JP6582701B2 - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱収縮性に優れ、通常の塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる成形機により容易に成形することが可能であり、また、強度(耐衝撃性、引張強さ)に優れた塩化ビニル系樹脂組成物に関する。また、本発明は、この塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られる成形体及び建材に関する。
硬質塩化ビニル系樹脂は、一般に、耐衝撃性、耐熱性等の物理的性質に優れており、且つ比較的安価であることから、建築用内外装材、電気機器部材、家具等に広く利用されている。しかし、塩化ビニル系樹脂成形品は、気温の変化等により長手方向の長さが変化するため、使用時、収縮により、コーナー部に隙間が発生したり、例えば、窓枠部材、雨樋等のように、金属との勘合あるいは金属に組み付ける場合には、収縮や金属との線膨張率の違いから、気密性が低下したり、接続部で破損しやすいという欠点があった。
その解決手段として、従来、特許文献1に開示されているように、硬質塩化ビニル系樹脂成形品の芯材としてガラス繊維ネット等を複合化する方法が知られている。また、特許文献2、3に開示されているように、塩化ビニル系樹脂にガラス短繊維を添加する方法が知られている。更に、特許文献4に開示されているように、塩化ビニル系樹脂に有機短繊維を添加する方法が知られている。
特開平9−328875号公報 特公昭53−21891号公報 特公平2−28616号公報 特開2000−355646号公報
本発明者の詳細な検討によれば、上記特許文献1〜4に記載されている技術にはそれぞれ次のような問題点があることがわかった。
特許文献1に記載されている技術は、工程が複雑なために製品コストが高くなり過ぎてしまうばかりか、製品形状によっては複合化できない場合がある。また、特許文献2、3に記載されている技術では、ガラス繊維により強化した塩化ビニル系樹脂組成物を、通常塩化ビニル樹脂に用いる成形機により成形するとスクリュー、バレル、金型等、金属部分の磨耗が著しく、また、ランニングコストがかかるといった問題点がある。更に特許文献4に開示されている技術においては、塩化ビニル樹脂と有機短繊維の相溶性が悪いために塩化ビニル系樹脂成形品の耐衝撃性を低下させるという問題がある。また、軟質塩化ビニル樹脂に対して有機短繊維を使用した場合には、軟質塩化ビニル系樹脂成形品の引張強さを低下させるという問題がある。
本発明は上記従来技術の問題点を解決することを目的とするものである。即ち、本発明の課題は、耐熱収縮性に優れ、通常の塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる成形機により容易に成形することが可能であり、また、強度(耐衝撃性、引張強さ)に優れた塩化ビニル系樹脂組成物、並びに該塩化ビニル系樹脂組成物を用いて得られる成形体及び建材を提供することにある。
本発明者は、塩化ビニル樹脂と特定の被覆樹脂繊維とを特定量で含む塩化ビニル系樹脂組成物が上記課題を解決し得ることを見出した。即ち本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 下記成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を0.5〜20重量部含む塩化ビニル系樹脂組成物。
成分(A):塩化ビニル樹脂
成分(B):熱可塑性樹脂繊維の芯をポリエステル系熱可塑性エラストマーにより被覆してなる被覆樹脂繊維
[2] 成分(B)において、前記熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5〜50μmであり、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーの被覆厚みが1〜30μmであり、かつ前記被覆樹脂繊維の平均繊維長が0.3〜5mmである、[1]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[3] 成分(B)において、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーがポリブチレンテレフタレートからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレングリコールからなるソフトセグメントとを有するものである、[1]又は[2]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[4] 成分(B)において、前記熱可塑性樹脂繊維の融解ピーク温度が200〜260℃である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[5] 成分(B)において、前記熱可塑性樹脂繊維がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリビニルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1つからなるものである、[1]乃至[4]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[6] 下記成分(C)を更に含み、かつ成分(A)100重量部に対し、成分(C)を0.5〜100重量部含む、[1]乃至[5]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
成分(C): ゴム質グラフト重合体
[7] 成分(C)としてメチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のうちの少なくとも一方を含む、[6]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[8] 下記成分(D)を更に含み、かつ成分(A)100重量部に対し、成分(D)を10〜200重量部含む、[1]乃至[7]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
成分(D):可塑剤
[9] [1]乃至[8]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる成形体。
[10] [1]乃至[8]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物からなる建材。
本発明によれば、耐熱収縮性に優れ、通常の塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる成形機により容易に成形することが可能であり、また、強度(耐衝撃性、引張強さ)に優れた塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。より詳細には、耐熱収縮性に優れ、通常の塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる成形機により容易に成形することが可能であり、また、耐衝撃性に優れた硬質塩化ビニル系樹脂組成物、或いは、通常の塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる成形機により容易に成形することが可能であり、また、引張強さに優れた軟質塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、この塩化ビニル系樹脂組成物を用いて得られる成形体及び建材が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を越えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本発明において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
〔塩化ビニル系樹脂組成物〕
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を0.5〜20重量部含むものである。
成分(A):塩化ビニル樹脂
成分(B):熱可塑性樹脂繊維の芯をポリエステル系熱可塑性エラストマーにより被覆してなる被覆樹脂繊維
[成分(A)]
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、成分(A)として塩化ビニル樹脂を含む。この塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルモノマーの単独重合体、又は塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーの共重合体であれば、その種類は限定されない。
塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;ジブチルマレエート、ジエチルマレエート等のマレイン酸エステル類;ジブチルフマレート、ジエチルフマレート等のフマール酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;エチレン、プロピレン、スチレン等のα−オレフィン類;塩化ビニリデン、臭化ビニル等の塩化ビニル以外のハロゲン化ビニリデン又はハロゲン化ビニル類;ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体が挙げられるが、使用される単量体は、上述のものに限定されるものではない。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。塩化ビニル樹脂の製造において、上記の塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーを用いる場合、該モノマーは塩化ビニル樹脂の構成成分中、30重量%以下の範囲となるように用いることが好ましく、20重量%以下の範囲となるように用いることがより好ましい。
本発明における成分(A)の塩化ビニル樹脂には、塩化ビニルと、必要により用いられる共重合可能なモノマーとの(共)重合体を後塩素化した後塩素化ポリ塩化ビニルを含み、また重合時に架橋剤を添加することにより架橋させたテトラヒドロフラン(以下THFという)に不溶解の架橋ゲル分を含む架橋塩化ビニル樹脂も含まれる。
塩化ビニル樹脂の製造方法は特に制限されず、例えば、懸濁重合法、塊状重合法、微細懸濁重合法、乳化重合法等の通常の方法を用いることができる。
成分(A)の塩化ビニル樹脂の平均重合度は、その加工性、成形性、物理特性から、JIS K6721に基づいた平均重合度が600〜6,500であることが好ましく、より好ましくは800〜4,000である。平均重合度が上記下限値以上であると得られる塩化ビニル系樹脂組成物の物理特性がより良好となる傾向にあり、また上記上限値以下であると加工性、成形性がより良好となる傾向にある。
本発明において、成形品の意匠面を制御する目的で、塩化ビニル樹脂として、先述の架橋ゲル分を含む架橋塩化ビニル樹脂を使用することができる。架橋塩化ビニル樹脂がTHF不溶解の架橋ゲル分を含むとき、架橋ゲル分は60重量%以下、好ましくは50重量%以下であるのが望ましく、かつTHFに溶解した部分の平均重合度が上述の範囲にあるのが望ましい。なお、架橋塩化ビニル樹脂は、前記架橋ゲル分のものをそのまま使用してもよいし、または上記ゲル分を超えるものを製造し、これを適宜塩化ビニル樹脂と配合して架橋ゲル分の含有率を調整してもよい。上記架橋ゲル分が上記上限値を超えると引張強さ等の機械的物性が低下する傾向がある。なお、本発明において、THF不溶解の架橋ゲル分は、塩化ビニル樹脂2gをTHF30mlに攪拌しながら投入し、25℃の温度で24時間放置し、その後テフロン(登録商標)濾紙(メッシュサイズ1μm)を用いて濾過し、この操作を3回繰り返した後の不溶解分重量を求めた百分率である。
[成分(B)]
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、成分(B)として、熱可塑性樹脂繊維の芯をポリエステル系熱可塑性エラストマーにより被覆してなる被覆樹脂繊維を含む。即ち、成分(B)は、熱可塑性樹脂繊維の芯材をポリエステル系熱可塑性エラストマーで被覆してなる、所謂芯鞘繊維である。
熱可塑性樹脂繊維を構成する芯材の熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、セルロースエステル、ポリスチレン、ポリビニル樹脂、ポリスルホンアミド、ポリエーテル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、シアノエチルポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン−トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、シアノエチルセルロース、ポリアセタール、ポリスルホネート、ポリエステルイオノマー、ポリオレフィンイオノマーおよびこれらのポリマーのコポリマーおよび/または混合物が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、これらの混合物、エチレンまたはプロピレンのコポリマーを含むポリオレフィンコポリマーが挙げられる。
ポリエステルとしては、炭素数4〜20のジカルボン酸(好ましくは脂環族又は芳香族ジカルボン酸)と炭素数2〜24のジオール(好ましくは脂肪族又は脂環族ジオール)から製造されるものが挙げられる。ジカルボン酸としては、通常、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ソドスルホイソフタル酸、好ましくはテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が用いられる。ジオールとしては、通常、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが用いられる。ポリエステルとしては、特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が用いられる。なお、これらのポリエステルには液晶コポリエステルも含まれる。
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、これらの混合物、および、ポリアミドのコポリマーなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂繊維は、これらの熱可塑性樹脂の1種のみから構成されるものであってもよく、2種以上から構成されるものであってもよい。
これらのうち、後述の通り、融解ピーク温度が通常200〜260℃の範囲であり、熱可塑性樹脂繊維を被覆するポリエステル系熱可塑性エラストマーの融解ピーク温度に近いことから、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリビニルアセテートが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートがより好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、熱可塑性樹脂繊維は、融解ピーク温度が200〜260℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維の融解ピーク温度がこの範囲であれば、熱可塑性樹脂繊維を被覆するポリエステル系熱可塑性エラストマーの融解ピーク温度に近く、芯繊維と被覆層との密着性が高くなる傾向があり、また、被覆樹脂繊維の成形性の観点から好ましい。また、融解ピーク温度が200℃以上であれば、塩化ビニル系樹脂組成物のドメインとなる塩化ビニル樹脂が溶融する温度では溶融することがなく、成形時に繊維形状を維持することができ、好ましい。ここで、熱可塑性樹脂繊維の融解ピーク温度は、DSC法により測定された値である。
熱可塑性樹脂繊維を被覆するポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、結晶性を有するハードセグメントと、非晶性を有するソフトセグメントとを有するブロック共重合体であり、該ハードセグメントがポリエステルからなるものである。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーはDSC法により熱的特性を測定した場合、通常、ハードセグメントに基づく融解ピークを有する。この融解ピーク温度は好ましくは140℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、一方、好ましくは220℃以下であり、より好ましくは210℃以下である。
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーはソフトセグメントに基づく柔軟性を有し、具体的にはデュロD硬度及びデュロA硬度の少なくとも一方が測定可能であり、デュロD硬度(JIS K6253−1993)が通常、65以下であり、60以下であり、一方、デュロA硬度(JIS K6253−1993)が通常、65以上であり、好ましくは70以上である。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、環状ポリエステル(本発明において「環状ポリエステル」とは、原料であるジカルボン酸又はそのアルキルエステルが環状構造を有するジカルボン酸又はそのアルキルエステルを含むものを意味する。)からなるハードセグメント(以下、「環状ポリエステルユニット」と称することがある。)とポリアルキレンエーテルグリコールからなるソフトセグメント(以下、「ポリアルキレンエーテルグリコールユニット」と称することがある。)とを有するブロック共重合体(以下、「環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体」と称することがある。)、環状ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステル(本発明において「鎖状脂肪族ポリエステル」とは、原料であるジカルボン酸又はそのアルキルエステルが鎖状構造のみを有するジカルボン酸又はそのアルキルエステルであるものを意味する。)からなるソフトセグメント(以下、「鎖状脂肪族ポリエステルユニット」と称することがある。)とを有するブロック共重合体(以下、「環状ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体である。
環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体としては、芳香族ポリエステルからなるハードセグメント(以下、「芳香族ポリエステルユニット」と称することがある。)とポリアルキレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体(以下、「芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体」と称することがある。)、脂環族ポリエステルからなるハードセグメント(以下、「脂環族ポリエステルユニット」と称することがある。)とポリアルキレンエーテルグリコールユニットとを有するブロック共重合体(以下、「脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられ、これらの中でも芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコ−ルブロック共重合体が好ましい。
芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体は、特開平10−130451号公報等に記載されているように公知の熱可塑性エラストマーであり、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを含有する重合体であれば、各々のブロックは、単一重合体であっても共重合体であってもよい。
芳香族ポリエステルユニットの原料は以下に詳述するが、成分(A)の塩化ビニル樹脂との相溶性が特に良好であるために
ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとして含むことが好ましく、一方、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットの原料についても以下に詳述するが、低温柔軟性の観点からポリテトラメチレンエーテルグリコールを原料とするソフトセグメント(以下、「ポリテトラメチレングリコールユニット」と称することがある。)を含むことが好ましい。本発明に用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体が好ましく、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレンエーテルグリコールブロック共重合体が特に好ましい。
また、脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体としては、脂環族ジカルボン酸(本発明において「脂環族ジカルボン酸」とは環状脂肪族炭化水素に2つのカルボキシル基が直接結合した化合物を意味する。)、脂環族ジオール及びポリアルキレンエーテルグリコールを原料として得られるものが代表的なものとして挙げられ、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを含有する重合体であれば、各々のブロックは、単一重合体であっても共重合体であってもよい。脂環族ポリエステルユニットとしては、シクロヘキサンジカルボン酸とシクロヘキサンジメタノールを原料として得られるハードセグメントを含むことが好ましい。また脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体のポリアルキレンエーテルグリコールユニットとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを原料として得られるソフトセグメント(ポリテトラメチレンエーテルグリコールユニット)を含むことが好ましい。
環状ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体としては、芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステルからなるソフトセグメントを有するブロック共重合体(以下、「芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)、脂環族ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステルからなるソフトセグメントを有するブロック共重合体(以下、「脂環族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体」と称することがある。)等が挙げられ、これらの中でも芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体が好ましい。芳香族ポリエステル−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体の中でも、芳香族ポリエステルユニットがポリブチレンテレフタレートからなる、ポリブチレンテレフタレート−鎖状脂肪族ポリエステルブロック共重合体がより好ましい。また、鎖状脂肪族ポリエステルユニットとして好ましいのはセバシン酸、アジピン酸に代表される炭素数4〜10の鎖状脂肪族ジカルボン酸と鎖状脂肪族ジオールとから得られるものである。
非晶性を有するソフトセグメントの原料としては、ポリアルキレンエーテルグリコールが好ましく、ポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルの他、シクロヘキサンジオールの縮合体やシクロヘキサンジメタノールの縮合体等の脂環状エーテルの単一重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらエーテルユニット内でのランダム共重合体でもよい。また、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体も用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールユニットの数平均分子量は600〜4,000、特に800〜2,500、とりわけ900〜2,100であることが好ましい。なお、ここでポリアルキレンエーテルグリコールユニットの数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算した値を言う。
これらのポリアルキレンエーテルグリコールユニットは、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中に1種のみが含まれていてもよく、数平均分子量や構成成分が異なるものの2種以上が含まれていてもよい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体のうち、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールを用いた芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体であれば、炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
上記の炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、ポリエステルの原料として通常用いられるものを使用することができる。例えば、鎖状脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキセングリコール等が挙げられるが、中でも1,4−ブチレングリコールが好ましい。脂環族ジオールとしては、1,4−シクロヘキセングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらの炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとしては、ポリエステルの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸及びその低級(本発明において「低級」は炭素数4以下を意味する。)アルキルエステルやイソフタル酸、フタル酸、2,5−ノルボナンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。これらの芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルについても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、前述の如く、ポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルグリコールの他、シクロヘキサンジオールの縮合体やシクロヘキサンジメタノールの縮合体等の脂環状エーテルの単一重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらエーテルユニット内でのランダム共重合体でもよい。これらの中でも好ましいのはポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルグリコールであり、より好ましいのはポリメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)エーテルプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであり、特に好ましいのはポリテトラメチレンエーテルグリコールである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、脂環族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体を製造する場合には、上記の芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体を製造する場合の原料として用いる芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルに代えて脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルを用いればよい。すなわち、炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとしては、ポリエステルの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばシクロヘキサンジカルボン酸及びその低級アルキルエステル、シクロペンタンジカルボン酸及び低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、シクロヘキサンジカルボン酸及びその低級アルキルエステルが好ましく、特にシクロヘキサンジカルボン酸が好適である。これらの脂環族ジカルボン酸についても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中の環状ポリエステルユニット及びポリアルキレンエーテルグリコールユニットのそれぞれの含有量は限定されないが、ハードセグメントの結晶性とソフトセグメントの柔軟性とのバランスから、通常以下のような範囲となる。
即ち、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中の環状ポリエステルユニットの含有量の下限値は、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。また、環状ポリエステルユニットの含有量の上限値は、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。また、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量の下限値は限定されないが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。また、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量の上限値は限定されないが、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。なお、環状ポリエステルユニットを有するブロック共重合体中の環状ポリエステルユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。同様に、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットを有するブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコールユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体としては、特に結晶化速度が速く、成形性に優れることから、ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体が好ましく、ここで、ポリアルキレンエーテルグリコールユニットのアルキレン基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜5が更に好ましく、4が特に好ましい。
なお、本発明に係る芳香族ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体に代表される、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体には、上記成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸及び/又はそのエステルの1種又は2種以上を少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸等の鎖状脂肪族ジカルボン酸やそのジアルキルエステルを共重合成分として導入してもよい。
上記の環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体は、市販品としても入手することができる。このような市販品としては例えば、「プリマロイ(登録商標)」(三菱化学(株)製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡社製)、「ハイトレル(登録商標)」(デュポン社製)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂繊維の被覆には、上記の環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルグリコールブロック共重合体等のポリエステル系熱可塑性エラストマーの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
成分(C)の被覆樹脂繊維は、一般的に乾燥、紡糸(押出機で共押出し)、延伸、巻き取り、裁断のプロセスを経て製造される。以下、各工程毎に説明する。
(乾燥)
まず、芯材の熱可塑性樹脂と被覆材のポリエステル系熱可塑性エラストマーの両方のペレットを、それぞれ公知の方法で加熱乾燥する。加熱温度には特制限はないが、通常70〜110℃程度である。この加熱乾燥は、必要に応じて窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下で実施する。
(紡糸)
熱可塑性樹脂を芯材、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを被覆材となるように共押出成形を行い、糸状に成形する。このとき、芯材と被覆材を供給する量により、糸状としたときの芯材と被覆材のそれぞれの厚み比(芯材の繊維径と被覆厚み)を制御することができる。
(延伸)
共押出成形により得られた糸状の被覆樹脂繊維を更に、所望の繊維径となるように延伸する。通常、延伸工程は加熱(樹脂が溶融しない程度の温度、通常80〜150℃)で実施される。この延伸は、公知の延伸機を用いて常法に従って実施することができる。
(巻き取り)
所望の繊維径に延伸され被覆樹脂繊維は、通常、ボビン、ドラム等を用いて巻き取ることができる。
(裁断)
巻き取った被覆樹脂繊維は通常、所望の繊維長となるように裁断される。
このようにして製造される被覆樹脂繊維の芯となる熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径は5〜50μmであることが好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの被覆厚みは1〜30μmであることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が上記下限以上であると、十分な耐熱収縮性や強度(耐衝撃性、引張強さ)の改善効果が得られ好ましい。一方、上記上限以下であると、良好な成形性を得ることができ、好ましい。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの被覆厚みが上記下限以上であると、ポリエステル系熱可塑性エラストマーで熱可塑性樹脂繊維を被覆したことによる塩化ビニル樹脂に対する相溶性向上効果を十分に得ることができ、強度(耐衝撃性、引張強さ)を高めることができる。一方、上記上限以下であると、被覆樹脂繊維の熱可塑性樹脂繊維の割合を確保して、十分な耐熱収縮性や強度(耐衝撃性、引張強さ)の改善効果を得ることができる。熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径は、特に10〜30μm、とりわけ15〜25μmで、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの被覆厚みは特に1〜10μm、とりわけ1〜3μmで、被覆樹脂繊維自体の平均繊維径は10〜40μm、特に15〜30μmであることが好ましい。
また、被覆樹脂繊維の平均繊維長は、0.3〜5mmであることが好ましい。被覆樹脂繊維の平均繊維長が、上記下限以上であると、十分な耐熱収縮性や強度(耐衝撃性、引張強さ)の改善効果が得られ好ましい。一方、上記上限以下であると、良好な成形性を得ることができ、好ましい。被覆樹脂繊維の平均繊維長は、特に0.5〜3mmであることが好ましく、とりわけ0.5〜2.5mmであることが好ましい。
なお、被覆樹脂繊維及び熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの被覆厚み、並びに被覆樹脂繊維の平均繊維長はいずれも光学顕微鏡を用いて実測することができる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、成分(B)の被覆樹脂繊維を、成分(A)100重量部に対して0.5〜20重量部含む。成分(B)の含有量が上記下限以上であると、成分(B)を配合することにより耐熱収縮性や強度(耐衝撃性、引張強さ)の改善効果を十分に得ることができる。成分(B)の含有量が上記上限以下であると、良好な成形性を維持することができる。
成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対して0.8重量部以上であることが好ましく、1重量部以上であることがより好ましく、15重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることが更に好ましい。
[成分(C)]
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性等を向上させる観点から更に下記成分(C)を含有してもよい。成分(C)のゴム質グラフト重合体は、ゴム質重合体(C1)の存在下でビニル単量体(C2)をグラフト重合して得られるグラフト重合体である。成分(C)のゴム質グラフト重合体は、上記のゴム質重合体(C1)をコア層とし、ビニル単量体(C2)のグラフト重合部をシェル層とするコア−シェル型のゴム質重合体であってもよい。
成分(C):ゴム質グラフト重合体
ゴム質重合体(C1)としては、ブタジエン系ゴム質重合体、シリコーン系ゴム質重合体、アクリル系ゴム質重合体など公知のゴム質重合体を用いることが可能である。
ゴム質重合体(C1)のガラス転移温度(以下、「Tg」ということがある。)はより優れた耐衝撃性を付与できるという観点で、通常0℃以下であり、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−30℃以下である。ガラス転移温度が複数ある場合、少なくとも1つのガラス転移温度が上記上限以下であることが好ましく、特に好ましくは全てのガラス転移温度が上記上限以下にあることである。これらのゴム質重合体は、乳化重合によって得ることが好ましい。
なお、ゴム質重合体(C1)のガラス転移温度は、動的機械的特性解析装置で測定されるtanδ曲線のピークトップの温度であり、具体的には、次のようにして測定される。
ゴム質重合体の粉体を熱プレス機によって3mm(厚さ)×10mm(幅)×50mm(長さ)の試験片に調製し、動的機械的特性解析装置(機種名「EXSTAR DMS6100」、セイコーインスツル社製)により、両持ち曲げモード、昇温速度2℃/分、周波数10Hzの条件でtanδ曲線を測定し、tanδ曲線のピークトップの温度をガラス転移温度とする。
ブタジエン系ゴム質重合体としては、1,3−ブタジエン50〜100重量%と、1,3−ブタジエンと共重合可能な1種以上のビニル単量体0〜50重量%を重合して得られるものが好ましい。このようなブタジエン系ゴム質重合体を用いることにより、塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性を大きく向上させることができる。1,3−ブタジエンと共重合可能なビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の多官能芳香族ビニル単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸アリルを併用することもできる。
尚、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
シリコーン系ゴム質重合体としては、ポリオルガノシロキサンゴムと、ポリオルガノシロキサンゴムとアクリルゴムを複合化したシリコーン/アクリル系複合ゴムが挙げられるが、塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性の向上効果の観点から、シリコーン/アクリル系複合ゴムを用いることが好ましい。シリコーン/アクリル系複合ゴムは、ポリオルガノシロキサンゴム成分が1〜99重量%、アクリルゴム成分が99〜1重量%(両成分の合計が100重量%)であることが好ましい。
シリコーン/アクリル系複合ゴムの製造方法としては、乳化重合によって、まずポリオルガノシロキサンゴムのラテックスを調製し、次いで、アクリルゴムを構成する単量体をポリオルガノシロキサンゴムのラテックス粒子に含浸させてから、これを重合する方法が好ましい。アクリル系ゴムを構成する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アクリル系ゴム質重合体としては、(メタ)アクリレート、又は、(メタ)アクリレー
トを主成分とする混合物を重合して得られるものが好ましい。(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル系ゴム質重合体は、Tgが0℃以下であることが、塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性の向上効果の観点から好ましい。Tgが0℃以下であるアクリル系ゴム質重合体を得るには、(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
アクリル系ゴム質重合体は、単量体の1種以上を重合させて得た(共)重合体であってもよい。また、2種以上のアクリル系ゴム質重合体を複合させた、アクリル系複合ゴムであってもよい。
上記のゴム質重合体(C1)のうち、低温衝撃強度において高い効果を発現させることができる点で、好ましくはブタジエン系ゴム質重合体、シリコーン系ゴム質重合体であり、特に好ましくはブタジエン系ゴム質重合体である。
ゴム質重合体(C1)にグラフト重合させるビニル単量体(C2)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。成分(A)の塩化ビニル樹脂への親和性の点で好ましくは、芳香族ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレートである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ
)アクリレート、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーン等の、分子中に
2個以上の不飽和結合を有するビニル単量体を併用することもできる。
これらのビニル単量体(C2)は、得られるゴム質グラフト重合体としてのTgが30℃以上となるものが好ましく、60℃以上となるものがより好ましい。Tgが低すぎる場合、生成したゴム質グラフト重合体の脱水乾燥から樹脂への溶融混合にいたる各工程でのハンドリングが、その粘着性のために困難となり実用性に欠ける傾向がある。
このビニル単量体(C2)は極性官能基を有していてもよい。中でも、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基から選ばれる少なくとも1種を有するビニル単量体を用いた場合には、その極性官能基の存在によって塩化ビニル樹脂との混合性が良好となる傾向があるために好ましい。カルボキシル基を含有する単量体の例としてはメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸、メチレンロマン酸、α−メチレングルタール酸等を挙げることができるが、特にメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸が好ましく用いられる。水酸基を含有する単量体の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。グリシジル基を含有する単量体としてはグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
これらの極性官能基を有する単量体の量としては、全ビニル単量体に対して通常1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%である。
但し、グリシジル基を含有する単量体の場合、その含有量は全ビニル単量体の通常5重量%未満であり、好ましくは0〜4重量%である。
成分(C)のゴム質グラフト重合体としては、特にブタジエン系ゴム質重合体に、メタクリル酸メチル、スチレン等のビニル単量体をグラフト重合してなるものが、塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性向上効果の面で好ましい。
成分(C)のゴム質グラフト重合体は、ゴム質重合体(C1)10〜90重量%(ゴム質重合体(C1)とビニル単量体(C2)の合計100重量%中)の存在下において、ビニル単量体(C2)10〜90重量%(ゴム質重合体(C1)とビニル単量体(C2)の合計100重量%中)をグラフト重合して得られたものであることが好ましい。さらにゴム質重合体(C1)50〜90重量%の存在下において、ビニル単量体(C2)10〜50重量%をグラフト重合して得られたものであることが好ましい。ゴム質重合体(C1)の使用割合が高いほど耐衝撃性の付与効果に優れる。一方、ゴム質重合体(C1)の使用割合が90重量%以下であれば、ゴム質グラフト重合体同士のブロッキングを抑制しやすく作業性の観点で好ましい。
ゴム質グラフト重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、ゴム質重合体(C1)の存在下でビニル単量体(C2)をグラフト重合することにより、ゴム質グラフト重合体を得る多段階シード乳化重合法などによって得ることができる。なお、グラフト重合は2段以上の多段で行ってもかまわない。また、ビニル単量体(C2)として、極性官能基を有する単量体を、最終段において使用すると、塩化ビニル樹脂との相溶性を良好にするために好ましい。
かかる重合法により製造したゴム質グラフト重合体ラテックスを凍結融解、あるいは塩折によりポリマーを分離した後、遠心脱水や乾燥等によって粒状、フレーク状あるいは粉体として取り出すことができる。また、スプレイ・ドライヤーによる噴霧乾燥でラテックスからゴム質グラフト重合体を取り出すこともできる。
更に、取り出されたゴム質グラフト重合体は、不活性ガス雰囲気下、乾燥機中における加熱処理あるいは押出機を通すことによる加熱処理、および脱水剤を用いるなどの種々の方法で脱水処理を施すことにより、ビニル単量体中にカルボキシル基を有することができる。また、カルボキシル基の少なくとも一部が無水酸型であるゴム質グラフト重合体を得ることもできる。
上記のようにして製造されたゴム質グラフト重合体は粒子状であってもよく、この場合の平均粒子径は通常50〜1,000nmであり、好ましくは80〜750nmの範囲のものが用いられる。またその粒度分布については、分布のピークが1つしか存在しない単分散であってもよく、また分布のピークが複数存在する複分散であってもよい。
成分(C)のゴム質グラフト重合体としては、特にMBS等のメチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体及びABSの一方又は双方を用いることが、耐熱性、耐衝撃性などの向上効果の面で好ましい。なお、MBSは、ブタジエン系ゴム質重合体をコア層とするゴム質グラフト重合体であってもよい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物が成分(C)のゴム質グラフト重合体を含有する場合、成分(A)100重量部に対して0.5〜100重量部含有することが好ましい。成分(C)の含有量が上記範囲であると、成分(C)を配合することによる耐熱性、耐衝撃性の向上効果を十分に得ることができる。
成分(C)の含有量は、成分(A)100重量部に対して1重量部以上であることがより好ましく、3重量部以上であることが更に好ましく、70重量部以下であることがより好ましく、50重量部以下であることが更に好ましい。
[成分(D)]
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、下記成分(D)を含む塩化ビニル系樹脂組成物であってもよい。特に、本発明において、この成分(D)により塩化ビニル系樹脂組成物を軟質化してデュロD硬度で50以下としたものを軟質塩化ビニル系樹脂組成物、それよりも硬いものを硬質塩化ビニル系樹脂組成物と称することがある。
成分(D):可塑剤
成分(D)の可塑剤としては、軟質塩化ビニル系樹脂組成物に一般的に用いられる公知の可塑剤をいずれも用いることができ、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、又は炭素原子数10〜13程度の高級アルコール又は混合アルコールのフタル酸エステル等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−n−オクチルアジペート、ジ−n−デシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ−n−オクチル−n−デシルトリメリレート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘプチルエステル等のビフェニルテトラカルボン酸テトラアルキルエステル系可塑剤;ポリエステル系高分子可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、液状エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィン;五塩化ステアリン酸アルキルエステル等の塩素化脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの可塑剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物が成分(D)の可塑剤を含有する場合、成分(A)100重量部に対して10〜200重量部含有することが好ましい。成分(D)の含有量が上記下限以上であると、可塑剤を配合したことによる軟質化の効果を十分に得ることができ、例えば、シール性に優れたモール材等とすることができる。成分(D)の含有量が上記下限以下であると、可塑剤のブリード等の不可合を防止することができる。
成分(D)の含有量は、成分(A)100重量部に対して20重量部以上であることがより好ましく、30重量部以上であることが更に好ましく、150重量部以下であることがより好ましく、100重量部以下であることが更に好ましい。
[その他の成分]
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、上記の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の他に、安定剤、潤滑材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、発泡剤、衝撃改良剤等の各種添加剤、充填材、成分(A)以外の熱可塑性樹脂等を本発明の効果を著しく阻害しない限り、必要に応じて配合することができる。
安定剤としては、三塩基性硫酸鉛、ケイ酸鉛、塩基性炭酸鉛等の無機塩類、鉛、カドミウム、バリウム、カルシウム、亜鉛等金属の有機酸塩を主体とする金属石ケン、前述金属を少なくとも2種含むもの、例えばBa−Zn、Ca−Zn、Cd−Ba等の脂肪酸コンプレックス又は脂肪酸(ホスファイト)系、カルボキシレート(ホスファイト)系の複合金属石ケン又は複合液状金属石ケン、有機スズ系化合物等が挙げられる。これらの安定剤は1種のみを用いても2種以上用いてもよい。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物に安定剤を配合する場合、安定剤の配合量は、成分(A)100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜15重量部である。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物に用いることのできる充填材は特に制限されないが、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、酸化チタン、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、クレー、シリカ、ホワイトカーボン等を例示できる。これらの充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物に充填材を配合する場合、充填材の配合量は、成分(A)100重量部に対し、通常1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部である。
[塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法]
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて用いられるその他の成分を所定の割合で混練機又は混合機に投入し、成分(A)が劣化しない温度範囲、例えば100〜230℃、好ましくは130〜200℃の温度に加熱しながら、均一に混合又は混練することにより調製することができる。上述の各成分の混合又は混練に用いる混合機又は混練機は、実質的に配合物を均一に混合、混練できる装置であればよく特に限定されるものではない。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、プラネタリーミキサー等が挙げられ、混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ミルロール、バンバリーミキサー、ニーダー、インテンシブミキサー等、加熱しながら剪断力下で混練できるものが挙げられる。
〔成形体〕
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は押出成形、射出成形、圧縮成形等の各種成形方法により成形体とすることができる。これらの中でも塩化ビニル系樹脂組成物の溶融状態での流動性の観点から、押出成形により成形体とする方法が好ましい。成形条件としては特に制限はないが、成形温度は130〜220℃が適当である。成形温度が上記下限値以上であることが、成形性、得られる成形体の意匠性等の観点から好ましい。一方、成形温度が上記上限値以下であることが、塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる塩化ビニル樹脂の分解を防ぐ観点から好ましい。
〔用途〕
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、耐熱収縮性に優れ、通常の塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる成形機により容易に成形することが可能であり、また、強度(耐衝撃性、引張強さ)に優れるという特性を有する。このため、各種の産業分野において好適に用いることができ、ウィンドモール、ドア下モール、サイドモール等の自動車外装材;ノブ、グリップ等の自動車内装材;パッキン、シール材、ガスケット等の建材;電線被覆材として好適に使用することができる。これらの中でも建材として特に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原料]
以下の実施例及び比較例において塩化ビニル系樹脂組成物の製造に用いた原料は以下の通りである。
<成分(A)>
A−1:信越化学社製 塩化ビニル樹脂(平均重合度:1,000)
<成分(B)>
B−1:被覆樹脂繊維
PET繊維(融解ピーク温度:255℃)の芯を、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレンエーテルグリコールブロック共重合体よりなるポリエステル系熱可塑性エラストマー(融解ピーク温度(DSC法):210℃、デュロD硬度(JIS K6253−1993):60、ポリテトラメチレンエーテルグリコールユニットの数平均分子量:1,000、ポリブチレンテレフタレートユニットの含有量:60重量%)で被覆した被覆樹脂繊維
熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径:18μm
ポリエステル系熱可塑性ポリマーの被覆厚み:2μm
被覆樹脂繊維の平均繊維長:2mm
b−1(比較例用):単層PET繊維
平均繊維径:22μm
平均繊維長:2mm
<成分(C)>
C−1:三菱レイヨン社製 MBS 「メタブレン(登録商標) C−223」
C−2:カネカ社製 ABS 「カネカテルアロイ(登録商標) A−15」
<成分(D)>
D−1:ジイソノニルフタレート(DINP)
<その他の成分>
E−1:Ca−Zn系安定剤
E−2:軽質炭酸カルシウム
E−3:Ba−Zn系安定剤
E−4:重質炭酸カルシウム
[評価方法]
以下の実施例及び比較例において、得られた塩化ビニル系樹脂組成物の評価方法は以下の通りである。
<耐熱収縮性>
幅250mm、厚み2mmの平型押出成形品を長さ400mmにカットし、このカット成形品の実長さ(加熱前長さA(mm))をノギスにて1/1000mmまで測定した。別に、このカット成形品を80℃及び70℃雰囲気下でそれぞれ240時間静置後、温度23±1℃、相対湿度50±5%雰囲気下で24時間以上状態調節した後の実長さ(加熱後長さB(mm))をノギスにて1/1000mmまで測定し、下記計算式から収縮率(%)を求めた。耐熱収縮率の値が小さいほど良好であるものと評価される。
収縮率(%)={(A−B)/A}×100
<耐熱性>
JIS K7206 プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度試験法に準拠して測定した。軟化点が高いほど耐熱性に優れるものと評価される。
<耐衝撃性>
JIS K7111 プラスチック−シャルピー衝撃強さの試験方法に準拠して測定した。この値が大きいほど耐衝撃性に優れるものと評価される。
<硬度>
JIS K6253 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方に準拠して測定した。なお、測定は試験片に針を押し付けてから10秒後の値を測定した。
<引張強さ>
JIS K6723 軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド 引張試験方法に準拠して測定した。この引張強さの値が大きいほど好ましい。
[実施例1−1、1−2、比較例1−1〜1−5及び実施例2−1、2−2、比較例2−1〜2−4]
表−1、表−2に示す配合原料のうち、成分(B)以外の成分を表−1、表−2に記載した配合量で高速ミキサーに投入し、100℃になるまで攪拌して排出した。
排出した混合物に成分(B)を表−1、表−2に記載した配合量で加え、再度高速ミキサーに投入し、2〜3分、成分(B)が均一に分散するまで攪拌して排出した。
排出した混合物をφ40mm単軸押出機(シリンダー温度:140〜160℃、ダイス温度:160℃)を用いてペレット形状に造粒した。
表−1、表−2に示す評価項目のうち、耐熱収縮性については、造粒したペレットからφ40mm単軸押出機(シリンダー温度:160〜200℃、ダイス温度:200℃)を用いて幅250mm、厚み2mmの平型押出成形品を作製し、評価用のサンプルとして使用した。耐熱収縮性を除く項目については、造粒したペレットをミキシングロールにて混練し、シート化したものをプレス成形機にて成形温度180℃、成形圧力200kg/cmで成形し、評価用のサンプルとして使用した。
各評価結果を表−1、表−2に示す。
Figure 0006582701
Figure 0006582701
[評価結果]
表−1からわかるように、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物に該当する実施例1−1、1−2の硬質塩化ビニル系樹脂組成物は、耐熱収縮性に優れ、特に成分(C)のゴム質グラフト重合体を含む実施例1−2は、耐熱性や耐衝撃性も高い。
比較例1−1は、成分(B)の被覆樹脂繊維を含まず、実施例1−1よりも耐熱収縮性に劣る。この比較例1−1に対して更に成分(C)のゴム質グラフト重合体を含む比較例1−3、1−4は、耐衝撃性、耐熱性が改善されているが、耐熱収縮性は十分ではない。比較例1−2のように、被覆樹脂繊維ではない単層の樹脂繊維を配合することで、耐熱収縮性は十分に改善できるが、耐衝撃性は低下する。この比較例1−2に対して被覆樹脂繊維ではない単層の樹脂繊維の含有量が多く、更に成分(C)のゴム質グラフト重合体を含む比較例1−5は、実施例1−2と同程度の耐熱収縮性、耐熱性を有するが、耐衝撃性は著しく劣っている。
また、表−2からわかるように、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物に該当する実施例2−1、2−2の軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、高い引張強さを示す。
これに対して、比較例2−1、2−2は、成分(B)の被覆樹脂繊維を含まず、引張強さが低い。比較例2−3、2−4のように、被覆樹脂繊維ではない単層の樹脂繊維を含有するものは引張強さがむしろ低下した。

Claims (9)

  1. 下記成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を0.5〜20重量部含む塩化ビニル系樹脂組成物であって、下記成分(B)におけるポリエステル系熱可塑性エラストマーがポリブチレンテレフタレートからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレングリコールからなるソフトセグメントとを有するものである塩化ビニル系樹脂組成物
    成分(A):塩化ビニル樹脂
    成分(B):熱可塑性樹脂繊維の芯をポリエステル系熱可塑性エラストマーにより被覆してなる被覆樹脂繊維
  2. 成分(B)において、前記熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5〜50μmであり、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーの被覆厚みが1〜30μmであり、かつ前記被覆樹脂繊維の平均繊維長が0.3〜5mmである、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  3. 成分(B)において、前記熱可塑性樹脂繊維の融解ピーク温度が200〜260℃である、請求項1又は2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  4. 成分(B)において、前記熱可塑性樹脂繊維がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリビニルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1つからなるものである、請求項1乃至のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  5. 下記成分(C)を更に含み、かつ成分(A)100重量部に対し、成分(C)を0.5〜100重量部含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
    成分(C): ゴム質グラフト重合体
  6. 成分(C)としてメチル(メタ)アクリレート−ブタンジエン−スチレン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のうちの少なくとも一方を含む、請求項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  7. 下記成分(D)を更に含み、かつ成分(A)100重量部に対し、成分(D)を10〜200重量部含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
    成分(D):可塑剤
  8. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる成形体。
  9. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物からなる建材。
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