及びRは、各々独立に、上記式(III−1)におけるRa、Rb、R又はRと同義である。r及びuは、各々独立に、0〜3の整数を表す。r又はuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のR及びRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するR又はR同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
Xの具体例としては、―O―、―BR―、―NR―、―SiR―、―PR―、―SR―、―CR―又はこれらが結合してなる基である。尚、Rは、水素原子又は任意の有機基を表す。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
また、ポリアリーレン誘導体としては、前記式(III−1)及び/又は前記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2012119471
(式(III−3)中、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。v及びwは、各々独立に0又は1を表す。)
Ar〜Arの具体例としては、前記式(II)における、Ar及びArと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008―98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、上記正孔注入層の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる
溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層の形成の場合と同様である。
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。 架橋性
化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。

正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層)上に成膜後、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
このようにして形成される正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[発光層]
正孔注入層の上、又は正孔輸送層を設けた場合には正孔輸送層の上には発光層が設けられる。発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
本発明における発光層は、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層であることが好ましい。
発光層は2層以上であってもよく、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法で形成された層が含まれていればよいが、好ましくは、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層からなることが好ましい。
尚、本発明の有機電界発光素子用組成物以外の材料で発光層を形成する場合は、公知の材料を用いて、公知の手法により層を形成することができる。
公知の手法としては、湿式成膜法の他、真空蒸着法なども用いることができる。真空蒸着法を用いた場合の形成方法としては、前記[正孔注入層]の項で記載の方法が挙げられる。
尚、湿式成膜法で形成する場合の方法についても、前記正孔注入層の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
[正孔阻止層]
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
[電子輸送層]
発光層と後述の電子注入層の間に、電子輸送層を設けてもよい。
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
尚、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm
以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
[電子注入層]
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率良く発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
[陰極]
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[その他の層]
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
[電子阻止層]
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層又は正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内で正孔と電子との再
結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
さらに陰極と発光層又は電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を
向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1 997年,V
ol.44,pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板上に他の構成要素を陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を有するものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
<有機EL照明>
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を有するものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
[合成例]
(化合物H−1、H−2の合成)
Figure 2012119471
1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン(8.13g)のN−メチル−2−ピロリドン(40mL)溶液に濃塩酸(13.4g)を滴下し、30分間撹拌した。この溶液に脱イオン水(40mL)を加え、氷浴を用いて溶液を摂氏0度に冷却した後、亜硝酸ナトリウム(4.42g)の水溶液(20mL)を滴下し、さらに1時間撹拌した。
オイルバスを用いて摂氏60度に加熱した後、この反応液をヨウ化カリウム(15.2g)水溶液(100mL)に滴下し、さらに1時間撹拌した。反応液に脱イオン水を加えた
のち、塩化メチレンにて抽出し、有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、蒸発乾固した。カラムクロマトグラフィーにより精製をおこない、中間体1,2を含む混合物(2.10g,中間体1/2=47:53)を得た。
窒素雰囲気下、得られた混合物(1.82g)、中間体3(2.27g)、ヨウ化銅(I)(0.38g)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(DMEDA,0.35g)、りん酸三カリウム(8.5g)の脱水1,4−ジオキサン溶液(12mL)を3時間加熱還流した。反応液中に脱イオン水を加えた後、塩化メチレンにて抽出し、有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、蒸発乾固した。カラムクロマトグラフィーにより分取をおこない、化合物H−1(1.00g)、H−2(1.30g)をそれぞれ得た。
示差走査熱量分析(DSC分析)により、化合物H−1、及びH−2のガラス転移温度
を測定した結果は、下記の通りである。
化合物H−1のTg:106℃
化合物H−2のTg:191℃
(化合物D−1の合成)
<4−n−ヘキシルフェニルボロン酸の合成>
Figure 2012119471
アルゴン気流下、p−ブロモヘキシルベンゼン(99.8g、0.414mol)と脱水THF(テトラヒドロフラン、2400mL)を仕込んだ。−70℃付近まで冷却後、n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(300mL、0.501mol)を内温−73〜−70℃で滴下し、同温度下で1.5時間撹拌した。原料の消失を確認した後、同温度下でトリメトキシボラン(128.2g、1.23mol)を添加した。約2時間撹拌した後、6N塩酸(800mL)を滴下し、室温まで昇温、終夜撹拌した。分液、酢酸エチル抽出を行い、硫酸マグネシウムで脱水後、溶媒を留去した。残渣にクロロホルムを添加した後、結晶を濾過した。溶媒を留去し、4−n−ヘキシルフェニルボロン酸(88.8g、0.431mol)を得た。
<中間体1の合成>
Figure 2012119471
アルゴン置換した300mL四つ口フラスコに40%グリオキサール(23.9g、165mmol)と、メタノール150mLを仕込み、氷浴で内温0℃に冷却した。2,6−ジメチルアニリン(10.0g、82.5mmol)を反応液に滴下し、氷浴をはずして、室温で20時間攪拌した。反応液に3−ブロモ−4−フルオロベンズアルデヒド(33.5g、165mmol)と、塩化アンモニウム(8.83g、165mmol)を加え、1時間還流した。還流状態で85%リン酸(23.8g、206mmol)を10分間かけ滴下し、24時間還流した。その後放冷し、反応液を氷が入った水酸化ナトリウム水溶液に加えアルカリ性とした。ここへ酢酸エチルを加えて分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、濃縮した。残渣をヘプタン/酢酸エチル=3/1に溶解させ、シリカゲルカラム精製し(溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=3/1〜1/1)、褐色ろう状の中間体1(2.48g、7.18mmol,収率8.71%)得た。
Figure 2012119471
100mL四つ口フラスコに4−n−ヘキシルフェニルボロン酸(2.96g、14.4mmol)と、中間体1(2.48g、0.56mmol)を加え、アルゴン置換、脱気した。ここへ特級トルエン38.0mL、特級エタノール21.0mLと2M炭酸ナトリウム水溶液(7.20mL、14.4mmol)を加え、30分間アルゴンバブリングした。アルゴン気流下でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(415mg、0.36mmol)を加え、内温75℃で3時間撹拌した。放冷後、反応液に水(30mL)とトルエン(30mL)を加えてセライト濾過した。濾液を分液し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。濾液をシリカゲル(50g)でショートカラムをして原点物質を除去した。濾液を濃縮、乾固し、褐色オイル(4.30g)を得た。褐色オイルをシリカゲルカラム精製(溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=4/1)し、茶色オイル(2.15g、5.04mmol,収率70.2%)を中間体2として得た。
Figure 2012119471
アルゴン置換した試験管に中間体2(2.14g、5.03mmol)とトリス(アセチルアセトナート)イリジウム(410mg、0.84mmol)を仕込んだ。内温240℃で5時間、内温260℃で6時間攪拌した。薄層クロマトグラフィー上配位子より非極性側に新たなスポットが出現していたので放冷した。タール状の反応液をクロロホルムで均一にしてフロリジール10gに通液して不溶物を除去した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラム精製(溶媒:ヘプタン/クロロホルム=1/1)し、淡黄色結晶(250mg、0.17mmol,収率20.3%)のイリジウム錯体D−1を得た。MALDI
TOF MSで分子量1472.31のピークを確認した。
示差走査熱量分析(DSC分析)により、化合物D−1のガラス転移温度を測定した結果は、下記の通りである。
化合物D−1のTg:131℃
(化合物D−2の合成)
Figure 2012119471
2,6−ジメチル−4−ブロモアニリン(250.0g、1.25mol)とメタノール(2.5L)を仕込んだ。ここへ40%グリオキザール水溶液(142mL)を添加した後、室温で21時間撹拌を行った。次いで、ベンズアルデヒド(265g、2.59mol)と塩化アンモニウム(134g、2.5mol)を添加し、昇温して、2時間還流した。室温まで冷却後、リン酸(175mL)を添加し、昇温して、17時間還流した。冷却後、氷水に注ぎ、28%水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、淡褐色固体の中間体3(54.1g、収率13%)得た。
(中間体4の合成)
Figure 2012119471
中間体3(52.9g、162mmol)と、4−n−ヘキシルフェニルボロン酸(65.9g、320mmol)を仕込み、容器内を脱気、アルゴン置換した。ここへトルエン(850mL)、エタノール(460mL)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(160mL)を加え、30分間アルゴンでバブリングした。アルゴンを流しながらテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(9.2g、8mmol)を添加し、昇温して、約3時間還流した。室温まで冷却後反応液を分液し、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、淡褐色固体の中間体4(66.7g)を得た。
Figure 2012119471
中間体4(7.01g、3.43mmol)が入った試験管を脱気、アルゴン置換し、トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(1.40g、2.86mmol)を加えた。内温250℃で10時間攪拌加熱し、放冷した。タール状の反応液をクロロホルムで均一としてフロリジール(50g)に通液して不溶物を除去した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラム精製し、化合物D−2(1.80g、1.27mmol%)を得た。
示差走査熱量分析(DSC分析)により、化合物D−2のガラス転移温度を測定した結果は、下記の通りである。
化合物D−2のTg:116℃
[湿式成膜法による薄膜の作製]
(実施例1)
発光材料として下記化合物D−1と電荷輸送材料として前記化合物H−1とを含む薄膜を以下の湿式成膜法により作製した。
Figure 2012119471
合成石英基板を塩化メチレンにて洗浄後、窒素ブローにより乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄をおこなった。次いで、発光材料D−1と電荷輸送材料H−1とを用いて、下記の条件にてスピンコートした。
<発光層用組成物>
溶剤 テトラヒドロフラン
塗布液濃度 H−1 1.0重量%
D−1 0.1重量%
<成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気下 25℃
乾燥条件 130℃×5分
上記のスピンコートにより石英基板上に均一な薄膜が形成された。この薄膜の発光スペクトルを測定したところ、青緑色の発光が得られたことから、イリジウム錯体からの発光であることがわかった。また、薄膜の量子収率測定も実施し、これらの測定結果について表1にまとめた。
尚、薄膜の量子収率の測定は、有機EL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)及びマルチチャンネル検出器C7473−46(浜松ホトニクス社製)を用い、330nmの励起波長で、大気下、室温(23℃)で行った。
(比較例1)
実施例1において化合物H−1を比較化合物H−2に変更した外は、実施例1と同様にして湿式成膜法により薄膜を作製し、この薄膜の発光スペクトルならびに量子収率の測定をおこなった。これらの測定データについて表1にまとめた。
Figure 2012119471
表1に示すが如く、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて作製した薄膜は、量子収率が高いことが分かる。
つまり、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層を含む有機電界発光素子は、発光効率が高い。
(実施例2)
実施例1において、発光材料として含まれる化合物H−1を下記化合物H−3に変更した外は、実施例1と同様にして湿式成膜法により薄膜を作製した。
尚、化合物H−3は特開2007−173930号公報に記載の方法で合成した。
示差走査熱量分析(DSC分析)により、化合物D−3のガラス転移温度を測定した結果は、下記の通りである。
化合物D−3のTg:125℃
Figure 2012119471
上記薄膜を形成後、大気圧下、室温(23℃)にて1時間経過した後の発光スペクトル及び絶対量子収率の測定を行った。
この結果を、表2に纏めた。
(実施例3)
実施例2において、電荷輸送材料として化合物H−3を下記化合物H−4に変更した外は、実施例2と同様にして湿式成膜法により薄膜を作成し、発光スペクトル及び絶対量子収率の測定を行った。
この結果を表2に纏めた。
尚、化合物H−4は特開2007−67383号公報に記載の方法で合成した。
示差走査熱量分析(DSC分析)により、化合物D−4のガラス転移温度を測定した結果は、下記の通りであった。
化合物D−4のTg:112℃
Figure 2012119471
(実施例4)
実施例2において、発光材料として化合物D−1を下記に化合物D−2に変更した外は、実施例2と同様にして湿式成膜法により薄膜を作成し、発光スペクトル及び絶対量子収率の測定を行った。
この結果を表2に纏めた。
Figure 2012119471
(比較例2)
実施例2において、電荷輸送材料として化合物H−3を下記化合物H−5(比較化合物)に変更した外は、実施例2と同様にして湿式成膜法により薄膜を作成し、発光スペクトル及び絶対量子収率の測定を行った。
この結果を表2に纏めた。
尚、化合物H−5は特開2009−141339号公報に記載の方法で合成した。
示差走査熱量分析(DSC分析)により、化合物D−5のガラス転移温度を測定した結果は、下記の通りである。
化合物D−5のTg:158℃
Figure 2012119471
Figure 2012119471
表2に示すが如く、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて作製した薄膜は、量子収率が高い。
つまり、本発明の有機電界発光素子は、発光効率が高いことが分かる。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

Claims (11)

  1. 発光材料、電荷輸送材料、及び溶剤を含有する有機電界発光素子用組成物であって、
    該発光材料及び該電荷輸送材料として、各々、ガラス転移温度140℃以下の化合物を含有し、当該ガラス転移温度140℃以下の発光材料として、或いはそれ以外の発光材料として、下記式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物。
    Figure 2012119471
    (上記式(1)中、
    Xは、窒素原子又は炭素原子を表し、Yは、Xが窒素原子である場合は炭素原子を表し、Xが炭素原子である場合は窒素原子を表す。
    〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
    〜Rは、各々隣接するR〜Rと互いに結合して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。
    Lは1価の2座配位子を表し、mは1〜3の整数を表す。)
  2. 前記発光材料としてのガラス転移温度140℃以下の化合物の、組成物中の全発光材料に対する含有割合が、50重量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
  3. 前記電荷輸送材料としてのガラス転移温度140℃以下の化合物の、組成物中の全電荷輸送材料に対する含有割合が、50重量%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用組成物。
  4. 前記発光材料及び前記電荷輸送材料が、ガラス転移温度140℃以下の化合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
  5. 前記発光材料として含有されるガラス転移温度140℃以下の化合物のガラス転移温度が、
    前記電荷輸送材料として含有されるガラス転移温度140℃以下の化合物のガラス転移温度よりも低いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  6. 前記式(1)中、R〜Rの少なくとも一つが炭素数5以上のアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  7. 前記溶剤として、芳香族炭化水素系溶剤を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  8. 基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機層を有する有機電界発光素子であって、
    該有機層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式製膜法により形成された層を含むことを特徴とする、有機電界発光素子。
  9. 前記湿式成膜法により形成された層が、発光層であることを特徴とする、請求項8に記載の有機電界発光素子。
  10. 請求項9に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする有機EL表示装置。
  11. 請求項9に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする有機EL照明。
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