本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図4に示すように稲苗を水田に植付ける乗用型の田植機(移植機)1は、左右の前輪2と後輪3を備える走行機体(機体)4の後部に昇降リンク機構5を介して植付装置6をローリング自在に連結する。そして、この植付装置6は、走行機体4の後部と昇降リンク機構5の後部に亘って取付ける油圧シリンダ7によって下降させた作業姿勢と上昇させた非作業姿勢に亘って昇降自在に設ける。
なお、後輪3と植付装置6との間には走行機体4の旋回によって荒れた枕地を均す整地ロータ8を設け、この整地ロータ8は植付装置6と共に昇降するように設ける。一方、前述の走行機体4は、角鋼管で形成する左右のメインフレーム9aに複数のクロスメンバー9bを固着して構成する機体フレーム9に、左右のフロントアクスルケース10をその側面にそれぞれ一体に連結するトランスミッションケース11と、左右のリヤアクスルケース12等を取付けて一体的に構成する。
また、機体フレーム9にはその前部寄りにエンジンフレーム13を設け、このエンジンフレーム13にディーゼルエンジンを防振支持して搭載する。なお、エンジンを冷却するラジエータ14は、エンジン後方の機体フレーム9に取付けるラジエータブラケット14aに取付ける(図11参照)。また、このラジエータ14後方の機体フレーム9に取付けるトランスミッションケース11は、その上面にパワーステアリング装置を構成するトルクジェネレータ15を取付ける。
さらに、トルクジェネレータ15はその入力軸にステアリングシャフト16の下部を連結するが、このステアリングシャフト16は自らを内包してブッシュによって回転自在に支持するステアリングコラム17をコラムブラケット18を介してトルクジェネレータ15の上面に取付ける。また、コラムブラケット18はトランスミッションケース11にプレートを介して片側を取付けているので、ステアリングコラム17はトランスミッションケース11、ひいては機体フレーム9に堅固に取付けていることになる。
そして、ステアリングシャフト16の上部には前輪2を操舵するステアリングホイール19と後述する自動操舵ユニット20を設ける。また、トルクジェネレータ15の出力軸はトランスミッションケース11内に設ける減速歯車装置に連結し、また、この減速歯車装置のセクタシャフト21の下端はトランスミッションケース11の下面から下方に突出し、係るセクタシャフト21の下端部にピットマンアーム22を取付ける。
さらに、ピットマンアーム22に取付ける左右のドラッグリンク23は、フロントアクスルケース10の両端部に設けるキングピンケース24に連結して左右の前輪2を操舵する。一方、前述のコラムブラケット18にニュートラルシャフト25を軸支し、このニュートラルシャフト25の左右に走行変速レバー26と走行副変速レバー27及びエンジンコントロールレバー28を回動自在に取付ける。
また、ステアリングコラム17の中途部とラジエータブラケット14aの上部にその前後部を取付ける取付ブラケット29を設け、この取付ブラケット29の中央左右に形成するガイド部の溝29aに走行変速レバー26と走行副変速レバー27及びエンジンコントロールレバー28を通してガイドさせる。また、取付ブラケット29にパネルカバー30とコラムカバー31を取付け、その下方側にはスタータスイッチ等を取付けるリヤパネルカバー32を設けて、ステアリングコラム17回りを覆う。
なお、前述のパネルカバー30の中央にはモニターパネル33を取付け、また、後部寄りの左右には油圧感度調整ボリュームや苗植付に関わる各種スイッチを纏めたアッシを取付ける。さらに、パネルカバー30の前部寄りにはラジエータ14の冷却水取入口14bを覆うクーラントカバー34をその後部寄りを中心に前部側が開閉するように取付ける。
そして、パネルカバー30の前方側乃至下方側、またリヤパネルカバー32の前方側に設けるボンネット35はエンジンやラジエータ14等を覆い、その後上部をヒンジピンPによって取付ブラケット29に取付け、このヒンジピンPを回動支点として前部側を上方に回動させたメンテナンス姿勢と下方に回動させた閉じ姿勢に回動自在に設ける。なお、ボンネット35の開いたメンテナンス姿勢は後述するセンターポール36を回動させてボンネット35の前下部を支えて保持することができ、閉じ姿勢はボンネット35の前下部に取付けるプレートを機体フレーム9の前部に取付けるマグネットに吸着させて保持する。
さらに、前述の機体フレーム9には、左右のフロントステップ37とリヤステップ38を設ける。この内、略々矩形状になす左右のフロントステップ37は、ボンネット35の左右外側方となる機体フレーム9に取付け、また、リヤステップ38はリヤパネルカバー32の左右外側方となる左右の幅狭な前部38aと、この前部38aに引き続いてリヤパネルカバー32の後方側となる幅広の後部38bと、この後部38bから後上方に立ち上がる傾斜部38cを一体的に形成して機体フレーム9に取付ける。
なお、リヤステップ38はその後部38bと傾斜部38cにかけて、その中央にシートフレーム39を通す開口38dを設け、この開口38dはシートフレーム39に取付けるシートアンダーカバー40によって塞ぐ。そして、シートフレーム39の上部には運転席41を取付け、シートフレーム39内には植付装置6を昇降する油圧機器を設ける他、後部には昇降リンク機構5や油圧シリンダ7を取付ける。
また、リヤステップ38の左右の前部38aの中央寄りには前輪2の操舵状態を視認する左右の開口38eを設け、右前部38aのリヤパネルカバー32寄りにはブレーキペダル42を通す開口38fを設ける。さらに、リヤステップ38の外周にはリヤステップ38を拡張するワイドステップを設け、このワイドステップは、リヤステップ38の後部38bの左右外側方に設ける左右ステップ43と、リヤステップ38の傾斜部38cの上端から後方に設ける後ステップ44によって構成する。なお、45と46は左右のフロントステップ37とリヤステップ38に設けるマットである。
ここで、田植機1の動力伝達系について簡単に説明すると、機体フレーム9の前部寄りに設けるエンジンは伝動ベルト47を介してトランスミッションケース11に取付けるHST(静油圧式無段変速装置:主変速装置)48を駆動する。また、HST48からトランスミッションケース11内に伝達された動力は、トランスミッションケース11内に設ける副変速装置によって変速し、左右の前輪2は更に差動歯車装置とフロントアクスルケース10内に設ける伝動軸を介して駆動する。さらに、前記副変速装置からブレーキを介してリヤアクスルケース12内に伝達された動力は、左右の湿式ディスク型のサイドクラッチを介して後輪3を駆動する。
また、植付装置6への伝動は、トランスミッションケース11内に設けるトルクリミッタと植付クラッチを介して株間変速装置を駆動する。そして、株間変速装置からドライブシャフト49を介して植付装置6のドライブケースに設ける植付入力シャフトを駆動する。なお、整地ロータ8は走行系のブレーキと左右のサイドクラッチの間から分岐した動力をロータクラッチとロータドライブシャフト50を介してロータドライブケース内に設ける伝動軸によって駆動する。
次に、植付装置6の構造について簡単に説明すると、この植付装置6は8条植えとなして走行機体4の後部にローリング自在に連結する植付フレーム51を備える。また、植付フレーム51には前高後低状に傾斜して複数のマット苗を載置する苗載台52、苗載台52の下端から1株分ずつ苗を植付爪53により掻き取って田面に植付けるロータリ植付機構54、走行跡や旋回跡を整地しながら植付け箇所を均すフロート55等を備えて構成する。
そして、前述のドライブケースに入った動力によってスクリュシャフトを回転させて苗載台52を左右往復スライド移動させる。また、ドライブケースに入った動力によってロータリ植付機構54を構成するプランタケース56に動力を伝達し、ロータリケース57を回転駆動する。また、ロータリケース57に取付けたプランタアーム58に装着した植付爪53が苗載台52の下端から1株分ずつ苗を掻き取ると共に、掻き取った苗をフォーク59で押出して苗を田面に植付ける。
なお、次行程における作業走行の指標を田面に付ける左右のマーカー60は、植付フレーム51の前部寄りの左右に設ける。そして、このマーカー60はその基部を回動自在に支持する支持杆61の先端部に回転自在に取付け、マーカー駆動モータ62が支持杆61を作動させることによってマーカー60は、田面に接地してマーキングする作用位置と植付装置6の上方側に退避した非作用位置に切換えることができる。
また、機体フレーム9の前部中央には前述のセンターポール36を前後方向に回動自在に設ける。そのため、植付作業時にマーカー60がマーキングした跡とセンターポール36とが重なるように前輪2を操舵することによって既に植付けた隣接苗列と適正な間隔を保って苗を田面に植付けることができる。なお、機体フレーム9の左右に図示しないトレースマーカーを設け、このトレースマーカーが既に植付けた隣接苗列上に臨むように前輪2を操舵することによっても隣接苗列と適正な間隔を保って苗を田面に植付けることができる。
さらに、田植機1は、植付装置6の苗載台52に供給するマット苗を一時的に仮置きする予備苗載台63を走行機体4の前部寄り左右に立設する予備苗載台フレーム64に設ける。また、この予備苗載台63は図5及び図6に示すように、1枚のマット苗を収容する苗箱を2つずつ載置する片側8個、両側合わせて16個設けており、さらに、係る予備苗載台63に苗箱を出し入れし易くするために予備苗載台フレーム64を360度回転可能な回転式とする。
より詳細に説明すると、左右のフロントステップ37の外側方とリヤステップ38及び左右ワイドステップ43の前方となるスペースに、機体フレーム9から予備苗載台フレーム64を構成する左右の支持フレーム65を張り出して設ける。また、この支持フレーム65に固定軸66を立設し、左右の固定軸66の上端部は連結パイプ67で繋いで正面視門型となすベースフレームを構成する。さらに、左右の固定軸66には夫々回転軸68を外嵌して設ける。
そして、この回転軸68に2つのコ字状をなすパイプ69を対向させて固着し、丸鋼材で枠組みして形成する予備苗載台63を2つのパイプ69の上下と内外に振り分けて8個取付け、左右合わせて32個の苗箱を載置可能な予備苗載台に構成する。また、回転軸68の2つのパイプ69の下方に2つの操作レバー70を上下回動自在に取付け、この操作レバー70に設ける係止体70aを固定軸66側に設ける係合溝66aに係脱して回転軸68の回転を許容乃至阻止するように構成する。
なお、係合溝66aは回転中心に対して11時/12時/1時方向と5時/6時/7時方向の6箇所に設け、2つの操作レバー70の何れか一方を掴んで持ち上げると他方の操作レバー70も持ち上がり、その状態で予備苗載台63と共に回転軸68を回転させた後、操作レバー70の係止体70aを何れかの係合溝66aに係合させれば、予備苗載台63を前後方向と前後方向から左右に30度傾けた何れかの方向に固定することができ、これにより苗箱の出し入れが容易となる。
以上、田植機1の基本的な構造について説明したが、次にキットとして新たに提供するナビゲーションシステムについて説明する。なお、ここで提供するナビゲーションシステムは、苗の植付作業を行う際に、その作業目標経路に対する機体の位置情報を表示して無駄のない高精度な植付作業を支援する。また、必要に応じて一直線状となる作業目標経路に倣って走行機体4が走行するように自動操舵装置を制御し、これによって長時間に亘る植付作業を行う際の作業者の疲労軽減を図る。
そこで、ナビゲーションシステムは、機体の位置情報をGNSS(全地球測位システム)によって取得するが、ここでは測位精度を上げるためにRTK-GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System)を採用する。そして、RTK-GNSSを採用するうえで、その受信アンテナは衛星が出す電波を確実に捉えることができるように機体の高い位置に設ける方が有利であり、前述の予備苗台63を設ける予備苗台フレーム64にこのアンテナを含む受信装置をユニット71として設ける。
そのため、受信ユニット71は図5に示すようにパイプで形成するサポートフレーム72を備え、このサポートフレーム72は予備苗台フレーム64の連結パイプ67に取り替えて設け、その両端の取付部72aを左右の固定軸66の上端部に挟み込んでボルトで締着して取付ける。また、サポートフレーム72の中央部には取付座72bを設けて無線アンテナ73を上方に、また下方の取付座72cにRTK-GNSSのコントローラ74をカバー75と共に取付けて設ける。さらに、これ等と離して位置検出用と方位検出用の2つのGNSSアンテナ76、77をグランドプレーン78を介して取付ける。
なお、前述の無線アンテナ73は、田植機1が作業を行う水田から300メートル以内の周囲に山や木、高い建物などの障害物がない見通しの良い安定した場所に設置する可搬型のRTK-GNSS固定局と情報をやり取りするアンテナであって、コントローラ74にはその特定小電力送受信モジュールを備える。また、コントローラ74にはGNSSアンテナ76、77が捉えた電波を受信する2つのGNSSモジュールと、3軸のジャイロと3方向の加速度計からなる慣性計測モジュールと、アンテナ付き近距離送受信モジュールを備える他、CAN(Controller Area Network)-BUSモジュールを備える。
一方、ナビゲーションシステムの自動操舵装置は、前述の自動操舵ユニット20としてステアリングホイール19下方のステアリングコラム17の上部に取付ける。そして、この自動操舵ユニット20は図7に示すように、CAN-BUSモジュールを備える電子制御ユニットによって構成する操舵ECU、操作スイッチ群、LEDランプ群、ステッピングモータによって構成する電動アクチュエータ、伝動部等によって構成し、これらを底板79上に備えて樹脂製のカバー80で覆っている。
なお、自動操舵ユニット20の操舵ECUは前輪2の操舵角度を制御上必要とし、そのためピットマンアーム22の回動角度を検出する操舵角センサ81を操舵ECUに接続する(図4参照)。また、操舵ECUはそのCAN-BUSモジュールを介してRTK-GNSSコントローラ74と情報のやり取りを行う。さらに、自動操舵ユニット20は次に説明するように田植機1に比較的簡単に後付けすることができる。
先ず、自動操舵ユニット20を田植機1に取付ける際にステアリングシャフト16の上部に設けるステアリングホイール19を取外す。そして、図8及び図9に示すようにステアリングコラム17の上部にボス82を上方から外嵌して、ボルトで圧着してボス82をステアリングコラム17の上部に固定する。また、後述するホルダ取付フレーム83の基部をボス82にボルトで取付け、ステアリングシャフト16の上方から自動操舵ユニット20の底板79に設けるピン79aをホルダ取付フレーム83の基部83aの中央に折り曲げて設ける切欠溝83bにグロメット84とともに差し込むと同時に、自動操舵ユニット20の伝動部に設ける継手シャフト85の下部をステアリングシャフト16に嵌合させる。
さらに、ステアリングシャフト16に継手シャフト85をナットで締結し、両シャフトが一体回転するように連結する。また、継手シャフト85の上部に取外したステアリングホイール19のハブ19aを嵌合してナット86で締結して取付ける。なお、このように自動操舵ユニット20をステアリングコラム17の上部にボス82を介して回り止めして取付けると、電動アクチュエータ87の駆動回転によって伝動部の減速歯車機構88を介して継手シャフト85に固着する従動歯車89が回転し、また、従動歯車89の回転によってステアリングシャフト16は回転する。
そして、この際に発生する電動アクチュエータ87側からの駆動反力は、ホルダ取付フレーム83の切欠溝83bに自動操舵ユニット20の底板79に設けるピン79aが差し込まれていることによって最終的にステアリングコラム17が受けることになり、自動操舵ユニット20自体が不測に回転することはない。また、最後に自動操舵ユニット20にCAN-BUSと操舵角センサ81等の配線を行って自動操舵ユニット20の取付けは完了する。
そして、このように自動操舵ユニット20を田植機1に取付けると、手動操作によってステアリングホイール19を回した際には、前述の継手シャフト85を介してステアリングシャフト16は回転し、また、ステアリングシャフト16はトルクジェネレータ15を介して左右の前輪2を操舵する。一方、自動操舵ユニット20の電動アクチュエータ87が操舵ECUからの指令に基づいて正逆回転すると、電動アクチュエータ87は伝動部に設ける減速歯車機構88を介して継手シャフト85を回転させ、以下ステアリングホイール19を手動操作によって回した際と同様に左右の前輪2を操舵することができる。
次に、ナビゲーションソフトウエアを予めインストールして、このナビゲーションソフトウエアによって田植機1の作業目標経路に対する機体の位置情報等を表示するタブレット端末90について説明すると、先ずこのタブレット端末90は、その液晶ディスプレイを略全面に備えてタッチパネル式の入力インターフェースをもち、また、近距離無線通信機能を標準として備える。なお、タブレット端末90に種々のアプリケーションを入れておけば、持ち運んで種々の用途に用いることができる。
そして、係るタブレット端末90にナビゲーションソフトウエアを入れて接続設定等を行うと、ナビゲーションソフトウエアは、その無線通信機能によってRTK-GNSSのコントローラ74と情報をやり取りし、また、コントローラ74のCAN-BUSを経由して自動操舵ユニット20の操舵ECUと情報のやり取りを行う。さらに、ナビゲーションソフトウエアはこれら情報に基づいて田植機1の機体の位置情報と方位情報等を取得する。また、田植機1を手動操舵してティーチング走行を行いそれに伴って水田における基準線を得ると、その基準線に平行する作業目標経路を作成する。
従って、実際に苗の植付作業を行う場合にナビゲーションソフトウエアを起動しておけば、田植機1の作業目標経路に対する機体の位置情報等を液晶ディスプレイに表示し、一方、作業者はこの表示画面に基づいて例えば、作業目標経路の開始位置に田植機1を手動操舵して正確に導くことができる。また、その後、作業者が自動操舵制御を望めば自動直進の開始を指示することによってナビゲーションソフトウエアは走行機体4が作業目標経路に倣うように自動操舵ユニット20に指令し、それに基づき操舵ECUは電動アクチュエータ87を作動させて自動直進の操舵を行う。
そして、このようにタブレット端末90を用いてナビゲーションを行わせる場合、タブレット端末90の表示画面は運転席41に座った作業者の前方視界内に入れて見易く設ける必要がある。しかし、タブレット端末90は持ち運びできるとは言えそれなりの重量を備えるから、植付作業を行う際の走行振動等によって画面が振れると見づらくなる。そのため、タブレット端末90は機体フレーム9等の強度を十分備えたメンバーに取付けて振れを無くす対策が必要となる。
そこで、例えば、機体フレーム9から立設する予備苗載台フレーム64を利用してタブレット端末90を設けることが考えられる。しかし、予備苗載台フレーム64は回転式として苗箱を出し入れし易くするから、予備苗載台フレーム64の特に回転軸68やパイプ69等を利用してタブレット端末90を支持しようとすると、予備苗載台63から苗箱を出し入れするために予備苗載台フレーム64を回転させる度にタブレット端末90が不測に回転するという不具合が生ずるから、タブレット端末90を回転させずにこれ等に取付けることが簡単に出来ない。
しかも、係る予備苗載台装置63、64は、左右のフロントステップ37やリヤステップ38上を行き来して、予備苗載台63に苗箱を載せたり、逆に予備苗載台63から苗箱を取り出してマット苗をスクレーパに載せて植付装置6の苗載台52に供給するものであるから、このステップ上の通路にタブレット端末90を設けると通行の邪魔となって、タブレット端末90を通行の度に通路から退避させるといった対策が必要となり好ましくない。
また、タブレット端末90をモニターパネル33の上方等に臨むように設けて前述の問題を解決する場合に、例えばモニターパネル33を取付けるパネルカバー30にタブレット端末90をタブレットホルダ91を介して取付けようとすると、モニターパネル33等を取付けて支持するために必要な強度だけを備える樹脂製のパネルカバー30では強度不足となって、タブレット端末90を堅固に取付けることができない。
そこで、機体フレーム9に取付けたステーをパネルカバー30等を通して、このステーにタブレットホルダ91を介してタブレット端末90を取付けることが考えられるが、機体フレーム9に取付けたステーをパネルカバー30の下方に設けるコラムブラケット18やラジエータ14、或いはトランスミッションケース11やHST48等を避けながら通すことは困難性を伴うと共に、パネルカバー30等を新たに製作することになってコストアップとなる。
そのため、本実施形態においては、前述のようにトランスミッションケース11、ひいては機体フレーム9に堅固に取付けているステアリングコラム17を利用して、このステアリングコラム17にホルダ取付フレーム83を取付ける。そして、このホルダ取付フレーム83にタブレットホルダ91を取付け、タブレット端末90をこのタブレットホルダ91に載置して保持し、ステアリングホイール19の前方に設けるモニターパネル33の上方にタブレット端末90を設ける。従って、このようにホルダ取付フレーム83によってタブレット端末90を支持して設けるとパネルカバー30等の改造を一切行わずに、タブレット端末90を運転席41の前方中央寄りに着脱自在に設けることができる。
次に、係るホルダ取付フレーム83とタブレット端末90を載せ置くタブレットホルダ91の取付構造についてより詳細に説明すると図8乃至図12に示すように、先ず自動操舵ユニット20は前述のように自らの回転を不能に取付けるために、ステアリングコラム17の上部にボス82を取付ける。そこで、ホルダ取付フレーム83の基部83aをボス82にボルトで取付ける。なお、自動操舵ユニット20を回り止めする部材をボス82に別に取付けると部材費と工数が掛かるので、ここではホルダ取付フレーム83の基部83aに自動操舵ユニット20を回り止めする切欠溝83bを一体に形成してコストダウンを図る。
そして、ホルダ取付フレーム83はその基部となる後プレート83aの前面にコ字状に折曲げて形成するプレート83cを溶接し、また、その先端寄り上部に左右方向となる取付座83dを溶接して平面視で略矩形状に枠組み形成する。さらに、プレート83cの前部寄りとなる左右に補強プレート92の上端部をボルトで取付け、この補強プレート92の下端部はパネルカバー30とボンネット35の間に生ずる隙間を通してステアリングコラム17の中途部とラジエータブラケット14aの上部に亘って設ける取付ブラケット29に取付ける。また、取付座83dにはタブレットホルダ91を上部に取付けるステー93を取付ける。
そして、このステー93はホルダ取付フレーム83のプレート83cと取付座83dにボルトで取付ける基板93aと、この基板93aから上下方向に突出する膨出部に案内されて上下方向にその取付位置を変更可能な断面コ字状の支持体93bで構成する。また、この支持体93bに設ける上下方向となる2つの長穴93cに夫々ノブ付きボルト94を通して基板93aに螺着することによって支持体93bを基板93aに締着して、上下方向の任意の位置に支持体93bを固定することができる。なお、係るステー93の基板93aはホルダ取付フレーム83のプレート83cの左右側面の2箇所a、bと前面の4箇所c、d、e、fの何れかの位置を選んでボルトによって取付けることができる。
さらに、支持体93bの上部に固着する取付座93dにタブレットホルダ91の基部91aをボルトで取付ける。そして、このタブレットホルダ91は支持体93bの取付座93dに取付ける基部91aから2つのボールジョイント91b、91cを介して載置台を取付けて構成し、この載置台はその固定枠部91dに対して可動枠部91eをスライド可能に取付け、また、ばねによって可動枠部91eが固定枠部91d側に近づくように付勢する。
そのため、可動枠部91eをばねの付勢力に抗して固定枠部91dから離れるように押し広げ、係る固定枠部91dと可動枠部91eによってタブレット端末90を左右から挟持させると、タブレット端末90をその載置台に着脱自在に取付けることができる。また、ボールジョイント91b、91cの保持力をノブボルト91fによって緩めてタブレット端末90と共に載置台を前後左右に傾けると2つのボールジョイント91b、91cの可動範囲において、その傾きを前後・左右調節することができ、傾きを調整した後にノブボルト91fを締めておくとタブレット端末90の傾きをそのまま保持することができる。
そして、以上のようにホルダ取付フレーム83にタブレットホルダ91を介して取付けるタブレット端末90は、ステアリングホイール19の前方でモニターパネル33の上方に設けることになる。なお、モニターパネル33はステアリングホイール19より低く設けていて、例えばノブ付きボルト94によってステー93を下降させると、モニターパネル33の上方に設けるタブレット端末90にしても、その上端がステアリングホイール19より余り高くならないから、作業者の前方視界はあまり阻害されることは無く、作業者は前方の畦等の障害物を避けながら安全に田植機1を走行させることができる。
また、モニターパネル33には図13に示すように苗補給、施肥条止め、肥料、燃料等のモニタランプを設け、これら種々のランプの点灯によって植付作業時に必要な警報を作業者に向けて発する。そして、タブレット端末90はその表示画面に、例えば図14に示すように自車位置を示すマーク95aを中央に置いて作業目標経路95bを直線で表示し、また、インジケータ95cによって経路誤差等を表示する。さらに、表示画面には経路生成のためのA点生成ボタン95dやB点生成ボタン95e、開始停止ボタン95f等も合わせて表示し、これらのボタン操作によって作業走行の基準線を作成したり自動操舵の開始を指令することができる。
また一方、自動操舵ユニット20には図15に示すように、タブレット端末90のA点生成ボタン95d、B点生成ボタン95e、或いは開始停止ボタン95f等に相当するA点スイッチ、B点スイッチ、開始停止スイッチ等を入切りするボタン操作部96a~96fや、そのスイッチの入切り状態をLEDランプによって示す表示部96g~96kをカバー80に設け、これらのボタン操作部の押し操作によって、同様に作業走行の基準線を作成したり自動操舵の開始を指令することができる。
従って、作業者はタブレット端末90が表示する作業目標経路に対する機体の位置情報を、ステアリングホイール19越しに、モニターパネル33の苗補給の警報等と共に運転席41から目視することができ、例えば、タブレット端末90の表示画面を見ながらステアリングホイール19を手動操作して、作業目標経路に倣う植付開始位置に田植機1を適確に移動させることができ、それにより無駄のない高精度な植付作業を迅速に開始することができる。
また、植付開始位置に至って、ステアリングホイール19下方に設ける自動操舵ユニット20の開始停止スイッチ(96a)を入り操作するか、或いはタブレット端末90の開始停止ボタン95fを押せば、作業目標経路に倣って田植機1を自動操舵させることができ、それにより作業者は操舵操作から解放されて長時間にわたる作業走行にあっても疲労を軽減でき、また、不慣れな作業者でも熟練者並みの作業走行を行うことができる。
なお、この場合にタブレット端末90は、運転席41の前方中央寄りに設けるモニターパネル33の上方に設けることとなって、エンジンを覆うボンネット35やモニターパネル33を取付けるパネルカバー30、32と予備苗載台63の左右方向の間には設けないから、運転席41側に至る通路を構成するステップ37、38上の作業者の移動(通行)を妨げることはなく、しかも、タブレットホルダ91からタブレット端末90を簡単に取り出して持ち運ぶことができ、タブレット端末90を他の用途で使用したり家庭内で簡単に充電することができる。
さらに、タブレット端末90を載置して保持するタブレットホルダ91のホルダ取付フレーム83は、機体フレーム9に取付けるトランスミッションケース11に設けるステアリングシャフト16を内包する強度を備えたステアリングコラム17に取付けるから、タブレット端末90を堅固に支持して走行振動等によってタブレット端末90が無暗に振れる虞を無くし、表示画面を見易くすることができる。また、ホルダ取付フレーム83は例えば、パネルカバー30に穴を設けてこの穴に通して機体フレーム9に取付けるといった改造を一切行わずにステアリングコラム17に簡単に取付けることができ、コストアップを招くこともない。
また、ステアリングコラム17の上部にボス82を取付け、このボス82に自動操舵ユニット20を回転不能に取付けると共に、同じくこのボス82にホルダ取付フレーム83の基部83aを取付けるから、ステアリングコラム17の上部にボス82を取付けるだけで自動操舵ユニット20を自らの回転を不能に取付けることができ、また、このボス82を兼用してホルダ取付フレーム83の基部83aをステアリングコラム17の上部に取付けることができるから、部材費や取付工数を削減してコストダウンを図ることができる。なお、ステアリングコラム17側は何ら改造する必要もないから、余分な費用の発生もない。
さらに、運転席41に座った作業者がステアリングホイール19越しにモニターパネル33を見る際に、モニターパネル33の上方に設けるホルダ取付フレーム83がその視界を遮る虞がある。しかし、ホルダ取付フレーム83は下方に設けるモニターパネル33の四方を取り囲むように枠組み形成して、モニターパネル33の視界領域から外れるように設けるから、作業者のモニターパネル33の視認性を妨げない。また、枠組み形成するホルダ取付フレーム83は自らの剛性を高めることができて、タブレットホルダ91とともにタブレット端末90をしっかり支持することができる。また、この場合、補強プレート92はホルダ取付フレーム83の前部寄りを支持するから、タブレット端末90をより一層に堅固に支持して走行振動等によってタブレット端末90が無暗に振れる虞を無くして表示画面を見易くすることができる。
また、タブレットホルダ91を取付けるステー93はホルダ取付フレーム83のプレート83cと取付座83dに対する取付位置を変更することにより、或いはステー93の高さを上下方向に変更することによって、タブレットホルダ91の位置をモニターパネル33の上方において右後a、右前c、右中前d、左中前e、左前f、左後bとなる前後方向及び左右方向の位置、又は上下方向の任意の高さに変更し、作業者の体格や日照等に応じてタブレット端末90の表示画面を見易い最適な位置に調節することができる。
次に、前述のホルダ取付フレーム83とステー93を剛性を備えながら軽量化する第2実施形態について図16乃至図18に基づいて説明すると、このホルダ取付フレーム97はその基部となる後プレート97aの前面に短尺な左右のプレート97bを介してコ字状に折曲げたパイプ97cを溶接して、平面視で略矩形状に枠組み形成する。また、左右のプレート97bの前部寄りに補強プレート92を同様に取付ける。さらに、パイプ97cの左右方向の中央にタブレットホルダ91を上部に取付けるステー98を設ける。
そして、このステー98はパイプ97cの中央に取付ける基部パイプ98aと、この基部パイプ98aに嵌めて上方に延びるロッド98bと、ロッド98bの折り曲げた上端に溶接する取付板98cと、ロッド98bを基部パイプ98aに止着するボルト99で構成する。また、取付板98cにはその長手方向の4箇所にタブレットホルダ91の基部91aを取付ける5つの穴98dを設け、この4箇所に対応する隣り合う2つの穴98dにボルトを通してタブレットホルダ91の基部91aをナットで取付ける。
従って、この場合、ボルト99を緩めてロッド98bを回動させたり上下させることによって、タブレットホルダ91の向きを左右に変更したり、その高さを上下に変更して止着することができ、また、取付板98cに対するタブレットホルダ91の取付位置を変更することによって、タブレットホルダ91の位置を前後方向、或いは左右方向に変更して取付けることができる。そのため、タブレット端末90の表示画面を作業者の体格や日照等に応じて見易い最適な位置に調節することができ、しかも、ホルダ取付フレーム97及びステー98はパイプやロッドを使用することによって剛性を備えながら嵩張ることなく軽量化することができる。
以上、タブレット端末90を取付けて支持する第1と第2の実施形態におけるホルダ取付フレーム83、97とステー93、98の取付構造を主体に、その作用効果について纏めて説明したが、ナビゲーションソフトウエアはタブレット端末90に限らず例えば、コントローラ74にインストールして、タブレット端末90は専らその結果を表示する表示装置として用いることもでき、また、予備苗載台フレームを非回転式に構成してもよく、本発明の移植機は必ずしも前述の実施形態に限定するものではない。