以下、図面に沿って本発明に係るカメラの支持装置について説明する。なお、以下の説明において特に断らない限り、「前方側」、「後方側」、「右方側」、及び「左方側」等の語は、トラクタ1の前進方向を向いた視点を基準とする。特に、トラクタ1に着脱可能な部材については、装着された状態での方向を指すものとする。
<第1の実施形態>
[作業車両の概略構成]
本第1の実施形態に係るトラクタ1は、図1に示すように、前輪2及び後輪(不図示)に支持されて後部にロータリ耕耘機等の作業機が装着される走行機体3(車体)を備えている。走行機体3のボンネット4の内部には、不図示のエンジンが配置されており、トラクタ1はエンジンの駆動力により走行機体3を前進走行させると共に、作業機によって耕耘等の各種作業を行うことができる。
走行機体3には、ボンネット4の後方に作業者が搭乗するキャビン5(車室)が立設されている。キャビン5の前面を覆うフロントガラス7は、ボンネット4から上方に立上ると共に、後方に若干傾斜して形成されている。キャビン5は、フロントガラス7の他に、左右両側に配置される開閉自在のドア部9と、後面を覆うリアガラス5bと、上部を覆う天板部5aとを有しており、平面視略方形に形成されている。なお、キャビン5の左右外側には、トラクタ1の走行に伴って圃場面に次工程の目安となるラインを残す不図示の線引きマーカが昇降自在に装着されている。
キャビン5の内部には、各種操作具を有しフロントガラス7に接して設置される運転操作部6と、該運転操作部6の後方に作業者が着座する運転席8と、後述する直進誘導装置Aと、が配置されている。
運転操作部6は、図1に示すように、キャビン5の床面からフロントガラス7に沿って立設されるダッシュボード14と、該ダッシュボード14からステアリングシャフト51(図2参照)を介して上方に突出するステアリングホイール11と、ダッシュボード14に突設されるレバー及びペダル等の操作具と、を有している。
ダッシュボード14は、計器及び警告表示灯等が配置される計器板13と、計器板13の上部を覆うバイザ15(カバー体)と、計器板13の下方に配置されるスイッチパネル18と、スイッチパネル18の下方を覆うパネルリアカバー17と、左右両側を覆うサイドカバ16,16とが一体的に形成されて構成されている。ダッシュボード14とボンネット4とは、フロントガラス7の前後に亘って連続した空間を内部に形成しており、この空間に後述するパワーステアリング機構52が配置されている。
ステアリングホイール11は、図2に示すように、作業者が把持可能な環状の外輪部11aと、外輪部11aの回動軸となる軸部11bとを有し、下部をコラムカバー12によって覆われている。ステアリングホイール11の軸部11bは、油圧式のパワーステアリング機構52に接続されたステアリングシャフト51に装着されている。パワーステアリング機構52は、ステアリングシャフト51の回動量に基づいて油圧駆動される操舵シリンダ52aを有し、該操舵シリンダ52aの伸縮によって、左右の前輪2,2の舵角(走行機体3の前後方向に対する角度)が変化する。前輪2には、前輪の舵角を検出するポテンショメータである前輪舵角センサs2が取付けられている。
[直進誘導装置]
直進誘導装置Aは、図2に示すように、カメラユニット30と、操舵ユニット20と、制御ユニット40と、を有しており、これらカメラユニット30、操舵ユニット20、及び制御ユニット40が、有線又は無線により接続されて構成されている。また、カメラユニット30、操舵ユニット20、及び制御ユニット40は、走行機体3に設けられた不図示の電源コネクタに接続されて電力を供給されている。
カメラユニット30は、図1に示すように、フロントガラス7の上部かつ左右方向中央に取付けられ、天板部5aに接して配置されている。カメラユニット30は、撮像部31及び画像処理部32を内蔵するカメラ本体30Aと、後述する支持装置30Bと、を有する。
撮像部31は、レンズを通して取込んだ撮影対象の光像を撮像素子によって光電変換し、電子データとして画像処理部32に出力する。画像処理部32は、演算処理を行うCPU、画像処理プログラムが格納されるROM、及びCPUの作業スペースとなるRAM等を有し、制御部41に目標物の位置情報(例えば、走行機体3の正面方向に対する目標物の左右位置又は角度)を出力可能に構成されている。
操舵ユニット20は、図3に示すように、ステアリングホイール11の外輪部11aに当接可能な摩擦ローラ22と、摩擦ローラ22を駆動回転する駆動モータ21とを有している。摩擦ローラ22の外周部は、弾性ゴムあるいは発泡ポリウレタン等の弾性材料からなり、ステアリングホイール11に当接した状態で駆動モータ21に駆動されて回転するときには、摩擦ローラ22とステアリングホイール11との間の摩擦力によりステアリングホイール11を回動操作可能に設けられている。
操舵ユニット20は、ステアリングホイール11の前方かつダッシュボード14の上方において、取付フレーム24及び回動アーム28を介して走行機体3に取付けられている。取付フレーム24は、走行機体3に固定される第1フレーム25と、第1フレーム25に左右方向に位置調整可能に取付けられる第2フレーム26と、第2フレーム26に上下方向に位置調整可能に取付けられる第3フレーム27とを有し、操舵ユニット20を左右方向及び上下方向に位置調整自在に支持している。
回動アーム28は、第3フレーム27に回動自在に取付けられ、先端に操舵ユニット20を支持している。回動アーム28は、不図示の支点越え機構により、操舵ユニット20の摩擦ローラ22がステアリングホイール11の外輪部11aに当接(接触)する当接位置と、摩擦ローラ22が外輪部11aから離間する離間位置との間を切換えるように移動可能となっている。
制御部41(図4参照)と操作・表示部42とを有する制御ユニット40は、図3に示すように、バイザ15の上方に配置されている。制御部41は、CPU、RAM、及びROM等を備えるマイクロコンピュータであり、バイザ15の上面に設置されている。操作・表示部42は、後述のダイヤル、スイッチ、LEDランプ等を有し、第3フレーム27の上面に設置されている。これら制御部41と操作・表示部42とは、フィルムケーブルによって接続されている。
制御部41は、図4のブロック図に示すように、入出力端子を介してカメラユニット30の画像処理部32と操舵ユニット20の駆動モータ21とにそれぞれ接続されている。制御部41は、カメラユニット30の撮影結果に従って、すなわち画像処理部32から取得した目標物の位置情報に従って駆動モータ21の回転を制御する自動操舵モードと、駆動モータ21を解放する手動操舵モードとに切換え可能となっている。上述した第3フレーム27には、回動アーム28に接触可能に配置されて回動アーム28の当接位置と離間位置とを検出可能な操舵ユニット位置検出センサs1が取付けられ、該操舵ユニット位置検出センサs1からの入力信号により、制御部41の自動操舵モードと手動操舵モードとが切換わる。
操作・表示部42は、制御部41への入力手段として、制御感度調整ダイヤル42a、制御選択ダイヤル42b、及び認識画像リセットスイッチ42c等を有し、また、制御部41からの出力手段として、報知ブザー42d、制御状態表示LED42e、カメラ画像の出力端子41a等を有している。出力端子41aには、例えばカメラ画像を表示して作業者がカメラの撮像範囲を確認することができる液晶パネルを接続することができる。
[直進誘導装置による自動操舵]
上述した構成からなるトラクタ1は、回動アーム28を当接位置と離間位置とに移動させることで、操舵ユニット位置検出センサs1が回動アーム28の位置を検知し、直進誘導装置Aによる自動操舵をON(自動操舵モード)/OFF(手動操舵モード)することができる。
作業者がトラクタ1を手動操舵するときには、回動アーム28を離間位置に位置させる。このとき、操舵ユニット20の摩擦ローラ22はステアリングホイール11から離間しており、制御部41は操舵ユニット位置検出センサs1から信号を受取って手動操舵モードとなっている。そして、作業者はステアリングホイール11を把持して回動操作することで、パワーステアリング機構52を介して前輪2,2の舵角を変化させ、トラクタ1を操向操作することができる。
作業者が直進誘導装置Aによりトラクタ1を直進させるときには、例えば、予め進行方向の目標となる目標物(例えばLEDを先端に取付けた支柱)を地面に設置しておく。そして、主変速レバー及び副変速レバー等を前進位置に保持したまま、回動アーム28を当接位置へと移動する。すると、摩擦ローラ22がステアリングホイール11に当接すると共に、制御部41が、操舵ユニット位置検出センサs1から信号を受取って自動操舵モードとなる。
すると、画像処理部32が走行機体3の前後方向に対する目標物の位置情報を制御部41へと出力する。制御部41は、上記位置情報から、走行機体3を目標物へと向かわせるために必要なステアリングホイール11の操舵角と、該操舵角に対応する駆動モータ21の回転数とを計算し、駆動モータ21を回転させる。そして、摩擦ローラ22が駆動モータ21に駆動されて回転し、摩擦ローラ22とステアリングホイール11との間の摩擦力によりステアリングホイール11を時計回り又は反時計回りに回転させる。これにより、前輪2,2の舵角が随時操作され、トラクタ1は目標物へと向かって直進する。なお、前輪2,2の舵角は、前輪舵角センサs2によって常時検知されており、フィードバック制御が行われている。
トラクタ1が自動操舵されているときには、作業者はステアリングホイール11を操作することなく、作業機によって畝立てや耕耘等の作業を行うことができる。作業者は、ステアリングホイール11以外の操作具を操作して施肥等の別作業を同時並行してもよい。あるいは、作業者は作業機による作業状況を監視しながら、水分を補給してもよい。
[カメラユニット]
続いて、カメラユニット30について詳しく説明する。カメラユニット30は、図5に示すように、カメラ本体30Aと、カメラ本体30Aを走行機体に支持する支持装置30Bと、支持装置30Bに取付けられたカメラ本体30Aを覆う外カバー30C(図1参照)と、を有する。
カメラ本体30Aは、上述した撮像部31及び画像処理部32と、これら撮像部31及び画像処理部32を内部に収容するカメラケース35とを有する。カメラケース35は、略立方体形状からなり、前方側のカメラ台座35Fと後方側の後部カバー35Rとに分割可能に形成されている。
カメラ台座35F及び後部カバー35Rは、カメラケース35を形成するように一体的に配置された状態でカメラケース35の前面から後面へと貫通する複数の貫通孔35bを形成されている。そして、貫通孔35bに挿通される固定具33により、カメラ台座35F及び後部カバー35Rは、撮像部31を前方側にして前後に並んだ撮像部31及び画像処理部32を前後方向から挟み込むようにして締結される。
カメラ台座35Fの前面は、中央部が後方に窪んで形成され、かつ撮像部31のレンズの前方を切欠かれている。中央部には、切欠かれた部分を覆ってレンズを保護する保護ガラスが取付けられている。この保護ガラスは、撮像時のノイズを低減するために赤外線を除去可能な赤外線非透過性材料からなることが好ましい。
カメラケース35の左側面には開口部35aが形成され、画像処理部32にデータを入出力可能な端子が露出しており、例えば上記画像処理プログラムの設定情報が格納されたUSBメモリmが挿入される。なお、開口部35aを封鎖してカメラケース35を構成してもよい。この場合、例えば画像処理部32からカメラケース35の外部に延出する配線用に、ゴムリング等によってシールされた配線孔を設けるなどして、撮像部31及び画像処理部32への塵埃や水分の進入を防ぐことが好ましい。
[カメラ本体の支持装置]
本実施形態に係る支持装置30Bは、図5に示すように、カメラカバー34と、ブラケット36と、ピッチ角調整ネジ37と、固定ボルト38とを有している。また、カメラ本体30Aとカメラカバー34とは、固定具33により締結されてカメラモジュール30Mを形成している。
ブラケット36は、図6に示すように、中央部を縦長に切り取られた前面部36aと、前面部36aの上端から後方に延出する頂部36bと、前面部36aの左右から後方に延出する側部36c,36cと、前面部36aの下部から後方に延出する底部36dとを有し、内側にカメラモジュール30Mを収める空間を存して一体的に形成されている。ブラケット36の右の側部36cには、長孔36eが形成され、底部36dの右後部には上下に貫通するネジ穴36fが形成されている。
ブラケット36の前面部36aは、接着剤によってフロントガラス7に接着されて走行機体3に固定されている。直射日光によるカメラユニット30の過熱を防ぐため、接着剤には断熱性の高い材料を用いると好ましい。なお、ブラケット36を両面テープ又は面ファスナ等によってフロントガラス7に装着してもよく、あるいは頂部36bに形成されたネジ穴にネジを挿入して、天板部5aに固定してもよい。
ブラケット36の左右の側部36c,36cには、左右方向に延びる同一軸上に取付け穴36h,36hが形成され、これら取付け穴36h,36hには、図5に示すように、軸付きネジ54,54(支持軸)が先端を左右方向内側に向けて取付けられている。軸付きネジ54,54の先端は円柱形状の軸部として形成され、カメラモジュール30Mのカメラカバー34を、カメラ本体30Aのピッチ角方向に回動自在に支持している。軸付きネジ54,54の軸心は、その軸方向に視て、カメラ本体30Aの上下方向略中央かつ前後方向に撮像部31と重なる位置にある。
なお、ブラケット36の前面部36aの左右の両端には、ブラケット36に後方から装着される外カバー30Cを係止可能な留めネジ36gが取付けられている。留めネジ36gは、後方から視て固定ボルト38と重なる位置に配置されている。また、ブラケット36の底部36dの下面には、電源コネクタ及び電源基盤等を有する電源部が配置されている。電源部にて発生した熱は、ブラケット36を介して放出されるため、放熱フィン等の高背部材を用いることなく、電源部の過熱を防ぐことができる。
カメラカバー34は、図7に示すように、カメラケース35の前面を覆う前面部34aと、前面部34aの左右から後方に延出する側部34b,34bと、左の側部34bの下部からさらに後方に延出する延設部34cと、を有している。
前面部34aの中央には、カメラ本体30Aのレンズ窓a0が形成され、レンズ窓a0の周囲には、カメラ本体30Aのロール角方向に形成された複数の長孔a1が配置されている。左右の側部34b,34bには、上記軸付きネジ54が嵌合する軸受部材が配置される開口部a2,a2が形成されている。右の側部34bに形成された取付け穴a3には、後述する固定ボルト38が螺合する雌ネジ部材が取付けられる。
延設部34cの前後の2ヶ所には、気泡式水平器55を取付け可能な取付け穴a4,a4が形成されている。延設部34cは、図5に示すように、ブラケット36の左の側部36cよりも後方に突出しており、延設部34cに取付けられた気泡式水平器55は、ブラケット36から露出する。前側の取付け穴a4は後側の取付け穴a4に比して高い位置に配置されており、気泡式水平器55はカメラ本体30Aの光軸方向に対して前側が高くなるように6.2度傾斜して取付けられる。言い換えると、気泡式水平器55は、カメラ本体30Aの光軸方向が水平面に対してマイナス6.2度のピッチ角をとるときに水平を表示するように取付けられる。なお、気泡式水平器55の傾斜角度は、6.2度に限らず、使用目的に沿ったカメラ本体30Aの撮像方向を考慮して適宜変更してよい。
カメラカバー34は、図5に示すように、固定具33によってカメラケース35と一体的に締結される。詳しく説明すると、カメラカバー34の複数の長孔a1は、カメラケース35の貫通孔35bに対応する位置に配置されている。固定具33は、前後方向に貫通するネジ穴を形成された雌ネジと、該雌ネジに螺合する前側ネジ33a及び後側ネジ33bとを有する。雌ネジは例えば六角柱のような回り止め形状からなり、貫通孔35bに前後方向に摺動自在に支持されている。そして、前側ネジ33aは長孔a1を通って前方から雌ネジに螺合する一方、後側ネジ33bは後方から雌ネジに螺合する。
固定具33の前側ネジ33a及び雌ネジは、互いに螺合されるときにはカメラ本体30Aをカメラカバー34にロール角方向に角度調整自在に支持する支持部を構成している。また、後側ネジ33bは、前側ネジ33aと螺合した雌ネジにさらに螺合することで、前側ネジ33aとの間にカメラケース35とカメラカバー34とを挟持し、カメラ本体30Aをカメラカバー34に相対移動不能に固定する固定部を構成している。なお、支持部及び固定部はこの構成に限らず、例えば支持部として長孔a1に挿通される雌ネジ部材と、固定部として雌ネジ部材に螺合される雄ネジ部材とを有する構成としてもよく、支持部と固定部とが後面視異なる位置に配置されるものであってもよい。要は、カメラ本体30Aをカメラカバー34にロール角調整自在に支持する支持部及びカメラ本体30Aをカメラカバーに位置決め固定する固定部とを有する構成であればよい。
ピッチ角調整ネジ37は、ブラケット36の底部36dに形成されたネジ穴に先端を上に向けて螺合されたノブボルトであり、ノブ状の頭部37aを回すことで上下方向移動自在に支持されている。ピッチ角調整ネジ37の先端部37b(当接部)はカメラモジュール30Mのカメラカバー34に下方から当接しており、ピッチ角調整ネジ37の上下移動に伴って先端部37bがカメラカバー34を押圧することでカメラモジュール30Mがピッチ角方向に回動する。カメラカバー34の右の側部34bに固設されたピンと、ブラケット36の右の側部36cに突設されたピンとの間には、引張バネ39(付勢バネ)が張設され、カメラカバー34をピッチ角調整ネジ37の先端部37bへ向けて付勢している。
固定ボルト38は、ブラケット36の右の側部36cに形成された長孔36eを通って、カメラカバー34の取付け穴a3に設けられた雌ネジ部材に係合している。この長孔36eは、上記軸付きネジ54を中心とする円弧状に形成されている。固定ボルト38は、カメラモジュール30Mの回動に伴って長孔36eに沿って移動する一方、締込まれることで、カメラモジュール30Mをブラケット36に相対回転不能に締結する。なお、固定ボルト38を設けずに、引張バネ39の付勢力によってカメラモジュール30Mの振動等を抑制する構成としてもよい。
[カメラ本体の取付け]
本実施形態に係る支持装置30Bは上述した構成からなるため、カメラ本体30Aは、支持装置30Bを介して、走行機体3に着脱自在かつロール角方向及びピッチ角方向に角度調整自在に取付けられる。
具体的には、まず、作業者は固定具33の前側ネジ33aを軽く留めて、カメラモジュール30Mのカメラ本体30Aとカメラカバー34とを仮留めする。固定具33の後側ネジ33bは緩めておく。
次に、カメラモジュール30Mをフロントガラス7に固設されたブラケット36の内側に移動し、左右の軸付きネジ54,54を締めてカメラモジュール30Mをブラケット36に支持する。また、引張バネ39をブラケット36とカメラカバー34との間に張設する。
そして、作業者はカメラケース35を把持してカメラカバー34に対してロール角方向に回動させ、カメラ本体30Aのロール角を調整した後、固定具33の後側ネジ33bを締めて、カメラ本体30Aをカメラカバー34に位置決め固定する。
さらに、作業者はピッチ角調整ネジ37を操作して、カメラモジュール30Mをブラケット36に対してピッチ角方向に回動させ、カメラ本体30Aのピッチ角を調整した後、固定ボルト38を締めてカメラモジュール30Mをブラケット36に位置決め固定する。最後に、外カバー30Cをブラケット36に取付けて、カメラ本体30Aの取付け作業が完了する。
上述した手順を逆にたどることで、作業者はカメラ本体30Aを支持装置30Bから取外すことができ、また、カメラ本体30Aのピッチ角又はロール角を再度調整することができる。
本実施形態に係るカメラ本体30Aは、上述したように支持装置30Bに取付けられるため、作業者は、カメラ本体30Aを走行機体3に取付けた後に、カメラ本体30Aの撮像角度(ピッチ角、ロール角)を容易に調整することができる。
具体的には、カメラ本体30Aを、固定具33の雌ネジ及び前側ネジ33aによってカメラカバー34にロール角調整自在に支持し、カメラカバー34の後面を解放して形成したため、作業者はカメラ本体30Aを走行機体3に支持した後に、カメラカバー34の後方からカメラ本体30Aを把持してそのロール角を角度調整することができる。
また、カメラ本体30Aの後面に露出する後側ネジ33bを締めることでカメラ本体30Aをカメラカバー34に固定可能としたため、作業者は空間的に余裕のあるカメラ本体30Aの後方からアクセスしてカメラ本体30Aのロール角を位置決め固定することができる。
また、カメラモジュール30Mをブラケット36にピッチ角方向に回動自在に支持し、ブラケット36の底部36dの下方に頭部37aが位置するようにピッチ角調整ネジ37を設けたため、作業者は走行機体3に取付けたカメラモジュール30Mを取外すことなく、空間的に余裕のあるカメラモジュール30Mの下方からアクセスしてカメラ本体30Aのピッチ角を調整することができる。
また、ピッチ角調整手段として、頭部37aの回動操作により上下するピッチ角調整ネジ37を採用したため、頭部37aの操作量に対するカメラ本体30Aのピッチ角方向の移動量を小さく設定することができ、カメラ本体30Aのピッチ角を容易に高い精度で調整することができる。
また、ピッチ角調整ネジ37の先端部37bをカメラカバー34に下方から当接させる一方、引張バネ39にカメラカバー34を先端部37bに向けて付勢させたため、カメラカバー34が先端部37bから浮き上がることを防ぎ、ピッチ角調整ネジ37の操作に対応してカメラ本体30Aをピッチ角方向に確実に移動させることができる。
また、ピッチ角調整の目安となる気泡式水平器55を、画像処理部32で行われる画像処理に適した撮像方向に合わせて、予め傾斜させて取付けたため、気泡式水平器55が水平を示すようにカメラモジュール30Mの角度を調整することで容易にカメラ本体30Aの撮像方向を設定することができる。
また、気泡式水平器55をカメラモジュール30Mの左側面に配置し、ピッチ角調整ネジ37をブラケット36の右下方に配置したため、作業者は例えばブラケット36の左後方に立って、気泡式水平器55を目視しながら右手でピッチ角調整ネジ37を操作することで、無理のない姿勢でカメラ本体30Aのピッチ角調整を行うことができる。
また、カメラ本体30Aのカメラ台座35F及び後部カバー35Rとカメラカバー34とは、前側ネジ33a、後側ネジ33b、及び雌ネジが同軸上に配置された固定具33によって締結されている。このため、例えばカメラカバー34とカメラ台座35Fを締結する部材と、カメラ台座35Fと後部カバー35Rとを締結する部材とを別軸上に配置するものに比して、後方から視たカメラモジュール30Mの面積を小さくすることができ、運転者の視界を広くとって車両の操縦性を向上することができる。
また、カメラモジュール30Mの回動軸は、左右方向に視てカメラ本体30Aの上下方向に中央位の置かつ前後方向に撮像部31と重なる位置にある。このため、例えば回動軸がカメラ本体の後方に配置されるものに比して、走行機体3の振動による撮像部31の振動を低減して、撮像部31が撮像する画像のブレを小さくすることができ、また、カメラモジュール30Mがピッチ角方向に回動するときの回動軌跡が短くなるため、カメラユニット30を上下方向にコンパクトに構成することができる。さらに、カメラモジュール30Mがピッチ角方向に回動するときの撮像部31の移動量を低減して、ブラケット36の前面部36aに大きな開口部を設けることなく、撮像可能範囲を上下に広く設定することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るカメラユニット70の支持構成について説明する。トラクタ1の構成は、カメラユニット70を除いて上述した第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と共通する部材には同符号を付して説明を省略する。
カメラユニット70は、図8に示すように、撮像部31及び画像処理部32を有するカメラ本体70Aと、カメラカバー74、ブラケット76、ピッチ角調整ネジ77、及び軸付きネジ71(支持軸)を有する支持装置70Bと、を有し、フロントガラス7に取付けられている。カメラ本体70Aは、カメラカバー74の内側に収められ、カメラ本体70Aとカメラカバー74とでカメラモジュール70Mが構成されている。また、カメラモジュール70Mは、ブラケット76の内方に配置されている。
ブラケット76は、図9に示すように、中央部を縦長に切り取られた前面部76aと、前面部76aの上部から後方に延出する天板部76bと、天板部76bの左右から前面部76aに接しながら下方に延出する左右の側部76c,76cと、右の側部76cの下端から右方に広がる側底部76gと、を有し、前面部76aを接着剤によってフロントガラス7に接着されている。ブラケット76の後面及び下面は、カメラモジュール70Mが通過可能な通過空間Sを存して開放して形成され、天板部76b及び左右の側部76c,76cは後面視コ字形状に形成されている。
ブラケット76の側底部76gには、調整軸76dがそのネジ部を下方に突出させて固定されている。左右の側部76c,76cの後上部には、左右方向に延びる同一軸上に取付け穴76e,76eが設けられ、右の側部76cには、取付け穴76eを中心とする円弧状の溝部76fが、側部76cの下端から上方へ向けて形成されている。
カメラカバー74は、図10に示すように、前面部74aと、前面部74aの左右から後方に延出する側面部74b,74bとを有し、これら前面部74a及び側面部74b,74bは、上下の面及び後面が開放された平面視略コ字形状に形成されている。なお、前面部74aは、左右の側面部74b,74bの下端が水平方向に向いた状態で、側面視で前方へと傾斜して形成されている(図10(e)参照)。
左右の側面部74b,74bの後上部は、左右方向を軸とする円筒形状からなる円筒部74cによって連結されている。右の側面部74bの下端には、右方へと延設される延設部74dが設けられ、該延設部74dには前方端から後方へと陥入するU字溝74eが形成されている。前面部74aには、カメラ本体70Aのレンズが露出するレンズ窓b0と、レンズ窓b0の周囲に複数配置されカメラ本体70Aのロール角方向に形成される長孔b1とが配置されている。
カメラ本体70Aの撮像部31及び画像処理部32は、図8に示すように、カメラカバー74の内方に配置されている。カメラ本体70Aは、長孔b1を通って撮像部31及び画像処理部32の基盤に設けられたネジ穴に螺合する取付ネジ73(取付部)によりカメラカバー74に取付けられている。
カメラカバー74は、図8に示すように、ブラケット76の取付け穴76eに取付けられる軸付きネジ71,71を軸中心にして、上下方向(カメラ本体70Aのピッチ角方向)に回動自在に支持されている。カメラカバー74の延設部74dはブラケット76の側底部76gの下方に位置し、調整軸76dは延設部74dのU字溝74eの内方を通過して下方へと延びている。
ピッチ角調整ネジ77はノブ状の頭部77aを有するノブボルトであり、調整軸76dに下方から螺合すると共に、上端部77b(当接部)がカメラカバー74の延設部74dの下面に当接している。上記U字溝74eは、ピッチ角調整ネジ77の上端部77bの外径より小さい幅で形成されている。調整軸76dには、不図示の圧縮バネ(付勢バネ)が遊嵌され、ブラケット76の側底部76gと延設部74dとの間に縮設されて、延設部74dを下方へと付勢している。
なお、延設部74dには、気泡式水平器55が戴置されている。また、ブラケット76の左の側部76cには、溝部76fを通ってカメラカバー74に設けられたネジ穴に係合し、カメラモジュール70Mをブラケット76に固定可能な不図示の固定ボルトが配置されている。
本実施形態に係る支持装置70Bは上述した構成からなるため、カメラ本体70Aは、支持装置70Bを介して走行機体3に着脱自在かつロール角方向及びピッチ角方向に角度調整自在に取付けられる。
まず、作業者はカメラ本体70Aの撮像部31と画像処理部32とを、取付ネジ73を用いて大まかに位置決めしてカメラカバー74に仮留めする。そして、カメラモジュール70Mをブラケット76の内側に移動し、軸付きネジ71,71をカメラカバー74の円筒部74cに通してカメラモジュール70Mをブラケット76に支持する。
すると、カメラモジュール70Mは自身の重量により回動し、カメラカバー74の前面部74aがブラケット76の下方に移動して取付ネジ73に下方からアクセス可能となる。作業者は、カメラ本体70Aを把持してそのロール角を微調整したのち、取付ネジ73を締めてカメラ本体70Aを固定する。
そして、作業者はカメラモジュール70Mを上方へと移動し、ピッチ角調整ネジ77を調整軸76dに取付けると共に、ピッチ角調整ネジ77の頭部77aを回動操作して、カメラ本体70Aのピッチ角を調整する。そして、固定ボルトを用いてカメラモジュール70Mをブラケット76に固定することで、カメラユニット70の取付けが完了する。
上述した手順を逆にたどることで、作業者はカメラ本体70Aを支持装置70Bから取外すことができ、また、カメラ本体70Aの取付け角度を再度調整することができる。特に、カメラ本体70Aのロール角を再調整する場合には、作業者はピッチ角調整ネジ77を調整軸76dから取外す。すると、カメラモジュール70Mがブラケット76の内側の通過空間Sを通過して、カメラカバー74の前面部74aがブラケット76の下方に移動するため、取付ネジ73に下方からアクセス可能となる。
本実施形態に係るカメラ本体70Aは、上述したように支持装置70Bに取付けられるため、作業者は、カメラ本体70Aを走行機体3に取付けた後に撮像角度(ピッチ角、ロール角)を容易に調整することができる。
具体的に、カメラモジュール70Mをブラケット76に上下方向に回動自在に支持し、ブラケット76の下方に頭部77aが位置するようにピッチ角調整ネジ77を設けたため、作業者は走行機体3にカメラモジュール70Mを取付けた後に、ブラケット76の下方からピッチ角調整ネジ77を操作してカメラモジュール70Mのピッチ角を調整することができる。
また、ピッチ角調整手段として、頭部77aの回動操作により上下するピッチ角調整ネジ77を採用したため、頭部77aの操作量に対するカメラ本体70Aのピッチ角方向の移動量を小さく設定することができ、カメラ本体70Aのピッチ角を容易に高い精度で調整することができる。
また、ピッチ角調整ネジ77の上端部77bをカメラカバー74の延設部74dに下方から当接させる一方、圧縮バネに延設部74dを上端部77bに向けて付勢させたため、延設部74dが上端部77bから浮き上がることを防ぎ、ピッチ角調整ネジ77の操作に対応してカメラモジュール70Mをピッチ角方向に確実に移動させることができる。
また、取付ネジ73をカメラカバー74の前面部74aに配置し、カメラモジュール70Mをその後部を軸支する軸付きネジ71に回動自在に支持したため、カメラモジュール70Mのピッチ角の調整可能範囲を大きくとることができる。
また、ブラケット76をカメラモジュール70Mの通過空間Sを存して下方に開放して形成したため、カメラモジュール70Mを走行機体3に取付けた後に、カメラモジュール70Mに通過空間を通過して回動させ、カメラカバー74の前面部74aに取付けた取付ネジ73を下方に露出させることができる。そして、作業者はブラケット76の下方から取付ネジ73を締緩すると共に、カメラ本体70Aを把持してそのロール角を調整することができる。
また、ピッチ角調整ネジ77をブラケット76の調整軸76dに着脱自在に設け、ピッチ角調整ネジ77が調整軸76dから取外されたときには、カメラモジュール70Mが通過空間Sを通過可能となるため、ピッチ角を調整する調整部材とカメラモジュール70Mが軸付きネジ71の前方から下方へと脱落することを規制する規制部材とを別個に設ける必要がなく、支持装置70Bを簡単な構成とすることができる。
また、カメラカバー74の前面部74aを傾斜して形成したため、取付ネジ73によってカメラ本体70Aをカメラカバー74に取付け、気泡式水平器55が水平を示すようにカメラ本体70Aのピッチ角を調整することで、カメラ本体70Aに画像処理部32による画像処理に適したマイナスのピッチ角をとらせることができる。そして、作業者は気泡式水平器の表示を確認した後に、カメラ本体70Aのピッチ角を微調整することができる。
<他の実施の可能性>
本発明は、作業車両に搭載される直進誘導装置の一部を構成するカメラユニットの支持装置として適用したが、これに限らず、乗用車等に設置されてもよく、また、直進誘導(自動操舵)以外の目的に使用することができる。
なお、本実施形態において、カメラ本体はブラケット及びカメラカバーを介して入れ子状に支持されることでピッチ角及びロール角を調整自在に取付けられているが、ピッチ角又はロール角のいずれか一方のみ調整可能とする構成としてもよく、例えばカメラ本体とカバー部材とが一体形成されたカメラモジュールがピッチ角方向に角度調節自在に支持される構成であってもよい。