JP6520294B2 - 電線被覆材 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、並びに該熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形体及び電線に関する。より詳細には、本発明は、耐油性、低温柔軟性、成形加工性等に優れ、ASA樹脂と接触してもその表面外観に悪影響を及ぼさない樹脂組成物に関する。
塩化ビニル樹脂、可塑剤等を含む塩化ビニル樹脂組成物は、古くから電線被覆、チューブ、テープ、建材、自動車部品、家電部品等の用途に広く用いられている。
特に電線は低温環境下、各種脂溶性の液体が存在する環境下、ASA樹脂が存在する環境で使用される場合がある。しかしながら、従来の塩化ビニル系樹脂組成物では、それらの条件に、全て同時に対応できるものがなかった。
塩化ビニル樹脂の耐寒性の改良方法としては、一般的に脂肪酸エステル類を可塑剤として用いることが知られているが、この方法は、性能面として耐熱性や耐ブリード性が低下することや、低温耐衝撃性は改良されるものの、低温柔軟性は大きく改善されないこと、経済面として高コストになってしまうことなどの問題がある。
耐油性を改良する方法として、非特許文献1に開示されているように、各種ジカルボン酸、ジオールを縮合したポリエステル系可塑剤を使用する方法が知られている。また、低温柔軟性の問題を解決する方法として、ゴム弾性、低温柔軟性に優れ、軟質ポリ塩化ビニルとの相溶性が良好なポリエステル系エラストマーをブレンドする方法が特許文献1において提案されている。また、塩化ビニル系樹脂に高い可撓性を与え、且つ耐熱性、耐油性、耐寒性、ポリスチレン樹脂やABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン
共重合樹脂)に対する耐移行性などの性能に優れた組成物を与えることができる可塑剤組成物として、多価アルコール成分として3−メチル−1,5−ペンタンジオールを用いてなるポリエステル可塑剤とトリメリット酸トリエステルまたはピロメリット酸テトラエステルを混合してなる可塑剤組成物も提案されている 。
特開平4−11647号公報 特開平8−337700号公報
遠藤昭定、須藤眞編 プラスチックス配合剤―基礎と応用― 大成社(1996年)
本発明者の詳細な検討によれば、電線はASA樹脂(アクリル−スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂)と接触する環境で使用される場合があり、上記従来の塩化ビニル系熱可塑性樹脂組成物を用いた場合、可塑剤がASA樹脂表面に移行し、表面外観を著しく損なうという問題があることを見出した。
本発明の課題は従来技術における上記問題点を解決し、耐油性、低温柔軟性、ASA樹脂への非移行性、成形加工性等に優れた熱可塑性樹脂組成物、並びこの熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形体及び電線を提供することにある。
本発明者は上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、塩化ビニル樹脂、特定の構造を有するポリエステル系可塑剤及びポリエステル系熱可塑性エラストマーを特定の配合割合で含む熱可塑性樹脂組成物が上記課題を解決することを見出した。即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[6]に存する。
[1] 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を50〜150重量部含み、かつ[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が0.1〜20 である熱可塑性樹脂組成物。
成分(A):塩化ビニル樹脂
成分(B):全ジオール単位に対して3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を50モル%以上含み、全ジカルボン酸単位に対してアジピン酸単位を50モル%以上含むポリエステル系可塑剤
成分(C):ポリエステル系熱可塑性エラストマー
[2] 成分(B)の25℃における粘度が2,500〜10,000mPa・sである、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 成分(C)が、ポリブチレンテレフタレートからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレングリコールからなるソフトセグメントとを有するものである、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] [1]乃至[3]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
[5] 押出成形してなる、[4]に記載の成形体。
[6] [1]乃至[3]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる電線被覆材。
本発明によれば、耐油性、低温柔軟性、ASA樹脂への非移行性、成形加工性等に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は上記の特性に優れるため、特に、電線に好適であり、更には自動車ウィンドモールや建材分野などの押出成形品などに好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を越えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本発明において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を50〜150重量部含み、かつ[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が0.1〜20 であるものである。
成分(A):塩化ビニル樹脂
成分(B):全ジオール単位に対して3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を50モル%以上含み、全ジカルボン酸単位に対してアジピン酸単位を50モル%以上含むポリ
エステル系可塑剤
成分(C):ポリエステル系熱可塑性エラストマー
[成分(A)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)の塩化ビニル樹脂を含む。この塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルモノマーの単独重合体又は塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であれば、その種類は限定されない。
塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;ジブチルマレエート、ジエチルマレエート等のマレイン酸エステル類;ジブチルフマレート、ジエチルフマレート等のフマール酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;エチレン、プロピレン、スチレン等のα−オレフィン類;塩化ビニリデン、臭化ビニル等の塩化ビニル以外のハロゲン化ビニリデン又はハロゲン化ビニル類;ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体が挙げられるが、使用される単量体は、上述のものに限定されるものではない。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。塩化ビニル樹脂の製造において、上記のモノマーを用いる場合、該モノマーは塩化ビニル樹脂の構成成分中、30重量%以下の範囲となるように用いることが好ましく、20重量%以下の範囲となるように用いることがより好ましい。本発明における成分(A)の塩化ビニル樹脂には、塩化ビニルと、必要により用いられる共重合可能な モノマーとの(共)重合体を後塩素化した後塩素化ポリ塩化ビニルを
含み、また重合時に架橋剤を添加することにより架橋させたテトラヒドロフラン(以下THFという)に不溶解の架橋ゲル分を含む架橋塩化ビニル樹脂も含まれる。
塩化ビニル樹脂の製造方法は特に制限されず、例えば、懸濁重合法、塊状重合法、微細懸濁重合法、乳化重合法等の通常の方法を用いることができる。
成分(A)の塩化ビニル樹脂の平均重合度は、その加工性、成形性、物理特性から、JIS K6721に基づいた平均重合度が700〜6,500であることが好ましく、より好ましくは1,300〜4,000である。平均重合度が上記下限値以上になると得られる熱可塑性樹脂組成物の物理特性がより良好となる傾向にあり、また上記上限値以下であると加工性、成形性がより良好となる傾向にあるからである。
本発明において成形品の意匠面を制御する目的で塩化ビニル樹脂として、先述の架橋ゲル分を含む架橋塩化ビニル樹脂を使用することができる。架橋塩化ビニル樹脂がTHF不溶解の架橋ゲル分を含むとき、架橋ゲル分は60重量%以下、好ましくは50重量%以下であるのが望ましく、かつTHFに溶解した部分の平均重合度が上述の範囲にあるのが望ましい。なお、架橋塩化ビニル樹脂は、前記架橋ゲル分のものをそのまま使用してもよいし、または上記ゲル分を超えるものを製造し、これを適宜塩化ビニル樹脂と配合して架橋ゲル分の含有率を調整してもよい。上記架橋ゲル分が上記上限値を超えると引張強さ等の機械的物性が低下する傾向がある。なお、本発明において、THF不溶解の架橋ゲル分は、塩化ビニル樹脂2gをTHF30mlに攪拌しながら投入し、25℃の温度で24時間放置し、その後テフロン(登録商標)濾紙(メッシュサイズ1μm)を用いて濾過し、この操作を3回繰り返した後の不溶解分重量を求めた百分率である。
[成分(B)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる成分(B)のポリエステル系可塑剤は全ジオール
単位に対して3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を50モル%以上含み、かつ全ジカルボン酸単位に対してアジピン酸単位を50モル%以上含むポリエステル系可塑剤である。本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(B)はASA樹脂への非移行性、耐油性に寄与する。
成分(B)のポリエステル系可塑剤は全ジカルボン酸単位に対してアジピン酸単位の含有量が、50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。なお、その上限は100モル%である。成分(B)のポリエステル系可塑剤において、アジピン酸単位の含有量が高いほどASA樹脂への非移行性の点で好ましい。
成分(B)のポリエステル系可塑剤に含有することのできるアジピン酸単位以外のジカルボン酸単位としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,4−デ
カヒドロナフタレンジカルボン酸単位、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸単位等の脂環式ジカルボン酸単位;テレフタル酸単位、フタル酸単位、イソフタル酸単位、フェニレンジオキシジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸単位、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位等の芳香族ジカルボン酸単位;コハク酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカジカルボン酸単位、ドデカジカルボン単位酸等の鎖状脂肪族ジカルボン酸単位;これらのジカルボン酸単位の炭素数1〜4のアルキルエステル単位又はハロゲン化物等のジカルボン酸誘導体単位等が挙げられる。これらは、1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
成分(B)のポリエステル系可塑剤は全ジオール単位に対して3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位の含有量が、50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。なお、その上限は100モル%である。成分(B)のポリエステル系可塑剤において、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位の含有量が高いほどASA樹脂への非移行性の点で好ましい。
一方、成分(B)に含有することのできる3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位以外のジオール単位としては、例えば、1,2−シクロペンタンジオール単位、1,3−シクロペンタンジオール単位、1,2−シクロペンタンジメタノールビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン単位、1,3−シクロペンタンジメタノールビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン単位等の5員環ジオール単位;1,2−シクロヘキサンジオール単位、1,3−シクロヘキサンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジオール単位、1,2−シクロヘキサンジメタノール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の6員環ジオール単位;エチレングリコール単位、トリメチレングリコール単位、1,2−プロパンジオール単位、1,2−ブタンジオール単位、1,3−ブタンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、テトラメチレングリコール単位、ペンタメチレングリコール単位、ヘキサメチレングリコール単位、オクタメチレングリコール単位、デカメチレングリコール単位、ネオペンチルグリコール単位、ジエチレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位、鎖状脂肪族ジオール単位;ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール単位;キシリレングリコール単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル単位、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン単位、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン単位、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン単位
、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸単位等の芳香族ジオール単位等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
成分(B)のポリエステル系可塑剤は、全ジカルボン酸原料に対し、アジピン酸を50モル%以上となるように用い、また、全ジオール原料に対し、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを50モル%以上となるように用いてエステル化又はエステル交換反応及び重縮合反応させることにより得ることができる。エステル化反応又はエステル交換反応の温度条件は通常200〜300℃である。また、十分な反応速度を得るためには触媒を使用することが好ましい。触媒としては、通常のエステル化反応又はエステル交換反応、及び重縮合反応に使用されている触媒であれば、特に限定されず、広く公知のものを採用することができる。具体的にはチタン化合物、アンチモン化合物、スズ化合物等が挙げられる。なお、エステル交換反応を用いて重縮合を行う場合、ジカルボン酸原料は対応するジカルボン酸ジメチルに由来するものとなる。
なお、成分(B)のポリエステル系可塑剤としては、1種類の樹脂を単独で用いてもよく、ジカルボン酸単位やジオール成分の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
成分(B)は25℃における粘度が500〜10,000mPa・sであることが好ましく、1,500〜7,000mPa・sであることがより好ましく、2,000〜5,000mPa・sであることが更に好ましい。25℃における粘度が上記範囲であると、耐油性、成形加工性の観点から好ましい。
成分(B)のポリエステル系可塑剤は市販品としても入手することができる。例えば、ADEKA社製アデカサイザー(登録商標)PNシリーズ、DIC社製ポリサイザー(登録商標)から該当品を選択して用いることができる。
[成分(C)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、結晶性を有するハードセグメントと、非晶性を有するソフトセグメントとを有するブロック共重合体であり、該ハードセグメントがポリエステルからなるものである。
成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマーはDSC法により熱的特性を測定した場合、通常、ハードセグメントに基づく融解ピークを有する。この融解ピーク温度は好ましくは140℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、一方、好ましくは220℃以下であり、より好ましくは210℃以下である。
また、成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマーはソフトセグメントに基づく柔軟性を有し、具体的には通常、デュロD硬度及びデュロA硬度の少なくとも一方が測定可能であり、硬度がデュロD硬度(JIS K6253−1993)60以下及びデュロA硬度(JIS K6253−1993)70以上の少なくとも一方を満たす範囲である。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、環状ポリエステル(本発明において「環状ポリエステル」とは、原料であるジカルボン酸又はそのアルキルエステルが環状構造を有するジカルボン酸又はそのアルキルエステルを含むものを意味する。)からなるハードセグメント(以下、「環状ポリエステルユニット」と称することがある。)とポリアルキレンエーテルグリコールからなるソフトセグメント(以下、「ポリアルキレンエーテルグリコールユニット」と称することがある。)とを有するブロック共重合体(以下、「環
状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体」と称することがある。)、環状ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステル(本発明において「鎖状脂肪族ポリエステル」とは、原料であるジカルボン酸又はそのアルキルエステルが鎖状構造のみを有するジカルボン酸又はそのアルキルエステルであるものを意味する。)からなるソフトセグメント(以下、「鎖状脂肪族ポリエステルユニット」と称することがある。)とを有するブロック共重合体(以下、「環状ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体である。
環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体としては、芳香族ポリエステルからなるハードセグメント(以下、「芳香族ポリエステルユニット」と称することがある。)とポリアルキレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体(以下、「芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体」と称することがある。)、脂環族ポリエステルからなるハードセグメント(以下、「脂環族ポリエステルユニット」と称することがある。)とポリアルキレンエーテルグリコールユニットとを有するブロック共重合体(以下、「脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられ、これらの中でも芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコ−ルブロック共重合体が好ましい。
芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体は、特開平10−130451号公報等に記載されているように公知の熱可塑性エラストマーであり、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを含有する重合体であれば、各々のブロックは、単一重合体であっても共重合体であってもよい。
芳香族ポリエステルユニットの原料は以下に詳述するが、成分(A)の塩化ビニル樹脂との相溶性が特に良好であるために ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントと
して含むことが好ましく、一方、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットの原料についても以下に詳述するが、低温柔軟性の観点から ポ リテトラメチレンエーテルグリコールを原料とするソフトセグメント(以下、「ポリテトラメチレングリコールユニット」と称することがある。)を含むことが好ましい。本発明に用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体が好ましく、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレンエーテルグリコールブロック共重合体が特に好ましい。
また、脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体としては、脂環族ジカルボン酸(本明細書において「脂環族ジカルボン酸」とは環状脂肪族炭化水素に2つのカルボキシル基が直接結合した化合物を意味する。)、脂環族ジオール及びポリアルキレンエーテルグリコールを原料として得られるものが代表的なものとして挙げられ、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを含有する重合体であれば、各々のブロックは、単一重合体であっても共重合体であってもよい。脂環族ポリエステルユニットとしては、シクロヘキサンジカルボン酸とシクロヘキサンジメタノールを原料として得られるハードセグメントを含むことが好ましい。また脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体のポリアルキレンエーテルグリコールユニットとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを原料として得られるソフトセグメント(ポリテトラメチレンエーテルグリコールユニット)を含むことが好ましい。
環状ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体としては、芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステルからなるソフトセグメントを
有するブロック共重合体(以下、「芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)、脂環族ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステルからなるソフトセグメントを有するブロック共重合体(以下、「脂環族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられ、これらの中でも芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体が好ましい。芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体の中でも、芳香族ポリエステルユニットがポリブチレンテレフタレートからなる、ポリブチレンテレフタレート−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体がより好ましい。また、鎖状脂肪族ポリエステルユニットとして好ましいのはセバシン酸、アジピン酸に代表される炭素数4〜10の鎖状脂肪族ジカルボン酸と鎖状脂肪族ジオールとから得られるものである。
非晶性を有するソフトセグメントの原料としては、ポリアルキレンエーテルグリコールが好ましく、ポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルの他、シクロヘキサンジオールの縮合体やシクロヘキサンジメタノールの縮合体等の脂環状エーテルの単一重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらエーテルユニット内でのランダム共重合体でもよい。また、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体も用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールユニットの数平均分子量は600〜4,000、特に800〜2,500、とりわけ900〜2,100であることが好ましい。なお、ここでポリアルキレンエーテルグリコールユニットの数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算した値を言う。
これらのポリアルキレンエーテルグリコールユニットは、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中に1種のみが含まれていてもよく、数平均分子量や構成成分が異なるものの2種以上が含まれていてもよい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体のうち、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールを用いた芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体であれば、炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
上記の炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、ポリエステルの原料として通常用いられるものを使用することができる。例えば、鎖状脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキセングリコール等が挙げられるが、中でも1,4−ブチレングリコールが好ましい。脂環族ジオールとしては、1,4−シクロヘキセングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらの炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとしては、ポリエステルの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸及びその低級(本明細書において「低級」は炭素数4以下を意味する。)アルキルエステルやイソフタル酸、フタル酸、2,5−ノルボナンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。これらの芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルについても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、前述の如く、ポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルグリコールの他、シクロヘキサンジオールの縮合体やシクロヘキサンジメタノールの縮合体等の脂環状エーテルの単一重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらエーテルユニット内でのランダム共重合体でもよい。これらの中でも好ましいのはポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルグリコールであり、より好ましいのはポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)エーテルプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであり、特に好ましいのはポリテトラメチレンエーテルグリコールである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体を製造する場合には、上記の芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体を製造する場合の原料として用いる芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルに代えて脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルを用いればよい。すなわち、炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとしては、ポリエステルの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばシクロヘキサンジカルボン酸及びその低級アルキルエステル、シクロペンタンジカルボン酸及び低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、シクロヘキサンジカルボン酸及びその低級アルキルエステルが好ましく、特にシクロヘキサンジカルボン酸が好適である。これらの脂環族ジカルボン酸についても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中の環状ポリエステルユニット及びポリアルキレンエーテルグリコールユニットのそれぞれの含有量は限定されないが、ハードセグメントの結晶性とソフトセグメントの柔軟性とのバランスから、通常以下のような範囲となる。
即ち、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中の環状ポリエステルユニットの含有量の下限値は、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。また、環状ポリエステルユニットの含有量の上限値は、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。また、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量の下限値は限定されないが、通常5重量%以上、好まし
くは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。また、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量の上限値は限定されないが、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。なお、環状ポリエステルユニットを有するブロック共重合体中の環状ポリエステルユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。同様に、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体としては、特に結晶化速度が速く、成形性に優れることから、ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体が好ましく、ここで、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットのアルキレン基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜5が更に好ましく、4が特に好ましい。
なお、本発明に係る芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体に代表される、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体には、上記成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸及び/又はそのエステルの1種又は2種以上を少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸等の鎖状脂肪族ジカルボン酸やそのジアルキルエステルを共重合成分として導入してもよい。
上記の環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体は、市販品としても入手することができる。このような市販品としては例えば、「プリマロイ(登録商標)」(三菱化学(株)製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡績社製)、「ハイトレル(登録商標)」(デュポン社製)等が挙げられる。
環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体等のポリエステル系熱可塑性エラストマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[配合割合]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を50〜150重量部含む。成分(B)の含有量が成分(A)100重量部に対して50重量部以上であることがASA樹脂への非移行性、耐寒性(低温柔軟性)を得るために必要であり、成分(B)の含有量は、好ましくは60重量部以上であり、より好ましくは70重量部以上である。一方、成形加工性の観点から、成分(B)の含有量は成分(A)100重量部に対して150重量部以下であり、この観点から、好ましくは130重量部以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が0.1〜20である。成形加工性の観点から[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が0.1以上であり、この観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.8以上である。一方、低温柔軟性の観点から[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が20以下であり、この観点から、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の他に安定剤、成分(B)以外の可塑剤、潤滑材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、発泡剤、衝撃改良剤等の各種添加剤、充填材、成分(A)及び成分(C)以外
の熱可塑性樹脂等を本発明の効果を著しく阻害しない限り、必要に応じて配合することができる。
安定剤としては、三塩基性硫酸鉛、ケイ酸鉛、塩基性炭酸鉛等の無機塩類、鉛、カドミウム、バリウム、カルシウム、亜鉛等金属の有機酸塩を主体とする金属石ケン、前述金属を少なくとも2種含むもの、例えばBa−Zn、Ca−Zn、Cd−Ba等の脂肪酸コンプレックス又は脂肪酸(ホスファイト)系、カルボキシレート(ホスファイト)系の複合金属石ケン又は複合液状金属石ケン、有機スズ系化合物等が挙げられる。これらの安定剤は1種のみを用いても2種以上用いてもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物に安定剤を配合する場合、安定剤の配合量は、成分(A)100重量部に対して通常、0.1〜30重量部、好ましくは1〜15重量部である。
成分(B)以外の可塑としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、又は炭素原子数10〜13程度の高級アルコール又は混合アルコールのフタル酸エステル等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−n−オクチルアジペート、ジ−n−デシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ−n−オクチル−n−デシルトリメリレート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘプチルエステル等のビフェニルテトラカルボン酸テトラアルキルエステル系可塑剤;ポリエステル系高分子可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、液状エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィン;五塩化ステアリン酸アルキルエステル等の塩素化脂肪酸エステル等が挙げられる。成分(B)以外の可塑剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いることのできる充填材は特に制限されないが、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、クレー、シリカ、ホワイトカーボン等を例示できる。これらの充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物に充填材を配合する場合、充填材の配合量は、塩素系樹脂成分(A)100重量部に対し通常、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部である。
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及びその他の成分を所定の混練機又は混合機に投入し、成分(A)が劣化しない温度範囲、例えば、100〜230℃、好ましくは130〜200℃の温度に加熱しながら、均一に混合又は混練することにより調製することができる。上述の各成分の混合又は混練に用いる混合機又は混練機は、実質的に配合物を均一に混合、混練できる装置であればよく特に限定されるものではない。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、プラネ
タリーミキサー等が挙げられ、混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ミルロール、バンバリーミキサー、ニーダー、インテンシブミキサー等、加熱しながら剪断力下で混練できるものが挙げられる。
[物性]
本発明の熱可塑性樹脂組成物の硬度は、JIS K6253に基づく硬度測定(デュロ−A)で30〜90が好ましく、50〜80がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は耐寒性(低温柔軟性)に優れたものである。本発明において耐寒性(低温柔軟性)はJIS K6261に基づき、低温脆化試験機を用いて低温での50%衝撃脆化温度により評価することができる。JIS K6261に基づく50%衝撃脆化温度は、その値が低いほど耐寒性(低温柔軟性)に優れたものと評価され、好ましくは−50℃以下、より好ましくは−55℃以下である。
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は押出成形、射出成形、圧縮成形等の各種成形方法により成形体とすることができる。これらの中でも熱可塑性樹脂組成物の溶融状態での流動性の観点から、押出成形により成形体とする方法が好ましい。成形条件としては特に制限はないが成形温度130〜220℃が適当であり、上記下限値以上であることが成形性、意匠性等の観点から好ましい。一方、上記上限値以下であると熱可塑性樹脂組成物に含まれる塩化ビニル樹脂の分解を防ぐ観点から好ましい。
[用途]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐油性、低温柔軟性に優れ、また、ASA樹脂に可塑剤が移行しない等の特性を有する。このため、各種の産業分野において好適に用いることができ、特に、ウィンドモール、ドア下モール、サイドモール等の自動車外装材、ノブ、グリップ等の自動車内装材、パッキン、シール材、ガスケット等の建材、電線被覆材として好適に使用することができ、電線被覆材に好適である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原料]
以下の実施例、比較例において熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料は以下の通りである。
<成分(A)>
A−1:
信越化学社製 塩化ビニル樹脂
平均重合度:2,500
<成分(B)>
B−1:
ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を100モル%、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
B−2:
ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を70モル%、ネオペンチルグリコール単位を10モル%、1,4−ブタンジオールを20モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
b−1(比較例用):
ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を30モル%、2−メチルプロパンジオール単位を50モル%、1,4−ブタンジオールを20モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
b−2(比較例用):
ジオール単位として1,4−ブタンジオールを60モル%、1,3−ブタンジオールを40モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:3,000mPa・s
b−3(比較例用):
ジオール単位として1,2−ブタンジオールを50モル%、1,4−ブタンジオールを50モル%含み、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
粘度:700mPa・s
b−4(比較例用):
トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル):TOTM
<成分(C)>
C−1:
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(ポリブチレンテレフタレートプレポリマー(ハードセグメント)とポリテトラメチレンエーテルグリコール(ソフトセグメント)の共重縮合によって得られたもの)
融解ピーク温度:165℃
デュロD硬度:35
<その他の成分>
D−1:
Ca/Mg/Zn系安定剤(アデカ社製、アデカスタブRUP−106)
[評価方法]
以下の実施例及び比較例において、熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料および得られた熱可塑性樹脂組成物の評価方法は以下の通りである。
1)低温柔軟性
JIS K6261に基づき、低温ねじり試験を実施し、−55〜25℃でのねじりモジュラス変化 を 測定し、以下基準で評価を実施した。
○:−30℃〜25℃領域においてねじりモジュラスが殆ど変化しない。
△:−30℃〜25℃領域においてねじりモジュラスが若干変化する。
×:測定領域すべてでねじりモジュラスが著しく変化する。
2)耐油性
JIS K6723に基づき、耐油試験を行った。
○:引張強さの残率、伸びの残率が共に90%以上である。
△:引張強さの残率、伸びの残率が共に80%以上であり、かつそのうちのいずれかが90%未満である。
×:引張強さの残率、伸びの残率の少なくとも片方が80%未満である。
3)ASA移行性
熱可塑性樹脂組成物を2mmの厚みに調整したプレスシートから、鍛造刃を用いて幅6mm、長さ40mmの試験片を打ち抜いた。試験片の全面に対してASA樹脂を密着させ、500gの荷重をかけた。その状態で60℃の雰囲気下に24時間静置し、ASA表面に痕跡が認められるか否かで評価を行った。
○:痕跡は認められない。
△:わずかに痕跡が認められる。
×:明確な痕跡が認められる。
[実施例1,3,5,7及び比較例1〜13
表−1又は表−2に示す配合原料のうち、成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の成分を表−1又は表−2に記載した配合量で高速ミキサーに投入し、110℃になるまで攪拌して排出した。排出した混合物に成分(C)のポリエステル系熱可塑性エラストマーを表−1又は表−2に記載した配合量で加え、ニーダーにて混練し、170℃に到達したところで排出を行なった。
低温柔軟性、耐油性、ASA移行性については、この熱可塑性樹脂組成物をプレス成形機にて成形温度180℃、成形圧力200kg/cmで成形し、評価用のサンプルとして使用した。各評価結果を表−1又は表−2に示す。
Figure 0006520294
Figure 0006520294
[評価結果]
表−1、表−2からわかるように、本発明の熱可塑性樹脂組成物に該当する実施例1,3,5,7は比較例1〜13と比較して、低温柔軟性、耐油性、ASA移行性のバランスに優れていることがわかる。
比較例1〜3は成分(B)を使用せず、代わりに「b−1」〜「b−3」のいずれかを使用した例であるが、実施例1〜8と比較してASA樹脂への非移行性に劣るものであることがわかる。また、比較例4は成分(B)を使用せず、代わりに「b−4」を使用した例であるが、耐油性に劣るものであることがわかる。また、比較例5、6はいずれも成分(A)〜成分(C)を使用しているものの、成分(B)の配合量を少なくした例であるが、これらは低温柔軟性に劣るものであることがわかる 。また、比較例7、8は成分(B
)の配合量を多くした例であるが、材料を均一に混練することができなかった。更に、比較例9は成分(A)〜成分(C)を使用しているものの、[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が125/5(=25)であるために本発明の熱可塑性樹脂組成物に該当しない例であり、低温柔軟性に劣るものであることがわかる。

Claims (3)

  1. 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を50〜150重量部含み、かつ[成分(B)の重量]/[成分(C)の重量]が0.1〜20である熱可塑性樹脂組成物からなる電線被覆材
    成分(A):塩化ビニル樹脂
    成分(B):ジオール単位として3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を100モル%、ジカルボン酸単位してアジピン酸単位を100モル%含むポリエステル系可塑剤
    成分(C):ポリエステル系熱可塑性エラストマー
  2. 成分(B)の25℃における粘度が500〜10,000mPa・sである、請求項1に記載の電線被覆材
  3. 成分(C)が、ポリブチレンテレフタレートからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレングリコールからなるソフトセグメントとを有するものである、請求項1又は2に記載の電線被覆材
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