以下に、本発明に係る作業車両の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る苗移植機の側面図である。図2は、図1に示す苗移植機の平面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、苗移植機の操縦座席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。作業車両の一例である本実施形態に係る苗移植機1は、作業者が搭乗することのできる走行車体2を備えている。この走行車体2は、左右一対の前輪4と、同様に左右一対の後輪5とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。これにより、走行車体2は、圃場や道路を走行することが可能になっている。また、走行車体2の後部には、圃場で作業を行う作業装置として設けられ、苗植付部昇降機構40によって昇降可能な苗植付部50が配設されている。
この走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の動力を駆動輪と苗植付部50とに伝える動力伝達装置15と、を備えている。このエンジン10や動力伝達装置15は、圃場や道路を走行するための装置である走行装置8を構成している。また、本実施形態に係るこの苗移植機1では、動力源であるエンジン10で発生した動力は、走行車体2を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部50を駆動させるためにも使用され、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
また、エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置されている。また、フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間に渡って設けられてメインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場に落とせるようになっている。また、このフロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられている。このリアステップ27は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン10の左右それぞれの側方に配置されている。
エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設されている。即ち、エンジンカバー11は、フロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出した状態で、エンジン10を覆っている。
また、走行車体2には、エンジンカバー11の上部に、作業者が着席する操縦座席28が設置されており、操縦座席28の前方で、且つ、走行車体2の前側中央部には、操縦部30が配設されている。この操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。また、操縦座席28には、作業者の着座を検知する着座検知部材である感圧センサ130(図7参照)が設けられている。この感圧センサ130は、圧力センサによって構成されると共に、操縦座席28の座面内に配設されており、作業者の着座した際における圧力を検知することにより、作業者の着座を検知することが可能になっている。
操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられている。また、操縦部30の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル32が配設されている。このハンドル32は、作業者が前輪4を操舵操作することにより走行車体2を操舵操作する操舵部材として設けられており、操縦部30内の操作装置等を介して前輪4を転舵させることが可能になっている。また、操作レバーとしては、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作する変速操作部材である変速レバー35と、走行車体2の走行速度を、走行する場所に応じた速度に切り替える副走行操作部材である副変速レバー38とが、機体右側と左側に配設されている。
また、フロアステップ26における操縦部30の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗を載せておく予備苗載台65が配置されている。この予備苗載台65は、フロアステップ26の床面から突出した支持軸(鉛直軸)によって回転自在に支持されており、作業者の手、または電動モータ等の回動部材によって回動させることが可能になっている。
また、動力伝達装置15は、エンジン10から伝達される駆動力を変速する変速装置である油圧式無段変速機16と、この油圧式無段変速機16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17と、を有している。このうち、油圧式無段変速機16とは、HST(Hydro Static Transmission)と云われる静油圧式の無段変速装置として構成されている。このため、油圧式無段変速機16は、エンジン10からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。これにより、油圧式無段変速機16は、エンジン10で発生する動力を、走行車体2を走行させる力に変換する。
その際に、油圧式無段変速機16は、回転力の方向や回転速度を変更することにより、走行車体2の前後進及び走行速度を変更することが可能になっており、変速レバー35は、この油圧式無段変速機16の出力及び出力方向を変更することによって、走行車体2の前後進及び走行速度を操作することが可能になっている。
この油圧式無段変速機16は、エンジン10よりも前方で、且つ、フロアステップ26の床面よりも下方に配置されており、本実施形態に係る苗移植機1では、走行車体2の上面から見て、エンジン10の前方に配置されている。
また、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸に取り付けたプーリと、油圧式無段変速機16の入力軸に取り付けたプーリと、双方のプーリに巻き掛けたベルトと、さらに、このベルトの張力を調整するテンションプーリと、を備えている。これにより、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機16に伝達可能になっている。
さらに、動力伝達装置15は、ベルト式動力伝達機構17を介して油圧式無段変速機16に伝達され、油圧式無段変速機16で変速したエンジン10からの駆動力を各部に伝達する伝動装置であるミッションケース18を有している。このミッションケース18は、路上走行時や植付時等における走行車体2の作業速度を切り替える副変速機構(図示省略)を内設しており、メインフレーム7の前部に取り付けられている。副変速レバー38は、ミッションケース18内の副変速機構を操作することにより、走行車体2の走行速度を切り替えることが可能になっている。ミッションケース18は、ベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されたエンジン10からの出力を、当該ミッションケース18内の副変速機構で変速して、前輪4と後輪5への走行用動力と、苗植付部50への駆動用動力とに分けて出力可能になっている。
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース21を介して前輪4に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケース22を介して後輪5に伝達可能になっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース21は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設されており、左右の前輪4は、車軸を介して左右の前輪ファイナルケース21に連結されている。また、この前輪ファイナルケース21は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース22には、車軸を介して後輪5が連結されている。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部50へ伝達される。
また、走行車体2の後部には、苗植付部50を昇降させる昇降リンク機構である苗植付部昇降機構40が配設されている。苗植付部昇降機構40は、昇降リンク装置41を有しており、苗植付部50は、この昇降リンク装置41を介して走行車体2に取り付けられている。この昇降リンク装置41は、走行車体2の後部と苗植付部50とを連結させる平行リンク機構42を備えている。この平行リンク機構42は、上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム43に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部50に回転自在に連結されることにより、苗植付部50を昇降可能に走行車体2に連結している。
また、苗植付部昇降機構40は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ44を有しており、油圧昇降シリンダ44の伸縮動作によって、苗植付部50を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構40は、その昇降動作によって、苗植付部50を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
また、苗植付部50は、苗を植え付ける範囲を複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができ、本実施形態に係る苗移植機1では、苗を6つの区画で植え付ける、いわゆる6条植の苗植付部50になっている。この苗植付部50は、苗植付装置60と、苗載置台51及びフロート47を備えている。このうち、苗載置台51は、走行車体2の後部に複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面52を有し、それぞれの苗載せ面52に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。これにより、苗載置台51に載置した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
また、苗植付装置60は、苗載置台51の下部に配設されており、苗載置台51の前面側に配設される苗植付部50のフレームである植付支持フレーム55によって支持されている。この苗植付装置60は、苗載置台51に載置された苗を苗載置台51から取って圃場に植え付ける装置になっており、植付伝動ケース64と植付体61とを有している。このうち、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場に植え付けることができるように構成されており、植付伝動ケース64は、植付体61に駆動力を供給することが可能になっている。
詳しくは、植付伝動ケース64は、エンジン10から苗植付部50に伝達された動力を、植付体61に供給可能に構成されており、植付体61は、植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されている。また、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場に植え付ける植込杆62と、植込杆62を回転可能に支持すると共に植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されるロータリケース63と、を有している。ロータリケース63は、植付伝動ケース64から伝達された駆動力によって植込杆62を回転させる際に、回転速度を変化させながら回転させることのできる不等速伝動機構(図示省略)を内装している。これにより、植付体61の回転時には、植込杆62は、ロータリケース63に対する回転角度によって回転速度が変化しながら回転をすることができる。
このように構成される苗植付装置60は、2条毎に1つずつ配設されており、即ち、複数の苗植付装置60は、それぞれ植付条が割り当てられている。また、各植付伝動ケース64は、2条分の植付体61を回転可能に備えており、つまり、1つの植付伝動ケース64には、2つのロータリケース63が、機体左右方向の両側に連結されている。本実施形態に係る苗移植機1が有する苗植付装置60は、この植付伝動ケース64を3つ備えており、これにより、6条分の植付体61を備えている。
また、フロート47は、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体2の左右方向における苗植付部50の中央に位置するセンターフロート48と、左右方向における苗植付部50の両側に位置するサイドフロート49と、を有している。
また、苗植付部50の下方側の位置における前側には、圃場の整地を行う整地用ロータ67が設けられている。この整地用ロータ67は、後輪ギヤケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって回転可能に構成されている。
また、苗植付部50の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ68が備えられている。即ち、線引きマーカ68は、苗移植機1が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ68は、マーカモータ69(図7参照)によって作動し、走行車体2が旋回するごとに、左右の線引きマーカ68が入れ替わって作動することができるように構成されている。この左右の線引きマーカ68の入れ替えは、マーカモータ69が接続されるコントローラ150(図7参照)によって行う。即ち、コントローラ150は、走行車体2の旋回時に、左右の線引きマーカ68を交互に作動状態と非作動状態とに切り替えるマーカ切替装置としても設けられている。なお、左右の線引きマーカ68の線引き作用部は、図1及び図2に示す通り、円盤の外周部に複数の突起体を設け、回転自在にロッド部に装着したものとすると、圃場面との接地抵抗により確実に圃場面に線を形成することができ、次の植付作業位置での直進作業が行い易くなり、作業能率が向上する。
また、走行車体2における操縦座席28の後方には、施肥装置70が搭載されている。この施肥装置70は、肥料を貯留する貯留ホッパ71と、貯留ホッパ71から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置72と、繰出し装置72により繰り出される肥料を圃場に供給する施肥通路である施肥ホース74と、施肥ホース74に搬送風を供給することにより、施肥ホース74内の肥料を苗植付部50側に移送する起風装置であるブロア73と、を有している。さらに、施肥装置70は、苗植付部50の下方に配設されると共に、施肥ホース74によって肥料が移送される施肥ガイド75と、施肥ガイド75の前側に設けられると共に、施肥ホース74によって移送された肥料を、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器76と、を有している。
また、本実施形態に係る苗移植機1は、苗植付部50を、機体前後方向の軸を中心に回動させるローリング機構80を備えている。図3は、図1のA−A断面図である。図4は、図3のB詳細図である。図5は、図4のC−C断面図である。ローリング機構80は、植付支持フレーム55に配設されるローリングフレームである縦枠82と、ローリングアクチュエータである電動モータ84と、を有している。詳しくは、植付支持フレーム55は、機体左右方向における両側にそれぞれ位置して機体上下方向に延びる左右支持部材56を有して構成されており、縦枠82は、この左右支持部材56同士の間で、且つ、機体の左右方向における中心付近の位置に、機体上下方向に延びて配設されている。
この縦枠82は、機体前後方向の軸に延び、苗植付部50を機体左右方向に搖動自在に支持する軸であるローリング軸81に、下端側が連結されている。また、縦枠82の上部には、支持板83が溶接固定されており、電動モータ84は、支持板83にボルトによって取り付けられている。この電動モータ84の回転駆動軸85には、小径の駆動歯車86が正逆回転駆動されるように装着されている。
また、支持板83には、大径の従動歯車88が回動軸87を中心として回動自在に設けられており、電動モータ84の回転駆動軸85に取り付けられた駆動歯車86に噛み合っている。これにより、従動歯車88は、電動モータ84の回転駆動を減速して回転する構成となっている。また、従動歯車88には、ローリング駆動ピン90の基端部が溶接固定されており、その先端部は、支持板83に枢支軸91を中心として回動自在に設けられた回動アーム95の長孔96に嵌合している。
この回動アーム95の揺動先端部には、機体左右方向における支持板83の左右両側に配設される左右引張バネ100のそれぞれの一端、即ち、左右引張バネ100における、機体左右方向内側に位置するそれぞれの端部が係合している。また、左右の左右引張バネ100の他端、即ち、左右引張バネ100における、機体左右方向外側に位置するそれぞれの端部は、植付支持フレーム55の左右支持部材56に係合している。このため、電動モータ84の回転駆動軸85の正逆転によって、回動アーム95がL−R方向に揺動し、左右引張バネ100を介して、苗植付部50を、走行車体2に対してローリング動作させることが可能になっており、即ち、ローリング軸81を中心に、苗植付部50を回動させることが可能になっている。
また、苗植付部50は、苗の植え付け作業時には、苗載置台51が左右に往復移動しながら植え付け動作を行う。このため、苗載置台51が中央部に位置する時と右端に位置する時と左端に位置する時とでは、苗植付部50の重心が左右に大きく変動し、ローリング機構80による制御が適正に行ない難くなることがある。このため、ローリング機構80では、支持板83の先端部に、機体左右方向における支持板83の左右両側に配設される補正用左右引張バネ101のそれぞれの一端、即ち、補正用左右引張バネ101における、機体左右方向内側に位置するそれぞれの端部が、係合している。また、左右の補正用左右引張バネ101の他端、即ち、補正用左右引張バネ101における、機体左右方向外側に位置するそれぞれの端部は、苗植付部50の苗載置台51に係合している。これにより、苗載置台51が左端付近及び右端付近に移動しているときは苗載置台51の重みで、苗植付部50の苗載置台51が移動している側が下がりぎみになろうとするが、補正用左右引張バネ101は、苗載置台51が移動して下がりぎみになろうとする側を引き上げる方向に作用し、適正なローリング動作を行うことができる。
また、ローリング機構80は、中央位置センサ106と、最大搖動位置センサ107と、を備えている。このうち、中央位置センサ106は、回動アーム95を左右中央位置で停止させるために、従動歯車88の位置を検出するためのセンサになっている。この中央位置センサ106による、回動アーム95が左右中央位置であるか否かの検出結果は、ローリング制御を停止する際等の各種制御に用いられる。また、最大搖動位置センサ107は、回動アーム95を左右最大揺動位置で停止させるために、従動歯車88の位置を検出するためのセンサになっている。この最大搖動位置センサ107が、回動アーム95が左右最大揺動位置であることを検出した時には、電動モータ84が停止し、それ以上左右方向にローリング動作が行われることが停止される。
また、本実施形態に係る苗移植機1は、GPS(Global Positioning System)によって苗移植機1の位置情報を取得するGPS制御装置120(図7参照)を備えており、走行車体2には、GPS制御装置120を構成する受信アンテナ121が配設されている。この受信アンテナ121は、所定の時間的な間隔でGPS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得する位置情報取得装置として設けられている。この受信アンテナ121は、2つの受信アンテナ121が走行車体2の左右両側に各々配置され、予備苗載台65を支持する支柱である予備苗載台支柱66に連結されるアンテナフレーム124に、それぞれ取り付けられている。
図6は、図1のD−D矢視図である。アンテナフレーム124は、下側が開放された向きの門型の形状で形成されており、門型の2箇所の下端部が、左右の予備苗載台支柱66に連結されている。つまり、アンテナフレーム124は、機体左右方向に延びるフレーム水平部125と、フレーム水平部125の両端から下方に延びる2箇所のフレーム垂直部126と、を有しており、フレーム垂直部126の下端が、予備苗載台支柱66に連結されている。フレーム垂直部126と予備苗載台支柱66とは、軸方向が機体前後方向に延びる回動部128によって連結されており、これにより、フレーム垂直部126は、回動部128を中心として機体左右方向に回動自在に、予備苗載台支柱66に連結されている。
また、2つの受信アンテナ121は、共にフレーム水平部125に取り付けられており、詳しくは、フレーム水平部125の長さ方向において互いに異なる端部近傍の位置で、フレーム水平部125の上面に取り付けられている。これにより、2つの受信アンテナ121は、機体左右方向における走行車体2の中心の左右両側にそれぞれ配設され、走行車体2の左右両側にそれぞれ配置されている。
さらに、左右のフレーム垂直部126には、フレーム垂直部126が延びる方向に伸縮自在な昇降シリンダ127がそれぞれ設けられている。この昇降シリンダ127は、油圧によって全長が伸縮可能になっており、これにより、フレーム垂直部126は、共に全長が伸縮することが可能になっている。フレーム垂直部126の全長が伸縮した際には、受信アンテナ121が取り付けられるフレーム水平部125の機体上下方向における位置も変更されるため、これらのアンテナフレーム124と昇降シリンダ127とは、受信アンテナ121の上下位置を変更する昇降機構123を構成している。
図7は、図1に示す苗移植機が有する装置の機能ブロック図である。本実施形態に係る苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、このため、苗移植機1には、各部を制御するコントローラ150が備えられている。このコントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらに入出力部が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。このコントローラ150は、モータ等のアクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続されている。
例えば、コントローラ150には、アクチュエータ類として、エンジン10の吸気量を調節するスロットル(図示省略)を作動させることにより、エンジン10の回転数を増減させるスロットルモータ12や、線引きマーカ68を作動させるマーカモータ69、ローリング機構80の電動モータ84、アンテナフレーム124に設けられる伸縮シリンダ127等が接続されている。
また、コントローラ150に接続されるセンサ類としては、後輪回転センサ23、作業クラッチセンサ58、中央位置センサ106、最大搖動位置センサ107、ジャイロセンサ115、傾斜センサ116、感圧センサ130が接続されている。このうち、後輪回転センサ23は、後輪5の回転速度を検知することにより、走行車体2の車速を検知する車速検知部材として設けられている。また、作業クラッチセンサ58は、苗植付部50に動力を伝達するクラッチ(図示省略)の接続状態を検知することにより、苗植付部50の作動を検知する作業検知部材として設けられている。また、ジャイロセンサ115は、走行車体2の進行方向の変化を検知する方向変化検知部材として設けられている。また、傾斜センサ116は、走行車体2の前後傾斜を検知する傾斜検知部材として設けられている。
また、苗移植機1は、自動操舵装置110と、GPS制御装置120と、情報記憶端末140と、離間検知部材135とを備えており、これらはコントローラ150に接続されている。このうち、自動操舵装置110は、ハンドル32を操作して、走行車体2を直進方向に維持することが可能になっている。このため、自動操舵装置110は、任意の回転力をハンドル32に付与することにより、ハンドル32を回転させる操舵モータ111と、ハンドル32に設けられて、操舵量及び操舵方向を検知する操舵検知部材であるハンドルポテンショメータ112と、を有している。これらの操舵モータ111やハンドルポテンショメータ112は、ハンドル32の回転軸に対して回転力を付与したり、ハンドル32の回転軸の回転角度を検知したりすることにより、ハンドル32を操作したり、回転角度を検知したりすることが可能になっている。
また、GPS制御装置120は、GPSを用いることにより地球上における苗移植機1の位置情報、或いは座標情報を取得することができ、GPS制御装置120で取得した位置情報は、コントローラ150に伝達可能になっている。GPS制御装置120は、このようにGPSを用いることにより苗移植機1の位置情報を取得するため、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信する受信アンテナ121を有している。
また、情報記憶端末140は、情報を表示する表示部と、各種の入力操作を行う入力操作部と、情報を記憶する記憶部と、を有している。このうち、表示部と入力操作部とは、別体で構成されていてもよく、タッチパネル式のディスプレイによって一体で構成されていてもよい。また、情報記憶端末140の記憶部は、一または複数の圃場の位置情報、及び圃場での以前の作業時における位置情報を記憶する。
また、離間検知部材135は、作業者と操縦座席28との離間を検知することが可能になっており、操縦座席28に配設される、操縦座席28側の受信部材136と、作業者が携帯する、作業者側の発信部材137と、を有している。これらの受信部材136と発信部材137とは、無線通信を行っており、発信部材137から発信した信号を受信部材136で受信することにより、離間検知部材135は、作業者と操縦座席28との離間を無線によって検知する。コントローラ150には、このように構成される離間検知部材135の受信部材136が接続されている。
本実施形態に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。苗移植機1の運転時は、エンジン10で発生する動力によって、走行車体2の走行と、苗載置台51に載せた苗の植付作業を行う。この植付作業は、回転軸が左右方向になる向きで、苗植付装置60の植付体61全体が回転しながら、植込杆62も回転することにより、苗載置台51に載せられた苗を順次植込杆62で取り、取った苗を徐々に圃場に植え付ける。その際に、苗載置台51を、苗載置台51に載置する1条分の機体左右方向の幅の範囲内で機体左右方向に往復移動させることにより、各苗植付装置60は、苗載置台51においてそれぞれの苗植付装置60に対応する部分から苗を取り出し、圃場に植え付ける。即ち、各苗植付装置60は、苗載置台51の所定の条に対応する部分から苗を取り出して、所定の条に苗を植え付ける。植付作業時は、このように苗植付装置60を作動させながら圃場内を走行車体2で走行することにより、複数の列状に苗を植え付ける。
走行車体2の走行時には、エンジン10で発生した動力はベルト式動力伝達機構17に
伝達され、ベルト式動力伝達機構17から油圧式無段変速機16に伝達されて、油圧式無段変速機16で所望の回転速度や回転方向、トルクに変換されて出力される。油圧式無段変速機16から出力された動力は、ミッションケース18に伝達され、路上走行時の走行速度に適した回転速度、または苗の植え付け時の走行速度に適した回転速度にミッションケース18内で変速されて、前輪4側や後輪5側に出力される。また、ミッションケース18から出力される動力の一部は、苗植付部50側にも伝達され、苗植付部50での植え付け作業にも用いられる。
エンジン10で発生した動力は、これらのように走行車体2の走行や、苗植付部50での植え付け作業等に用いられるが、コントローラ150は、トルクセンサ等を用いてエンジン10の負荷状況を監視し、エンジン10が過負荷であることを検出すると、出力を下げる指示を出す。これにより、エンジン10が過負荷のまま運転し続けることが抑制される。
また、本実施形態に係る苗移植機1は、圃場で植え付け作業を行う際には、GPS制御装置120で苗移植機1の位置情報を取得しつつ、自動操舵装置110で操舵を行うことにより、直進しながら植え付け作業を行うことが可能になっている。詳しくは、苗移植機1は、GPSで使用される人工衛星からの信号をGPS制御装置120の受信アンテナ121で受信することにより、地球上における苗移植機1の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。
情報記憶端末140には、圃場内で効率良く植え付け作業を行うための走路である直進走路の情報が記憶されており、コントローラ150は、情報記憶端末140に記憶されている直進走路の情報と、受信アンテナ121で取得した位置情報とを比較し、自動操舵装置110を制御する。
自動操舵装置110の制御は、受信アンテナ121で取得した位置情報が、情報記憶端末140に記憶されている直進走路の情報に沿うように、ハンドルポテンショメータ112で操舵角を検知し、さらに、ジャイロセンサ115で走行車体2の進行方向の変化を検知しながら、操舵モータ111を作動させて操舵を行う。これにより、走行車体2を、情報記憶端末140に記憶されている直進走路に沿って走行させる。換言すると、自動操舵装置110は、受信アンテナ121とジャイロセンサ115の検出値に基づいて作動し、情報記憶端末140に記憶されている直進走路に沿って、走行車体2を直進走行させる。
苗の植え付け作業時には、自動操舵装置110で走行車体2を直進走行させるための情報として、受信アンテナ121で取得した位置情報を用いるが、位置情報の精度を高めるために、受信アンテナ121で取得した位置情報を、必要に応じて補正する。例えば、受信アンテナ121で取得した位置情報を、傾斜センサ116で検知した走行車体2の前後傾斜に基づいて補正する。
つまり、受信アンテナ121で取得した位置情報は、地表上における二次元の座標として取得されるが、受信アンテナ121は、アンテナフレーム124によって走行車体2の上方に配設されているため、走行車体2が傾斜した際には、アンテナフレーム124も傾斜する。この場合、上方から見た場合における受信アンテナ121の位置が移動するため、走行車体2の位置に変化がなくても、受信アンテナ121で取得する位置情報は変化する。従って、走行車体2が傾斜したことを傾斜センサ116で検知した場合には、検知した走行車体2の前後傾斜に基づいて、位置情報を補正する。
具体的には、図11で示すとおり、傾斜センサ116が、機体の仰角方向の傾斜を検知したときは、当該仰角方向の傾斜を検知する前の位置情報と、当該仰角方向の傾斜を検知した後の位置情報との間隔が広がるように、位置情報の補正を行う。つまり、走行車体2が前上がりに傾斜する方向に姿勢が変化した場合は、アンテナフレーム124は、後方に倒れる方向に傾斜する。このため、アンテナフレーム124に取り付けられる受信アンテナ121は、後方に移動することになるため、受信アンテナ121で取得した位置情報は、走行車体2の実際の位置よりも、後方に位置する情報として取得される。従って、機体の仰角方向の傾斜を検知したときは、傾斜した状態で取得した位置情報を、前方にずらす方向に補正することにより、仰角方向の傾斜を検知する前の位置情報との間隔が広がるようにし、正確な位置情報を取得する。
反対に、傾斜センサ116が、機体の俯角方向の傾斜を検知したときは、当該俯角方向の傾斜を検知する前の位置情報と、当該俯角方向の傾斜を検知した後の位置情報との間隔が狭まるように、位置情報の補正を行う。つまり、走行車体2が前下がりに傾斜する方向に姿勢が変化した場合は、アンテナフレーム124は、前方に倒れる方向に傾斜する。このため、アンテナフレーム124に取り付けられる受信アンテナ121は、前方に移動することになるため、受信アンテナ121で取得した位置情報は、走行車体2の実際の位置よりも、前方に位置する情報として取得される。従って、機体の俯角方向の傾斜を検知したときは、傾斜した状態で取得した位置情報を、後方にずらす方向に補正することにより、俯角方向の傾斜を検知する前の位置情報との間隔が狭まるようにし、正確な位置情報を取得する。
これらのように位置情報を取得する受信アンテナ121は、2つの受信アンテナ121が、走行車体2の左右両側に配置されているが、2つの受信アンテナ121で、別々の情報を取得することにより、高い精度の位置情報を取得する。例えば、2つの受信アンテナ121で取得する位置情報を送信する送信装置として、メインとなる位置情報を送信するGPS衛星群を主位置情報送信装置とし、補助的な位置情報を送信するGPS衛星群や中継アンテナを補助位置情報送信装置とした場合、双方の装置からの情報を、別々の受信アンテナ121で取得する。なお、主位置情報送信装置でなるGPS衛星群と、補助位置情報送信装置でなるGPS衛星群とでは、一部のGPS衛星が、同じものであってもよい。
つまり、左右の受信アンテナ121のうち、一方の受信アンテナ121は、GPS衛星群である主位置情報送信装置から情報を取得し、他方の受信アンテナ121は、補助GPS衛星群等の補助位置情報送信装置から情報を取得する。さらに、左右の受信アンテナ121が取得した位置情報同士を比較し、位置情報の相違に合わせて、コントローラ150によって自動操舵装置110を作動させる。例えば、図13で示すとおり、走行車体2が、情報記憶端末140に記憶されている直進走路に対して斜めの方向を向いている場合、左右の受信アンテナ121が取得した位置情報は、直進走路の方向に対して異なる位置の情報として取得される。このため、この場合には、2つの位置情報の差が小さくなるようにハンドル32を操舵する方向に、自動操舵装置110を作動させる。
圃場内での作業時には、このように受信アンテナ121で位置情報を取得しながら走行車体2を走行させるが、作業クラッチセンサ58が苗植付部50の作動を検知したら、昇降機構123は、受信アンテナ121を下降させる。つまり、苗植付部50に対して動力を伝達する状態になったことを、作業クラッチセンサ58で検知したら、コントローラ150は、昇降機構123が有する2つの昇降シリンダ127を各々縮める。2つの昇降シリンダ127を縮めた場合、2箇所のフレーム垂直部126の全長が短くなるため、フレーム水平部125の位置が低くなり、フレーム水平部125に取り付けられる受信アンテナ121の位置も低くなる。苗植付部50での植え付け作業時には、このように、受信アンテナ121を下降させた状態で、自動操舵装置110によって走行車体2の直進走行を行わせる。
また、図17で示すとおり、自動操舵装置110によって走行車体2を直進走行させている際に、ハンドルポテンショメータ112が、操舵モータ111によるハンドル32の操作を所定時間以上検知しているときは、コントローラ150でエンジン10のスロットルモータ12等を制御することにより、走行車体2の車速を低下させる。つまり、操舵モータ111でハンドル32の操作を長時間行っているということは、走行車体2が、直進方向から大幅にずれているということを示している。このため、この場合は、車速を低下させることにより、走行車体2が直進方向からずれた状態で行う植え付け作業の範囲が小さくなる。
また、自動操舵装置110によって走行車体2を直進走行させているときに、傾斜センサ116が、走行車体2の前後傾斜を検知したら、コントローラ150は、走行車体2が加減速しないように制御する。即ち、走行車体2が、前傾したり後傾したりしたときは、車速が変化せず、一定になるようにする。
また、図18に示すとおり、自動操舵装置110によって走行車体2を直進走行させているときに、目標とする直進走路に対する実際の走路が、設定した許容範囲を超えている場合には、コントローラ150は、走行車体2の走行を停止させ、走路が目標から大きく外れている旨を、情報記憶端末140の表示部で表示する。なお、実際の走路が目標から大きく外れている場合には、走行を停止するのではなく、情報記憶端末140によって警報を行い、走路が目標から外れていることを、作業者に報知してもよい。
また、苗の植え付け作業時には、ローリング機構80により、苗植付部50が圃場面に対して水平になるようにした状態で、苗の植え付け作業を行う。具体的には、図12に示すとおり、ジャイロセンサ115で、走行車体2の左右方向の傾斜を検知し、ローリング機構80は、ジャイロセンサ115が検知した走行車体2の傾斜角度に合わせて、電動モータ84を作動させる。これにより、苗植付部50は、ローリング軸81を中心として回動し、圃場に対して水平になる。
このように、ローリング機構80によって苗植付部50の姿勢を調整する際には、左右の受信アンテナ121で取得する位置情報も用いて、走行車体2の左右方向の傾斜を検知する。つまり、走行車体2が左右方向に傾斜している場合、左右の受信アンテナ121は、お互いの距離が小さくなる。このため、左右の受信アンテナ121で取得した位置情報同士の距離が小さい場合には、走行車体2が左右方向に傾斜していると判断できる。ローリング機構80によって苗植付部50の向きを調整する場合には、このように左右の受信アンテナ121で取得したそれぞれの位置情報に基づいて、走行車体2の傾斜の度合いを推定し、ジャイロセンサ115での検出値と合わせて、高い精度で走行車体2の傾斜角度を推定して、苗植付部50の向きを調整する。
また、ローリング機構80は、ハンドルポテンショメータ112がハンドル32の操舵を検知したら、操舵方向と同じ方向に、苗植付部50をローリングさせる。つまり、図16に示すとおり、ハンドルポテンショメータ112がハンドル32の操舵を検知すると、ローリング機構80は、ハンドルポテンショメータ112が検知したハンドル32の操舵量に対応する作動量で、電動モータ84を作動させる。これにより、ローリング機構80は、ハンドルポテンショメータ112で検知した操舵方向と同じ方向に、操舵量に対応する角度で、苗植付部50をローリングさせる。なお、ローリング機構80の停止は、ジャイロセンサ115の水平検知により行うものとする。
以上の実施形態に係る苗移植機1は、機体が仰角方向に傾斜する場所では、仰角方向に傾斜する前後で取得した二点間の位置情報の間隔を広げる補正を行うことにより、受信アンテナ121で取得する位置情報のズレにより、走行車体2が停止している、または後進していると誤認されることを防止することがきる。また、機体が俯角方向に傾斜する場所では、俯角方向に傾斜する前後で取得した二点間の位置情報の間隔が狭まる補正を行うことにより、受信アンテナ121で取得する位置情報のズレにより、走行車体2が実際の走行速度以上の速度で走行していると誤検知されることを防止することができる。これらの結果、走行車体2を高い精度で直進走行させることができ、苗植付部50で行う作業精度、即ち、苗の植え付け精度を向上させることができる。
また、ジャイロセンサ115で検知する走行車体2の傾斜角度に合わせて、苗植付部50をローリングさせることにより、傾斜地での作業時に、苗植付部50を常に水平姿勢にすることができる。この結果、苗植付部50の作業精度を、より確実に向上させることができる。また、自動操舵装置110での自動操舵制御に用いるジャイロセンサ115を、走行車体2の傾斜検知に用いることにより、ローリング機構80によって苗植付部50を水平姿勢に維持する場合における、部品点数の削減を図ることができる。
また、左右の受信アンテナ121が取得した位置情報を比較し、位置情報の相違に合わせて自動操舵装置110を作動させることにより、走行車体2の微細な傾斜を自動操舵装置110で補正することができる。これにより、直進走行性や作業精度を、より確実に向上させることができる。また、左右の受信アンテナ121が、各々異なる位置情報送信装置から位置情報を取得することにより、走行車体2の左右の位置情報を、より正確に取得することができる。この結果、自動操舵装置100による直進走行姿勢の制御を、より正確に行うことができる。
また、苗植付部50によって植え付け作業を行いながら走行しているときは、受信アンテナ121の上下位置を低くすることにより、走行車体2の重心位置からの、受信アンテナ121の離間距離が抑えることができる。これにより、受信アンテナ121の位置が振れ難くなるので、受信アンテナ121が取得する位置情報を、高い精度で取得することができる。この結果、直進走行性や作業精度を、より確実に向上させることができる。
また、ハンドル32の操舵方向と同じ方向に苗植付部50をローリングさせることにより、走行車体2の進行方向の変更に起因する苗植付部50の回動を相殺することができるので、苗植付部50の作業姿勢を、圃場に対して適切に保つことができる。これにより、作業精度を向上させることができる。また、苗植付部50をローリングさせる際には、ローリング機構80の電動モータ84を、ハンドル32の操作量に対応する作動量で作動させるため、苗植付部50のローリング量の過不足による作業精度の低下を防止することができる。
また、ハンドル32の操作時間が長いときには、車速を低下させるため、直進方向に修正している間の苗植付部50の作業範囲を短くすることができる。この結果、苗植付部50での作業時に、作業位置がズレた状態で作業が行われる範囲を狭くすることができるため、作業精度が低下し難くすることができる。
〔変形例〕
なお、上述した苗移植機1では、走行車体2の進行方向の変化を検知する方向変化検知部材として、ジャイロセンサ115が用いられているが、方向変化検知部材は、ジャイロセンサ115以外のものが用いられてもよい。方向変化検知部材は、例えば、回動時における角速度を検知する角速度センサであってもよい。方向変化検知部材は、検知形態に関わらず、走行車体2の進行方向の変化を検知することができるものであれば、その態様は問わない。
また、上述した苗移植機1では、GPS制御装置120が有する2つの受信アンテナ121は、走行車体2の左右両側に配置されているが、受信アンテナ121は、これ以外の位置に配置されていてもよい。図8は、実施形態に係る苗移植機の変形例であり、受信アンテナを走行車体の前後に配置する状態を示す側面図である。図9は、図8に示す苗移植機の平面図である。GPS制御装置120が有する受信アンテナ121は、例えば、図8、図9に示すように、2つの受信アンテナ121を、走行車体2の前後に各々配置してもよい。この場合、アンテナフレーム124は、2つの受信アンテナ121を機体左右方向のおける中央付近の位置で、走行車体2の前端付近と後端付近との2箇所に配設できるように、適宜構成される。
このように、2つの受信アンテナ121を走行車体2の前後に配置する場合、2つの受信アンテナ121は、前後の受信アンテナ121のうち、一方の受信アンテナ121は、主位置情報送信装置から情報を取得し、他方の受信アンテナ121は、補助位置情報送信装置から情報を取得する。これにより、2つの受信アンテナ121は、主位置情報送信装置と補助位置情報送信装置との双方の装置からの情報を、別々の受信アンテナ121で取得する。
さらに、図14に示すとおり、前後の受信アンテナ121が取得した位置情報同士を比較し、位置情報の相違に合わせて、コントローラ150によって自動操舵装置110を作動させる。例えば、走行車体2が、情報記憶端末140に記憶されている直進走路に対して斜めの方向を向いている場合、前後の受信アンテナ121が取得した位置情報は、直進走路に沿った位置とは異なる位置の情報として取得される。このため、この場合には、2つの位置情報が、直進走路に沿った位置になるようにハンドル32を操舵する方向に、自動操舵装置110を作動させる。
これらのように、2つの受信アンテナ121を走行車体2の前後に配置し、2つの受信アンテナ121が各々取得する位置情報を比較することにより、複数の位置情報に基づいて自動操舵装置110を作動させることができる。これにより、直進方向に対する走行車体2のズレを抑えることができるため、直進走行性や作業精度を向上させることができる。また、自動操舵装置110の操舵位置が、直進方向から僅かにズレていても、すぐに進行方向の補正を行うことができるため、直進から僅かにズレた方向に走行することを防止することができる。
また、上述した苗移植機1では、ローリング機構80によって、苗植付部50の姿勢を調節することが可能になっているが、苗植付部50は、ローリング機構80以外によって姿勢を調節できるように構成されていてもよい。図10は、実施形態に係る苗移植機の変形例であり、ピッチング装置を設ける場合における苗植付部近傍の側面図である。苗植付部50の姿勢を調節するための構成としては、例えば、図10に示すように、苗植付部50の前後傾斜角度を変更するピッチング装置160を備えていてもよい。このピッチング装置160は、ピッチングフレームである連結ブラケット161と、ピッチングアクチュエータであるピッチングシリンダ165とを有して、苗植付部昇降機構40に配設されている。
詳しくは、連結ブラケット161は、植付支持フレーム55の前側に配設されており、連結ブラケット161には、苗植付部昇降機構40が有する平行リンク機構42が連結されている。平行リンク機構42の上リンクと下リンクとのうち、下リンクであるロワリンク176は、ヒンジピン(下部ヒンジピン)177によって回動自在に平行リンク機構42に連結されている。また、平行リンク機構42の上リンクであるアッパーリンク171は、ヒンジピン(上部ヒンジピン)172によって、ロワリンク176のヒンジピン177が連結ブラケット161に連結されている位置よりも上方側の位置で、連結ブラケット161に連結されている。詳しくは、連結ブラケット161には、ロワリンク176のヒンジピン177が位置している部分よりも機体上方側に、略円弧状の形状で機体前後方向に延びる長孔162が形成されており、アッパーリンク171は、ヒンジピン172がこの長孔162に入り込むことにより、連結ブラケット161に連結されている。
また、ピッチングシリンダ165は、油圧によって伸縮するシリンダになっており、本体側がアッパーリンク171に連結され、ロッド側が連結ブラケット161に連結されている。
このように構成されるピッチング装置160は、ピッチングシリンダ165を伸縮させることにより、アッパーリンク171のヒンジピン172が、連結ブラケット161の長孔162内を移動しながら、ロワリンク176のヒンジピン177を支点として連結ブラケット161が回動する。この連結ブラケット161は、植付支持フレーム55に連結されて、苗植付部50と一体となって設けられているため、連結ブラケット161が回動した際には、苗植付部50も一体となって回動する。
これにより、ピッチング装置160は、苗植付部昇降機構40での苗植付部50の昇降状態に関わらず、ピッチングシリンダ165を伸縮させることにより、ロワリンク176のヒンジピン177を支点として、苗植付部50を回動させることが可能になっている。即ち、ピッチング装置160は、ピッチング方向に苗植付部50の姿勢を調節することが可能になっている。
このように、苗植付部50の姿勢を調節することができるピッチング装置160は、走行車体2の傾斜等に応じて、苗植付部50の傾きを調節することにより、苗植付部50での作業精度の向上を図ることができる。例えば、図15で示すとおり、受信アンテナ121で取得した位置情報から、走行車体2が仰角または俯角方向に傾斜していると判定されるときは、ピッチング装置160は、後輪回転センサ23で検知した車速に合わせてピッチングシリンダ165を作動させ、苗植付部50を前傾、または後傾させる。このように、ピッチング装置160は、走行車体2の傾斜及び走行速度に合わせて苗植付部50をピッチングさせることにより、圃場面に対する苗植付部50の前後傾斜角度を、適切な位置に合わせることができる。この結果、より確実に作業精度を向上させることができる。
また、走行車体2は、前輪4と後輪5との4つの車輪によって走行することが可能になっているが、車輪のトレッドを変化させるように構成されていてもよい。例えば、走行車体2が左右方向に傾斜するような傾斜地を走行する場合には、前輪4や後輪5のトレッドを広げることにより、走行車体2が傾斜地でズレ落ちることを防ぐことができる。また、車輪のトレッドを広げる際には、機体左右方向において、作物等が配置されていない側に広げるのが好ましい。
また、上述した実施形態では、作業車両の一例として苗移植機1を用いて説明したが、作業車両は、苗移植機1以外のものでもよい。作業車両は、圃場での作業を行う播種装置やロータリ等の作業装置を、走行車体の後部に配設するものであれば、その種類は問わない。