JP6520793B2 - 表示装置に用いるフィルムおよびそれを用いた表示装置 - Google Patents

表示装置に用いるフィルムおよびそれを用いた表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、表示装置に用いるフィルム及びそれを用いた表示装置に関する。
波長380nm〜495nm範囲における青色光は、可視光の中で最も強いエネルギーを持つ。そのため、該青色光を視認することによって、眼精疲労やドライアイなどのVDT症候群やサーカディアンリズムに影響を与えることが最近報告されている。
テレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンといった表示装置は多数普及しており、該表示装置から発する青色光を視認する機会が多数発生している。特に最近では、青色光波長の光強度が強いLED光源を持つ表示装置の普及が増えている。
本問題に対して、吸収による青色光カット(特許文献1)や反射による青色光カット(特許文献2)が提案されている。
特開2015−116713号公報 特開2015−27746号公報
本発明は、表示装置の光源から発せられる青色光のみを反射によってシャープにカットするフィルムでありながら、外光の青色反射による表示画面の色付き、ぎらつきを抑制した表示装置に用いるフィルムを提供することを課題としている。
しかし、吸収による青色光カットについては、染料を用いて青色光カットする方法では青色波長領域を吸収する材料は非常に高価である課題があり、顔料を用いて青色光カットする方法では光の散乱により透明性が損なわれる課題がある、また、青色波長領域のみをシャープに吸収することは困難であり、波長500nm以上の波長に渡るブロードな吸収が発生し、色付きの発生や透明性が損なわれる恐れがある。そのため高濃度の添加が難しく、その結果、青色光のカット率が低くなる課題がある。
また、反射による青色光カット方法の一つとして、屈折率の異なる無機材料を交互に積層する方法があるが、本手法では低コスト化の観点から積層数を少なくするために、屈折率差の大きい材料が選択される。しかし、屈折率差が大きくなると反射率スペクトルの半値幅が広くなるため、460nm前後に強いピークを持つLED光源の青色光をカットしようとすると、波長500nm以上の光もカットしてしまい、色付きの発生や透明性が損なわれる課題がある。一方、特許文献2で提案されているような有機材料を交互に数10層以上積層する方法では、屈折率差が小さいため、反射率スペクトルの半値幅が小さくなり、青色光のみをシャープにカットすることができる。しかし、反射による青色光カットは、表示装置からの青色光をカットする一方で、外光の青色光も反射するため、外光の青色反射を視認することによる、表示画面の色付き、ぎらつき等の課題がある。
上記課題を解決するために本発明は次のような構成を有する。
少なくとも青色波長を含む直線偏光を射出する光源とフィルムを有する表示装置であって、該光源と該フィルムが下記(1)式を満たす表示装置に用いられる、下記式(2)および(3)を満足するフィルム。
0°≦|Φ1−Φ2|<45° ・・・(1)
Rmax≧20% ・・・(2)
Rmax−Rmin>5% ・・・(3)
(ここで、Φ1はフィルム面内においてRmaxをとる方位角であり、Φ2は表示装置から射出された直線偏光の方位角である。また、Rmaxはフィルムに直線偏光を入射角0°で照射し、フィルムの入射光軸を中心として、フィルム面上の任意の方位角方向を0°とし、180°まで5°間隔で半回転させて測定される、各方位角における波長380nm〜480nmの範囲における平均反射率の最大値であり、RminはΦ1に直交する方位角における波長380nm〜480nmの範囲における平均反射率である。)
本発明によって、表示装置から発せられる青色光のみを反射によってシャープにカットするフィルムでありながら、外光の青色反射による表示画面の色付き、ぎらつきを抑制した表示装置に用いるフィルムを得ることができる。
方位角について説明する図 本発明のフィルムと少なくとも青色波長を含む直線偏光を射出する表示装置の設置関係を説明する図 従来方法の課題について説明する図 本発明の効果について説明する図 本発明の最も高い効果について説明する図 高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率の比に対する、反射率スペクトルの幅を説明する図 少なくとも青色波長を含む直線偏光を射出する液晶表示装置の一例 少なくとも青色波長を含む直線偏光を射出する有機EL表示装置の一例
本発明者らは、少なくとも青色波長を含む直線偏光を射出する光源を有する表示装置に用いるフィルムであって、該フィルムを表示装置の視認側に下記式(1)を満足するように設置して用い、該フィルムが下記式(2)および(3)を満足する、フィルムを用いることで、表示装置から発せられる青色光のみを反射によってシャープにカットしながら、外光の青色反射による表示画面の色付き、ぎらつきの抑制を達成できることを見出した。以下これについて詳説する。
0°≦|Φ1−Φ2|<45° ・・・(1)
Rmax≧20% ・・・(2)
Rmax−Rmin>5% ・・・(3)
(ここで、Φ1はフィルム面内においてRmaxをとる方位角であり、Φ2は表示装置の光源から射出される直線偏光の方位角である。また、Rmaxはフィルムに直線偏光を入射角0°で照射し、フィルムの入射光軸を中心として、フィルム面上の任意の方位角方向を0°とし、180°まで5°間隔で半回転させて測定される、各方位角における波長380nm〜480nmの範囲における平均反射率のうちの最大値であり、RminはΦ1に直交する方位角における波長380nm〜480nmの範囲における平均反射率である。)
方位角について図を用いて説明する。図1はフィルムまたは表示装置の表面の上面図である。ここで図1中の1及び2はそれぞれ直角の関係を持つ任意の方向である。フィルムに入射角度0°で入射または表示装置から出射角度0°で出射される直線偏光の振動方向を4とすると、方位角とは、直線偏光の振動面4と方向2とで挟まれた角度5のことである。
本発明のフィルムと少なくとも青色波長を含む直線偏光を射出する光源を有する表示装置の設置関係を図2に示す。本発明のフィルム6は、表示装置に用いられる際、表示装置8に対して視認側に設置し、フィルム面内においてRmaxを取る方位角(Φ1)7’を、表示装置から射出された直線偏光の方位角(Φ2)9’に対して式(1)を満足するように設置する。好ましくはΦ1とΦ2が略平行になるように設置することであり、0°≦|Φ1−Φ2|<30°であることが好ましく、より好ましくは0°≦|Φ1−Φ2|<15°であり、最も効果を発揮する設置方位は|Φ1−Φ2|=0°である。
本発明のフィルムが式(2)、(3)を満たしており、かつ、本発明のフィルムを式(1)を満足するように表示装置に設置して用いられることによって、表示装置の光源から発せられる青色光のみを反射によってシャープにカットしながら、外光の青色反射による表示画面の色付き、ぎらつきの抑制を達成できることについて図を用いて説明する。図3は従来の反射によって青色光をカットするフィルム10を表示装置8の視認側に設置した図である。表示装置8から発せられる青色波長を含む直線偏光11はフィルム10に入射すると、青色波長の光の一部が反射されることで、フィルム10入射時と比べて透過光12の青色波長の光強度は減少する。フィルム10に入射する外光は青色波長を含む楕円偏光である。楕円偏光成分のうち、直交する2つの直線偏光14と17について説明する。直線偏光14の方位角はΦ2であり、直線偏光17の方位角はΦ2と直交する。直線偏光14はフィルム10に入射すると、青色光の反射光16と青色光の強度が減少した透過光15に分離し、直線偏光17も同様にフィルム10に入射すると、青色光の反射光19と青色光の強度が減少した透過光18に分離する。この際に、反射光16と19を合成した光を視認することで、色付き、ぎらつきを感じることになる。従来の反射によって青色光をカットするフィルムは何れの方位角方向においても反射率はほぼ同じであり、入射角度が0°であれば、反射光16と19の光強度はほぼ同じとなる。
図4は本発明のフィルム6を表示装置8に対して視認側に設置し、フィルム面内においてRmaxを取る方位角(Φ1)7’を、表示装置から射出された直線偏光の方位角(Φ2)9’に対して式(1)を満足するように設置した図である。表示装置8から発せられる青色波長を含む直線偏光11に対する青色波長のカット性能は従来と変わらない。一方で、本発明のフィルムは、式(3)の特徴を持つため、外光の直交する2つの直線偏光14と17に対する反射率については、直線偏光14に対する反射率よりも、直線偏光17に対する反射率が低くなる。よって、反射光20の反射強度は反射光16及び19よりも低くなりその結果、反射光16と20を合成した光を視認した場合、従来方法での反射光16と19を視認した場合よりも、色付き、ぎらつきを抑制することができる。
つまり、本発明のフィルムは、表示装置の光源から射出される方位角Φ2の直線偏光のみを効果的に反射し、表示装置から射出される直線偏光のカットには不要な、方位角Φ2以外の方位角の反射率を低くすることで、楕円偏光である外光の反射率を低くし、従来よりも外光反射による色付き、ぎらつきを抑制する効果を発揮する。
もっとも好ましい様態は、|Φ1−Φ2|=0°となるように設置し、Rmin=0%とすることである。|Φ1−Φ2|=0°となるように設置することで、青色光カット性を最も発揮することができ、Rmin=0%とすることで、図5に示すように外光の反射光は実質的に反射光16となり、従来方法に対して外光に対する反射率を半減させることができる。
なお、直線偏光11の青色光の一部をカットする一方で、外光の直線偏光14と17の青色光の一部を反射しているが、光の強度は直線偏光11の方が、直線偏光14、17よりも高いため、本発明のフィルムを設置することで、視認される青色光強度は減少する。
本発明のフィルムは、十分な青色光カット性を付与するためにRmaxは20%以上である必要があり、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。一方で、青色光カットによる透過光の過度な黄色化が好まれない場合は、Rmaxの上限を設けることもできる。その場合は95%以下が好ましく、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。
本発明のフィルムは、RmaxとRminの差は5%以上であることが必要である。Rminが小さくなることで、図4で示した、反射光20の強度が小さくなり、外光反射による色付き、ぎらつきを抑制することができる。RmaxとRminの差は10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上である。Rminの値は15%以下が好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。また、RminとRmaxの比であるRmin/Rmaxが0.9以下であることも好ましく、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.4以下である。式(2)、(3)の達成方法としては、後述する多層積層フィルムの干渉反射に偏光反射特性を持たせる方法が挙げられる。
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂Aを用いてなる層(A層)と熱可塑性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを用いてなる層(B層)とが交互に51層以上積層されてなる多層積層フィルムであることが好ましい。
本発明に係るフィルム及び多層積層フィルムに用い得る熱可塑性樹脂としては、ポリエステルが好ましく、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールあるいはそれらの誘導体を用いて得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体並びにポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体の中から選択されるポリエステルを用いることが好ましく、特に熱可塑性樹脂Aとして用いることが好ましい。
本発明のフィルムが、熱可塑性樹脂Aを用いてなる層(A層)と熱可塑性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを用いてなる層(B層)とが交互に51層以上積層されてなる多層積層フィルムであるとき、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂Bは、ポリエステル樹脂であることが好ましい。なお、本発明において、「熱可塑性樹脂Aとは異なる」とは、熱可塑性樹脂Aと異なる光学特性または熱特性を示すことを表す。本発明において、熱可塑性樹脂Aと異なる光学特性を示すとは、フィルムの面内で任意に選択される直交する2方向および該面に垂直な方向のいずれかにおいて、熱可塑性樹脂Aと屈折率が0.01以上異なることをあらわす。また、熱可塑性樹脂Aと異なる熱特性を示すとは、示差走査熱量測定(DSC)において、熱可塑性樹脂Aと、融点またはガラス転移点温度が1℃以上異なることを示す。
異なる性質を持つポリエステル樹脂を積層することで、それぞれのポリエステル樹脂の単一の層のフィルムではなし得ない機能をフィルムに与えることができる。
また、本発明のフィルムに用いる異なる性質を有するポリエステル樹脂の好ましい組み合わせとしては、各ポリエステル樹脂のガラス転移温度の差の絶対値が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度の差の絶対値が20℃より大きい場合には多層積層フィルムを製造する際の延伸不良が発生しやすいためである。
本発明のフィルムに用いる異なる性質を有するポリエステル樹脂の好ましい組み合わせとしては、各ポリエステル樹脂のSP値(溶解性パラメータともいう)の差の絶対値が、1.0以下であることが第一に好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは、異なる性質を有するポリマーは同一の基本骨格を供えた組み合わせからなることが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、たとえば、一方のポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高精度な積層構造が実現しやすい観点から、ポリエチレンテレフタレートと同一の基本骨格であるエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。異なる光学的性質を有するポリエステル樹脂が同一の基本骨格を含む樹脂であると、積層精度が高く、さらに積層界面での層間剥離が生じにくくなるものである。
同一の基本骨格を有し、かつ、異なる性質を具備させるには、共重合体とすることが望ましい。すなわち、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合、他方の樹脂は、エチレンテレフタレート単位と他のエステル結合を持った繰り返し単位とで構成された樹脂を用いるような態様である。他の繰り返し単位を入れる割合(共重合量ということがある)としては、異なる性質を獲得する必要性から5%以上が好ましく、一方、層間の密着性や、熱流動特性の差が小さいため各層の厚みの精度や厚みの均一性に優れることから90%以下が好ましい。さらに好ましくは10%以上、80%以下である。また、A層とB層はそれぞれ、複数種のポリエステル樹脂がブレンド又はアロイされ用いられることも望ましい。複数種のポリエステル樹脂をブレンド又はアロイさせることで、1種類のポリエステル樹脂では得られない性能を得ることができる。
本発明のフィルムが前述した多層積層フィルムである場合、熱可塑性樹脂Aはポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリエチレンナフタレートを主たる成分とすることが好ましい。熱可塑性樹脂Aの主たる成分を、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリエチレンナフタレートとすることで、多層フィルムに十分な強度、反射率を付与することができる。なお、本発明において、「熱可塑性樹脂Aの主たる成分」とは、熱可塑性樹脂Aが樹脂全体の70重量%以上占めることを表す。また、「熱可塑性樹脂Bの主たる成分」とは、熱可塑性樹脂Bが樹脂全体の35重量%以上を占めることを表す。
本発明のフィルムが前述した多層積層フィルムである場合、熱可塑性樹脂Bとしては、下記樹脂C、D、Eの何れかの成分を主たる成分とすることが好ましい。
樹脂C:スピログリコール成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート
樹脂D:スピログリコール成分及びシクロヘキサンジカルボン酸成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート
樹脂E:シクロヘキサンジメタノール成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート
樹脂C、D、EをB層に用いることで、A層との適度な屈折率差を持つことができる。また、各成分の共重合量としては以下の割合が好ましい。
樹脂C:スピログリコール成分5mol%以上49mol%以下。
樹脂D:スピログリコール成分5mol%以上30mol%以下、シクロヘキサンジカルボン酸成分5mol%以上30mol%以下
樹脂E:シクロヘキサンジメタノール成分5mol%以上49mol%以下
本発明のフィルムの熱可塑性樹脂Bとしては、樹脂C、D、Eの何れかの成分を主たる成分とする熱可塑性樹脂と、ポリエチレンテレフタレートの混合物からなることも好ましい。ポリエチレンテレフタレートを混合して用いることで、屈折率を調整することができ、相関密着性や積層精度の向上や位相差の増大といった効果を得ることができる。
本発明のフィルムは表示装置に用いることから、Φ1方位方向の波長500nm〜780nmの範囲における平均透過率と、Φ1方位方向に直行する方向の波長500nm〜780nmの範囲における平均透過率の平均が85%以上であることが好ましく、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。
本発明のフィルムにおいて、式(2)、(3)を満足させる好適な方法は多層積層フィルムの干渉反射の利用する方法である。下記式(4)は隣接するA層とB層の屈折率及び層厚みから決定される反射波長を表す式である。下記式(4)を満たすように、A層とB層の樹脂(屈折率)と層厚みを設計することで、所望の反射特性を得ることができる。
Figure 0006520793
λΦは任意の方位角Φ方向の反射波長、nΦAはA層面内のΦ方向の屈折率、dAはA層の厚み、nΦBはB層面内のΦ方向の屈折率、dBはB層の厚みである。
望ましい波長範囲における反射率を調整する方法は、A層とB層の面内のΦ方向の屈折率差、積層数、層厚み分布、製膜条件(例えば延伸倍率、延伸速度、延伸温度、熱処理温度、熱処理時間)の調整等が挙げられる。Rmaxが高くなり積層数が少なく済むことから、面内のΦ1方向におけるA層とB層の屈折率差は0.02以上が好ましく、より好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.08以上である。一方で、Rminを低くするためには、面内のΦ1方向以外の方位角方向、好ましくはΦ1方向と直交する方向の方位角方向におけるA層とB層の屈折率差はΦ1方向におけるA層とB層の屈折率差よりも小さいことが必要である。
上記屈折率を達成する好ましい樹脂組合せとしては、A層に結晶性の樹脂をB層に非晶性の樹脂を用いることや、A層に結晶性の樹脂をB層にA層よりも融点が20℃以上低い結晶性の樹脂を用いることや、A層に結晶性の樹脂をB層に非晶性の樹脂と結晶性の樹脂をブレンドしたものを用いること等が挙げられる。
A層とB層の1層あたりの好ましい層厚みの範囲は、45nm〜75nmの範囲であり、より好ましくは50nm〜70nmの範囲である。層厚みを上記範囲とすることで、青色波長の光を十分反射しつつ、青色波長より長波長の可視光を十分に透過することができる。
上記樹脂組合せを用いた未延伸の多層積層フィルムに対して、一軸延伸や一方方向に強く延伸した二軸延伸及び適切な熱処理を施すことによって、多層積層フィルム面内において、Φ1方向ではA層とB層の屈折率差が大きくなり、Φ1と直交する方向ではA層とB層の屈折率差が小さくなり、Rmaxを高くかつ、Rminを小さくすることができる。
多層積層フィルムの層厚みの分布はフィルム面の一方から反対側の面へ向かって増加または減少する層厚み分布や、フィルム面の一方からフィルム中心へ向かって層厚みが増加した後減少する層厚み分布や、フィルム面の一方からフィルム中心へ向かって層厚みが減少した後増加する層厚み分布等が好ましい。層厚み分布の変化の仕方としては、線形、等比、階差数列といった連続的に変化するものや、10層から50層程度の層がほぼ同じ層厚みを持ち、その層厚みがステップ状に変化するものが好ましい。積層数は多いほど高いRmaxを実現でき、また、反射帯域幅を拡げることができる。好ましくは51層以上であり、より好ましくは201層以上、さらに好ましくは401層以上である。積層精度や積層装置の大型化の観点から上限としては4001層程度である。
保護層として、多層積層フィルムの表層に厚み1μm以上の層を好ましく設けることができる。表層に厚い保護層を設けることで、可視光における透過率・反射率スペクトルのリップルを抑制した平坦な分光スペクトルを得ることができ、干渉ムラや、色調ムラを抑制することができる。また、保護層のその他の効果としては、製膜時のフローマークの抑制、他のフィルムや成形体とのラミネート工程及びラミネート工程後における多層積層フィルム中の薄膜層の変形抑制、耐押圧性などが挙げられる。保護層厚みは3μm以上がより好ましく、さらに好ましくは5μm以上である。
全光線透過率を高くする方法やRminを低くする方法として、本発明の多層フィルム表面にプライマー層、ハードコート層、反射防止層を設けることが好ましい。多層フィルム表面の樹脂よりも屈折率の低い層を設けることで波長500nm以上の可視光透過率を高く、また、Rminを低くすることができる。
本発明のフィルムは、Φ1方位方向における波長450nm〜470nmの平均反射率が25%以上かつ、Φ1方位方向における波長500nmにおける透過率が85%以上であることが好ましい。上記反射率、透過率を持つことで、長波長側の青色光を十分にカットしつつ、500nm以上の可視光を透過することで、色付き抑制、高透明性を得ることができ、特に、460nm前後に強いピークを持つLED光源に対して有効である。平均反射率のより好ましい値は40%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。一方、平均反射率が高くなりすぎると、青色光不足による色付きが顕著になるため、平均反射率の上限を設けることもできる。その場合は95%以下が好ましく、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。波長500nmにおける透過率のより好ましい値は88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
屈折率の異なる二種の材料の積層による反射率スペクトルの幅は以下の式(5)〜(7)で表すことができる。
Figure 0006520793
ここでΔλは反射率スペクトルの幅、λは反射率スペクトルの中心波長、nは高屈折率層の屈折率、nは低屈折率層の屈折率である。460nmを反射率スペクトルの中心波長とした場合の、高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率の比n/nに対する、反射率スペクトルの幅を図6に示す。一般的に熱可塑性樹脂が積層された構成では、n/nは1.25以下である。熱可塑性樹脂による積層は、n/nが小さくなり高屈折率層と低屈折率層の界面での反射率が低下しても、積層数を多くすることで反射率を調整することは容易である。そのため、1.2以下、さらには1.1以下であることも可能であり、下限としては積層数増加の問題から1.02である。そのため、熱可塑性樹脂を用いた多層積層フィルムでは反射率スペクトルの幅は66nmから5.8nmまでの範囲を取ることができ、中心波長460nを反射する設計を行った際の反射スペクトルの範囲は、最大でも430nm〜496nmであり、波長450nm〜470nm、特に460nmの青色光のみをカットしつつ、500nm以上の可視光を十分に透過する、シャープカット性を持たせることができる。
一方で、無機材料多層のような蒸着等によって多層化する場合は、蒸着回数を減らしてコストを削減する観点からn/nを大きくして高屈折率層と低屈折率層の界面での反射率を大きくしている。例えば高屈折率層としてZrO(屈折率2.04)、低屈折率層としてSiO(屈折率1.46)を用いた場合、n/nは1.4であり、反射率スペクトルの幅は99nmである。この場合、中心波長460nを反射する設計を行った際の反射スペクトルの範囲は、416nm〜515nmであり、500nm以上の可視光もカットしてしまい、色付きや透明性の悪化を招く。無機材料多層は熱可塑性樹脂多層のような数十層さらには数百層以上といった積層数にすることは困難であり、n/nを小さくすることはできず、反射率スペクトルの幅は広くなり、シャープカット性を付与することは困難である。また、無機材料多層は面内で屈折率に異方性を持たせることは難しく、式(3)を達成することは非常に困難である。
上述した無機材料多層の反射率スペクトルの幅は、反射率が100%となるような十分な層数が積層されたケースでの理論であり、本発明のような反射率が20%〜95%程度の範囲となるように無機材料を積層すると、その層数は2層〜9層程度であり、反射率スペクトルは中心波長をピークトップにブロードな形状を持つため、460nmを反射しようとすると、上述のケースと比較して500nm以上の反射率がより高くなる。一方、熱可塑性樹脂を用いた場合は、十分なシャープカット性を持たせることができる。
本発明のフィルムは位相差が3000nm以上であることが好ましい。位相差が3000nm以上となることで、本発明のフィルムを通過した偏光を視認した際の虹ムラを抑制ですることができる。より好ましくは5000nm以上であり、さらに好ましくは8000nm以上である。
フィルムの位相差は下記(8)式で表せられる。
Figure 0006520793
ここでRは位相差、Δnはフィルム面内の複屈折率、dはフィルムの厚みである。
また、多層積層フィルムの位相差は下記(9)式で表せられる。
Figure 0006520793
ここでRは位相差、ΔnAはA層のフィルム面内の複屈折率、ΣdAは多層積層フィルム中のA層厚みの総和、ΔnBはB層のフィルム面内の複屈折率、ΣdBは多層積層フィルム中のB層厚みの総和である。位相差を高くするには各層の複屈折率を高く、各層の厚みを厚くすることで達成される。
本発明のフィルムを用いる表示装置の略図を図7、8に示す。
本発明のフィルムの用途としては、少なくとも第一の偏光板、液晶層、第二の偏光板、LED光源の順で構成された液晶表示装置であって、本発明のフィルムが、第一の偏光板の視認側偏光子保護として積層、又は、第一の偏光板よりも視認側に積層されてなる液晶表示装置が挙げられる。第一の偏光板よりも視認側に積層する場合は、カバーガラスに貼り合せる画面保護フィルムや、透明導電層を形成するタッチパネル基材フィルムとして本発明のフィルムを用いることが挙げられる。
本発明のフィルムの別の用途としては、偏光板を具備した有機EL表示装置などが挙げられ、本発明のフィルムを偏光板の視認側偏光子保護として積層、又は、偏光板よりも視認側に積層されることが挙げられる。偏光板よりも視認側に積層する場合は、カバーガラスに貼り合せる画面保護フィルムや、透明導電層を形成するタッチパネル基材フィルムとして本発明のフィルムを用いることが挙げられる。
本発明のフィルムは、紫外線吸収剤を含んでなることも好ましく、多層積層フィルムの場合は表層以外の層に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられ、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾオキサジノン系等が挙げられる。紫外線吸収剤の添加量は0.1wt%〜10.0wt%の範囲が好ましく、0.1wt%〜4.0wt%の範囲がさらに好ましく、0.1wt%〜2.0wt%の範囲がより好ましい。
また、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を0.1wt%〜3.0wt%の範囲で添加することも好ましく、より好ましくは0.1wt%〜1.0wt%の範囲である。
本発明のフィルムは、トリアジン系紫外線吸収剤を含んでなることが好ましく、分子量600以上のものがより好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤は、耐熱性、ブリードアウト抑制効果に優れている。そのため、フィルム製造時の工程汚染が少ない。また、フィルムの耐熱や耐湿熱といった信頼性試験における紫外線吸収剤の析出も抑制され、光学特性の安定性にも優れる。
また、トリアジン系紫外線吸収剤とその他の紫外線吸収剤をブレンドして用いることも好ましい。1種類のみでは、ブリードアウト性、析出性の悪い紫外線吸収剤であっても、トリアジン系とブレンドすることで、ブリードアウト性、析出性を改善することができる。
本発明のフィルムのフィルム厚みは、例えば10μm〜200μmの範囲を取りうる。偏光子保護用途であれば、10μm〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは10μm〜40μmの範囲である。また、画面保護用途であれば、50μm〜100μmの範囲が好ましく、例えば、本発明のフィルム厚みが30μmの場合、70μmの他のフィルムを貼りあわせることで100μmとすることで、支持性を与えることも好ましい。
本発明のフィルムは、フィルムの表面にプライマー層、ハードコート層、耐磨耗性層、傷防止層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、光安定化層(HALS)熱線吸収層、印刷層、ガスバリア層、粘着層などの機能性層が形成されることが好ましい。これらの層は1層でも多層でも良く、また、1つの層に複数の機能を持たせても良い。
本発明のフィルムを製造する具体的な態様の例を以下に記す。本発明のフィルムが多層積層フィルムである場合、51層以上の積層構造は、次のような方法で作製することができる。A層に対応する押出機AとB層に対応する押出機Bの2台から熱可塑性樹脂が供給され、それぞれの流路からのポリマーが、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックとスクエアミキサーを用いる方法、もしくは、コームタイプのフィードブロックのみを用いることにより51層以上に積層し、次いでその溶融体をT型口金等を用いてシート状に溶融押出し、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸多層積層フィルムを得る方法が挙げられる。A層とB層の積層精度を高める方法としては、特開2007−307893号公報、特許第4691910号公報、特許第4816419号公報に記載されている方法が好ましい。また必要であれば、A層に用いる熱可塑性樹脂とB層に用いる熱可塑性樹脂を乾燥することも好ましい。
続いて、この未延伸多層積層フィルムに延伸及び熱処理を施す。延伸方法としては、公知の一軸延伸法、逐次二軸延伸法、もしくは同時二軸延伸法が好ましい。
一軸延伸法では長手方法、幅方向、長手方向と幅方向の中間方向(斜め方向)の何れかの一方方向に延伸を行うことが好ましい。
二軸延伸法では、長手方法、幅方向、長手方向と幅方向の中間方向(斜め方向)の何れか一方に強く延伸を行い、他の方向に弱く延伸を行うことが好ましい。また、各方向への延伸は複数回組み合わせて行っても良い。
延伸温度は未延伸多層積層フィルムのガラス転移点温度以上〜ガラス転移点温度+80℃以下の範囲にて行うことが好ましい。複数回延伸を行う場合は、延伸温度を徐々に高くしていくことが好ましい。
延伸倍率は一軸延伸であれば、3〜10倍の範囲が好ましく、より好ましくは4〜6倍の範囲である。
二軸延伸であれば、強く延伸を行う方向へは3〜7倍の範囲が、弱く延伸を行う方向へは1.1〜3倍の範囲が好ましい。また、同じ方向への延伸を複数回行う場合は、2回目以降の延伸は1回目よりも倍率を小さくすることが好ましい。
長手方向の延伸は、縦延伸機ロール間の速度変化を利用して延伸を行うことが好ましい。また、幅方向の延伸は、公知のテンター法を利用する。すなわち、多層積層フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、多層積層フィルム両端のクリップ間隔を広げることで幅方向に延伸する。長手方向と幅方向の中間方向(斜め方向)への延伸は、縦延伸ロールの向きを徐々に変更させて延伸する方法や、テンター内で多層積層フィルム両端のクリップそれぞれの移動速度に差をつけて延伸する方法等が挙げられる。
また、テンターでの延伸は同時二軸延伸を行うことも好ましい。同時二軸延伸を行なう場合について説明する。冷却ロール上にキャストされた未延伸多層積層フィルムを、同時二軸テンターへ導き、多層積層フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。長手方向の延伸は、テンターのクリップ間の距離を広げることで、また、幅方向はクリップが走行するレールの間隔を広げることで達成される。本発明における延伸・熱処理を施すテンタークリップは、リニアモータ方式で駆動することが好ましい。その他、パンタグラフ方式、スクリュー方式などがあるが、中でもリニアモータ方式は、個々のクリップの自由度が高いため延伸倍率を自由に変更できる点で優れている。
延伸後に熱処理を行うことも好ましい。熱処理温度は、延伸温度以上〜多層積層フィルムの融点−10℃以下の範囲にて行うことが好ましく、熱処理後に多層積層フィルムのガラス転移点温度以上〜熱処理温度−30℃以下の範囲にて冷却工程を経ることも好ましい。また、延伸直後に延伸温度以下に冷却した後に熱処理を行うことも好ましい。延伸後に多層積層フィルムの温度を低くして剛性を持たせることで、熱処理工程における多層積層フィルムに発生するボーイングを抑制することができ、多層積層フィルムの幅方向の広範囲にわたって、均一な位相差と配向角を得ることができる。
熱処理工程及び、熱処理工程直後に2%以上20%以下の延伸を行うことも好ましい。このような延伸を行うことで多層積層フィルムの位相差をさらに高くすることができ、発生するボーイングを抑制することができ、多層積層フィルムの幅方向の広範囲に亘って、均一な位相差と配向角を得ることができる。
また、フィルムの熱収縮率を小さくするために、熱処理工程中又は冷却工程中にフィルムを幅方向又は及び又は、長手方向に縮める(リラックス)ことも好ましい。リラックスの割合としては1%〜10%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜5%の範囲である。ボーイングを抑制し、熱収縮率を小さくするためには、熱処理工程及び、熱処理工程直後に2%以上20%以下の延伸を行った後に、熱処理工程中又は冷却工程中にフィルムを幅方向又は及び又は、長手方向に縮めることが好ましい。
最後に巻取り機にてフィルムを巻き取ることによって本発明のフィルムが製造される。
以下、本発明のフィルムを具体的な実施例をあげて説明する。なお、以下に具体的に例示した熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂を用いた場合でも下記実施例を含めた本明細書の記載を参酌すれば、同様にして本発明のフィルムを得ることができる。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)反射率、透過率測定
サンプルを4cm×4cmで切り出した。日立製作所(株)製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の12°正反射付属装置P/N134−0104を取り付け、入射角度φ=12度における絶対反射率の測定を行った。付属のグランテーラ偏光子を設置して、偏光成分を0°〜180°において、5°刻みで回転させた方位角で波長240〜800nmの絶対反射率を測定した。測定条件:スリットは2nm(可視)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分とした。これらの結果から、各方位角における380nm〜480nmの波長範囲における平均反射率を求め、その中から最も大きな値を持つ平均反射率をRmaxとし、その方位角をΦ1とした。Φ1となす方位角が90°である方位角方向の380nm〜480nmの平均反射率をRminとした。さらに、方位角Φ1方向における波長450nm〜470nmの範囲の平均反射率及び、波長500nmにおける透過率を求めた。なお、各方位角での反射ピークまたは平均反射率の値の差が1%未満の物は、反射特性が等方性であると見なして任意の方位角をΦ1とした。
次に、方位角Φ1方向における波長500nm〜780nmの範囲の平均透過率と、方位角Φ1方向に直行する方位角方向における波長500nm〜780nmの範囲の平均透過率を求め、さらにそれらの平均値(可視光透過率)を求めた。
また、ぎらつき評価として、方位角Φ1方向における波長380nm〜480nmの範囲の平均反射率と、方位角Φ1方向に直行する方位角方向における波長380nm〜480nmの範囲の平均反射率を求め、さらにそれらの平均値(青色波長反射率)を求めた(青色波長反射率が低いほどぎらつきが大きいと評価した)。
(2)反射色調
外光の反射による色付きを想定して測定を行った。コミカミノルタセンシング株式会社製、分光測色計CM−3600dを用いた。測色色の計算に用いる光源はD65を選択し、SCI方式でa*、b*値を測定し、n数5の平均値を求めた。なお、ターゲットマスク、白色校正板、ゼロ校正ボックスは下記のものを用いた。測定したa*、b*から彩度c*(√(a*+b*))を求め、彩度c*を色付き評価に用いた(彩度c*が大きいほど、色付きが大きいと評価した)。
ターゲットマスク :CM−A106(測定径Φ8mm)
白色校正板 :CM−A103
ゼロ校正ボックス :CM−A104
(3)位相差
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から3.5cm×3.5cmで切り出し測定を行った。
(多層積層フィルムに用いた樹脂)
樹脂A:IV=0.65のポリエチレンテレフタレート
樹脂B:IV=0.66のポリエチレンナフタレート
樹脂C:IV=0.64のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分20mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)
樹脂D:IV=0.72のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジカルボン酸成分20mol%、スピログリコール成分20mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)
樹脂E:IV=0.73のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分33mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)
樹脂F:IV=0.70のポリエチレンテレフタレートの共重合体(2−6ナフタレンジカルボン酸成分50mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)
(上記樹脂ペレットの混合物)
樹脂G:樹脂Eと樹脂Aのペレットをそれぞれ、62wt%/38wt%の割合で均等に混合したブレンドペレット
樹脂H:樹脂Eと樹脂Aのペレットをそれぞれ、41wt%/59wt%の割合で均等に混合したブレンドペレット
樹脂I:樹脂Cと樹脂Aのペレットをそれぞれ、80wt%/20wt%の割合で均等に混合したブレンドペレット
樹脂J:樹脂Dと樹脂Aのペレットをそれぞれ、80wt%/20wt%の割合で均等に混合したブレンドペレット
IV(固有粘度)の測定方法
溶媒としてオルトクロロフェノールを用いて、温度100℃で20分溶解した後、温度25℃でオストワルド粘度計を用いて測定した溶液粘度から算出した。
(実施例1)
A層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Aを、B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Cを用いた。樹脂Aおよび樹脂Cを、それぞれ、押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂C=22/1になるように計量しながら、51層フィードブロック(A層が26層、B層が25層)にて交互に合流させた。次いで、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸多層積層フィルムを得た。この未延伸多層積層フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃、5.0倍横延伸した後、230℃で熱処理及び5%の幅方向リラックスを実施し、100℃で冷却した後、厚み40μm(両表層それぞれ18μm、2層目〜50層目70nm)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例2)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Dを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み40μmの多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例3)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Eを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み40μmの多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(比較例1)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Hを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み39μm(両表層それぞれ18μm、2層目〜50層目68nm)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムは、式(3)を満たしたが、式(2)を満たしておらず、表示装置から発せられる青色光を含む直線偏光のカット性が低い結果となった。
(比較例2)
A層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Aを、B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Dを用いた。樹脂Aおよび樹脂Dを、それぞれ、押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂D=22/1になるように計量しながら、51層フィードブロック(A層が26層、B層が25層)にて交互に合流させた。次いで、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸多層積層フィルムを得た。この未延伸多層積層フィルムを、縦延伸機にて90℃、3.3倍延伸した後、多層積層フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃、3.5倍横延伸した後、厚み41μm(両表層それぞれ19μm、2層目〜50層目71nm)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムは、式(2)を満たしたが、式(3)を満たしていなかった。比較例2の多層積層フィルムのRmaxは実施例3よりやや低く、表示装置から発せられる青色光を含む直線偏光のカット性が低いことにも係らず、反射色調C*及び、青色波長反射率は実施例3よりも高く、色付き、ぎらつきが大きい結果となった。
(比較例3)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Gを用いたこと以外は比較例2と同様の方法で、厚み40μm(両表層それぞれ18μm、2層目〜50層目70nm)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムは、式(2)、式(3)を共に満たしていなかった。
(実施例4)
A層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Aを、B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Iを用いた。樹脂Aおよび樹脂Iを、それぞれ、押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂I=1/1になるように計量しながら、267層フィードブロック(A層が134層、B層が133層)にて交互に合流させた後、さらに3層ピノールを用いて、積層比が樹脂A/樹脂I=9/1となるように両表層にA層を合流させた。その他の条件は実施例1と同様の方法で、厚み80μm(両表層それぞれ32μm、2層目から134層目に向かって等比数列的に48nmから72nmに層厚みが増加し、134層目から266層目に向かって等比数列的に72nmから48nmに層厚みが減少)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例5)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Jを用いたこと以外は実施例4と同様の方法で、厚み80μmの多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例6)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Gを用いたこと以外は実施例4と同様の方法で、厚み80μmの多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例7)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Hを用いたこと以外は実施例4と同様の方法で、厚み80μmの多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(比較例4)
A層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Aを、B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Gを用いた。樹脂Aおよび樹脂Gを、それぞれ、押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂G=1/1になるように計量しながら、267層フィードブロック(A層が134層、B層が133層)にて交互に合流させた後、さらに3層ピノールを用いて、積層比が樹脂A/樹脂G=9/1となるように両表層にA層を合流させた。その他の条件は比較例1と同様の方法で、厚み82μm(両表層それぞれ33μm、2層目から134層目に向かって等比数列的に49nmから74nmに層厚みが増加し、134層目から266層目に向かって等比数列的に74nmから49nmに層厚みが減少)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムは、式(2)を満たしたが、式(3)を満たしていなかった。比較例4の多層積層フィルムのRmaxは実施例6よりやや低く、表示装置から発せられる青色光を含む直線偏光のカット性が低いことにも係らず、反射色調C*及び、青色波長反射率は実施例6よりも高く、色付き、ぎらつきが大きい結果となった。
(実施例8)
A層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Bを、B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Eを用いた。樹脂Bおよび樹脂Eを、それぞれ、押出機にて290℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂B/樹脂E=1/1になるように計量しながら、267層フィードブロック(A層が134層、B層が133層)にて交互に合流させた後、さらに3層ピノールを用いて、積層比が樹脂B/樹脂E=9/1となるように両表層にA層を合流させた。次いで、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸多層積層フィルムを得た。この未延伸多層積層フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き140℃、5.0倍横延伸した後、170℃で熱処理及び5%の幅方向リラックスを実施し、100℃で冷却した後、厚み76μm(両表層それぞれ31μm、2層目から134層目に向かって等比数列的に46nmから68nmに層厚みが増加し、134層目から266層目に向かって等比数列的に68nmから46nmに層厚みが減少)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例9)
B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Fを用いたこと以外は実施例8と同様の方法で、厚み76μmの多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例10)
A層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Aを、B層を構成するポリエステル系樹脂として樹脂Jを用いた。樹脂Aおよび樹脂Jを、それぞれ、押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂J=1/1になるように計量しながら、267層フィードブロック(A層が134層、B層が133層)にて交互に合流させた。その他の条件は実施例1と同様の方法で、厚み16μm(1層目から134層目に向かって等比数列的に48nmから72nmに層厚みが増加し、134層目から267層目に向かって等比数列的に72nmから48nmに層厚みが減少)の多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例11)
厚みを14μmとすること以外は、実施例10と同様の方法で多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
Figure 0006520793
本発明は、表示装置から発せられる青色光のみを反射によってシャープにカットするフィルムでありながら、外光の青色反射による表示画面の色付き、ぎらつきを抑制した表示装置に用いるフィルム及びその製造方法に関するものである。また、本発明の多層積層フィルムは、ディスプレイ全般に用いられる画面保護フィルム、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに用いられる偏光子保護フィルム、透明導電層を形成するタッチパネル基材フィルムとして好適に用いることができる。
1:フィルム面内における方位2と直角の関係を持つ任意の方向
2:フィルム面内における方位1と直角の関係を持つ任意の方向
3:フィルムまたは表示装置
4:直線偏光の振動方向
5:方位角
6:本発明のフィルム
7:フィルム面内においてRmaxをとる方向
7’:Rmaxをとる方位角(Φ1)
8:表示装置
9:表示装置から射出される直線偏光の方向
9’:表示装置から射出される直線偏光の方位角(Φ2)
10:従来の反射によって青色光をカットするフィルム
11:表示装置から発せられる青色波長を含む直線偏光
12:青色波長の光の一部がカットされた透過光
13:青色波長の反射光
14:フィルム10に入射する青色波長を含む外光の方位角Φ2方向の直線偏光
15:青色波長の光の一部がカットされた透過光
16:青色波長の反射光
17:フィルム10に入射する青色波長を含む外光の方位角Φ2と直交する方向の直線偏光
18:青色波長の光の一部がカットされた透過光
19:青色波長の反射光
20:青色波長の反射光
21:LED光源
22:第二の偏光板
23:液晶層
24:第一の偏光板
25:偏光子保護フィルム又は位相差フィルム
26:偏光子
27:支持体
28:金属電極層
29:有機発光層
30:透明電極層
31:透明支持体
32:偏光板又は、円偏光板
33:偏光子保護フィルム又は位相差フィルム
34:偏光子
35:偏光子保護フィルム又は位相差フィルム

Claims (10)

  1. 少なくとも青色波長を含む直線偏光を射出する光源とフィルムを有する表示装置であって、該光源と該フィルムが下記(1)式を満たす表示装置に用いられる、下記式(2)および(3)を満足するフィルム。
    0°≦|Φ1−Φ2|<45° ・・・(1)
    Rmax≧20% ・・・(2)
    Rmax−Rmin>5% ・・・(3)
    (ここで、Φ1はフィルム面内においてRmaxをとる方位角であり、Φ2は表示装置の光源から射出される直線偏光の方位角である。また、Rmaxはフィルムに直線偏光を入射角0°で照射し、フィルムの入射光軸を中心として、フィルム面上の任意の方位角方向を0°とし、180°まで5°間隔で半回転させて測定される各方位角における波長380nm〜480nmの範囲における平均反射率のうちの最大値であり、RminはΦ1に直交する方位角における波長380nm〜480nmの範囲における平均反射率である。)
  2. 熱可塑性樹脂Aを用いてなる層(A層)と熱可塑性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを用いてなる層(B層)とが交互に51層以上積層されてなる多層積層フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
  3. Φ1方位方向の波長500nm〜780nmの範囲における平均透過率と、Φ1方位方向に直行する方向の波長500nm〜780nmの範囲における平均透過率の平均が85%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム。
  4. Φ1方位方向における波長450nm〜470nmの平均反射率が25%以上かつ、Φ1方位方向における波長500nmにおける透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のフィルム。
  5. 位相差が3000nm以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のフィルム。
  6. 前記熱可塑性樹脂Aが、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリエチレンナフタレートを主たる成分とする請求項2に記載のフィルム。
  7. 前記熱可塑性樹脂Bが、下記樹脂C、D、Eの何れかの成分を主たる成分とする請求項2に記載のフィルム。
    樹脂C:スピログリコール成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート
    樹脂D:スピログリコール成分及びシクロヘキサンジカルボン酸成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート
    樹脂E:シクロヘキサンジメタノール成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート
  8. 前記熱可塑性樹脂Bが、さらにポリエチレンテレフタレートを含む請求項7に記載のフィルム。
  9. 少なくとも第一の偏光板、液晶層、第二の偏光板、LED光源の順で構成された液晶表示装置であって、請求項1〜8の何れかに記載のフィルムが、第一の偏光板の視認側偏光子保護として積層、又は、第一の偏光板よりも視認側に積層されてなる液晶表示装置。
  10. 請求項1〜8の何れかに記載のフィルムを用いた、偏光板を具備した有機EL表示装置。
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