JP6520294B2 - 電線被覆材 - Google Patents
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Description
塩化ビニル樹脂の耐寒性の改良方法としては、一般的に脂肪酸エステル類を可塑剤として用いることが知られているが、この方法は、性能面として耐熱性や耐ブリード性が低下することや、低温耐衝撃性は改良されるものの、低温柔軟性は大きく改善されないこと、経済面として高コストになってしまうことなどの問題がある。
共重合樹脂)に対する耐移行性などの性能に優れた組成物を与えることができる可塑剤組成物として、多価アルコール成分として3−メチル−1,5−ペンタンジオールを用いてなるポリエステル可塑剤とトリメリット酸トリエステルまたはピロメリット酸テトラエステルを混合してなる可塑剤組成物も提案されている 。
成分(A):塩化ビニル樹脂
成分(B):全ジオール単位に対して3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を50モル%以上含み、全ジカルボン酸単位に対してアジピン酸単位を50モル%以上含むポリエステル系可塑剤
成分(C):ポリエステル系熱可塑性エラストマー
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を50〜150重量部含み、かつ[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が0.1〜20 であるものである。
成分(A):塩化ビニル樹脂
成分(B):全ジオール単位に対して3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を50モル%以上含み、全ジカルボン酸単位に対してアジピン酸単位を50モル%以上含むポリ
エステル系可塑剤
成分(C):ポリエステル系熱可塑性エラストマー
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)の塩化ビニル樹脂を含む。この塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルモノマーの単独重合体又は塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であれば、その種類は限定されない。
含み、また重合時に架橋剤を添加することにより架橋させたテトラヒドロフラン(以下THFという)に不溶解の架橋ゲル分を含む架橋塩化ビニル樹脂も含まれる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる成分(B)のポリエステル系可塑剤は全ジオール
単位に対して3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を50モル%以上含み、かつ全ジカルボン酸単位に対してアジピン酸単位を50モル%以上含むポリエステル系可塑剤である。本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(B)はASA樹脂への非移行性、耐油性に寄与する。
カヒドロナフタレンジカルボン酸単位、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸単位等の脂環式ジカルボン酸単位;テレフタル酸単位、フタル酸単位、イソフタル酸単位、フェニレンジオキシジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸単位、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位等の芳香族ジカルボン酸単位;コハク酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカジカルボン酸単位、ドデカジカルボン単位酸等の鎖状脂肪族ジカルボン酸単位;これらのジカルボン酸単位の炭素数1〜4のアルキルエステル単位又はハロゲン化物等のジカルボン酸誘導体単位等が挙げられる。これらは、1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸単位等の芳香族ジオール単位等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、結晶性を有するハードセグメントと、非晶性を有するソフトセグメントとを有するブロック共重合体であり、該ハードセグメントがポリエステルからなるものである。
状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体」と称することがある。)、環状ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステル(本発明において「鎖状脂肪族ポリエステル」とは、原料であるジカルボン酸又はそのアルキルエステルが鎖状構造のみを有するジカルボン酸又はそのアルキルエステルであるものを意味する。)からなるソフトセグメント(以下、「鎖状脂肪族ポリエステルユニット」と称することがある。)とを有するブロック共重合体(以下、「環状ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体である。
して含むことが好ましく、一方、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットの原料についても以下に詳述するが、低温柔軟性の観点から ポ リテトラメチレンエーテルグリコールを原料とするソフトセグメント(以下、「ポリテトラメチレングリコールユニット」と称することがある。)を含むことが好ましい。本発明に用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体が好ましく、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレンエーテルグリコールブロック共重合体が特に好ましい。
有するブロック共重合体(以下、「芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)、脂環族ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステルからなるソフトセグメントを有するブロック共重合体(以下、「脂環族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられ、これらの中でも芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体が好ましい。芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体の中でも、芳香族ポリエステルユニットがポリブチレンテレフタレートからなる、ポリブチレンテレフタレート−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体がより好ましい。また、鎖状脂肪族ポリエステルユニットとして好ましいのはセバシン酸、アジピン酸に代表される炭素数4〜10の鎖状脂肪族ジカルボン酸と鎖状脂肪族ジオールとから得られるものである。
くは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。また、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量の上限値は限定されないが、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。なお、環状ポリエステルユニットを有するブロック共重合体中の環状ポリエステルユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。同様に、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を50〜150重量部含む。成分(B)の含有量が成分(A)100重量部に対して50重量部以上であることがASA樹脂への非移行性、耐寒性(低温柔軟性)を得るために必要であり、成分(B)の含有量は、好ましくは60重量部以上であり、より好ましくは70重量部以上である。一方、成形加工性の観点から、成分(B)の含有量は成分(A)100重量部に対して150重量部以下であり、この観点から、好ましくは130重量部以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の他に安定剤、成分(B)以外の可塑剤、潤滑材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、発泡剤、衝撃改良剤等の各種添加剤、充填材、成分(A)及び成分(C)以外
の熱可塑性樹脂等を本発明の効果を著しく阻害しない限り、必要に応じて配合することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及びその他の成分を所定の混練機又は混合機に投入し、成分(A)が劣化しない温度範囲、例えば、100〜230℃、好ましくは130〜200℃の温度に加熱しながら、均一に混合又は混練することにより調製することができる。上述の各成分の混合又は混練に用いる混合機又は混練機は、実質的に配合物を均一に混合、混練できる装置であればよく特に限定されるものではない。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、プラネ
タリーミキサー等が挙げられ、混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ミルロール、バンバリーミキサー、ニーダー、インテンシブミキサー等、加熱しながら剪断力下で混練できるものが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の硬度は、JIS K6253に基づく硬度測定(デュロ−A)で30〜90が好ましく、50〜80がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は押出成形、射出成形、圧縮成形等の各種成形方法により成形体とすることができる。これらの中でも熱可塑性樹脂組成物の溶融状態での流動性の観点から、押出成形により成形体とする方法が好ましい。成形条件としては特に制限はないが成形温度130〜220℃が適当であり、上記下限値以上であることが成形性、意匠性等の観点から好ましい。一方、上記上限値以下であると熱可塑性樹脂組成物に含まれる塩化ビニル樹脂の分解を防ぐ観点から好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐油性、低温柔軟性に優れ、また、ASA樹脂に可塑剤が移行しない等の特性を有する。このため、各種の産業分野において好適に用いることができ、特に、ウィンドモール、ドア下モール、サイドモール等の自動車外装材、ノブ、グリップ等の自動車内装材、パッキン、シール材、ガスケット等の建材、電線被覆材として好適に使用することができ、電線被覆材に好適である。
以下の実施例、比較例において熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料は以下の通りである。
A−1:
信越化学社製 塩化ビニル樹脂
平均重合度:2,500
B−1:
ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を100モル%、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
B−2:
ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を70モル%、ネオペンチルグリコール単位を10モル%、1,4−ブタンジオールを20モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を30モル%、2−メチルプロパンジオール単位を50モル%、1,4−ブタンジオールを20モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
b−2(比較例用):
ジオール単位として1,4−ブタンジオールを60モル%、1,3−ブタンジオールを40モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
b−3(比較例用):
ジオール単位として1,2−ブタンジオールを50モル%、1,4−ブタンジオールを50モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:700mPa・s
b−4(比較例用):
トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル):TOTM
C−1:
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(ポリブチレンテレフタレートプレポリマー(ハードセグメント)とポリテトラメチレンエーテルグリコール(ソフトセグメント)の共重縮合によって得られたもの)
融解ピーク温度:165℃
デュロD硬度:35
D−1:
Ca/Mg/Zn系安定剤(アデカ社製、アデカスタブRUP−106)
以下の実施例及び比較例において、熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料および得られた熱可塑性樹脂組成物の評価方法は以下の通りである。
JIS K6261に基づき、低温ねじり試験を実施し、−55〜25℃でのねじりモジュラス変化 を 測定し、以下基準で評価を実施した。
○:−30℃〜25℃領域においてねじりモジュラスが殆ど変化しない。
△:−30℃〜25℃領域においてねじりモジュラスが若干変化する。
×:測定領域すべてでねじりモジュラスが著しく変化する。
JIS K6723に基づき、耐油試験を行った。
○:引張強さの残率、伸びの残率が共に90%以上である。
△:引張強さの残率、伸びの残率が共に80%以上であり、かつそのうちのいずれかが90%未満である。
×:引張強さの残率、伸びの残率の少なくとも片方が80%未満である。
熱可塑性樹脂組成物を2mmの厚みに調整したプレスシートから、鍛造刃を用いて幅6mm、長さ40mmの試験片を打ち抜いた。試験片の全面に対してASA樹脂を密着させ、500gの荷重をかけた。その状態で60℃の雰囲気下に24時間静置し、ASA表面に痕跡が認められるか否かで評価を行った。
○:痕跡は認められない。
△:わずかに痕跡が認められる。
×:明確な痕跡が認められる。
表−1又は表−2に示す配合原料のうち、成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の成分を表−1又は表−2に記載した配合量で高速ミキサーに投入し、110℃になるまで攪拌して排出した。排出した混合物に成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマーを表−1又は表−2に記載した配合量で加え、ニーダーにて混練し、170℃に到達したところで排出を行なった。
表−1、表−2からわかるように、本発明の熱可塑性樹脂組成物に該当する実施例1,3,5,7は比較例1〜13と比較して、低温柔軟性、耐油性、ASA移行性のバランスに優れていることがわかる。
)の配合量を多くした例であるが、材料を均一に混練することができなかった。更に、比較例9は成分(A)〜成分(C)を使用しているものの、[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が125/5(=25)であるために本発明の熱可塑性樹脂組成物に該当しない例であり、低温柔軟性に劣るものであることがわかる。
Claims (3)
- 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を50〜150重量部含み、かつ[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が0.1〜20である熱可塑性樹脂組成物からなる電線被覆材。
成分(A):塩化ビニル樹脂
成分(B):ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を100モル%、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
成分(C):ポリエステル系熱可塑性エラストマー - 成分(B)の25℃における粘度が500〜10,000mPa・sである、請求項1に記載の電線被覆材。
- 成分(C)が、ポリブチレンテレフタレートからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレングリコールからなるソフトセグメントとを有するものである、請求項1又は2に記載の電線被覆材。
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