以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1以上有していてもよいことを意味するものとする。
<本発明の芳香族化合物>
本発明の芳香族化合物は、下記一般式(1)で表されるスピロビフルオレン構造を含む構造であることを特徴とする芳香族化合物である。
式(1)中、Ar1~Ar4は各々独立しており、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される。ただし、Ar1~Ar4の少なくとも1つは下記一般式(2)で表される。
式(2)中、アスタリクス(*)は、式(1)との結合を表し、Ar5は置換基を有していてもよい2価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基であり、Ar6は置換基を有していてもよい1価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価の炭素数20以下の複素芳香族基であり、R1は置換基であり、mは0~5の整数であり、kは0~4の整数である。
mが2以上の場合、複数のAr5は同一であっても異なってもよい。kが2以上の場合、複数のR1は同一であっても異なってもよい。
式(3)中、アスタリクス(*)は、式(1)との結合を表し、Ar7は置換基を有していてもよい2価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基であり、Ar8は置換基を有していてもよい1価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基であり、nは1~5の整数である。
本発明の芳香族化合物は、メタ位結合した芳香族炭化水素基を1つ以上有しているため、π共役系の広がりを抑制し、バンドギャップが大きく、励起三重項エネルギー準位(T1)が高い。
さらに、本発明の芳香族化合物は、メタ位結合による立体障害により分子間相互作用が低下し、溶解性が向上し結晶性が低下する。
また、本発明の芳香族化合物は、耐久性の観点から、下記一般式(1a)又は下記一般式(1b)で表される芳香族化合物であることが好ましく、下記一般式(1b)で表される芳香族化合物であることがより好ましい。
式(1a)及び式(1b)中、Ar1~Ar4の定義は、式(1)中のAr1~Ar4の定義と同様である。
<Ar1~Ar4>
Ar1~Ar4は各々独立しており、溶解性及びバンドギャップの観点から、上記一般式(2)で表されることが好ましい。
<Ar5>
式(2)中、Ar5は置換基を有していてもよい2価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基を表す。2価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環の2価の基が挙げられる。化合物の溶解性、耐熱性の観点から、ベンゼン環、又はナフタレン環の2価の基が好ましく、ベンゼン環の2価の基がより好ましい。
mは、化合物の溶解性及び、耐熱性の観点から、1以上が好ましく、4以下が好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が特に好ましい。
mが2以上の場合、複数のAr5は同一であっても異なってもよい。
Ar5が複数存在する場合、全てのAr5がベンゼン環の2価の基であることが好ましい。
なお、mは、Ar5の繰り返し数である。
kは、化合物の溶解性の観点からは1以上が好ましい。kは耐熱性及び耐久性の観点からは1以下が好ましく、0が最も好ましい。
kが2以上の場合、複数のR1は同一であっても異なってもよい。
<Ar6>
式(2)中、Ar6は置換基を有していてもよい1価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価の炭素数20以下の複素芳香族基である。1価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環の1価の基が挙げられる。炭素数20以下の複素芳香族基の例としては、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、又はアズレン環の1価の基である。化合物の溶解性、耐熱性の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環、又はカルバゾール環の1価の基が好ましく、ベンゼン環の1価の基がより好ましい。
<Ar7>
式(3)中、Ar7は、置換基を有していてもよい2価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基である。2価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環の2価の基が挙げられる。化合物の溶解性の観点から、ベンゼン環、又はナフタレン環の2価の基が好ましく、ベンゼン環の2価の基がより好ましい。
nは、化合物の溶解性及び、耐熱性の観点から、2以上が好ましく、4以下が好ましく、3以下がさらに好ましい。
nが2以上の場合、複数のAr7は同一であっても異なってもよい。
Ar7が複数存在する場合、全てのAr7がベンゼン環の2価の基であることがさらに好ましい。
なお、nは、Ar7の繰り返し数である。
<Ar8>
式(3)中、Ar8は置換基を有していてもよい1価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基である。1価の炭素数20以下の芳香族炭化水素基の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環の1価の基が挙げられる。化合物の溶解性及び、耐熱性の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環、又はフェナントレン環の1価の基が好ましく、ベンゼン環の1価の基がより好ましい。
<(Ar5)m、(Ar7)n>
(Ar5)m及び(Ar7)nの少なくとも一方は、化合物の溶解性及び耐熱性の観点から、下記式(11)で表される部分構造、下記式(12)で表される部分構造、及び下記式(13)で表される部分構造から選択される少なくとも一つの部分構造を有することが好ましい。
上記式(11)~式(13)それぞれにおいて、*は隣接する構造との結合又は水素原子を表し、2つ存在する*の少なくとも一方は隣接する構造との結合位置を表す。以降の記載においても、特に断りの無い限り*の定義は同様である。
より好ましくは、(Ar5)m及び(Ar7)nの少なくとも一方は、少なくとも式(11)で表される部分構造又は式(12)で表される部分構造を有する。
さらに好ましくは、(Ar5)m及び(Ar7)nがそれぞれ、少なくとも式(11)で表される部分構造又は式(12)で表される部分構造を有する。
特に好ましくは、(Ar5)m及び(Ar7)nがそれぞれ、式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造を有する。
式(12)として好ましくは、下記式(12-2)である。
式(12)としてよりさらに好ましくは、下記式(12-3)である。
また、式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造を有する場合としては、式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造から選択される構造を複数含む構造である、下記式(14)~下記式(18)で表される部分構造を有することがさらに好ましい。
式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造から選択される構造を複数含む構造とは、例えば式(14)は、下記式(14a)の様に、式(11)で表される部分構造を1つと、式(12)で表される部分構造を2つ有する部分構造である。
また、さらに好ましくは、(Ar5)m及び(Ar7)nの少なくとも一方は、少なくとも式(14)で表される部分構造又は式(15)で表される部分構造を有する。
式(14)として好ましくは、下記式(14-2)である。
式(14)としてさらに好ましくは、下記式(14-3)である。
式(15)として好ましくは、下記式(15-2)である。
式(15)としてさらに好ましくは、下記式(15-3)である。
式(17)として好ましくは、下記式(17-2)である。
式(18)として好ましくは、下記式(18-2)である。
また、式(13)で表される部分構造を含む構造として、下記式(19)で表される部分構造又は下記式(20)で表される部分構造を有することがより好ましい。
上記式(14)~式(20)それぞれにおいて、*は隣接する構造との結合又は水素原子を表し、2つ存在する*の少なくとも一方は隣接する構造との結合位置を表す。
式(14)~式(20)の中で、式(14-3)及び式(15-3)が好ましく、式(14-3)がさらに好ましい。
式(1a)及び式(1b)中、Ar1~Ar4は、式(12-3)で表される部分構造、式(14-3)で表される部分構造又は式(15-3)で表される部分構造を持つことが好ましい。
<置換基>
Ar1~Ar8が有していてもよい置換基及び置換基R1としては、置換基群Zの中から選択することができる。
[置換基群Z]
置換基群Zとしては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基又はアラルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、分岐、直鎖又は環状のプロピル基、分岐、直鎖又は環状のブチル基、分岐、直鎖又は環状のペンチル基、分岐、直鎖又は環状のヘキシル基、分岐、直鎖又は環状のオクチル基、分岐、直鎖又は環状のノニル基、分岐、直鎖又は環状のドデシル基等の、炭素数が通常1以上、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは10以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。化合物の安定性の観点から、メチル基、エチル基、分岐、直鎖又は環状のプロピル基、分岐、直鎖又は環状のブチル基が好ましく、特に好ましくは分岐状のプロピル基である。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24であるアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基が挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアシル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
ハロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基が挙げられる。
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基が挙げられる。
アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基が挙げられる。
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基が挙げられる。
シロキシ基としては、例えば、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル-2-イル基、2-フェニルブチル-2-イル基、3-フェニルペンチル-3-イル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-ブチル基、5-フェニル-1-ペンチル基、6-フェニル-1-ヘキシル基、7-フェニル-1-ヘプチル基、8-フェニル-1-オクチル基等の、炭素数が通常7以上、好ましくは9以上であり、通常30以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下であるアラルキル基が挙げられる。
上記置換基群Zの中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基であり、より好ましくは、炭素数10以下のアルキル基、炭素数30以下のアラルキル基である。耐熱性及び耐久性の観点からは、炭素数10以下のアラルキル基がさらに好ましい。その中でも、4-フェニル-1-ブチル基、2-フェニルプロピル-2-イル基が特に好ましい。最も好ましくは、Ar1~Ar8が置換基を有さないことである。
また、上記置換基群Zの各置換基は更に置換基を有していてもよい。それらの更なる置換基としては、上記置換基(置換基群Z)と同じのものを用いることができる。
<具体例>
以下に、本発明の芳香族化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<芳香族化合物の用途>
本発明の芳香族化合物は、有機電界発光素子に用いられる材料、すなわち有機電界発光素子における電荷を輸送する材料として好適に使用可能であり、その他の発光素子等における電荷を輸送する材料としても好適に使用可能である。
特に、本発明の芳香族化合物は、スピロビフルオレン環と芳香族炭化水素基を基本骨格としており、スピロビフルオレンに直接結合する置換基としてメタ位結合したフェニル基を少なくとも1つ有する。メタ位結合したフェニル基を有することで、π共役系の広がりが抑制され、フェニル基がパラ位で結合する場合よりもπ共役系が広がりにくい。さらに、フェニル基がメタ位結合することにより、パラ位で結合する場合よりも溶解性が向上し、結晶性が低下すると考えられる。
そのため本発明の芳香族化合物は、バンドギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きく、励起三重項準位(T1)が高いため、有機電界発光素子の発光層において、ホスト材料、とりわけ燐光発光材料のホスト材料として有用である。
特に、本発明の芳香族化合物は、真空蒸着法による有機電界発光素子の製造にも使用でき、また、湿式成膜法による薄膜形成も可能であることから、湿式成膜法に適用される有機電界発光素子用材料としても好適である。
従って、本発明の芳香族化合物からなる有機電界発光素子用材料を用いて真空蒸着法による有機電界発光素子の製造もできれば、本発明の芳香族化合物を含有する有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法による有機電界発光素子の製造をすることもできる。
得られた有機電界発光素子は、駆動安定性に優れ、低い駆動電圧で駆動可能である。
また、本発明の芳香族化合物のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、125℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。
<有機電界発光素子用材料>
本発明の有機電界発光素子用材料は、本発明の芳香族化合物からなるものであり、好ましくはトルエンに対して2質量%以上溶解し、より好ましくはトルエンに対して5質量%以上溶解する。
後述する様に、有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤としては芳香族炭化水素が好ましい。トルエンは、芳香族炭化水素の代表例として挙げられ、トルエンに対する溶解度は有機電界発光素子用材料の溶解性を示す指標としている。
本発明の有機電界発光素子用材料のトルエンに対する溶解度が2質量%以上であることにより、湿式成膜法により有機電界発光素子を構成する層を容易に形成することができ好ましい。この溶解度の上限には特に制限はないが、通常50質量%程度である。
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、通常、本発明の芳香族化合物及び溶剤を含有し、更に発光材料及び電荷輸送材料を含有することが好ましい。
[1]溶剤
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤としては、溶質である本発明の芳香族化合物等が良好に溶解する溶剤であれば特に限定されない。
本発明の芳香族化合物は溶解性が高いため、種々の溶剤が適用可能である。例えば、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル;シクロヘキサノン、シクロオクタノン等の脂環を有するケトン;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環を有するアルコール;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エステル等が利用できる。これらのうち、水の溶解度が低い点、容易には変質しない点で、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素が好ましい。
有機電界発光素子には、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、本発明の有機電界発光素子用組成物中の水分の存在は、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
本発明の有機電界発光素子用組成物中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシールを使用する方法、乾燥剤を使用する方法、溶剤を予め脱水する方法、水の溶解度が低い溶剤を使用する方法等が挙げられる。なかでも、水の溶解度が低い溶剤を使用する方法は、湿式成膜工程中に、溶液膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐことができるため好ましい。
この様な観点からは、本発明の有機電界発光素子用組成物は、例えば、25℃における水の溶解度が1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である溶剤を、本発明の有機電界発光素子用組成物中10質量%以上含有することが好ましい。
また、湿式成膜時における本発明の有機電界発光素子用組成物からの溶剤蒸発による、成膜安定性の低下を低減するためには、本発明の有機電界発光素子用組成物の溶剤として、沸点が100℃以上、好ましくは沸点が150℃以上、より好ましくは沸点が200℃以上の溶剤を用いることが効果的である。
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが必要であり、このためには通常沸点80℃以上、好ましくは沸点100℃以上、より好ましくは沸点120℃以上で、通常沸点270℃未満、好ましくは沸点250℃未満、より好ましくは沸点230℃未満の溶剤を用いることが効果的である。
上述の条件、即ち溶質の溶解性、蒸発速度、水の溶解度の条件を満足する溶剤を単独で用いてもよいが、2種類以上の溶剤を混合して用いることもできる。
[2]発光材料
本発明の有機電界発光素子用組成物は、更に発光材料を含有することが好ましい。発光材料とは、本発明の有機電界発光素子用組成物において、主として発光する成分を指し、有機電界発光デバイスにおけるドーパント成分に当たる。即ち、本発明の有機電界発光素子用組成物から発せられる光量(単位:cd/m2)の内、通常10~100%、好ましくは20~100%、より好ましくは50~100%、最も好ましくは80~100%が、ある成分材料からの発光と同定される場合、それを発光材料と定義する。
発光材料としては、公知材料を適用可能であり、蛍光発光材料或いは燐光発光材料を単独若しくは複数を混合して使用できるが、内部量子効率の観点から、好ましくは、燐光発光材料である。
本発明の有機電界発光素子用組成物に使用する場合、この発光材料の最大発光ピーク波長は390~490nmの範囲にあることが好ましい。
尚、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることも、重要である。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p-ビス(2-フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、DCM系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
(燐光発光材料)
燐光発光材料とは、励起三重項状態から発光を示す材料をいう。例えば、Ir、Pt、Euなどを有する金属錯体化合物がその代表例であり、材料の構造として、金属錯体を含むものが好ましい。
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。このような燐光発光材料としては、下記式(201)で表わされる化合物、又は後述の式(205)で表わされる化合物が好ましく、より好ましくは下記式(201)で表わされる化合物である。
Mは、周期表第7~11族から選ばれる金属であり、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、ユウロピウムが挙げられる。
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
R201、R202は各々独立に上記式(202)で表わされる構造であり、“*”は環A1又は環A2と結合すること表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A1に結合する置換基同士、環A2に結合する置換基同士、又は環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
B201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201及びB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、又は、B201及びB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
i1、i2はそれぞれ独立に、0以上12以下の整数を表す。
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
jは、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
k1、k2はそれぞれ独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
mは1~3の整数である。
環A1における芳香族炭化水素環としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましい。
環A1における芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環が好ましく、さらに好ましくは、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環である。
環A1としてより好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、特に好ましくはベンゼン環又はフルオレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
環A2における芳香族複素環としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、
具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環が挙げられ、
さらに好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、
より好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、
最も好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環である。
環A1と環A2の好ましい組合せとしては、(環A1-環A2)で表記すると、
(ベンゼン環-ピリジン環)、(ベンゼン環-キノリン環)、(ベンゼン環-キノキサリン環)、(ベンゼン環-キナゾリン環)、(ベンゼン環-イミダゾール環)、(ベンゼン環-ベンゾチアゾール環)である。
環A1、環A2が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは後述の置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基である。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造である場合、
芳香族炭化水素環構造としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましく、
より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環が好ましく、
最も好ましくはベンゼン環である。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいフルオレン環である場合、フルオレン環の9位及び9’位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいベンゼン環である場合、少なくとも一つのベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましく、少なくとも一つのベンゼン環がメタ位で隣接する構造と結合していることがより好ましい。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族複素環構造である場合、
芳香族複素環構造としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、
具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環が挙げられ、
さらに好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいカルバゾール環である場合、カルバゾール環のN位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
Ar202が置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造である場合、
脂肪族炭化水素構造としては、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有する脂肪族炭化水素構造であり、
好ましくは炭素数が1以上24以下の脂肪族炭化水素であり、
さらに好ましくは炭素数が1以上12以下の脂肪族炭化水素であり、
より好ましくは炭素数が1以上8以下の脂肪族炭化水素である。
i1、i2はそれぞれ独立に、好ましくは1~12の整数、さらに好ましくは1~8の整数、より好ましくは1~6の整数である。この範囲であることにより、溶解性向上、電荷輸送性向上が見込まれる。
i3は好ましくは0~5の整数を表し、さらに好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。
jは好ましくは0~2の整数を表し、さらに好ましくは0又は1である。
k1、k2は好ましくは0~3の整数を表し、さらに好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
Ar201、Ar202、Ar203が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは後述の置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、であり、最も好ましくは無置換(水素原子)である。
特に断りのない場合、置換基としては、次の置換基群Sから選ばれる基が好ましい。
<置換基群S>
・アルキル基、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基。
・アルコキシ基、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基。
・アリールオキシ基、好ましくは炭素数6~20のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6~14のアリールオキシ基、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基。
・ヘテロアリールオキシ基、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールオキシ基、より好ましくは炭素数3~12のヘテロアリールオキシ基。
・アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1~20のアルキルアミノ基、より好ましくは炭素数1~12のアルキルアミノ基。
・アリールアミノ基、好ましくは炭素数6~36のアリールアミノ基、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基。
・アラルキル基、好ましくは炭素数7~40のアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のアラルキル基、さらに好ましくは炭素数7~12のアラルキル基。
・ヘテロアラルキル基、好ましくは炭素数7~40のヘテロアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のヘテロアラルキル基。
・アルケニル基、好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基。
・アルキニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルキニル基。
・アリール基、好ましくは炭素数6~30のアリール基、より好ましくは炭素数6~24のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~18のアリール基、特に好ましくは炭素数6~14のアリール基。
・ヘテロアリール基、好ましくは炭素数3~30のヘテロアリール基、より好ましくは炭素数3~24のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数3~18のヘテロアリール基、特に好ましくは炭素数3~14のヘテロアリール基。
・アルキルシリル基、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20であるアルキルシリル基、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~12であるアルキルシリル基。
・アリールシリル基、好ましくはアリール基の炭素数が6~20であるアリールシリル基、より好ましくはアリール基の炭素数が6~14であるアリールシリル基。
・アルキルカルボニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキルカルボニル基。
・アリールカルボニル基、好ましくは炭素数7~20のアリールカルボニル基。
・水素原子、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、又は、-SF5。
以上の基は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられているか、若しくは1つ以上の水素原子が重水素原子で置き換えらえられていてもよい。
特に断りのない限り、アリールは芳香族炭化水素であり、ヘテロアリールは芳香族複素環である。
(置換基群Sの中の好ましい基)
これら置換基群Sのうち、
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、これらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は、-SF5であり、
より好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、これらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は、-SF5であり、
さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基であり、
特に好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、
最も好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
これら置換基群Sは、さらに置換基群Sから選ばれる置換基を置換基として有していてもよい。有していてもよい置換基の好ましい基、より好ましい基、さらに好ましい基、特に好ましい基、最も好ましい基は置換基群Sの中の好ましい基等と同様である。
(式(201)の好ましい構造)
前記式(201)中の前記式(202)で表される構造のなかでも、ベンゼン環が連結した基を有する構造、環A1又は環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造、環A1又は環A2に、デンドロンが結合した構造が好ましい。
ベンゼン環が連結した基を有する構造においては、
Ar201がベンゼン環構造であり、i1が1~6であり、少なくとも一つの前記ベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合している。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
環A1又は環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造においては、
Ar201が芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造であり、i1が1~6であり、
Ar202が脂肪族炭化水素構造であり、i2が1~12であり、好ましくは3~8であり、
Ar203がベンゼン環構造であり、i3が0又は1である。
この構造の場合、好ましくは、Ar201は前記芳香族炭化水素構造であり、さらに好ましくはベンゼン環が1~5連結した構造であり、より好ましくはベンゼン環1つである。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
環A1又は環A2に、デンドロンが結合した構造においては、
Ar201、Ar202がベンゼン環構造であり、
Ar203がビフェニル又はターフェニル構造であり、
i1、i2が1~6であり、i3が2であり、jが2である。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
B201-L200-B202で表される構造のうち、下記式(203)又は(204)で表される構造が好ましい。
R211、R212、R213は置換基を表す。
置換基は特に限定されないが、好ましくは前記置換基群Sから選択される基である。
環B3は、置換基を有していてもよい、窒素原子を含む芳香族複素環構造を表す。
環B3は好ましくはピリジン環である。
環B3が有してもよい置換基は特に限定されないが、好ましくは前記置換基群Sから選択される基である。
式(201)で表わされる燐光発光材料としては特に限定はされないが、具体的には以下の構造が挙げられる。
なお、Meはメチル基を意味し、Phはフェニル基を意味する。
ここで、下記式(205)で表わされる化合物について説明する。
式(205)中、M2は金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92~R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は存在しない。
式(205)中、M2は金属を表す。具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、式(205)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
更に、Tが炭素原子の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94又はR95は存在しない。
また、R92~R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、R92及びR93として挙げた前記の置換基とすることができる。更に、R92~R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
(分子量)
燐光発光材料の分子量は、好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、燐光発光材料の分子量は、通常800以上、好ましくは1000以上、更に好ましくは1200以上である。この分子量範囲であることによって、燐光発光材料同士が凝集せず電荷輸送材料と均一に混合し、発光効率の高い発光層を得ることができると考えられる。
燐光発光材料の分子量は、Tgや融点、分解温度等が高く、燐光発光材料及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーション等に起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇等が起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、燐光発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易である点では小さいことが好ましい。
[3]電荷輸送材料
本発明の有機電界発光素子用組成物は、ホスト材料として電荷輸送材料を含有することが好ましい。
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、電荷輸送性に優れる骨格を有する材料であり、電子輸送性材料、正孔輸送性材料及び電子と正孔の両方を輸送可能な両極性材料から選ばれることが好ましい。
電荷輸送性に優れる骨格としては、具体的には、芳香族構造、芳香族アミン構造、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造等が挙げられる。
電子輸送性材料としては、電子輸送性に優れ構造が比較的安定な、ピリジン構造、ピリミジン構造、及び/又はトリアジン構造を有する化合物がより好ましく、ピリミジン構造、及び/又はトリアジン構造を有する化合物がさらに好ましい。
正孔輸送性材料は、正孔輸送性に優れた構造を有する化合物であり、前記電荷輸送性に優れる骨格の中でも、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、トリアリールアミン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造又はピレン構造が正孔輸送性に優れた構造として好ましく、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造又はトリアリールアミン構造がさらに好ましい。
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、3環以上の縮合環構造を有する化合物であることが好ましく、3環以上の縮合環構造を2以上有する化合物又は5環以上の縮合環を少なくとも1つ有する化合物であることがさらに好ましい。これらの化合物であることで、分子の剛直性が増し、熱に応答する分子運動の程度を抑制する効果が得られ易くなる。さらに、3環以上の縮合環及び5環以上の縮合環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有することが電荷輸送性及び材料の耐久性の点で好ましい。
3環以上の縮合環構造としては、具体的には、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、トリフェニレン構造、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、インデノフルオレン構造、インドロフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造等が挙げられる。
電荷輸送性ならびに溶解性の観点から、フェナントレン構造、フルオレン構造、インデノフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造及びジベンゾチオフェン構造からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、電荷に対する耐久性の観点から、カルバゾール構造又はインドロカルバゾール構造がさらに好ましい。
本発明においては、有機電界発光素子の電荷に対する耐久性の観点から、発光層のホスト材料の内、少なくとも一つはピリミジン骨格又はトリアジン骨格を有する材料であることが好ましい。
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、可撓性に優れる観点では高分子材料であることが好ましい。可撓性に優れる材料を用いて形成された発光層は、フレキシブル基板上に形成された有機電界発光素子の発光層として好ましい。発光層に含まれるホスト材料として用いられる電荷輸送材料が高分子材料である場合、分子量は、好ましくは5,000以上1,000,000以下、さらに好ましくは10,000以上、500,000以下、より好ましくは10,000以上100,000以下である。
また、発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、合成及び精製のしやすさ、電子輸送性能及び正孔輸送性能の設計のしやすさ、溶媒に溶解した時の粘度調整のしやすさの観点から、低分子であることが好ましい。発光層に含まれるホスト材料として用いられる電荷輸送材料が低分子材料である場合、分子量は、5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
[4]その他の成分
本発明の有機電界発光素子用組成物は、前述した溶剤及び発光材料以外にも、必要に応じて、各種の他の溶剤を含んでいてもよい。このような他の溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物は、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
更に、2層以上の層を湿式成膜法により積層する際に、これらの層が相溶することを防ぐため、成膜後に硬化させて不溶化させる目的で光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を含有させておくこともできる。
[5]有機電界発光素子用組成物中の材料濃度と配合比
有機電界発光素子用組成物中の固形分濃度〔本発明の芳香族化合物、ホスト材料、発光材料及び必要に応じて添加可能な成分(レベリング剤など)などを含む全ての固形分の濃度〕は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは1質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。固形分濃度がこの範囲であると、所望の膜厚の薄膜を均一な厚みで形成しやすく、好ましい。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物において、発光材料の質量/〔本発明の芳香族化合物の質量+ホスト材料の質量〕の質量混合比は、通常、0.1/99.9以上であり、より好ましくは0.5/99.5以上であり、更に好ましくは1/99以上であり、最も好ましくは2/98以上で、通常、50/50以下であり、より好ましくは40/60以下であり、更に好ましくは30/70以下であり、最も好ましくは20/80以下である。この比が下限を下回ったり、上限を超えたりすると、著しく発光効率が低下する恐れがある。
[6]有機電界発光素子用組成物の調製方法
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の芳香族化合物、必要に応じて前述した発光材料、及び必要に応じて添加可能なレベリング剤や消泡剤等の各種添加剤よりなる溶質を、適当な溶剤に溶解させることにより調製される。
溶解工程に要する時間を短縮するため、及び本発明の有機電界発光素子用組成物中の溶質濃度を均一に保つため、通常、液を撹拌しながら溶質を溶解させる。溶解工程は常温で行ってもよいが、溶解速度が遅い場合は加熱して溶解させることもできる。溶解工程終了後、必要に応じて、フィルタリング等の濾過工程を経由してもよい。
[7]有機電界発光素子用組成物の性状、物性等
(水分濃度)
有機電界発光素子を、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いた湿式成膜法により層形成して製造する場合、用いる有機電界発光素子用組成物に水分が存在すると、形成された膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれるため、本発明の有機電界発光素子用組成物中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。また一般に、有機電界発光素子には、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、有機電界発光素子用組成物中に水分が存在した場合、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
具体的には、本発明の有機電界発光素子用組成物中に含まれる水分量は、通常1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
有機電界発光素子用組成物中の水分濃度の測定方法としては、日本工業規格「化学製品の水分測定法」(JIS K0068:2001)に記載の方法が好ましく、例えば、カールフィッシャー試薬法(JIS K0211-1348)等により分析することができる。
(均一性)
本発明の有機電界発光素子用組成物は、湿式成膜プロセスでの安定性、例えば、インクジェット成膜法におけるノズルからの吐出安定性を高めるためには、常温で均一な液状であることが好ましい。常温で均一な液状とは、有機電界発光素子用組成物が均一相からなる液体であり、かつ有機電界発光素子用組成物中に粒径0.1μm以上の粒子成分を含有しないことをいう。
(物性)
本発明の有機電界発光素子用組成物の粘度が極端に低粘度の場合は、例えば成膜工程における過度の液膜流動による塗面不均一、インクジェット成膜におけるノズル吐出不良等が起こりやすくなる。本発明の有機電界発光素子用組成物の粘度が極端に高粘度の場合は、インクジェット成膜におけるノズル目詰まり等が起こりやすくなる。
このため、本発明の有機電界発光素子用組成物の25℃における粘度は、通常2mPa・s以上、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上であり、通常1000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物の表面張力が高い場合は、基板に対する成膜用液の濡れ性が低下する、液膜のレベリング性が悪く、乾燥時の成膜面乱れが起こりやすくなる等の問題が発生する場合がある
このため、本発明の有機電界発光素子用組成物の20℃における表面張力は、通常50mN/m未満、好ましくは40mN/m未満である。
更に、本発明の有機電界発光素子用組成物の蒸気圧が高い場合は、溶剤の蒸発による溶質濃度の変化等の問題が起こりやすくなる場合がある。
このため、本発明の有機電界発光素子用組成物の25℃における蒸気圧は、通常50mmHg以下、好ましくは10mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下である。
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に陽極及び陰極を有し、前記陽極と前記陰極の間に有機層を有するものであって、当該有機層が、有機電界発光素子用材料を含む層を有し、当該有機電界発光素子用材料が本発明の芳香族化合物を含有することを特徴とする。
当該芳香族化合物を含有する層は、本発明の有機電界発光素子用材料又は有機電界発光素子用組成物を用いて形成されることが好ましい。
また、有機電界発光素子用材料を含む層は、発光層であることが好ましい。
更に当該芳香族化合物を含有する層に、有機金属錯体がドープされていることが好ましい。この有機金属錯体としては、前記発光材料として例示したものを使用できる。
また、本発明の芳香族化合物は、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きく、励起三重項準位(T1)が高く、高い正孔輸送性を有するため、電子阻止層に含まれることも好ましい。以下に、本発明の有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等について、図1を参照にして説明する。
図1は本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極、10は有機電界発光素子を各々表す。
尚、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。これは、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が有機電界発光素子に用いられる塗布用の組成物特有の液性に合うためである。
[1]基板
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがある。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[2]陽極
陽極2は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2の厚みは基板1の厚みと同一でもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ処理、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
[3]正孔注入層
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明の正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
(湿式成膜法による正孔注入層の形成)
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は、通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV~6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
(式(I)中、Ar51及びAr52は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar53~Ar55は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar51~Ar55のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
(上記各式中、Ar56~Ar66は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。)
Ar56~Ar66の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がより好ましい。
Ar56~Ar66の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
R31及びR32が任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号に記載のものが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-エチレンジオキシチオフェン(3,4-ethylenedioxythiophene)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。ここで、電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、電子親和力が5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。
具体的には、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号);塩化鉄(III)(特開平11-251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003-31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上であり、また、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは200℃以上であり、また、通常400℃以下、好ましくは300℃以下である。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると、乾燥工程の温度を高くする必要があるし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3-イロプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度が好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、120℃以上、410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
(真空蒸着法による正孔注入層の形成)
真空蒸着法により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、通常9.0×10-6Torr(12.0×10-4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
[4]正孔輸送層
本発明の正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4は、正孔注入層がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、正孔輸送層4は、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体が好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体が好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ara又はArbが異なっているものであってもよい。
(式(II)中、Ara及びArbは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2~5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2~4縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
溶解性、耐熱性の点から、Ara及びArbは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基やターフェニル基)が好ましい。中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)及びフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
Ara及びArbにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるAraやArbとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III-1)及び/又は下記式(III-2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
(式(III-1)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はカルボキシ基を表す。t及びsは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。t又はsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRa又はRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRa又はRb同士で環を形成していてもよい。)
(式(III-2)中、Re及びRfは、それぞれ独立に、上記式(III-1)におけるRa、Rb、Rc又はRdと同義である。r及びuは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。r又はuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRe及びRfは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRe又はRf同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
Xの具体例としては、酸素原子、置換基を有していてもよいホウ素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、置換基を有していてもよいケイ素原子、置換基を有していてもよいリン原子、置換基を有していてもよいイオウ原子、置換基を有していてもよい炭素原子又はこれらが結合してなる基である。
また、ポリアリーレン誘導体としては、上記式(III-1)及び/又は上記式(III-2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III-3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
(式(III-3)中、Arc~Ariは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。v及びwは、それぞれ独立に0又は1を表す。)
Arc~Ariの具体例としては、前記式(II)における、Ara及びArbと同様である。
上記式(III-1)~(III-3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物は、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
また、正孔輸送層4は、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、架橋性化合物としては、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III-1)~(III-3)に架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体;縮合多環芳香族誘導体;金属錯体などが挙げられる。
その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;縮合多環芳香族誘導体;金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素;ポルフィリン化合物;ジアリールケトン化合物等の光増感剤などが挙げられる。
また、さらに、正孔輸送層形成用組成物は、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上含有する。また、正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱及び/又は光などの電磁エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に乗せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で、120℃以上で、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの電磁エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱及び光などの電磁エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[5]発光層
正孔注入層3の上、又は正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
(発光層の材料)
発光層5は、好ましくは、本発明の芳香族化合物、前記電荷輸送材料、及び前記発光材料(発光の性質を有する材料)を含み、より好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を電荷輸送材料として含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。
本発明の芳香族化合物及び電荷輸送材料の合計に対する本発明の芳香族化合物の含有量は0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.5質量%以上40質量%以下がより好ましく、1質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよいが、本発明では前述した発光材料を用いることが好ましい。一方、ホスト材料、とりわけ正孔輸送性化合物として本発明の芳香族化合物を使用することが好ましい。
特に、本発明の有機電界発光素子は、その発光層が、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法にて形成されることが好ましい。
更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層5を形成する場合は、低分子量の材料(分子量通常10000以下、好ましくは5000以下)を使用することが好ましい。
<発光層の形成>
湿式成膜法により発光層5を形成する場合は、発光層に用いる材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物(本発明の芳香族化合物を含む場合は有機電界発光素子用組成物)を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層5を湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、上記本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤として説明したものと同様である。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、電荷輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01質量%以上、通常70質量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶剤を除去することにより、発光層が形成される。具体的には、上記正孔注入層の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
発光層5の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層5の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
[6]正孔阻止層
本発明の有機電界発光素子は、前記発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けることが好ましい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公報)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、正孔阻止層6は、湿式成膜法、真空蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
また、正孔阻止層にかえて、正孔緩和層を設けてもよい。
[7]電子輸送層
発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物により形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59-194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-ヒドロキシフラボン金属錯体、5-ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-tert-ブチル-9,10-N,N’-ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、電子輸送層7は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[8]電子注入層
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等が用いられる。
例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等が挙げられる(Applied Physics Letters,1997年,70巻,152頁;特開平10-74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,44巻,1245頁;SID 04 Digest,154頁等参照)。
電子注入層の膜厚は、0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10-270171号公報、特開2002-100478号公報、特開2002-100482号公報等参照)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、電子注入層8は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
[9]陰極
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2の膜厚と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[10]その他の層
本発明の有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
[11]電子阻止層
任意の層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。電子阻止層は、正孔注入層3又は正孔輸送層4と発光層5との間に設けられる。電子阻止層には、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、発光層5を湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、本発明の芳香族化合物、F8-TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、電子阻止層は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明の有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V2O5)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率及び駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明の有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の有機電界発光素子は、有機ELディスプレイ等の表示装置や有機EL照明等の照明装置に使用される。本発明の有機電界発光素子によって、例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で有機ELディスプレイや有機EL照明を形成することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と下記実施例の値又は実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
なお、本明細書では、Acはアセチル基を意味し、Phはフェニル基を意味し、dppfは1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを意味し、DMSOはジメチルスルホキシドを意味し、THFはテトラヒドロフランを意味し、DCMはジクロロメタンを意味し、Tfはトリフルオロメチルスルホニル基(CF3SO2-)を意味する。
<実施例1:化合物1の合成例>
(化合物1の合成)
窒素雰囲気下、2、2’、7、7’-テトラブロモ-9、9’-スピロビフルオレン(1.00g、1.58mmol)、4,4’,5,5’-テトラメチル-2-[1、1’:3’、1’’-ターフェニル]-3-イル-1,3,2-ジオキサボロン酸(3,33g、9.35mmol)にトルエン20mL、エタノール10mL、2Mのリン酸カリウム10mLを加え、50℃に加熱撹拌した。その後、Pd(PPh3)4(0.22g、12mol%)を加え、90℃で6時間還流した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液に活性白土を加え、室温で10分間撹拌した。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、化合物1を1.29g(収率66%)得た。
<実施例2:化合物2の合成例>
(中間体1の合成)
窒素雰囲気下、4,4’,5,5’-テトラメチル-2-[1、1’:3’、1’’-ターフェニル]-3-イル-1,3,2-ジオキサボロン酸(10.4g、29.2mmol)と1-ブロモ-3-ヨードベンゼン(8.26g、29.2mmol)をトルエン76mLに溶解させた。エタノール38mLと2Mのリン酸カリウム38mLを加え、60℃で20分間加熱撹拌した。その後、PdCl2(PPh3)2(0.20g、1mol%)を加え、65℃で3.5時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体1を9.86g(収率87%)得た。
(中間体2の合成)
窒素雰囲気下、中間体1(9.86g、25.6mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(9.75g、38.4mmol)、酢酸カリウム(7.54g、76.8mmol)をジメチルスルホキシド100mLに溶解させ、50℃で20分間加熱撹拌した。その後、PdCl2(dppf)CH2Cl2(1.05g、5mol%)を加え、90℃で8.5時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、脱塩水200mLを滴下し、濾過した。濾過物をトルエン100mLに溶解させ、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液に活性白土を加え、室温で10分間撹拌した。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、中間体2を8.50g(収率77%)得た。
(化合物2の合成)
窒素雰囲気下、2、2’、7、7’-テトラブロモ-9、9’-スピロビフルオレン(1.00g、1.58mmol)、中間体2(4.10g、9.48mmol)にトルエン20mL、エタノール10mL、2Mのリン酸カリウム10mLを加え、50℃に加熱撹拌した。その後、Pd(PPh3)4(0.22g、12mol%)を加え、90℃で4.5時間還流した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液に活性白土を加え、室温で10分間撹拌した。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、化合物2を1.60g(収率66%)得た。
<実施例3:化合物3の合成例>
(中間体3の合成)
窒素雰囲気下、2-ブロモ-3’,5’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル](3.35g 、11.5mmol)をTHF50mLに溶解させ、-75℃に冷却した。1.59Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液(7.2mL、11.5mmol)をゆっくりと滴下し、-75℃で2時間撹拌した。この反応溶液を3、6-ジブロモ-9H-フルオレン-9-オン(5.05g、15.0mmol)をTHF150mLに溶解させた溶液に-75℃でゆっくりと滴下した。-75℃で1時間、室温で5時間撹拌した。反応溶液に水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣を酢酸150mLに溶解させ、濃塩酸10mLを加え、125℃で2.5時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え、析出した個体を濾過し、真空下で乾燥させた。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、中間体3を2.9g(収率47%)得た。
(中間体4の合成)
窒素雰囲気下、中間体3(2.90g、5.43mmol)、4,4’,5,5’-テトラメチル-2-[1、1’:3’、1’’-ターフェニル]-3-イル-1,3,2-ジオキサボロン酸(5.80g、16.3mmol)にトルエン60mL、エタノール20mL、2Mのリン酸カリウム水溶液20mLを加え、50℃に加熱撹拌した。その後、Pd(PPh3)4(0.62g、10mol%)を加え、90℃で8.5時間還流した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液に活性白土を加え、室温で10分間撹拌した。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、中間体4を4.30g(収率95%)得た。
(中間体5の合成)
窒素雰囲気下、中間体4(4.30g、5.16mmol)をDCM150mLに溶解させ、-10℃に冷却した。1M三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(77.4mL、77.4mmol)をゆっくりと滴下し、-10℃で5時間、室温で12時間撹拌した。反応溶液に水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去し、中間体5を4.14g(収率99%)得た。
(中間体6の合成)
窒素雰囲気下、中間体5(4.14g、5.16mmol)、に窒素バブリングを行ったジクロロメタン150mLとトリエチルアミン(3.6mL、25.8mmol)を加え、-5℃~-10℃に冷却した。ジクロロメタン30mLに希釈したトリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.5mL、15.5mmol)を滴下し、-5℃~-10℃にて2時間撹拌し、さらに室温にて1時間撹拌した。蒸留水を加え、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し、中間体6を4.51g(収率82%)を得た。
(化合物3の合成)
窒素雰囲気下、中間体6(1.33g、1.24mmol)、4,4’,5,5’-テトラメチル-2-[1、1’:3’、1’’-ターフェニル]-3-イル-1,3,2-ジオキサボロン酸(1.33g、3.73mmol)にトルエン20mL、エタノール10mL、2Mのリン酸カリウム水溶液10mLを加え、50℃に加熱撹拌した。その後、Pd(PPh3)4(0.14g、10mol%)を加え、90℃で3時間還流した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液に活性白土を加え、室温で10分間撹拌した。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、化合物3を1.20g(収率79%)得た。
<実施例4:化合物4の合成例>
(化合物4の合成)
窒素雰囲気下、中間体6(1.30g、1.22mmol)、3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニルボロン酸(1.40g、4.86mmol)にトルエン10mL、エタノール5mL、2Mのリン酸カリウム水溶液5mLを加え、50℃に加熱撹拌した。その後、Pd(PPh3)4(0.14g、10mol%)を加え、90℃で2時間還流した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液に活性白土を加え、室温で10分間撹拌した。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、化合物4を1.03g(収率67%)得た。
<実施例5:化合物5の合成例>
(化合物5の合成)
窒素雰囲気下、中間体6(1.21g、1.12mmol)、4,4,5,5-テトラメチル-2-[4’ ’-(1-メチル-1-フェニルエチル)[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-3-イル]-1,3,2-ジオキサボロン酸(2.13g、4.49mmol)にトルエン20mL、エタノール10mL、2Mのリン酸カリウム10mLを加え、50℃に加熱撹拌した。その後、Pd(PPh3)4(0.13g、10mol%)を加え、90℃で6時間還流した。反応溶液を室温に冷却後、水を加え分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液に活性白土を加え、室温で10分間撹拌した。吸引濾過後、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、メタノールで洗浄し、化合物5を1.30g(収率79%)得た。
<比較例1>
下記比較化合物1をChannelpharm Ltd.から購入した。
<化合物1~5、及び比較化合物1の評価>
各化合物のガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量測定(DSC)により評価した。
各化合物のイオン化ポテンシャル(Ip)を、光電子分光法により評価した。
各化合物の電子親和力(EA)を、吸収スペクトルの吸収端から算出したバンドギャップ(Eg)からIpを引くことで算出した。
各化合物のシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性を評価した。
結果を表1に示す。
なお、シクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性は、1~2mL程度のシクロへキシルベンゼン溶液(各化合物の濃度:2.0重量%)を調製し、当該溶液に各化合物が溶解したか否かで判断した。
表1中の「>2.0重量%」は、当該溶液に化合物が溶解したことを意味する。表1中の「<0.5重量%」は、シクロへキシルベンゼン溶液中の化合物の濃度を0.5重量%に下げても、化合物が溶解しなかったことを意味する。
これらの結果から、本発明の芳香族化合物は、優れた耐熱性を有し、かつ、明確なガラス転移温度を示して結晶化し難く、ワイドギャップかつ有機溶媒への溶解性が高いことがわかる。層を形成する際のベーク時に膜の安定性を保つためには一般的にガラス転移温度は125℃以上必要であるところ、本発明の化合物のガラス転移温度はこれ以上であり、優れた耐熱性を有する。