以下に、本発明の実施形態に係る作業車両を、乗用型の苗移植機として図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
図1は、実施形態に係る苗移植機の側面図、図2は、同苗移植機の操縦部の拡大側面図である。なお、以下の説明においては、図1における苗移植機1の前後、左右の方向基準は、作業者が着座可能な操縦座席28からみて、走行車体2の走行方向を基準とする。また、以下では、苗移植機1を指して機体と記す場合がある。
走行車体2は、圃場で作業を行う作業装置を後部に連結可能であり、ここでは、作業装置としての苗植付部50が、昇降装置である苗植付部昇降機構40によって昇降可能に取付けられている。また、走行車体2は、走行車輪として、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5とを有するとともに、操舵輪であるハンドル32が設けられた操縦部30と、この操縦部30に対峙する位置に設けられた操縦座席28とを備える。本実施形態に係る苗移植機1は、前・後輪4,5が共に駆動輪となる四輪駆動車としており、圃場や圃場間の道などを走行することが可能になっている。なお、以下では前輪4と後輪5とを合わせて、走行車輪4,5あるいは駆動輪と表すことがある。
さらに、走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載された原動機であるエンジン10と、エンジン10の動力を駆動輪(前・後輪4,5)と苗植付部50とに伝える動力伝達装置15とを備える。
動力伝達装置15は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と云われる油圧式無段変速装置16と、この油圧式無段変速装置16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17とを有する。油圧式無段変速装置16は、エンジン10から入力される動力を変速して出力する変速装置である。なお、油圧式無段変速装置16については、以下、HST16と記す。
なお、この苗移植機1では、動力源であるエンジン10には、ディーゼル機関やガソリン機関等の内燃機関が用いられ、発生した動力は、走行車体2を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部50を駆動させるためにも使用される。
エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置される。フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間に亘って設けられてメインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場に落とすことができる。また、フロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられる。リアステップ27は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有し、エンジン10の左右それぞれの側方に配置される。
エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設される。エンジンカバー11は、フロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出した状態で、エンジン10を覆っている。
また、走行車体2に設置された作業者が着席する操縦座席28は、エンジンカバー11の上部に設けられている。そして、この操縦座席28の前方に配設された前述の操縦部30は、走行車体2の前側中央部にフロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。
操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられ、このフロントカバー31の前端中央位置には、走行の指標となるセンターマスコット350が取り付けられている。また、ステアリングポスト315には計器パネル33が配設される。
本実施形態に係る苗移植機1は、操作力がゼロになっても操作力に応じた位置に停止するレバー型の第1の操作具と、操作力がゼロになると初期位置に復帰するペダル型の第2の操作具とを、それぞれ走行時に用いられる走行操作部材として走行車体2に備えている。
すなわち、走行車体2は、詳しくは後述するが、走行モードとして、モード切替スイッチ92の操作により選択的に切替可能な第1の走行モードM1と第2の走行モードM2とを有する(図5参照)。
第1の走行モードM1は、第1の操作具または第2の操作具のいずれか一方の操作によりHST16の出力とエンジン10の回転数とを共に変更して車速調整を行い、いずれか他方の操作により、エンジン10の回転数のみを変更するスロットル調整を行う。また、第2の走行モードM2は、第1の操作具または第2の操作具のいずれか一方の操作により車速調整を行う。
また、モード切替スイッチ92の操作によって第2の走行モードM2が選択された場合、前記車速調整を行う操作具として、第1の操作具および第2の操作具のいずれかを選択する操作具選択スイッチ91を走行車体2は備えている。
ここで、図2を参照しながら、第1の操作具、第2の操作具、モード切替スイッチ92、および操作具選択スイッチ91の具体的な配置を含め、操縦部30の構成について説明する。
図2に示すように、操縦部30の上部には、作業者による操舵が可能なハンドル32と計器パネル33とが設けられたステアリングポスト315と、このステアリングポスト315を挟んで第1操作レバー81と第2操作レバー82とが設けられる。第1操作レバー81が前後に操作可能な第1の操作具であり、ステアリングポスト315の右脇にハンドル32と近接して設けられている。そして、第1操作レバー81と反対側の位置には第2操作レバー82が設けられている。
第1操作レバー81は、操作力がゼロになっても操作力に応じた位置に停止する第1の操作具として設けられており、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作する変速操作部材である。また、第2操作レバー82は、走行車体2の走行速度を規定する走行モードを、走行する場所に応じて低速モードと高速モードとに切り替える副走行操作部材である副変速レバーとして機能する。
さらに、操縦部30の下部には、操作力がゼロになると初期位置に復帰する第2の操作具としてのフットペダル29が設けられている。なお、図1および図2では省略したが、操縦部30の下部には、フットペダル29の他にブレーキペダル39(図7Aおよび図8A参照)が設けられる。
また、ステアリングポスト315の上部位置にモード切替スイッチ92を配設するとともに、ステアリングポスト315の下部位置に操作具選択スイッチ91を配設している。このように、モード切替スイッチ92および操作具選択スイッチ91は、操縦座席28の近傍に設けられており、作業者が容易に操作することができる。
詳しくは後述するが、モード切替スイッチ92が操作されて第1の走行モードが選択された場合は、コントローラ150(図4参照)は、第1操作レバー81の操作により車速調整を行わせ、フットペダル29にエンジン10の回転数のみを変更するスロットル調整を行わせるようにしている。すなわち、この第1の走行モードM1では、第1操作レバー81が、従来のいわゆる主変速レバーとして機能し、フットペダル29がエンジン10の回転数のみを調整するペダルとして機能することになる。
このときに、フットペダル29のレスポンスを自由に設定できるようにすることが好ましい。たとえば、ダイヤル式のレスポンス設定スイッチを設けておき、踏込量に対応してエンジン10の回転数をどの程度変えるようにするかを、作業者の好みでダイヤル操作により容易に設定できるようにするとよい。
一方、モード切替スイッチ92が操作されて第2の走行モードM2が選択された場合、作業者は、操作具選択スイッチ91を操作して、車速調整を第1操作レバー81で行うか、フットペダル29で行うかを選択する。
第2の走行モードM2が選択され、かつフットペダル29が車速調整を行う操作具に選択された場合、フットペダル29は、踏込力が解除されるとニュートラル位置へ復帰する構成となっているため、車速を維持するための車速維持スイッチ93を第1操作レバー81のグリップに設けている。
車速維持スイッチ93は、HST16に連結されたトラニオン167の開度を一定に保持することができ、フットペダル29を所定の位置まで踏込操作して、この車速維持スイッチ93をオン操作すると、フットペダル29から操作力が解放されても車速が維持される。また、この場合、走行車体2を前進走行させるか、または後進走行させるかについては、第1操作レバー81の位置が中立位置に対して前進側にあるか、後進側にあるかによってコントローラ150が決定するようにしている。
また、車速維持スイッチ93を押した後に、改めてフットペダル29を踏み込むと、新たに踏み込まれた位置に対応する車速が維持されるようにするとよい。なお、維持された車速は、逐次、コントローラ150が備える記憶部150b(図4参照)に記憶しておくことが好ましい。
また、車速維持スイッチ93を押した後に、第1操作レバー81を動かすと、コントローラ150は、車速維持を解除するとともに、機体を停止させる制御を実行することもできる。さらに、たとえば操縦座席28に着座センサを設けておき、車速維持スイッチ93を押した後に、着座センサにより作業者が席を立ったことが検出されると、コントローラ150は機体を停止するように制御することもできる。なお、車速維持の解除は、ブレーキペダル39の操作によってなされるようにしてもよいし、たとえば、図示しない畦クラッチの操作時に車速維持の解除を行うようにしてもよい。
なお、着座センサを設けた場合、コントローラ150は、作業者が着座していない限り、各種スイッチのオン操作を受け付けないように制御することもできる。
図3は、第1操作レバー81やフットペダル29の操作により出力が変更されるHST(油圧式無段変速装置)16の説明図である。HST16は、静油圧式の無段変速装置であり、図3に示すように、エンジン10からの動力により、油圧ポンプ161を駆動して油圧を発生させ、この油圧を油圧モータ162で機械的な力(回転力)に変換して出力する。
たとえば、第1の走行モードM1であれば、前述の主変速レバーとして機能する第1操作レバー81を操作すると、モータや油圧シリンダなどのトラニオン軸アクチュエータ166を介してHST16のトラニオン167の回動角度を変化させる。こうして、第1操作レバー81の操作により斜板168の傾斜角度を変化させることで、HST16の出力を無段状に変更させることができる。
油圧閉回路163からは、斜板168の傾斜角度に応じた圧油が油圧モータ162に供給され、この油圧モータ162により出力軸165が駆動されて走行車輪4,5の回転速度が変化する。なお、図3中、符号80は、HST16の入力軸を示しており、エンジン10の出力軸10aとメインクラッチ10bを介して連結されている。
このように、HST16は、エンジン10で発生する動力を、走行車体2を走行させる力に変換しており、作業者は、第1の走行モードM1であれば第1操作レバー81の操作により、また第2の走行モードM2であればフットペダル29の操作によって、HST16の出力及び出力方向を変更し、走行車体2の前後進及び走行速度を操作することができる。かかるHST16は、図1に示すように、エンジン10よりも前方で、且つ、フロアステップ26の床面よりも下方に配置されている。
HST16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17は、図1に示すように、エンジン10の出力軸10a(図3参照)に取り付けたプーリ17aと、HST16の入力軸80(図3参照)に取り付けたプーリ17bと、双方のプーリ17a,17bに巻き掛けたベルト17cと、このベルト17cの張力を調整するテンションプーリ(不図示)とを備える。これにより、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10で発生した動力を、ベルト17cを介してHST16に伝達することができる。
図1に示すように、ベルト式動力伝達機構17を備える動力伝達装置15は、さらに、ミッションケース18を有する。ミッションケース18は、エンジン10からの駆動力を各部に伝達する伝動装置である。すなわち、エンジン10からの駆動力は、ベルト式動力伝達機構17を介してHST16に伝達され、このHST16で変速した動力がミッションケース18に伝達される。
かかるミッションケース18は、高速モードでの路上走行時や、低速モードでの植付時などにおける走行車体2の走行モードを切り替える副変速機構(不図示)を内設しており、メインフレーム7の前部に取り付けられる。前述の第2操作レバー82は、副変速レバーとして機能してミッションケース18内の副変速機構を操作することにより、走行車体2の走行モードを切り替えることが可能である。
ミッションケース18は、伝達されてきたエンジン10からの出力を変速して、前輪4と後輪5への走行用動力と、苗植付部50への駆動用動力とに分けて出力することができる。
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース13を介して前輪4に伝達可能であり、残りが左右の後輪ギヤケース22を介して後輪5に伝達可能となっている。一方、ミッションケース18から出力される駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ500に伝達され、かかる植付クラッチ500の係合時に植付伝動軸(不図示)によって苗植付部50へ伝達される。植付クラッチ500は、後に詳述するコントローラ150に接続された植付クラッチモータ510によって動作する(図4参照)。
左右それぞれの前輪ファイナルケース13は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設される。左右の前輪4は、車軸131を介して左右の前輪ファイナルケース13に連結されており、かかる前輪ファイナルケース13は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることが可能である。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース22には、車軸220を介して後輪5が連結されている。
ここで、上述の構成を有する本実施形態に係る苗移植機1の機能について、図4〜図6を参照しながら説明する。図4は、苗移植機1のコントローラ150を中心とした機能ブロック図であり、本実施形態に係る苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能になっている。また、図5は、コントローラ150が有する記憶部150bに格納された第1の走行モードM1と第2の走行モードM2の内容を示す説明図、図6は、苗移植機1の車速変更の操作系統を示す説明図である。
苗移植機1は、各部を制御する制御装置としてのコントローラ150を備えている。このコントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部を有する制御部150aと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する記憶部150bと、入出力部(不図示)とを備え、これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部150bには、第1の走行モードM1および第2の走行モードM2に応じた走行制御プログラムや苗植付部50を制御する作業部制御プログラム等、苗移植機1を制御するコンピュータプログラム等が格納される。
図5に示すように、記憶部150bには、第1の走行モードM1と第2の走行モードM2との2つの走行モードが記憶されている。
第1の走行モードM1は、第1操作レバー81またはフットペダル29のいずれか一方の操作によりHST16の出力およびエンジン10の回転数を共に変更して車速調整を行うとともに、いずれか他方の操作により、エンジン10の回転数のみを変更するスロットル調整を行うものである。
本実施形態では、第1の走行モードM1が選択された場合、コントローラ150(制御部150a)は、操作具選択スイッチ91の操作に拘わらず、車速調整を第1操作レバー81に割り当て、スロットル調整をフットペダル29に割り当てる。すなわち、第1操作レバー81が操作されると、制御部150aは、スロットルモータ100およびトラニオン軸アクチュエータ166を駆動して(図4参照)、車速の調整を行う。他方、フットペダル29が操作されると、スロットルモータ100のみを駆動し、車速は一定に保ちながら、フットペダル29の踏込量に応じてエンジン10の回転数を変更する。
第2の走行モードM2は、第1操作レバー81またはフットペダル29のいずれか一方の操作により車速調整を行うもので、モード切替スイッチ92が操作されてこの第2の走行モードM2に切替えられると、コントローラ150の制御部150aは、たとえば、操縦部30に設けられたランプやブザーなどの報知装置(不図示)により、車速調整を行う操作具として、第1操作レバー81またはフットペダル29のいずれを選択するかを促す報知を行う。そして、作業者により、操作具選択スイッチ91が操作されていずれかが選択されると、制御部150aは、選択された操作具(第1操作レバー81またはフットペダル29のいずれ)に車速調整の操作を割り当てる。なお、選択を促す報知は必ずしも行わなくてもよい。
このとき、フットペダル29が車速調整を行う操作具に選択された場合、制御部150aは、走行車体2を前進走行させるか、あるいは後進走行させるかを、第1操作レバー81の位置が、中立位置に対して前進側にあるか後進側にあるかによって決定する。すなわち、前後進の切替えについては、第1の走行モードM1でも第2の走行モードM2でも第1操作レバー81の位置によって決定される。
たとえば、本実施形態に係るコントローラ150には、アクチュエータ類として、前述のエンジン10の吸気量を調節するスロットルモータ100、HST16のトラニオン167の回動角度を変化させるトラニオン軸アクチュエータ166が接続される(図6参照)。また、コントローラ150には、ブレーキを作動させるブレーキモータ130と、植付クラッチ500を作動させる植付クラッチモータ510とが接続される。
また、コントローラ150には、第1レバーポテンショメータ810および第2レバーポテンショメータ820が接続されるとともに、ペダルポテンショメータ840、ステアリングセンサ160、さらにはその他各種センサ190が接続されている。
第1レバーポテンショメータ810は、第1操作レバー81の操作位置を検出することができ、第2レバーポテンショメータ820は、第2操作レバー82の操作位置を検出することができる。
ペダルポテンショメータ840は、フットペダル29が踏込まれた際の位置を検出することができる。
ステアリングセンサ160は、ハンドル32を連結するステアリングシャフト(不図示)に取付けられ、前輪4の操舵角を検出することができる。
また、苗移植機1は、自動操舵装置110と、GPS(Global Positioning System)あるいはGNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星航法を利用したGPS制御装置120と、情報処理端末装置であるタブレット端末装置140とを備えており、これらがコントローラ150に接続される。なお、本実施形態におけるGPS制御装置120は、GPSSを利用している場合も含む制御装置である。
自動操舵装置110は、任意の回転力をハンドル32に付与する直進サポート機構310を備えている。コントローラ150は、直進サポートスイッチ113が操作されると、GPS制御装置120が取得した位置情報に基づき、直進サポート機構310を介してハンドル32を自動操縦することにより、走行車体2を直進方向に維持することが可能となっている。なお、直進サポート機構310は、ハンドル32の操作量を示す回転角度を検出するハンドルポテンショメータ112を備える。
GPS制御装置120は、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信する受信アンテナ121(図1参照)を有し、地球上における苗移植機1の位置情報(座標情報)を取得し、取得した位置情報をコントローラ150に伝達する。
また、コントローラ150には、所定の無線通信規格による無線接続により、タブレット端末装置140が接続されている。タブレット端末装置140は、内蔵される端末通信部144とコントローラ150に接続される車体通信部151との間で無線接続可能に構成されるとともに、制御部141と、情報を表示する表示部および各種の入力操作を行う入力操作部とを兼用するタッチパネル142と、情報を記憶する記憶部143とを備える。この記憶部143に、一または複数の圃場の地図情報や、その他、苗移植機1の制御に必要な各種プログラムや各種データが記憶されている。
このように、本実施形態に係る苗移植機1は、GPS制御装置120により取得した走行車体2の位置情報に基づき、タッチパネル142上において、機体位置を、作業領域を含む圃場の地図情報上に重畳表示することができる。
また、コントローラ150には、図2に示したモード切替スイッチ92、操作具選択スイッチ91、車速維持スイッチ93、さらには、第3のスイッチとして多機能スイッチ173が接続される。
モード切替スイッチ92は、2つの走行モードのうち、第1の走行モードM1と第2の走行モードM2とのいずれかに切り替えるスイッチである。操作具選択スイッチ91は、第2の走行モードM2が選択された場合に、第1操作レバー81とフットペダル29とのうち、車速調整を行う操作具としていずれか一方を選択するスイッチである。
車速維持スイッチ93は、第2の走行モードM2が選択され、かつフットペダル29が車速調整を行う操作具として選択された場合に、HST16に連結されたトラニオン167の開度を一定に保持するスイッチであり、フットペダル29を所定の位置まで踏込操作し、かつ車速維持スイッチ93がオン操作されると、フットペダル29から足を離して操作力を解放しても、車速はそのまま維持される。なお、車速維持スイッチ93が操作された後に再度操作されると車速維持が解除されるようにすることもできる。あるいは、車速維持スイッチ93が操作された後にフットペダル29が再度操作されると車速維持が解除され、フットペダル29により車速調整が改めて行えるようにしてもよい。
また、第3のスイッチとして設けられた多機能スイッチ173は、図2に示すように、前輪4を操舵するハンドル32の下方位置に、このハンドル32に作業者が掌を当接させながら指で上方へ向けて操作可能な位置に設けられている。
かかる多機能スイッチ173を、ここでは、車速変更スイッチとして設け、この多機能スイッチ173が操作された場合、第1の走行モードM1および第2の走行モードM2に拘わらず、HST16に連結されたトラニオン167の開度を多段に変更可能としている。これにより、トラニオン167の開度を無段階に制御するよりも、段階的な目標値を定めることができ、作業者にとって車速調整の操作が容易となる。
なお、多機能スイッチ173により車速を多段に調整するようにした場合、コントローラ150は、トラニオン167の位置が中途半端な位置にあるときは、操作したときに最も近い段数に応じた車速となるように制御するとよい。また、多機能スイッチ173の操作段数は、第1操作レバー81の段数に応じて設定するとよい。その際に、変速範囲はエンストが起こらない範囲となるように、あるいは作業者の操作フィーリングに違和感が生じないように設定することが好ましい。
ここで、図1に戻り、苗植付部50およびその他の構成について説明する。
図1に示すように、走行車体2の後部には、苗植付部昇降機構40を介して苗植付部50が昇降可能に取付けられている。苗植付部昇降機構40は、昇降リンク装置41を備えており、この昇降リンク装置41は、走行車体2の後部と苗植付部50とを連結させる平行リンク機構を備える。かかる平行リンク機構は、上リンク41aと下リンク41bとを有し、これらのリンク41a,41bが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム43に回動自在に連結される。そして、リンク41a,41bの他端側が苗植付部50に回転自在に連結されている。こうして、苗植付部50は走行車体2に昇降可能に連結されることになる。
また、苗植付部昇降機構40は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ44を有し、油圧昇降シリンダ44の伸縮動作によって、苗植付部50を昇降させることができる。苗植付部昇降機構40は、その昇降動作によって、苗植付部50を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(植付位置)まで下降させたりすることができる。
また、苗植付部50は、苗を植え付ける範囲を、複数の区画、あるいは複数の列で植え付けることができる。例えば、苗を6つの区画で植え付ける、いわゆる6条植の苗植付部50とすることができる。苗植付部50は、苗植付装置60と、苗載置台51及びフロート47(48,49)を備える。このうち、苗載置台51は、走行車体2の後部に複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面52を有し、それぞれの苗載せ面52に土付きのマット状苗を載置することが可能である。
苗植付装置60は、苗載置台51の下部に配設されており、当該苗載置台51の前面側に配設される植付支持フレーム55によって支持される。苗植付装置60は、苗載置台51に載置された苗を苗載置台51から取って圃場に植え付ける装置であり、植付伝動ケース64と植付体61とを有する。植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場に植え付けることができるように構成されており、植付伝動ケース64は、植付体61に駆動力を供給することができる。
また、植付伝動ケース64は、エンジン10から苗植付部50に伝達された動力を、植付体61に供給可能に構成されており、植付体61は、植付伝動ケース64に対して回転可能に連結される。また、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場に植え付ける植込杆62と、植込杆62を回転可能に支持すると共に植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されるロータリケース63とを有する。ロータリケース63は、植付伝動ケース64から伝達された駆動力によって植込杆62を回転させる際に、回転速度を変化させながら回転させることのできる不等速伝動機構(不図示)を内装している。これにより、植付体61の回転時には、植込杆62は、ロータリケース63に対する回転角度によって回転速度が変化しながら回転をすることができる。
このように構成される苗植付装置60は、2条毎に1つずつ配設されている。すなわち、複数の苗植付装置60は、それぞれ植付条が割り当てられている。また、各植付伝動ケース64は、2条分の植付体61を回転可能に備えている。つまり、1つの植付伝動ケース64には、2つのロータリケース63が、機体左右方向の両側に連結される。
また、フロート47は、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体2の左右方向における苗植付部50の中央に位置するセンターフロート48と、左右方向における苗植付部50の両側に位置するサイドフロート49とを有する。
また、苗植付部50の下方側の位置における前側には、圃場の整地を行う整地用ロータ67,67が設けられる。この整地用ロータ67,67は、後輪ギヤケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって回転可能に構成される。
また、苗植付部50の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ68が備えられる。線引きマーカ68は、苗移植機1が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。しかしながら、本実施形態に係る苗移植機1は、GPSやGNSSを利用して直進サポートを実行することができるため、線引きマーカ68を廃止することもできる。
また、走行車体2における操縦座席28の後方には、施肥装置70が搭載される。施肥装置70は、肥料を貯留する貯留ホッパ71と、貯留ホッパ71から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置72と、繰出し装置72により繰り出される肥料を圃場に供給する施肥通路である施肥ホース74と、施肥ホース74に搬送風を供給するブロア73とを備える。
このブロア73により、施肥ホース74内の肥料が苗植付部50側に移送される。さらに、施肥装置70は、施肥ホース74によって肥料が移送される施肥ガイド75と、施肥ホース74によって移送された肥料を苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器76とを有する。
また、本実施形態に係る苗移植機1が備えるGPS制御装置120(図4参照)は、走行車体2に設けられる受信アンテナ121を有する。この受信アンテナ121により所定間隔の時間でGPS座標またはGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。
受信アンテナ121は、ハンドル32の直上方であって、走行車体2の前端側に設けられた車体前側フレーム700に基端が連結されたアンテナフレーム124の頂部に取り付けられる。アンテナフレーム124は、左右の前側縦フレーム124a,124aと、前側上部フレーム124bと、後側縦フレーム124cと、上部L形フレーム124dとから構成される。なお、図中、符号125および符号126は、それぞれ、後側縦フレーム124cと上部L形フレーム124dとを伸縮自在に連結する連結部を示す。
左右の前側縦フレーム124a,124aには一対のブラケット127,127が設けられており、ブラケット127,127に掛け渡された取付杆145を介してタブレット端末装置140が設けられている。なお、図1において、符号124eは、前側縦フレーム124a,124a間および各前側縦フレーム124aとフロントカバー31との間に設けられる補強フレームを示す。
ここで、図7Aから図8Bを参照して、フットペダル29の配置について説明する。図7Aおよび図8Aは、車速変更を行うことのできるフットペダル29の配置の一例を正面視で示す説明図であり、図7Bおよび図8Bは、同フットペダル29の配置の一例を側面視で示す説明図である。
すなわち、上述してきた実施形態では、フットペダル29の配置については特に規定してはいないが、たとえば、走行モードを第1の走行モードM1が選択された際に、第1操作レバー81の補助装置として利用できるような配置とすることができる。
すなわち、図7Aに示すように、連結部29aを介して回転軸29bに連接したフットペダル29を、ブレーキペダル39の右側に隣接させて配置する。なお、フットペダル29の回転軸29bの軸心と、ブレーキペダル39の回転軸39bとの軸心とは同じ位置になるようにする。なお、図7A中、符号39aは、ブレーキペダル39の回転軸39aとの連結部を示す。そして、フットペダル29の作動範囲Pがブレーキペダル39の作動範囲Bよりも大きくなるように、図7Bに示すように、フットペダル29の初期位置N1をブレーキペダル39の初期位置N2よりも上方に設定する。
こうして、フットペダル29は、ブレーキペダル39の初期位置N2よりも上方の範囲P1では、通常通りにエンジン10の回転数のみを変更するスロットル調整用として用いることができるとともに、ブレーキペダル39の初期位置N2よりも下方の範囲P2では、踏込量に応じてHST16の出力を変更して車速調整を行わせることができる。かかる構成とすることで、第1操作レバー81の補助装置としてのフットペダル29の誤操作を可及的に防止することができる。
また、フットペダル29を第1操作レバー81の補助装置として利用可能な配置例としては、図8Aおよび図8Bに示すように配置することもできる。すなわち、図8Aに示すように、適宜配設したフットペダル29の左側に隣接させて、走行車体2のフロアステップ26上にフットレスト390を配置する。そして、図8Bに示すようにフットペダル29の初期位置N1を、フットレスト390の上面よりも上方に設定しておく。
こうして、フットペダル29は、フットレスト390の上面よりも上方の範囲P1では、通常通りにエンジン10の回転数のみを変更するスロットル調整用として用いることができるとともに、フットレスト390の上面よりも下方の範囲P2では、踏込量に応じてHST16の出力を変更して車速調整を行わせることができる。かかる構成とすることによっても、第1操作レバー81の補助装置としてのフットペダル29の誤操作を可及的に防止することができる。
また、フットペダル29を第1操作レバー81の補助装置として利用する際に、フットペダル29をアナログ的に無段階に操作するのではなく、複数段に車速調整可能な多段操作とすることもできる。また、フットペダル29を第1操作レバー81の補助装置として利用する際には、たとえば、補助装置としてフットペダル29を操作した後、第1操作レバー81をニュートラル位置に戻した場合は、車速調整については第1操作レバー81による操作に戻るようにすることができる。
また、フットペダル29を第1操作レバー81の補助装置として利用する技術の一環として、フットペダル29の踏込による回転軸29bの回動角度ではなく、踏込時間によって車速調整することもできる。たとえば、フットペダル29の踏込みを開始して単位時間ごとに車速を10パーセントずつ変更するように制御することができる。また、フットペダル29から回転軸29bを廃止する一方、圧力センサなどを設け、押圧力の大きさで車速調整することもできる。
なお、上述してきた実施形態では、第1操作レバー81は、操作力がゼロになっても操作力に応じた位置に停止する操作具の一例であり、第1の走行モードM1では車速調整を行う操作具は第1操作レバー81に割り当てられるようにしていた。しかし、たとえば、第1の走行モードM1が選択されて、かつ操作具選択スイッチ91により、車速調整を行う操作具としてフットペダル29が選択された場合に、第1操作レバー81をエンジン10の回転数を調整するスロットル調整用として用いることができ、その場合、第1操作レバー81についても、操作力がゼロになると初期位置に復帰するように構成することもできる。
また、上述してきた実施形態では、車速調整を行うことのできる第1操作レバー81は、ステアリングポスト315の右脇に設けているが、第1操作レバー81とは別に、車速調整用スイッチをハンドル32の内側であって、ハンドル操作しながら操作可能な位置に設けることもできる。この場合、ハンドル32で操舵しながらでも容易に車速調整が可能となる。
また、上述してきた実施形態では、第1操作レバー81が操作されると、制御部150aは、スロットルモータ100およびトラニオン軸アクチュエータ166を駆動して車速の調整を行うが、このとき、制御部150aは、増速側の制御であれば、トラニオン軸アクチュエータ166よりもスロットルモータ100を先に先行して駆動して増速するとよい。これによりエンジンドロップなどを防止することができる。このとき、逆に減速側の制御であれば、スロットルモータ100よりもトラニオン軸アクチュエータ166を先に先行して減速させるとエンジンドロップを防ぐことができる。
また、車速維持スイッチ93については、常時受け付けるのではなく、路上走行時には車速を維持できないように、たとえば、フロート47が設置している場合や整地用ロータ67が駆動している場合に受け付けるような条件を設けることもできる。
また、車速維持スイッチ93の受付けは、作業者が着座している場合に限定することもできる。また、車速維持スイッチ93がオン操作された後、車速維持を解除する操作についても、車速維持スイッチ93を再度操作する他、様々な条件で自動的に解除するように適宜設定することができる。
ここで、苗移植機1の他の実施形態について説明する。図9Aは、操舵モードスイッチの配置例を正面視で示す説明図、図9Bは、同操舵モードスイッチの配置例を側面視で示す説明図、図9Cは、図9Aの一部を拡大した操舵モードスイッチの説明図である。なお、先に説明してきた実施形態における構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を用いている。
他の実施形態に係る苗移植機1は、図9A〜図9Cに示すように、前輪4を操舵するハンドル32の回動位置が、走行車体2の直進に対応する位置にあるときのみ操作可能な第4のスイッチである操舵モードスイッチ321(321R,321L)を設けた点に特徴を有する。かかる操舵モードスイッチ321は、上述してきた実施形態における直進サポートスイッチ113(図4参照)に代えて設けられる。
すなわち、操舵モードスイッチ321は、前輪4を、ハンドル32を作業者が操作するマニュアル操作とするか、自動操舵装置110を用いて自動操舵とするかを選択するスイッチであって、コントローラ150は、この操舵モードスイッチ321が下方へ押し下げられてオン操作された場合、自動操舵装置110を作動させて走行車体2の自動直進をサポートする。
ところで、操舵モードスイッチ321は、ハンドルグリップを兼用しており、ここでは、左側のハンドルグリップスイッチ321Lと右側のハンドルグリップスイッチ321Rとを合わせた総称として操舵モードスイッチ321と呼称する。なお、操舵モードスイッチ321を下方へ押し下げるオン操作は、左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rのいずれを用いても可能である。
操舵モードスイッチ321の構成をより具体的に説明する。図9Aに示すように、ここでのハンドル32には、直進姿勢における左右側に、内側に屈曲する屈曲部320L,320Rが形成されている。そして、かかる左右の屈曲部320L,320Rに臨むようにグリップ兼用の操舵モードスイッチ321が配設されている。つまり、左の屈曲部320Lに左のハンドルグリップスイッチ321Lが、右の屈曲部320Rに右のハンドルグリップスイッチ321Rが臨設されている。
左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rは、それぞれ左右の連結杆322L,322Rを介して独立してステアリングポスト315のコラム316に取付けられている。すなわち、図9Bに示すように、上下方向F2には操作可能となっているが、ハンドル32の回動方向(図9Aの矢印F1参照)には移動することがないよういに連結されている。そのため、左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rのハンドル回動方向における位置は常に一定である。
また、図9Cに示すように、左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rは、断面視略コ字状に形成されて内部にはハンドル通過空間323が設けられている。そのため、左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rが常に同じ位置にあっても、ハンドル32はハンドル通過空間323を通って自由に回動できる。したがって、直進サポート実行中に、作業者は左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rに手を置いている際にもハンドル32は自動的に回動可能である。
また、操舵モードスイッチ321は、上述したように、ハンドル32の回動位置が走行車体2の直進に対応する位置にあるときのみ操作可能であるため、誤操作するおそれが可及的に抑えられる。また、押し下げられた操舵モードスイッチ321は、初期位置に復帰するため、左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rは、それぞれ左右の屈曲部320L、320Rの位置に戻る。そのため、作業者は、左右のハンドルグリップスイッチ321L、321Rに手を置いていながらも、いつでも円滑に操舵モードスイッチ321のオン操作を行うことができる。
上述してきたように、本実施形態に係る苗移植機1は、第1操作レバー81とフットペダル29とを備え、いずれも条件によっては車速調整が実行可能である。かかる構成における苗移植機1において、フットペダル29と第1操作レバー81とのいずれを操作しても車速変更可能とし、たとえば、フットペダル29の操作に連動して第1操作レバー81が作動するように構成することもできる。
また、ダイヤル式のレスポンス設定スイッチによるマニュアル操作でフットペダル29のレスポンスを変更するのではなく、たとえば機体の傾斜を検出するセンサを設け、機体が前上がりの場合はレスポンスを鈍くするように制御することができる。この場合、車速の急変によって機体がさらに傾くことを防止することができる。また、傾斜センサに代えて畦検出センサを設け、畦が接近したことを検出するとフットペダル29のレスポンスを鈍くするようにしてもよい。
また、フットペダル29の作動範囲を走行状態に応じて可変とし、車速が低速であるほど広くなるように制御することで、低速時のエンジン10の回転数を微調整し易くすることができる。
また、第2の走行モードM2でフットペダル29を車速調整用の操作具として選択した場合において、苗移植機1が走行中、負荷が大きくなってフットペダル29の踏込量ほどに車速が上がらない場合、あるいはエンジン10の回転数が低下した場合、エンジン10の負荷を減らすために、トラニオン167を緩める方向にトラニオン軸アクチュエータ166を制御することもできる。
また、フットペダル29で車速調整を行う場合に、第1操作レバー81を用いて変速範囲を規定することもできる。すなわち、フットペダル29を最大に踏み込んだとしても、第1操作レバー81により設定した最高速度以上には車速が上がらないようにするものである。
また、たとえば着座センサを設けて、コントローラ150は、作業者が着座していない限り、各種スイッチのオン操作を受け付けないように制御することもできるとしたが、着座センサではなく、作業者が任意に操作できるスイッチを設け、このスイッチを操作すると、コントローラ150が各種スイッチのオン操作を受け付けないようにする構成としてもよい。
また、ブレーキペダル39が操作されている場合や停車中である場合は、フットペダル29による車速調整はできないように制御することもできる。たとえば、苗補給などにより停車している際に、誤ってフットペダル29を踏み込んでしまっても、機体が動かないようにすることで、畦への乗上げなどを防止でき、安全性を高めることができる。
また、停車中にフットペダル29が急に踏み込まれたことをペダルポテンショメータ840が検出すると、コントローラ150は、作業者による踏み間違いであると判断し、車速調整はできないように制御することもできる。この場合でも安全性が向上する。
また、上述してきた実施家体では、多機能スイッチ173を車速変更スイッチとして設けていたが、これをハンドル32の下方位置の左右にそれぞれ設け、ハンドル32を握ったまま、左右の多機能スイッチ173を操作してより多彩な機能を発揮させることができる。このとき、たとえば、左右のいずれか一方の多機能スイッチ173を増スイッチに割り当て、いずれか他方の多機能スイッチ173を減スイッチに割り当てることができる。
たとえば、各種のモータや油圧シリンダなどの増減スイッチとして利用することができる。このように、多機能スイッチ173を設けることで、通常作業の操作性を損なうことなく、新たな機能を追加することが可能となる。
また、コントローラ150は、多機能スイッチ173の操作受付を、所定時間連続で操作されている場合のみ受け付けるようにすることができる。そうすることにより、誤って多機能スイッチ173を瞬間的に触れた場合の誤動作を防止することができる。また、誤動作を防止する観点からいえば、所定時間以上の連続して多機能スイッチ173が操作された場合、コントローラ150は、操作受付を1回として認識するようにしてもよい。そして、次の操作受付は、多機能スイッチ173が改めて所定時間以上の連続して操作された場合とする。
また、多機能スイッチ173を車速変更スイッチとして使用する場合、多機能スイッチ173を操作したことにより、第1操作レバー81によって設定していたトラニオン167の開度と、実際の開度とが異なってしまう場合がある。つまり、現在の第1操作レバー81により規定された段数よりも多機能スイッチ173で規定した段数による開度が大きい場合である。このようなときは、その段数の間は、第1操作レバー81を開度増側に操作しても多機能スイッチ173で規定した段数を維持するようにすることができる。たとえば、第1操作レバー81の位置は前進4段であり、実際は多機能スイッチ173の操作でトラニオン167の開度は前進6段に相当している場合、第1操作レバー81を、前進4段〜6段までの間での操作であれば、トラニオン167の開度は前進6段のままにするのである。
このとき、多機能スイッチ173で規定した段数以上の段数まで第1操作レバー81を操作した場合は、コントローラ150は第1操作レバー81の操作を有効とする。なお、第1操作レバー81で段数を減じる側へ操作した場合も第1操作レバー81による操作は有効となるようにする。このとき、コントローラ150は、作業者の安全確保のため、急激な車速減少を避けてHST16の出力を緩やかに減少させることが好ましい。なお、第1操作レバー81が停止位置に操作された場合は、作業者の停止意思を優先し、通常通りに減速して停止させるものとする。
また、逆に現在の第1操作レバー81により規定された段数よりも多機能スイッチ173で規定した段数による開度が小さい場合、たとえば、第1操作レバー81の位置は前進4段であり、実際は多機能スイッチ173の操作でトラニオン167の開度は前進2段に相当している場合、第1操作レバー81を、前進4段〜2段までの間での減速操作であれば、トラニオン167の開度は前進2段のままにする。このような制御によってもレバー操作と実際の機体の動きとに違和感を生じるおそれが抑えられる。このとき、多機能スイッチ173で規定した段数以下の段数まで第1操作レバー81を操作した場合は、コントローラ150は第1操作レバー81の操作を有効とする。
ところで、このように、現在の第1操作レバー81による段数よりも実際のトラニオン167の開度の段数が小さい方向に乖離しているときに、第1操作レバー81を増速側に操作した場合、コントローラ150は、第1操作レバー81の操作を有効とする。このとき、このとき、コントローラ150は、作業者の安全確保のため、急激な増速を避けてHST16の出力を緩やかに増加させることが好ましい。なお、この場合も第1操作レバー81が停止位置に操作された場合は、作業者の停止意思を優先し、通常通りに減速して停止させるものとする。
上述した実施形態から以下の苗移植機1が実現する。
(1)後部に苗植付部50を連結可能な走行車体2を備え、走行車体2は、エンジン10から入力される動力を変速して出力するHST16と、操作力がゼロになっても操作力に応じた位置に停止する第1の操作具(第1操作レバー81)および操作力がゼロになると初期位置に復帰する第2の操作具(フットペダル29)と、第1の操作具または第2の操作具のいずれか一方の操作によりHST16の出力およびエンジン10の回転数を共に変更して車速調整を行い、いずれか他方の操作により、エンジン10の回転数のみを変更するスロットル調整を行う第1の走行モードM1と、第1の操作具または第2の操作具のいずれか一方の操作により車速調整を行う第2の走行モードM2とを、モード切替スイッチ92の操作に応じて選択的に切替えて走行車体2の走行を制御するコントローラ150と、第2の走行モードM2が選択された場合、車速調整を行う操作具として、第1の操作具および第2の操作具のいずれかを選択する操作具選択スイッチ91とを備える苗移植機1。
(2)上記(1)において、モード切替スイッチ92および操作具選択スイッチ91は、操縦座席28の近傍に設けられている苗移植機1。
(3)上記(1)または(2)において、第1の操作具および第2の操作具の操作位置を検出するセンサ(第1レバーポテンショメータ810,ペダルポテンショメータ840)を備えるとともに、第1の操作具を、走行車体2が備える前輪4を操舵するハンドル32に近接して設けた第1操作レバー81とし、第2の操作具をフットペダル29とした苗移植機1。
(4)上記(3)において、第2の走行モードM2が選択され、かつフットペダル29が車速調整を行う操作具に選択された場合、コントローラ150は、走行車体2を前進走行させるか、または後進走行させるかを、第1操作レバー81の位置が中立位置に対して前進側にあるか、後進側にあるかによって決定する苗移植機1。
(5)上記(3)または(4)において、HST16に連結されたトラニオン167の開度を一定に保持する車速維持スイッチ93を備え、フットペダル29を所定の位置まで踏込操作し、かつ車速維持スイッチ93をオン操作した場合、フットペダル29から操作力が解放されても車速が維持される苗移植機1。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、第1の走行モードM1が選択された場合、コントローラ150は、操作具選択スイッチ91の操作に拘わらず、車速調整を第1操作レバー81に割り当て、スロットル調整をフットペダル29に割り当てる苗移植機1。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、走行車体2が備える前輪4を操舵するハンドル32の下方位置に、ハンドル32に掌を当接させながら指で上方へ向けて操作可能な多機能スイッチ173を設けた苗移植機1。
(8)上記(7)において、多機能スイッチ173が操作された場合、第1の走行モードM1および第2の走行モードM2に拘わらず、HST16に連結されたトラニオン167の開度を多段に変更可能とした苗移植機1。
(9)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前輪4を操舵するハンドル32の回動位置が、走行車体2の直進に対応する位置にあるときのみ、下方へ向けて操作可能な第4のスイッチ(操舵モードスイッチ)321を設けた苗移植機1。
(10)上記(9)において、第4のスイッチを、前輪4をマニュアル操作するか、自動操舵装置110を介して自動操舵するかを選択する操舵モードスイッチ321とし、コントローラ150は、操舵モードスイッチ321がオン操作された場合、自動操舵装置110を作動して走行車体2を自動直進させる苗移植機1。
上述してきた実施形態はあくまでも一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。