本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図4に示すように稲苗を水田に植付ける乗用型の田植機(移植機)1は、左右の前輪2と後輪3を備える走行機体(機体)4の後部に昇降リンク機構5を介して植付装置6をローリング自在に連結する。そして、この植付装置6は、走行機体4の後部と昇降リンク機構5の後部に亘って取付ける油圧シリンダ7によって下降させた作業姿勢と上昇させた非作業姿勢に亘って昇降自在に設ける。
なお、後輪3と植付装置6との間には走行機体4の旋回によって荒れた枕地を均す整地ロータ8を設け、この整地ロータ8は植付装置6と共に昇降するように設ける。一方、前述の走行機体4は、角鋼管で形成する左右のメインフレーム9aに複数のクロスメンバー9bを固着して構成する機体フレーム9に、左右のフロントアクスルケース10をその側面にそれぞれ一体に連結するトランスミッションケース11と、左右のリヤアクスルケース12等を取付けて一体的に構成する。
また、機体フレーム9にはその前部寄りにエンジンフレーム13を設け、このエンジンフレーム13にディーゼルエンジン14を防振支持して搭載する。なお、エンジン14を冷却するラジエータは、エンジン14後方の機体フレーム9に取付けるラジエータブラケットに取付ける。また、このラジエータ後方の機体フレーム9に取付けるトランスミッションケース11は、その上面にパワーステアリング装置を構成するトルクジェネレータ15を取付ける。
さらに、トルクジェネレータ15はその入力軸にステアリングシャフト16の下部を連結するが、このステアリングシャフト16は自らを内包するステアリングコラム17をコラムブラケット18を介してトルクジェネレータ15の上面に取付ける。なお、コラムブラケット18はトランスミッションケース11にもプレートを介して取付けているので、ステアリングコラム17は最終的に機体フレーム9に堅固に取付けることになる。
そして、ステアリングシャフト16の上部には前輪2を操舵するステアリングホイール19と後述する自動操舵ユニット20を設ける。また、トルクジェネレータ15の出力軸はトランスミッションケース11内に設ける減速歯車装置に連結し、また、この減速歯車装置のセクタシャフト21の下端はトランスミッションケース11の下面から下方に突出し、係るセクタシャフト21の下端部にピットマンアーム22を取付ける。
さらに、ピットマンアーム22に取付ける左右のドラッグリンク23は、フロントアクスルケース10の両端部に設けるキングピンケース24に連結して左右の前輪2を操舵する。一方、前述のコラムブラケット18にニュートラルシャフト25を軸支し、このニュートラルシャフト25の左右に走行変速レバー26と走行副変速レバー27及びエンジンコントロールレバー28を回動自在に取付ける。
また、ステアリングコラム17の中途部とラジエータの上部にその前後部を取付ける取付ブラケット29を設け、この取付ブラケット29の中央左右に形成するガイド部の各溝29aに走行変速レバー26と走行副変速レバー27及びエンジンコントロールレバー28を通してガイドさせる。また、取付ブラケット29にパネルカバー30とコラムカバー31を取付け、その下方側にはスタータスイッチ等を取付けるリヤパネルカバー32を設けてステアリングコラム17回りを覆う。
なお、前述のパネルカバー30の中央にはモニターパネル33を取付け、また、後部寄りの左右には油圧感度調整ボリュームや苗植付に関わる各種スイッチを纏めたアッシを取付ける。さらに、パネルカバー30の前部寄りにはラジエータの冷却水取入口を覆うクーラントカバー34をその後部寄りを中心に前部側が開閉するように取付ける。
そして、パネルカバー30の前方側乃至下方側、またリヤパネルカバー32の前方側に設けるボンネット35はエンジン14やラジエータ等を覆い、その後上部をヒンジピンによって取付ブラケット29に取付け、このヒンジピンを回動支点として前部側を上方に回動させたメンテナンス姿勢と下方に回動させた閉じ姿勢に回動自在に設ける。なお、ボンネット35の開いたメンテナンス姿勢は後述するセンターポール36を回動させてボンネット35の前下部を支えて保持することができ、閉じ姿勢はボンネット35の前下部に取付けるプレートを機体フレーム9の前部に取付けるマグネットに吸着させて保持する。
さらに、前述の機体フレーム9には、左右のフロントステップ37とリヤステップ38を設ける。この内、略々矩形状になす左右のフロントステップ37は、ボンネット35の左右外側方となる機体フレーム9に取付け、また、リヤステップ38はリヤパネルカバー32の左右外側方となる左右の幅狭な前部38aと、この前部38aに引き続いてリヤパネルカバー32の後方側となる幅広の後部38bと、この後部38bから後上方に立ち上がる傾斜部38cを一体的に形成して機体フレーム9に取付ける。
なお、リヤステップ38はその後部38bと傾斜部38cにかけて、その中央にシートフレーム39を通す開口38dを設け、この開口38dはシートフレーム39に取付けるシートアンダーカバー40によって塞ぐ。そして、シートフレーム39の上部には運転席41を取付け、シートフレーム39内には植付装置6を昇降する油圧機器を設ける他、その後部には昇降リンク機構5や油圧シリンダ7の前端部を取付ける。
また、リヤステップ38の左右の前部38aの中央寄りには前輪2の操舵状態を視認する左右の開口38eを設け、右前部38aのリヤパネルカバー32寄りにはブレーキペダル42を通す開口38fを設ける。さらに、リヤステップ38の外周にはリヤステップ38を拡張するワイドステップを設け、このワイドステップは、リヤステップ38の後部38bの左右外側方に設ける左右ステップ43と、リヤステップ38の傾斜部38cの上端から後方に設ける後ステップ44によって構成する。なお、45と46は左右のフロントステップ37とリヤステップ38に設けるマットである。
ここで、田植機1の動力伝達系について簡単に説明すると、機体フレーム9の前部寄りに設けるエンジン14は伝動ベルト47を介してトランスミッションケース11に取付けるHST(静油圧式無段変速装置:主変速装置)48を駆動する。また、HST48からトランスミッションケース11内に伝達された動力は、トランスミッションケース11内に設ける副変速装置によって変速し、左右の前輪2は更に差動歯車装置とフロントアクスルケース10内に設ける伝動軸を介して駆動する。さらに、前記副変速装置からブレーキを介してリヤアクスルケース12内に伝達された動力は、左右の湿式ディスク型のサイドクラッチを介して後輪3を駆動する。
また、植付装置6への伝動は、トランスミッションケース11内に設けるトルクリミッタと植付クラッチを介して株間変速装置を駆動する。そして、株間変速装置からドライブシャフト49を介して植付装置6のドライブケースに設ける植付入力シャフトを駆動する。なお、整地ロータ8は走行系のブレーキと左右のサイドクラッチの間から分岐した動力をロータクラッチとロータドライブシャフト50を介してロータドライブケース内に設ける伝動軸によって駆動する。
次に、植付装置6の構造について簡単に説明すると、この植付装置6は8条植えとなして走行機体4の後部にローリング自在に連結する植付フレーム51を備える。また、植付フレーム51には前高後低状に傾斜して複数のマット苗を載置する苗載台52、苗載台52の下端から1株分ずつ苗を植付爪53により掻き取って田面に植付けるロータリ植付機構54、走行跡や旋回跡を整地しながら植付け箇所を均すフロート55等を備えて構成する。
そして、前述のドライブケースに入った動力によってスクリュシャフトを回転させて苗載台52を左右往復スライド移動させる。また、ドライブケースに入った動力によってロータリ植付機構54を構成するプランタケース56に動力を伝達し、ロータリケース57を回転駆動する。また、ロータリケース57に取付けたプランタアーム58に装着した植付爪53が苗載台52の下端から1株分ずつ苗を掻き取ると共に、掻き取った苗をフォーク59で押出して苗を田面に植付ける。
なお、次行程における作業走行の指標を田面に付ける左右のマーカー60は、植付フレーム51の前部寄りの左右に設ける。そして、このマーカー60はその基部を回動自在に支持する支持杆61の先端部に回転自在に取付け、マーカー駆動モータ62が支持杆61を作動させることによってマーカー60は、田面に接地してマーキングする作用位置と植付装置6の上方側に退避した非作用位置に切換えることができる。
また、機体フレーム9の前部中央には前述のセンターポール36を前後方向に回動自在に設ける。そのため、植付作業時にマーカー60がマーキングした跡とセンターポール36とが重なるように前輪2を操舵することによって既に植付けた隣接苗列と適正な間隔を保って苗を田面に植付けることができる。なお、機体フレーム9の左右に図示しないトレースマーカーを設け、このトレースマーカーが既に植付けた隣接苗列上に臨むように前輪2を操舵することによっても隣接苗列と適正な間隔を保って苗を田面に植付けることができる。
さらに、田植機1は、植付装置6の苗載台52に供給するマット苗を一時的に仮置きする予備苗載台63を走行機体4の前部寄り左右に立設する予備苗載台フレーム64に設ける。また、この予備苗載台63は図5及び図6に示すように1枚のマット苗を収容する苗箱を2つずつ載置する片側8個、両側合わせて16個設けており、さらに、係る予備苗載台63に苗箱を出し入れし易くするために予備苗載台フレーム64を360度回転可能な回転式とする。
より詳細に説明すると、左右のフロントステップ37の外側方とリヤステップ38及び左右ワイドステップ43の前方となるスペースに、機体フレーム9から予備苗載台フレーム64を構成する左右の支持フレーム65を張り出して設ける。また、この支持フレーム65に固定軸66を立設し、左右の固定軸66の上端部は連結パイプ67で繋いで正面視門型となすベースフレームを構成する。さらに、左右の固定軸66には夫々回転軸68を外嵌して設ける。
そして、この回転軸68に2つのコ字状をなすパイプ69を対向させて固着し、丸鋼材で枠組みして形成する予備苗載台63を2つのパイプ69の上下と内外に振り分けて8個取付け、左右合わせて32個の苗箱を載置可能な予備苗載台に構成する。また、回転軸68の2つのパイプ69の下方に2つの操作レバー70を上下回動自在に取付け、この操作レバー70に設ける係止体70aを固定軸66側に設ける係合溝66aに係脱して回転軸68の回転を許容乃至阻止するように構成する。
なお、係合溝66aは回転中心に対して11時/12時/1時方向と5時/6時/7時方向の6箇所に設け、2つの操作レバー70の何れか一方を掴んで持ち上げると他方の操作レバー70も持ち上がり、その状態で予備苗載台63と共に回転軸68を回転させた後、操作レバー70の係止体70aを何れかの係合溝66aに係合させれば、予備苗載台63を前後方向と前後方向から左右に30度傾けた何れかの方向に固定することができ、これにより苗箱の出し入れが容易となる。
以上、田植機1の基本的な構造について説明したが、次にキットとして新たに提供するナビゲーションシステムについて説明する。なお、ここで提供するナビゲーションシステムは、苗の植付作業を行う際に、その作業目標経路に対する機体の位置情報を表示して無駄のない高精度な植付作業を支援する。また、必要に応じて一直線状となる作業目標経路に倣って走行機体4が走行するように自動操舵装置を制御し、これによって長時間に亘る植付作業を行う際の作業者の疲労軽減を図る。
そこで、ナビゲーションシステムは、機体の位置情報をGNSS(全地球測位システム)によって取得するが、ここでは測位精度を上げるためにRTK-GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System)を採用する。そして、RTK-GNSSを採用するうえで、その受信アンテナは衛星が出す電波を確実に捉えることができるように機体の高い位置に設ける方が有利であり、前述の予備苗台63を設ける予備苗台フレーム64にこのアンテナを含む受信装置をユニット71として設ける。
そのため、受信ユニット71は図5に示すようにパイプで形成するサポートフレーム72を備え、このサポートフレーム72は予備苗台フレーム64の連結パイプ67に取り替えて設け、その両端の取付部72aを左右の固定軸66の上端部に挟み込んでボルトで締着して取付ける。また、サポートフレーム72の中央部には取付座72bを設けて無線アンテナ73を上方に、また下方の取付座72cにRTK-GNSSのコントローラ74をカバー75と共に取付けて設ける。さらに、これ等と離して位置検出用と方位検出用の2つのGNSSアンテナ76、77をグランドプレーン78を介して取付ける。
なお、前述の無線アンテナ73は、田植機1が作業を行う水田から300メートル以内の周囲に山や木、高い建物などの障害物がない見通しの良い安定した場所に設置する可搬型のRTK-GNSS固定局と情報をやり取りするアンテナであって、コントローラ74にはその特定小電力送受信モジュールを備える。また、コントローラ74にはGNSSアンテナ76、77が捉えた電波を受信する2つのGNSSモジュールと、3軸のジャイロと3方向の加速度計からなる慣性計測モジュールと、アンテナ付き近距離送受信モジュールを備える他、CAN(Controller Area Network)-BUSモジュールを備える。
一方、ナビゲーションシステムの自動操舵装置は、前述の自動操舵ユニット20としてステアリングホイール19下方のステアリングコラム17の上部に取付ける。そして、この自動操舵ユニット20は図7及び図11に示すように、CAN-BUSモジュールを備える電子制御ユニットによって構成する操舵ECU、操作スイッチ群、LEDランプ群、ステッピングモータによって構成する操舵アクチュエータ、伝動部等によって構成し、全体を樹脂製のカバー79や底板80で覆って構成する。
なお、自動操舵ユニット20の操舵ECUは前輪2の操舵角度を制御上必要とし、そのためピットマンアーム22の回動角度を検出する操舵角センサ81を操舵ECUに接続する(図4参照)。また、操舵ECUはそのCAN-BUSモジュールを介してRTK-GNSSコントローラ74と情報のやり取りを行う。さらに、自動操舵ユニット20は次に説明するように田植機1に比較的簡単に後付けすることができる。
先ず、自動操舵ユニット20を田植機1に取付ける際にステアリングシャフト16の上部に設けるステアリングホイール19を取外す。そして、ステアリングコラム17の上部にボス82を止着し、次にステアリングシャフト16の上部に自動操舵ユニット20の伝動部に設ける継手シャフトの下部を嵌合させた状態で自動操舵ユニット20の底板80に設けるピン80aをボス82に設けたブラケット83の切欠溝に嵌めて自動操舵ユニット20の回り止めを行う。さらに、伝動部に設ける継手シャフトの上部に取外したステアリングホイール19を取付けて、CAN-BUSと操舵角センサ81の配線等を行って完了となる。
そして、このように自動操舵ユニット20を田植機1に取付けると、手動操作によってステアリングホイール19を回した際には、前述の継手シャフトを介してステアリングシャフト16は回転し、また、ステアリングシャフト16はトルクジェネレータ15を介して左右の前輪2を操舵する。一方、自動操舵ユニット20の操舵アクチュエータが操舵ECUからの指令に基づいて正逆回転すると、操舵アクチュエータは伝動部に設ける歯車減速装置を介して継手シャフトを回転させ、以下ステアリングホイール19を手動操作によって回した際と同様に左右の前輪2を操舵することができる。
次に、ナビゲーションソフトウエアを予めインストールして、このナビゲーションソフトウエアによって田植機1の作業目標経路に対する機体の位置情報等を表示するタブレット端末84について説明すると、先ずこのタブレット端末84は、その液晶ディスプレイを全面に備えてタッチパネル式の入力インターフェースをもち、また、近距離無線通信機能を標準として備える。なお、タブレット端末84に種々のアプリケーションを入れておけば、持ち運んで種々の用途に用いることができる。
そして、係るタブレット端末84にナビゲーションソフトウエアを入れて接続設定等を行うと、ナビゲーションソフトウエアは、その無線通信機能によってRTK-GNSSのコントローラ74と情報をやり取りし、また、コントローラ74のCAN-BUSを経由して自動操舵ユニット20の操舵ECUと情報のやり取りを行う。さらに、ナビゲーションソフトウエアはこれら情報に基づいて田植機1の機体の位置情報と方位情報等を取得する。また、田植機1を手動操舵してティーチング走行を行いそれに伴って水田における基準線を得ると、その基準線に平行する作業目標経路を作成する。
従って、実際に苗の植付作業を行う場合にナビゲーションソフトウエアを起動しておけば、田植機1の作業目標経路に対する機体の位置情報等を液晶ディスプレイに表示し、一方、作業者はこの表示画面に基づいて例えば、作業目標経路の開始位置に田植機1を手動操舵して正確に導くことができる。また、その後、作業者が自動操舵制御を望めば自動直進の開始を指示することによってナビゲーションソフトウエアは走行機体4が作業目標経路に倣うように自動操舵ユニット20に指令し、それに基づき操舵ECUは操舵アクチュエータを作動させて自動直進の操舵制御を行う。
そして、このようにタブレット端末84を用いてナビゲーションを行わせる場合、タブレット端末84の表示画面は運転席41に座った作業者の前方視界内に入れて見易く設ける必要がある。しかし、タブレット端末84は持ち運びできるとは言えそれなりの重量を備えるから、植付作業を行う際の走行振動等によって画面が振れると見づらくなる。そのため、タブレット端末84は機体フレーム9等の強度を十分備えたメンバーに剛性備えたステー85を介して取付けて振れを無くす対策が必要となる。
そこで、例えば、機体フレーム9から立設する予備苗載台フレーム64を利用してタブレット端末84を設けることが考えられる。しかし、予備苗載台フレーム64は回転式として苗箱を出し入れし易くするから、予備苗載台フレーム64の特に回転軸68やパイプ69等を利用してタブレット端末84を支持しようとすると、予備苗載台63から苗箱を出し入れするために予備苗載台フレーム64を回転させる度にタブレット端末84が不測に回転するという不具合が生ずるから、タブレット端末84を回転させずにこれ等に取付けることが簡単に出来ない。
しかも、係る予備苗載台装置63、64は、左右のフロントステップ37やリヤステップ38上を行き来して、予備苗載台63に苗箱を載せたり、逆に予備苗載台63から苗箱を取り出してマット苗をスクレーパに載せて植付装置6の苗載台52に供給するものであるから、このステップ上の通路にタブレット端末84を設けると通行の邪魔となって、タブレット端末84を通行の度に通路から退避させるといった対策が必要となり好ましくない。
また、タブレット端末84をモニターパネル33の上方等に臨むように設けて前述の問題を解決する場合に、例えばモニターパネル33を取付けるパネルカバー30にタブレット端末84をホルダ86を介して取付けようとすると、モニターパネル33等を取付けて支持するために必要な強度だけを備える樹脂製のパネルカバー30では強度不足となって、タブレット端末84を堅固に取付けることができない。
そこで、機体フレーム9に取付けたステー85をパネルカバー30等を通して、このステー85にホルダ86を介してタブレット端末84を取付けることが考えられるが、機体フレーム9に取付けたステー85をパネルカバー30の下方に設けるトランスミッションケース11やHST48、或いはコラムブラケット18等を避けながら通すことは困難性を伴うと共に、パネルカバー30等を新たに製作することになってコストアップとなる。
そのため、本実施形態においては、フロントステップ37やリヤステップ38の下方に設ける機体フレーム9にステー85を取付け、また、このステー85をステップ38の上面からモニターパネル33を取付けるパネルカバー30、32の外側面に沿って立ち上げてモニターパネル33の上方に臨むように設ける。そして、このステー85にタブレット端末84をホルダ86を介して取付けて設け、これによりパネルカバー30等の改造を一切行わずに、タブレット端末84のステー85を田植機1に後付け可能になす。
次に、前述のステー85とタブレット端末84を支持するホルダ86の取付構造についてより詳細に説明すると図7乃至図12に示すように、先ずリヤステップ38の前部寄り下方に位置する右メインフレーム9aにブラケット87の取付部87aを外側方から差し込んでその角鋼管9aの機体内側からプレート88を当ててボルトで固定する(図9、図10参照)。これによって右メインフレーム9aにブラケット87は取付けられ、ブラケット87の外端部87bはリヤステップ38の右前部38aの中央寄りに設ける右開口38eの下方に臨むことになる。
そこで、ステー85の基部となる基板85aを上方から右開口38eを通してブラケット87の外端部87bにボルトで取付ける。そして、ステー85はブラケット87の外端部87bに取付ける基板85aの上面に平板85bを溶接して設けており、この平板85bはリヤステップ38の右前部38aの上方に位置し、リヤステップ38上の通路の一部を横断してパネルカバー30、32の外側面に至る。そのため、リヤステップ38の上面より高くステー85の一部を通すことになるが、係る箇所を板厚が少ない平板85bを用いて強度を確保しながら高さを抑えることによってリヤステップ38上を通行する際の躓きを極力抑えることができる。
また、ステー85はリヤステップ38の右前部38aに設けるブレーキペダル42の前方において、その平板85bに補強板85cと共に溶接して設けるパイプ85dを備え、このパイプ85dはパネルカバー30、32、或いはボンネット35の外側面に沿って立ち上げ、また、その上端寄りで折り曲げてパネルカバー30の上方に臨むように設ける。さらに、パイプ85dの先端部にコ字状の取付座85eを溶接して設ける(図11参照)。
そして、この取付座85eには、その折り曲げた左右端に支点穴89aと支点穴を中心とする円弧穴89bを穿設するホルダ取付プレート89を嵌めて、また、ボルトを支点穴89a間に通して他側に設けるナットに螺着し、ホルダ取付プレート89を取付座85eに固定する。また、ノブボルト90を円弧穴89b間に通して他側に脱落を防止して設けるナットに螺着し、ホルダ取付プレート89を取付座85eに対する取付角度を円弧穴の範囲内で調整して固定する。また、このホルダ取付プレート89の上面にホルダ86の基部86aをボルトとナットによって取付ける。
なお、図12に示すようにホルダ86はホルダ取付プレート89の上面に取付ける基部86aから2つのボールジョイント86b、86cを介して載置台を取付けて構成し、この載置台はその固定枠部86dに対して可動枠部86eをスライド可能に取付け、また、ばねによって可動枠部86eが固定枠部86d側に近づくように付勢する。
そのため、可動枠部86eをばねの付勢力に抗して固定枠部86dから離れるように押し広げ、係る固定枠部86dと可動枠部86eによってタブレット端末84を左右から挟持させると、タブレット端末84をその載置台に着脱自在に取付けることができる。また、ボールジョイント86b、86cの保持力をノブボルト86fによって緩めてタブレット端末84と共に載置台を上下左右に傾けると2つのボールジョイント86b、86cの可動範囲において、その傾きを左右・上下調節することができ、傾きを調整した後にノブボルト86fを締めておくとタブレット端末84の傾きをそのまま保持することができる。
そして、以上のようにステー85にホルダ86を介して取付けるタブレット端末84は、図7に示すようにステアリングホイール19の前方でモニターパネル33の上方に設けることになる。なお、モニターパネル33はステアリングホイール19より低く設けていて、その上方に設けるタブレット端末84にしてもその上端がステアリングホイール19より余り高くならないから、作業者の前方視界はあまり阻害されることは無く、作業者は前方の畦等の障害物を避けながら安全に田植機1を走行させることができる。
また、モニターパネル33には図13に示すように苗補給、施肥条止め、肥料、燃料等のモニタランプを設け、これら種々のランプの点灯によって植付作業時に必要な警報を作業者に向けて発する。そして、タブレット端末84はその表示画面に、例えば図14に示すように自車位置を示すマーク91aを中央に置いて作業目標経路91bを直線で表示し、また、インジケータ91cによって経路誤差等を表示する。さらに、表示画面には経路生成のためのA点生成ボタン91dやB点生成ボタン91e等も合わせて表示し、これらのボタン操作によって作業走行の基準線を作成することができる。
従って、タブレット端末84が表示する作業目標経路91bに対する機体の位置情報91a、91cを、ステアリングホイール19越しにモニターパネル33の苗補給の警報等と共に運転席41から目視することができ、例えば、タブレット端末84の表示画面を見ながらステアリングホイール19を手動操作して作業目標経路91bに倣う植付開始位置に田植機1を適確に移動させることができて、無駄のない高精度な植付作業を迅速に開始することができる。
また、タブレット端末84は、運転席41の前方中央寄りに設けるモニターパネル33の上方に設けることとなって、エンジン14を覆うボンネット35やモニターパネル33を取付けるパネルカバー30、32と予備苗載台63の左右方向の間には設けないから、運転席41側に至る通路を構成するステップ37、38上の作業者の移動(通行)を妨げることはなく、しかも、ホルダ86からタブレット端末84を簡単に取り出して持ち運ぶことができ、タブレット端末84を他の用途で使用したり家庭内で簡単に充電することができる。
さらに、タブレット端末84を取付けて支持するステー85はステップ37、38の下方に設ける強度を備えた機体フレーム(メインフレーム9a)に取付けるから、走行振動等によってタブレット端末84が無暗に振れる虞を無くして表示画面を見易くすることができる。また、ステー85はステップ38aの上面からモニターパネル33を取付けるパネルカバー30、32の外側面に沿って立ち上がってモニターパネル33の上方に臨むように設けるから、ステー85の一部(平板85b)がステップ38aの上面より多少高くはなるが作業者の移動に差し障りはない。
また、ステー85はパネルカバー30、32の外側面に沿って立ち上がり、ステップ38a上の運転席41側に至る通路に若干張り出すことになるがその張出量は僅かであり、しかも、ブレーキペダル42の前方に設けることとなって、作業者はブレーキペダル42と当たることを避けて移動するのが常であるから、同様にステー85とブレーキペダル42を同時に避けて移動することになる。従って、タブレット端末84を取付けて支持するステー85は、パネルカバー30に穴を設けて通すといった改造を一切行わずに安価に田植機1に後付けすることができる。
その上、機体フレーム9aに差し込んで装着するブラケット87を前輪2の操舵状態を視認するステップ38aの右開口38eの下方に設けて、ステー85の基部85aをこの右開口38eを通してブラケット87に取付けるから、ステー85の基部85aを取付けるブラケット87をステップ38aの右開口38eの下方において機体フレーム9aに差し込んでプレート88を当ててボルトで固定するだけで、機体フレーム9a側を何等改造することなくブラケット87を機体フレーム9aに取付けることができる。
そして、このブラケット87にステー85の基部85aを右開口38eを通して取付けるから、例えばステー85をステップ38aの最外側端を迂回して機体フレーム9aにブラケット87を介して取付ける場合より、ブラケット87の機体フレーム9aからの張出し長さを短くすることができると共に、ステー85がステップ38a上面を横切る距離を短くすることができ、ブラケット87やステー85の重量軽減を図りながら、タブレット端末84の重量(荷重)に対する支持剛性を高めることができる。
さらに、ステー85は、ブラケット87に取付ける基部となる基板85aとステップ38aの上面に沿う平板85bと補強板85cを備えてパネルカバー30、32の外側面に沿って立ち上がるパイプ85dを一体に固着して形成する。そのため、ステー85のステップ38aの上面に沿って設ける箇所は平板85bとしてその高さを低くすることができ、ステップ38a上面からのステー高さを極力抑えて作業者の移動を容易にすることができる。
また、ステー85のパネルカバー30、32の外側面に沿って立ち上がる箇所は、補強板85cによって補強されるパイプ85dとなして剛性を備えながら軽量化を図ることができ、全体にステー85を安価に製作することができる。なお、ステー85は右メインフレーム9aにブラケット87を介して立設するが、左メインフレーム9aからステー85を同様に立設すると、その側には走行変速レバー26を設けているので、この走行変速レバー26の操作をステー85が邪魔する虞があるので、係る取付構造は採用し難い。
また、前述のようにパネルカバー30の前部寄りにはラジエータの冷却水取入口を覆うクーラントカバー34を開閉自在に設け、さらに、パネルカバー30の前部から前方乃至下方にはエンジン14を覆うボンネット35を開閉自在に設ける。そのため、クーラントカバー34やボンネット35を開いて、ラジエータの冷却水を補充・交換したりエンジン14のオイル交換等のメンテナンスを行う場合、これ等がタブレット端末84のホルダ86に当たって十分に開くことが出来ないという問題がある。
そこで、タブレット端末84を載置するホルダ86を、ステー85にホルダ取付プレート89を介して前述のように前後回動並びに固定自在に取付け、クーラントカバー34やボンネット35を開く際にはノブボルト90を緩めてホルダ86を後方側に回動させておけば、クーラントカバー34やボンネット35をホルダ86に邪魔されることなく大きく開いてメンテナンス作業を行うことができる。
なお、タブレット端末84を載置するホルダ86はその基部にボールジョイント86b、86cを備え、そのノブボルト86fを緩めてある程度はホルダ86の傾きを左右・上下調節することができる。そのため、係る調節によってタブレット端末84と共にホルダ86をクーラントカバー34やボンネット35に当接しない位置に退避させることができる。
しかし、このような調節によってタブレット端末84と共にホルダ86を退避させると、クーラントカバー34やボンネット35を閉じた後でタブレット端末84の表示画面を元の見易い位置に調節し直さなければならないが、前述のようにホルダ取付プレート89の回動によってホルダ86をタブレット端末84と共に前方に戻せば、そのようなタブレット端末84の表示画面の煩わしい再調節のための操作が不要になる。
以上、タブレット端末84をホルダ86を介して支持するステー85の構造を主体に、その作用効果について纏めて説明したが、ナビゲーションソフトウエアはタブレット端末84に限らず例えば、コントローラ74にインストールして、タブレット端末84は専らその結果を表示する表示装置として用いることもできる。また、走行変速レバー26を避けてステー85を設ければ、ステー85を左右のメインフレーム9aに亘って取付けて門型状に形成し、これによってステー85の更なる強度アップを図ってもよい。
なお、前述の実施形態においては田植えと同時に肥料や除草剤等を撒く作業形態については、その説明を省略したが、田植機1の走行機体4にペースト施肥機や粒状施肥機を取付けて設けたり、植付装置6に除草剤の散布機を取付けて設けることも慣行的に行われており、また、予備苗載台63を取外して使用しない場合もあり、本発明の移植機は、必ずしも前述の実施形態に限定するものではない。