以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
[語句の説明]
本発明において、単に「複素環」または「炭化水素環」と称した場合には、芳香族性を有する環および芳香族性を有しない環のいずれをも含むものとする。また、単に「芳香環」と称した場合には、炭化水素芳香環および複素芳香環のいずれをも含むものとする。
また、本発明において、「芳香環基」とは、「単環の芳香環に由来する基」、「2以上の環が縮合した縮合環に由来する基」の他、「これらの単環および/または縮合環の2以上が単結合を介して連結した基」も含むものとする。
また、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1または2以上有していてもよいことを意味するものとする。
また、「(ヘテロ)アリール」とは、「アリール」と「ヘテロアリール」の両方を意味するものとする。
[式(1)で表されるキノリン系化合物]
本発明のキノリン系化合物は、下記式(1)で表される。
(式(1)中、Ar1は置換基を有していてもよい芳香環基を表す。R1〜R4は、各々独立に置換基を有していてもよい炭素数50以下の有機基を表す。L1は、単結合または置換基を有していてもよい炭素数25以下の芳香環基を表す。nは2以上6以下の整数を表す。mは0以上5以下の整数を表す。p、rおよびsは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。)
[1]構造上の特徴
上記式(1)で表される本発明のキノリン系化合物は、キノリン骨格またはキノリン骨格に置換した芳香環基Ar1にリンカーL1を介してカルバゾール環を置換させた構造を有し、この構造が正負の電荷に対して化合物の耐久性を高める機能を奏するものと考えられる。
また、キノリン環の4位に芳香環基Ar1を置換させた構造が、キノリン環の分解を押さえるために、素子の耐久性を向上させるものと考えられる。
[2]式(1)における各構成要素
以下に上記式(1)における各構成要素について詳細に説明する。
<nについて>
nは、下記式(i)で表される部分構造の数を表す、2以上6以下の整数である。nは好ましくは2〜3であり、特に好ましくは2である。1分子中に含まれる複数の下記式(i)で表される部分構造は同一であっても異なっていてもよい。尚、L1は、キノリン環またはキノリン環に置換しているAr1に結合する。
<Ar1について>
式(1)中のAr1は置換基を有していてもよい芳香環基を表す。
Ar1の芳香環基としては炭素数3以上25以下のものが好ましく、具体的に芳香環基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基、9−フェナンチル基、3−フェナンチル基などのフェナンチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基などのアントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基などのナフタセニル基、1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基などのクリセニル基、1−ピレニル基などのピレニル基、1−トリフェニレニル基などのトリフェニレニル基、1−コロネニル基などのコロネニル基等の芳香族炭化水素基、2−ピリジル基などのピリジル基、2−チエニル基などのチエニル基、3−ベンゾチエニル基などのベンゾチエニル基、2−キノリニル基などのキノリニル基等の芳香族複素環基が挙げられ、特に芳香族炭化水素基が好ましい。
化合物の安定性の面から、Ar1としてはフェニル基、2−ナフチル基、1−アントラニル基、9−フェナントリル基、9−アントラニル基が好ましく、フェニル基、2−ナフチル基が化合物の精製のし易さから特に好ましく、フェニル基が最も好ましい。
また、Ar1は置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基、シアノ基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、その具体例としては、Ar1の置換基として例示してものと同様である。Ar1が有する置換基としてはアルキル基および芳香族炭化水素基が、化合物の安定性の面から好ましく、芳香族炭化水素基が特に好ましい。
Ar1が有していてもよい置換基としての炭素数1〜20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基、オクタデシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基である。これらのうち、メチル基、エチル基が原料の入手しやすさ、安価さなどから好ましく、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が、非極性溶媒に高い溶解性を持つために好ましい。
Ar1が有していてもよい置換基としての炭素数6〜25の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基、9−フェナンチル基、3−フェナンチル基などのフェナンチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基などのアントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基などのナフタセニル基、1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基などのクリセニル基、1−ピレニル基などのピレニル基、1−トリフェニレニル基などのトリフェニレニル基、1−コロネニル基などのコロネニル基、4−ビフェニル基、3−ビフェニル基のビフェニル基、オルト−ターフェニル基、メタ−ターフェニル基、パラ−ターフェニル基などのターフェニル基等が挙げられる。これらのうち、化合物の安定性の面からフェニル基、2−ナフチル基、1−アントラニル基、9−フェナントリル基、9−アントラニル基、4−ビフェニル基、3−ビフェニル基が好ましく、化合物の精製のし易さからフェニル基、2−ナフチル基、3−ビフェニル基が特に好ましい。
Ar1が有していてもよい置換基としての炭素数3〜20の芳香族複素環基の例としては、2−チエニル基などのチエニル基、2−フリル基などのフリル基、2−イミダゾリル基などのイミダゾリル基、9−カルバゾリル基などのカルバゾリル基、2−ピリジル基などのピリジル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基などのトリアジン−イル基等が挙げられる。中でも9−カルバゾリル基が化合物の安定性の面から好ましい。
Ar1が有していてもよい置換基としての炭素数1〜20のアルキルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
Ar1が有していてもよい置換基としての炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、9−アントラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基等が挙げられる。
Ar1が有していてもよい置換基としての炭素数1〜20のアルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
Ar1が有していてもよい置換基としての炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、9−アントラニルチオ基、2−チエニルチオ基等が挙げられる。
Ar1がこれらの置換基を有する場合、その置換位置には特に制限はないが、例えばAr1がフェニル基の場合、キノリン骨格への置換位置に対してパラ位またはメタ位であることが好ましい。
<R1〜R4、m、r、s、pについて>
式(1)中のR1は、キノリン環に結合する置換基であり、mはキノリン環に置換するR1の数を表す。mは0以上5以下、好ましくは0以上2以下、特に好ましくは0以上1以下の整数であり、mが0とは、R1がキノリン環に置換しないことを意味する。また、mが2以上のとき、キノリン環に置換する複数のR1は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中のR2は、カルバゾール環(カルバゾール環を構成する一方のベンゼン環)に結合する置換基であり、rはカルバゾール環に置換するR2の数を表す。rは0以上4以下、好ましくは0以上1以下の整数であり、rが0とは、R2がカルバゾール環に置換しないことを意味する。また、rが2以上のとき、カルバゾール環に置換する複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中のR3は、カルバゾール環(カルバゾール環を構成する他方のベンゼン環)に結合する置換基であり、sはカルバゾール環に置換するR3の数を表す。sは0以上4以下、好ましくは0以上1以下の整数であり、sが0とは、R3がカルバゾール環に置換しないことを意味する。また、sが2以上のとき、カルバゾール環に置換する複数のR3は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中のR4は、カルバゾール環が置換したベンゼン環に結合する置換基であり、pはベンゼン環に置換するR4の数を表す。pは0以上4以下、好ましくは0以上2以下、特に好ましくは0以上1以下の整数であり、pが0とは、R4がベンゼン環に置換しないことを意味する。また、pが2以上のとき、ベンゼン環に置換する複数のR4は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中のR1〜R4は、各々独立に炭素数50以下の有機基を表し、これらは置換基を有していてもよい。R1〜R4の有機基の炭素数は、置換基を有する場合はその置換基も含めて通常50以下であり、好ましくは30以下である。
R1〜R4の有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基、シアノ基が挙げられる。R1〜R4としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が、化合物の安定性の面から好ましく、芳香族炭化水素基が特に好ましい。
R1〜R4の有機基としての炭素数1〜20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基、オクタデシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基である。これらのうち、メチル基、エチル基が原料の入手しやすさ、安価さなどから好ましく、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が非極性溶媒に高い溶解性を持つために好ましい。
R1〜R4の有機基としての炭素数6〜25の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基、9−フェナンチル基、3−フェナンチル基などのフェナンチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基などのアントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基などのナフタセニル基、1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基などのクリセニル基、1−ピレニル基などのピレニル基、1−トリフェニレニル基などのトリフェニレニル基、1−コロネニル基などのコロネニル基等が挙げられる。これらのうち、化合物の安定性の面からフェニル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、9−アントリル基、9−フェナントリル基が好ましく、化合物の精製のし易さからフェニル基、2−ナフチル基が特に好ましい。
R1〜R4の有機基としての炭素数3〜20の芳香族複素環基の例としては、2−チエニル基などのチエニル基、2−フリル基などのフリル基、2−イミダゾリル基などのイミダゾリル基、9−カルバゾリル基などのカルバゾリル基、2−ピリジル基などのピリジル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基などのトリアジン−イル基等が挙げられる。中でも9−カルバゾリル基が化合物の安定性の面から好ましい。
R1〜R4の有機基としての炭素数1〜20のアルキルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基が溶媒に対する溶解性向上と高いガラス転移温度の面から好ましい。
R1〜R4の有機基としての炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アントラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基等が挙げられる。中でも、フェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基、2−ナフチルオキシ基が溶媒に対する溶解性向上の面から好ましく、3−フェノキシフェノキシ基は特に好ましい。
R1〜R4の有機基としての炭素数1〜20のアルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。中でも、メチルチオ基、エチルチオ基が溶媒に対する溶解性向上と高いガラス転移温度の面から好ましい。
R1〜R4の有機基としての炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、9−アントラニルチオ基、2−チエニルチオ基等が挙げられる。中でも、フェニルチオ基が溶媒に対する溶解性向上の面から好ましい。
これらの有機基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては、前述のAr1の置換基として例示したものが挙げられる。
<L1について>
式(1)中のL1は単結合もしくは置換基を有していてもよい炭素数25以下の芳香環基を表す。炭素数25以下の芳香環基の具体例としては、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、炭素数3〜25の芳香族複素環基が挙げられ、特に、芳香族炭化水素基が化合物の安定性の面から好ましい。
L1の炭素数6〜25の芳香族炭化水素基の例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基などのフェニレン基、1,6−ナフチレン基などのナフチレン基、3,9−フェナンチレン基などのフェナンチレン基、2,6−アントラニレン基、9、10−アントラニレン基などのアントラニレン基、1、6−ピレニレン基などのピレニレン基、2,7−トリフェニレニレン基などのトリフェニレニレン基、4,4’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、4,3’−ビフェニレン基などのビフェニレン基等が挙げられ、化合物の安定性の面から1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、4,3’−ビフェニレン基、1,6−ナフチレン基が好ましく、化合物の溶媒に対する溶解性の面から1,3−フェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、1,6−ナフチレン基が特に好ましい。
L1の炭素数3〜25の芳香族複素環基の例としては、2,5−チエニレン基などのチエニレン基、2,5−フリレン基などのフリレン基、2,6−ピリジレン基などのピリジレン基、2,6−キノリレン基などのキノリレン基等が挙げられる。中でも2,6−ピリジレン基、2,6−キノリレン基が化合物の安定性の面から好ましい。
[3]式(2)で表されるキノリン系化合物
前記式(1)で表されるキノリン系化合物の中でも、特に下記式(2)で表されるキノリン系化合物が、各種溶媒への溶解度が向上するため好ましい。これは、キノリン環の置換基が非対称となるように設計したことにより、有機溶媒への溶解度が向上したものと推測される。
(式(2)中、Ar11は式(1)におけるAr1と同義である。R12〜R14およびR22〜R24は、各々独立に置換基を有していてもよい炭素数50以下の有機基を表す。L11およびL12は、各々独立に単結合または置換基を有していてもよい炭素数25以下の芳香環基を表す。p1、r1、s1、p2、r2およびs2は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。)
<R12〜R14およびR22〜R24について>
式(2)中のR12〜R14およびR22〜R24は、各々独立に置換基を有していてもよい炭素数50以下の有機基を表す。R12〜R14およびR22〜R24の具体例、好ましい例およびその有していてもよい置換基は、前記R1〜R4の具体例、好ましい例およびその置換基と同じである。
<L11およびL12について>
式(2)中のL11およびL12は、各々独立に単結合または置換基を有していてもよい炭素数25以下の芳香環基を表す。L11およびL12の具体例、好ましい例およびその有していてもよい置換基は、上記L1の具体例、好ましい例およびその置換基と同じである。
L11およびL12は、同一であっても異なっていてもよいが、異なっている方が化合物の溶媒に対する溶解度を高めるという点で好ましい。
[4]式(3)で表されるキノリン系化合物
前記式(2)で表されるキノリン系化合物において、好ましい態様である、L
11およびL
12が異なるキノリン系化合物としては、特に下記式(3)で表されるキノリン系化合物が好ましい。
(式(3)中、Ar11、L11、R12〜R14、R22〜R24、p1、r1、s1、p2、r2およびs2は、それぞれ式(2)におけるものと同義である。L’−環Bは式(2)におけるL12に該当し、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、L’は単結合または置換基を有していてもよい炭素数19以下の芳香環基を表す。)
L’は、環Bのベンゼン環との組み合わせにおいて、上記式(2)におけるL12とその具体例、好ましい例およびその有していてもよい置換基は同様である。
L’としては特に1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などのフェニレン基および単結合が好ましく、単結合がより好ましい。この場合において、L11としては1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などのフェニレン基および単結合が好ましく、単結合がより好ましい。
式(3)において、カルバゾール環の窒素原子に置換しているベンゼン環へのL11の置換位置は、当該ベンゼン環のカルバゾール環への置換位置から3位、4位であることが好ましい。
また、環BへのL’の置換位置は、環Bのキノリン環への置換位置から3位、4位であることが好ましい。
また、カルバゾール環の窒素原子に置換しているベンゼン環へのL’の置換位置は、当該ベンゼン環のカルバゾール環への置換位置から3位、4位であることが好ましい。
[5]分子量について
本発明のキノリン系化合物の分子量の上限は、通常7000以下であり、化合物の精製の容易さを考えた場合、好ましくは5000以下であり、溶媒に対する溶解性を考慮した場合特に好ましくは3000以下、昇華精製による高純度化を考慮した場合、最も好ましくは1500以下である。
また、本発明のキノリン系化合物の分子量の下限は、通常100以上であり、化合物の熱的安定性を考慮した場合、好ましくは500以上である。
[6]ガラス転移温度
本発明のキノリン系化合物は、通常100℃以上のガラス転移温度を有するが、耐熱性の観点から120℃以上であることが好ましい。
[7]例示化合物
本発明のキノリン系化合物の具体例を挙げるが、本発明のキノリン系化合物は以下の例示化合物に限定されるものではない。
[8]合成法
式(1)で表される本発明のキノリン系化合物は、置換アミノベンゾフェノンを出発原料として、キノリン環形成、次いで金属触媒を用いたカップリング反応を行うことにより合成することができる。
例えば、キノリン環の2位にリンカーLを介してカルバゾリルフェニル基が置換し、5〜8位にカルバゾリルフェニル基が置換した化合物の場合は、以下のスキームに従って合成することが可能である。
(上記反応式中、Arは芳香環基であり、式(1)におけるAr1に相当する。Lはリンカーであり、式(1)におけるL1に相当する。Xはハロゲン原子またはトリフルオロメタンスルホン酸エステル基を表す。)
以下に上記スキーム中に示した素反応について説明する。
<キノリン環形成反応>
不活性ガス雰囲気下、アミノベンゾフェノン誘導体1モルとアセチル基有する化合物0.75〜10モルを極性または無極性の溶媒に溶解または懸濁させ、酸または塩基性触媒を用い、攪拌しながら0〜150℃の温度を加えることにより、キノリン環を含んだ基質の混合物を得る。この混合物からの基質の精製は、蒸留、濾過、抽出、再結晶、再沈殿、懸濁洗浄、クロマトグラフィーの操作を組み合わせることにより行うことができる。
溶媒としては、基質を溶解させるものであれば特に制限はないが、ヘキサン、シクロヘキサン等の非ベンゼン系無極性溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、酢酸、酪酸、ポリリン酸などの酸性系溶媒等を用いて反応を行うことが好ましく、酢酸等の酸性溶媒が特に好ましい。
<カップリング反応>
フェニルカルバゾールの硼素試薬1モルとキノリン基質を有するハロゲン化物またはトリフルオロメタンスルホン酸エステル試薬0.75〜5モルを、遷移金属元素触媒を用いて、塩基の存在下で無極性または極性溶媒中で反応させることにより、基質がカップリングした混合物を得ることができる。この混合物からの目的物の精製は、蒸留、濾過、抽出、再結晶、再沈殿、懸濁洗浄、クロマトグラフィーの操作を組み合わせることにより行うことができる。
遷移金属元素触媒としては、有機パラジウム触媒、有機ニッケル触媒、有機銅触媒、有機白金触媒、有機ロジウム触媒、有機ルテニウム触媒、有機イリジウム触媒などが挙げられ、反応の簡便さや反応収率の高さから有機パラジウム触媒が好ましい。
塩基は、特に限定はしないが、金属水酸化物、金属塩、有機アルカリ金属試薬などが好ましい。
使用する溶媒としては、反応基質に対して活性である溶媒以外であれば特に限定はしないが、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の非芳香族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、水等を単一または混合して使用することができる。
また、必要であれば反応系に界面活性剤を反応基質に対して1〜100モル%加えることもできる。
[9]キノリン系化合物の用途
本発明のキノリン系化合物は、高い電荷輸送性を有するため、電荷輸送材料として電子写真感光体、有機電界発光素子、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子等に好適に使用できる。例えば、本発明のキノリン系化合物は、有機電界発光素子の発光層において、ドーパント材料、とりわけ赤色燐光発光材料のホスト材料として有用である。
特に、本発明のキノリン系化合物は、種々の溶媒に対する溶解性に優れると共に、非晶質性を有するため、湿式成膜法による薄膜形成が可能であることから、湿式成膜法に適用される有機電界発光素子用材料として好適であり、本発明のキノリン系化合物よりなる有機電界発光素子用材料、或いは本発明のキノリン系化合物を含む有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法により駆動安定性に優れ、かつ低い駆動電圧で駆動可能な有機電界発光素子を製造することができる。
[有機電界発光素子用材料]
本発明の有機電界発光素子用材料は、本発明のキノリン系化合物からなるものであり、好ましくは、トルエンに対して2重量%以上、より好ましくは5重量%以上溶解する。
後述する様に、有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤としては芳香族炭化水素が好ましい。トルエンは、芳香族炭化水素の代表例として挙げており、溶解性を示す指標としている。
本発明の有機電界発光素子用材料のトルエンに対する溶解度が2重量%以上であることにより、湿式成膜法により有機電界発光素子を構成する層を容易に形成することができ好ましい。この溶解度の上限には特に制限はないが、通常50重量%程度である。
[有機電界発光素子用組成物]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、前述の本発明のキノリン系化合物を含むものであり、通常、本発明のキノリン系化合物と溶剤とを含み、更に好ましくは燐光発光材料を含むものであり、有機電界発光素子に使用される。
[1]溶剤
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤としては、溶質である本発明のキノリン系化合物等が良好に溶解する溶剤であれば特に限定されない。
本発明のキノリン系化合物は溶解性が高いため、種々の溶剤が適用可能である。例えば、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;シクロヘキサノン、シクロオクタノン等の脂環を有するケトン;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン;メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環を有するアルコール;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル等が利用できる。これらのうち、水の溶解度が低い点、容易には変質しない点で、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素が好ましい。
有機電界発光素子には、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中の水分の存在は、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
組成物中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシール、乾燥剤の使用、溶剤を予め脱水する、水の溶解度が低い溶剤を使用する等が挙げられる。なかでも、水の溶解度が低い溶剤を使用する場合は、湿式成膜工程中に、溶液膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐことができるため好ましい。この様な観点からは、本実施の形態が適用される有機電界発光素子用組成物は、例えば、25℃における水の溶解度が1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下である溶剤を、組成物中10重量%以上含有することが好ましい。
また、湿式成膜時における組成物からの溶剤蒸発による、成膜安定性の低下を低減するためには、有機電界発光素子用組成物の溶剤として、沸点が100℃以上、好ましくは沸点が150℃以上、より好ましくは沸点が200℃以上の溶剤を用いることが効果的である。また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが必要であり、このためには通常沸点80℃以上、好ましくは沸点100℃以上、より好ましくは沸点120℃以上で、通常沸点270℃未満、好ましくは沸点250℃未満、より好ましくは沸点230℃未満の溶剤を用いることが効果的である。
上述の条件、即ち溶質の溶解性、蒸発速度、水の溶解度の条件を満足する溶剤を単独で用いてもよいが、2種類以上の溶剤を混合して用いることもできる。
[2]発光材料
本発明の有機電界発光素子用組成物は、発光材料を含有することが好ましい。
発光材料とは、本発明の有機電界発光素子用組成物において、主として発光する成分を指し、有機電界発光デバイスにおけるドーパント成分に当たる。即ち、有機電界発光素子用組成物から発せられる光量(単位:cd/m2)の内、通常10〜100%、好ましくは20〜100%、より好ましくは50〜100%、最も好ましくは80〜100%が、ある成分材料からの発光と同定される場合、それを発光材料と定義する。
発光材料としては、公知材料を適用可能であり、蛍光発光材料或いは燐光発光材料を単独若しくは複数を混合して使用できるが、内部量子効率の観点から、好ましくは、燐光発光材料である。
本発明の有機電界発光素子用組成物に使用する場合、この発光材料の最大発光ピーク波長は390〜490nmの範囲にあることが好ましい。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることも、重要である。
青色発光を与える蛍光色素としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素としては、DCM系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体における金属として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記一般式(V)または式(VI)で表される化合物が挙げられる。
MQ(q−j)Q’j (V)
(一般式(V)中、Mは金属を表し、qは上記金属の価数を表す。また、QおよびQ’は二座配位子を表す。jは0、1または2を表す。)
(一般式(VI)中、M
dは金属を表し、Tは炭素または窒素を表す。R
92〜R
95は、それぞれ独立に、置換基を表す。ただし、Tが窒素の場合は、R
94およびR
95は無い。)
以下、まず、一般式(V)で表される化合物について説明する。
一般式(V)中、Mは任意の金属を表し、好ましいものの具体例としては、周期表7ないし11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
また、一般式(V)中の二座配位子QおよびQ’は、それぞれ、以下の部分構造を有する配位子を示す。
Q’として、錯体の安定性の観点から、特に好ましくは、下記のものが挙げられる。
上記Q,Q’の部分構造において、環A1は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。また、環A2は、含窒素芳香族複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
環A1,A2が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
一般式(V)で表される化合物として、さらに好ましくは、下記一般式(Va)、(Vb)、(Vc)で表される化合物が挙げられる。
(一般式(Va)中、M
aはMと同様の金属を表し、wは上記金属の価数を表す。また、環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、環A2は置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
(一般式(Vb)中、M
bはMと同様の金属を表し、wは上記金属の価数を表す。また、環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、環A2は置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
(一般式(Vc)中、M
cはMと同様の金属を表し、wは上記金属の価数を表す。また、jは0、1または2を表す。さらに、環A1および環A1’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。また、環A2および環A2’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
上記一般式(Va)、(Vb)、(Vc)において、環A1および環A1’の基としては、好ましくは、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
また、環A2、環A2’の基としては、好ましくは、例えばピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
更に、一般式(Va)、(Vb)、(Vc)で表される化合物が有していてもよい置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
上記置換基がアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。さらに、置換基がアルケニル基である場合は、その炭素数は通常2以上6以下である。また、置換基がアルコキシカルボニル基である場合は、その炭素数は通常2以上6以下である。さらに、置換基がアルコキシ基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。また、置換基がアリールオキシ基である場合は、その炭素数は通常6以上14以下である。さらに、置換基がジアルキルアミノ基である場合は、その炭素数は通常2以上24以下である。また、置換基がジアリールアミノ基である場合は、その炭素数は通常12以上28以下である。さらに、置換基がアシル基である場合は、その炭素数は通常1以上14以下である。また、置換基がハロアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上12以下である。
なお、これら置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、または、環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基とが結合するかして、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環基としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
中でも、環A1、環A1’、環A2および環A2’の置換基として、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる。
また、一般式(Va)、(Vb)、(Vc)におけるMa,Mb,Mcとして好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金または金が挙げられる。
上記一般式(V)、(Va)、(Vb)または(Vc)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない(以下において、Phはフェニル基を表す。)。
上記一般式(V)、(Va)、(Vb)、(Vc)で表される有機金属錯体の中でも、特に、配位子Qおよび/またはQ’として2−アリールピリジン系配位子、即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、および、これに任意の基が縮合してなるものを有する化合物が好ましい。
また、WO2005/019373号公報に記載の化合物も使用することができる。
次に、前記一般式(VI)で表される化合物について説明する。
一般式(VI)中、Mdは金属を表し、具体例としては、周期表7ないし11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金または金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、一般式(VI)において、R92およびR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
さらに、Tが炭素の場合、R94およびR95は、それぞれ独立に、R92およびR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、前述の如く、Tが窒素の場合はR94およびR95は無い。
また、R92〜R95はさらに置換基を有していてもよい。この場合のさらに有していてもよい置換基には特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。
さらに、R92〜R95は互いに連結して環を形成してもよく、この環が更に任意の置換基を有していてもよい。
一般式(VI)で表される有機金属錯体の具体例(T−1,T−10〜T−15)を以下に示すが、下記の例示化合物に限定されるものではない。なお、以下において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
[3]その他の成分
本発明の有機電界発光素子用組成物中には、前述した溶剤および発光材料以外にも、必要に応じて、各種の他の溶剤を含んでいてもよい。このような他の溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
また、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、2層以上の層を湿式成膜法により積層する際に、これらの層が相溶することを防ぐため、成膜後に硬化させて不溶化させる目的で光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を含有させておくこともできる。
[4]有機電界発光素子用組成物中の材料濃度と配合比
有機電界発光素子用組成物中の本発明のキノリン系化合物、発光材料および必要に応じて添加可能な成分(レベリング剤など)などの固形分濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、最も好ましくは1重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。この濃度が下限を下回ると、薄膜を形成する場合、厚膜を形成するのが困難となり、上限を超えると、薄膜を形成するのが困難となる恐れがある。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物において、発光材料/キノリン系化合物の重量混合比は、通常、0.1/99.9以上であり、より好ましくは0.5/99.5以上であり、更に好ましくは1/99以上であり、最も好ましくは2/98以上で、通常、50/50以下であり、より好ましくは40/60以下であり、更に好ましくは30/70以下であり、最も好ましくは20/80以下である。この比が下限を下回ったり、上限を超えたりすると、著しく発光効率が低下する恐れがある。
[5]有機電界発光素子用組成物の調製方法
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明のキノリン系化合物、発光材料、および必要に応じて添加可能なレベリング剤や消泡剤等の各種添加剤よりなる溶質を、適当な溶剤に溶解させることにより調製される。溶解工程に要する時間を短縮するため、および組成物中の溶質濃度を均一に保つため、通常、液を撹拌しながら溶質を溶解させる。溶解工程は常温で行ってもよいが、溶解速度が遅い場合は加熱して溶解させることもできる。溶解工程終了後、必要に応じて、フィルタリング等の濾過工程を経由してもよい。
[6]有機電界発光素子用組成物の性状、物性等
(水分濃度)
有機電界発光素子を、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いた湿式成膜法により層形成して製造する場合、用いる有機電界発光素子用組成物に水分が存在すると、形成された膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれるため、本発明の有機電界発光素子用組成物中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。また一般に、有機電界発光素子は、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、有機電界発光素子用組成物中に水分が存在した場合、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
具体的には、本発明の有機電界発光素子用組成物中に含まれる水分量は、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下である。
有機電界発光素子用組成物中の水分濃度の測定方法としては、日本工業規格「化学製品の水分測定法」(JIS K0068:2001)に記載の方法が好ましく、例えば、カールフィッシャー試薬法(JIS K0211−1348)等により分析することができる。
(均一性)
本発明の有機電界発光素子用組成物は、湿式成膜プロセスでの安定性、例えば、インクジェット成膜法におけるノズルからの吐出安定性を高めるためには、常温で均一な液状であることが好ましい。常温で均一な液状とは、組成物が均一相からなる液体であり、かつ組成物中に粒径0.1μm以上の粒子成分を含有しないことをいう。
(物性)
本発明の有機電界発光素子用組成物の粘度については、極端に低粘度の場合は、例えば成膜工程における過度の液膜流動による塗面不均一、インクジェット成膜におけるノズル吐出不良等が起こりやすくなり、極端に高粘度の場合は、インクジェット成膜におけるノズル目詰まり等が起こりやすくなる。このため、本発明の組成物の25℃における粘度は、通常2mPa・s以上、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上であり、通常1000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物の表面張力が高い場合は、基板に対する成膜用液の濡れ性が低下する、液膜のレベリング性が悪く、乾燥時の成膜面乱れが起こりやすくなる等の問題が発生する場合があるため、本発明の組成物の20℃における表面張力は、通常50mN/m未満、好ましくは40mN/m未満である。
更に、本発明の有機電界発光素子用組成物の蒸気圧が高い場合は、溶剤の蒸発による溶質濃度の変化等の問題が起こりやすくなる場合がある。このため、本発明の組成物の25℃における蒸気圧は、通常50mmHg以下、好ましくは10mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下である。
[7]有機電界発光素子用組成物の保存方法
本発明の有機電界発光素子用組成物は、紫外線の透過を防ぐことのできる容器、例えば、褐色ガラス瓶等に充填し、密栓して保管することが好ましい。保管温度は、通常−30℃以上、好ましくは0℃以上で、通常35℃以下、好ましくは25℃以下である。
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、基板上に陽極、陰極、およびこれら両極間に設けられた有機層を有するものであって、この有機層に本発明のキノリン系化合物を含有することを特徴とする。該キノリン系化合物を含有する層は、本発明の有機電界発光素子用材料または有機電界発光素子用組成物を用いて形成されることが好ましい。また、本発明のキノリン系化合物を含有する有機層は、発光層であることが好ましい。また、該キノリン系化合物を含有する層に、有機金属錯体がドープされていることが好ましい。この有機金属錯体としては、前記発光材料として例示したものを使用できる。
図1〜7は本発明の有機電界発光素子に好適な構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は発光層、5は電子注入層、6は陰極を各々表す。
[1]基板
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[2]陽極
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は発光層側の層(正孔注入層3または発光層4など)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などを用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすること
も可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
[3]正孔注入層
正孔注入層3は陽極2から発光層4へ正孔を輸送する層であるため、正孔注入層3には正孔輸送性化合物を含むことが好ましい。
正孔注入層3では、電気的に中性の化合物から電子が一つ除かれたカチオンラジカルが、近傍の電気的に中性な化合物から一電子を受容することによって、正孔が移動する。素子非通電時の正孔注入層3にカチオンラジカル化合物が含まれない場合は、通電時に、正孔輸送性化合物が陽極2に電子を与えることにより正孔輸送性化合物のカチオンラジカルが生成し、このカチオンラジカルと電気的に中性な正孔輸送性化合物との間で電子の授受が行われることにより正孔を輸送する。
正孔注入層3にカチオンラジカル化合物が含まれると、陽極2による酸化によって生成する以上の濃度で正孔輸送に必要なカチオンラジカルが存在することになり、正孔輸送性能が向上するため、正孔注入層3にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましい。カチオンラジカル化合物の近傍に電気的に中性な正孔輸送性化合物が存在すると、電子の受け渡しがスムーズに行われるため、正孔注入層3にカチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことがさらに好ましい。
ここで、カチオンラジカル化合物とは、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンからなるイオン化合物であり、移動しやすい正孔(フリーキャリア)を既に有している。
また、正孔輸送性化合物に電子受容性化合物を混合することによって、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物への一電子移動が起こり、上述のカチオンラジカル化合物が生成する。このため、正孔注入層3に正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことが好ましい。
以上の好ましい材料についてまとめると、正孔注入層3に正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがさらに好ましい。また、正孔注入層3にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことがさらに好ましい。
さらに、必要に応じて、正孔注入層3には電荷のトラップになりにくいバインダー樹脂や、塗布性改良剤を含んでいてもよい。
但し、正孔注入層3として、電子受容性化合物のみ、或いは電子受容性化合物と正孔輸送性化合物を用いて湿式成膜法によって陽極2上に成膜し、その上から直接、本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布、または蒸着によって積層することも可能である。この場合、本発明の有機電界発光素子用組成物の一部または全部が電子受容性化合物と相互作用することによって、図5〜7に示す如く、正孔注入性に優れた正孔輸送層10が形成される。
(正孔輸送性化合物)
正孔輸送性化合物としては、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。
正孔輸送性化合物の例としては、本発明のキノリン系化合物の他、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
芳香族アミン化合物の中でも、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型有機化合物)が更に好ましい。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記一般式(VII)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
(一般式(VII)中、Ar
21,Ar
22は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar
23〜Ar
25は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar
21〜Ar
25のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
(上記各式中、Ar
31〜Ar
41は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、または置換基を有していてもよい芳香族複素環由来の1価または2価の基を表す。R
101およびR
102は、各々独立して、水素原子または任意の置換基を表す。))
Ar21〜Ar25およびAr31〜Ar41としては、任意の芳香族炭化水素環または芳香族複素環由来の、1価または2価の基が適用可能である。これらは各々同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、任意の置換基を有していてもよい。
その芳香族炭化水素環としては、5または6員環の単環または2〜5縮合環が挙げられる。具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
また、その芳香族複素環としては、5または6員環の単環または2〜4縮合環が挙げられる。具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
また、Ar23〜Ar25、Ar31〜Ar35、Ar37〜Ar40としては、上に例示した1種類または2種類以上の芳香族炭化水素環および/または芳香族複素環由来の2価の基を2つ以上連結して用いることもできる。
Ar21〜Ar41の芳香族炭化水素環および/または芳香族複素環由来の基は、更に置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、次の置換基群Dから選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
[置換基群D]
メチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上、通常20以下、好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上、通常30以下、好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常25以下、好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上、通常8以下、好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下の芳香族炭化水素環基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常28以下、好ましくは17以下の芳香族複素環基。
Ar21、Ar22としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基が更に好ましい。
また、Ar23〜Ar25としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基が更に好ましい。
R101、R102としては、水素原子または任意の置換基が適用可能である。これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基の種類は、特に制限されないが、適用可能な置換基を例示するならば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。これらの具体例としては、前記の置換基群Dにおいて例示した各基が挙げられる。
他の芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記一般式(VIII)および/または一般式(IX)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
(一般式(VIII)、(IX)中、Ar
45,Ar
47およびAr
48は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar
44およびAr
46は各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。また、Ar
45〜Ar
48のうち、同一のN原子に結合する2つの基は互いに結合して環を形成してもよい。R
111〜R
113は各々独立して、水素原子または任意の置換基を表す。)
Ar45,Ar47,Ar48およびAr44、Ar46の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例および好ましい置換基の例は、それぞれ、Ar21,Ar22およびAr23〜Ar25と同様である。R111〜R113はとして好ましくは水素原子または[置換基群D]に記載されている置換基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基である。
一般式(VIII)および/または(IX)で表される繰り返し単位を含む芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、WO2005/089024号公報に記載のものが挙げられ、その好適例も同様であるが、何らそれらに限定されるものではない。
また、湿式成膜法により正孔注入層を形成する場合には、種々の溶剤に溶解し易い正孔輸送性化合物が好ましい。芳香族三級アミン化合物としては、例えば、ビナフチル系化合物(特開2004−014187)および非対称1,4−フェニレンジアミン化合物(特開2004−026732)が好ましい。
また、従来、有機電界発光素子における正孔注入・輸送性の薄膜精製材料として利用されてきた芳香族アミン化合物の中から、種々の溶剤に溶解し易い化合物を適宜選択してもよい。正孔注入層の正孔輸送性化合物に適用可能な芳香族アミン化合物としては、例えば、有機電界発光素子における正孔注入・輸送性の層形成材料として利用されてきた、従来公知の化合物が挙げられる。例えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報);4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン化合物(特開平5−234681号公報);トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン化合物(米国特許第4,923,774号);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン化合物(米国特許第4,764,625号);α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ジ(p−トリル)アミノフェニル)−p−キシレン(特開平3−269084号公報);分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報);ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報);エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開平4−264189号公報);スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報);チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結した化合物(特開平4−304466号公報);スターバースト型芳香族トリアミン化合物(特開平4−308688号公報);ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報);フルオレン基で3級アミンを連結した化合物(特開平5−25473号公報);トリアミン化合物(特開平5−239455号公報);ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報);N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報);フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報);ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報);ヒドラゾン化合物(特開平2−311591号公報);シラザン化合物(米国特許第4,950,950号公報);シラナミン誘導体(特開平6−49079号公報);ホスファミン誘導体(特開平6−25659号公報);キナクリドン化合物等が挙げられる。これらの芳香族アミン化合物は、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
また、正孔注入層の正孔輸送性化合物に適用可能なフタロシアニン誘導体またはポルフィリン誘導体の好ましい具体例としては、ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィリン、29H,31H−フタロシアニン銅(II)、フタロシアニン亜鉛(II)、フタロシアニンチタン、フタロシアニンオキシドマグネシウム、フタロシアニン鉛、フタロシアニン銅(II)、4,4’,4”,4'''−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン等が挙げられる。
また、正孔注入層の正孔輸送性化合物として適用可能なオリゴチオフェン誘導体の好ましい具体例としては、α−ターチオフェンとその誘導体、α−セキシチオフェンとその誘導体、ナフタレン環を含有するオリゴチオフェン誘導体(特開6−256341)等が挙げられる。
また、本発明における正孔輸送性化合物として適用可能なポリチオフェン誘導体の好ましい具体例としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)等が挙げられる。
なお、これらの正孔輸送性化合物の分子量は、高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合性化合物)の場合を除いて、通常9000以下、好ましくは5000以下、また、通常200以上、好ましくは400以上の範囲である。正孔輸送性化合物の分子量が高過ぎると合成および精製が困難であり好ましくない一方で、分子量が低過ぎると耐熱性が低くなるおそれがありやはり好ましくない。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用するのが好ましい。
(電子受容性化合物)
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
例としては、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。
上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物が好ましく、種々の溶剤に可溶で湿式塗布に適用可能である点で有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物が好ましい。
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、WO2005/089024号公報に記載のものが挙げられ、その好適例も同様であり、例えば下記構造式で表される化合物(A−2)が挙げられるが、何らそれらに限定されるものではない。
(カチオンラジカル化合物)
カチオンラジカル化合物とは、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンからなるイオン化合物である。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
カチオンラジカルは、正孔輸送性化合物に前述した化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましく、正孔輸送性化合物としてさらに好ましい化合物から一電子取り除いた化学種であることが非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、溶解性などの点からさらに好ましい。
カチオンラジカル化合物は、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンからなるカチオンイオン化合物が生成する。
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)、即ち、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、または、電気化学的に酸化することによっても生成する。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより、高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
正孔注入層3は、湿式成膜法または真空蒸着法により陽極2上に形成される。
陽極2として一般的に用いられるITO(インジウム・スズ酸化物)は、その表面粗さが10nm程度の粗さ(Ra)を有するのに加えて、局所的に突起を有することが多く、短絡欠陥を生じ易いという問題があった。陽極2の上に形成される正孔注入層3は湿式成膜法により形成することは、真空蒸着法より形成する場合と比較して、これら陽極表面の凹凸に起因する、素子の欠陥の発生を低減する利点を有する。
湿式成膜法による層形成の場合は、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種または2種以上の所定量を、必要により電荷のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤を添加して、溶剤に溶解させて、塗布溶液を調製し、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等の湿式成膜法により陽極上に塗布し、乾燥して、正孔注入層3を形成させる。
湿式成膜法による層形成のために用いられる溶剤としては、前述の各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を溶解することが可能な溶剤であれば、その種類は特に限定されないが、正孔注入層に用いられる各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を失活させる恐れのある、失活物質または失活物質を発生させるものを含まないものが好ましい。
これらの条件を満たす好ましい溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤およびエステル系溶剤が挙げられる。具体的には、エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
上述のエーテル系溶剤およびエステル系溶剤以外に使用可能な溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。また、これらの溶剤のうち1種または2種以上を、上述のエーテル系溶剤およびエステル系溶剤のうち1種または2種以上と組み合わせて用いてもよい。特に、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤は、電子受容性化合物およびカチオンラジカル化合物を溶解する能力が低いため、エーテル系溶剤およびエステル系溶剤と混合して用いることが好ましい。
塗布溶液中における溶剤の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50%重量以上、また、通常99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、更に好ましくは99.9重量%以下の範囲である。なお、2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
真空蒸着法による層形成の場合には、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱し蒸発させて正孔注入層形成に用いることもできる。
このようにして形成されるよい正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
なお、正孔注入層3は、図4に示す如く、これを省略していてもよい。
[4]発光層
正孔注入層3の上には通常発光層4が設けられる。発光層4は発光材料を含む層であり、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極6から電子注入層5を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層4は発光材料(ドーパント)と1種または2種以上のホスト材料を含むことが好ましく、発光層4は本発明のキノリン系化合物をホスト材料として含むことが更に好ましく、真空蒸着法で形成していてもよいが、本発明の有機電界発光素子用組成物を用い、湿式成膜法によって作製された層であることが特に好ましい。
ここで、湿式成膜法とは、上記溶剤を含む本発明の有機電界発光素子用組成物を、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法により塗布して成膜するものである。
なお、発光層4は、本発明の性能を損なわない範囲で、他の材料、成分を含んでいてもよい。
一般に有機電界発光素子において、同じ材料を用いた場合、電極間の膜厚が薄い方が、実効電界が大きくなる為、注入される電流が多くなるので、駆動電圧は低下する。その為、電極間の総膜厚は薄い方が、有機電界発光素子の駆動電圧は低下するが、あまりに薄いと、ITO等の電極に起因する突起により短絡が発生する為、ある程度の膜厚が必要となる。
本発明においては、発光層4以外に、正孔注入層3および後述の電子輸送層7等の有機層を有する場合、発光層4と正孔注入層3や電子輸送層7等の他の有機層とを合わせた総膜厚は通常30nm以上、好ましくは50nm以上であり、更に好ましくは100nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下であり、更に好ましくは300nm以下である。また、発光層4以外の正孔注入層3や後述の電子注入層5の導電性が高い場合、発光層4に注入される電荷量が増加する為、例えば正孔注入層3の膜厚を厚くして発光層4の膜厚を薄くし、総膜厚をある程度の膜厚を維持したまま駆動電圧を下げることも可能である。
よって、発光層4の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上で、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。なお、本発明の素子が、陽極および陰極の両極間に、発光層4のみを有する場合の発光層4の膜厚は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、通常500nm以下、好ましくは300nm以下である。
[5]電子注入層
電子注入層5は陰極6から注入された電子を効率よく発光層4へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行うには、電子注入層5を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましく、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属が用いられる。
電子注入層5の膜厚は0.1〜5nmが好ましい。
また、陰極6と発光層4または後述の電子輸送層7との界面にLiF、MgF2、Li2O、CsCO3等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年;SID 04 Digest,154頁)。
更に、後述するバソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は通常、5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子注入層5は、発光層4と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により発光層4上に積層することにより形成される。真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼまたは金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、るつぼまたは金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼまたは金属ボートと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
アルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行う。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼおよびディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼおよびディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
このとき、電子注入層5の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
なお、電子注入層5は、図5,6に示す如く、これを省略していてもよい。
[6]陰極
陰極6は、発光層側の層(電子注入層5または発光層4など)に電子を注入する役割を果たす。陰極6として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極6の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
[7]その他の構成層
以上、図1に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子における陽極2および陰極6と発光層4との間には、その性能を損なわない限り、上記説明にある層の他にも、任意の層を有していてもよく、また発光層4以外の任意の層を省略してもよい。
有していてもよい層としては例えば、電子輸送層7が挙げられる。電子輸送層7は素子の発光効率をさらに向上させることを目的として、図2に示す如く、発光層4と電子注入層5との間に設けられる。
電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極6から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極6または電子注入層5からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−または5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層7の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
電子輸送層7は、正孔注入層3と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により発光層4上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
また、正孔輸送層10を有することが本発明において好ましく、正孔輸送層10には、前記正孔注入層の正孔輸送性化合物として例示した化合物を用いることもできる。また、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン等の高分子材料を使用してもよい。正孔輸送層10は、これらの材料を湿式成膜法または真空蒸着法により正孔注入層上に積層することにより形成される。このようにして形成される正孔輸送層10の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは30nm以上である。但し、通常、300nm以下、好ましくは100nm以下である。
また、特に、発光物質として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合、図3に示す如く、正孔阻止層8を設けることも効果的である。正孔阻止層8は正孔と電子を発光層4内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。即ち、正孔阻止層8は、発光層4から移動してくる正孔が電子輸送層7に到達するのを阻止することで、発光層4内で電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、電子輸送層7から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送する役割がある。
正孔阻止層8は、陽極2から移動してくる正孔を陰極6に到達するのを阻止する役割と、陰極6から注入された電子を率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物により、発光層4の上に、発光層4の陰極6側の界面に接するように積層形成される。
正孔阻止層8を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
このような条件を満たす正孔阻止層材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)が挙げられる。
さらに、WO2005/022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も正孔阻止材料として好ましい。
正孔阻止層8の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上で、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
正孔阻止層8も正孔注入層3と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
電子輸送層7および正孔阻止層8は必要に応じて、適宜設ければよく、1)電子輸送層のみ、2)正孔阻止層のみ、3)正孔阻止層/電子輸送層の積層、4)用いない、等、用法がある。また、図5に示す如く、電子注入層5を省略して正孔阻止層8と電子輸送層7を積層しても良く、また、図6に示す如く、電子輸送層7のみでもよい。
正孔阻止層8と同様の目的で、図4に示す如く、正孔注入層3と発光層4の間に電子阻止層9を設けることも効果的である。電子阻止層9は、発光層4から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層4内で正孔との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層4の方向に輸送する役割がある。
電子阻止層9に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。また、発光層4を湿式成膜法で形成する場合、電子阻止層9も湿式成膜法で形成することが、素子製造が容易となるため、好ましい。
このため、電子阻止層9も湿式成膜適合性を有することが好ましく、このような電子阻止層9に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(WO2004/084260号公報記載)等が挙げられる。
なお、図1とは逆の構造、即ち、基板1上に陰極6、電子注入層5、発光層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2〜図7に示した前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
さらには、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV2O5等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
[有機ELディスプレイ]
本発明の有機ELディスプレイは、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機ELディスプレイの型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイを形成することができる。
[有機EL照明]
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<中間体1の合成>
2−アミノベンゾフェノン(10.0g,50.7mmol)の塩化メチレン(100mL)溶液を−5℃まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(9.0g,50.6mmol)の塩化メチレン(60mL)溶液を0℃を超えない範囲で緩やかに滴下した。滴下終了後、反応混合液を室温まで上昇させ、室温で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応混合液を精製水にあけ、塩化メチレンで抽出した。有機層を精製水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下に溶媒を留去し、残渣をヘキサン−エタノールにより再結晶を行い、中間体1(12g)を得た。
<中間体2の合成>
中間体1(7.0g,25.3mmol)、m−ブロモアセトフェノン(5.05g,25.3mmol)の酢酸(30mL)溶液に濃硫酸(0.2mL)を添加して、還流させながら6時間攪拌した。室温まで放冷後、反応混合物を水にあけ、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下に溶媒を留去し、残渣をエタノールにより再結晶を行い中間体2(4.23g)を得た。
<化合物1の合成>
窒素雰囲気下、中間体2(2.0g,4.55mmol)、3−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸(2.88g,10mmol)のジメトキシエタン(20mL)溶液に、2M−炭酸ナトリウム水溶液(10mL)を加え、10分間窒素を通して脱気を行った。混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(262mg,0.228mmol)を添加し、還流させながら8時間攪拌した。反応終了後、混合物を水にあけ、トルエンで抽出した。有機層を精製水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物1(1.39g)を得た。
このものの質量分析値は763(M+)であり、ガラス転移温度は137℃であった。
窒素を通じた500mL四つ口フラスコに、削状マグネシウム(1.3g,55mmol)、テトラヒドロフラン50mLを入れ、4−ブロモビフェニル(11.6g,50mmol)のテトラヒドロフラン溶液(100mL)を滴下し、90℃で加熱しながら1時間攪拌した。その溶液を、2−アミノ−5−ブロモベンゾニトリル(10.8g,55mmol)のテトラヒドロフラン溶液(100mL)に滴下し、室温で1時間攪拌を行った後、氷浴で冷却しながら1N塩酸を加え反応を停止させた。反応液に水を加え析出した固体を濾取し、中間体3(13.4g)を黄色固体として得た。
窒素気流下、中間体3(5.0g,14mmol)、3−ブロモアセトフェノン(2.8g,14mmol)の酢酸(50mL)溶液を室温で5分攪拌し、濃硫酸(0.5mL)を滴下した。反応混合物を140℃で加熱しながら4時間攪拌し、室温まで放冷後、水にあけ、析出した固体を濾取した。得られた固体をクロロホルム−エタノールで再結晶し、中間体4(4.83g)を黄色針状晶として得た。
窒素を通じた200mL四つ口フラスコに、中間体4(5.0g,9.7mmol)、3−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸(5.6g,23mmol)を入れ、トルエン34mL、エタノール17mL、および2M炭酸ナトリウム水溶液17mLを入れた後に、10分間窒素バブリングを行った。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(672mg,582μmol)を加え、140℃で3時間攪拌を行った。その後、放冷し、水50mLを加えた後にトルエン(50mL×3回)で抽出し、得られたトルエン層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した。このトルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、黄色固体を得た。得られた黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル120mL、ヘキサン/ジクロロメタン=5/1)で精製し、さらに昇華精製を行い、化合物2(5.0g)を淡黄色固体として得た。
このものの質量分析値は839(M+)であった(理論値C63H41N3=839.33)。
窒素を通じた100mL四つ口フラスコに、削状マグネシウム(2.39g,98.3mmol)、テトラヒドロフラン40mLを入れ、ブロモベンゼンのテトラヒドロフラン溶液(2.6M,131mmol)を滴下し、90℃で加熱しながら1時間攪拌した。その後、2−アミノ−4−クロロベンゾニトリルのテトラヒドロフラン溶液(1.6M,65.5mmol)を滴下し、1時間攪拌を行った後、氷浴で冷却しながら1N塩酸50mLを加え反応を停止させた。反応液に水50mLを加え析出した固体を濾取し、中間体5(6.85g)を黄色固体として得た。
窒素を通じた100mL四つ口フラスコに、中間体5(6.84g,29.5mmol)を入れ、酢酸30mLを入れた後に3−ブロモアセトフェノン(4.71mL,35.4mmol)を滴下し、140℃で加熱しながら4時間攪拌した。その後、放冷し、反応液に水50mLを加え固体を析出させた。得られた黄色固体をクロロホルムに溶解し、ヘキサンを加え再結晶し、中間体6(2.59g)を黄色針状晶として得た。
窒素を通じた50mL二つ口フラスコに、中間体6(500mg,1.26mmol)、3−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸(900mg,3.16mmol)を入れ、トルエン10mL、エタノール5mL、および2M炭酸ナトリウム水溶液5mLを入れた後に、10分間窒素バブリングを行った。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(51mg,63μmol)を加え、140℃で3時間攪拌を行った。その後、放冷し、水15mLを加えた後にトルエン(20mL×3回)で抽出し、得られたトルエン層を飽和食塩水(50mL)で洗浄した。このトルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、黄色固体を得た。得られた黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100mL、ヘキサン/ジクロロメタン=5/1)で精製し、さらに昇華精製を行い、化合物3(5.0g)を淡黄色固体として得た。
このものの質量分析値は763(M+)であった(理論値C57H37N3=763.92)。
[実施例4:素子の作製]
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜2を150nm堆積したもの(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
次いで、正孔注入層3として、ポリマー正孔注入材料HI−I02A(トリフェニルアミン構造を有する芳香族アミン系ポリマー及びホウ素系電子受容性化合物)をスピンコート法により、膜厚30nmで塗布後、オーブン中、230℃で乾燥させた。
次いで、この正孔注入層3を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置し、真空装置内を1.0×10−3Pa以下の真空度に減圧した後、以下の蒸着条件で正孔注入層3上に、正孔輸送層10(下記化合物HTR−1、蒸着速度0.1nm/秒、膜厚40nm)、発光層4(ホスト材料:実施例1で合成した化合物1、ドーパント材料:下記化合物D1、ホストとドーパントの重量百分率:ホスト94%、ドーパント6%、蒸着速度0.1nm/秒、膜厚30nm)、電子輸送層7(下記化合物ET−1、蒸着速度0.1nm/秒、膜厚30nm)、電子注入層5(フッ化リチウム、蒸着速度0.01nm/秒、膜厚0.5nm)、陰極6(アルミニウム、蒸着速度0.1nm/秒、膜厚80nm)を順次積層した。
この素子の効率は5.5lm/Wであり、1000cd/m2で駆動させた場合の素子半減寿命は8000hrであった。
この素子について、輝度が80%となる際の寿命を測定し、比較例1の素子の寿命を1としたときの相対比(輝度80%寿命のCBP比)を算出したところ7であった。結果を表1に示す。
[実施例5:素子の作製]
発光層4において、ホスト材料として用いた化合物1に代えて、実施例2で合成した化合物2を用いた他は実施例4と同様にして有機電界発光素子を作製した。
この素子について、輝度が80%となる際の寿命を測定し、比較例1の素子の寿命を1としたときの相対比(輝度80%寿命のCBP比)を算出したところ12であった。結果を表1に示す。
[比較例1:素子の作製]
発光層4において、ホスト材料として用いた化合物1に代えて、以下の構造式に示す化合物(CBP)を用いた他は実施例4と同様にして有機電界発光素子を作製した。
この素子について、輝度が80%となる際の寿命を測定し、これを1とした。結果を表1に示す。
[比較例2:素子の作製]
発光層4において、ホスト材料として用いた化合物1に代えて、以下の構造式に示す化合物(CPMQ)を用いた他は実施例4と同様にして有機電界発光素子を作製した。
化合物(CPMQ)は素子上で徐々に結晶化したため、輝度が80%となる際の寿命は測定できなかった。