本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように第1の実施形態に係る作業車両としての農業用のトラクタ1は、前方からエンジン2、クラッチハウジング3、トランスミッションケース4等を一体的に連結して車体(走行機体)を構成する。また、車体の前部寄りには、エンジン2とエンジン2の補器類を覆うヘッドランプを備えるボンネット5とサイドーカバー6を設け、ボンネット5は後部に設けるヒンジを介して前部側を開閉自在に構成する。
さらに、エンジン2に固定して前方に延びるフロントブラケット7は、フロントアクスルケースを左右揺動自在に軸支する。このフロントアクスルケースの左右端には、前車軸ケース(キングピンケース及びファイナルケース)を取付ける。また、前車軸ケースは前輪8を取付ける前車軸9を軸支し、操縦部に設けるステアリングホイール10は左右の前輪8を全油圧式パワーステアリングユニットを介して操舵する。
一方、車体の後部寄りにはトランスミッションケース4の左右に連結するリアアクスルケースを設け、リアアクスルケースに軸支する後車軸11に左右の後輪12を取付ける。また、車体の後部には、トップリンク13と左右のロワリンク14からなる周知の三点リンク機構やドローバ等の連結装置を設け、これらの連結装置にはロータリ耕耘装置、畝立機、或いは播種機や移植機等の作業機を連結し、トランスミッションケース4の後部に軸支するPTO軸(動力取出軸)から作業機にエンジン動力を伝達する。
さらに、エンジン2より後方の車体には防振ゴムを介して操縦フレーム15を設ける。この操縦フレーム15は、図2に示すように下部のフロア16と、フロア16から後方に立ち上げる運転席17を取付けるシート支持部18と、シート支持部18の後方から立ち上げる後部壁19と、左右のフェンダ部20等を一体的に結合して構成し、また、フロア16の前部には門型の支持フレーム21を立設して、メーター22やエンジン2の始動及び停止スイッチ23や各種の自動制御用の操作スイッチ類24を備えるパネルカバー25とその下方側を覆うリヤパネルカバー26をボルトで取付ける(図12参照)。
なお、係る支持フレーム21の上部寄りには後方に向かうブラケット27を一体に設け、このブラケット27にはステアリングホイール10をその上端部に連結するステアリングシャフトをコラムで覆ってチルト自在に取付け、また、フロア16上に臨むクラッチペダル28や左右のブレーキペダル、前後進切換レバー29、エンジンコントロールレバー30等を設ける。さらに、支持フレーム21の左右外側方となるフロア16に左右の支柱31を立設し、また、この左右の支柱31の上部と支持フレーム21の上部寄りをプレート32で連結する。
そして、これらで囲まれた枠内に前輪8で跳ね上げた泥土等がフロア16側の操縦部に及ばないように阻止する遮蔽カバー33を設ける(図14参照)。また、左右の支柱31にフロントランプ34を夫々設けると共に、バックミラー35のステー36の基部36a、36bを支持フレーム21の上部寄りとプレート32に取付けて、左右のバックミラー35をステー36の先端部36cに夫々設ける。一方、操縦フレーム15の後部には逆U字状のロールバー37によって構成する安全フレームを畳み自在に取付け、このロールバー37には左右のリヤコンビネーションランプ38を設ける。
次に、トラクタ1にオプションとして提供するナビゲーションシステムについて、図3のブロック図に基づいて説明する。先ず、このナビゲーションシステムは、既に提供するトラクタ1であっても簡単に後付けすることができるものであって、特にトラクタ1の現在位置及び作業目標経路等を表示し、作業者はその表示情報に基づいてトラクタ1を作業目標経路に倣って手動で運転操作することができると共に、作業目標経路に倣う前輪8の操舵を自動で行わせることもできる。
そこで、ナビゲーションシステムは、センチメートル級の精度で走行機体の位置を取得することができるリアルタイムキネマティック(RTK:Real Time Kinematic)による全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)によってトラクタ1の位置や方位を測定する。そのため、ナビゲーションシステムはRTK-GNSS受信装置39とRTK固定局40とタブレット端末41を備えると共に、前輪8の操舵を自動で行わせる操舵ユニット42を備える。
そして、RTK-GNSS受信装置39は、GNSS衛星から出される電波を捉える位置用と方位用の2つのGNSSアンテナ43、44、これら2つのGNSSアンテナ43、44が捉えた夫々の衛星から出された信号を受取ってこれを復調して情報を復元する2つのGNSS受信機45、46、RTK固定局40から出された電波を捉える無線アンテナ47、この無線アンテナ47が捉えた信号を受取ってこれを復調して情報を復元する特定小電力無線機48を備える。
また、RTK-GNSS受信装置39は、走行機体の姿勢を検出する3軸のジャイロと3方向の加速度計からなる慣性計測装置49、タブレット端末41との間で情報を交換するアンテナ内蔵型の近距離無線機50、電子制御ユニット(ECU)によって構成するGNSSコントローラ51、7セグメントLEDで構成するディスプレイ52等を備える。なお、RTK-GNSS受信装置39は、GNSSアンテナ43、44と無線アンテナ47を除いた各機器を単一のボードに纏めてGNSSユニット53に構成する。
一方、RTK固定局40は、設置高さを確保する三脚とこの三脚の上に設ける衛星から出される電波を捉えるGNSSアンテナ54、GNSSアンテナ54が捉えた衛星から出された信号を受取ってこれを復調して情報を復元するGNSS受信機55、GNSS受信機55が復元した情報をRTK-GNSS受信装置39に向けて発信する特定小電力無線機56とその無線アンテナ57、乾電池で構成する電源バッテリー58等から構成し、例えば、移動局となるトラクタ1が作業を行う圃場から300メートル以内で周囲に山や木、高い建物などの障害物がない見通しの良い安定した場所に設置する。
また、タッチパネル付きの液晶ディスプレイ(表示手段)を備える薄型軽量のコンピュータであるタブレット端末41は、無線LANを内蔵すると共に、その通信距離を約10メートルとする内臓アンテナ式の近距離無線機59を搭載する。そして、このタブレット端末41は、トラクタ1の操縦部に据え置き、また、必要に応じてトラクタ1に備える電源取出しコネクタ等を利用して内臓バッテリに充電しながら使用する。
なお、このタブレット端末41には、ナビゲションソフトウェアが予めインストールしてあり、このナビゲションソフトウェアがその機能を拡張した場合には、無線LAN等を用いてインターネット上からアップデートすることも可能である。また、タブレット端末41の近距離無線機59とGNSSユニット53の近距離無線機50は予めペアリングを行って、次回以降は自動的に接続できるようにしておく。
また、操舵ユニット42は、電子制御ユニットによって構成する操舵ECU60、操作スイッチ群61、LEDランプ群62、ステッピングモータ63、伝動部64等によって構成し、図4に示すように全体を樹脂製のカバーや底板で覆った操舵ユニット42をステアリングホイール10下方のステアリングコラムの上部に取付け、ステアリングシャフトをステアリングホイール10と共に回動させて前輪8を操舵する。
なお、この操舵ユニット42の取付けにあたっては、先ずステアリングシャフトの上部に設けるステアリングホイール10を取外し、次にステアリングシャフトの上部に伝動部64に設ける継手シャフト65の下部を嵌合させた状態で操舵ユニット42をステアリングコラムの上部に取付ける。さらに、継手シャフト65の上部に取外したステアリングホイール10を取付けて、操舵ユニット42を既存のトラクタ1に後付けすることができる。
そして、このように操舵ユニット42を取付けると、手動操作によってステアリングホイール10を回した際には、前述の継手シャフト65を介してステアリングシャフトを回動させて、また、ステアリングシャフトは全油圧式パワーステアリングユニットを介して前輪8を操舵する。一方、操舵ユニット42のステッピングモータ63が操舵ECU60からの指令に基づいて正逆回転すると、ステッピングモータ63は伝動部64に設ける歯車減速機構66を介して継手シャフト65を回動させて、以下手動操作と同様に前輪8を自動操舵する。
以上、トラクタ1にオプションとして提供するナビゲーションシステムの機器構成について説明したが、次にRTK-GNSS受信装置39のトラクタ1への搭載方法について説明する。図5乃至図8に示すようにRTK-GNSS受信装置39は、トラクタ1の運転席17の後方に設ける安全フレームの上部に設け、GNSS衛星から出される電波を障害物やマルチパスの影響を少なくして捉えることができるようにする。
より詳細には、操縦フレーム15の後部に設ける逆U字状のロールバー37は角パイプ材を屈曲させて形成し、その左右脚部の下端部37aを操縦フレーム15の後部に設ける左右のホルダ67に支点ピン68と固定ピン69によって略直立した姿勢と後方に倒伏した姿勢とその中間の斜め姿勢に切換可能に取付ける。そして、作業走行時等においては専らロールバー37を略直立した姿勢に切換え、さらに、ホルダ67に設ける押しボルト70によって下端部37aを押してピンとピン孔の隙間に基づくロールバー37のがたつきの発生を防止する。
また、ロールバー37はトラクタ1が転倒した際等において運転席17に座った作業者の安全を護るために設けるものであるので、安全フレームによって得られる安全域から外れた位置に少なくともRTK-GNSS受信装置39を設けることが望ましい。そのため、RTK-GNSS受信装置39はロールバー37上部の水平部37bより後方に位置するように設け、仮にトラクタ1が転倒した際にも作業者の頭部等がRTK-GNSS受信装置39に当たって怪我しないように設ける。
さらに、トラクタ1に設けるロールバー37は機種や型式によって直立させた際の傾きが少々異なったり、アタッチメントとしてロールバー37の上部にフードを装着する場合は、フードと干渉しないようにRTK-GNSS受信装置39を設けなければならないといった種々の制約がある。そのため、これ等の制約によってRTK-GNSS受信装置39を個別にロールバー37に取付けることができるようにすると、取付部品数が多大となってコストアップを招く虞がある。
そこで、各ロールバー37の水平部37bに取付けることができる共通の第1のアンテナブラケット71と、この第1のアンテナブラケット71に取付けて個別対応可能な第2のアンテナブラケット72を設け、係る第2のアンテナブラケット72にRTK-GNSS受信装置39を最終的に取付ける。そして、この第1のアンテナブラケット71は、図6に示すように断面コ字状に形成するベース71aと、ベース71aの下面に補強プレート71bと共に設けるパイプ71cと、パイプ71cの両端に設ける取付板71dを夫々溶接して一体に形成する。
そして、第1のアンテナブラケット71はロールバー37の水平部37bに前方からそのベース71aのコ字状部を差し込み、また、後方寄りを4本のボルト73で閉じてロールバー37の水平部37bを抱え込む。なお、ベース71aのコ字状部の下面と水平部37bの下面との間にシム(大)74を差し込める枚数だけ差し込んでコ字状部の上下面と水平部37bとの間の隙間を無くし、また、ボルト73に装着するカラー75の下面とシム(大)74の上面との間に差し込むシム(小)76の枚数を、最大差し込める枚数より1枚少なくしたうえでボルト73を締め込む。
そのため、ボルト73の締め付け時のトルク管理を厳格にしなくとも、第1のアンテナブラケット71をロールバー37の水平部37bにこれを変形させたりすることなく均一に適正圧で挟持して取付けることができ、また、この場合にロールバー37側に何等の加工等を行うこともなく、第1のアンテナブラケット71を確実に後付けすることができる。一方、第2のアンテナブラケット72は数種用意して、装着しようとするトラクタ1に適合するものを使用する。
従って、後述するフード等を備えないロールバー37であれば、例えば標準となる第2のアンテナブラケット72を用い、このブラケット72は第1のアンテナブラケット71の取付板71dの左右に取付ける基部の後方寄りから上方に向けて立ち上がり、その上端に取付座72aを設ける左右の側板72bによって形成する。なお、この第2のアンテナブラケット72を第1のアンテナブラケット71に取付ける際、ロールバー37の直立させた際の傾きによって第2のアンテナブラケット72の傾きを変えて取付ける。
即ち、第1のアンテナブラケット71の取付板71dと第2のアンテナブラケット72の側板72bを重ねて片側2本のボルトで取付ける際、後部寄りのボルトを通す孔71e、72cは夫々1つであるが、前部寄りのボルトを通す孔を夫々上孔71f、72dと下孔71g、72eの2つを設け、例えば、ロールバー37の直立させた際の傾きが多少前傾するものであれば、前部寄りのボルトを夫々の上孔71f、72dを通して両者を固定する。また、ロールバー37の直立させた際の傾きが実施形態に示すように多少後傾するものであれば(図1参照)、前部寄りのボルトを夫々の下孔71g、72eを通して両者を固定する。
そして、このようにボルトを通す孔を変えると第1のアンテナブラケット71に対する第2のアンテナブラケット72の前後方向の取付角度が変わり、ロールバー37が前傾したり後傾するものであっても、夫々のロールバー37に第1のアンテナブラケット71と第2のアンテナブラケット72を装着した後の第2のアンテナブラケット72の取付座72aの向きを、例えば水平にするといった所定の角度に設定することができる。
一方、図9及び図10に示すようにフード77を備えるロールバー37であれば、前述の標準となる第2のアンテナブラケット72を用いるとフード77の後部にアンテナブラケット72が当たってしまう。そこで、この場合は図11乃至図14に示すようにフード77と干渉しないように後方側に長い側板72bを備えたフード共着用の第2のアンテナブラケット72を用いる。なお、このフード共着用の第2のアンテナブラケット72の側板72bは後方側に長くするため、左右の側板72bをプレート72gで固着して補強する。また、ロールバー37を略直立した姿勢から後方に倒伏した姿勢、或いは斜め姿勢に切換えると、その下方に設ける作業機と干渉する虞がある。
そこで、フード77をロールバー37に対して屈曲させてフード77を水平に格納するのに合わせて、第1のアンテナブラケット71に対してフード共着用の第2のアンテナブラケット72を、前述の孔71e、72cに通す後部寄りのボルトを中心として回動させてその後部側を持ち上げて固定することができるように、第1のアンテナブラケット71にボルト通し孔71hを、また、第2のアンテナブラケット72の側板72bに長孔72hを設け、さらに前述の前部寄りのボルトを取外してこのボルトを長孔72hと孔71hを通して締着すると、フード共着用の第2のアンテナブラケット72を第1のアンテナブラケット71に対して取付角度を任意の角度に変更することができ、それによって作業機との干渉を防止することができる。
なお、前述の第1のアンテナブラケット71をロールバー37の水平部37bに取付ける際には、水平部37bの左右方向の中央といった所定の位置に第1のアンテナブラケット71を取付ける必要がある。その場合、ベース71aの下面に設ける中央の補強プレート71bに下げ振りの糸を通す孔71iを設け、この孔71iに取付けた下げ振りが例えば、トランスミッションケース4の後部に軸支するPTO軸の中心に一致するように第1のアンテナブラケット71を左右移動させて水平部37bに取付ければ、第1のアンテナブラケット71をロールバー37の水平部37bの左右方向の中央に正確に取付けることができる。
また、第1のアンテナブラケット71をロールバー37に取付けると、第1のアンテナブラケット71の下部はロールバー37の水平部37bより下方に位置することになって、作業走行時等に作業状態を確認するために作業者が後ろを振り向いて身を乗り出すと誤って第1のアンテナブラケット71に頭をぶつけて怪我をする虞がある。そこで、第1のアンテナブラケット71の前部にその前面に亘る矩形状のヘッドガード用のカバー78を取付けて作業者を護る。
以上、第1のアンテナブラケット71と第2のアンテナブラケット72のロールバー37に対する取付け方法について説明したが、RTK-GNSS受信装置39はこのように取付けた第2のアンテナブラケット72の上部に設ける左右の取付座72aに取付けて、ロールバー37の水平部37bより後方に設ける。そして、ここでRTK-GNSS受信装置39は角パイプをベースにして形成する長尺な取付フレーム79を備え、この取付フレーム79の中央寄りに固着する左右の取付座79aを第2のアンテナブラケット72の左右の取付座72aに載置した状態でボルトで締着して取付ける。
なお、係る取付フレーム79の長手方向の略中央に第1のブラケット80を固着して、このブラケット80上にGNSSユニット53を載置して取付け、また、コ字状に折り曲げて形成するカバー81をブラケット80に取付けてGNSSユニット53の上方側を覆う。さらに、このカバー81の上面にRTK固定局40から出された電波を捉える無線アンテナ57を取付ける。そして、取付フレーム79の長手方向の両端に第2と第3のブラケット82、83を固着し、この第2と第3のブラケット82、83にGNSS衛星から出される電波を捉える2つのGNSSアンテナ43、44を夫々取付ける。
そして、以上のようにRTK-GNSS受信装置39の各機器を第1のアンテナブラケット71と第2のアンテナブラケット72、或いは取付フレーム79を介してロールバー37に取付けると、特に2つのGNSSアンテナ43、44と慣性計測装置49を、例えば後車軸11の左右中心に対する予め設定した基準位置に正しく取付けることができる。そのため、GNSSアンテナ43、44と慣性計測装置49の機体に対する取付誤差に基づく機体の測位検出誤差を無くして位置検出精度を向上させることができる。
次に、本発明の特徴とするタブレット端末41の設置方法について図15乃至図18に基づいて説明すると、タブレット端末41は作業者がトラクタ1の前方とタブレット端末41の表示画面を略同時に見ながら例えば、ステアリングホイール10を手動操作して作業目標経路に倣う自動操舵制御の開始位置に旋回させるような場合に、手元に置かずに見易い位置に固定しておく必要がある。また、トラクタ1の操縦部にタブレット端末41を設置するとしても、操縦部を改造することなくその設置費用にしても大幅に掛からないようにすることが望ましい。
そこで、タブレット端末41は、キットとして提供するブラケット84とホルダ85と連結金具86によってトラクタ1の操縦部に簡単に設置可能とするものであって、このブラケット84の基部は強度的に余裕があるパネルカバー25を取付ける支持フレーム21に取付け、また、タブレット端末41はブラケット84の先端部に取付けるホルダ85に装着して設ける。より詳細に説明すると、ブラケット84はプレートを4分円弧のように湾曲させて形成する本体の下方となる基部84aに2つのボルト通し孔を設ける。また、本体の上方となる先端部84bにホルダ85を取付ける4つのボルト通し孔を設け、さらに中間部84cに1つのボルト通し孔を設ける。
そして、図17に示すようにバックミラー35のステー36の基部36aを支持フレーム21の上部寄りに設ける取付座21aに取付けている2つのボルトを取外し、ステー36の基部36aにブラケット84の基部84aを外方から重ね、取外した2つのボルトをボルト通し孔を通してブラケット84の基部84aをステー36の基部36aとともに支持フレーム21の上部寄りに設ける取付座21aに共締めして取付ける。
また、ブラケット84の中間部84cに設けるボルト通し孔と連結金具86の一端86aに設けるボルト通し孔に別途用意したボルトを通してナットによってブラケット84の中間部84cに連結金具86の一端86aを固定する。さらに、パネルカバー25を支持フレーム21の取付座21bに取付けているボルトを取外し、連結金具86の他端86bをパネルカバー25に上方から重ね、取外したボルトを連結金具86の他端86bに設けるボルト通し孔を通して連結金具86の他端86bをパネルカバー25とともに支持フレーム21の取付座21bに共締めして取付ける。
そして、ブラケット84の先端部84bにホルダ85の基部85aをボルトとナットを用いて取付ける。また、ブラケット84の先端部84bに取付けるホルダ85は、その基部85aから2つのボールジョイント85b、85cを介して載置台を取付けており、この載置台はその固定枠部85dに対して可動枠部85eをスライド可能に取付け、また、ばねによって可動枠部85eが固定枠部85d側に近づくように付勢している。
そのため、可動枠部85eをばねの付勢力に抗して固定枠部85dから離れるように押し広げ、係る固定枠部85dと可動枠部85eによってタブレット端末41を左右から挟持させると、タブレット端末41をその載置台に着脱自在に取付けることができる。また、ボールジョイント85b、85cの保持力をノブボルト85fによって緩めてタブレット端末41とともに載置台を上下左右に傾けると2つのボールジョイント85b、85cの可動範囲において、その傾きを左右・上下調節することができ、傾きを調整した後にノブボルト85fを締めておくとタブレット端末41の傾きをそのまま保持することができる。
なお、バックミラー35はパネルカバー25の右側と左側に夫々設け、また、パネルカバー25を取付ける支持フレーム21は上部寄りに設ける取付座21aを左右対称となる位置に設ける。そのため、前述のブラケット84の基部84aの右側面又は左側面を左右のステー36の基部36aに重合させて、ブラケット84の基部84aをステー36の基部36aと共に支持フレーム21の取付座21aに共締めして取付けることができ、その結果、タブレット端末41はパネルカバー25の右側と左側に同一のブラケット84を用いて何れの側でも取付けることができる。
以上、タブレット端末41の操縦部への設置方法について説明したが、タブレット端末41にはナビゲーションシステムのソフトウェアがインストールしてあり、このナビゲーションシステムタはブレット端末41のディスプレイにガイダンス画面と設定画面とドキュメント画面を備える。そして、係るガイダンス画面は図19に示すように、自車位置を示すマーク87aと共に、衛星の受信状態、方角を表示するコンパス、経路誤差87b、作業距離と面積、受信衛星状態等を表示すると共に、経路生成のためのA点生成ボタン87c、B点生成ボタン87d、現在位置を基準位置として経路を再設定するリセットボタン、経路修正ボタン、追従性ボタン等を備える。
また、上述のA点生成ボタン87c、B点生成ボタン87d、現在位置を基準位置として経路を再設定するリセットボタン、追従性ボタン等に相当するスイッチは、操舵ユニット42の操作スイッチ群61の中に備え、これらの機能はタブレット端末41側と操舵ユニット42側の何れの側でも行うことができるようになっている。但し、操舵ユニット42の操作スイッチ群61の中には自動操舵を開始又は停止させる自動操舵スイッチを設けているが、係るスイッチに相当するボタンはガイダンス画面に表示しても実際には機能させない。
一方、ナビゲションソフトウェアの設定画面では、近距離無線機50のGNSSユニット53との接続、GNSSアンテナ43、44位置、慣性計測装置49の取付位置と向き、自動操舵パラメータ、初期設定、経路作成間隔や基準方位の直接指定又は解除等の設定等を行うことができ、これらの設定は支援システムの導入時に一括して行うことができる。また、ドキュメント画面に切り替えると過去に生成された経路や作業履歴等を表示させることができ、これらは今後の参考情報となる。
従って、圃場において最も使用頻度の高い画面はガイダンス画面となり、このガイダンス画面を作業者は表示させ、また、操舵ユニット42のLEDランプ群62の表示等から、ナビゲションソフトウェアとGNSSユニット45と操舵ユニット42が正しく接続されて自動操舵の経路設定が行える状態であることを確認し、次に作業者はトラクタ1を手動操舵してティーチング走行を行わせる。
そして、この場合、GNSSコントローラ51はトラクタ1の現在の位置情報や方位情報等をリアルタイムで求め、この情報を常にナビゲションソフトウェアに送信している。また、ティーチング走行においてトラクタ1が基準線の開始点であるA点と終了点であるB点に至って作業者がボタン87c、87d又はスイッチを操作すると、ナビゲションソフトウェアはA点とB点の位置情報と基準線の方位情報を得て次回以降の作業目標経路を演算する。
さらに、ナビゲションソフトウェアはガイダンス画面に自車位置を示すマーク87aを中央に示すと共に、作業目標経路87eとトラクタ1の作業目標経路からの位置偏差87bや方位偏差等を表示する。そして、ティーチング走行を終えて次行程となる作業目標経路の開始位置に向けてトラクタ1を手動操舵によって旋回させる際、作業者は次行程となる作業目標経路87eに対する自車位置87aのずれを確認しながら操舵を行い、正しく作業目標経路87eにのれば自動操舵スイッチを入りにする。
そして、自動操舵スイッチが入りに操作されるとナビゲションソフトウェアはトラクタ1の位置偏差と方位偏差が解消されるための前輪8の操舵量を、例えばモデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)等を利用して演算し、この演算した操舵量をGNSSコントローラ51を経由して操舵ECU60に伝える。
そこで、操舵ECU60は前輪8の操舵量が指示された操舵量になるように出力パルス数をカウントしながらステッピングモータ63を正逆回転させ、また、ステッピングモータ63は伝動部64に設ける歯車減速機構66を介して継手シャフト65を回動させ、さらに、継手シャフト65の回転に伴ってステアリングシャフトは回転し、前輪8は最終的に全油圧式パワーステアリングユニットを介して操舵される。
そして、係る自動直進制御のもとにトラクタ1が作業目標経路の1行程の終端に至ると、作業者は自動操舵スイッチを切りにして直進自動操舵制御を終了させ、次行程に移るためにトラクタ1を前述のようにガイダンス画面を見ながら手動操舵で旋回させる。また、それ以後は自動操舵と手動操作の繰り返しによって作業走行を終えることになる。
以上、タブレット端末41とタブレット端末41等を用いたナビゲーションシステムについて説明したが、ここでその作用効果について纏めると、先ずトラクタ1は運転席17の前方にステアリングホイール10とメーター22やスイッチ類24を備えるパネルカバー25を設ける。また、RTK-GNSS受信装置39によって構成する機体の現在位置を取得する測位手段、ナビゲションソフトウェアから構成する作業目標経路からの機体のずれ量を算出する演算手段、並びに機体の現在位置87aと作業目標経路87eを表示するタブレット端末41とからなるナビゲーションシステムと、機体を作業目標経路87eに倣うように操舵する操舵ユニット(自動操舵装置)42を後付けして設ける。
また、前述のパネルカバー25を取付ける支持フレーム21にブラケット84の基部84aを取付け、このブラケット84の先端部84bにホルダ85を介してタブレット端末41を着脱自在に設けて、運転席17に着座した作業者のステアリングホイール10操作や前方視界を妨げないようにタブレット端末41を、例えばパネルカバー25とバックミラー35との間で、且つメーター22より余り高くならないように低く抑えて設ける。
そのため、ナビゲーションシステムと自動操舵装置42をトラクタ1に設け、トラクタ1の現在位置87a及び作業目標経路87e等を見ながらトラクタ1を走行させることができ、無駄のない高精度な作業を行うことができると共に、作業目標経路87eに倣ってトラクタ1を自動操舵させることができ、作業者は操舵操作から解放されて長時間にわたる作業走行にあっても疲労を軽減でき、また、不慣れな作業者でも熟練者並みの作業走行を行うことができる。
また、機体の現在位置87aと作業目標経路87eを表示するタブレット端末41を、パネルカバー25を取付ける支持フレーム21にブラケット84の基部84aを取付け、このブラケット84の先端部84bにホルダ85を介して着脱自在に設けるから、メーター22やスイッチ類24を備えるパネルカバー25を取付けるために元々強度を備えた支持フレーム21を利用して、この支持フレーム21にブラケット84を介してタブレット端末41を強固に取付けることができる。
しかも、支持フレーム21にブラケット84とホルダ85を介して取付けたタブレット端末41は、運転席17に着座した作業者のステアリングホイール10操作や前方視界を妨げないように設けるから、作業者は機体の前方とタブレット端末41の表示画面を略同時に見ながら例えば、ステアリングホイール10を手動操作して作業目標経路87eに倣う自動操舵制御の開始位置にトラクタ1を適確に旋回させることができる。従って、機体前方の目視だけに頼った場合のように自動操舵制御の開始時の偏差によってトラクタ1が蛇行するといった不具合を生じさせることなく、スムーズに自動操舵制御に移行させることができる。
また、パネルカバー25を取付ける支持フレーム21にバックミラー35のステー36を取付ける取付座21aを設け、係る取付座21aにバックミラー35のステー36とタブレット端末41のブラケット84の基部84aをボルトで共締めして取付けるから、タブレット端末41を取付けるブラケット84をバックミラー35のステー36を取付ける支持フレーム21の取付座21aを利用してバックミラー35のステー36と共に取付けることができ、例えばブラケット84を取付けるために支持フレーム21に取付座を新たに設けたりする必要が無くなり、簡単にタブレット端末41を既存のトラクタ1に後付けすることができる。
さらに、パネルカバー25を取付ける支持フレーム21に左右のバックミラー35のステー36を夫々取付ける左右の取付座21aを設け、また、タブレット端末41のブラケット84をこの左右の取付座21aに対して選択して取付けることができるように形成して、パネルカバー25の右側或いは左側にタブレット端末41を設けることができるようにするから、パネルカバー25の特に機体の左右中央に位置するメーター22の上方側を空けて機体前方の視界を確保したうえで、更に視界を確保したい側と反対側にタブレット端末41を設けて確保したい側の機体前方の視界を広げることができる。
しかも、ブラケット84は左右対称となる形状になして、支持フレーム21の左右どちらの取付座21aにその基部84aを取付けてもタブレット端末41をパネルカバー25の右側或いは左側の対称となる位置に設けることができるようにするから、右又は左のブラケット84を用意する必要が無くなり、部品の管理費用等を削減して安価にブラケット84を提供することができる。
そして、ブラケット84の中間部84cに一端86aを固定する連結金具86の他端86bを、パネルカバー25を取付ける支持フレーム21にパネルカバー25と共にボルトで共締めして取付けると、走行時の振動などでタブレット端末41が大きく振れて見難くいことがあるが、ブラケット84の中間部84cを連結金具86を介して支持フレーム21に取付けることでタブレット端末41の振れを無くすことができる。また、この場合も連結金具86の他端86bをパネルカバー25と共にボルトで共締めして取付けるから、支持フレーム21に取付座21bを新たに設けたりする必要が無くなり、簡単にタブレット端末41を既存のトラクタ1に後付けすることができる。
次に、以上説明した第1の実施形態に係るトラクタ1より低馬力で小型となす第2の実施形態に係るトラクタ88について主な変更点について説明する。先ず、このトラクタ88は図20及び図21に示すようにロールバー37の水平部37bの長さが短く、この水平部37bにフード77を取付けると第1実施形態の第1のアンテナブラケット71を取付けるスペースが無くなって、RTK-GNSS受信装置39を後付けすることができない。
そのため、第2の実施形態のトラクタ88はロールバー37の左右の脚部37を利用して、この脚部37cを抱え込んで取付ける左右の第3のアンテナブラケット89を用い、また、この第3のアンテナブラケット89の後方寄り上部に設ける取付座89aに、取付フレーム79の取付座79aを載置してボルトで締着し、それによってRTK-GNSS受信装置39を、第2のアンテナブラケット72を用いることなく直接取付ける。従って、第3のアンテナブラケット89はロールバー37の脚部37cに取付ける第1のアンテナブラケット71の抱え込み構造と同様な基部89bとパイプを折り曲げて形成する腕部89cと補強プレート89dと取付座89aを溶着して一体に形成する。
なお、第2の実施形態に係るトラクタ88のロールバー37の脚部37cには、各部の取扱い上の注意事項を書き込んだラベル90が貼付けてあり、第3のアンテナブラケット89の基部89bを取付けるとラベル90が隠れて見えなくなる虞がある。そこで、第3のアンテナブラケット89の基部89bを一部切り欠いて(89e)、ラベル90が見えるようにする。また、第3のアンテナブラケット89の基部89bにラベル用のプレート91を追加して、このプレート91にラベル92を張り替える。
さらに、図22及び図23に示すように第2の実施形態に係るトラクタ88のロールバー37の左右下端部37aは運転席17の後部に設ける左右のホルダ93に支点ボルト94と固定ピン95によって略直立した姿勢と後方に倒伏した姿勢とその中間の斜め姿勢に切換可能に取付ける。しかし、第1の実施形態に係るトラクタ1のようにピンとピン孔の隙間に基づくロールバー37のがたつきの発生を防止する押しボルト70を設けていないので、ロールバー37が前後に揺れる虞がある。
そこで、第2の実施形態のロールバー37では、その左右下端部37aに押しボルト70に代わる振止金具96を設ける。即ち、振止金具96は下端部37aに元々備えられていた孔aを利用し、この孔aにピン97を差し込んで振止金具96の中間部を下端部37aに回動自在に取付ける。また、振止金具96の下端部にノブ付きボルト98を装着し、このノブ付きボルト98の先端をホルダ93の基部に当接させてこれを締め上げる。すると、振止金具96の先端部96aはロールバー37を前方側に押して、ロールバー37のがたつきを無くして前後方向の振れ止めを行う。
また、第2の実施形態のトラクタ88は、そのパネルカバー25を取付ける支持フレーム21の基部をフロア16の上方に向けて屈曲させる先端部に取付けて立設する。そして、図24乃至図26に示すように支持フレーム21に取付けるバックミラー99は支持フレーム21の右側上部寄りに設けることを標準とするが、オプションとして第1の実施形態の大型のバックミラー35をパネルカバー25の右側と左側に夫々設けるものを用意している。また、この場合にオプションで提供する左右のバックミラー35はパネルカバー25の右側と左側から離れた位置に設けるが、標準の右バックミラー99はパネルカバー25の右側に近い位置に設けている。
そこで、標準の右バックミラー99を取付けている支持フレーム21に第1の実施形態に示すタブレット端末41のブラケット84を右バックミラー99とともに共締めして取付けると、タブレット端末41が標準の右バックミラー99と前後方向において一部重なり、右バックミラー99の視認性を悪化させる。そのため、タブレット端末41のブラケット100をパネルカバー25を取付ける支持フレーム21に取付ける下ブラケット101とホルダ85を先端に取付ける上ブラケット102で構成し、この下ブラケット101に上ブラケット102を上下動自在に取付ける。
そのため、標準の右バックミラー99を設ける場合は上ブラケット102を上動させて、タブレット端末41を高くして右バックミラー99と重ならないようにする。また、オプションの右バックミラー35を設ける場合は上ブラケット102を下動させて、タブレット端末41を低くしてその側の前方視界を阻害しないように設ける。そして、具体的にはタブレット端末41のプレートで形成する下ブラケット101は、支持フレーム21の右側上部寄りに設ける右バックミラー99の取付座bと、右側下部寄りに設けるオプションの右バックミラー35のステー36の取付座cに、右バックミラー99と右バックミラー35のステー36とともに共締めして取付ける。
また、下ブラケット101はその側面に断面コ字状の上下方向となる取付座101aを設け、この取付座101aに外側方から嵌るように上ブラケット102を断面コ字状に形成する。さらに、上ブラケット102にはその長手方向に沿って2つの長孔102aを設け、この長孔102aに夫々ノブ付きボルト103を通して、下ブラケット101の取付座101aに設けるねじ孔にねじ込んで、下ブラケット101に対して上ブラケット102を長孔102aの範囲で上下動自在、且つ任意の位置で締着して固定することができるように設ける。なお、上ブラケット102の先端部には取付座102bを設け、この取付座102bにタブレット端末41をホルダ85を介して設けることに変わりはない。
従って、以上説明したタブレット端末41を設ける構造に係る作用効果を纏めると、タブレット端末41のブラケット100を、パネルカバー25を取付ける支持フレーム21に取付ける下ブラケット101とホルダ85を先端部102bに取付ける上ブラケット102で構成し、この下ブラケット101に上ブラケット102を上下動自在に取付けるから、タブレット端末41の設ける高さを変更することができ、支持フレーム21に通常のバックミラー99とこれより大型のバックミラー35を交換して取付ける場合におけるバックミラー99、35の視認性をタブレット端末41が何れの場合でも妨げないように、その高さを変更して設けることができる。
なお、前述の第1と第2実施形態においてタブレット端末41は、パネルカバー25の特に機体の左右中央に位置するメーター22の視認性を阻害しないように、また、メーター22の上方側を空けて機体前方の視界を確保するようにその右側或いは左側に設けるが、タブレット端末41のガイダンス画面にメーター22に設ける走行速度、エンジン回転数、水温、燃料、警告ランプ等を追加して表示するようになすと、メーター22の替わりとしてタブレット端末41を用いることができるので、タブレット端末41をメーター22の前面に重なるようにホルダ85を調節して設けてもよく、本発明は実施形態に必ずしも限定されるものではない。