前述のように左右の前輪を操縦部に設けるステアリングホイールによって手動操舵する作業車両にあっては、作業者の操縦負担の軽減を図るために、前輪を自動操舵して予め定めた走行目標経路に沿って走行させる自動操舵装置を設けることは有用である。また、このような自動操舵装置を設けるうえで走行目標経路に対する作業車両の実際の走行経路の偏差を極力少なくすることは、未作業領域や重複作業領域を減らすうえで最も重要な事項である。
そこで、この偏差を少なくするために特許文献1では、車体の検出位置が目標移動経路から横方向にずれており、且つ、検出方位が目標方位と同じであるときは、目標方位を目標移動経路側に傾斜した傾斜目標方位に変更して操向操作手段を操作する。そして、この場合にステアリング操作軸の回転量を操向角センサによって検出して左右の前輪が制御目標操向角になるようにフィードバック制御して操向制御することになる。
しかし、ステアリング操作軸の下端部にロータリエンコーダからなる操向角センサを設けると操向角センサが圃場面と近接して、この操向角センサに飛散した泥水等が付着して故障したり、障害物に操向角センサが当たって損傷する虞があり、このような虞を無くすために防塵や防水性、耐久性、或いは分解能を高く求めると操向角センサとして高価なセンサを用いなければならないという問題がある。
一方、特許文献2のように、操向輪の操向角度を検出するポテンショメータやロータリーエンコーダ等から構成する操向角度センサと操向機構とを連係機構によって連係し、この連係機構を操向機構より横方向に延出する連係ロッドと、その連係ロッドの作動を伝達する上下向き姿勢の回転連係軸で構成し、操向角度センサを連係機構の上端部より上方に位置させると、操向角度センサの最低地上高を下げ過ぎないようにしつつ、泥かぶりの少ない位置に配置することができる。
しかし、この連係機構は、その実施形態に示されるように操向部材からミッションケースの下方でその後方まで延出する連係ロッドとメインフレームに支持する上下向き姿勢の回転連係軸を備え、この連係ロッドの先端部と後端部を上下方向に折り曲げ、また、回転連係軸の下端部を水平方向に折り曲げ、そして、操向部材と連係ロッド並びに連係ロッドと回転連係軸をその先端部や後端部或いは下端部に係合させて操向部材と操向角度センサとを連係させる。
そのため、操向部材と連係ロッド並びに連係ロッドと回転連係軸の係合の際に互いの回動を許容する隙間を少なからず設けることになって、この隙間によって正確に操向部材の操向角度を検出することができない虞がある。また、ミッションケースに設ける操向部材に対して操向角度センサはメインフレームに設け、特に連係ロッドはミッションケースの後方まで延出する。
従って、操向部材と操向角度センサとを取付けるミッションケースとメインフレームの相違に基づく振動系や相対的な組付位置関係にバラツキを生じやすく、特にミッションケースの後方まで連係ロッドを延出するとそれらの影響も大きくなるから、制御目標操向角になるようにフィードバック制御して前輪を操向制御する際の、高い検出精度を必要とする検出構造としては信頼性に欠けるものとなる。
さらに、特許文献3のように、ステアリングシャフトに減速機構を設け、この減速機構を介して検出センサを高位置で作動させると、操向位置を検出する検出センサをシンプルな構成で容易に走行機体側へ設置できるとともに、設置した検出センサが圃場から飛散した泥水等の付着によって故障することを防止することができる。
しかし、特許文献3に係わらず特許文献1や特許文献2であっても同様であるが、前輪の操舵装置はそのステアリングシャフトをステアリングホイール(ハンドル)によって回転させて前輪を操舵するため操作力が重くなると操作し難くなる。そこで、ステアリングシャフトとピットマンアームとの間に減速装置を設け、このステアリングギヤ比を適切なものとして前輪操舵の必要なトルクを得ている。
そして、この減速装置に歯車式の減速装置を使用すると歯車のバックラッシュに基づき遊びが生じ、ステアリングシャフト自体に特許文献3のように検出センサのための減速機構を設けて、この減速機構を介して検出センサを作動させると、トルクを確保するための減速歯車装置の遊びによって前輪操舵にヒステリシスを生じ、検出センサによる前輪の操舵角度に誤差が生じて高い検出精度が得られなくなる問題がある。
そこで、本発明は係る問題点に鑑み、左右の前輪を操舵アクチュエータによって自動操舵する際に必要となる前輪の操舵角度を比較的安価なポテンショメータを用いて、高い検出精度と共に故障を防止しながら検出することができる、作業車両を提供することを課題とする。
本発明の作業車両は、前述の課題を解決するため、ステアリングホイールと操舵アクチュエータによって回動されるステアリングシャフトを、トランスミッションケース内に設ける減速歯車装置の入力軸に連結し、また、トランスミッションケースの下面から突出する減速歯車装置の出力軸にピットマンアームを取付け、このピットマンアームからドラッグリンクを介して左右の前輪を操舵するように構成すると共に、係るピットマンアームとトランスミッションケースの上方に設けるポテンショメータの作動軸をトランスミッションケースの下面と側面の外方を通して設けるリンク機構を介して連係し、以って、前輪の操舵角度をピットマンアームの左右回動によって作動されるポテンショメータによって検出して前輪の自動操舵制御に用いることを特徴とする。
また、本発明の作業車両は、前記左右の前輪のフロントアクスルケースをトランスミッションケースの側面にそれぞれ連結すると共に、前記ポテンショメータをトランスミッションケースの上方に取付けることを特徴とする。
さらに、本発明の作業車両は、前記リンク機構を、そのリンク結合部にボールジョイトを用いてトランスミッションケースの下部寄りの側部に設ける前後方向の第1支点軸と上部寄りの側部に設ける左右方向の第2支点軸によって左右方向から上下方向に変換される2組の4節リンクによって構成することを特徴とする。
そして、本発明の作業車両は、前記トランスミッションケースの左右方向の一側面に前方に設けるエンジンから伝動ベルトを介して駆動される静油圧式無段変速装置を設け、この静油圧式無段変速装置からトランスミッションケースに内装する変速装置を介して前輪と後輪を駆動する一方、前記ポテンショメータは静油圧式無段変速装置を設けるトランスミッションケースの他側の上方に設けて、前記伝動ベルト等とリンク機構との干渉を防止することを特徴とする。
そのうえ、本発明の作業車両は、前記ステアリングシャフトを内包するステアリングコラムの前方側をエンジンを覆うボンネットで塞ぐと共に、ステアリングコラムの上方側と左右側方側と後方側をモニタパネルを取付けるパネルカバーとパネルリヤカバーで塞ぎ、この周囲を塞いだトランスミッションケースの上方に、前記ポテンショメータを設けることを特徴とする。
本発明の作業車両によれば、ステアリングホイールと操舵アクチュエータによって回動されるステアリングシャフトを、トランスミッションケース内に設ける減速歯車装置の入力軸に連結し、また、トランスミッションケースの下面から突出する減速歯車装置の出力軸にピットマンアームを取付け、このピットマンアームからドラッグリンクを介して左右の前輪を操舵するように構成すると共に、係るピットマンアームとトランスミッションケースの上方に設けるポテンショメータの作動軸をトランスミッションケースの下面と側面の外方を通して設けるリンク機構を介して連係し、以って、前輪の操舵角度をピットマンアームの左右回動によって作動されるポテンショメータによって検出して前輪の自動操舵制御に用いる。
そのため、左右の前輪を操舵アクチュエータによって自動操舵する際に必要となる前輪の操舵角度を比較的安価なポテンショメータを用いて、高い検出精度と共に故障を防止しながら検出することができる。詰まり、前輪の操舵角度を検出するポテンショメータをトランスミッションケースの上方に設けることによって、ポテンショメータを圃場面から離して泥水等の付着を無くし、また、地上の障害物との当接を無くして損傷を防止することができる。
また、ポテンショメータ自体に高い防塵や防水性、或いは耐久性を求める必要がなくなるから、前輪の操舵角度を検出するセンサとして安価なポテンショメータを用いることができる。さらに、ピットマンアームとトランスミッションケースの上方に設けるポテンショメータの作動軸を、トランスミッションケースの下面と側面の外方を通して設けるリンク機構を介して連係し、前輪の操舵角度をピットマンアームの左右回動によって作動されるポテンショメータによって検出する。
そのため、前輪操舵の必要なトルクを確保するためにステアリングホイールと操舵アクチュエータによって回動されるステアリングシャフトとピットマンアームとの間に減速歯車装置を設け、この減速歯車装置の遊びによって前輪操舵にヒステリシスが生じた場合であっても、その下流側の前輪を直に操舵するピットマンアームの左右回動をリンク機構を介してポテンショメータによって検出することができ、前輪の操舵角度を誤差無く検出することができて、操舵アクチュエータによって前輪を自動操舵制御する際の安定性を向上させることができる。
また、本発明の作業車両によれば、前記左右の前輪のフロントアクスルケースをトランスミッションケースの側面にそれぞれ連結すると共に、前記ポテンショメータをトランスミッションケースの上方に取付ける。
そのため、左右の前輪のフロントアクスルケースとトランスミッションケースとを一体的に連結して、トランスミッションケースの下面に設けるピットマンアームによって各フロントアクスルケースに設ける左右の前輪を精度よく操舵することができる。また、ポテンショメータをトランスミッションケースの上方に取付けることによって、トランスミッションケースを母体とする共通する振動系のもとにピットマンアームとポテンショメータの組付精度を確保して信頼性を備えた前輪の操舵角度検出装置を構成することができる。
さらに、本発明の作業車両によれば、前記リンク機構を、そのリンク結合部にボールジョイトを用いてトランスミッションケースの下部寄りの側部に設ける前後方向の第1支点軸と上部寄りの側部に設ける左右方向の第2支点軸によって左右方向から上下方向に変換される2組の4節リンクによって構成する。
そのため、2組の4節リンクを用いることによってピットマンアームの左右回動をトランスミッションケースの上方に設けるポテンショメータの作動軸に、その左右方向から上下方向に最短距離をもって無理なく変換しながら、尚且つリンク結合部に隙間の生じないボールジョイトを用いて円滑に連係することができ、前輪の操舵角度を一層高い検出精度をもって誤差無く検出することができる。
そして、本発明の作業車両によれば、前記トランスミッションケースの左右方向の一側面に前方に設けるエンジンから伝動ベルトを介して駆動される静油圧式無段変速装置を設け、この静油圧式無段変速装置からトランスミッションケースに内装する変速装置を介して前輪と後輪を駆動する一方、前記ポテンショメータは静油圧式無段変速装置を設けるトランスミッションケースの他側の上方に設けて、前記伝動ベルト等とリンク機構との干渉を防止するから、伝動ベルト等に干渉されずにトランスミッションケースの他側からリンク機構の組付や調整作業を容易に行うことができる。
そのうえ、本発明の作業車両によれば、前記ステアリングシャフトを内包するステアリングコラムの前方側をエンジンを覆うボンネットで塞ぐと共に、ステアリングコラムの上方側と左右側方側と後方側をモニタパネルを取付けるパネルカバーとパネルリヤカバーで塞ぎ、この周囲を塞いだトランスミッションケースの上方に、前記ポテンショメータを設けるから、ポテンショメータを元々備える周囲の構成物で囲まれ、且つカバーで覆われた位置に設置して泥水等の付着や障害物との当接を無くして損傷を防止することができる。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように農業用の作業車両を構成する乗用型田植機1は、左右の前輪2と後輪3を備える走行機体4の後部に昇降リンク機構5を介して作業機としての植付装置6をローリング自在に連結する。そして、この植付装置6は、走行機体4の後部と昇降リンク機構5の後部に亘って取付ける油圧シリンダ7によって下降させた作業姿勢と上昇させた非作業姿勢に亘って昇降自在に設ける。
なお、後輪3と植付装置6との間には、走行機体4の旋回によって荒れた枕地を均す整地ロータ8を設け、この整地ロータ8は植付装置6と共に昇降するように設ける。一方、走行機体4は、左右のサイドメンバーに複数のクロスメンバーを固着して構成するシャーシフレーム9に、左右のフロントアクスルケース10をその側面にそれぞれ一体に連結するトランスミッションケース11と左右のリヤアクスルケース12等を取付けて一体的に構成する。
また、シャーシフレーム9の前部寄りにエンジンフレームを取付け、このエンジンフレームにエンジン13を搭載する。さらに、エンジン13後方のシャ-シフレーム9に取付けるトランスミッションケース11は、その上面にパワーステアリング装置を構成するトルクジェネレータ14を取付ける。そして、このトルクジェネレータ14には、上方に延出するステアリングシャフト15とこのステアリングシャフト15を内包するステアリングコラム16を立設してトランスミッションケース11に取付ける。また、ステアリングシャフト15の上端部には前輪2を操舵するステアリングホイール17と操舵アクチュエータ18を取付ける。
さらに、トルクジェネレータ14の出力シャフトはトランスミッションケース11内に設ける減速歯車装置19に連結し、また、この減速歯車装置19のセクタシャフト20の下端はトランスミッションケース11の下面から下方に突出し、係るセクタシャフト20の下端部にピットマンアーム21を取付ける。また、ピットマンアーム21に取付ける左右のドラッグリンク22は、フロントアクスルケース10の両端部に設けるキングピンケース23を介して左右の前輪2を操舵する。
一方、前記ステアリングコラム16の中途部にブラケット24を固着し、このブラケット24の左右に主変速レバー25、副変速レバー26、及びエンジンコントロールレバー27を回動自在に取付け、これ等の基部側を覆うと共に操作スイッチやモニタパネルを備えるパネルカバー28を設ける。また、パネルカバー28の下方側には、スタータスイッチ等を取付けるリヤカバー29を設け、パネルカバー28とリヤカバー29の前方側には、前照灯を備えてエンジン13の後方側と下方側を除いてこれを覆うボンネット30を設ける。
さらに、前記シャーシフレーム9には、合成樹脂製のフロントステップ31とリヤステップ32を設ける。この内、フロントステップ31は、ボンネット30の左右側方となる左右のフロントステップ部31aと、これに続いてリヤカバー29の後方となるフロアステップ部31bを備える。一方、リヤステップ32は、フロアステップ部31bの後部寄りから階段状に立ち上がり、シャーシフレーム9の後部に設けるシートフレームに取付ける。
そして、このリヤステップ32は、その上部中央に運転席33を設け、また、運転席33の左右にはリヤサイドステップ部32aを設ける。なお、フロアステップ部31bの前部中央寄りには株間調節レバーを通す開口を、また、前部右寄りにはブレーキぺダル34を通す開口を設ける。なお、35はフロアステップ部31bの左右に設ける延長ステップであって、この右延長ステップ35と右リヤサイドステップ部32aの下方にはエンジン13の燃料タンクを設ける。
ここで、乗用型田植機1の動力伝達系について簡単に説明すると、図4に示すようにエンジン13は伝動ベルトVを介してトランスミッションケース11の左側面に取付けるHST(静油圧式無段変速装置:主変速装置)36を駆動する。また、HST36からトランスミッションケース11内に伝達された動力は、トランスミッションケース11内に設ける歯車変速装置によって構成する副変速装置37、及び前輪2の差動歯車装置38を経由して、左右のフロントアクスルケース10及びキングピンケース23内に設ける伝動軸を介して左右の前輪2を駆動する。さらに、副変速装置37からリヤアクスルケース12内に設ける左右の湿式ディスク型のサイドクラッチ39を介して後輪3を駆動する。
なお、副変速装置37から左右のサイドクラッチ39に動力を伝達する伝動軸にはディスクブレーキ40を設け、前述のブレーキぺダル34を踏み込むと主変速レバー25は中立位置に戻ってHST36は中立となり、また、ディスクブレーキ40が作動して前輪2と後輪3に四輪ブレーキがかかる。さらに、ピットマンアーム21と左右のサイドクラッチ39はロッドによって連結し、田植機1を枕地で旋回させる際にステアリングホイール17を所定量以上回転させると旋回内側となるサイドクラッチ39が切られて、その側の後輪3は自由回転状態になる。
また、植付装置6への伝動は、トランスミッションケース11内に設けるトルクリミッタ41と植付クラッチ42を介して株間変速装置43を駆動する。そして、株間変速装置43からドライブシャフト44を介して植付装置6のドライブケース45に設ける植付入力シャフト46を駆動する。なお、整地ロータ8は走行系のディスクブレーキ40と左右のサイドクラッチ39の間から分岐した動力をロータクラッチ47とロータドライブシャフト48を介してロータドライブケース49内に設ける伝動軸によって駆動する。
ここで、植付装置6の構造について簡単に説明すると、この植付装置6は8条植えとなして走行機体4の後部にローリング自在に連結する植付フレームを備える。また、植付フレームには前高後低状に傾斜して複数のマット苗を載置する苗載台50、苗載台50の下端から1株分ずつ苗を植付爪51により掻き取って田面に植付けるロータリ植付機構52、走行跡や旋回跡を整地しながら植付け箇所を均すフロート53等を備えて構成する。
そして、前述のドライブケース45に入った動力によってスクリュシャフト54を回転させて苗載台50を左右往復スライド移動させる。また、ドライブケース45に入った動力によってロータリ植付機構52を構成するプランタケース55に動力を伝達し、ロータリケース56を回転駆動する。また、ロータリケース56に取付けたプランタアーム57に装着した植付爪51が苗載台50の下端から1株分ずつ苗を掻き取ると共に、掻き取った苗をフォークで押出して苗を田面に植付ける。
なお、次行程における作業走行の目印を田面に付ける左右のマーカー58は、前輪2の上方のシャーシフレーム9に設ける。このマーカー58はその基部を回動自在に支持する支持杆59の先端部に回転自在に取付け、マーカー駆動モータ60が支持杆59を作動させることによってマーカー58は、田面に接地してマーキングする作用位置とシャーシフレーム9の上方に退避した非作用位置に切換えることができる。また、シャーシフレーム9の前部にはセンターポール61を前後方向に回動自在に設け、シャーシフレーム9の左右にはトレースマーカー62を設ける。
さらに、乗用型田植機1は、植付装置6によって苗を植付けると同時に土中に肥料を撒くペースト施肥機を設ける。このペースト施肥機は左右前輪2の上方となるシャーシフレーム9に取付フレーム63を介して取付ける左右の肥料タンク64を備える。また、この肥料タンク64に貯留する肥料をホースで施肥ポンプに供給し、施肥ポンプは中途に設けるストップバルブやインジケータを経由して植付装置6のフロート53近傍に取付ける各条毎のノズルに肥料を圧送し、植付けた苗の側方の土中に肥料を吐出する。
なお、乗用型田植機1は、ペースト施肥機に替えて粒状施肥機を設けることができる。その場合、粒状施肥機はリヤサイドステップ部32aの後部に取付フレームを設け、この取付フレームに粒状肥料を貯留するホッパと肥料の繰出装置と繰出装置の目皿ロールから繰出した肥料をエアーで圧送するブロアを設ける。そして、エアと共に圧送した肥料は各条毎にホースを介してホース端末に設ける作溝仕組に搬送し、それによって肥料を植付装置6で植付けた苗の側方の土中に撒くことができる。
一方、乗用型田植機1は、予備苗台やスライド式予備苗台を設ける。そして、実施形態に示す予備苗台65は左右前輪2の上方となるシャーシフレーム9に門型の取付フレーム66を取付け、この取付フレーム66に片側4枚合わせて8枚の載置板67を上方に向けて折り畳み自在に設ける。なお、この8枚の載置板67には苗箱に収容するマット苗を各1枚ずつ載せて植付作業を開始し、その後、苗載台50に供給したマット苗が植付けられて残り僅かになった際に載置板67上のマット苗を取出して苗載台50に補充して植付作業を再開する。
以上、乗用型田植機1の概要について説明したが、次に、GNSS(全地球測位システム)を用いて乗用型田植機1の圃場(水田)における位置並びに方位情報を取得し、これによって植付作業を行う場合の直進走行を前輪2の自動操舵制御によって行う自動操舵装置について説明する。
上記自動操舵装置は、図3の配置構造に示すように2つのGNSSアンテナ68、69を予備苗台65の門型の取付フレーム66の上部に位置並びに方位を検出するために左右方向に離して設ける。また、2つのGNSSアンテナ68、69の間に近距離無線通信用のアンテナ70を設け、これ等のアンテナ68、69、70を接続するGNSSコントローラ71を下方に設ける。さらに、取付フレーム66の例えば左側中途部にブラケット72を取付け、このブラケット72に近距離無線通信を備えると共にガイダンスソフトウェアをインストールしたタブレットパソコン73を取付ける。
また、ステアリングシャフト15に設ける操舵アクチュエータ18に操舵コントローラ(モータコントローラ)74を付設する(図5参照)。さらに、左右の前輪2の操舵角度を検出するポテンテョメータ75をトランスミッションケース11の上方に設ける。なお、必要に応じてGNSSアンテナとGNSS受信機と近距離無線通信機を備えた可搬型のRTK(Real Time Kinematic )基地局76を用意する。
そして、これ等の機器は図6のブロック図に示すように、GNSSコントローラ71を構成するGNSSユニット(Electronic Control Unit)77と、操舵コントローラ74を構成する操舵制御ユニット(Electronic Control Unit)78をCAN(Controller Area Network)で結ぶ。また、GNSSユニット77とタブレットパソコン73を近距離無線通信によって相互に受発信可能に結ぶ。さらに、タブレットパソコン73とGNSSユニット77をRTK基地局76に近距離無線通信によって相互に受発信可能に結ぶ。
また、GNSSコントローラ71は補完用の加速度センサ79とジャイロセンサ80と地磁気センサ81を備え、これ等のセンサと2つのGNSSアンテナ(基準アンテナ、方位アンテナ)68、69と近距離無線通信用のアンテナ70をGNSSユニット77に接続する。一方、操舵コントローラ74は、そのパネル部に電源・リセット・開始/停止・A点決定・B点決定・自動検出・感度調整の各押しボタン式のスイッチ82~88と検出ランプ89を備える。
さらに、操舵コントローラ74の上記スイッチ82~88とポテンショメータ(操舵角センサ)75は、操舵制御ユニット78の入力回路に接続し、操舵制御ユニット78の出力回路には、操舵コントローラ74の検出ランプ89とステッピングモータによって構成する操舵アクチュエータ18を接続する。
そして、以上のように自動操舵装置を備える乗用型田植機1は、植付作業を行う場合に先ず手動操舵によるティーチング走行を行い、これによってGNSSコントローラ71はRTK基地局76の補正情報の下にGNSSから得られる位置情報に基づいて基準線を作成し、また、乗用型田植機1の作業幅(条間×8条)に基づいて基準線から作業幅ずつオフセットさせた走行目標経路(作業経路)を作成する。
さらに、ティーチング走行を終えて乗用型田植機1を植付作業の開始位置に移動させて、GNSSコントローラ71に直進制御の開始を指令すると、GNSSコントローラ71は自動操舵制御(直進操舵制御)を開始する。また、枕地に至って直進制御の停止を指令すると、GNSSコントローラ71は自動操舵制御を停止する。そして、次行程以降もこの開始と停止の繰り返しによって直進操舵制御のもとに植付作業を行うことができる。
なお、GNSSコントローラ71は自動操舵制御を開始すると、乗用型田植機1の走行目標経路に対する左右方向の位置ずれ(偏差)と乗用型田植機1の走行目標経路に対する方位ずれ(偏差)を求め、この2つの偏差が共に無くなるようにPI制御又はPID制御を用いて目標操舵角を設定(演算)する。そして、目標操舵角が設定されると操舵コントローラ74は、前輪2の操舵角が与えられた目標操舵角に一致するように前輪2の操舵角を検出する操舵角センサ75を用いてPI制御又はPID制御を用いて前輪2の操舵制御を行う。
そして、このフィードバック制御において操舵コントローラ74は、図5に示すように操舵アクチュエータ18を正逆回転させ、操舵アクチュエータ18は外歯車の2段歯車機構によって構成する減速歯車装置を作動させて大径の最終歯車90を回転させる。また、最終歯車90を取付けた中継シャフト91の下部はステアリングシャフト15の上端部に嵌り、両者は互いのテーパとセレーションによって結合するからステアリングシャフト15は回転する。
さらに、ステアリングシャフト15が回転すると、トルクジェネレータ14は油圧によって操作力を補助する。また、トルクジェネレータ14の下流側に設ける減速歯車装置19は操舵トルクを高めてピットマンアーム21を回動させ、さらに、ピットマンアーム21は左右のドラッグリンク22を介して左右の前輪2を操舵する。
一方、操舵された前輪2の操舵角度は操舵角センサ75によって検出し、操舵コントローラ74はこの得られた前輪2の操舵角度が目標操舵角に一致すると操舵アクチュエータ18の正逆回転を停止させ、これによってGNSSコントローラ71と操舵コントローラ74は、協働して乗用型田植機1を走行目標経路に倣って直進走行するように自動制御する。
次に、前述の自動操舵装置が乗用型田植機1を走行目標経路に倣って直進走行するように自動制御する際に用いる前輪2の操舵角度検出装置について説明すると、図7に示すように左右の前輪2を操舵するピットマンアーム21とトランスミッションケース11の上方に設けるポテンショメータ75の作動軸75aを、トランスミッションケース11の下面と右側面の外方を通して設けるリンク機構Lを介して連係し、以って前輪2の操舵角度をピットマンアーム21の左右回動によって作動されるポテンショメータ75によって検出する。
そのため、前輪2の操舵角度を検出するポテンショメータ75をトランスミッションケース11の上方に設けることによって、ポテンショメータ75を圃場面から離して泥水等の付着を無くし、また、地上の障害物との当接を無くして損傷を防止する。そして、これによってポテンショメータ75自体に高い防塵や防水性、或いは耐久性を求める必要がなくなるから、前輪2の操舵角度を検出するセンサとして安価なポテンショメータ75を用いることができる。
また、前輪2の操舵に必要なトルクを確保するためにステアリングホイール17と操舵アクチュエータ18によって回動されるステアリングシャフト15とピットマンアーム21との間に減速歯車装置19を設け(図11参照)、この減速歯車装置19の遊びによって前輪操舵にヒステリシスが生じた場合であっても、その下流側の前輪2を直に操舵するピットマンアーム21の左右回動をリンク機構Lを介してポテンショメータ75によって検出することによって、前輪2の操舵角度を誤差無く検出して、操舵アクチュエータ18によって前輪2を自動操舵制御する際の安定性を向上させることができる。
さらに、ステアリングシャフト15を内包するステアリングコラム16は図10に示すように、その右側をトランスミッションケース11に取付プレート92、93を介して取付ける。また、この取付プレート92、93の内、上方側の取付プレート93の内側にL型の金具94を設け、ポテンショメータ75をこの金具94を介してトランスミッションケース11の上方に取付ける。そして、ステアリングコラム16の前方側はエンジン13を覆うボンネット30で塞ぐ(図7参照)。
また、ステアリングコラム16の上方側はモニタパネルを取付けるパネルカバー28で、また、その左右側方側と後方側をパネルリヤカバー29で塞ぎ、この周囲を塞いだトランスミッションケース11の上方にポテンショメータ75を設けることによって、ポテンショメータ75を元々備える周囲の構成物で囲んで、且つカバーで覆った状態で配置して泥水等の付着や障害物との当接を無くして損傷を防止することができる。
なお、左右の前輪2のフロントアクスルケース10とトランスミッションケース11とを一体的に連結して、トランスミッションケース11の下面に設けるピットマンアーム21によって各フロントアクスルケース10に設ける左右の前輪2をドラッグリンク22を介して精度よく操舵することができる。また、ポテンショメータ75をトランスミッションケース11の上方に取付けることによって、トランスミッションケース11を母体とする共通する振動系のもとにピットマンアーム21とポテンショメータ75の組付精度を確保して信頼性を備えた前輪2の操舵角度検出装置を構成することができる。
そして、ピットマンアーム21とトランスミッションケース11の上方に設けるポテンショメータ75の作動軸75aを連係するリンク機構Lは、図8乃至図11に示すように3次元的に作動する2組の4節リンクを組み合わせて構成し、そのリンク結合部には任意の方向に回転可能な継手としてのボールジョイトBjを用いる。また、トランスミッションケース11の下部寄りの右側部に取付けるブラケット95に前後方向となる第1支点軸96を設け、この第1支点軸96によって左右方向に作動する第1の4節リンクと上下方向に作動する第2の4節リンクの作動方向を変換する。
詰まり、セクタシャフト20によって回動するピットマンアーム21の後部寄りに一端をボールジョイトBjを用いて連結する第1ロッド(中間リンク)97の他端は第1支点軸96に回動自在に軸支する第1の従動リンク98の先端部にボールジョイトBjを用いて連結する。また、第1支点軸96に回動自在に軸支する第2の原動リンク99は第1の従動リンク98と一体に形成し、第1従動リンク98の作動によって第2の原動リンク99を駆動する。
さらに、トランスミッションケース11の上部寄りの右側部に設ける取付プレート93の内側に左右方向となる第2支点軸100を設け、この第2支点軸100に回動自在に軸支する第2の従動リンク101と第2の原動リンク99を両端にボールジョイトBjを設ける第2ロッド102で連結する。また、第2の従動リンク101からピン103を左右方向に突出させ、このピン103を金具94に取付けるポテンショメータ75の作動軸75aに取付けたアーム104に当接するように臨ませる。
従って、ピットマンアーム21が回動すると第1の4節リンクが左右方向に作動し、また、第1の4節リンクの作動によって第2の4節リンクが上下方向に作動して、第2の従動リンク101のピン103も略上下方向に回動し、ここでポテンショメータ75はリターンスプリングを内装するポテンショメータを用いるからポテンショメータ75のアーム104は常にピン103に片当たりして、ポテンショメータ75の作動軸75aを回転させる。
そして、ポテンショメータ75の作動軸75aを回転させると、左右の前輪2をステアリングホイール17や操舵アクチュエータ18によって直進状態となる切れ角0度から左右の最大切れ角、例えば50度まで操舵する場合に、ポテンショメータ75は中央値から最大値又は最低値に至る電圧を出力し、操舵コントローラ74はこの出力をA/D変換してデジタル信号として前輪2の操舵角度を取得することができる。
そのため、前記リンク機構Lは2組の4節リンクを用いることによってピットマンアーム21の左右となる回動をトランスミッションケース11の上方に設けるポテンショメータ75の作動軸75aに、その左右方向から上下方向に最短距離をもって無理なく変換しながら、尚且つリンク結合部に隙間の生じないボールジョイトBjを用いて円滑に連係することができ、前輪2の操舵角度を一層高い検出精度をもって誤差無く検出することができる。
なお、前述のように乗用型田植機1は、トランスミッションケース11の左側面に前方に設けるエンジン13から伝動ベルトVを介して駆動される静油圧式無段変速装置36を設け、この静油圧式無段変速装置36からトランスミッションケース11に内装する変速装置37を介して前輪2と後輪3を駆動する。
そこで、前記リンク機構Lは、トランスミッションケース11の下方から右側に向けて4節リンクを設け、上記伝動ベルトV等とリンク機構Lとの干渉を防止する。そのため、伝動ベルトV等に干渉されずにトランスミッションケース11の右側からリンク機構Lの組付や調整作業を容易に行うことができ、また、静油圧式無段変速装置36の伝動ベルトVの脱着作業にあってもリンク機構Lが邪魔になることを防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述のステアリングシャフト15の下端部をトランスミッションケース11内に設ける減速歯車装置19に直接的に連結すれば、ステアリング操作力は重くなるがパワーステアリング装置を構成するトルクジェネレータ14を省くことができる。また、ポテンショメータ75は、例えばシャーシフレーム9より上方となるトランスミッションケース11の上部寄りに設けてもよく、必ずしもトランスミッションケース11の真上に設けなくても構わない。
さらに、乗用型田植機1に前述の自動操舵装置を備えない場合は、前輪2の操舵角度検出装置を、その前輪2の操舵角度の検出に基づいて走行機体4の旋回の判断に用い、例えば、旋回の開始時に植付クラッチ42を切って植付装置6を上昇させ、また、旋回をし終わると植付装置6を下降させて植付クラッチ42を入りとする植付自動制御等の他の自動制御において使用することができ、必ずしも実施形態に示す自動操舵制御に用いる場合にのみ限定するものではない。